説明

ステージ装置及び冷却ユニット

【課題】カスタマイズ性を高め、且つ安定してシャフトモータを冷却することができるステージ装置を提供する。
【解決手段】ステージ装置1Aは、X軸移動体6と、Y軸移動体4と、X軸固定子51及びX軸可動子52を有しX軸移動体6を駆動するためのX軸シャフトモータ5と、Y軸固定子31及びY軸可動子32を有しY軸移動体4を駆動するためのY軸シャフトモータ3と、X軸可動子52及びY軸可動子32における外周面の一又は複数の領域に対して選択的に着脱可能な冷却ジャケット8A,9Aと、チューブtとを備えている。これにより、周囲に配置された部品が干渉しない領域に選択的に冷却ジャケット8A,9Aを着脱することができる。さらに、X軸シャフトモータ5及びY軸シャフトモータ3の発熱量に合わせて冷却ジャケット8A,9Aを取り付ける領域を適宜選択し、冷却量を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトモータを冷却するための冷却手段を備えたステージ装置、及び冷却ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトモータを冷却するための冷却手段を備えたステージ装置が知られており、例えば以下の特許文献1には、冷却手段として軸型リニアモータ用放熱スリーブが開示されている。この放熱スリーブは断面コ字状で延在した部材から成り、その内周面はリニアモータ(シャフトモータ)が有する可動子の外形と同様な輪郭とされた嵌め空間となっている。そして、放熱スリーブは、嵌め空間内に可動子を嵌め込むようにして当該可動子の周面に組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−148399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ステージ装置では、通常、移動体の移動をガイドするガイド部材等の部品が可動子の周囲に配置されている。よって、このようなステージ装置において上述の放熱スリーブを可動子に着脱する際には、可動子の周囲に配置された部品が放熱スリーブと干渉し、放熱スリーブを取り付ける又は取り外すことが困難となるおそれがある。
【0005】
また、上述のような放熱スリーブでは、シャフトモータの発熱量に対して放熱スリーブによる放熱量が著しく大きい又は小さい場合、放熱量を調整することが容易でなく、安定してシャフトモータを冷却することが困難となるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、カスタマイズ性を高め、且つ安定してシャフトモータを冷却することができるステージ装置及び冷却ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るステージ装置は、定盤上を所定の方向に移動する移動体と、所定の方向に沿った軸状の固定子、及び移動体に設けられた可動子を有し、移動体を所定の方向に駆動するためのシャフトモータと、流体を流入させる流体入口、流体を流通させる流体流路、及び流体を排出させる流体出口を有し、可動子の外周面における一又は複数の領域に対し選択的に着脱可能な冷却部材と、流体入口に接続され、冷却部材に流体を流入させる硬質又は軟質の流入チューブと、流体出口に接続され、冷却部材から流体を流出させる硬質又は軟質の流出チューブとを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る冷却ユニットは、定盤上を所定の方向に移動する移動体と、所定の方向に沿った軸状の固定子、及び移動体に設けられた可動子を有し、移動体を所定の方向に駆動するためのシャフトモータとを備えるステージ装置に取り付けられる冷却ユニットであって、流体を流入させる流体入口、流体を流通させる流体流路、及び流体を排出させる流体出口を有し、可動子の外周面における一又は複数の領域に対し選択的に着脱可能な冷却部材と、流体入口に接続され、冷却部材に流体を流入させる硬質又は軟質の流入チューブと、流体出口に接続され、冷却部材から流体を流出させる硬質又は軟質の流出チューブとを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るステージ装置及び冷却ユニットでは、流体流路を有する冷却部材を、可動子における外周面の一又は複数の領域に対して選択的に着脱することが可能となっている。よって、可動子の周囲に部品が配置されている場合であっても、当該部品が干渉しない領域に選択的に冷却部材を取り付ける又は取り外すことができ、冷却部材を可動子に容易に着脱することが可能となる。さらに、このように冷却部材を一又は複数の領域に対して選択的に着脱することが可能であるため、シャフトモータの発熱量に合わせて冷却部材を取り付ける領域を適宜選択し、冷却量を調整することができる。従って、本発明によれば、カスタマイズ性を高め、且つ安定してシャフトモータを冷却することができる。
