説明

スタンピング可能な強化複合材の半製品を生産する方法

一つ以上のプラスチック及び細断した繊維又は連続したフィラメント(4)を含む、スタンピング可能な強化複合材の半製品を生産する方法において、前記繊維又はフィラメント(4)の軟化温度が、前記材料の軟化温度の最高の温度より高く、前記繊維又はフィラメント(4)を特に重力によってコンベヤ(1)上に堆積させるステップと、総重量の5%と90%の間の割合で前記プラスチックの粉末の粒子(6)を前記繊維又は前記フィラメント(4)上に散布するステップと、前記粒子(6)を前記繊維又は前記フィラメント(4)と混和するステップと、混和物を前記材料の軟化温度より高い温度まで加熱するステップとを含み、混和ステップが、前記混和物(4、6)に、前記コンベヤ(1)の前進方向(15)にほぼ垂直な少なくとも1つの電界をかけるステップを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック複合材の半製品を作成する方法に関する。より詳細には、本発明は、半製品のバインダを成すプラスチックが粉末の形状で使用される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック (plastic)という用語は、一般に熱及び圧力を用いた成型、形成、又は注入成形によって変形可能である、巨大分子の使用に基づく合成材料である。
【0003】
従来技術
特許文献1に記載の方法など、複合材の半製品を製造する従来の方法では、半製品のバインダを粉末状の強化フィラメント又はヤーンと混合することができる。ヤーンは最初に概して重力によってコンベヤ上に堆積し、したがって、ある種のマットレスを形成し、次いで、結合用プラスチック粉末の粒子が散布され、続いて、結合用プラスチックを融解するようにアセンブリを加熱する。次に、アセンブリが冷却されて、スタンピング可能な強化複合材の半製品を得る。
【0004】
こうした半製品は、他の材料から作られたプラスチックバインダと所与の材料のヤーン又は繊維の混合物に由来するので、複合材(composite)と称される。ヤーンは、周知の様式で複合材の機械的特性にかなり寄与するので、複合材の半製品に補強された性質を与える。
【0005】
さらに、本発明の主題である方法から得られる製品は、所与の機械的及び/又は化学的機能、例えば、弾性又は化学的な不活性を満足させることができる、最終的な構成品を得るために再加工することができ、再加工しなければならない、未仕上げ(raw)の形態なので、「半製品」と称される。これは、これらの半製品がスタンピング可能な強化熱可塑性物質(又は「ガラスマット熱可塑性プラスチック」すなわちGMT)と称されることが多いからである。
【0006】
さらに、半製品は、その後適切な型で形成することができる、概してプレートの形状なので、スタンピング可能(stampable)と言われている。したがって、特定の機能を満足させるために、多種多様であり形状が複雑な構成要素を形成することが可能である。
【0007】
しかし、従来技術の方法では、繊維又はヤーンと粉末粒子の混合は、完全に満足いくようには行われず、満足いく場合には、比較的困難な動作を必要とする。したがって、混合動作は、ニードルパンチ加工又はサイクロンなどの技術を使用して実行することができる。
【0008】
ニードルパンチ加工は、絡み合うこと(interlacing)によって繊維を一緒に結合し、それにより繊維内の粒子の分配を均一にするように、繊維マットレスと粉末との混合物を何度も針で突くものである。
【0009】
しかし、こうしたニードルパンチ加工は実行するのが比較的複雑である。これは、使用するプラスチックの性質を異なる複合材の半製品を生産するように変更するときに、周囲の媒体の汚染及び不純物の存在を増加させることがあるからである。したがって、こうした方法は、新しい半製品を生産する前に粉末及び繊維を閉じ込め、又は生産プラントを完全に清掃することを必要とする。さらに、十分に均一な混合物を得るためには、粉末粒子が比較的細かい必要があり、これは、使用する未仕上げの材料のコストを増加させる。
【0010】
さらに、サイクロンによってあらかじめ細断した繊維を粉末粒子と混合することが可能である。次いで、混合物は、気体のスプレー噴霧によって層状にされ、続いて、そのアセンブリをオーブンに通して、粉末を軟化させ固定し、次いで、結合用樹脂の機能を果たすことができる。
【0011】
