セラミックスセンサおよびその製造方法
【課題】結晶粒または微粒子セラミックスから構成されるガスセンサでは、粒径縮小による高感度化と、粒成長による経時変化がトレードオフの関係にあるため、高感度化と信頼性耐久性の両立が困難であった。また、高感度かつ高耐久性・高信頼性を有するセラミックスセンサを、Si集積回路とモノリシックに集積化するのが困難であった。
【解決手段】熱により粒成長等のセラミックス構造変化が生じない人工的なナノ構造体セラミックス膜によりガスセンサを構成する。ナノメータレベルのパターン状テンプレートに、ゾルゲル法を用いてセラミックス薄膜を形成するとともに、十分に焼成して緻密化する。さらに、上記ガスセンサを、集積回路とモノリシックに集積化する。
【解決手段】熱により粒成長等のセラミックス構造変化が生じない人工的なナノ構造体セラミックス膜によりガスセンサを構成する。ナノメータレベルのパターン状テンプレートに、ゾルゲル法を用いてセラミックス薄膜を形成するとともに、十分に焼成して緻密化する。さらに、上記ガスセンサを、集積回路とモノリシックに集積化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックスで形成されるガスセンサに関し、特にセラミックスセンサと半導体集積回路とを集積化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野や生活をとりまく環境において、危険、人体に有害または不快、あるいは地球環境を破壊する様々なガスを検知することは非常に重要である。また、自動車エンジンの制御においてガス濃度センシングは必須であり、一方、ガスにより人体の健康状態を診断する試みも報告されている。代表的なガス濃度センシング方法の1つとして、セラミックガスセンサがある。ガス濃度によりセラミックスの電気抵抗が変化することを利用するもので、他の方法と比較して比較的小型かつ低コストという特徴がある。
【0003】
例えば自動車エンジン用セラミックガスセンサでは、表面に電極を形成した基板上にペースト状のセラミックスを塗布し、これを高温で焼成して厚さ10〜数十ミクロンのセラミックス膜を形成する。ガス濃度を検出する場合、これを200度Cから300度Cに加熱して電極間の抵抗を計測する。用いられる代表的なセラミックスとしては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タングステンがある。
【0004】
セラミックガスセンサについては、セラミックスセンサの高感度化を目指し様々な試みがなされている(例えば非特許文献1参照)。例えば結晶粒径を小さくすると、全体体積に対する表面(従って空乏層体積)の割合が増大するため、抵抗変化率が増大する。セラミックス膜の形成法としては、ペーストに代えてゾルゲル法が検討されている。ゾルゲル法では直径数ミクロンから数ナノメータのセラミックス微粒子が形成されるため、上記結晶粒を小さくする1つの手法としても有効である。また、繊維状のセラミックスを形成してガスセンサに応用する報告がある。
【0005】
セラミックガスセンサには、セラミックス膜に加え、これを加熱するヒータと温度制御、抵抗測定機能が必須である。また望ましくは、複数センサ出力からの信号解析が必要である。従来技術では、セラミックス膜、ヒータ、集積回路を、モノリシックに(同一基板上に)集積することが試みられている。いわゆるMEMS技術により薄膜絶縁膜メンブレン上にヒータ線と金属抵抗の温度依存性を利用した温度センサを設けたマイクロヒータが開発されている(例えば特許文献1、非特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5830372号明細書
【0007】
【非特許文献1】第1回AIST化学センサ国際ワークショップ予稿集、産業技術総合研究所 シナジーマテリアル研究センタ刊、2003年3月13日、第3頁から第11頁
【非特許文献2】和田、「特集 ブリッジ型マイクロヒータの放熱分析」、デンソーテクニカルレビュー、デンソー(株)、2000年6月、第5巻、p.51−p.55
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
セラミックスセンサの最も簡単化された動作原理を、図11を用いて説明する。これらのセラミックスは半導体多結晶でありその結晶粒間には間隙が存在する。間隙に空気が進入すると、結晶粒表面で空気中の酸素分子が分解し酸素原子として吸着する。電子吸引性の高い酸素原子はセラミックス中の電子を吸引するため、セラミックス結晶粒の表面には空乏層が形成され、またセラミックス中の電気伝導に寄与可能なキャリヤ(電子)数が減少する。ここで還元性ガス分子が進入すると、表面吸着した酸素分子と結合するとともに、電子をセラミックス側へもどすため、セラミックス中のキャリヤ数が増大して電気抵抗が減少する。この電気抵抗の変化を検出することにより、ガス検知が可能となる。