【0010】
また、冷却部材は、移動体と可動子との間に配置されて可動子を移動体に固定するブラケットを含むことが好ましい。この場合、移動体と可動子との間に、ブラケットを兼ねる冷却部材が介されることとなり、可動子から移動体への熱の移動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カスタマイズ性を高め、且つ安定してシャフトモータを冷却することができるステージ装置及び冷却ユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るステージ装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示すステージ装置のX軸可動子に取り付けられた冷却ユニットにおける液体の流通経路の一例を示す概略斜視図である。
【図3】図1に示すステージ装置のY軸可動子に取り付けられた冷却ユニットにおける液体の流通経路の一例を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るステージ装置のX軸可動子に取り付けられた冷却ユニットにおける液体の流通経路の一例を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るステージ装置のY軸可動子に取り付けられた冷却ユニットにおける液体の流通経路の一例を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るステージ装置のX軸可動子に取り付けられた冷却ユニットにおける液体の流通経路の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るステージ装置及び冷却ユニットの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、「上」「下」の語は、図面の上下方向に対応するものであり便宜的なものである。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係るステージ装置を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係るステージ装置1Aは、例えば、半導体を検査するための半導体検査装置や、半導体を露光するための半導体露光装置等に使用されるものである。このステージ装置1Aは、定盤2、Y軸シャフトモータ3,3、Y軸移動体4、X軸シャフトモータ5,5、X軸移動体6、テーブル部7、冷却ジャケット(冷却部材)8A,9A及びポンプ500を備えている。なお、「X軸方向」とは定盤2の上面2aに平行な任意の一方向(所定の方向)であり、「Y軸方向」とは上面2aに平行且つX軸方向と垂直な他方向(所定の方向)である。
【0015】
定盤2は直方体状の石材から成り、その上面2aは平面加工が施されることにより平面度が高められている。また、定盤2におけるY軸方向に延在する側面のうち、後述のY軸ヨーエアベアリング43から空気が噴射される側面2bについても、平面加工が施されて平面度が高められている。
【0016】
Y軸シャフトモータ3,3は、Y軸移動体4を駆動させるためのものであり、それぞれY軸固定子31及びY軸可動子32を有している。
【0017】
Y軸固定子31は、その内部に複数の磁石を有しており、これら複数の磁石の同極同士が接合されて軸状を成している。一対のY軸固定子31,31は、定盤2の上面2aにおけるX軸方向両端部に並設されており、それぞれY軸方向に沿って延在している。図1において紙面右上のY軸固定子31は、定盤2の上面2aから上方に向けて突出した柱33,33によって両端部が固定されている。図1において紙面左下のY軸固定子31は、定盤2の側面2bから上方に向けて突出した柱34,34によって両端部が固定されている。
