説明

シロキサンハイブリッド樹脂、同樹脂を含む硬化性樹脂組成物、同組成物を含む光半導体素子封止用組成物ならびに光半導体素子接着剤用組成物

【課題】高い光透過率と高い安定性と、機械的及び耐熱、耐UV性において優れた硬化物を与えるシロキサンハイブリッド樹脂及びそれを含有する樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(a)多官能アルコール化合物と(b)有機アルコキシシランとのアルコール交換反応によって製造されてなる末端アルコキシシリル基を有するシロキサンハイブリッド樹脂、前記(a)と(b)にさらに(c)シラノール基またはアルコール性水酸基を持つシロキサン化合物を加えてアルコール交換反応させてなるシロキサンハイブリッド樹脂、ならびに前記末端アルコキシシリル基を有するシロキサンハイブリッド樹脂を含む熱または光硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能性シロキサンハイブリッド樹脂、同樹脂を必須成分とし、光学特性、硬化性および耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物に関し、特にLEDのような光半導体素子の封止および接着剤に適した硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばLED等の光半導体素子を封止するために、透明エポキシ樹脂組成物が広く用いられている。これらの透明エポキシ樹脂組成物は、脂環式エポキシ樹脂、硬化剤および硬化触媒を含有してなり、キャスティング成形、トランスファー成形などの成形方法により光半導体素子を封止するために用いられる。一般的にエポキシ樹脂組成物は、硬化物の硬度が高いため、ハンドリング性に優れており、たとえば、低出力の白色LED用封止用途では、必要な耐久性が得られることから、低出力用途において多く用いられている。
しかし、近年LEDがますます高輝度化、高出力化するのに伴い、従来の透明エポキシ樹脂組成物の硬化物では、波長の短い青色光や紫外線による連続使用で変色し、十分な寿命を得ることが難しい。また、点灯および消灯に伴う急激な温度変化の繰り返しなどで硬化物にクラックが発生する問題が生じている。
最近では、これらの問題を解決するためにエポキシ樹脂に替わって、耐候性に優れるシリコーン樹脂をベースにした樹脂組成物で硬化されたLEDが使用されるようになってきている。ヒドロキシシリル基とオレフィンの付加反応による光デバイス又は半導体デバイスの保護封止用付加硬化型シリコーン組成物(特許文献1)や、エポキシ基を有するシリコーン樹脂を、硬化剤を用いて硬化させて得られる樹脂組成物(特許文献2〜8)の報告がなされている。
しかし、シリコーン樹脂やシリコーンを主鎖に持つエポキシ樹脂の多くは、シリコーン骨格に由来する高い可撓性を持つ反面、硬化物の硬度が低く表面にべたつきを生じやすいことや、強度が低い短所を有している。また、硬度の高いシリコーン骨格を有する樹脂は、ハンドリング性は改善されているが、耐候性や点灯および消灯に伴う急激な温度変化の繰り返しによるクラックの問題が解決されていなかった。
このように、耐候性に優れるシリコーン樹脂をベースにしても、経済性とLED封止剤に要求される特性を共に満足しているものは得られておらず、十分な硬度を有し、耐候性に優れ、従来のエポキシ樹脂と同様なハンドリング性、量産性を有する材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−1989308(特許3523098)号公報
【特許文献2】特開2005−343998(特許4198091)号公報
【特許文献3】特開2008−248170号公報
【特許文献4】特開2009−203258号公報
【特許文献5】特開2010−6956号公報
【特許文献6】特開2010−53204号公報
【特許文献7】特開2010−65161号公報
【特許文献8】特開2010−138380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これらの現状の課題を解決するために、硬化物の耐熱光透過率、耐UV透過率が良好で、表面にべたつきがなく硬度が十分で、貯蔵安定性が良好で、かつ、ハンドリングが良好な硬化性樹脂組成物、同樹脂を与えるシロキサンハイブリッド樹脂、ならびに、光半導体素子封止用および接着剤用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、多官能アルコールと有機アルコキシシランとのアルコール交換反応、および多官能アルコールと有機アルコキシシランと末端にシラノールまたはアルコール性水酸基を有するシロキサン化合物とのアルコール交換反応により製造されるシロキサンハイブリッド樹脂を含有する光または熱硬化性組成物がLED封止用および接着剤に適した硬化物を与えることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下
(1)(a)多官能アルコール化合物と(b)有機アルコキシシランとのアルコール交換反応によって製造されてなる末端アルコキシシリル基を有するシロキサンハイブリッド樹脂、
(2)(a)多官能アルコール化合物と(b)有機アルコキシシラン、および(c)シラノール基またはアルコール性水酸基を持つシロキサン化合物とのアルコール交換反応によって製造されてなる末端アルコキシシリル基を有するシロキサンハイブリッド樹脂、
(3)前記末端アルコキシシリル基を下記化学式(1)または(2)
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

