説明

シリコン膜製造装置及び電子デバイス製造装置

【課題】効率よくドープシリコン膜を生成するシリコン製造装置を提供する。
【解決手段】シクロペンタシラン溶液に、ドーパントをラジカル化するための第1の波長の光と、シクロペンタシランをラジカル化するための第2の波長の光を照射しながらドーパントガスを供給することにより、シクロペンタシランの重合体にドーパントが結合したドープシリコン前駆体を生成するシリコン前駆体生成装置113と、ドープシリコン前駆体を含む溶液を基板に塗布する塗布装置102と、ドープシリコン前駆体が塗布された基板を焼成することにより、基板上にドープシリコン膜を形成する焼成装置125と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン膜製造装置及び電子デバイス製造装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体用シリコンの製造方法としては、CZ法、FZ法等の引き上げ法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の真空プロセスが知られている。これらの方法は大掛かりな装置が必要であり、また、フォトリソグラフィーによりシリコン膜の不要部分を除去するため、原料の使用効率が悪かった。また、CZ法、FZ法等で製造される半導体用シリコンにドーパントとしての不純物を添加する場合は、溶解したシリコン中に直接添加する方法がとられている。また、CVD法で作成したシリコン膜に対しては、熱拡散法やイオン注入法等の不純物拡散が行なわれている。これらの方法は、大掛かりな専用装置が必要であり、また、ドーピング制御に熟練した技術が必要とされる。
【0003】
これに対し、液体半導体材料(シリコン前駆体液)を印刷技術等で基板上に塗布して焼成することで、シリコン膜を形成する方法では、CVDのような大掛かりな装置が不要である。また、液体半導体材料の塗布でパターニングできるため、フォトリソグラフィーが不要であり、原材料の使用効率が良い。
【0004】
特許文献1には、常圧下で、塗布法により、基体上に、均一な燐ドープシリコン導電膜を形成する方法およびそのためのリン原子含有高次シラン化合物の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−284639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、P型のドープシリコン膜を生成する際に用いるP型のドープ材料は、一般的に固体、液体の状態では非常に安定性が高く、シラン化合物の重合体に結合させるためには、高温または高エネルギー条件下での長時間の反応が必要となる。そのような条件での反応を行うと、シラン化合物が揮発したり、アモルファス化したりしてしまうため効率よくドープシリコン膜を生成することができない。
【0007】
本発明に係る態様の1つは、効率よくドープシリコン膜を生成するシリコン製造装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシリコン製造装置は、シラン化合物を含む溶液に光を照射する光照射部と、シラン化合物を含む溶液にドーパントとなる元素を含むガスを供給するガス供給部を備え、シラン化合物を含む溶液に、光を照射しながらドーパントとなる元素を含むガスを供給することにより、シラン化合物の重合体にドーパントが結合したシリコン前駆体を生成するシリコン前駆体生成部と、シリコン前駆体を含む溶液を基板に塗布する塗布部と、シリコン前駆体を焼成することにより、基板上にシリコンを形成する焼成部と、を備えたものである。
【0009】
上記構成によれば、光の照射によってドーパントとなる元素を含むガスとシラン化合物を活性化することにより、効率よくドープシリコン前駆体を生成することができる。また、高温、高エネルギー条件下での長時間の反応を行わなくてよいため、シラン化合物が揮発したり、アモルファス化したりしてしまうことを防止できる。また、大掛かりな専用装置が必要なく、簡易な方法により、効率よくシリコンを形成することができる。
【0010】
また、光照射部は、ドーパントとなる元素をラジカル化するための第1の波長の光と、シラン化合物をラジカル化するための第2の波長の光を照射することが望ましい。
これにより、ドーパントとなる元素とシラン化合物を確実に活性化し、効率よくドープシリコン前駆体を生成することができる。
【0011】
また、ガス供給部は、ドーパントとなる元素を含むガスとして、常温常圧で気体である第13族元素の化合物を含むガスを供給することが望ましい。
これにより、高温、高圧の条件下で反応を行う必要がなく、シラン化合物の揮発やアモルファス化を防止できる。
【0012】
また、シリコン前駆体生成部、塗布部、及び焼成部が不活性ガスを含む雰囲気中に配置されていることが望ましい。
これにより、大気中で劣化しやすい液体を大気に曝すことなく使用できるため、品質の良いシリコンを得ることができる。また、大気中の化合物と反応する液体を大気に曝すことなく使用できるため、安全にシリコンを製造することができる。
【0013】
また、塗布部から焼成部に基板を移動させる搬送手段を備えていることが望ましい。
これにより、効率良くシリコンを製造することができる。
【0014】
また、塗布部は、インクジェット法によりシリコン前駆体を含む溶液を基板に塗布することが望ましい。
これにより、簡易な方法で正確にシリコンをパターニングすることができる。
【0015】
また、焼成部は、焼成中に不活性ガスを導入できることが望ましい。
焼成中に不活性ガスを注入することにより、良質なシリコンを形成することができる。
【0016】
本発明に係る電子デバイス製造装置は、シラン化合物を含む溶液に光を照射する光照射部と、シラン化合物を含む溶液にドーパントとなる元素を含むガスを供給するガス供給部を備え、シラン化合物を含む溶液に、光を照射しながらドーパントとなる元素を含むガスを供給することにより、シラン化合物の重合体にドーパントが結合したシリコン前駆体を生成するシリコン前駆体生成部と、シリコン前駆体を基板に塗布する塗布部と、シリコン前駆体を焼成することにより、基板上にシリコンを形成する焼成部と、シリコンに電極を形成する電極形成部を備えたものである。