【0018】
Y軸可動子32は、Y軸固定子31に沿って可動するものであり、Y軸固定子31に外挿されている。このY軸可動子32は、内部にY軸固定子31を取り囲むコイルを有しており、このコイルに電流を流すことで駆動される。
【0019】
このY軸可動子32は、ブラケット10AによってY軸移動体4に固定されている。ブラケット10Aは、Y軸可動子32と第1Y軸移動体4a(後述)との間、及びY軸可動子32と第2Y軸移動体4b(後述)との間に配置され、L字状を成している。ブラケット10Aは、Y軸可動子32の側面32d及び下面32cに沿うようにしてY軸可動子32のY軸方向両端部にボルト(不図示)で着脱可能に取り付けられており、側面32d及び下面32cと当接している。ここで、ブラケット10Aは、必ずしも側面32d及び下面32cに沿うようにして取り付ける必要は無く、側面32d及び上面32aに沿うようにして取り付けても良い。また、ブラケット10Aは、必ずしも2つ用いる必要はなく、1つ又は3つ以上用いても良い。このように、ブラケット10Aは、Y軸可動子32における外周面の一又は複数の領域(以下、「取付領域」ともいう)に対して選択的に着脱可能となっており、本実施形態では、側面32d及び下面32cにおける両端部が取付領域として選択されている。
【0020】
ブラケット10Aには、流体流路10Lが設けられている(図2参照)。これにより、当該ブラケット10Aは、この流体流路10Lに水(流体)を流通させることで、Y軸可動子32の可動により発生した熱を吸収して当該Y軸可動子32を冷却することが可能となっている。このように、ブラケット10Aは冷却部材に含まれる。
【0021】
Y軸移動体4は、第1Y軸移動体4a及び第2Y軸移動体4bを有している。第1Y軸移動体4a及び第2Y軸移動体4bは、それぞれブロック状を成しており、後述のX軸固定子51,51によって互いに連結されている。そして、Y軸移動体4は、各Y軸可動子32を駆動することで定盤2の上面2a上をY軸方向に移動する。
【0022】
第2Y軸移動体4bには、Y軸移動体4のY軸方向の移動をガイドするY軸ガイド41が取り付けられている。このY軸ガイド41は、側板42と、Y軸ヨーエアベアリング43,43とを有している。
【0023】
側板42は、Y軸ヨーエアベアリング43、43を支持するための部材であり、直方体状を成している。この側板42は、その上部が第2Y軸移動体4bの下部に取り付けられており、定盤2の側面2bと対向する面42aを有している。
【0024】
Y軸ヨーエアベアリング43,43は、空気を噴射する気体静圧軸受として機能するものであり、側板42の面42aにY軸方向に互いに離間して取り付けられている。このように構成されたY軸ガイド41では、Y軸ヨーエアベアリング43,43が定盤2の側面2bに向けて空気を噴射することで、Y軸移動体4の移動をガイドする。
【0025】
第1Y軸移動体4a及び第2Y軸移動体4bの間には、X軸移動体6のX軸方向の移動をガイドするガイドレール44が連結されている。このガイドレール44は、X軸方向に延在しており、上方が開口したコ字状の断面を成している。
【0026】
X軸シャフトモータ5,5は、X軸移動体6を駆動させるためのものであり、それぞれX軸固定子51及びX軸可動子52を有している。X軸固定子51及びX軸可動子52は、それぞれY軸固定子31及びY軸可動子32と同様な構成とされている。一対のX軸固定子51,51は、第1Y軸移動体4a及び第2Y軸移動体4bの間にY軸方向に互いに離間して連結されており、それぞれX軸方向に沿って延在している。X軸可動子52は、X軸固定子51に外挿されており、X軸固定子51に沿って可動する。
【0027】
X軸可動子52は、上述のY軸可動子32と同様に、ブラケット10AによってX軸移動体6に固定されている。すなわち、当該ブラケット10Aは、流体流路10Lに水を流通させることで、X軸可動子52の可動により発生した熱を吸収して当該X軸可動子52を冷却することが可能となっている。
【0028】
