説明

シロキサン重合体とその製造方法、該重合体を含有する多孔質膜形成用塗布液ならびに多孔質膜と、該多孔質膜を用いた半導体装置

【解決課題】 工業的に好ましい材料であるシロキサン重合体を用いて、従来のシロキサン重合体によるものよりも機械強度に優れる多孔質膜を形成し得る、新たな方法により合成されたシロキサン重合体、それを含有する膜形成用組成物、多孔質膜の形成方法及び形成された多孔質膜、並びに、この多孔質膜を内蔵する高性能かつ高信頼性を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】 加水分解性シラン化合物の加水分解縮合によるシロキサン重合体の製造方法において、一般式(1)
(SiO1.5−O)nn-+n (1)
(但し、XはNR4を表し、Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。また、nは6から24の整数を表す。)
で表されるシルセスキオキサンのケージ化合物塩を準備し、該シルセスキオキサンのケージ化合物塩に、加水分解性シランを加水分解して縮合したシロキサン重合体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、得られる誘電率に対して改良された機械強度を有する多孔質膜を形成しうるシロキサン重合体とそれを含有する膜形成用組成物、並びにそれを用いた多孔膜の製造方法及び製造された多孔質膜、更に該多孔質膜を内蔵する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の形成においてはその高集積化に伴い、金属配線間の寄生容量である配線間容量の増加に起因する配線遅延時間の増大が半導体回路の高性能化の妨げになっている。配線遅延時間は、金属配線の電気抵抗と配線間の静電容量の積に比例する所謂RC遅延と呼ばれるものである。この配線遅延時間を小さくするためには、金属配線の抵抗を小さくするか又は配線間の容量を小さくすることが必要である。このようにして配線金属の抵抗及び配線間容量を小さくする事によって、半導体装置は高集積化しても配線遅延を引き起こさなくなるため、半導体装置の微細化と高速化が可能になり、さらに消費電力も小さく抑えることが可能になる。
【0003】
金属配線の抵抗を小さくするために、最近では従来適用されてきたアルミニウムによる配線に対し、金属銅を配線として用いる半導体装置構造が採用されるようになってきた。しかしこれのみでは高性能化に限界があり、配線間容量の低減が半導体のさらなる高性能化にとって急務となってきている。
【0004】
配線間容量を小さくする方法としては、金属配線同士の間に形成される層間絶縁膜の比誘電率を低くすることが考えられる。このような低比誘電率の絶縁膜としては、従来用いられてきたシリコン酸化膜に代えて多孔質膜の検討が行われている。特に、層間絶縁膜に適した比誘電率が2.5以下の材料としては多孔質膜が唯一実用的であるため、種々の多孔質膜の形成方法が提案されている。しかしながら、多孔質化は機械強度の低下や水分の吸着による劣化を招き易く、空孔の導入によるk値の低減と,機械強度や疎水性の確保が非常に大きな問題となっている。
【0005】
空孔の導入と機械強度を同時に得る方法としては、究極の硬い粒子としてゼオライト,またはゼオライト的な構造を導入して強度を高め、また結晶の形成により残存シラノールの低減化による疎水性の確保という方法が提案されている。例えば米国カルフォルニア大学より、高い被膜強度を有する低誘電率被膜を得ることを目的として、エチルアルコールに溶解されたテトラエチルオルソシリケート(TEOS)をテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)の存在下で加水分解させて得られたゼオライト微粒子から比較的粒径が大きい粒子を分離・除去した懸濁液を用いて半導体基板上にゼオライト被膜(MFI結晶構造を有するシリカゼオライト被膜) を形成する方法が提案されている。(特許文献1及び非特許文献1)しかし、この方法から得られるゼオライト被膜は、16〜18GPa のヤング弾性率を有しているものの、吸湿性が高いため空気中の水分を吸着して比誘電率が急激に増加して実用に耐えなくなってしまうという問題がある。そこで、このようにして得られたゼオライト被膜にシラン処理を施してその表面を疎水化し、この被膜の比誘電率を2.1〜2.3に保つ方法などが提案されている。
【0006】
また、ゼオライト粒子/ゼオライト様粒子と、アルコキシシラン加水分解物との組み合わせによる高強度化の提案もされている。(例えば特許文献2:特開2004−153147号公報)ここでは、ゼオライト粒子またはゼオライト様粒子をまず形成し、次いでアルコキシシラン加水分解物と混合,場合によっては熟成反応を行っており、結晶性のゼオライトを形成するプロセスに複雑な操作が求められている。
【0007】
上記のような半導体材料に使用できるような不純物が少ないゼオライトは合成法が非常に煩雑であるが、ゼオライトよりも工業的な調製法として有利な酸化ケイ素系重合体を用いて低誘電率膜を得ようとする試みも多数ある。例えば、特許文献3ではゼオライト合成の際に構造規定剤として働くテトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを加水分解に多量に使用し部分的にゼオライト様構造をとらせることで、成膜時に膜中にゼオライト様ミクロ孔を形成させて空孔密度を向上させることを推奨している。
【0008】
また、本発明者らは、強度が高いシリカ材料を得る方法として、反応初期に加水分解が不充分なまま縮合が進行してアルコキシ基がシリカ内部に取り込まれることを防ぐため、珪酸の第4級アンモニウム塩を使用する方法を提案している(例えば、特許文献4を参照)。
【0009】
一方、膜強度そのものは、膜形成用組成物に使用する材料そのものの物性に依存するだけでなく、成膜時の挙動によっても変化する。本発明者らは、シロキサン重合体やゼオライト粒子の表面に微粒子間や同時に添加される酸化ケイ素系樹脂との架橋形成能が高い架橋基で修飾し、更に保存安定中の架橋形成や失活を防ぐべく架橋形成能を一時停止する保護手段を用いると、塗布後焼成する段階でこの保護手段が消失、高い架橋活性を再生することにより微粒子同士の強固な結合を形成することによる、高強度膜の形成を報告している(例えば、特許文献5を参照)。
【特許文献1】米国特許出願公開公報US2000/0060364A1
【特許文献2】特開2004−153147号公報
【特許文献3】特開2004−149714号公報
【特許文献4】特開2004−292642号公報
【特許文献5】特開2005−216895号公報
【特許文献6】特開2001−354904号公報
【非特許文献1】Advanced Material 2001,13,No.19, 1453−1466.