【0017】
これにより、大掛かりな専用装置が必要なく、簡易な方法により、効率よく電子デバイスを製造することができる。電子デバイスは、例えば太陽電池や薄膜トランジスタ(TFT)などである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態によるデバイス製造装置を、横方向から見た構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態によるデバイス製造装置を、上から見た構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態によるデバイス製造装置の基板搬送機構を模式的に示す断面図である。
【図4】シリコン前駆体生成装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【図5】P型ドープシリコン前駆体ポリマーの構造の例を示す図である。
【図6】塗布装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【図7】塗布膜焼成室内を上から見た構造を模式的に示す平面図である。
【図8】本発明による電子デバイスの一例であるPIN型シリコン薄膜太陽電池の製造工程を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明による電子デバイスの一例であるHIT型太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明による電子デバイスの一例であるpn接合型太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明による電子デバイスの一例である薄膜トランジスタの製造工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態
図1は、本発明の実施の形態によるデバイス製造装置(シリコン製造装置、電子デバイス製造装置)10を横方向から見た構造を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の実施の形態によるデバイス製造装置10を上から見た構造を模式的に示す断面図である。
【0020】
図に示すように、デバイス製造装置10は、グローブボックス用手袋101、塗布装置(塗布部)102、酸素フィルター103、排気シャッター104、排気口105、ホットプレート106、塗布膜焼成室107、不活性ガス注入口108、ガス流量計109、ドライポンプ110、真空ライン111、搬送チャンバー112、シリコン前駆体生成装置(シリコン前駆体生成部)113、インクライン114、i型用インクタンク115、p型用インクタンク116、n型用インクタンク117、蒸着装置(電極形成部)118、ドーパントガス供給ライン119、ガスクロマトグラフィー120、ゲルクロマトグロフィー121、サンプル注入口122、搬送ロボットアーム(搬送手段)123、ゴム製グローブ124、焼成装置(焼成部)125、待機エリア126、シラン化合物タンク127を備えている。
【0021】
まず、デバイス製造装置10の動作の概略について説明する。
デバイス製造装置10は、基板上にシリコン膜、ドープシリコン膜、電極等を形成することにより、電子デバイスを製造する装置である。まず、シリコン前駆体生成装置113では、ドープシリコン前駆体、シリコン前駆体が生成される。具体的には、容器内のシラン化合物にドーパントガスを供給しながら紫外線を照射する。なお、シリコン前駆体生成装置113では生成されたシリコン前駆体またはドープシリコン前駆体を少量(100〜500μl)採取し、質量ガスクロマトグラフィー分析による重合の確認後、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、重合したシリコン前駆体またはドープシリコン前駆体の分子量の定量を行う。ここで、重合不十分の結果が出たときは、ロボットアームでその容器を除去する。重合が確認されたシリコン前駆体またはドープシリコン前駆体は有機溶媒で希釈され、インクライン114を通してインクタンク116に送られる。塗布装置102では、基板上にシリコン前駆体またはドープシリコン前駆体が塗布される。その後基板は塗布膜焼成室107に搬送され、焼成されてシリコン膜またはドープシリコン膜が形成される。その後、基板は蒸着装置118に搬送され、電極が形成される。
【0022】
シリコン前駆体生成装置113、塗布装置102、焼成装置125、及び蒸着装置118はグローブボックス101内に密封されており、内部は不活性雰囲気に保たれている。具体的には、グローブボックス101内部は窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスで満たされ、酸素0.1ppm以下、水分0.1ppm以下に保たれている。
【0023】
図3は、デバイス製造装置10の基板搬送機構を模式的に示す断面図である。デバイス製造装置10は、基板600を基板ホルダー601にはめて基板ホルダー601ごと搬送することができる。基板ホルダー601は、熱伝導率が良く、耐熱温度が800℃以上の材料で形成されているため、そのまま焼成等を行うことができる。このような材料としては、石英やSUSなどが上げられる。なお、焼成装置125内で焼成する時のみ基板600を基板ホルダー601から外して焼成を行うようにしてもよい。
【0024】
搬送チャンバー112内部では、基板ホルダー601は支柱153によって支持されている。搬送チャンバー112から基板ホルダー601を搬送する手段としては、例えば搬送ロボットアーム123などを用いる。基板ホルダー601の搬送は、搬送チャンバー112、塗布装置102、焼成装置125、及び蒸着装置118の間で行うことができる。さらに、基板ホルダー601の待機エリア126が設けられており、工程の進行具合に合わせて、基板ホルダー601を一時退避させることもできる。