X軸移動体6は、定盤2の上面2a上をX軸方向に移動するものであり、第1X軸移動体6a及び第2X軸移動体6bを有している。第1X軸移動体6a及び第2X軸移動体6bは、それぞれ直方体状を成している。第1X軸移動体6a及び第2X軸移動体6bは、テーブル部7によって互いに連結されている。そして、X軸移動体6は、各X軸可動子52を駆動することで定盤2の上面2a上をX軸方向に移動する。テーブル部7は、半導体等を設置するためのものであり、半導体等が設置される円盤状の部材を有している。
【0029】
冷却ジャケット8Aは、Y軸可動子32の可動により発生した熱を吸収してY軸可動子32を冷却するものである。冷却ジャケット9Aは、X軸可動子52の可動により発生した熱を吸収してX軸可動子52を冷却するものである。冷却ジャケット8A,9Aは、それぞれ直方体状を成しており、それぞれY軸可動子32及びX軸可動子52における外周面の一又は複数の取付領域に対してボルトB,Bにより選択的に着脱可能となっている。
【0030】
ここでの取付領域は、Y軸可動子32及びX軸可動子52の周囲に設けられている部品の配置や取り回しに基づいて選択される。すなわち、冷却ジャケット8Aは、Y軸可動子32の上面32a及び側面32dを取付領域としてこれらに当接するように取り付けられている。また、冷却ジャケット9Aは、X軸可動子52の上面52a及び下面52cを取付領域としてこれらに当接するように取り付けられている。特に、本実施形態では、第2Y軸移動体4bに取り付けられているY軸可動子32の下方にY軸ガイド41が配置されており、当該Y軸可動子32の外周面のうち下面32cに冷却ジャケット8Aを取り付けることが困難となっているため、上述したように、冷却ジャケット8Aについて上面32a及び側面32bが取付領域として選択されている。
【0031】
冷却ジャケット8Aには、流体流路8Lが設けられており(図3参照)、この流体流路8Lに水を流通させることで、Y軸可動子32の可動により発生した熱を吸収することが可能となっている。また、冷却ジャケット9Aには、流体流路9Lが設けられており(図2参照)、この流体流路9Lに水を流通させることで、X軸可動子52の可動により発生した熱を吸収することが可能となっている。
【0032】
ポンプ500は、冷却ジャケット8A,9A及びブラケット10Aに水を圧送するための圧送手段である。このポンプ500は、例えば、定盤2から離れた位置に別体に設けられている。
【0033】
なお、ステージ装置1Aでは、X軸移動体6を鉛直方向に支持するためのリフトエアベアリング100が、第1X軸移動体6aの下部に1つ、第2X軸移動体6bの下部に2つ取り付けられている。また、Y軸移動体4を鉛直方向に支持するためのリフトエアベアリング200が、第1Y軸移動体4aの下部に1つ、第2Y軸移動体4bの下部に2つ取り付けられている。
【0034】
次に、本実施形態の冷却ユニットにおける水の流通経路について詳細に説明する。
【0035】
図2は図1に示すステージ装置のX軸可動子に取り付けられた冷却ユニットにおける水の流通経路の一例を示す概略斜視図、図3は図1に示すステージ装置のY軸可動子に取り付けられた冷却ユニットにおける水の流通経路の一例を示す概略斜視図である。
【0036】
図2に示すように、X軸可動子52を冷却する冷却ユニットU1は、冷却ジャケット9A,9A、ブラケット10A,10A、及びチューブtによって構成されている。また、図3に示すように、Y軸可動子32を冷却する冷却ユニットU2は、冷却ジャケット8A,8A、ブラケット10A,10A、及びチューブtによって構成されている。
【0037】
図2及び図3に示すように、ブラケット10Aの流体流路10Lは、水を流通させるものであり、ブラケット10Aの外形形状、すなわちL字状に沿うように設けられている。このブラケット10Aには、流体流路10Lに水を流入させる流体入口11、及び流体流路10Lから水を排出させる流体出口12が設けられている。流体入口11は一方の端面に位置し、流体出口12は他方の端面に位置している。
【0038】
流体入口11及び流体出口12には、それぞれ継手cが取り付けられている。継手cには、樹脂等で形成され軟質で可撓性を有するチューブtが接続されている。継手cは、ここでは、チューブtの着脱が容易に行えるいわゆるワンタッチ継手となっている。流体入口11に接続されたチューブtはブラケット10Aに水を流入させる流入チューブとして機能し、流体出口12に接続されたチューブtはブラケット10Aから水を流出させる流出チューブとして機能する。なお、チューブtは、金属等で形成され硬質で高剛性のものであっても良い。