【0008】
(式中、R1は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜10の鎖状もしくは環状の脂肪族炭化水素基またはフェニル基を示し、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基及び炭素数5〜20のアリール基からなる群から選択されるいずれか1種であって、アクリル基、メタクリル基、アリル基、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、スルホン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シクロブテン基、カルボニル基、カルボキシル基、ウレタン基、ビニル基、ニトリル基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有していてもよい)
で表される化合物で末端封止してなる上記(1)または(2)に記載のシロキサンハイブリッド樹脂、
(4)前記(a)多官能アルコール化合物が、脂肪族環状構造または複素環構造を含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシロキサンハイブリッド樹脂、
(5)前記複素環構造が下記化学式(3)
【0009】
【化3】

【0010】
で表される骨格を有する上記(4)に記載のシロキサンハイブリッド樹脂、
(6)前記(b)有機アルコキシシランが、下記化学式(4)
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、R4は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基及び炭素数5〜20のアリール基からなる群から選択されるいずれか1種であって、アクリル基、メタクリル基、アリル基、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、スルホン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シクロブテン基、カルボニル基、カルボキシル基、ウレタン基、ビニル基、ニトリル基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有していてもよく、R5は、それぞれ独立した炭素数1〜3の炭化水素基を示す)
で表される化合物から選択される1種または2種以上の化合物の混合物である上記(1)または(2)に記載のシロキサンハイブリッド樹脂、
(7)前記有機アルコキシシランが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、プロピルエチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アクリルオキシプロピルメチルビス(トリメトキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、N−(アミノエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル−3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、及びヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランからなる群から選択される1種または2種以上の混合物である上記(6)に記載のシロキサンハイブリッド樹脂、
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のシロキサンハイブリッド樹脂に熱硬化可能な官能基または光硬化可能な官能基を有するモノマー、および熱硬化用触媒または光硬化用触媒添加してなる熱または光硬化性樹脂組成物、
(9)上記(8)に記載の熱または光硬化性樹脂組成物を含む光半導体素子封止用組成物および
(10)上記(8)に記載の熱または光硬化性樹脂組成物を含む光半導体素子接着剤用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明のシロキサンハイブリッド樹脂を含有するLED封止用および接着剤用樹脂組成物は、無機成分と有機成分とが、分子のレベルで均一に混合されている。その結果、高い光透過率と高い安定性と、硬化性、耐熱性、耐UV透過率において優れている。
また、前記シロキサンハイブリッド樹脂に各種有機基または有機官能基を付与することができるので、樹脂組成物ならびにその硬化物において、多様な物性を有するように調節することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂は、ゾル・ゲル反応によって製造される。特に本発明のシロキサンハイブリッド樹脂は、多官能アルコールと有機アルコキシシランとのアルコール交換反応、または、多官能アルコールと有機アルコキシシランおよび末端にシラノールまたはアルコール性水酸基を有するシロキサン化合物とのアルコール交換反応によって製造される。
即ち、多官能アルコールのアルコール性水酸基と有機アルコキシシランのアルコキシシリル基との脱アルコール反応により有機と無機の結合を形成し、ハイブリッド樹脂を製造することができる。また、多官能アルコールのアルコール性水酸基と末端にシラノールまたはアルコール性水酸基を有するシロキサン化合物のシラノール基またはアルコール性水酸基が有機アルコキシシランのアルコキシシリル基と脱アルコール反応することにより有機と無機の結合を形成し、ハイブリッド樹脂を製造することができる。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂の一方の成分である(a)多官能アルコール化合物は、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、グリセリン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−プロパンジオール、1,5−プロパンジオール、1,6−プロパンジオール等が挙げられる。これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
(a)多官能アルコール化合物は脂肪族環状構造を有していても良く、このような化合物としては、例えば1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、1,3,5−シクロヘキサントリオール、1,2,3−シクロヘキサントリオール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−アダマンタンジメタノール、1,3,5−アダマンタントリオール等が挙げられる。これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
さらに、(a)多官能アルコール化合物は複素環構造を有していても良く、このような化合物としては、下記化学式(3)
【0016】
【化5】

