説明

スマート積層ヒーター面

表面を加熱するヒーター・システム及び関連する方法を本発明により提供する。本発明は、一実施例では、加熱面を形成する表面と、加熱面に接して設けた積層ヒーターとを含んでいる。また、加熱面に沿って複数接続点が配置され、該接続点が、複数リード線に接続されているのに加えて、積層ヒーターの抵抗発熱層と電気接触している。一実施例では、複数リード線を介してマルチプレクサが複数接続点と接続され、制御装置がマルチプレクサと接続されている。その場合、マルチプレクサは、抵抗を複数接続点から制御装置へ順序付けて伝送し、制御装置は、接続点間の抵抗差に基づいて複数接続点の各々へ供給される電力量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは電気ヒーター、より具体的には、特に調理グリルの用途に使用される加熱面用熱ループの温度反応時間及びスケジュールを制御かつ改善するためのヒーター及び関連方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調理グリルの公知用途、例えば業務用の場合、調理サイクル中の全体的な温度変化を低減するために、調理面として比較的大きい質量が備えられている。通常、アルミニウム又は鋳鉄のこの大きな質量により、しばしば熱慣性と呼ばれる特性が得られ、その結果、グリル調理面上に被調理品、例えば未加熱のハンバーガー・パティ又は卵を載せても、全体の質量温度が著しく降下することはない。
【0003】
多くの公知グリル構成の場合、概して、グリル下側に発熱体が固定されている。これらの発熱体は、通常、管状又はストリップ状のヒーターであり、下側に間隔をおいて機械式にクランプされボルト止めされている。別の公知グリル構成では、管状ヒーターが、大質量のグリル内へ鋳込まれることで、発熱体とグリルとの接触が改善され、熱伝達が改善されている。
【0004】
グリルの質量が大きいので、また大多数の構成の場合に発熱体とグリルとの接触が密でないので、調理面を加熱する場合、調理面に載せられる各被調理品及びすべての被調理品に迅速に反応することは、実際には不可能だった。したがって、グリルの熱慣性は、温度を著しく変化させずに目標レベルに制御するのに採用された実際的な手段だった。しかし、グリルは、大質量の結果、特に重く、嵩高な設備となり、そのような設備を輸送し、業務用の調理環境に設置せねばならなかった。加えて、グリル全体を目標温度まで加熱するのに使用するエネルギー量は、かなり多量であり、調理面を部分的に使用する場合、余分のエネルギー量は、嵩高グリルの温度を目標レベルに維持することで無駄となる。
【0005】
グリル温度制御のために温度を検出しフィードバックする場合、熱電対が、通常、グリル下側の一定の複数区域に配置される。しかし、設置可能な熱電対の数は、スペース及びコストの点で制限されている。加えて、これらの用途での熱電対は、概して、グリル表面から離れているので、比較的反応時間が遅い。温度センサの数が限られているため、グリルに沿った実際温度のリアルタイムの検出は、公知システムでは不可能だった。
【0006】
現在の大部分の業務用の調理は、嵩高のグリルの熱慣性によって得られる平均的な温度の結果である。グリルは、全グリル又はグリルの大きな区域が目標平均温度で調理できるように、単一ループとして制御されている。したがって、グリル上に、どのような積載物が置かれたのか、例えばハンバーガー・パティが置かれたのかどうかを正確に効率的に認識する手段は存在せず、また、それ以上に、新しい積載物がグリル調理面の何処に置かれたかを容易かつ自動的に検知する手段は存在しなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、具体的な調理スケジュール又は温度分布をプログラミングできる制御システムを有する一方、積載物の正確な位置と種類を自動的に検出し、適切な調理スケジュール又は温度分布を確認し、その適当なスケジュールに従って積載物を加熱することのできるシステムが、まさに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一好適実施例による加熱システムは、加熱面を形成する基板と、加熱面に接して設けられ、少なくとも1抵抗発熱層を形成する積層ヒーターと、加熱面に沿って配置され、抵抗発熱層と電気接触する複数接続点とを含んでいる。加えて、複数接続点に接続された複数リード線が備えられ、該リード線を介してマルチプレクサが複数接続点に接続されている。マルチプレクサには制御装置が接続され、この場合、マルチプレクサは、抵抗を複数接続点から制御装置へ順序付けて伝送し、制御装置は、接続点間の抵抗差に基づいて複数接続点の各々に供給される電力量を制御する。