【0039】
図2に示すように、冷却ジャケット9Aの流体流路9Lは、水を流通させるものである。この流体流路9Lは、上方視ではU字状、Y軸方向からの側面視では直線状を成しており、冷却ジャケット9Aに広範に設けられている。冷却ジャケット9AのX軸方向に対向する側面9o及び側面9pのうち側面9oには、流体流路9Lに水を流入させる流体入口91、及び流体流路9Lから水を排出させる流体出口92が、互いに離間して設けられている。流体入口91及び流体出口92には、チューブtが接続された継手cが取り付けられている。流体入口91に接続されたチューブtは冷却ジャケット9Aに水を流入させる流入チューブとして機能し、流体出口92に接続されたチューブtは冷却ジャケット9Aから水を流出させる流出チューブとして機能する。
【0040】
そして、冷却ユニットU1では、一方のブラケット10A、下面52cに取り付けられた冷却ジャケット9A、上面52aに取り付けられた冷却ジャケット9A、他方のブラケット10Aが、チューブtを介してこの順番で水を流通させる。
【0041】
図3に示すように、冷却ジャケット8Aの流体流路8Lは、水を流通させるものであり、冷却ジャケット9Aの流体流路9L(図2参照)と同様な構成とされている。冷却ジャケット8Aの側面8oには、流体入口81及び流体出口82が、互いに離間して設けられている。流体入口81及び流体出口82には、チューブtが接続された継手cが取り付けられている。流体入口81に接続されたチューブtは冷却ジャケット8Aに水を流入させる流入チューブとして機能し、流体出口82に接続されたチューブtは冷却ジャケット8Aから水を流出させる流出チューブとして機能する。
【0042】
そして、冷却ユニットU2では、一方のブラケット10A、他方のブラケット10A、側面32bに取り付けられた冷却ジャケット8A、上面32aに取り付けられた冷却ジャケット8Aが、チューブtを介してこの順番で水を流通させる。
【0043】
また、X軸可動子52及びY軸可動子32には、それぞれケーブル(不図示)が接続されている。これらのケーブルは、ケーブルを支持し保護するためのケーブル保護部材(例えばケーブルベア(登録商標)等)に沿わされている。さらに、チューブtもこのケーブル保護部材に沿わされている。これによって、X軸可動子52及びY軸可動子32が可動しても、チューブtが他の部品と接触して破損することが抑制されている。
【0044】
このような冷却ユニットU1,U2を備えたステージ装置1Aでは、電源を投入すると、まず一方のX軸可動子52に取り付けられた冷却ジャケット9A及びブラケット10Aにポンプ500から所定量の水が圧送される。そして、この水が他方のX軸可動子52に取り付けられた冷却ジャケット9A及びブラケット10Aに供給された後、ポンプ500に戻されることで、水が循環するようになっている。また、電源を投入すると、一方のY軸可動子32に取り付けられた冷却ジャケット8A及びブラケット10Aにポンプ500から所定量の水が圧送される。そして、この水が他方のY軸可動子32に取り付けられた冷却ジャケット8A及びブラケット10Aに供給された後、ポンプ500に戻されることで、水が循環するようになっている。
【0045】
また、冷却ユニットU1,U2を備えたステージ装置1Aでは、X軸シャフトモータ5の発熱量が冷却ジャケット9A及びブラケット10Aによる冷却量よりも大きい場合、新たな冷却部材を例えばX軸可動子52の側面52b等に追加で取り付けると共に、チューブtの接続を適宜変えて流通経路を変更すること(カスタマイズすること)で、冷却量を発熱量に応じて調整することが可能となっている。
【0046】
また、冷却ユニットU1,U2を備えたステージ装置1Aでは、例えばX軸シャフトモータ5の発熱量やY軸シャフトモータ3の発熱量が冷却ジャケット8A,9A及びブラケット10Aによる冷却量よりも小さい場合、これらの少なくとも1つを取り外すと共に、チューブtの接続を適宜変えて流通経路を変更すること(カスタマイズすること)で、冷却量を発熱量に応じて調整することが可能となっている。
【0047】