【0017】
で表される骨格を有する化合物が挙げられ、本発明においては特に好ましく用いられる。
上記化学式(3)において、Nから外側に出ている結合手はメチル基を表わすのではなく、水素原子やヒドロキシアルキル基等が結合する。
具体的には、例えば、シアヌル酸、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等のイソシアヌル酸誘導体が挙げられる。これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
【0018】
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂のもう一方の成分である(b)有機アルコキシシランは、下記化学式(4)の構造
【0019】
【化6】

【0020】
を有し、少なくとも1つのアルコキシ基と官能基が置換された有機鎖、または官能基が置換されていない有機鎖を有する。
化学式(4)中、R4は、炭素数1〜20のメチル基のようなアルキル基、炭素数3〜8のシクロヘキシル基のようなシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のビニル基のようなアルケニル基、炭素数2〜20のアセチニル基のようなアルキニル基及び炭素数5〜20のフェニル基のようなアリール基からなる群から選択されるいずれか1種の基であって、アクリル基、メタクリル基、アリル基、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、スルホン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シクロブテン基、カルボニル基、カルボキシル基、ウレタン基、ビニル基、ニトリル基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有していてもよい。
5は、それぞれ独立した炭素数1〜3の炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、n−プロペニル基、イソプロペニル基等が挙げられる。
【0021】
成分(b)の有機アルコキシシランの具体例としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、プロピルエチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アクリルオキシプロピルメチルビス(トリメトキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタアクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、N−(アミノエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル−3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、及びヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
【0022】
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂は上記成分(a)と成分(b)との反応により製造することができるが、さらに成分(c)として末端にシラノール基またはアルコール性水酸基を有するシロキサン化合物を使用して製造することができる。
成分(c)のシロキサン化合物としては、例えば、下記化学式(5)または化学式(6)で示す化合物を使用することができる。
【0023】
【化7】

【0024】
化学式(5)中、R6はそれぞれ独立に炭素数1〜10の鎖状の脂肪族炭化水素基もしくは炭素数3〜8の環状の脂肪族炭化水素基またはフェニル基を示し、nは1〜25を示す。粘度およびハンドリングのしやすさの観点からnは好ましくは1〜20である。
炭素数1〜10の鎖状の脂肪族炭化水素基としては、メチル基やエチル基等の鎖状アルキル基が挙げられ、炭素数3〜8の環状の脂肪族炭化水素基としてはシクロペンチル基やシクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0025】
【化8】

【0026】
化学式(6)中、R7はそれぞれ独立に炭素数1〜10の鎖状の脂肪族炭化水素基もしくは炭素数3〜8の環状の脂肪族炭化水素基またはフェニル基を示し、R8は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、mは1〜20を示す。
7の炭素数1〜10の鎖状の脂肪族炭化水素基および炭素数3〜8の環状の脂肪族炭化水素基としては前記R6の説明で挙げたものが挙げられる。
8の炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基は枝分かれしているものでも良い。
成分(c)を使用すると、シリコーン骨格に由来する可撓性を付与できるため、耐クラック性を向上するので好ましい。
成分(c)の使用量は当量比で〔成分(a)+成分(c)〕/成分(b)=0.1〜0.6、好ましくは0.2〜0.4である。成分(a)/成分(c)=0.5〜100、好ましくは
1〜10である。
化学式(5)または(6)で表わされる具体的化合物としては、水酸基を一分子中に2個有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンは、たとえば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、およびジメチルジ−n−ブトキシシラン等のジメチルジアルコキシシランまたはジメチルジクロロシランを加水分解および縮合させることによって製造することができる。また、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンは、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、テチラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状オルガノシロキサンを開環縮合させることによっても製造することができる。
また、これら水酸基を一分子中に2個有するポリシロキサン化合物は市販のものを使用することができ、例えば、両末端カルビノール変性シロキサン化合物〔信越化学工業(株)製、X−22−160AS〕やモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンであるXC96−723、XF3905、YF3057、YF3800、YF3802、YF3807、YF3897、チッソ社製のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンであるFM9915などが挙げられる。
【0027】
なお、上記のような成分(a)/成分(b)または〔成分(a)+成分(c)〕/成分(b)ならびに成分(a)/成分(c)の当量比で反応を行うと生成物中にアルコキシシリル基を有する未反応の成分(b)がかなりの量残存し、また、ハイブリッド樹脂末端に未反応のアルコキシシリル基が存在するので、これらのアルコキシシリル基をこのままにして硬化反応時に使用して硬度の高い硬化物を作製することも可能だが、未反応の成分(b)中のアルコキシシリル基またはハイブリッド樹脂末端の未反応のアルコキシシリル基が存在すると、貯蔵安定性が悪くなることがある。そのため、この未反応のアルコキシシリル基を末端封止剤で封止することが好ましい。
本発明で用いられる末端封止剤として化学式(1)または化学式(2)に示す化合物を使用することができる。
【0028】
【化9】