【0025】
搬送チャンバー112内には、レール154に沿って移動できるアライメントカメラ151が設けられており、装置外から搬入された基板600が基板ホルダー601の正確な位置に設置されたか確認することができる。また、搬送チャンバー112には不活性ガス注入口108と排気ライン152が設けられており、内部を不活性雰囲気に保つことが出来る。
【0026】
なお、グローブボックス101内での基板600の移動等は基本的に搬送ロボットアーム123によって行うが、必要な場合にはゴム製グローブ124を用いて外部から作業者が操作することも可能である。
【0027】
[シリコン前駆体生成装置]
次に、シリコン前駆体生成装置113について詳細に説明する。
図4は、シリコン前駆体生成装置113の内部構成を模式的に示す断面図である。図に示すように、シリコン前駆体生成装置113は、第1の光ファイバー201、第2の光ファイバー202、光漏れ防止用の囲い203、石英容器204、ベルトコンベア206、生成したシリコン前駆体を採取するためのシリンジ207、インクライン114、シリンジ207を移動させるためのガイド構造211、不良品の入った石英容器204を取り除くためのロボットアーム212、ドーパントガス供給ライン(ガス供給部)119、排気ライン214、有機溶媒注入ライン215、攪拌子216、第1の光源(光照射部)217、第2の光源(光照射部)218、流量計219、シラン化合物注入ライン220を備えている。
【0028】
ベルトコンベア206上には石英容器204が設置されており、石英容器204が1つずつ囲い203の中に入るように回転している。石英容器204には、囲い203に入る前に、シラン化合物注入ライン220を介してシラン化合物タンク127からシラン化合物が供給される。シラン化合物としては、例えばシクロペンタシランを用いることができる。シクロペンタシランの注入量は、例えば10mlとすることができる。
【0029】
石英容器204内には攪拌子216が入っており、ベルトコンベア206の台には攪拌子216を回転させるマグネティックスターラーの機能がついている。このため、石英容器204内の溶液を攪拌することができる。
【0030】
次に、石英容器204が囲い203の中に入ると、石英容器204内のシクロペンタシラン溶液500にドーパントガス供給ライン119を通してドーパントガスが供給される。 ドーパントガスは、例えばジボラン(B26)ガスとすることができる。ガスの流量は、流量計219を用いて、例えば、0.005ml/minとすることができる。
【0031】
ドーパントガスの供給と同時に、石英容器204内のシクロペンタシラン溶液500には、第1の光源217から第1の光ファイバー201を通して第1の波長の光が照射される。また、同時に第2の光源218から第2の光ファイバー202を通して第2の波長の光が照射される。
【0032】
第1の波長の光は、195nmの波長の光であり、第2の波長の光は、400nmの波長の光である。また、照射光の強度は、1mW/cm2以上6000mW/cm2以下である。ジボランガスは195nm以下の紫外線を照射することにより、ホウ素ラジカルとなる。シクロペンタシランは200〜450nmの紫外線を照射することによりシランラジカルとなり、開環重合を開始する。発生したシランラジカルとホウ素ラジカルが反応することにより、シランポリマーにホウ素が結合し、P型ドープシリコン前駆体ポリマー(ドープシリコン前駆体)が生成される。
【0033】
このように、ドーパントガスの供給および光の照射の開始と同時に、シクロペンタシランの重合反応が開始する。この時、シクロペンタシラン溶液500を攪拌することにより、重合反応を溶液内で均一にすることができる。
【0034】
なお、ドーパントガスがシクロペンタシランの量に対して多量に供給されている場合は、195nmの波長の光の照射強度は弱めでもよい。これは、光のエネルギーがドーパント(ジボラン)に伝わる確率が高いためである。一方、ドーパントガスの量がシクロペンタシランに対して少量の場合は、光のエネルギーがシクロペンタシランに遮られてドーパントに十分に伝わらない可能性があるため、195nmの波長の光の照射強度は強くすると良い。
【0035】
また、ドーパントガスの供給量については、供給開始からしばらくの間は未反応のシクロペンタシランが多いので、ドーパントガスの供給量を多くして、シランポリマーとホウ素の結合反応が効率的に行われるようにすることが望ましい。さらに、この段階では、ドーパントガスを活性化するための195nmの光の照射強度を強めにし、ドーパントガスの活性化を促進することにより、反応効率をより高めることができる。一方、P型ドープシリコン前駆体ポリマーの生成がある程度進んだら、活性化されたシクロペンタシランの量が少なくなっているため、ドーパントガスの供給量を少なくすることが望ましい。ドーパントガスの総供給量は、ドーパントガスに含まれるホウ素原子数がシクロペンタシラン溶液500に含まれるケイ素原子と反応するのに必要な原子数の1倍〜10倍となる量にすることにより、原料を無駄にせず効率よくP型ドープシリコン前駆体を生成することができる。このように、流量計219を用いてドーパントガスの供給量を制御することにより、効率的にドープシリコン前駆体ポリマーを精製することができる。
【0036】
第1の波長及び第2の波長の光の照射とドーパントガスの供給を約30分間行うと、シクロペンタシラン溶液500内のほぼすべてのシクロペンタシランが重合してP型ドープシリコン前駆体ポリマーとなる。P型ドープシリコン前駆体ポリマーは、図5に示す化合物1001〜1006のような構造を有する。なお、図中、X,Yは整数、またはX=2n、Y=2n(nは整数)である。P型ドープシリコン前駆体ポリマー中のドーパントの量は、ポリマー中に含まれるドーパント原子(ここではホウ素原子。)の数が、ポリマーに含まれるケイ素原子の数に対して0.0001%以上10%以下であることが望ましい。