以上、本実施形態においては、流体流路8Lを有する冷却ジャケット8Aが、Y軸可動子32における外周面の一又は複数の取付領域に対して選択的に着脱することが可能となっている。また、流体流路9Lを有する冷却ジャケット9Aが、X軸可動子52における外周面の一又は複数の取付領域に対して選択的に着脱することが可能となっている。さらに、流体流路10Lを有するブラケット10Aが、X軸可動子52及びY軸可動子32における外周面の一又は複数の取付領域に対して選択的に着脱することが可能となっている。従って、X軸可動子52及びY軸可動子32の周囲に部品が配置されている場合であっても、当該部品が干渉しない取付領域に選択的に冷却ジャケット8A,9A及びブラケット10Aを取り付けることができる。よって、本実施形態に係るステージ装置1Aは、カスタマイズ性を高めることができる。
【0048】
また、本実施形態においては、冷却ジャケット8A,9A及びブラケット10Aが、一又は複数の取付領域に対して選択的に着脱することが可能である。そのため、X軸シャフトモータ5及びY軸シャフトモータ3の発熱量に合わせて冷却ジャケット8A,9A及びブラケット10Aの取付領域を適宜選択し、冷却量を調整することができる。よって、本実施形態に係るステージ装置1Aは、安定してX軸シャフトモータ5及びY軸シャフトモータ3を冷却することができる。
【0049】
また、本実施形態においては、上述したように、X軸可動子52をX軸移動体6に固定するブラケット10Aが冷却部材として兼用されている。このため、このブラケット10AによりX軸移動体6とX軸可動子52とが熱的に直接接触することが防止される。従って、X軸可動子52からX軸移動体6への熱の移動を抑制でき、X軸移動体6が熱膨張して当該X軸移動体6の移動の精度が低下することを抑制できる。同様に、Y軸移動体4とY軸可動子32との間における熱の移動ついても、ブラケット10Aにより抑制できる。
【0050】
なお、本実施形態においては、ブラケット10AがL字状を成していることからX軸可動子52及びY軸可動子32の側面よりも外側に突出しているため、下部に位置する流体入口11又は流体出口12がX軸可動子52、Y軸可動子32及び周辺部材に隠れることが少なく、チューブtを継手cに接続しやすくなっている。また、ステージ装置1Aでは、いわゆるワンタッチ継手である継手cによりチューブtの着脱が容易に行えるようになっている。そのため、流通経路の変更やメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0051】
また、本実施形態においては、X軸可動子52,52を冷却する系統と、Y軸可動子32,32を冷却する系統との2系統が設けられているため、全ての冷却ジャケット8A,9A及びブラケット10Aに1系統のみで水を流通させる場合に比して、冷却の効率を向上させることができる。
【0052】
次に、本発明の第2実施形態に係るステージ装置について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0053】
図4は本発明の第2実施形態に係るステージ装置のX軸可動子に取り付けられた冷却ユニットにおける水の流通経路の一例を示す概略斜視図、図5は本発明の第2実施形態に係るステージ装置のY軸可動子に取り付けられた冷却ユニットにおける水の流通経路の一例を示す概略斜視図である。
【0054】
図4に示すように、本実施形態に係るステージ装置1Bに取り付けられた冷却ユニットU3が第1実施形態に係る冷却ユニットU1(図2参照)と異なる点は、X軸可動子52の上面52aに冷却ジャケット9Bを2つ備えている点である。また、図5に示すように、本実施形態に係るステージ装置1Bに取り付けられた冷却ユニットU4が第1実施形態に係る冷却ユニットU2(図3参照)と異なる点は、Y軸可動子32の上面32aに冷却ジャケット8Bを2つ備えている点である。
【0055】
図4に示すように、冷却ジャケット9BのY軸方向における長さは、冷却ジャケット9AのY軸方向における長さの約半分とされている。これにより、冷却ジャケット9BのX軸可動子52への当接面積は冷却ジャケット9Aの約半分とされており、上面52aに冷却ジャケット9Bを2つ取り付けることが可能となっている。同様に、図5に示すように、冷却ジャケット8BのX軸方向における長さは、冷却ジャケット8AのY軸方向における長さの約半分とされており、上面32aに冷却ジャケット8Bを2つ取り付けることが可能となっている。
【0056】