しかし、サイクロンは、サイクロンを含む高価でかさばる装備を必要とするので、大規模な生産量のために保留している技術である。さらに、正確に混合物を均一にするために、繊維及び粉末の構成材料の間に同様の密度を必要とする。具体的には、周知の様式で、サイクロンは軽い粒子を重い粒子から分離する。したがって、プラスチックベースの粉末粒子と、比較的密度が高いガラス繊維の混合物とを作成することは不可能である。さらに、最も軽い粒子の一部は、サイクロンの排気によって必ず排気され、したがって、混合物中に導入することができない。最後に、サイクロンは比較的短い繊維のみが粉末と混合することを可能にする。
【0012】
ヤーンと粉末の間の均一の混合物を作成するには、上述の問題を避けながら、特許文献1は、3つの加熱ステップ、3つの粉末の堆積ステップ及び2つの圧縮ステップを含むので、比較的長く複雑な方法を使用することを提案する。したがって、こうした方法は、長く高価な生産ラインの使用を必要とし、したがって、このような方法の結果得られた複合材の半製品のコストを増加させる。
【0013】
さらに、複雑な動作によって粉末材料と繊維の混合物の良好な均一性を実現するが、それでも従来技術の方法は粉末粒子及び強化繊維を特定の寸法に限定したままである。したがって、特定の寸法の繊維では、特許文献1の場合には、粒子の寸法がこれらの粒子の最大直径が500μm又はそれどころか200μmまで限定されるように選択される粉末を使用することが必要である。しかし、粒子寸法が細かい粉末の使用はまた、複合材の半製品のコストの値段に影響を及ぼす。
【0014】
逆に、選択される粉末が粗すぎると、繊維と粒子の混合物は、複合材の半製品の機械的特性が低下するか又はそれどころか不良であるというリスクを犯すまで不均一になりすぎるという危険がある。
【特許文献1】米国特許第4487647号
【特許文献2】国際公開第2005/038123号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、実施に過度に困難な混和又は混合の連続を必要とせず、結合用プラスチック粉末の過度に厳格な粒子寸法の選択も必要としない、スタンピング可能な強化複合材の半製品を作成する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、単純で比較的素早く経済的な、複合材の半製品の作成方法を対象としている。本発明の主題である方法は、1つ又は複数のプラスチック及び細断した繊維又は連続したフィラメントを含むスタンピング可能な強化複合材の半製品を作成することを目的としており、繊維又はフィラメントが、好ましくは1つ又は複数の非導電材料から作られ、軟化点が前記材料の最も高い軟化点より高い。本発明の主題である方法は、
繊維又はフィラメントを特に重力によってコンベヤ上に堆積させるステップと、
総重量の5%と90%との間の割合で前記プラスチックの粉末の粒子を繊維又はフィラメント上に散布するステップと、
粒子を繊維又はフィラメントと混合するステップと、
半製品を形成するように、混合物の温度を材料の軟化点より高い温度にするステップとを含む。
【0017】
本発明によれば、混合ステップが、混合物に、コンベヤの前進方向に対して実質上垂直な少なくとも1つの電界をかけるステップを含み、電界が混合物を均一にするように粒子及び繊維又はフィラメントを移動させることが可能であることを特徴とするステップを含む。
【0018】
言い換えると、繊維又はフィラメントと粉末粒子の混合又は混和は、少なくとも1つの電界によって実行され、その少なくとも1つの電界は、コンベヤ上に堆積した繊維又はフィラメントのマットレスの厚さの方向に、粉末粒子及びより狭い範囲では繊維を移動しかきまぜる。したがって、粒子及び繊維又はフィラメント上にかかる静電力によって、混合物を十分均一にすることができ、これらの力が、繊維間の粒子の含浸を改善する。したがって、「実質上垂直な電界」という用語は、繊維マットレスの厚さの中で粉末粒子を移動させることができるコンベヤを横断する方向の電界を指す。これを行うには、電界は、コンベヤに垂直な成分を有すべきである。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、電界は、周波数が2Hzと500Hzとの間であり振幅が100kV/mと80000kV/mとの間である交流電圧を有することができる。
【0020】
こうした電界により、繊維の中心で粉末粒子の十分な混和が可能になる。具体的には、交流電界は、粒子の振動によって移動させることができ、これは混合物を効率的に均一にする傾向を持つ。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、混合ステップが混合物に複数の電界をかけるステップを含む。その実施形態では、2列の電極がそれぞれコンベヤの片側に配置され、電極の列はそれぞれコンベヤの前進方向に連続して配置された複数の電極を含む。2列の電極の一方及び他方にそれぞれ属する2つの電極の間に各電界を生成する。