【0009】
セラミックス結晶粒の表面に形成される空乏層の厚さは一定であるため、結晶粒が小さいほど還元性ガス分子の有無による電気抵抗の変動が大きく、ガスセンサとしての感度がよい。また、様々なセラミックス材料に対する抵抗変化率がガス種によって異なることから、異種セラミックスセンサを用いて複数種のガス濃度を計測する、又はガス種を判別することも可能である。
【0010】
しかしながら、ガスセンサに用いられるセラミックスは結晶粒または微粒子は一般に熱エネルギー等により粒成長を生じる。結晶粒または微粒子径が小さいほど上記粒成長は容易に生じ、この結果センサ特性が変化してしまう。一方、前述のようにガスセンサの高感度化には結晶粒径または微粒子径の縮小が好ましい。従って、経時安定性(耐久性)と感度にトレードオフの関係が生じる。
また、セラミックス膜は一般に加工が困難であり、上述したSi集積回路とモノリシックに集積化ことが難しい。
【0011】
本発明の課題は、高感度・高耐久性なセラミックスセンサを作成すること、また加工が容易で、集積回路とモノシリックに集積可能なセラミックスセンサを作成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1方向に延在し、前記第1方向と交差する方向に沿って配置される複数の矩形状のセラミックス構造体を用いてセンサ膜を構成し、複数のセラミックス構造体同士の間隔をあけて形成し、該間隔をナノメータレベルとする。
また、本発明は、あらかじめナノメータレベルの寸法でパターン状に加工したテンプレート上に、ゾルゲル法を用いてセラミックス薄膜を形成することにより、ナノメータレベルの寸法でパターン化されたセラミックス薄膜を作製する。
また、本発明は、人工的なナノ構造を有するセラミックスガスセンサを、集積回路とモノリシックに集積化する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分に高い生産性をもって高感度、高信頼のセラミックガスセンサを実現できる。
【実施例1】
【0014】
図1は、本実施例によるガスセンサの製造プロセスをセンサの断面図を用いて模式的に示した図である。
まず、図1(a)に示すように、Si基板101表面にSi酸化膜102を形成した後、例えばマスクを介した紫外線露光による通常のリソグラフィ手段を用いてポリSi薄膜をパターニングして、所定のセンサ領域内にヒータ配線103及び温度センサ配線104を形成する。その後、さらに、上記の全体をSi酸化膜105及びSi窒化膜106で被覆する。
【0015】
次に、図1(b)に示すように、セラミックスパターンを形成するための下地膜として膜厚150nmのSi酸化膜107を堆積した後、所定の反射防止膜とレジストを塗布し、これを開口数0.8のArF縮小投影露光装置と周期型位相シフトマスクを用いて露光、現像し、60nmのラインアンドスペースのレジストパターンを形成する。なお、ここでいうラインアンドスペースとは、幅60nmのパターン(ライン)同士を60nmの間隔(スペース)をもって縞状に配置することである。
【0016】
上記レジストパターンをマスクとして上記Si酸化膜107をエッチングして、レジストパターンを上記Si酸化膜に転写し、空間周期120nmで幅60nmのSi酸化膜パターン108を形成する。上記縞状のSi酸化膜パターン108は前記センサ領域内にのみ形成し、それ以外は一様な酸化膜で覆われている。
【0017】
次に、図1(c)に示すように、有機金属錯体溶液(例えば、スズ、亜鉛、タングステン等の金属アルコキサイドやナフテン酸スズ溶液等)をセラミックス前駆体として、平坦面に対する膜厚が50nmとなるような条件で回転塗布し、上記セラミックス前駆体109を上記Si酸化膜の縞状のパターンとパターンとの間に流し込む。しかる後に、第1の熱処理を行い、セラミックス前駆体109をゲル化する。
【0018】
次に、図1(d)に示すように、上記基板の表面を研磨して酸化膜107上のゲルを除去し、さらに、第二の熱処理により、上記ゲルを高温焼成してセラミックス化する。ここでは、高温焼成は摂氏800度で行う。しかる後に、上記Si酸化膜107を希釈フッ酸を用いてエッチング除去し、これにより、Si窒化膜106上に周期120nmで幅60nm、高さ60nmの縞状セラミックスパターン110を形成する。