そして、図4に示すように、冷却ユニットU3では、一方のブラケット10A、下面52cに取り付けられた冷却ジャケット9A、上面52aに取り付けられた一方の冷却ジャケット9B、上面52aに取り付けられた他方の冷却ジャケット9B、他方のブラケット10Aが、チューブtを介してこの順番で水を流通させる。
【0057】
また、図5に示すように、冷却ユニットU4では、一方のブラケット10A、他方のブラケット10A、側面32bに取り付けられた冷却ジャケット8A、上面32aに取り付けられた一方の冷却ジャケット8B、上面32aに取り付けられた他方の冷却ジャケット8Bが、チューブtを介してこの順番で水を流通させる。
【0058】
このような冷却ユニットU3,U4を備えたステージ装置1Bが、第1実施形態に係る上記ステージ装置1Aと同様な効果を奏することは言うまでもない。
【0059】
また、本実施形態においては、冷却ジャケット8BのY軸可動子32への当接面積が、冷却ジャケット8Aの約半分とされているため、ステージ装置1Aに比して、細かく冷却量を調整することができる。同様に、冷却ジャケット9BのX軸可動子52への当接面積が、冷却ジャケット9Aの約半分とされているため、ステージ装置1Aに比して、細かく冷却量を調整することができる。
【0060】
次に、本発明の第3実施形態に係るステージ装置について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0061】
図6は、本発明の第3実施形態に係るステージ装置のX軸可動子に取り付けられた冷却部材における水の流通経路の一例を示す概略斜視図である。図6に示すように、本実施形態に係るステージ装置1Cに取り付けられた冷却ユニットU5が第1実施形態に係る冷却ユニットU1(図2参照)と異なる点は、X軸可動子52の上面52aに冷却ジャケット9Bを備えている点、下面52cに冷却ジャケット9Aを備えていない点、ブラケット10Aに代えてブラケット10Bを備えている点である。
【0062】
ブラケット10Bは、I字状を成しており、側面52dにのみ当接している。これにより、ブラケット10BのX軸可動子52への当接面積はブラケット10Aの約半分とされている。そして、冷却ユニットU5では、一方のブラケット10B、冷却ジャケット9B、他方のブラケット10Bが、チューブtを介してこの順番で水を流通させる。
【0063】
このような冷却ユニットU5を備えたステージ装置1Cが、第1実施形態に係るステージ装置1Aと同様な効果を奏することは言うまでもない。
【0064】
また、本実施形態においては、冷却ジャケット9BのX軸可動子52への当接面積が冷却ジャケット9Aの約半分とされ、さらにブラケット10BのX軸可動子52への当接面積がブラケット10Aの約半分とされているため、ステージ装置1Aに比して、細かく冷却量を調整することができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、水の流通経路は、図2〜6に示す流通経路に限定されず、チューブtの接続を変更することで様々な流通経路とすることが可能である。また、上記実施形態では、流体として水が用いられているが、水以外の液体が流体として用いられても良いし、空気等の気体が流体として用いられても良い。要は、シャフトモータで発生した熱を吸収できる流体であれば良い。
【0066】
また、上記実施形態では、X軸可動子52,52を冷却する系統と、Y軸可動子32,32を冷却する系統との2系統の冷却系統が設けられているが、各系統を可動子毎に2つに分けて、4系統の冷却手段が設けられていても良い。こうすると、さらに冷却の効率が向上する。
【0067】
また、上記実施形態では、X軸シャフトモータ5,5及びY軸シャフトモータ3,3が用いられているが、シャフトモータは1つのみでも良い。また、上記実施形態では、継手cは、いわゆるワンタッチ継手となっているが、ワンタッチ継手でなくても良い。
【0068】
また、上記実施形態では、冷却ジャケット8A,8B,9A,9B及びブラケット10A,10Bは、ボルトによってX軸可動子52又はY軸可動子32に着脱可能に取り付けられているが、これに限定されるものではない。例えば、冷却部材及び可動子のいずれか一方に突起を設け、他方に当該突起と係合する係合孔を設けて、これら突起と係合孔とを係合させることで冷却部材を可動子に着脱可能に取り付けても良い。また、接着材や両面テープによって冷却部材を可動子に着脱可能に取り付けても良い。また、冷却部材の一部に、可動子と嵌め合う嵌合機構を設け、この嵌合機構を可動子に嵌合させることで冷却部材を可動子に着脱可能に取り付けても良い。要は、冷却部材と可動子との間で熱の移動が可能なように、冷却部材が可動子に着脱可能であれば良い。