【0029】
【化10】

【0030】
化学式(1)中、R1は炭素数1〜3の炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、n-プロペニル基、イソプロペニル基またはビニル基である。
化学式(1)または(2)中、R2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の鎖状の脂肪族炭化水素基もしくは炭素数3〜8の環状の脂肪族炭化水素基またはフェニル基を示す。炭素数1〜10の鎖状の脂肪族炭化水素基としては、メチル基やエチル基等のアルキル基、アリル基、n-プロペニル基、イソプロペニル基またはビニル基のようなアルケニル基が挙げられる。炭素数3〜8の環状の脂肪族炭化水素基としては、シクロペンチル基やシクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
化学式(2)中のR3は水素原子、炭素数1〜20のメチル基のようなアルキル基、炭素数3〜8のシクロヘキシル基のようなシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のビニル基のようなアルケニル基、炭素数2〜20のアセチニル基のようなアルキニル基及び炭素数5〜20のフェニル基のようなアリール基からなる群から選択されるいずれか1種の基であって、アクリル基、メタクリル基、アリル基、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、スルホン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シクロブテン基、カルボニル基、カルボキシル基、ウレタン基、ビニル基、ニトリル基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有していてもよい。
【0031】
前記化学式(1)または(2)で表わされる化合物の具体例としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(p−カルボキシフェニル)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
末端封止剤を投入するタイミングは、本発明の範囲および効果を損なわない限り特に制限されない。末端封止剤は、好ましい粘度、分子量に到達するまでアルコール交換反応(縮合反応)を行ってから系内に投入しても良いし、分子量を調整する目的で縮合反応中に一部を投入した後、最後に残りを投入する形態を取っても良い。
【0032】
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂の製造において、縮合反応および末端封止反応は無溶媒で行うことができるが、反応制御の観点から、反応に悪影響を与えない希釈溶媒を用いることができる。
使用できる希釈溶媒は、アルコール性水酸基を持たない等、縮合反応に関与しないこと以外には特に制限されない。この希釈溶媒として、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどの脂肪族ケトン類、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの脂肪族アミド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。これらは単独、もしくは2種類以上混合して使用することができる。
【0033】
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂の製造における縮合反応および末端封止反応における反応温度については特に制限されないが、通常20〜150℃、好ましくは40〜100℃である。20℃以上とすることにより反応が良好に進行し、一方、150℃以下とすることにより反応の制御を容易に行うことができ、ゲル化や着色することを防止することができる。
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂の製造における縮合反応および末端封止反応には、反応を促進させるために触媒を使用することができる。使用可能な触媒として、一般的にシロキサンの縮合反応に使用する公知の触媒であれば特に制限されない。使用できる触媒としては、酸触媒、塩基触媒、スズ触媒、チタン触媒等が挙げられる。
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、蟻酸、リン酸等、およびその誘導体が挙げられる。
塩基触媒としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、p−ジメチルアミノエタノール等のアミン類、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸水素ストロンチウム等の炭酸金属塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化金属塩等が挙げられる。
スズ触媒としては、例えば、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ネオデカノエート)スズ、ジ−n−ブチルビス(2−エチルヘキシルマレート)スズ、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−n−ブチルブトキシクロロスズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−n−ブチルジラウリン酸スズ、ジメチルジネオデカノエートスズ、ジメチルヒドロキシ(オレエート)スズ、ジオクチルジラウリン酸スズ等が挙げられる。
チタン触媒としては、例えば、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラステアリルチタネート、トリエタノールアミンチタネートなどの有機チタネート化合物が挙げられる。
これらの触媒は、モノマー成分(a)、(b)、(c)合計のの0.0001〜10モル%添加することが好ましい。0.0001モル%以上とすることにより、適度な反応速度を確保することができ、10モル%以下とすることにより、反応時にゲル化したり着色の原因になったりするのを抑制することができる。
縮合反応および末端封止反応によって製造されたシロキサンハイブリッド樹脂を主成分とする生成物中には、副生成物としてアルコールが存在する。このアルコールは、大気圧または減圧下0〜120℃程度の温度で加熱して除去することができる。特に、0.01〜0.05MPaの圧力下、40〜100℃程度の温度で加熱することが好ましい。
【0034】
次に、本発明のシロキサンハイブリッド樹脂を含む熱または光硬化性樹脂組成物について説明する。
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂を含む熱または光硬化性樹脂組成物は、シロキサンハイブリッド樹脂と、硬化剤、必要に応じて硬化剤との反応に有効な硬化促進剤または硬化触媒、その他添加剤を配合することにより製造することができる。これらの樹脂組成物は、熱または光処理を施すことで、透明性に優れた硬化物を与える。
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂は、熱硬化の可能な官能基または光硬化の可能な官能基を含有している。熱硬化の可能な官能基または光硬化の可能な官能基を含有するシロキサンハイブリッド樹脂を製造するためには、成分(b)の有機アルコキシシランの有機基が熱硬化可能な官能基または光硬化可能な官能基を有していなければならない。前記熱硬化可能な官能基または光硬化可能な官能基は、例えば、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基、アミノ基、ヒドロキシ基などである。