【非特許文献2】E. Muller, F. T. Edelmann Main Group Metal Chemistry 22 485 1999
【非特許文献3】M. Moran et al. Organometallics 1993 p4327
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
シロキサン重合体は、ゼオライトに比較してはるかに容易に調製できるため、工業的用途向けには好ましい材料である。しかしこれを膜中に空孔を確保するための材料として使用する場合、原理的には、粒子中には高い空孔密度を得られないこと、粒子自体の機械強度がゼオライトに比較して遥かに劣るものであることは確実であろう。しかし、膜全体としての誘電特性と機械強度特性は、必ずしも粒子の持つ空孔率と機械強度で一義的に決定されるものではなく、本発明者らは、数多くの試みの中で、シロキサン重合体を使用した場合にも、誘電率特性に対する機械強度が例外的に高くなる例を幾つか経験しており、ゼオライトを用いずに、すでに報告されているシロキサン重合体による多孔性低誘電率膜としての特性を超える材料があることが充分に期待できる。
【0011】
即ち本発明は、工業的に好ましい材料であるシロキサン重合体を用いて、従来のシロキサン重合体によるものよりも機械強度に優れる多孔質膜を形成し得る、新たな方法により合成されたシロキサン重合体、それを含有する膜形成用組成物、多孔質膜の形成方法及び形成された多孔質膜を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記有利な材料による多孔質膜を内蔵する高性能かつ高信頼性を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、誘電特性と機械強度との双方に優れる多孔質膜を与えるシロキサン重合体材料を探索すべく数多くの試行錯誤を繰り返した。その一つとして出発原料としてシルセスキオキサンのケージ化合物の各ケイ素原子に結合する酸性のシラノール基が第4級アンモニウムをカウンターカチオンとして塩を形成した化合物を用い、加水分解性シラン化合物と加水分解・縮合を行って得たシロキサン重合体を合成した。そしてそのシロキサン重合体を含有する多孔性膜形成用組成物を塗布成膜後、焼結を経て多孔性膜としたところ、誘電率に対して得られる機械強度が従来材料に比べて高くなることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
すでにシラノールの第4級アンモニウム塩を用いて加水分解性シラン化合物と反応させる方法は特許文献4で開示しているが、今回得られた機械強度の向上は、特許文献4の開示内容では説明することができず、シルセスキオキサンのケージ化合物の持つ特殊な構造に由来する効果を利用するものである。
即ち本発明は、
加水分解性シラン化合物の加水分解縮合によるシロキサン重合体の製造方法において、一般式(1)
(SiO1.5−O)nn-+n (1)
(但し、XはNR4を表し、Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。また、nは8から24の整数を表す)
で表されるシルセスキオキサンのケージ化合物の塩またはその水溶液を準備し、該シルセスキオキサンケージ化合物のシラノール末端に、加水分解性シランを加水分解して縮合することを特徴とするシロキサン重合体の製造方法である。上記ケージ化合物塩は加水分解性シラン化合物の縮合の触媒となると共に、シリカ粒子の核となると思われるが、このような製造方法で得たシロキサン重合体を含有する多孔性誘電率材料組成物より得られる多孔質膜は、従来のシロキサン重合体を使用した場合に比較して、誘電特性に対する機械強度が向上された膜を与える。
【0014】
好ましく使用される上記ケージ化合物塩の例としては、下記構造式(2)
【化2】

(2)

(式中R1は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R1は、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
で示される化合物を挙げることができる。この材料は工業的に安定した方法で入手することができると共に、良好な特性を持つシロキサン重合体を与える。
【0015】
上記加水分解縮合反応において、更に第4級アンモニウム水酸化物を塩基性触媒として添加してもよく、この方法で得たシロキサン重合体もまた良好な特性を示す。
【0016】
上記第4級アンモニウム水酸化物として特に好ましい化合物としては、下記一般式(3)
(R24+OH-(3)
(上式中、R2は炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルキル基を表し、各々独立して互いに同じでも異なってもよく、カウンターカチオン[(R24+]が持つ全アルキル置換基R2の合計の炭素数が、シルセスキオキサンのケージ化合物塩のカウンターカチオン1つ当たりが持つ全アルキル置換基の炭素数の平均よりも多い炭素数を持つ)
で表される化合物を挙げることができる。この触媒を組み合わせることで良好な特性のシロキサン重合体が得られる。
【0017】
本発明のシロキサン重合体の製造方法に用いられる上記加水分解性シラン化合物は、一般式(4)及び一般式(5)
Si(OR34 (4)
4Si(OR53 (5)
(上式中、R3、R5は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R3、R5がそれぞれ複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。R4は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R4が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
から選ばれる1種以上の加水分解性シラン化合物を含むことが好ましい。
【0018】
本発明は、上記のシロキサン重合体の製造方法を用いて製造したシロキサン重合体である。本発明の製造方法で製造したシロキサン重合体を多孔質膜形成用組成物に適用することにより、機械強度が高い多孔質膜を得ることができる。
【0019】
本発明は、上述のシロキサン重合体を含有することを特徴とする多孔質膜形成用組成物である。本発明のシロキサン重合体は、塗布溶剤との組み合わせ等、従来公知のシロキサン重合体と同様な方法により多孔質膜形成用組成物とすることができる。
【0020】
本発明は、上記多孔質膜形成用組成物は基板上に塗布し、焼成工程を経ることで得た多孔質膜である。ここで得られる膜は、従来の材料を用いた場合の誘電特性に対して得られる機械強度に対し、向上した機械強度を有する。
【0021】
また本発明は、上記組成物を基板上に塗布して薄膜を形成する工程と、前記薄膜を焼成する工程とを含むことを特徴とする多孔質膜の形成方法を与える。
【0022】
更に、本発明は、上記組成物を基板上に塗布し、焼成工程を経て得た多孔質膜を含む半導体装置である。また本発明は上記組成物を基板上に塗布して薄膜を形成する工程と、前記薄膜を焼成する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法である。ここで得られる多孔質膜の高い機械強度により、得られる半導体装置に高い信頼性を与えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の多孔質膜を用いることにより、配線の寄生容量を大きく低減できる。
本発明の多孔質膜を配線の絶縁膜として使用することにより、従来問題となっていた多孔質膜を積層形成して多層配線を形成する際の多孔質膜の吸湿による誘電率の増大も発生しない。その結果、半導体装置の高速動作及び低消費電力動作が実現される。
また、本発明の多孔質膜は、機械強度が強いので、半導体装置の機械強度が向上し、その結果半導体装置の製造上の歩留まりや半導体装置の信頼性を大きく向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のシロキサン重合体は下記一般式
(SiO1.5−O)nn-+n(1)
(但し、XはNR4を表し、Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。また、nは8から24の整数を表す。)
で表されるシルセスキオキサンのケージ化合物塩と加水分解性シラン化合物を反応させることにより得られるものである。
【0025】
シルセスキオキサンのケージ化合物とは、熱力学的に比較的安定な構造として下記6〜12量体が、また24量体までが知られており、典型的には8量体である。
【化3】


(ここで、各頂点はケイ素原子であり、各辺はSi−O−Si結合を示す。)
上記で示した構造の各頂点のケイ素原子はもうひとつの結合手を持つが、その置換基として水酸基を有した場合、水酸基はシラノールとして酸性を示す。この酸性水酸基が第4級アンモニウムと塩を形成したものが上記シルセスキオキサンのケージ化合物塩である。
【0026】
この塩の合成としては、例えばテトラアルコキシシランまたはエロジルなどのシリカ粉末を、水酸化テトラアルキルアンモニウムと含水溶媒中で反応させることで上記シルセスキオキサンのケージ化合物(8量体)のテトラアルキルアンモニウム塩が合成できることが知られており、例えば非特許文献2及び3にその方法が記載されている。また8量体のテトラメチルアンモニウム塩(60水和物)はハイブリッドプラスチックス社等から市販もされている。
【0027】
ここで合成されるシリセスキオキサンのケージ化合物塩は適切な反応溶媒を選ぶことで、結晶として単離することが可能であり、このようにして得られる結晶は、通常、正八面体構造の、八量体の多水和物であり、その構造は下の様なものである。
【化4】

反応液中にはこれ以外の、10量体、12量体なども含まれているがこれらは微量成分であり、それ自体を単離することは困難であるが、例えば10量体の構造は下に示すようなものである。
【化5】

【0028】
これらのシルセスキオキサンのケージ化合物塩は、本発明のシロキサン重合体のケイ素源となると共に、それ自体弱酸性のシラノールと強塩基の第四級アンモニウム塩との塩であるので強塩基性を示し、水存在下で加水分解性シランの加水分解・縮合反応の触媒として作用する。
【0029】
上記シルセスキオキサンのケージ化合物塩との反応に用いる加水分解性シラン化合物としては、すでに多数が公知である多孔性低誘電率材料に用いるシロキサン重合体を与える材料の何れも使用することができるが、ハロゲン化シランは多量の中和塩を生じる上、上記ケージ化合物塩を失活させないために前処理を行う必要があることから余り適当でない。そこで、好ましく使用できる加水分解性シラン化合物としては、一般式(4)あるいは一般式(5)