【0022】
本発明のこの実施形態のある特定の実行形態によれば、電界を、連続する電圧から得ることができ、コンベヤの前進方向に連続して反対方向に向けることができる。連続する電界は、混和結果の差を生じさせるために互いに異なる強度のものでよい。
【0023】
こうした実施形態及び実行形態により、粉末及び繊維又はフィラメントの効率的な混和が可能になる。
【0024】
実際には、電界は、全体的に平坦であり互いに平行な電極の間に発生する。
【0025】
このような電極の形状により、生産することが望まれる複合材の半製品の外面全体にわたって、粉末と繊維とを混合するのに適した電界を生成することが可能になる。
【0026】
本発明の実用的な一実施形態によれば、プラスチックは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸化合物、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、コポリアミド及びコポリエステルからなる群から選択された熱可塑性物質でよい。
【0027】
本発明の代替の実施形態によれば、プラスチックは、不飽和ポリエステル類、ポリエポキシド、メラミンベースの化合物及びフェノール化合物からなる群から選択された熱硬化性材料でよい。
【0028】
こうした熱可塑性プラスチック又は熱硬化性材料は、本発明の特徴的な電界によって混合することを可能にする誘電性の特性を有する。
【0029】
実際には、粉末及び/又は繊維もしくはフィラメントは、添加剤及び/又はフィラーを含むことができ、その添加剤及び/又はフィラーは、半製品に特定の特性、例えば、低密度、難燃性又は抗菌性を与えること、又は粉末の総コストを削減することを目的とする。
【0030】
実際に、ある用途では半製品にフィラー、特に機能性のフィラーを追加することが有用であることを証明することができる。
【0031】
本発明によれば、粉末の粒子寸法は、最小直径0.1μmと最大直径3000μmとの間であり、好ましくは最小直径0.1μmと最大直径1000μmとの間とすることができる。
【0032】
控えめに選択した粉末の特徴であるこのような粒子寸法は、過度にコストを増加することなしに大量の粉末を繊維マットレス中に急速に含浸させることを可能にする。
【0033】
実際には、繊維は直径が1μmと100μmとの間、好ましくは10μmと50μmとの間であり、長さが2mmと200mmとの間、好ましくは10mmと70mmとの間でよい。
【0034】
これらの繊維の寸法も、粉末粒子との均一な混合を実現することを可能にする。
【0035】
本発明によれば、繊維又はフィラメントは、ガラス、アマ、ジュート、サイザル、高強度ポリエチレン、セラミック繊維及びアラミド繊維からなる群から選択された、1つ又は複数の材料から構成することができる。
【0036】
こうした非導電材料により、本発明の主題である方法を実行することが可能になる。
【0037】
本発明の特定の一実施形態では、繊維又はフィラメントが、コンベヤ上に、場合によっては繊維と粉末の混合物上に堆積した下層及び上層上に堆積し、これらの層は、繊維の軟化点より低い軟化点の1つ又は複数のプラスチックを含み、層(2、8)はやはりそれぞれ、5μmと500μmとの間の厚さを有する。
【0038】
このような層の追加により、粉末及び繊維を閉じ込めるので、コンベヤが汚損又は劣化するのを防止する。したがって、ごくわずかな粒子又は繊維しかコンベヤ上に直接堆積しない。これらの下層及び上層はまた、コンベヤなどの生産ラインの構成要素の汚染を制限するので、複合材の半製品を形成する材料又は物質の性質を急速に変化させることを可能にする。さらに、半製品の外側の「皮」を形成するこうした層は、耐薬品性、高接着性、又は半製品の外観の質などの複合材の半製品に特定の特徴を与えることができる。
【0039】
他の実施形態によれば、この方法は、繊維及び粉末の混合物によって形成されたものに対して追加の階層を重ね合わせるステップを含むこともできる。これらの階層は、半製品に様々な機械的、化学的又は他の特性を与えるものである。
【0040】
言い換えると、結合用樹脂で被覆された、いくつかの重ね合わせた繊維層から複合材の半製品を形成することができる。
【0041】
本発明を実施することができる様式及びそこから生じる利点は、以下の生産の例からよりはっきりと現れる。この例は、添付の図によって助けられた、非限定的なガイドとして与えられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