【0037】
なお、シラン化合物としては、シクロペンタシラン以外の、他のケイ素化合物の重合体を用いても良い。ケイ素化合物としては、Sinmで表されるケイ素化合物を用いることができる。m=2n+2である化合物の具体例としては、トリシラン、テトラシラン、ペンタシラン、ヘキサシラン、ヘプタシランなどの水素化シラン、またこれらの水素原子の一部またはすべてをハロゲン原子に置換したものが挙げられる。m=2nである具体例としては、シクロトリシラン、シクロテトラシラン、上述のシクロペンタシラン、シリルシクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シリルシクロヘキサシラン、シクロヘプタシラン、などの一個の環系を有する水素化ケイ素化合物およびこれらの水素原子の一部またはすべてをハロゲン原子に置換したヘキサクロルシクロトリシラン、トリクロルシクロトリシラン、オクタクロルシクロテトラシラン、テトラクロルシクロテトラシラン、デカクロルシクロペンタシラン、ペンタクロルシクロペンタシラン、ドデカクロルシクロヘキサシラン、ヘキサクロルシクロヘキサシラン、テトラデカクロルシクロヘプタシラン、ヘプタクロルシクロヘプタシラン、ヘキサブロモシクロトリシラン、トリブロモシクロトリシラン、ペンタブロモシクロトリシラン、テトラブロモシクロトリシラン、オクタブロモシクロテトラシラン、テトラブロモシクロテトラシラン、デカブロモシクロペンタシラン、ペンタブロモシクロペンタシラン、ドデカブロモシクロヘキサシラン、ヘキサブロモシクロヘキサシラン、テトラデカブロモシクロヘプタシラン、ヘプタブロモシクロヘプタシランなどのハロゲン化環状ケイ素化合物が挙げられる。m=2n−2である化合物の具体例としては、1、1'−ビスシクロブタシラン、1、1'−ビスシクロペンタシラン、1、1'−ビスシクロヘキサシラン、1、1'−ビスシクロヘプタシラン、1、1'−シクロブタシリルシクロペンタシラン、1、1'−シクロブタシリルシクロヘキサシラン、1、1'−シクロブタシリルシクロヘプタシラン、1、1'−シクロペンタシリルシクロヘキサシラン、1、1'−シクロペンタシリルシクロヘプタシラン、1、1'−シクロヘキサシリルシクロヘプタシラン、スピロ[2、2]ペンタシラン、スピロ[3、3]ヘプタタシラン、スピロ[4、4]ノナシラン、スピロ[4、5]デカシラン、スピロ[4、6]ウンデカシラン、スピロ[5、5]ウンデカシラン、スピロ[5、6]ドデカシラン、スピロ[6、6]トリデカシランなどの2個の環系を有する水素化ケイ素化合物およびこれらの水素原子の一部またはすべてをSiH3基やハロゲン原子に置換したケイ素化合物が挙げられる。また、m=nである化合物や、これらの水素原子の一部またはすべてを部分的にSiH3基やハロゲン原子に置換したケイ素化合物、また、一般式Siabcで表わされるケイ素化合物を用いてもよい。これらの化合物は2種以上を混合して使用することができる。また、重合に際しては、上記紫外線の他、熱や他のエネルギー線を用いてもよい。
【0038】
また、ドーパントガスとしては、ジボランの他にも、第13族元素の化合物を用いることができる。例えば、ホウ素化合物であるテトラボランなどの水素化ホウ素化合物、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素などのハロゲン化ホウ素化合物、メチルボランなどのようなホウ素含有炭化水素、塩化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム化合物、トリメチルアルミニウムなどのアルミニウム含有炭化水素、塩化ガリウムなどのハロゲン化ガリウム、トリメチルガリウムなどのガリウム含有炭化水素、トリメチルインジウムなどのインジウム含有炭化水素などを使うことができる。その他、常温常圧で気体である第13族元素の化合物を用いることができる。また、常温で固体であっても、気化することによりガスとして使えるものであれば良い。
【0039】
また、シクロペンタシラン溶液500への光の照射方法は図4に示すものに限られない。例えば、光の照射方向は、図4に示すように石英容器204の上からに限らず。石英容器204の横から光を照射するようにしてもよいし、石英容器204の下から照射するようにしてもよい。
【0040】
また。図4では第1の光ファイバー201、第2の光ファイバー202で光を導いているが、石英容器204内のシクロペンタシラン溶液500に確実に光が照射される構造であれば方法は限定されない。また図4では光源を2つ用いているが、195nm以下の波長の光と200〜450nmの波長の光が照射できる光源であれば1つでも、複数でもかまわない。
【0041】
なお、光源としては、高圧水銀ランプや、エキシマランプ、誘電体バリア放電エキシマランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノン水銀ランプ、重水素ランプ、UV−LED光源、希ガスハライドエキシマレーザー、希ガスエキシマレーザー、窒素レーザー、フッ素レーザー、Nd:YAG三倍高調波、Nd:YAG四倍高調波、Ce:LiSAFレーザー、半導体レーザーなどを使うことができる。
【0042】
また、囲い203には排気ライン214が設けられており、ロータリーポンプなどによって囲い203内部のシラン、ボランを除去することが望ましい。
また、石英容器204の容積は100ml〜10mlが望ましく、石英容器204に注入されるシラン化合物は石英容器204の容積の1〜30%が良い。
【0043】
石英容器204が囲い203から搬出されたら、シリンジ207を用いて石英容器204からドープシリコン前駆体ポリマーを少量(100〜500μl)採取する。採取後、シリンジ207がガイド構造211に沿って移動し、採取されたサンプルをガスクロマトグラフィー120に供給する。図1に示すように、ガスクロマトグラフィー120はグローブボックス101の外部にあるので、サンプル注入口122を介してサンプルを供給する。