Si(OR34 (4)
4Si(OR53 (5)
(上式中、R3、R5は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R3、R5がそれぞれ複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。R4は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R4が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
で表されるシラン化合物を挙げることができ、反応に使用する加水分解性シラン化合物の主な構成成分は、上記一般式(4)あるいは一般式(5)より選ばれる1種以上のものとすることが好ましい。また、4価の加水分解性シラン化合物はシロキサン重合体の焼結時の強度を向上させるために有効であり、3価の加水分解性シラン化合物は得られる多孔質膜の疎水性に寄与することから、上記反応においては、4価の加水分解性シラン化合物と3価の加水分解性シラン化合物のそれぞれ1種以上を用いることで、より好ましい性状の多孔質膜を得ることができる。具体的には一般式(4)で表される化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、トリエトキシメトキシシラン、トリプロポキシメトキシシラン、トリブトキシメトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン、トリメトキシプロポキシシラン、トリメトキシブトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また(5)に示すシラン化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−s−ブトキシシラン、メチルトリ−i−ブトキシシラン、メチルトリ−t−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−i−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−s−ブトキシシラン、エチルトリ−i−ブトキシシラン、エチルトリ−t−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−i−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−s−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−i−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−t−ブトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、i−プロピルトリ−i−プロポキシシラン、i−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、i−プロピルトリ−s−ブトキシシラン、i−プロピルトリ−i−ブトキシシラン、i−プロピルトリ−t−ブトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−i−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−s−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−i−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−t−ブトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、i−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、i−ブチルトリ−i−プロポキシシラン、i−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、i−ブチルトリ−s−ブトキシシラン、i−ブチルトリ−i−ブトキシシラン、i−ブチルトリ−t−ブトキシシラン、s−ブチルトリメトキシシラン、s−ブチルトリエトキシシラン、s−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、s−ブチルトリ−i−プロポキシシラン、s−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、s−ブチルトリ−s−ブトキシシラン、s−ブチルトリ−i−ブトキシシラン、s−ブチルトリ−t−ブトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−i−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−s−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−i−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−t−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−s−ブトキシシラン、ジメチルジ−i−ブトキシシラン、ジメチルジ−t−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−i−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−s−ブトキシシラン、ジエチルジ−i−ブトキシシラン、ジエチルジ−t−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−i−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−s−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−i−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−t−ブトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−i−プロピルジ−i−プロポキシシラン、ジ−i−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−i−プロピルジ−s−ブトキシシラン、ジ−i−プロピルジ−i−ブトキシシラン、ジ−i−プロピルジ−t−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−i−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−s−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−i−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−t−ブトキシシラン、ジ−i−ブチルジメトキシシラン、ジ−i−ブチルジエトキシシラン、ジ−i−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−i−ブチルジ−i−プロポキシシラン、ジ−i−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−i−ブチルジ−s−ブトキシシラン、ジ−i−ブチルジ−i−ブトキシシラン、ジ−i−ブチルジ−t−ブトキシシラン、ジ−s−ブチルジメトキシシラン、ジ−s−ブチルジエトキシシラン、ジ−s−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−s−ブチルジ−i−プロポキシシラン、ジ−s−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−s−ブチルジ−s−ブトキシシラン、ジ−s−ブチルジ−i−ブトキシシラン、ジ−s−ブチルジ−t−ブトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジエトキシシラン、ジ−t−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−t−ブチルジ−i−プロポキシシラン、ジ−t−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−t−ブチルジ−s−ブトキシシラン、ジ−t−ブチルジ−i−ブトキシシラン、ジ−t−ブチルジ−t−ブトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチル−n−プロポキシシラン、トリメチル−i−プロポキシシラン、トリメチル−n−ブトキシシラン、トリメチル−s−ブトキシシラン、トリメチル−i−ブトキシシラン、トリメチル−t−ブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチル−n−プロポキシシラン、トリエチル−i−プロポキシシラン、トリエチル−n−ブトキシシラン、トリエチル−s−ブトキシシラン、トリエチル−i−ブトキシシラン、トリエチル−t−ブトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−プロピル−n−プロポキシシラン、トリ−n−プロピル−i−プロポキシシラン、トリ−n−プロピル−n−ブトキシシラン、トリ−n−プロピル−s−ブトキシシラン、トリ−n−プロピル−i−ブトキシシラン、トリ−n−プロピル−t−ブトキシシラン、トリ−i−プロピルメトキシシラン、トリ−i−プロピルエトキシシラン、トリ−i−プロピル−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロピル−i−プロポキシシラン、トリ−i−プロピル−n−ブトキシシラン、トリ−i−プロピル−s−ブトキシシラン、トリ−i−プロピル−i−ブトキシシラン、トリ−i−プロピル−t−ブトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリ−n−ブチル−n−プロポキシシラン、トリ−n−ブチル−i−プロポキシシラン、トリ−n−ブチル−n−ブトキシシラン、トリ−n−ブチル−s−ブトキシシラン、トリ−n−ブチル−i−ブトキシシラン、トリ−n−ブチル−t−ブトキシシラン、トリ−i−ブチルメトキシシラン、トリ−i−ブチルエトキシシラン、トリ−i−ブチル−n−プロポキシシラン、トリ−i−ブチル−i−プロポキシシラン、トリ−i−ブチル−n−ブトキシシラン、トリ−i−ブチル−s−ブトキシシラン、トリ−i−ブチル−i−ブトキシシラン、トリ−i−ブチル−t−ブトキシシラン、トリ−s−ブチルメトキシシラン、トリ−s−ブチルエトキシシラン、トリ−s−ブチル−n−プロポキシシラン、トリ−s−ブチル−i−プロポキシシラン、トリ−s−ブチル−n−ブトキシシラン、トリ−s−ブチル−s−ブトキシシラン、トリ−s−ブチル−i−ブトキシシラン、トリ−s−ブチル−t−ブトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルエトキシシラン、トリ−t−ブチル−n−プロポキシシラン、トリ−t−ブチル−i−プロポキシシラン、トリ−t−ブチル−n−ブトキシシラン、トリ−t−ブチル−s−ブトキシシラン、トリ−t−ブチル−i−ブトキシシラン、トリ−t−ブチル−t−ブトキシシラン、などがあげられる。