【0009】
別の実施例の場合、加熱調理グリルは、調理面を形成するグリル体と、調理面と反対側の加熱面と、加熱面に接して設けられ、少なくとも1抵抗発熱層を形成する積層ヒーターと、加熱面に沿って配置され、抵抗発熱層と電気接触している複数接続点とを含んでいる。複数接続点間の抵抗差は、調理面上への積載物の関数として所要電力を複数接続点へ供給するために検出される。
【0010】
更に別の実施例の場合、ヒーター・システムは、上側基板と、下側基板と、これら上下基板間に配置された抵抗発熱材料とを含んでいる。電圧源は、下側基板に電気接続され、前記抵抗発熱材料は正の温度係数の材料で形成され、これにより、積載物が上側基板上に置かれた場合、抵抗発熱材料が積載物に最も近いところに電流を増大させる。
【0011】
本発明の方法によれば、積載物に反応して加熱面へ供給される電力の制御は、複数接続点の間の抵抗差を測定し、この抵抗差の関数として電力を選択的に複数接続点に供給する形式で行われ、その場合、前記接続点は、加熱面に沿って配置され、積層ヒーターの抵抗発熱層と電気接触している。
【0012】
本発明を適用できる別の領域は、以下の詳細な説明で明らかになろう。この詳細な説明及び本発明の好適実施例を示す具体例は、単なる説明目的のものであり、本発明の範囲を限定する意図のものではないことを理解されたい。
【0013】
本発明は、以下の詳細な説明及び添付図面により、より完全に理解されることになろう。
複数図面を通して、対応する部材には対応する符号が付されている。
好適実施例についての以下の説明は、もとより説明目的のものであり、本発明、本発明の用途、使用を制限する意図のものでは全くない。
【0014】
本発明の原理によれば、例えば業務上の調理に用いる場合、加熱又は冷却されるべき質量の大きさが著しく減少するため、熱ループの実際の温度反応とスケジュールとが、より精密に制御される。加えて、本発明では、加熱される質量との密な接触と、積層発熱材料の特性による反応時間の改善との両方のために、積層発熱技術が採用されている。この積層発熱の技術と構成とは、2004年1月6日付けで提出された「組み合わせ材料積層技術」(Combined Material Layering Technologies)という名称の同時係属出願第10/752,359号に詳細に説明されている。該出願は、本出願と共同所有され、その内容は、ここに引用することで本出願に取り入れられるものとする。
【実施例1】
【0015】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施例によるヒーター・システムが示され、全体が符号20で示されている。ヒーター・システム20は、加熱面24を形成する基板22と、加熱面24と反対側の積載面26とを含んでいる。加熱面24に接して積層ヒーター30が配置され、この場合、該積層ヒーター30は、加熱面24の下の誘電層31と、誘電層31の全面にわたって配置された少なくとも1抵抗発熱層32とを含んでいる。抵抗発熱層32は、図示のように、加熱面24の全体を事実上覆う連続的なパターンを形成している。しかし、詳しくは後述するが、本発明の範囲内で、他のパターンの抵抗発熱体32を採用することもできる。
【0016】
図示のように、加熱面24に沿って複数の接続点34が配置され、抵抗発熱層32と電気接触している。接続点34は、端子パッドとして機能し、接続点34の各々のところで抵抗発熱層32に要求どおり電力を供給するように構成されている。したがって、対応する複数のリード線36が接続点34に接続され、該リード線36を介してマルチプレクサ38が複数接続点34と接続されている。簡明にするために、リード線36は一部しか示していないが、マルチプレクサから接続点34の各々へ少なくとも1リード線36が接続されていると理解されたい。また、制御装置40が備えられ、該制御装置が、図示のように、マルチプレクサに接続され、詳しくは後述するように、電源42から接続点34の各々へ供給される電力量を制御している。