【0069】
また、上記実施形態の流体流路8Lは、流体入口81が側面8oに設けられ、流体出口82が側面8pに設けられ、これら流体入口81と流体出口82との間を蛇行するように流体流路8Lが設けられていても良い。要は、流体入口81と流体出口82とで連通された流体流路8Lであれば良い。流体流路9Lについても同様である。
【0070】
また、上記実施形態では、可動子が可動中か停止中かによらず一定量の水が流通させられているが、可動子が可動中にのみ水が流通させられても良い。また、一定量の水が流通させられるのではなく、可動子の発熱量に応じて水の流通量が調整されても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、X軸可動子52がブラケット10A,10Bを介してX軸移動体6に取り付けられているが、ブラケット10A,10Bを介さず直接X軸移動体6に取り付けられても良い。Y軸可動子32のY軸移動体4への取り付けについても同様である。
【符号の説明】
【0072】
1A,1B,1C…ステージ装置、2…定盤、3…Y軸シャフトモータ、4…Y軸移動体、5…X軸シャフトモータ、6…X軸移動体、8A,8B,9A,9B…冷却ジャケット(冷却部材)、8L,9L…流体流路、10A,10B…ブラケット、10L…流体流路、11…第1接続口(流体入口、流体出口)、12…第2接続口(流体入口、流体出口)、31…Y軸固定子、32…Y軸可動子、51…X軸固定子、52…X軸可動子、81,91…第1接続口(流体入口、流体出口)、82,92…第2接続口(流体入口、流体出口)、t…チューブ(流入チューブ、流出チューブ)、U1,U2,U3,U4,U5…冷却ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤上を所定の方向に移動する移動体と、
前記所定の方向に沿った軸状の固定子、及び前記移動体に設けられた可動子を有し、前記移動体を前記所定の方向に駆動するためのシャフトモータと、
流体を流入させる流体入口、前記流体を流通させる流体流路、及び前記流体を排出させる流体出口を有し、前記可動子の外周面における一又は複数の領域に対し選択的に着脱可能な冷却部材と、
前記流体入口に接続され、前記冷却部材に前記流体を流入させる硬質又は軟質の流入チューブと、
前記流体出口に接続され、前記冷却部材から前記流体を流出させる硬質又は軟質の流出チューブと、
を備えたことを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記冷却部材は、前記移動体と前記可動子との間に配置されて前記可動子を前記移動体に固定するブラケットを含むことを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
定盤上を所定の方向に移動する移動体と、前記所定の方向に沿った軸状の固定子、及び前記移動体に設けられた可動子を有し、前記移動体を前記所定の方向に駆動するためのシャフトモータとを備えるステージ装置に取り付けられる冷却ユニットであって、
流体を流入させる流体入口、前記流体を流通させる流体流路、及び前記流体を排出させる流体出口を有し、前記可動子の外周面における一又は複数の領域に対し選択的に着脱可能な冷却部材と、
前記流体入口に接続され、前記冷却部材に前記流体を流入させる硬質又は軟質の流入チューブと、
前記流体出口に接続され、前記冷却部材から前記流体を流出させる硬質又は軟質の流出チューブと、
を備えたことを特徴とする冷却ユニット。
【請求項4】
前記冷却部材は、前記移動体と前記可動子との間に配置されて前記可動子を前記移動体に固定するブラケットを含むことを特徴とする請求項3に記載の冷却ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−165604(P2012−165604A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25184(P2011−25184)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】