また、本発明の方法によれば、用いるシラン化合物は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、追加的に上記シラン化合物以外の加水分解性シラン化合物を加えることもできる。
【0030】
追加的に使用する加水分解性シランの実例としてはジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランのような2価の加水分解性シランや、ヘキサメチトキシジシロキサン、メチレンビストリメトキシシラン、メチレンビストリエトキシシラン、1,3−プロピレンビストリメトキシシラン、1,4−(ブチレン)ビストリメトキシシラン、1,4−フェニレンビストリメトキシシランなどのケイ素について多核構造を持つ加水分解性シラン類も挙げることが出来るが限定されない。これらの添加量は30モル%以下であることが好ましい。
【0031】
上記のシルセスキオキサンのケージ化合物塩と上記のような加水分解性シラン化合物を反応させると、なぜ後述するような高い機械強度を与えるシロキサン重合体が得られるかは明らかではなく、また本明細書における機構についての説明、考察が本発明の技術的範囲を何ら制限するものではないが、ケージ化合物塩がシロキサン重合体の成長の核となることが高い機械強度を与える理由の一つではないかと本発明者らは考えている。これは、単に膜の部分構造として、立体的に安定な部分構造が占めることのみによる効果である可能性もあるが、上述のように、ケージ化合物塩は、籠型の構造の各頂点を形成するケイ素原子がシラノールの第4級アンモニウム塩を持つ活性構造を持つので、夫々の部位で高い加水分解縮合の触媒作用を持ち、またシラノール基を持つモノマーに対する親和性も持つので、高効率で加水分解されたヒドロキシシランを取り込んで縮合する活性を持つ。更にその反応成績体も同様に上記触媒作用と親和性を持つことから、反応はケージ化合物塩を核として非常に効率よく縮合が進行することが考えられる。さらにこのような反応を繰り返した場合、シロキサン重合体の分散度を定義または測定することは難しいが、所謂低分散状態で反応が進行する可能性がある。これが後述する成膜時の機械強度の向上に寄与している可能性がある。
【0032】
そこで、このような物性を得るためのシロキサン重合体を得るためには、シルセスキオキサンのケージ化合物塩は、加水分解性シラン化合物に対し、モル比で0.0001〜1倍量用いることが好ましく、より好ましくは0.001〜1倍量である。少なすぎる場合には充分な効果は得られず、また、多すぎる場合には経済的に不利である。
【0033】
本発明のシロキサン重合体の合成方法では、上記シルセスキオキサンのケージ化合物塩による反応の特性を損なわない程度に、加水分解性シランの加水分解を促進する塩基性触媒を同時に使用して、縮合速度を上げることもできる。そのような塩基としては以下の化合物を実例としてあげることが出来る。すなわちアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジンなどのアミン類;
水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリン等の第4級アンモニウム水酸化物;
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物等である。
【0034】
加水分解性シランの加水分解を促進する塩基性触媒の添加量としては、縮合活性が低い弱塩基を用いた場合には、上記シルセスキオキサンのケージ化合物塩の量とは余り関係なく、加水分解性シラン化合物のモル比に対し、500倍量程度まで用いても問題ない。
しかし縮合活性が高い塩基性触媒を多量に用いた場合には、上記で説明した縮合活性から基本的にはケージ化合物と加水分解性シランの縮合反応、あるいは、ケージ化合物とシランとが縮合した中間体と加水分解性シランとの縮合反応の方が優先するものの、ケージ化合物塩とは無関係に反応が進行する部分がかなり増加する危険があり、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリン等の第4級アンモニウム水酸化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を用いる場合には、ケージ化合物塩(含水塩)に対してモル比で100倍程度まで、より好ましくは30倍程度までとすることが好ましい。
【0035】
ただし、理由は不明であるが、シルセスキオキサンのケージ化合物塩が有するカウンターカチオンである第4級アンモニウムと構造の異なる第4級アンモニウム水酸化物、特に後者の第4級アンモニウムカチオンが前者の第4級アンモニウムカチオンよりも脂溶性が高い構造を持っている場合には、それらを組み合わせて触媒とした反応で得たシロキサン重合体を用いた膜は、良好な機械強度を示す。上記脂溶性とは、具体的にはアンモニウムカチオンが持つアルキル基の炭素数が多いことと言い換えることができ、シルセスキオキサンのケージ化合物塩が有するカウンターカチオンよりも別途添加する第4級アンモニウム水酸化物のカウンターカチオンの方が脂溶性が高いとは、ケージ化合物塩の持つ1つのカウンターカチオン窒素に置換した全アルキル基が持つ炭素数の合計の平均値よりも、第4級アンモニウム水酸化物のカウンターカチオン窒素に置換した全アルキル基が持つ炭素数の合計の方が大きいことを言う。すなわち上記式(1)あるいは(2)に対して、ここで言う脂溶性が高いカウンターカチオンを持つ4級アンモニウム水酸化物とは一般式(3)
(R24+OH-(3)
(上式中、R2は炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルキル基を表し、各々独立して互いに同じでも異なってもよく、カウンターカチオン[(R24+]が持つ全アルキル置換基R2の合計の炭素数が、シルセスキオキサンのケージ化合物塩のカウンターカチオン1つ当たりが持つ全アルキル置換基の炭素数の平均よりも多い炭素数を持つ)
の化合物が例示される。
具体的には、シルセスキオキサンのケージ化合物塩のカウンターカチオンがテトラメチルアンモニウムである場合には、好ましく組み合わせることができる4級アンモニウム水酸化物として、エチルトリメチルアンモニウム水酸化物や、テトラプロピルアンモニウム水酸化物を挙げることができる。そのような組み合わせによる反応は、上記の好ましくない状態を起こさない範囲で使用する限り有効な方法である。
【0036】
上記シルセスキオキサンのケージ化合物塩と加水分解性シラン化合物とを加水分解してシロキサン重合体を製造する加水分解縮合反応は、加水分解に必要な水の存在下でおこなわれるが、水以外にも溶媒を含むことができる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。その他にアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。加水分解のための水は、加水分解性シラン化合物を完全に加水分解するために必要なモル数の好ましくは、0.5〜100倍量、より好ましくは1〜10倍量が用いられ、また、水以外の溶媒を使用する場合、水以外の溶媒の添加量は、シラン化合物の質量に対して、好ましくは1〜1000倍質量、より好ましくは2〜100倍質量である。
【0037】
シラン化合物の加水分解縮合時間は、好ましくは、0.01〜100時間、より好ましくは、0.1〜50時間であり、加水分解縮合温度は、好ましくは、0〜100℃、より好ましくは、10〜80℃である。
【0038】
反応終了後の後処理としては、機械強度に深く係わるシロキサン重合体の成膜時の架橋形成活性を維持する方法として特許文献4に開示したように、表面の活性シラノールを保護する工程を導入することが好ましく、具体的には、塩基触媒の中和反応後、架橋活性が失われる以前に、より好ましくは中和反応直後に2価以上のカルボン酸化合物を添加することにより活性シラノールの保護を行う、あるいは中和反応そのものを2価以上のカルボン酸で行うことにより中和とシラノール保護を同時に行うことによりシラノールの保護を行い、成膜時、上記カルボン酸化合物を分解させるまで架橋活性を凍結することができる。
【0039】
好ましく使用できる、少なくとも二つのカルボキシル基を分子中に有するカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マロン酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、グルタル酸、グルタル酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸、イタコン酸無水物又はアジピン酸などを挙げることができ、これらの添加量はケイ素ユニットに対して0.05mol%から10mol%、好ましくは0.5mol%から5mol%の範囲で有効に作用する。
【0040】
更に中和操作で生じた塩や、不要な水溶性物質及び混入した可能性がある金属不純物等を除くために、水と混合しない溶媒を添加した後、水洗を行うことが出来る。このような目的に用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1−ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどが挙げられる。
【0041】