【0044】
ガスクロマトグラフィー120において、質量ガスクロマトグラフィー分析による重合の確認を行う。さらに、ゲルクロマトグロフィー121において、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、重合したドープシリコン前駆体ポリマーの分子量の定量を行う。ここで、重合不十分の結果が出たときは、ロボットアーム212でその石英容器204を除去する。重合が確認された石英容器204には、有機溶媒注入ライン215から石英容器204に有機溶媒が供給されてドープシリコン前駆体ポリマーが希釈され、希釈液がインクライン114を通してp型用インクタンク116に送られる。
【0045】
ドープシリコン前駆体溶液の送液後、空になった石英容器204は、洗浄された後、再びベルトコンベア206に乗せられ、再利用される。なお、洗浄する際にはグローブボックス101の外部に出してから行うようにする。洗浄は、残留したシラン化合物を失活させるための塩基性溶液による洗浄、水洗浄、有機溶媒洗浄を行うことが望ましい。これらと併用して攪拌、超音波洗浄等を行っても良い。
【0046】
なお、分析手段としては、質量ガスクロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーの他、粒度分布計、動的光散乱計、静的光散乱計、粘度計、蒸気圧測定、浸透圧測定、沸点上昇測定などの分子量分布を測定するもの、赤外分光装置、可視・紫外吸収スペクトル測定、核磁気共鳴測定などの合成確認を行うものを使うことができる。
【0047】
また、分析用のサンプルを採取する手段は、シリンジ207以外にも、少量の溶液を秤量できるものであれば限定されない。
また、分析用のサンプルをサンプリングするタイミングは、上記のように重合後でも良いし、有機溶媒で希釈後でも良い。また、両方のタイミングで行っても良い。
【0048】
分析の結果、重合不十分と判定されたものは、廃棄してもよいし、さらに重合反応のプロセスに戻すようにしても良い。
い。
なお、ガスクロマトグラフィー120、ゲルクロマトグロフィー121等の分析装置は、図1に示すようにグローブボックス101の外部に設け、サンプル注入口122を介してサンプル溶液を供給するようにしてもよいし、グローブボックス101の中に設けて、シリンジ207から供給するようにしてもよい。
【0049】
ドープシリコン前駆体ポリマーを溶かす有機溶媒としては、トルエンや、ケイ素化合物を溶解するものであれば特に限定されない。具体例として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ジシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワランなどの炭化水素系溶媒の他、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、クロロホルムなどの極性溶媒が挙げられる。また、Sinmで表される化合物で、m=2n+2(mは3以上の整数)のものが挙げられる。具体例はトリシラン、テトラシラン、ペンタシランなどである。また、Sinmで表され、m=2n(mは3以上の整数)の環状シラン化合物が挙げられる。具体例としては、シクロトリシラン、シクロテトラシラン、シクロペンタシランなど液体の低級シラン化合物を挙げることができる。これらのうち、ケイ素化合物及び変性ケイ素化合物の溶解性と、溶液の安定性の点で、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、さらに好ましい溶媒としては炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でも、或いは2種以上を混合しても使用できる。特に炭化水素系溶媒は、ケイ素化合物の溶解性が高く、熱処理時のケイ素化合物の残留を抑制する効果がある。
【0050】
以上説明したように、シクロペンタシラン溶液500に、ドーパントガスをラジカル化するための195nmの波長の光(第1の波長の光)と、シクロペンタシランをラジカル化するための400nmの波長の光(第2の波長の光)を同時に照射しながらドーパントガスを供給することにより、光の照射によってドーパントガスとシクロペンタシランを活性化しながら、効率よくP型ドープシリコン前駆体を生成することができる。また、高温、高エネルギー条件下での長時間の反応を行わなくてよいため、シクロペンタシランが揮発したり、アモルファス化したりしてしまうことを防止できる。
【0051】
なお、ドーパントガスの供給を行わずに同様の工程を実施することにより、ノンドープのシリコン前駆体ポリマーを生成することができる。この場合には、生成したノンドープのシリコン前駆体ポリマーは、有機溶媒で希釈され、インクライン114を通してi型用インクタンク115に送られる。また、同様に、n型のドーパントを用いてN型ドープシリコン前駆体ポリマーを生成することができる。この場合には、生成したN型ドープシリコン前駆体ポリマーは、有機溶媒で希釈され、インクライン114を通してn型用インクタンク117に送られる。
【0052】
[塗布装置]
図6は、塗布装置102の内部構成を模式的に示す断面図である。図に示すように、塗布装置102は、インクジェットヘッド403、基板ホルダー405、アライメントマーク406、アライメントカメラ407、基板台座408、吸引口409、基板押し上げ棒410を備えている。
【0053】
塗布装置102では、シリコン前駆体生成装置113から、インクライン114を通してp型用インクタンク116に送られたドープシリコン前駆体溶液を、基板600上に塗布して塗布膜502を形成する。塗布は、インクジェットヘッド403から、インクタンク116内のドープシリコン前駆体溶液を基板600上に吐出することにより行う。なお、塗布方法は、インクジェット法の他、サーマルジェット法、マイクロコンタクトプリンティング法、コンタクトプリンティング法、ロール・ツー・ロール法、凹版印刷法、凸版印刷法などの印刷技術によるパターニング法、スピンコート法、ディッピング法などの方法を用いることができる。