したがって、図には、本発明の主題である方法の一実施形態による複合材の半製品の生産ラインを示す。この生産ラインでは、搬送装置1は従来のコンベヤからなり、そのベルトは矢印15で示す方向に前進する。
【0043】
図示の最初のステップでは、下層2がコンベヤベルト1上に堆積する。この場合、下層2は、ロール3に巻かれたフィルムの形状であり、コンベヤ1の前進と同時に解かれる。
【0044】
本発明によれば、下層2は、本発明の主題である方法に従って得られる半製品を構成する強化繊維より軟化点が低いプラスチックを含む。下層2は、以下に説明する熱処理ステップ中に、複合材の半製品の残りの部分との粘着性を持たされる。
【0045】
図示の方法の2番目のステップは、複合材の半製品を構成する繊維4をコンベヤベルト1上に堆積させるものである。本発明の場合には、繊維4は重力の影響のみでコンベヤ1上に堆積する。したがって、繊維4は、コンベヤ1上に一種の粘着性のない部分を形成する。しかし、本発明の範囲から逸脱することなしに他の堆積機構を想定することができる。
【0046】
本発明の一特徴によれば、繊維4は長さ50mm、直径17μmである。本発明の主題である方法から得られる半製品に与えることが望ましい特性によって、したがって最終的な使用に関して、寸法が異なる繊維の混合物を使用することが可能である。
【0047】
本発明の主題である方法の一実施形態を示す図の例では、繊維4は非導電材料からなる。それらはこの例ではガラス繊維Eであり、そのガラス繊維Eは、コンベヤ1の前進15と同期の速度で動作するチョッパ5を使用して、線密度が2400テックス(すなわち、1000m当たり2400g)の繊維のロービング(roving)又はふさ(lock)を細断することによって獲得される。さらに、繊維4は、以下で説明するように、使用する粉末状の材料と適合性のある寸法に設定される。図1の例では、コンベヤは2m/分の前進速度に設定される。
【0048】
図に示す生産ラインから離れた別個のチョッパを使用してガラス繊維をあらかじめ細断することを想定することもできる。その場合は、あらかじめ細断した繊維を、1200g/分の基準重量をもたらす供給速度で動作する分配器で単純にコンベヤ1上に置くことができる。
【0049】
さらに、繊維4は、好ましくは、アマ、ジュート、サイザル、高強度ポリエチレン、セラミック繊維及びアラミド繊維など、非導電性である、1つ又は複数の他の材料を含むこともできる。それらの存在、具体的には粉末及び他の繊維に比べた割合により、以下で説明する混合ステップで使用する電界と適合性があることが証明される場合は、半導電性又はそれどころか導電性の材料の繊維を使用することもできる。
【0050】
他の非繊維質の製品、例えば、半製品に絶縁の特徴を与えることができる天然由来のフェザーを使用して、本発明の主題である方法を実行することもできる。
【0051】
さらに、本発明の主題である方法から得られる半製品に与えようとする特性によって、したがって最終的な使用に関して、異なる性質及び/又は寸法繊維の混合物を使用することも可能である。
【0052】
しかし、本発明の範囲から逸脱することなく、非常に弱く一緒に結合した繊維のあらかじめ形成したラップ(lap)を使用することも可能である。このラップを、前もって、又は繊維4を排出するステップの代わりに形成することができる。
【0053】
同様に、1方向のラップの形状の、比較的長い繊維あるいはそれどころか連続したヤーン又はフィラメントを使用することができる。こうしたラップ状の連続したフィラメントを繊維の代わりに用いることもでき、上述の繊維の堆積ステップの前後に加えることもできる。
【0054】
本発明の主題である方法の後続のステップの途中で、1つ又は複数のプラスチックからなる粉末の粒子6を繊維「マットレス」に散布し、その粒子6は、最終的な複合材の半製品の繊維4間のバインダとして働くことが意図される。本発明の場合は、使用される材料はポリプロピレンである。
【0055】
図の場合では、粒子6は、単純に重力の影響によってガラス繊維4及び下層2に堆積する。散布装置7が、コンベヤ1の前進15と同時にこれらの粉末粒子6の供給量を測定する。散布装置7は、繊維4と粉末6の間に所望の割合を獲得することを可能にする供給量で動作し、本発明の場合は800g/分の供給量で動作する。
【0056】
図の例では、粉末6を合わせた繊維4の総重量に対する粉末6の質量比は60%である。その質量比は、最終的な複合材の半製品にとって望ましい単位面積当たりの重量、すなわち基本重量に関して決定される。本発明の主題である方法によって獲得される半製品の単位面積当たりの重量は、50g/mから10000g/mの範囲でよい。
【0057】