【0017】
更に、図2に示すように、別の誘電層60が抵抗発熱層32全面にわたり配置されているが、本発明の別の形式では、接続点34の全体にわたっては配置されていない。誘電層60は、外部環境を抵抗発熱層32から保護する一方、抵抗発熱層32を保護し断熱するために備えられている。
積層発熱体内で一般に使用される端子パッドとして機能する接続点32は、抵抗発熱層32へ所要電力を導通可能な高導電性の材料で形成されている。接続点34は、したがって、特定用途に要求される接続点34の数に応じて抵抗発熱層32の望ましい位置に、直接に形成される。リード線36は、とりわけ、はんだ付け、ろう付け、超音波溶接のいずれかの技術で接続点34に結合される。
【0018】
本発明の別の形式では、接続点34は、例えば半導体材料等の、より高級な材料で作られている。したがって、個々の接続点34の抵抗は、温度に対する抵抗の範囲が広く、また各接続点34の抵抗は予め定めた時間間隔でモニタできる。その場合、複数対の接続点34間の抵抗差ではなく、時を経る間の個々の接続点34の抵抗差が比較され、それによって多重送信機能の複雑さが減じられるが、それについては、更に詳しく後述する。
【0019】
適切な箇所に適切な熱量を供給するためには、複数接続点34の各々の間の抵抗を連続的にモニタし、複数接続点34間の抵抗差を利用して接続点34へ、ひいては基板22へ所要電力量を供給することで、積載面26に対し精密かつ高度に適合する温度分布が与えられる。例えばハンバーガー・パティ等の積載物50が積載面26へ載せられると、接続点Iとその周囲の接続点A,B,C,H,J,O,P,Qとの間の抵抗が減少する一方、これら周囲の接続点間の抵抗と、その他の接続点D−G,K−N,R−U,V−BB間の抵抗は事実上変化しない。接続点Iと周囲の接続点との間の抵抗差は、したがって、積載面26へ積載物50が載置されたことと、積載物50が置かれた区域と、その区域の温度を高めるために電力の加増が必要なこととを示している。したがって、本発明の考え方では、複数接続点34間の抵抗差を検出し、複数接続点34へ供給する電力量を制御することで、積載面26に適合する温度分布を供給することができる。
【0020】
接続点34をモニタし、それに続いて接続点への電力を制御するために、一形式では、マルチプレクサ38が、複数接続点34から制御装置40への抵抗を順序付けて伝送し、制御装置40は、電源42から複数接続点34各々へ供給される電力量を接続点34間の抵抗差に基づいて制御する。マルチプレクサ38は、接続点34の各組み合わせ、例えばA−B,A−I,I−Q等の間の抵抗を連続的に順序付けて制御装置40へ伝送する。加えて、詳しくは後述するが、制御装置40内にソフトウェアを用いることにより、接続点34への電力の制御を容易にすることができる。
【0021】
より具体的に言えば、図3に見られるように、単数又は複数のマルチプレクサ38,38´が、各リード線36を制御装置40に接続することにより、多数回毎秒の抵抗読取り及び電力供給の双方が制御され、それによって検出、制御、応答のための反応性の高い自動システムを得ることができる。図示の実施例では、マルチプレクサ38が、接続を電子式に第1対のリード線36´、36´´へ切替え、この特定組のリード線に接続された接続点34から制御装置40へ信号を伝送する。制御装置40は、その場合、リード線36´,36´´間の抵抗を読取り、読取り値を後入れ先出し記憶装置44に記憶する。制御装置40は、多重送信された順序で各対毎に新しい読取り値と前の読取り値との差を認識するようにプログラムされており、それによって、積載面26の特定区域に温度変化があったかどうかを認識する。その温度変化に基づいて、制御装置40は、どのリード線対に電力を供給せねばならないかを決定する。
【0022】