【0035】
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂の熱硬化可能な官能基または光硬化可能な官能基がエポキシ基の場合、例えば熱硬化では、一般的に使用されるアミン系硬化剤、酸無水物硬化剤を使用することができるが、光透過性、耐熱性などから酸無水物硬化剤が望ましい。酸無水物硬化剤としては、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などが挙げられる。
また、これらの硬化剤と硬化触媒を併用して使用することができる。硬化触媒としては、例えば、トリフェニルフォスフィン、ジフェニルフォスフィン等の有機フォスフィン系硬化触媒、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン系硬化触媒、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0036】
また、熱カチオン硬化触媒や光カチオン硬化触媒を添加して熱硬化、光硬化とすることができる。熱カチオン硬化触媒として、例えば、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドなどが挙げられる。
光カチオン硬化触媒としては、例えば、スルホニウム塩系やヨウドニウム塩系が挙げられる。スルホニウム塩系の例としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどが挙げられ、ヨードニウム塩系の例として、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂の熱硬化可能な官能基または光硬化可能な官能基がアクリル基、メタクリル基の場合、これらの硬化触媒として、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0037】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物、および過酸化水素が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、光反応開始剤として紫外線中のi線(365nm)、g線(436nm)において効率よく反応性ラジカルを発生させるものであれば特に限定されない。このような化合物として例えば、ベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類、ベンゾイン等のアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン2,4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンなどのアセトフェノン類、アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類、2,6’−ジ(4’−ジアジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6’−ジ(4’−ジアジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6’−(4’−ジアジドベンザル)−4−エチルシクロヘキサノン、2,6’−(4’−ジアジドベンザル)−4−ブチルシクロヘキサノン、2,6’−(4’−ジアジドベンザル)−4−(t−ブチル)シクロヘキサノン等のアジド類、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N−フェニルグリシン、N−(P−エチル)フェニルグリシン、N−(P−エチル)フェニルグリシン等のグリシン誘導体、フェナシルクロライド、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのハロゲン化合物、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの過酸化物などが挙げられる。
【0038】
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂の熱硬化可能な官能基または光硬化可能な官能基がビニル基、アリル基の場合、熱ラジカル重合開始剤を使用して硬化させることができる。
また、硬化剤としてヒドロシリル基を官能基としてもつシラン化合物やシロキサン化合物を使用することができる。この場合、硬化触媒として、例えば、白金、ロジウム、ルテニウムおよびパラジウムを含む遷移金属触媒を使用することができる。中でも白金を含む触媒が好ましく、例えば、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金−オクチルアルデヒド/オクタノール錯体を用いることができる。
また、本発明の有機シロキサンハイブリッド樹脂が熱硬化可能な官能基または光硬化可能な官能基を有する場合、熱硬化可能な官能基または光硬化可能な官能基を有するモノマーを使用することができる。これらのモノマーは単独で、もしくは2種類以上混合して使用することができる。これらのモノマーを添加することによって、シロキサンハイブリッド樹脂の密度、自由体積、基板との接着力、屈折率などを調節することができる。
【0039】
本発明の熱硬化可能な官能基または光硬化可能な官能基を包含するシロキサンハイブリッド樹脂が、熱硬化または光硬化する段階を経る場合、前記段階を経た後に、熱処理段階を経ることができる。前記熱処理段階においては、180℃以下、具体的には、50〜180℃で実施することができる。前記熱処理段階は、150℃以下、具体的には50〜150℃で実施することが好ましい。前記熱処理段階の温度が高すぎると有機官能基間の結合鎖を破壊することがあり、低すぎると、硬化反応が十分に進行しない場合がある。
本発明の樹脂組成物には、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤を添加することで、長時間の高温環境下に曝された際の硬化物の着色を低減させることができる。酸化防止剤としては、ヒンダートフェノール系酸化防止剤やチオエーテル化合物系酸化防止剤のような公知の種々の化合物を適用できる。
【0040】
ヒンダートフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−tert−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのモノフェノール類、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0041】
チオエーテル化合物系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
また、リン原子を含有する酸化防止剤を併用することもできる。例えば、トリフェニルフォスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどが挙げられる。
【0042】
これらの酸化防止剤は単独で使用することもできるが、複数を併用して使用することもできる。添加量は特に制限されないが、樹脂組成物に対して0.001〜20質量%程度、好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加すると着色を低減させることができる。
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂組成物は、さらに、染料、顔料、界面活性剤、酸化物ナノ粒子、窒化物ナノ粒子、防染剤、金属充填剤及び耐熱剤などの添加剤をさらに含有することができる。また、硬化を損なわない程度であれば、溶媒や反応性希釈剤等を使用して、粘度の調整や、ハンドリング性を向上させることも可能である。