本発明の一特徴によれば、粉末6が作られるプラスチックはそれぞれ、軟化点が繊維4より大幅に低い。これは非常に単純に、以下で説明する熱処理ステップ中に結合用プラスチックと共に繊維4が融解するのを防止する。それは、所望の力学的強度の特性を与えるために、繊維が最終的な複合材の半製品で完全なままであることが重要だからである。
【0058】
他の多くの熱可塑性物質が、粉末6を作るのに適しており、とりわけ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸化合物、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、コポリアミド及びコポリエステルを挙げることができる。同様に、多くの熱硬化性材料、例えば、不飽和ポリエステル類、ポリエポキシド、メラミンベースの化合物及びフェノール化合物が適していることがある。
【0059】
半製品に特定の特性、例えば、低密度、難燃性又は抗菌性を与えるか、又は粉末などの総コストを削減するように、有機又は無機性のフィラーを(1つ又は複数の)粉末状の材料に追加することを想定することもできる。これらのフィラーを、バインダとして使用される粉末混合することもでき、他のステップに組み込むこともできる。
【0060】
この方法の後続のステップは、図に関連して説明した最初のステップのように、すでにコンベヤ1上に存在する構成成分に上層8を堆積するものである。ちょうど下層2のように、また同じ理由から、上層8は繊維4より軟化点が低いプラスチックからなる。上層8は化学的に不活性であるポリオレフィンベースの材料でよい。
【0061】
同様に、上層8も、コンベヤ1の速度15と同期の速度でフィルム状に堆積する。上層8もまた、分配器9によって解かれるロールの形状で保管される。
【0062】
層2及び8の寸法及び成分の材料は、明らかに所望の使用に関して選択される。有利には、層2は、繊維4及び粉末6がその上に堆積するときにコンベヤ1の輸送ベルトが汚損又は汚染されるのを防止するように、最終的な複合材の半製品と幅が同じでよい。こうした特徴により、ある半製品から他の半製品に素早く通すことが可能になる。
【0063】
層2及び8が最終的な複合材の半製品の外側の「皮」を形成するので、外観、接着性又は耐薬品性に関する「表面」の機能を果たすこともできる。これらの層の厚さはそれぞれ5μmと500μmとの間である。本発明の場合は、層2の厚さ及び層8の厚さは約50μmである。
【0064】
さらに、層2及び8の一方及び/又は他方は、様々な共押出し材料、例えば、コポリアミド化合物とポリプロピレンとの共押出しから作られる2層又は複数層フィルムから構成することができる。こうした複数層材料の役割は、第1に、繊維を含む半製品のコアと結合用樹脂粉末との粘着を、第2に、前に述べたような表面の機能を保証することである。
【0065】
さらに、これらの層の一方及び/又は他方を、格子状のものなど、他の構成材料によって、又は不織タイプの布製品によって形成することもできる。これらの構成材料の機能は半製品の最終的な用途によって決定されるので、層2及び8の構成には多くの構成材料を含むことができる。
【0066】
バインダをなす粉末の粒子6で繊維マットレスを均一に含浸させるように、後続のステップは繊維4を粉末6としっかりと混合するものである。これを行うには、本発明の主題である方法の一特徴によれば、粉末6と繊維4との混合物は、全体的に平坦であり図に垂直な方向で互いに平行な電極10と11との間で発生する電界にさらされる。粉末粒子6及び繊維4は、電界線に全体的に沿って移動する。
【0067】
具体的には、静電粉体の分野で知られた様式では、電界は空気中の二酸素分子を電離し、それが粉末粒子と結合するようになり、そのように形成された電荷はそれらを形成する材料の誘電率に応じて変わる。これが、粉末を十分に移動させるために、低導電性のプラスチックを使用することが好ましい理由である。しかし、混合物として、又はそれに続く散布ステップ中に導電性のフィラーを使用することができる。
【0068】
最終的な複合材の半製品に関して所望の単位面積当たりの重量すなわち基準重量に関して、いくつかの電極10及び11は、0.5mmと70mmとの間の距離だけ間隔をあけて配置しなければならない。残りに関しては、作ろうとしている半製品の厚さに関して間隔を適合するように、電極10及び11の少なくとも1つを可動支持体に取り付けることを想定することができる。
【0069】
緊張下で電極間の空気の破壊電圧に達するのを避けるには、発生した電界に耐えるのに誘電率が十分に高い絶縁材料で被覆することを想定することができる。具体的には、明らかな理由で、電極間に電気アークを発生させないことが望ましい。