【0054】
塗布装置102には、基板600上の所望の位置にドープシリコン前駆体溶液を塗布できるように、アライメントカメラ407が設けられており、例えば基板ホルダー601にアライメントマーク406を設けておき、アライメントマーク406の位置をアライメントカメラ407で確認することにより、正確な位置に塗布することができる。
【0055】
また、塗布装置102の基板台座408には基板押し上げ棒410が設けられており、基板600を基板ホルダー601ごと基板台座408から浮かせる機能がある。これにより、インクジェットヘッド403と基板600の距離を短くして、より精度の高い塗布を行うことができる。基板600を押し上げる機構としては、モーター式、油圧式、空圧式などが挙げられる。また、塗布装置102には、ドライポンプ110の真空ライン111の吸引口409が設けられている。
【0056】
[焼成装置]
塗布装置102においてドープシリコン前駆体溶液を塗布後、焼成装置125において基板600を300℃以上で焼成することにより、P型ドープアモルファスシリコン膜を形成する。
【0057】
図1に示すように、塗布装置102は、石英、ステンレスなどでできた塗布膜焼成室107で覆われている。図7は、塗布膜焼成室107内を上から見た構造を模式的に示す平面図である。塗布膜焼成室107の底面には排気口701が設けられており、ポンプなどによって塗布膜焼成室107内の空気が吸引され、グローブボックス101外部へ排気口105から排気される。なお、排気シャッター104が設けられており、焼成中のみこの排気シャッター104が開放されている。また、塗布膜焼成室107内は、真空ライン111を通してドライポンプ110に繋がっており、塗布膜焼成室107内を真空に保つことができる。
【0058】
さらに、塗布膜焼成室107内には、不活性ガス注入口108を通して不活性ガスを供給することができる。供給する不活性ガスは、酸素フィルター103を通して、酸素・水分ともに10ppb以下に保たれている。
【0059】
塗布膜焼成室107内にはホットプレート106が設けられており、ホットプレート106で加熱することにより基板600を焼成する。基板600は基板ホルダー601ごと加熱することもできる。加熱方法は、ホットプレート106を用いた抵抗加熱方法のほか、遠赤外線、赤外線、紫外線など光による加熱方法などを用いてもよい。
【0060】
なお、焼成中は、上述したように、不活性ガス注入口108から不活性ガスを供給することが望ましい。不活性ガスの流量はガス流量計109を用いて調整し、1分当たり塗布膜焼成室107の容積の0.1倍から1倍の量の不活性ガスを供給することが望ましい。これにより、良質なシリコン膜を形成することができる。
【0061】
また、塗布膜焼成室107には、基板押し上げ棒702が設けられており、基板600を基板ホルダー601ごと浮かせる機能がある。押し上げる機構としては、モーター式、油圧式、空圧式などが挙げられる。
【0062】
以上のように、塗布装置102においてドープシリコン前駆体溶液を塗布した基板600を焼成装置125で焼成することにより、基板600上にドープシリコン膜が形成される。P型ドープシリコン前駆体ポリマーは、ホウ素がシランポリマーに結合しているため、昇華温度が非常に高く、300℃で焼成しても、シラン化合物及びドーパントが揮発することがないため、多くのドーパントを含有するシリコン膜を製膜することができる。
【0063】
なお、塗布装置102において、基板600にノンドープのシリコン前駆体溶液を塗布し、焼成装置125において上記と同様に焼成を行えば、ノンドープのシリコン膜を形成することができる。
【0064】
[蒸着装置]
蒸着装置118では、抵抗加熱による蒸着、イオンビーム蒸着などの手法により、基板600に電極を形成することができる。また、スパッタ法、CVD法等を用いて電極を形成してもよい。具体的には、ITOなどの透明電極、Al、Ni、Cu、Auなどの取り出し電極、補助電極を形成する。
蒸着装置118には、基板押し上げ棒が設けられており、基板600を基板ホルダー601ごと浮かせる機能がある。押し上げる機構としては、モーター式、油圧式、空圧式などが挙げられる。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、シリコン前駆体生成装置113内で、光の照射によってドーパントガスとシラン化合物を活性化することにより、効率よくドープシリコン前駆体を生成し、塗布装置102内で基板600にドープシリコン前駆体を塗布し、焼成装置125で基板600を焼成してドープシリコン膜を形成するようにしたので、液体材料を用いて、簡易な方法により、効率よくドープシリコン膜を形成することができる。また、高温、高エネルギー条件下での長時間の反応を行わなくてよいため、シラン化合物が揮発したり、アモルファス化したりしてしまうことを防止できる。
【0066】
また、一連の工程を不活性雰囲気に制御されたグローブボックス101内で行うので、大気中の化合物と反応しやすいシリコン前駆体を大気に曝すことなく使用でき、品質の良いドープシリコン膜を得ることができる。また、安全にドープシリコン膜を製造することができる。
【0067】
また、グローブボックス101内に蒸着装置118が設けられており、電極形成も行うことができるので、1つの装置内で効率よく電子デバイスを製造することができる。
【0068】
なお、塗布装置102と焼成装置125の間、及び焼成装置125と蒸着装置118の間に開閉可能なシャッター等を設けるようにしてもよい。これにより、各装置内部が隣接する装置の影響を受けることなく、それぞれの工程を実施することができる。
【0069】
次に、本実施の形態によるデバイス製造装置10で製造可能な電子デバイスについて、いくつかの例を挙げて説明する。
【0070】
[PIN型シリコン薄膜太陽電池]
図8は、PIN型シリコン薄膜太陽電池の製造工程を模式的に示す断面図である。