このようにして製造されるシロキサン重合体は、公知の方法により最終的に塗布に好適な溶媒による溶液とされる。このような目的に用いられる溶媒としてはn−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、2,2,2−トリメチルペンタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、n−アミルナフタレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチオンなどのケトン系溶媒、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジエチルカーボネート、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジn−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどのエステル系溶媒、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトンなどの含硫黄系溶媒などを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して使用することができる。
希釈の程度としては、粘度や目的とする膜厚等により異なるが、通常、溶媒が好ましくは50〜99質量%、より好ましくは75〜95質量%となる量である。
【0042】
更に膜形成用組成物に添加する材料としては界面活性剤を初めとする多数の成膜補助成分が公知であるが、本発明の膜形成用組成物にも基本的にはいずれも適用可能である。成膜補助成分としては、例えば、特許文献6に記載されている界面活性剤、シランカップリング剤、ラジカル発生剤等を採用することができる。
本発明の膜形成用組成物の総固形分質量に占める成膜補助成分の割合は、もし添加する場合には固形分で0.001 %〜10 %とすることができる。
【0043】
なお、本発明の膜形成用組成物には、ケイ素重合体成分として、他の方法で作ったポリシロキサン類を混合して用いることもできるが、目的の効果を達成するためには、他の方法で作ったポリシロキサン類の混合比は59%以下であることが必要であり、更に20%以下であることが好ましい。
【0044】
本発明のシロキサン重合体を含有する膜形成用組成物に混合することのできる上記ポリシロキサン類として、下記のものは単なる結合剤あるいは成膜補助剤ではなく、シロキサン重合体間の結合力を向上させることで、その膜が持つ比誘電率に対する機械強度を向上させることができ、好ましい添加剤である。
【0045】
上記の機能を持つ、好ましい添加剤であるポリシロキサン化合物は、高濃度のシラノール基を含有し、下記のように合成される。
即ち、出発物質は、
少なくとも1種の下記一般式(6)
Si(OR64 (6)
(上式中、R6は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R6が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物と、少なくとも1種類以上の一般式(7)
7nSi(OR84-n (7)
(上式中、R8は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R8が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。R7は置換基を含んでもよい炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R7が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。またnは1〜3の整数を示す。)
で表されるアルコキシシラン化合物とを含有する加水分解性シラン化合物の混合物である。
【0046】
なお、一般式(6)の化合物の混合比は、加水分解性シラン全体、すなわち(6)および(7)の化合物の合計モル数に対し、ケイ素原子基準で25モル%以上であることが好ましい。
【0047】
シラン化合物(7)のR7として好ましいものは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジエチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、エチニル基などのアルキニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ベンジル基、フェニチル基などのアラルキル基、その他の非置換1価炭化水素基が挙げられ、フッ素等の置換基を有していてもよい。このうち特に好ましいのはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、ビニル基、フェニル基である。
【0048】
6、R8として好ましいものは、加水分解後に副生するアルコールの沸点が水の沸点より低くなるものが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロプル基、iso−プロピル基などである。
【0049】
これらのシラン化合物を酸触媒の存在下、加水分解縮合することによりポリシロキサン化合物を得ることができるが、上記シロキサン重合体間の結合力を上げることができるものを得るためには、通常法による酸触媒による加水分解縮合ではなく、加水分解中に生じるシラノールを水和することによりゲル化を防止する条件により合成したポリシロキサン化合物を用いることが好ましい。
【0050】
加水分解性シラン化合物の酸性触媒存在下での加水分解縮合でシロキサン化合物を得る方法は、反応制御しながら行われる。反応制御を要するのは、酸触媒による加水分解性シラン化合物の加水分解縮合では、縮合速度に比較して加水分解速度が速く、原料として3価あるいは4価の加水分解性シラン化合物を使用した場合には、何らかの反応制御がない場合、反応液中の活性なシラノール基の濃度が高くなりすぎ、多数の活性な反応活性点を持つ中間体が多量に生成してしまうことによりゲル化を引き起こすからである。このゲル化を防止する反応制御の方法として、シラノール基の生成を制御する方法と、生成したシラノール基のゲル化反応を直接抑制する方法のいずれかが用いられ、それぞれの制御方法の特徴は加水分解性シラン化合物の添加方法と加水分解に使用する水の添加量に見られる。
【0051】
上記2つの方法のうち一般的な方法はシラノール基の生成を制御する方法である。この通常条件の酸触媒による縮合では、通常、加水分解性シラン化合物を入れた反応液に水を少量ずつ滴下する方法が採られる。これにより、加水分解により生じたシラノール基が縮合に消費される時間を作り、反応液中のシラノール基の濃度の上昇を制御し、ゲル化を防止する。また一般に使用する水の合計量も少量とし、比較的極性の低い有機溶媒を多めに使用して、水と加水分解性シランの接触機会を下げ、一時にシラノール基の濃度が上がらないようにアルコキシ基を保存しつつ、生成したシラノール基を縮合させるという反応を設計することでゲル化を防止する。特殊なケースとして有機溶媒を使用しない場合は使用する水の量は1倍、あるいはそれ以下とする必要があり、通常の有機溶媒を使用する場合でも使用する水の量は同様に1倍以下にすることが多い。そこで実際の実施とは別に、特許上の記載として大きな幅を取った場合にも使用する水の範囲としては、加水分解に必要な水の量の3倍、又は5倍より少ない上限値が記載がされる。また、実際にはこの方法で水の量を増やしていった場合、1倍より多くした場合にはゲル化を起こす危険性が高く、例えば比較実験例に示したような条件で水を2倍量加えると反応液はゲル化を起こしてしまい、ポリシロキサン化合物を取り出すことはできない。また、得られるポリシロキサン化合物も、シラノール基の濃度が上がらないように合成されるために含有量が低く、例えばケイ素原子全体に対して5モル%以上のものを作ろうとした場合には通常ゲル化を起こしてしまう。
【0052】
これに対し、ゲル化反応を直接抑制する方法は大過剰の水を使用することが特徴であり、これにより活性なシラノール基を水和することで反応を制御する。そこで、水和を妨害する多量の有機溶媒の使用はなく、より好ましくは有機溶剤は使用せずに大過剰の水を使用して加水分解を行う。また、通常反応操作では、加水分解性シラン化合物を、常に投入済みの加水分解基のモル等量数よりも過剰のモル等量数の水が存在する加水分解反応液に添加する方法が採られ、より一般的には予め大過剰の水と酸性触媒を反応槽に入れておき、そこに加水分解性シランを滴下していく方法が採られ、加水分解により生じたシラノール基がすぐに水和されるように反応が設計される。このようにして、反応液中ではシラノールが多量に生成するが、常に多量の水が存在することにより充分な水和が起こり、水和によるシラノールの活性制御によりゲル化が防止される。更に、この方法で得られるポリシロキサン化合物は分子の持つシラノール基含量が高いことが知られている。
【0053】
そこで、ここで使用されるモノマーを加水分解させるための水は反応系で生成するシラノール基を水和するに充分な量存在する必要があるが、その目安としては、モノマーに含まれる加水分解性基1モルに対し3倍以上であり、好ましくは5倍モルより多く添加することが好ましい。通常の場合、5倍より多い水の添加でゲル化を防止することができる。具体的には、上述のように好ましい水の量の下限を5倍量、上限を後述のように100倍量とした場合、例えば4価である一般式(1)の加水分解性シラン化合物と一般式(2)で表されるもののうち、3価である化合物のみから調製する場合、一般式(1)の化合物のモル量をQ、一般式(2)の化合物のモル量をT、水のモル量をXとすると、100×(4×Q+3×T)≧X≧5×(4×Q+3×T)となる。このように多量の水を使用して酸性触媒により加水分解及び縮合することで、シラノール基含有比が高いポリシロキサン化合物をゲル化させることなく得られる。ただし、100倍モルを超える添加は、スケールによっては反応に使用する装置が過大になり、排水の処理コストも高くなるだけで不経済になる可能性がある。
【0054】
酸性触媒は、基本的には反応条件を調整することで公知のものを何れも使用することができるが、加水分解縮合を充分に行わせるために、有機酸の中でも特に酸性が強いといわれている有機スルホン酸、そして、これよりも更に強いといわれている無機酸から選ばれる触媒を用いるのが好ましい。このような触媒としては、無機酸として塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸等、有機スルホン酸としてメタンスルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸を挙げることができる。上記強酸を使用した場合の触媒の使用量は、ケイ素モノマー1モルに対して10-6モル〜1モル、好ましくは10-5モル〜0.5モル、より好ましくは10-4モル〜0.3モルである。