電力は、同じマルチプレクサを介してではなく、むしろ、図示のように、第2のマルチプレクサ38´を介して供給し、その結果、一方のマルチプレクサ38は接続点34からの抵抗信号を順序付けて伝送し、他方のマルチプレクサ38´は複数接続点34へ電力を順序付けて伝送する。一形式では、各抵抗読取りが行われた直後に、それもマルチプレクサ38が接続を別の対のリード線36に電子式に切替える前に、1対のリード線36へ電力を加えることができる。したがって、マルチプレクサ38とマルチプレクサ38´とを同期することで、例えば、マルチプレクサ38が制御装置40を1対のリード線36に接続すると、制御装置40からの指示に従って、マルチプレクサ38´が電源42を別の対のリード線36及び接続点34へ接続する。これらの指示は、所望とあれば、予めプログラムされた決定アルゴリズムによるのに加えて、接続点34間の抵抗差の比較に基づいて行われる。
【0023】
マルチプレクサの別のタイミング計画と構成も、本発明の理論により採用でき、ここで説明する実施例は、本発明の範囲を制限するものと解釈されてはならない。以下で詳説するように、予めプログラムされた温度分布は、積載物50の種類の関数として使用することもできる。
【0024】
一形式では、基板22が、加熱される調理グリルとして構成される。したがって、積載面26は調理面であり、複数接続点34は、例えばハンバーガー・パティ又は卵等の調理積載物の寸法に応じて構成される。調理積載物が調理面上に載せられると、複数接続点34間の抵抗差が検出され、調理面上に置かれた調理積載物の関数として所要電力が複数接続点34へ供給される。したがって、本発明の理論による接続点34の原則と組み合わせて、従来のヒーターに勝る改良材料特性を備えた、より密接に基板に接触する積層ヒーターを使用することにより、加熱及び/又は冷却を要する質量の量は著しく減少する一方、温度制御と反応時間が、より精密になる。この質量の減少により、基板22の熱慣性が小さくなり、したがって、特定箇所に所要温度を得るために熱を加増又は除去する反応が、より迅速に可能となる。
【0025】
本発明の方法によれば、予め定めた電力分布、又は調理法が、特定調理積載物の抵抗差の関数として複数接続点34に与えられる。予め定めた電力分布は、調理積載物の特定の種類、例えばハンバーガー・パティに望ましい温度分布、又は調理法と対応する。例えば、或る調理積載物52は、図4に示すように調理面54に置かれ、図示のような或る一定温度分布で調理されねばならない。調理面54は、調理積載物52を載せる前には、定常温度t1に維持されている。調理積載物52を調理面に載せると、複数接続点34間の抵抗差が検出され、制御装置40(図示せず)が、既述のように、所要電力を適切な順序で接続点34へ供給することで、調理積載物52は、図示のように、或る長さの時間の間に目標温度t2まで高められる。調理積載物52は、別の長さの時間にわたって温度t2に維持されてから、温度分布56によって示されているように、別の長さの時間で、又は別の長さの時間にわたって、定常温度t1に戻される。結果として、調理面54は、より低い温度に保たれるので、エネルギーの無駄はなくなり、調理積載物52は、所望の調理法に従って自動的に調理される。
【0026】
本発明により得られた熱慣性低減により反応時間が迅速化されたことで、図示のような温度分布が可能になる。加えて、特定種類の調理積載物に予め定めた調理法が自動的に適用されることで、手操作式のシステムと異なり、食品の生焼きの危険が低減され、それに関連する健康上の害も低減される。更に、図示の温度分布は単なる例に過ぎず、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきでないことを理解されたい。
【0027】
ヒーター・システム20により検出されるような、接続点34間の特定の抵抗差により調理積載物52の種類が自動的に検出され、それによって、適切な温度分布56が、自動式に負荷され、手操作の必要なしに実施される。一形式では、温度分布56は、ソフトウェア又はファームウェアとして制御装置40内にローディングされ、必要のさいに、更新し修正できる。
【実施例2】
【0028】
次に図5を参照すると、抵抗発熱層32は、これまで説明し図示してきた連続的なパターンではなく、図示のように、トレース・パターン58を形成している。複数接続点34は、この場合、個別のトレース59に沿って配置され、電力は、複数接続点34間の抵抗差に応じて既述のように接続点34へ供給される。(リード線36、マルチプレクサ38、制御装置40、電源42は、簡明にするために図示されていない)。図示のトレース・パターン58は、概して線形グリッド形であるが、例えば蛇行状、円形状等の他の形状も、異なる種類の回路、すなわち並列、直列、並列‐直列の組み合わせの各回路と共に、本発明の枠を逸脱することなしに、採用できる。