本発明によって製造されたLED封止用および接着剤用シロキサンハイブリッド樹脂を使用することのできるLEDは、例えば、発光効率が高く、波長の短い最近のLEDのみならず、化合物半導体GaP、化合物半導体GaAs及び化合物半導体GaNで作製された赤色LED、緑色LED及び黄色LEDを挙げることができる。
このように本発明によって製造されたLED封止用シロキサン樹脂は、既存のLED封止用にも使用することができるとともに、最近開発されている青色、または紫外線領域の波長で発光効率80lm/W以上の高効率LEDに最適な樹脂である。
上記のようにして調製された本発明のシロキサンハイブリッド樹脂を含む組成物は光半導体素子封止用組成物ならびに光半導体素子接着剤用組成物として使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>
温度計、冷却管、窒素導入管、撹拌翼のついた500ミリリットルの4つ口セパラブルフラスコに成分(a)としてイソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)〔四国化成(株)製、商品名:"セイク"〕を17.0質量部(0.065モル)、成分(b)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、製品番号:KBM−403〕を77.1質量部(0.33モル)、トルエンを200質量部投入し、常温で撹拌した。そこへジブチルスズジラウレート〔和光純薬(株)製〕を0.025質量部添加し、マントルヒーターを用いて80℃に加温し、そのまま5時間撹拌を続けた。反応系内にメタノールが生成していることを確認した後、80℃に保持したまま0.01MPaに減圧してメタノールを除去した。
次いで、末端封止剤としてヘキサメチルジシロキサン〔東京化成工業(株)製〕を105.9質量部(0.65モル)、5%リン酸水溶液を11.7質量部投入し、50℃で3時間撹拌した。未反応のヘキサメチルジシロキサンと副生成物として出てきたメタノールおよびトルエンならびにリン酸水溶液由来の水を除去するために、120℃で0.01MPaに減圧し、ハイブリッド樹脂Aを得た。
【0045】
<実施例2>
実施例1と同じフラスコに"セイク"を14.8質量部(0.057モル)、KBM−403を66.9質量部(0.28モル)、成分(c)として両末端カルビノール変性シロキサン化合物〔信越化学工業(株)製、製品番号:X−22−160AS〕を26.4質量部(0.028モル)、トルエンを200質量部投入し、常温で撹拌した。そこへジブチルスズジラウレート(同上)を0.025質量部添加し、マントルヒーターを用いて80℃に加温し、そのまま5時間撹拌を続けた。反応系内にメタノールが生成していることを確認した後、80℃に保持したまま0.01MPaに減圧してメタノールを除去した。
次いで、ヘキサメチルジシロキサン(同上)を91.9質量部(0.57モル)、5%リン酸水溶液を10.2質量部投入し、50℃で3時間撹拌した。未反応のヘキサメチルジシロキサン等を実施例1と同様に除去してシロキサンハイブリッド樹脂Bを得た。
【0046】
<実施例3>
実施例1と同じフラスコに"セイク"を19.9質量部(0.076モル)、ビニルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、製品番号:KBM−1003〕を56.4質量部(0.38モル)、トルエンを200質量部投入し、常温で撹拌した。そこへ実施例1と同じジブチルスズジラウレート(同上)を0.025質量部添加し、マントルヒーターを用いて80℃に加温し、そのまま5時間撹拌を続けた。反応系内にメタノールが生成していることを確認した後、80℃に保持したまま0.01MPaに減圧してメタノールを除去した。
次いで、ヘキサメチルジシロキサン(同上)123.7質量部(0.76モル)、5%リン酸水溶液を13.7質量部投入し、50℃で3時間撹拌した。未反応のヘキサメチルジシロキサン等を実施例1と同様に除去してシロキサンハイブリッド樹脂Cを得た。
【0047】
<実施例4>
実施例1と同じフラスコに"セイク"を15.7質量部(0.060モル)、KBM−1003を44.5質量部(0.30モル)、両末端カルビノール変性シロキサン化合物(同上)を28.0質量部(0.030モル)、トルエンを200質量部投入し、常温で撹拌した。そこへジブチルスズジラウレート(同上)を0.025質量部添加し、マントルヒーターを用いて80℃に加温し、そのまま5時間撹拌を続けた。反応系内にメタノールが生成していることを確認した後、80℃に保持したまま0.01MPaに減圧してメタノールを除去した。
次いで、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン〔東京化成工業(株)製〕118.9質量部(0.60モル)、5%リン酸水溶液を10.8質量部投入し、50℃で3時間撹拌した。未反応の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン等を実施例1と同様に除去してシロキサンハイブリッド樹脂Dを得た。
【0048】
<実施例5>
実施例1と同じフラスコに1,3-アダマンタンジオール〔東京化成工業(株)製〕を11.3質量部(0.067モル)、KBM−403を79.5質量部(0.34モル)、トルエンを200質量部投入し、常温で撹拌した。そこへジブチルスズジラウレート(同上)を0.025質量部添加し、マントルヒーターを用いて80℃に加温し、そのまま5時間撹拌を続けた。反応系内にメタノールが生成していることを確認した後、80℃に保持したまま0.01MPaに減圧してメタノールを除去した。
次いで、ヘキサメチルジシロキサン(同上)109.2質量部(0.67モル)、5%リン酸水溶液を12.1質量部投入し、50℃で3時間撹拌した。未反応のヘキサメチルジシロキサン等を実施例1と同様に除去してシロキサンハイブリッド樹脂Eを得た。
【0049】
<実施例6>
実施例1と同じフラスコに1,3-アダマンタンジオール〔東京化成工業(株)製〕を9.78質量部(0.058モル)、KBM−403を68.7質量部(0.29モル)、両末端カルビノール変性シロキサン化合物(同上)を27.1質量部(0.029モル)、トルエンを200質量部投入し、常温で撹拌した。そこへジブチルスズジラウレート(同上)を0.025質量部添加し、マントルヒーターを用いて80℃に加温し、そのまま5時間撹拌を続けた。反応系内にメタノールが生成していることを確認した後、80℃に保持したまま0.01MPaに減圧してメタノールを除去した。
次いで、ヘキサメチルジシロキサン(同上)94.4質量部(0.58モル)、5%リン酸水溶液を10.5質量部投入し、50℃で3時間撹拌した。未反応のヘキサメチルジシロキサン等を実施例1と同様に除去してシロキサンハイブリッド樹脂Fを得た。
【0050】
<実施例7〜12、比較例1、2>
実施例1〜6で得られたハイブリッド樹脂A〜Fに、各々下記表1に示すエポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒または硬化促進剤を配合して樹脂組成物を調製し、真空脱気して型内で120℃で2時間、150℃で5時間熱硬化させて厚さ2mmの樹脂板(硬化物)を作成した。
【0051】
1)硬化物の初期光透過率
日本分光(株)製の紫外可視分光光度計(V−570)を用いて樹脂板の400nmの光透過率を測定した。
2)耐UV透過率
UV照射装置で300nm以下の波長の光をカットするカットフィルターを用いて樹脂板を100時間UV光照射した後、400nmの光透過率を測定した。
3)耐熱光透過率
150℃のオーブンに200時間入れた後の400nmの光透過率を測定した。
4)表面のべたつき性
硬化物を室温でポリエチレン製の袋に入れ、表面を接触させた時、硬化物が袋に張り付かない場合をべたつき無しと判定した。
【0052】
【表1】