【0055】
更に、このとき反応中のポリシロキサン化合物の安定性を高めるために、2価有機酸を添加してもよい。このような有機酸としては、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などを挙げることができる。特に好ましいのはシュウ酸、マレイン酸である。有機スルホン酸を除く有機酸の使用量は、ケイ素モノマー1モルに対して10-6モル〜10モル、好ましくは10-5モル〜5モル、より好ましくは10-4モル〜1モルである。
【0056】
操作方法として、水及び触媒を溶解させ、そこにモノマーを添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶媒を加えてもよいし、モノマーを有機溶媒で希釈しておいてもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは10〜80℃である。モノマーの滴下時に10〜50℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0057】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチルラクトン及びこれらの混合物などが好ましい。
【0058】
これらの溶媒の中で好ましいものは水可溶性のものである。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプルピルエーテルなどの多価アルコール縮合物誘導体、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。
【0059】
なお、有機溶媒の使用量は、50質量%以上あると加水分解縮合反応が充分に進まないので、50質量%未満とする必要がある。また、モノマー1モルに対して0〜1,000mlが好ましい。有機溶媒の使用量が多いと反応容器が過大となり不経済である。好ましいのは、水に対して10質量%以下であり、有機溶剤を使わないのが最も好ましい。
【0060】
反応後、必要であれば触媒の中和反応を行い、更に下記の抽出操作をスムーズに行うために、好ましくは加水分解縮合反応で生成したアルコールを減圧除去し、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に必要なアルカリ性物質の量は、無機酸及び有機スルホン酸に対して1〜2当量が好ましい。このアルカリ性物質は水中でアルカリ性を示すものであれば、任意の物質でよい。また、反応混合物を加熱する温度は、除去すべきアルコールの種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべきアルコールの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0061】
この水溶液から加水分解縮合に使用した触媒を除去するために、ポリシロキサン化合物を有機溶剤で抽出する。このとき使用する有機溶剤としては、ポリシロキサン化合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチルラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテルなど及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0062】
特に好ましいものとして、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合物が好ましく、例えばメタノール+酢酸エチル、エタノール+酢酸エチル、1−プロパノール+酢酸エチル、2−プロパノール+酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル+酢酸エチル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノプロピルエーテル+酢酸エチル、メタノール+メチルイソブチルケトン、エタノール+メチルイソブチルケトン、1−プロパノール+メチルイソブチルケトン、2−プロパノール+メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル+メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノプロピルエーテル+メチルイソブチルケトン、メタノール+シクロペンチルメチルエーテル、エタノール+シクロペンチルメチルエーテル、1−プロパノール+シクロペンチルメチルエーテル、2−プロパノール+シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、メタノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エタノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1−プロパノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、2−プロパノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなど組み合わせが好ましいが組み合わせはこれらに限定されることはない。
【0063】
なお、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合割合は、適宜選定されるが、難溶性有機溶剤100質量部に対して、水溶性有機溶剤0.1〜1,000質量部、好ましくは1〜500質量部、更に好ましくは2〜100質量部である。
【0064】
加水分解縮合に使用した触媒を除去して得られた有機層は必要に応じて溶媒の減圧による一部留去と再希釈による溶媒置換等を経て、最終的な多孔質膜形成用組成物に混合される。
【0065】
このとき、加水分解反応時や濃縮時の条件バラツキによって、好ましくない微小ゲルと考えられる不純物が混入することがある。この微小ゲルは、このポリシロキサン化合物を組成物として混合する前に水で洗浄することにより除去可能である。また、微小ゲルの残存が上記水洗浄によっても効果が低い場合には、ポリシロキサン化合物を酸性水で洗浄後に水で洗浄することでこの問題が解決される場合もある。
【0066】
このとき使用される酸性水としては、二価の有機酸を含有するものが好ましく、具体的には、シュウ酸、マレイン酸が好ましい。酸性水中に含有される酸の濃度は、100ppm〜25質量%、好ましくは、200ppm〜15質量%、より好ましくは500ppm〜5質量%である。酸性水の量は、上記工程で得たポリシロキサン化合物溶液1Lに対して、0.01〜100L、好ましくは0.05〜50L、より好ましくは0.1〜5Lである。有機層の洗浄の方法は通常行われている方法でよく、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜ後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないので、好ましくは1〜5回程度である。
【0067】
続いて、上記洗浄に使用した酸を除去するために中性水で洗浄する。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、酸性水で洗浄されたポリシロキサン化合物溶液1Lに対して、0.01〜100L、好ましくは0.05〜50L、より好ましくは0.1〜5Lである。この洗浄の方法は上記方法と同じでよく、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜ後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないので、好ましくは1〜5回程度である。
【0068】
洗浄済みのポリシロキサン化合物溶液に、後述の塗布組成物とするための溶媒を加え、減圧で溶媒交換することで多孔質膜形成用組成物への添加用母液とすることができるが、この溶媒交換は、後述の酸化ケイ素系微粒子を添加した後でもよい。このときの溶媒交換の温度は、除去すべき抽出溶剤の種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0069】
このとき、溶媒が変わることによりポリシロキサン化合物が不安定になり、ナノゲルが発生する場合がある。これは最終的な溶剤とポリシロキサン化合物との相性により発生するが、これを防止するために、有機酸を加えてもよい。有機酸としてはシュウ酸、マレイン酸などの2価のものや、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの1価のカルボン酸が好ましい。加える量としては溶媒交換前に溶液中のポリマーに対して0〜25質量%、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜5質量%であるが、添加する場合は0.5質量%以上が好ましい。溶媒交換前の溶液に必要であれば、酸を添加して溶媒交換操作を行えばよい。
【0070】
上述の方法で得たポリシロキサン化合物は、上述の通り、通常の加水分解および縮合法で得たものに対し、分子内に遥かに多量のシラノール基を持たせることができる。即ち、上記ポリシロキサン化合物が下記一般式で表されるユニット:
【化6】


(上記式Qは、4価の加水分解性シラン由来のユニットを意味し、Tは3価の加水分解性シラン由来のユニットを意味する。T1〜T3におけるRは、Si−Rで示される結合がケイ素と炭素置換基の結合であることを示す。)
からなる場合、29Si−NMRで上記ポリシロキサン化合物における各ユニット(Q1〜Q4,T1〜T3)の構成比(モル比)(q1〜q4、t1〜t3)を測定した場合、(q1+q2+t1)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)≦0.2であり、かつ(q3+t2)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)≧0.4を満足するものが上記方法で得られ、この範囲のものは上記のシロキサン重合体間の結合力を向上させる機能を示す。
また、上記ポリシロキサン化合物のシラノールの量のみに着目して大まかな量とした場合には、ポリシロキサン化合物の有するシラノールの量は、ケイ素原子の5モル%以上であるものが上記方法により得られ、このようなものを使用することにより、シロキサン重合体間の結合力を向上させることができる。
【0071】