【0029】
加えて、その回路には、2004年9月15日付けで申請し、本出願と共有される「適応可能な積層ヒーター・システム」(Adaptable Layered Heater System)という名称の係属出願番号第10/941,609号の理論を採用できる。この出願の内容は、ここに引用することで本発明に全体的に取り入れられるものである。例えば、既述のような抵抗トレース及びこれらトレースの回路構成は、既述の接続点間及びグリッド構成に使用でき、本発明の範囲内と考えられる。
【実施例3】
【0030】
図6に示した本発明の更に別の実施例では、接続点34に加えて、形状及び寸法を変更できる複数バス・バー70が、加熱面24の外縁部72に沿って配置されている。既述のような端子パッドとして機能するバス・バー70は、抵抗発熱層32と直接接触しており、したがって抵抗発熱層と電気接続されている。リード線74は、バス・バー70に接続され、かつマルチプレクサ38(図示せず)にも接続されていることで、図示のように、比較的大きい区域A,B,Cに熱が供給される。したがって、基板22へは、接続点34を介しての、より適合性の高い電力の供給ではなく、又はそのような供給に加えて、より大雑把な電力供給が可能である。また、バス・バー70は、図示の数及び寸法で周縁部72に沿って配置されるのに加えて、加熱面24に沿って、どの箇所にでも、また幾つでも使用できることを理解されたい。また、バス・バー70は、図5に示した線形グリッドのような抵抗発熱層32とは別の形状及び構成でもよく、そのような形式も、本発明の範囲内のものであることを理解されたい。
【実施例4】
【0031】
次に、図7には、本発明の理論による別の実施例によるヒーター・システムが、全体を符号80で示されている。ヒーター・システム80は、上側基板82と、下側基板84と、これら上下の基板間に配置された抵抗発熱材料86とを含んでいる。更に、電圧源88が、下側基板84に電気接続される一方、上側基板82がアースとして役立っている。しかし、上側基板82は、必ずしもアースとして機能しなくともよく、下側基板84とは異なる電圧で作業するようにしてもよい。抵抗発熱材料86は、積載物90が上側基板82上に置かれると、積載物90に最も近い箇所へ電力を加増するように、正の温度係数(PTC)の材料で形成されている。
【0032】
PTC材料としては、PTC特性を示す多くの種類の材料のなかから、例えばプラチナを選ぶことができよう。プラチナ及びPTC特性を有する他の材料は、積層発熱回路、すなわち抵抗発熱層の構成体内に直接使用するか、又は他の材料、例えばガラス、セラミック、ポリマー内にドーパントとして使用することにより、温度の関数である電気的特性に著しい変化を示す複合材料を得ることができる。PTC特性を有する材料を得る別の方法は、セラミック又はポリマーの複合材料の母材内に導電性粒子、例えばカーボンを使用することだが、該複合材料の場合、母材であるガラス、セラミック、ポリマーが、温度につれて著しく膨張・収縮する。温度につれて母材が膨張すると、母材内の粒子から粒子への電気接続が分断され、それにより材料温度に対応して材料の全電気抵抗が増大する。この方法の一例は、米国特許第5,902,518号に説明されている。該米国特許は、本出願と共同所有されており、その内容は、ここに引用することでその全体が本明細書に取り入れられるものである。
【0033】
作業時には、目標調理温度に相応する電圧が設定され、この電圧は、電圧源88から、下側基板84と抵抗発熱材料86とをへて、上側基板82へ送られる。積載物90が上側基板82上に置かれると、上側基板82に比して積載物90の温度が低いため、PTC材料の抵抗が減少する。電圧は一定で、当初、PTC材料86の抵抗が低下するため、積載物90の区域に流れる電流が増大する。この関係は、電圧対電流及び抵抗の方程式によって更に明瞭に理解できる:
【0034】
V=I
この式において、V=電圧、I=電流、R=抵抗である。
【0035】
電流は、積載物90の、より低い温度を補償するために増大し、それにつれて、PTC材料86の抵抗が、温度の上昇と共に結局は増大し、最後に目標温度に達する。このように、ヒーター・システム80は、上側基板82上に置かれた積載物90に反応して自動式に温度調節され、これにより、より適合性の高い制御された温度反応が得られる。