【0053】
エポキシ樹脂I:トリグリシジルイソシアヌレート〔TEPIC−S:日産化学工業(株)製〕
エポキシ樹脂II:脂環式エポキシ樹脂〔セロキサイド2021P:ダイセル化学工業(株)製〕
硬化剤a:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸〔リカシッドMH:新日本理化(株)製〕
硬化剤b:両末端ハイドロジェンポリシロキサン〔DMS−HO3:Gelest,Inc.製〕
硬化触媒m:テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o’−ジエチルホスホロジチオネート〔PX−4ET:日本化学工業(株)製〕
硬化触媒n:ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物〔和光純薬工業(株)製〕
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のシロキサンハイブリッド樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、特にLEDのような光半導体素子の封止用および接着用に適しており、このような分野で極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多官能アルコール化合物と(b)有機アルコキシシランとのアルコール交換反応によって製造されてなる末端アルコキシシリル基を有するシロキサンハイブリッド樹脂。
【請求項2】
(a)多官能アルコール化合物と(b)有機アルコキシシラン、および(c)シラノール基またはアルコール性水酸基を持つシロキサン化合物とのアルコール交換反応によって製造されてなる末端アルコキシシリル基を有するシロキサンハイブリッド樹脂。
【請求項3】
前記末端アルコキシシリル基を下記化学式(1)または(2)
【化1】