上記で得たポリシロキサン化合物を添加する場合は、上述のポリシロキサン化合物の塗布溶剤溶液と、上記で説明した本発明のシロキサン重合体を含有する溶液とを合わせ、上述した粘度等の調整を行いつつ、膜形成用組成物とする。
【0072】
このようにして多孔質膜形成用組成物を調製した後、多孔質膜形成用組成物の溶質濃度を制御しかつ適当な回転数を用いて、被成膜基板にスピン塗布することで、任意の膜厚の薄膜を形成することが可能になる。
実際の膜厚としては、通常0.1〜1.0μm程度の膜厚の薄膜が形成されるがこれに限定されるものではなく、例えば複数回塗布することで更に大きな膜厚の薄膜形成も可能である。
塗布方法としては、スピンコーティングに限らず、スキャン塗布等の他の方法も可能である。
【0073】
このようにして形成された薄膜は、公知の方法により多孔質膜とすることができ、即ち乾燥工程(通常、半導体製造プロセスでプリベークと呼ばれる工程)でオーブン等を用いることにより、好ましくは、50〜150℃に数分加熱することで溶媒を除去し、更に350℃〜450℃、5分から2時間程度での焼結工程を経て、最終的に多孔質膜が得られる。また、更に紫外線や電子線等を用いた硬化工程のような追加工程を加えてもよい。
【0074】
上記多孔質膜を含む半導体装置もまた、本発明の一つである。
本発明の半導体装置の実施形態について図1にもとづき説明する。
まず基板1は、Si基板、SOI(Si・オン・インシュレータ)基板等のSi半導体基板を採用することができるが、SiGeやGaAs等々の化合物半導体基板であってもよい。
また図1には層間絶縁膜として、コンタクト層の層間絶縁膜2と、配線層の層間絶縁膜3、5、7、9、11、13、15、17と、ビア層の層間絶縁膜4、6、8、10、12、14、16とが示されている。本明細書において、「層間絶縁膜」とは、1つの層上に積層された導電部位間を電気的に絶縁する膜であってもよいし、別々の層に存在する導電部位間を電気的に絶縁する膜であってもよい。導電部位としては例えば、金属配線等が挙げられる。
最下層の配線層の層間絶縁膜3から最上層の配線層の層間絶縁膜17までの配線層を順に略称でM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8と呼ぶ。
最下層のビア層の層間絶縁膜4から最上層の配線層の層間絶縁膜16までのビア層を順に略称でV1、V2、V3、V4、V5、V6、V7と呼ぶ。
いくつかの金属配線には18と21〜24の番号を付したが、番号が省略されていてもこれらと同じ模様の部分は金属配線を示す。
ビアプラグ19は、金属により構成され、通常、銅配線の場合には銅が用いられる。図中、番号が省略されていても、これと同じ模様の部分はビアプラグを示している。
コンタクトプラグ20は、基板1の最上面に形成されたトランジスタ(図示外)のゲートあるいは基板へ接続される。
このように、配線層とビア層とは交互に積み重なった構成となっており、一般に、多層配線とはM1から上層部分のことを指す。通常、M1〜M3をローカル配線、M4とM5とを中間配線あるいはセミグローバル配線、M6〜M8をグローバル配線と呼ぶことが多い。
図1にかかる半導体装置は、配線層の層間絶縁膜3、5、7、9、11、13、15、17、及び、ビア層の層間絶縁膜4、6、8、10、12、14、16の少なくとも1以上の絶縁膜に、本発明の多孔質膜を用いたものである。
例えば、配線層(M1)の層間絶縁膜3に本発明の多孔質膜を用いている場合、金属配線21と金属配線22との間の配線間容量を大きく低減することができる。また、ビア層(V1)の層間絶縁膜4に本発明の多孔質膜を用いている場合、金属配線23と金属配線24との間の配線間容量を大きく低減することができる。このように、配線層に本発明の低比誘電率を有する多孔質膜を用いると、同一層の金属配線間容量を大きく低減することができる。また、ビア層に本発明の低比誘電率を有する多孔質膜を用いると、上下金属配線の層間容量を大きく低減することができる。したがって、すべての配線層及びビア層に本発明の多孔質膜を用いることにより、配線の寄生容量を大きく低減することができる。
本発明の多孔質膜を配線の絶縁膜として使用することにより、従来問題となっていた多孔質膜を積層形成して多層配線を形成する際の多孔質膜の吸湿による誘電率の増大も発生しない。その結果、半導体装置の高速動作及び低消費電力動作が実現される。
また、本発明の多孔質膜は、機械強度が強いので、半導体装置の機械強度が向上し、その結果半導体装置の製造上の歩留まりや半導体装置の信頼性を大きく向上させることができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されるものではない。
製造例1 (シルセスキオキサンのケージ化合物塩)
超純水115.46g、アセトン178.57g、25%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液72.92gの混合液中に、テトラエトキシシラン115.46gを加えて一夜撹拌した。当初透明な液体が白濁していた。これを氷水で冷却しながら一時間放置した。
ろ過し、得られた残渣を冷水で洗浄し風乾して無色の結晶16.62gが得られた。NMRの測定によりこの結晶が{(SiO1.5)−O−N(CH34}8・80H2Oであることがわかった。
【0076】
実施例1
エタノール188.4g、超純水93.44g、製造例1の結晶5.26gを混合した溶液を撹拌しながら60℃に加熱した。この溶液中にメチルトリメトキシシラン19.5gとテトラエトキシシラン36.43gとの混合液を6時間かけて滴下した。得られた反応液を氷水で冷却して室温にした後、シュウ酸2gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート[PGMEA]200mlとを添加し、得られた溶液をエバポレータにより溶媒留去し、残留液が216.8gになるまで溶媒を留去した。このようにして得られた溶液に酢酸エチル200g、超純水120gを加え、分液ロート中撹拌、静置した。分離した水層を除いてから有機層をさらに二回、超純水120mlを用い水洗した。この様にして得られた有機層にPGMEA120mlを加えた後エバポレータにより溶媒を留去して229.69gまで濃縮した。この液をゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析したところ分子量のピークトップは1,545,000、Mw/Mnは1,560であった。また不揮発残分は約7質量%であった。この液をシリコンウェーハー上に回転塗布にて、4,000rpmで1分間の条件で塗布し120℃2分、230℃2分、425℃1時間加熱して、約300nmの膜厚の多孔質膜を得た。得られた膜の誘電率は2.12、機械強度は5.83GPaであった。
【0077】
実施例2
原料のシランの滴下時間を4時間に変えたほかは実施例1と同様に反応させた。得られた濃縮液の質量は200.76gであった。この液を実施例1と同様にしてシリコンウェーハー上に塗布し、実施例1と同様に加熱した膜の誘電率は2.28、その機械強度は7.62GPaだった。
【0078】
実施例3
原料のシランの滴下時間を3時間に変えたほかは実施例1と同様に反応させた。得られた濃縮液の質量は245.17gであった。この液を実施例1と同様にしてシリコンウェーハー上に塗布し、実施例1と同様に加熱した膜の誘電率は2.35、その機械強度は8.36GPaだった。
【0079】
実施例4
原料のシランの滴下時間を2時間に変えたほかは実施例1と同様に反応させた。得られた濃縮液の質量は211.07gであった。この液を実施例1と同様にしてシリコンウェーハー上に塗布し、実施例1と同様に加熱した膜の誘電率は2.40、その機械強度は9.35GPaだった。
【0080】
実施例5
原料のシランの滴下時間を1時間に変えたほかは実施例1と同様に反応させた。得られた濃縮液の質量は224.17gであった。この液を実施例1と同様にしてシリコンウェーハー上に塗布し、実施例1と同様に加熱した膜の誘電率は2.44、その機械強度は9.60GPaだった。
【0081】
実施例6
製造例1の結晶5.26gのかわりに、10%水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液22.63gと製造例1の結晶3.56gとを用い、実施例1と同様にメチルトリメトキシシラン19.5gとテトラエトキシシラン36.43gとの混合液を6時間かけて滴下し、反応させた。最終的に得られた濃縮液の質量は215.18gであった。この液をシリコンウェーハー上に塗布し、実施例1と同様に加熱した膜の誘電率は2.28、その機械強度は9.58GPaだった。
【0082】
実施例7
製造例1の結晶の代わりに、製造例1の、反応液自体を45gを用いて、実施例1と同様に反応させた。得られた濃縮液の質量は214.93gであった。この液をシリコンウェーハー上に塗布し、実施例1と同様に加熱した膜の誘電率は2.41、その機械強度は7.98GPaだった。
【0083】
比較例1
エタノール188.4g、超純水93.44g、25%水酸化テトラメチルアンモニウム8.26gを混合した溶液を撹拌しながら60℃に加熱した。この溶液中にメチルトリメトキシシラン19.5gとテトラエトキシシラン36.43gとの混合液を6時間かけて滴下した。得られた反応液を氷水で冷却して室温にした後、シュウ酸2gとPGMEA200mlとを添加し、得られた溶液をエバポレータにより溶媒留去し、残留液が160.98gになるまで溶媒を留去した。このようにして得られた溶液に酢酸エチル200g、超純水120gを加え、分液ロート中撹拌、静置した。分離した水層を除いてから有機層をさらに2回、超純水120mlを用い水洗した。この様にして得られた有機層にPGMEA120mlを加えた後エバポレータにより溶媒を留去して207.84gまで濃縮した。この液をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分析したところ、ピークトップの分子量は1,535,000,Mw/Mnは83000であった。この液をシリコンウェーハー上に塗布し120℃で2分、230℃で2分、425℃で1時間加熱して膜厚300nmの多孔質膜を得た。得られた膜の誘電率は2.17、機械強度は3.90GPaであった。
【0084】
比較例2
シラン原料を滴下する時間を6時間から4時間に変えたほかは比較例1と同様に合成を行い濃縮液203.91gが得られた。この液をシリコンウェーハー上に塗布し120℃で2分、230℃で2分、425℃で1時間加熱した。得られた膜の誘電率は2.35、機械強度は5.70GPaであった。
【0085】
比較例3