【実施例5】
【0036】
図8には、本発明の理論によりPTC材料を使用したヒーター・システムの別の実施例が、全体を符号100で示されている。このヒーター・システム100は、下側基板102と、複数の上側基板104とを含み、この場合、PTC材料で形成された複数発熱体106が、下側基板102と上側基板104との間に配置されている。加えて、複数リード線108が、複数上側基板104と発熱体106とをマルチプレクサ110に接続し、マルチプレクサは制御装置112と電源114とに接続されている。したがって、このヒーター・システム100は、複数上側基板104及び発熱体106の各々に最も近い個々の加熱区画を備えている。
【0037】
この区画化されたヒーター・システム100により、特定温度及び/又は電力分布(又は調理法)を、時を経る間の電圧変化に基づき個別の区画に与えることができる。例えば、積載物が区画Aに最も近いところに置かれた場合、この区画の発熱体106の抵抗は、当初、一定量だけ減少し、結果として、この区画の電流が増大し、続いて温度が上昇する。時を経る間の電圧変化により、制御装置112は、電源114に命令して特定分布を実現でき、それによって、区画Aに最も近い積載物は目標温度分布を受け取ることができる。このようにして、PTC材料は温度分布と組み合わされ、積載物に伝達される熱量と場所とが適合される。マルチプレクサ110、制御装置112、電源114は、本発明の理論により既述のように作業する。
【0038】
本発明についての以上の説明は、事実上単なる例示に過ぎず、したがって、本発明の精神から逸脱することなく種々の改変が本発明の範囲内で意図できる。例えば基板22は平らな長方形状で示されているが、どのような形状でも、例えば平らではなく管状でも、また平らで円形状でも、本発明の範囲内で使用できることを理解されたい。その上、接続点34の数も幾つでもよく、不一様のグリッドの接続点34に加えて、特定用途の要求に応じて粗いグリッド又は細かいグリッドを、本発明の精神及び枠を逸脱することなしに形成できる。更に、抵抗差のほかに又は抵抗差に加えて、別のパラメータを検出することも、本発明の範囲内で可能である。例えば高周波刺激に対する反応、コンダクタンス、インダクタンスを、本発明の範囲内で検出できる。それらの変更は、本発明の精神及び範囲からの逸脱とは見なされない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】接続点を備えた加熱面を形成する基板を有し、本発明の原理により構成されたヒーター・システムの底面図。(実施例1)
【図2】図2の1−1線に沿って截断した、本発明の原理により構成したヒーター・システムの断面図。
【図3】本発明の一形式による接続点・マルチプレクサ・制御装置間の通信状況を示すブロック図。
【図4】加熱グリル上に置かれた積載物の側面図と、本発明の原理に従って用いられた対応温度分布を示す図。
【図5】トレース・パターンを有し、本発明の原理により構成された、図1に示したヒーター・システムの別の実施例の底面図。(実施例2)
【図6】バス・バーと接続点とを有し、本発明により構成されたヒーター・システムの別の実施例の底面図。(実施例3)
【図7】正の温度係数(PTC)材料を用い、本発明の原理により構成されたヒーター・システムの別の実施例の部分斜視図。(実施例4)
【図8】本発明の原理により構成され、正の温度係数(PTC)材料を用いたヒーター・システムの第2実施例の斜視図。(実施例5)
【符号の説明】
【0040】
20 本発明によるヒーター・システム
22 基板
24 加熱面
26 積載物面
30 積層ヒーター
31 誘電層
32 抵抗発熱層
34 接続点
36 リード線
38 マルチプレクサ
40 制御装置
42 電源
44 後入れ先出し記憶装置(プッシュダウン・スタックメモリ)
50 積載物
52 調理積載物
54 調理面
56 温度分布
60 誘電層
70 バス・バー
72 外縁部
74 リード線
80 ヒーター・システム
82 上側基板
84 下側基板
86 抵抗発熱材料(PTC)
88 電圧源
90 積載物
100 ヒーター・システム
102 下側基板
104 上側基板