まず、図8(A)に示すように、蒸着装置118において、透明基板331上にスパッタ法等で透明電極332を形成する。
【0071】
次に、図8(B)に示すように、塗布装置102において透明電極332上に、シリコン前駆体生成装置113で生成されたP型ドープシリコン前駆体溶液を塗布し、焼成装置125において300℃で焼成することにより、30nmの厚さのP型ドープシリコン膜333を形成する。P型ドープシリコン膜333の厚さは10nm以上100nm以下が望ましい。
【0072】
次に、図8(C)に示すように、塗布装置102において、P型ドープシリコン膜333上に、シリコン前駆体生成装置113でシクロペンタシランに紫外線を当てて生成されたノンドープのシリコン前駆体ポリマーを有機溶媒に溶かしたものを塗布し、焼成装置125において300℃で焼成することにより、500nmの厚さのI型アモルファスシリコン膜334を形成する。I型アモルファスシリコン膜334の厚さは200nm以上1μm以下が望ましい。
【0073】
次に、図8(D)に示すように、塗布装置102において、I型アモルファスシリコン膜334上に、シリコン前駆体生成装置113において黄燐とシクロペンタシランを混合したものに紫外線を照射して得られたN型ドープシリコン前駆体を有機溶媒に溶かしたものを塗布し、焼成装置125において300℃で焼成することにより、N型アモルファスシリコン膜335を形成する。N型アモルファスシリコン膜335の厚さは10nm以上100nm以下が望ましい。
【0074】
最後に、図8(E)に示すように、蒸着装置118において、N型アモルファスシリコン膜335上に、アルミニウムをスパッタ法等で製膜して電極336を形成することにより、PIN型シリコン薄膜太陽電池が得られる。
【0075】
[HIT型太陽電池]
図9は、HIT型太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。図9を用いて、HIT型太陽電池の製造方法について説明する。
まず、塗布装置102において、N型シリコン基板70に、シリコン前駆体生成装置113で生成されたノンドープのシリコン前駆体ポリマーを有機溶媒に溶かしたものをスピンコート法等で塗布し、焼成装置125において300℃で焼成することにより、7nmの厚さのI型アモルファスシリコン膜71を形成する。I型アモルファスシリコン膜71の厚さは5nm以上10nm以下が望ましい。N型シリコン基板70は、集光効率の良いテクスチャー構造を有するものを使用することが望ましい。
【0076】
次に、塗布装置102において、I型アモルファスシリコン膜71の上に、シリコン前駆体生成装置113で生成されたP型ドープシリコン前駆体溶液をスピンコート法等で塗布し、焼成装置125において300℃で焼成することにより、30nmの厚さのP型ドープシリコン膜72を形成する。P型ドープシリコン膜72の厚さは10nm以上100nm以下が望ましい。
【0077】
次に、蒸着装置118において、P型ドープシリコン膜72上に、スパッタ法等で透明電極73を形成し、透明電極73の上にアルミニウムで補助電極75を形成する。また、N型シリコン基板70の裏面にはアルミニウムの電極74をスパッタ法等で形成する。なお、補助電極75は、蒸着法、スパッタ法、CVD法、導電性テープや金属微粒子などの液体材料による電極形成、無電解メッキ、電解メッキなどの方法で形成することができる。
【0078】
[pn接合型太陽電池]
図10は、pn接合型太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。図10を用いて、pn接合型太陽電池の製造方法について説明する。
まず、塗布装置102において、N型シリコン基板80に、シリコン前駆体生成装置113で生成したP型ドープシリコン前駆体溶液をスピンコート法等で塗布し、焼成装置125において300℃で焼成することにより、30nmの厚さのP型ドープシリコン膜81を形成する。P型ドープシリコン膜81の厚さは10nm以上100nm以下が望ましい。N型シリコン基板80は、集光効率の良いテクスチャー構造を有するものを使用することが望ましい。
【0079】
次に、蒸着装置118において、P型ドープシリコン膜81上に、スパッタ法等で透明電極82を形成し、透明電極82の上にアルミニウムで補助電極84を形成する。N型シリコン基板80の裏面にはアルミニウムの電極83をスパッタ法等で形成する。なお、補助電極84は、蒸着法、スパッタ法、CVD法、導電性テープや金属微粒子などの液体材料による電極形成、無電解メッキ、電解メッキなどの方法で形成することができる。
【0080】
[薄膜トランジスタ]
図11は、薄膜トランジスタの製造工程を模式的に示す断面図である。
まず、図11(A)に示すように、塗布装置102において、ガラス基板などの絶縁性基板411の上に、シリコン前駆体生成装置113で生成したノンドープのシリコン前駆体ポリマーを有機溶媒に溶かしたものを所望の形状に塗布する。次いで、焼成装置125において300℃で30分間加熱(焼成)し、真性半導体であるI型シリコン膜412を形成する。I型シリコン膜412はアモルファスシリコン膜でもよいが、焼成後にエキシマレーザー光を照射または700℃以上で加熱して結晶化し、多結晶シリコン膜としてもよい。
【0081】
次に、図11(B)に示すように、塗布装置102において、シリコン前駆体生成装置113で生成したP型ドープシリコン前駆体溶液をI型シリコン膜412上の両端に塗布し、焼成装置125において300℃で焼成することにより、P型ドープシリコン膜413を形成する。
【0082】
次に、図11(C)に示すように、蒸着装置118において、P型ドープシリコン膜413を覆うようにゲート絶縁膜414を形成する。さらに、図11(D)に示すように、蒸着装置118においてゲート絶縁膜414上にタンタル(Ta)などの導電性膜を堆積し、パターニングすることによりゲート電極415を形成する。
【0083】