【化2】

(式中、R1は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜10の鎖状もしくは環状の脂肪族炭化水素基またはフェニル基を示し、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基及び炭素数5〜20のアリール基からなる群から選択されるいずれか1種であって、アクリル基、メタクリル基、アリル基、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、スルホン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シクロブテン基、カルボニル基、カルボキシル基、ウレタン基、ビニル基、ニトリル基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有していてもよい)
で表される化合物で末端封止してなる請求項1または2に記載のシロキサンハイブリッド樹脂。
【請求項4】
前記(a)多官能アルコール化合物が、脂肪族環状構造または複素環構造を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のシロキサンハイブリッド樹脂。
【請求項5】
前記複素環構造が下記化学式(3)
【化3】

で表される骨格を有する請求項4に記載のシロキサンハイブリッド樹脂。
【請求項6】
前記(b)有機アルコキシシランが、下記化学式(4)
【化4】

(式中、R4は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基及び炭素数5〜20のアリール基からなる群から選択されるいずれか1種であって、アクリル基、メタクリル基、アリル基、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、スルホン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シクロブテン基、カルボニル基、カルボキシル基、ウレタン基、ビニル基、ニトリル基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有していてもよく、R5は、それぞれ独立した炭素数1〜3の炭化水素基を示す)
で表される化合物から選択される1種または2種以上の化合物の混合物である請求項1または2に記載のシロキサンハイブリッド樹脂。
【請求項7】
前記有機アルコキシシランが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、プロピルエチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アクリルオキシプロピルメチルビス(トリメトキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、N−(アミノエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル−3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、及びヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランからなる群から選択される1種または2種以上の混合物である請求項6に記載のシロキサンハイブリッド樹脂。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のシロキサンハイブリッド樹脂に熱硬化可能な官能基または光硬化可能な官能基を有するモノマー、および熱硬化用触媒または光硬化用触媒添加してなる熱または光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8記載の熱または光硬化性樹脂組成物を含む光半導体素子封止用組成物。
【請求項10】
請求項8記載の熱または光硬化性樹脂組成物を含む光半導体素子接着剤用組成物。

【公開番号】特開2012−144664(P2012−144664A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5308(P2011−5308)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】