シラン原料を滴下する時間を6時間から2時間に変えたほかは比較例1と同様に合成を行い濃縮液213.54gが得られた。この液をシリコンウェーハー上に塗布し120℃で2分、230℃で2分、425℃で1時間加熱した。得られた膜の誘電率は2.50、機械強度は7.23GPaであった。
【0086】
比較例4
シラン原料を滴下する時間を6時間から1時間に変えた他は比較例1と同様に合成を行い濃縮液188.18gが得られた。この液をシリコンウェーハー上に塗布し120℃で2分、230℃で2分、425℃で1時間加熱した。得られた膜の誘電率は2.82、機械強度は11.21GPaであった。
【0087】
比較例5
25%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液36.46g中に5.2gのテトラエチルシランを添加し室温で18時間撹拌し無色透明の溶液を得た。本溶液はSi(ON(CH344で表されるテトラキストリメチルアンモニウムシリケートの含水溶液であることを確認した。これにエタノール188.4g、超純水93.44gを加え加熱撹拌して60℃とした。これにメチルトリメチルシラン21.66gとトリエチルシラン33.12gとの混合液を3時間かけて滴下した。得られた溶液を放冷して30℃とした後シュウ酸2gとPGMEA200mlを添加し、得られた溶液をエバポレータにより溶媒留去し、残留液が187.3gになるまで溶媒を留去した。このようにして得られた溶液に酢酸エチル200g、超純水120gを加え、分液ロート中撹拌、静置した。分離した水層を除いてから有機層をさらに2回、超純水120mlを用い水洗した。この様にして得られた有機層にPGMEA120mlを加えた後エバポレータにより溶媒を留去して220.86gまで濃縮した。この液をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分析したところ、ピークトップの分子量は522,000,Mw/Mnは13,000であった。この液をシリコンウェーハー上に塗布し120℃2分、230℃2分、425℃1時間加熱して膜厚300nmの多孔質膜を得た。得られた膜の誘電率は2.45、機械強度は6.52GPaであった。
なお、上記の物性は、以下の方法により測定した。
1.比誘電率 495−CVシステム(日本SSM社製)を使って、自動水銀プローブを用いたCV法で測定した。
2.機械強度(弾性率) ナノインデンター(ナノインスツルメンツ社製)を使って測定した。
【0088】
【表1】

【0089】
低比誘電率絶縁膜の設計方法として、単に比誘電率のみを下げる方法としては、空孔率が高くなるようにしてやればよいことになり、例えば組成物成分として含有される粒子の粒子径を調整して空隙率を高くしたり、ポロジェン等を用いて空孔を形成する材料を使用すればよいわけである。しかし、同じ材料を使用した場合、空孔率と機械強度とはトレードオフの関係であり、図2に実例を示した通り、通常短い区間、ここでは誘電率が2〜3の範囲では、同一の原料と触媒から合成した材料から得られる膜の低誘電率と機械強度との関係は、直線関係になる。そこで、高い機械強度を持つ低誘電率絶縁膜が得られたかどうかを検証するためには、図2に示した通り、比誘電率値に対する機械強度の値を比較する必要がある。
【0090】
本発明の低誘電率絶縁膜は、図2から分かるように、従来法によるものとしては、比誘電率当たりの機械強度として比較的高い値が得られる比較例1〜4の方法で合成したシロキサン重合体を用いて成膜した低誘電率絶縁膜の機械強度/比誘電率に対し、実施例1〜5では機械強度値が高い側にシフト、即ち誘電率が同一の場合に機械強度に明らかな向上が得られたことが分かった。
更に、理由は不明であるが、シルセスキオキサンのケージ化合物塩が有するカウンターカチオンである第4級アンモニウムと構造が異なる第4級アンモニウム水酸化物を塩基性触媒として組み合わせた実施例6は、実施例1〜5を上回る向上を示している。また、シルセスキオキサンのケージ化合物塩を単離せず、反応系で生成させて使用した実施例7も、比較例に対し高い機械強度が得られており、本発明の効果が得られたことが示されている。
また、比較例5はケージ構造を持たないシラノールの第4級アンモニウム塩と加水分解性シランとを縮合して得たシロキサン重合体を使用したものであるが、図2からは、このようなものでは本発明の効果は発現されないことが示されている。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明にかかるシロキサン重合体の製造方法は高い機械強度を与える多孔質膜形成用組成物を調製するために有用なシロキサン重合体を得るための方法として有効である。
本発明のシロキサン重合体は、高機械強度を備えた低誘電率絶縁膜を形成するための多孔質膜形成用組成物を調製するための材料として有効である。
本発明の多孔質膜形成用組成物は、高機械強度を備えた低誘電率絶縁膜を形成するための材料として有効である。
本発明にかかる多孔質膜の形成方法は、高機械強度を備えた低誘電率絶縁膜を形成するための材料を製造する方法として有効である。
本発明の多孔質膜は、高機械強度を備えた低誘電率絶縁膜を形成するための材料として有効である。
本発明の半導体装置は、高速、低消費電力動作を実現する高性能半導体装置として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明の半導体装置の一例の概念断面図を示す。
【図2】図2は、比誘電率と機械強度との相関をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0093】
(図1の説明)
1 基板 2 コンタクト層の層間絶縁膜 3 配線層(M1)の層間絶縁膜 4 ビア層(V1)の層間絶縁膜 5 配線層(M2)の層間絶縁膜 6 ビア層(V2)の層間絶縁膜 7 配線層(M3)の層間絶縁膜 8 ビア層(V3)の層間絶縁膜 9 配線層(M4)の層間絶縁膜 10 ビア層(V4)の層間絶縁膜 11 配線層(M5)の層間絶縁膜 12 ビア層(V5)の層間絶縁膜 13 配線層(M6)の層間絶縁膜 14 ビア層(V6)の層間絶縁膜 15 配線層(M7)の層間絶縁膜 16 ビア層(V7)の層間絶縁膜 17 配線層(M8)の層間絶縁膜 18 金属配線 19 ビアプラグ 20 コンタクトプラグ 21 金属配線 22 金属配線 23 金属配線 24 金属配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シラン化合物の加水分解縮合によるシロキサン重合体の製造方法において、一般式(1)
(SiO1.5−O)nn-+n (1)
(但し、XはNR4を表し、Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。また、nは6から24の整数を表す。)
で表されるシルセスキオキサンのケージ化合物の塩またはその水溶液を準備し、該シルセスキオキサンケージ化合物のシラノール末端に、加水分解性シランを加水分解して縮合するシロキサン重合体の製造方法。
【請求項2】
前記シルセスキオキサンのケージ化合物塩が、下記構造式(2)
【化1】

(2)
(式中R1は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R1は、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
で表されるシルセスキオキサンのケージ化合物塩であることを特徴とする請求項1のシロキサン重合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシロキサン重合体の製造方法において、更に第4級アンモニウム水酸化物を塩基性触媒として添加することを特徴とするシロキサン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記第4級アンモニウム水酸化物が、下記一般式(3)
(R24+OH(3)
(上式中、R2は炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルキル基を表し、各々独立して互いに同じでも異なってもよく、カウンターカチオン[(R24+]が持つ全アルキル置換基R2の合計の炭素数が、シルセスキオキサンのケージ化合物塩のカウンターカチオン1つ当たりが持つ全アルキル置換基の炭素数の平均よりも多い炭素数を持つ)
で表される化合物であることを特徴とする請求項3記載のシロキサン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記加水分解性シラン化合物が、一般式(4)及び一般式(5)
Si(OR34 (4)
4Si(OR53 (5)
(上式中、R3、R5は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R3、R5がそれぞれ複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。R4は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R4が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
から選ばれる1種以上の加水分解性シラン化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のシロキサン重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のシロキサン重合体の製造方法を用いて製造したシロキサン重合体。
【請求項7】
請求項6に記載のシロキサン重合体を含有することを特徴とする多孔質膜形成用組成物。
【請求項8】
請求項7記載の多孔質膜形成用組成物を基板上に塗布し、焼成工程を経て得た多孔質膜。
【請求項9】
請求項7に記載の組成物を基板上に塗布して薄膜を形成する工程と、前記薄膜を焼成する工程とを含む多孔質膜の形成方法。
【請求項10】
請求項7に記載の組成物を基板上に塗布し、焼成工程を経て得た多孔質膜を含む半導体装置。
【請求項11】
請求項7に記載の組成物を含む溶液を基板上に塗布して薄膜を形成する工程と、前記薄膜を焼成する工程とを含む半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−201832(P2008−201832A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36344(P2007−36344)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】