106 発熱体
108 リード線
110 マルチプレクサ
112 制御装置
114 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーター・システムにおいて、
加熱面を形成する基板と、
前記加熱面に接して設けられ、少なくとも1抵抗発熱層を形成する積層ヒーターと、
前記加熱面に沿って配置され、前記抵抗発熱層と電気接触している複数の接続点と、
前記複数接続点に接続された複数リード線と、
前記複数リード線を介して複数接続点と通信するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサと通信する制御装置とを含み、
しかも、前記マルチプレクサが、抵抗を複数接続点から制御装置へ順序付けて伝送し、前記制御装置が、複数接続点間の抵抗差に基づいて複数接続点の各々へ供給する電力量を制御する、ヒーター・システム。
【請求項2】
前記抵抗発熱層が、厚膜、薄膜、溶射、ゾル‐ゲルから成る群から選択される積層処理により形成される、請求項1に記載されたヒーター・システム。
【請求項3】
前記抵抗発熱層がトレース・パターンを形成する、請求項1に記載されたヒーター・システム。
【請求項4】
前記抵抗発熱層が、事実上加熱面全体にわたる連続的なパターンを形成する、請求項1に記載されたヒーター・システム。
【請求項5】
更に、複数の加熱区画が含まれ、しかも、各加熱区画が複数接続点を含み、制御装置が、複数接続点間の抵抗差に基づき加熱区画の各々へ供給される電力量を制御する、請求項1に記載されたヒーター・システム。
【請求項6】
更に、誘電層が含まれ、該誘電層が、抵抗発熱層に接して形成されるが、複数接続点全体にわたっては形成されていない、請求項1に記載されたヒーター・システム。
【請求項7】
前記加熱面が外縁部を画成し、ヒーター・システムが、更に、前記外縁部に沿って配置された複数バス・バーを含み、該バス・バーが抵抗発熱層と電気接触しており、
しかも、前記制御装置が、複数バス・バー間の抵抗差に基づいて複数バス・バーに供給される電力量を制御する、請求項1に記載されたヒーター・システム。
【請求項8】
加熱される調理グリルにおいて、
調理面を形成するグリル体及び調理面と反対側の加熱面と、
前記加熱面に接して設けられ、少なくとも1抵抗発熱層を形成する積層ヒーターと、
前記加熱面に沿って配置され、かつ抵抗発熱層と電気接触している複数の接続点とを含み、
しかも、前記複数接続点間の抵抗差を検出することで、調理面に載せられる積載物の関数として所要電力が複数接続点へ供給される、加熱調理グリル。
【請求項9】
ヒーター・システムにおいて、
上側基板と、
下側基板と、
これら上側と下側の基板間に配置された抵抗発熱材料と、
前記下側基板に電気接続された電圧源とを含み、
しかも、前記抵抗発熱材料が、正の温度係数の材料で形成され、これにより積載物が上側基板上に置かれると、抵抗発熱材料が、積載物の最も近くに電流を増大させる、ヒーター・システム。
【請求項10】
積載物に反応して加熱面への電力を制御する方法において、
加熱面に沿って配置され、かつ積層ヒーターの抵抗発熱層と電気接触している複数接続点間の抵抗差を測定する作業と、
抵抗差の関数として電力を複数接続点へ選択的に供給する作業とを含む、積載物に反応して加熱面への電力を制御する方法。
【請求項11】
予め定めた電力分布を抵抗差の関数として複数接続点へ供給する、請求項10に記載された方法。
【請求項12】
ソフトウェアにより抵抗差を検出する、請求項10に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−545239(P2008−545239A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519581(P2008−519581)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/025448
【国際公開番号】WO2007/002861
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(500157653)ワトロウ エレクトリック マニュファクチュアリング カンパニー (25)
【Fターム(参考)】