次に、図11(E)に示すように、ゲート電極415を覆うように層間絶縁膜416を形成する。さらに、図11(F)に示すように、層間絶縁膜416の一部を除去してコンタクトホールC1を形成する。さらに、図11(G)に示すように、コンタクトホールC1の内部およびその上部にアルミニウムAlなどの導電性膜よりなる配線(ソース電極およびドレイン電極)M1を形成する。配線M1は、例えばスパッタリング法などを用いて導電性膜を成膜した後、導電性膜をパターニングすることにより形成することができる。
【0084】
上記実施の形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0085】
10 デバイス製造装置、101 グローブボックス、102 塗布装置、103 酸素フィルター、104 排気シャッター、105 排気口、106 ホットプレート、107 塗布膜焼成室、108 不活性ガス注入口、109 ガス流量計、110 ドライポンプ、111 真空ライン、112 搬送チャンバー、113 シリコン前駆体生成装置、114 インクライン、115 i型用インクタンク、116 p型用インクタンク、117 n型用インクタンク、118 蒸着装置、119 ドーパントガス供給ライン、120 ガスクロマトグラフィー、121 ゲルクロマトグロフィー、122 サンプル注入口、123 搬送ロボットアーム、124 ゴム製グローブ、125 焼成装置、126 待機エリア、127 シラン化合物タンク、151 アライメントカメラ、152 排気ライン、153 支柱、154 レール、201 第1の光ファイバー、202 第2の光ファイバー、203 囲い、204 石英容器、206 ベルトコンベア、207 シリンジ、210 インクライン、211 ガイド構造、212 ロボットアーム、213 ドーパントガス供給ライン、214 排気ライン、215 有機溶媒注入ライン、216 攪拌子、217 第1の光源、218 第2の光源、219 流量計、220 シラン化合物注入ライン、403 インクジェットヘッド、405 基板ホルダー、406 アライメントマーク、407 アライメントカメラ、408 基板台座、409 吸引口、410 基板押し上げ棒、500 シクロペンタシラン溶液、502 塗布膜、600 基板、601 基板ホルダー、701 排気口、702 基板押し上げ棒、70 N型シリコン基板、71 I型アモルファスシリコン膜、72 P型ドープシリコン膜、73 透明電極、74 電極、75 補助電極、80 N型シリコン基板、81 P型ドープシリコン膜、82 透明電極、83 電極、84 補助電極、331 透明基板、332 透明電極、333 P型ドープシリコン膜、334 I型アモルファスシリコン膜、335 N型アモルファスシリコン膜、411 絶縁性基板、412 I型シリコン膜、413 P型ドープシリコン膜、414 ゲート絶縁膜、415 ゲート電極、416 層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン化合物を含む溶液に光を照射する光照射部と、前記シラン化合物を含む溶液にドーパントとなる元素を含むガスを供給するガス供給部を備え、前記シラン化合物を含む溶液に、前記光を照射しながら前記ドーパントとなる元素を含むガスを供給することにより、前記シラン化合物の重合体にドーパントが結合したシリコン前駆体を生成するシリコン前駆体生成部と、
前記シリコン前駆体を含む溶液を基板に塗布する塗布部と、
前記シリコン前駆体を焼成することにより、前記基板上にシリコンを形成する焼成部と、を備えたシリコン製造装置。
【請求項2】
前記光照射部は、前記ドーパントとなる元素をラジカル化するための第1の波長の光と、前記シラン化合物をラジカル化するための第2の波長の光を照射することを特徴とする請求項1に記載のシリコン製造装置。
【請求項3】
前記ガス供給部は、前記ドーパントとなる元素を含むガスとして、常温常圧で気体である第13族元素の化合物を含むガスを供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコン製造装置。
【請求項4】
前記シリコン前駆体生成部、前記塗布部、及び前記焼成部が不活性ガスを含む雰囲気中に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシリコン製造装置。
【請求項5】
前記塗布部から前記焼成部に前記基板を移動させる搬送手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシリコン製造装置。
【請求項6】
前記塗布部は、インクジェット法により前記シリコン前駆体を含む溶液を基板に塗布することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシリコン製造装置。
【請求項7】
前記焼成部は、焼成中に不活性ガスを導入できることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシリコン製造装置。
【請求項8】
シラン化合物を含む溶液に光を照射する光照射部と、前記シラン化合物を含む溶液にドーパントとなる元素を含むガスを供給するガス供給部を備え、前記シラン化合物を含む溶液に、前記光を照射しながら前記ドーパントとなる元素を含むガスを供給することにより、前記シラン化合物の重合体にドーパントが結合したシリコン前駆体を生成するシリコン前駆体生成部と、
前記シリコン前駆体を基板に塗布する塗布部と、
前記シリコン前駆体を焼成することにより、前記基板上にシリコンを形成する焼成部と、
前記シリコンに電極を形成する電極形成部を備えた電子デバイス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−258012(P2010−258012A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102769(P2009−102769)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】