【0070】
繊維4と粉末粒子6との均一の混合物を作成するには、周波数が50Hz正弦波の形の交流電圧を有する電界が使用される。さらに、図示の例で生成した電界は振幅が10000kV/mである。
【0071】
電界のこうした特徴により、粒子6及び繊維4を移動させることが可能になる。このような電界を電極10と11との間に加えるときに、粒子6だけでなく、より少ない程度に繊維4も移動する。その理由は、細断されたか又は連続したフィラメントである繊維4がまだ互いに結合しておらず、したがって、電極10と11との間に発生させた電界の影響下で移動することが可能になることである。
【0072】
他の実施形態では、電界の交流電圧は、三角波、方形波又はパルス波あるいはより複雑な波形でよい。波形は、半製品の構成成分及びそれに与えることが望ましい特性に関して決定することができる限りは、明らかに粉末と繊維の混合物の均一性に影響を及ぼす。
【0073】
あるいは、コンベヤ1の前進方向15に連続して配置された、いくつかの電極を取り付けることを想定することもできる。したがって、コンベヤ1の両側に前進方向15に比較的狭く配置された電極間に連続した電界を発生させることによって、混合物を作成することが可能である。次いで、連続する対の電界を、ある方向及び反対の方向、すなわち、上方向及び下方向に向け、したがって、逆平行(antiparallel)の電界を形成することが必要である。これは、繊維4と粉末6との混合物を効率的に均一にすることを可能にする。というのは、粒子6及び繊維4の移動は、ある方向と反対方向に交互にコンベヤ1が前進するに連れて徐々に行われるからである。所望の特性及び/又は使用する材料及び物質に関して、連続した電界は、コンベヤ1に垂直な成分を有する限り、直流又は交流電圧から得ることができ、様々な振幅及び/又は向きを有することができる。
【0074】
形状が異なる、すなわち非平面である電極を取り付けることも可能である。したがって、コンベヤ1の前進方向15に連続して配置され交流電圧をかけられた、特許文献2に記載されている電極など、筒状の電極を使用することができる。これらの電極の形状及び配置は、どんな場合でも、繊維4と粉末粒子6との混合を効率的に均一にするように、コンベヤ1に垂直な電界の成分を与えなければならない。
【0075】
繊維マットレス上に堆積した粉末の量ならびに電界で処理する時間及び振幅に関して、粉末は大幅に移動することがあり、特定の状況下では、層2及び8の外面の過剰な粉末の蓄積を見ることがある。したがって、半製品の使用中の結合に適した表面の状態が作られる。
【0076】
どんな場合でも、複合材の半製品の特徴、具体的には、作ろうとするものの材料の厚さ及び性質に関して、電極10と11との間の電位差を最小値と最大値との間で調節することができる。
【0077】
後続のステップは、複合材の半製品を製造する方法で標準的な熱処理ステップである。概して、こうした熱処理は、半製品を圧縮するステップと同時又はその前に行う。こうした熱処理と圧縮ステップの組合せは、艶出し仕上げ(calendering)と称されることが多い。
【0078】
図の例では、半製品の加熱は熱対流オーブンによって実行され、圧縮は2つの圧縮ロール13と14との間で行われる。
【0079】
加熱、圧縮及び任意選択の冷却ステップの順序は、獲得することが望ましい半製品に関して決定すべきである。どんな場合でも、本発明の一特徴によれば、混合物を、半製品の結合用粉末6ならびに下層2及び上層8を構成するプラスチックの軟化点より高い温度にすることが重要である。これにより、効率的に、これらの材料を粘性にし、それにより繊維4の分配及び粘着性を保証することができる。次いで、半製品は室温まで冷却される。
【0080】
さらに、熱硬化性材料の場合は、図に示していない後続のステップ中に最終的な製品を形成することができるように、加熱温度を架橋温度より低くすべきである。これは、ほとんどの熱硬化性プラスチックがそれぞれ、加熱中に、架橋温度よりずっと低い温度での可逆性の軟化を特徴とする擬塑性(pseusoplastic)状態を通るので可能になる。
【0081】
典型的には、艶出しステップ中の加熱温度は、使用する材料の性質に応じて100℃から400℃の範囲でよい。したがって、例えば、160℃より高い温度での加熱を、ポリプロピレンの融点に達するまで、180℃を超えてポリ乳酸の融点に達するまで、又は220℃を超えてポリアミド6の融点に達するまで実行しなければならない。
【0082】
圧縮ロール13及び14で圧縮する任意選択のステップはまた、半製品に望ましい最終的な厚さまで製品を適合させるようにも働く。
【0083】
さらに、コンベヤ1の輸送ベルトは、半製品のエントレインメント及び加圧に対する抵抗を可能にする機械的特徴と、電界の影響下での空気の電離中に生成されるオゾンによる酸化に対する耐薬品性を有すべきである。図の例では、輸送ベルトは、両面がポリテトラフルオロエチレンで被覆された織物の支持体からなり、ガラス上のポリウレタン又はポリエステルのアセンブリも使用することができる。
【0084】
従来の製造方法の場合には、コンベヤ1の前進速度15は、半製品の基準重量、結合用材料の軟化点及び層2及び8の軟化点、あるいは、機械の寸法及び電界の処理の必要回数などのパラメータに関して調節される。
【0085】
さらに、本発明の主題である方法を実行して、いくつかの重ね合わせた層を含む複合材の半製品を生産することができる。これを行うには、例えば、層2又は8を形成するロールの1つを繊維強化複合材の半製品をすでに含むロールに置き換えることを想定することができる。したがって、繊維のいくつかの階層を重ね合わせた階層状の複合材の半製品が獲得される。
【0086】
さらに、所望の使用に関して、本発明の範囲から逸脱することなしに、繊維4と粉末6の混合物によって形成された階層に関して他の階層を重ね合わせることを想定することができる。したがって、多孔質の構造、例えば、ムース又は蜂の巣構造や、布構造、例えば、不織物、生地又は単方向構造の場合もあり得る。したがって、これらの階層は、半製品に様々な機械的、化学的又は他の特性を与えることができる。
【0087】
繊維と粉末の混合物に関する他の多くの層の重ね合わせも想定することができる。したがって、本発明の主題である方法によって作られた、繊維及び粉末から構成された半製品は、最終的にサンドイッチ構造を形成するように層2又は8の一方を構成することができる。
【0088】
これら全ての重ね合わせ又は挿入は、どんな場合でも共通して、本発明の特徴である、電界を使用した混合ステップを含む。上述の2つの混合物を作成するには、明らかに、繊維の排出を変更するステップと散布するステップを兼ねる必要がある。
【0089】
したがって、本発明の主題である方法によって作成された繊維強化プラスチック樹脂製の複合材の半製品は、工具16で較正された形で切断され、次いで、生産ラインの最後で集積されたプレート17の形態になる。使用する材料の性質に関して、半製品を巻き上げることもでき、それにより、輸送取扱い及び/又は使用を容易にすることができる。
【0090】
プレート又はロールとして半製品は、その後延伸又はスタンピング、すなわち、概して型の中で加熱と圧縮を組み合わせた処理によって変形される。このように成形された複合材の製品は、軽さ、剛性、衝撃強さなどよく知られた特性を有する。したがって、こうした複合材の製品は、自動車のバンパーのための吸収バーを形成することができる。
【0091】
堆積した繊維の供給量、散布した粒子の供給量、コンベヤの前進速度など、本発明の主題である方法の特徴のパラメータは、概して50g/mと5000g/mの間である前記製品にとって望ましい基準重量を得るために、繊維の構成材料及び粉末の構成材料それぞれの混合比及び単位体積当たりの質量に関して決定される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の主題である方法を実行することができる装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 コンベヤ
2 下層
3 ロール
4 繊維
5 チョッパ
6 粒子
7 散布装置
8 上層
9 分配器
10、11 電極
13、14 圧縮ロール
16 工具
17 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のプラスチック及び細断した繊維又は連続したフィラメント(4)を含む、スタンピング可能な強化複合材の半製品を製造する方法において、
前記繊維又は前記フィラメント(4)が、好ましくは1つ又は複数の非導電材料から作られ、軟化点が前記材料の最も高い軟化点より高く、
前記繊維又は前記フィラメント(4)を特に重力によってコンベヤ(1)上に堆積させるステップと、
総重量の5%と90%との間の割合で前記プラスチック粉末の粒子(6)を前記繊維又は前記フィラメント(4)上に散布するステップと、
前記粒子(6)を前記繊維又は前記フィラメント(4)と混合するステップと、
前記半製品を形成するように、前記混合物を前記材料の軟化点より高い温度にするステップと、
を含む方法であって、前記混合ステップが、前記混合物(4、6)に、前記コンベヤ(1)の前進方向(15)に対して実質上垂直な少なくとも1つの電界をかけるステップを含み、前記電界が、前記混合物(4、6)を均一にするように前記粒子(6)及び前記繊維又は前記フィラメント(4)を移動させることが可能であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電界が、周波数が2Hzと500Hzとの間であり、振幅が100kV/mと80000kV/mとの間である交流電圧を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合ステップが、前記混合物(4、6)に複数の電界をかけるステップを含み、2列の電極がそれぞれ前記コンベヤ(1)の片側に配置され、前記各列の電極が、前記コンベヤ(1)の前進方向(15)に連続して配置された複数の電極を含むことを特徴とし、前記各電界が、前記2列の電極の一方と他方とにそれぞれ属する2つの電極の間に発生することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記電界が、連続する電圧から得られ、前記コンベヤ(1)の前進方向(15)に連続して反対方向に向けられることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電界が、全体的に平坦であり互いに平行な電極(10、11)間に発生することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチックが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸化合物、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、コポリアミド及びコポリエステルからなる群から選択された熱可塑性物質であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プラスチックが、不飽和ポリエステル類、ポリエポキシド類、メラミンベースの化合物及びフェノール化合物からなる群から選択された熱硬化性材料であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記粉末が、半製品に特定の特性、例えば、低密度、難燃性又は抗菌性を与えること、又は前記粉末の総コストを削減することを目的とした添加剤及び/又はフィラーを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粉末(6)の粒子寸法が、最小直径0.1μmと最大直径3000μmとの間であり、好ましくは最小直径0.1μmと最大直径1000μmとの間であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記繊維(4)の直径が1μmと100μmとの間、好ましくは10μmと50μmとの間であり、長さが2mmと200mmとの間、好ましくは10mmと70mmとの間であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維又は前記フィラメント(4)が、ガラス、アマ、ジュート、サイザル、高強度ポリエチレン、セラミック繊維及びアラミド繊維からなる群から選択された1つ又は複数の材料からなることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記繊維又は前記フィラメント(4)が、前記コンベヤ(1)上に、場合によっては前記混合物(4、6)上に堆積した下層(2)及び上層(8)上に堆積され、前記下層(2)及び上層(8)が、繊維(4)の軟化点より低い軟化点の1つ又は複数のプラスチックを含むことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
繊維(4)と粉末(6)との前記混合物によって形成されたものと比べて追加の階層を重ねるものであるステップも含み、前記階層が、前記半製品に様々な機械的、化学的又は他の特性を与えるものであることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−531507(P2009−531507A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502161(P2009−502161)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050916
【国際公開番号】WO2007/110524
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(508290194)フィブロリーヌ・フランス (2)
【Fターム(参考)】