【0019】
なお、本実施例では幅60nmのパターン同士を、60nmの間隔をもって配置したが、酸化膜エッチング時の横方向シフトにより酸化膜が若干、具体的にはおよそ10nm太くなり、幅70nmのSi酸化膜パターンが形成されることが想定される。また、セラミックスパターンの幅はできるだけ細くしたいので、酸化膜パターン(テンプレートパターン)の幅は逆にできるだけ太いことが好ましい。従って、レジストパターンの幅もある程度太くすることが好ましい。又、セラミックスパターンの面積密度はできるだけ高いことが好ましいので、上記縞の空間周期はできるだけ小さいことが好ましい。
【0020】
また、本実施例ではSi酸化膜パターン間の間隔、即ちセラミックスパターンの幅は60nmであるが、これに限らない。好ましくは100nm以下、より好ましくは30nm以下とすることが好ましい。セラミックスの空乏層の厚さは数nmなので、上記幅が100nm以下であれば抵抗変化率は数%以上となり、回路的に検知可能となるためである。
【0021】
次に、図1(e)に示すように、上記セラミックスの縞状のパターン上に1対のセンサ電極111(図1中には図示せず)及びその取り出し配線を形成し、さらに、Si酸化膜105及びSi窒化膜106に前記ヒータ配線及び温度センサ配線の取り出し窓112を形成する。
【0022】
最後に、図1(f)に示すように、前記センサ領域に対応するSi基板裏面より、Si基板を表面酸化膜までエッチングして、前記センサ領域にメンブレン113を形成する。
Si基板裏面より、Si基板を表面酸化膜までエッチングして基板表面にメンブレンを形成する技術は、いわゆるバルクMEMSと呼ばれる技術分野で頻繁に用いられる公知技術である。この技術で加工される寸法は通常数百ミクロン以上、パターン精度としては数から数十ミクロン程度であり、又エッチングされたSiウエハの側壁角制約から、隣接パターンとの間隔も数百ミクロン必要である。
【0023】
図12に、本発明の手法により形成されたセラミックスガスセンサの動作原理を示す。従来セラミックスガスセンサと異なるのは、セラミックス構造の形状のみであり、基本的な動作原理、すなわちセラミックス表面における酸素吸着とガスによるその還元反応は従来同様である。上記立体的構造に代えて、厚さ100nm好ましくは50nm以下のセラミックス薄膜の電気抵抗を計測することによりガス濃度を計測してもよい。
【0024】
本発明により形成されたセンサの動作について説明する。ヒータ配線103に電流を流しセンサ領域の温度を上昇するとともに、温度センサ配線104の抵抗を計測することによりセンサ領域の温度を計測し、計測結果をヒータ配線電流値にフィードバックすることによりセンサ領域を所望の温度に制御する。これら温度制御回路については、公知の方法を用いる。ガス濃度はセンサ電極111を用いてセンサ電極間の縞状のセラミックスパターン110の抵抗を計測することにより求める。
【0025】
本発明では、矩形状のセラミックスの構造体を十分な間隔をもって形成している。したがって、セラミックスを形成する際の高温焼成による熱エネルギーによりセラミックスの構造体は、セラミックス構造体が延在する方向に粒成長し、構造体同士が接合して構造体が延在する方向と交差する方向に粒成長するのを防ぐことができる。これにより、セラミックセンサの高感度化を実現できる。また、セラミックス構造体を形成時に高温焼成し十分に緻密化するため、使用時にヒータを用いて熱負荷を行っても結晶粒成長等が容易に生じず、経時安定性、耐久性を保つことができる。
【0026】
また、一般に直接的な加工が困難なセラミックスを、標準的なLSI加工プロセスとゾルゲル法を組み合わせることにより、特殊な加工装置等を用いることなく、比較的容易にナノメータレベルの寸法でパターン化することができる。ナノメータレベルの寸法で構造体を作成することにより、セラミックセンサの感度を向上させることが可能となる。
なお、本実施例では下地膜を形成するためにシリコン酸化膜を用いたが、これに限られるものではなく、セラミックス及びその下地膜とのエッチング選択比が取れる膜であればよい。
【0027】
図2に、図1に示した積層構造のいくつかの層におけるパターンの平面模式図を示す。図2(a)は、ヒータ配線103及び温度センサ配線104のパターンである。図2(b)は、縞状セラミックスパターン110である。図2(c)は、センサ電極111のパターンである。図2(d)は、前記ヒータ配線及び温度センサ配線の取り出し窓112及びメンブレン113領域のパターンである。
【0028】
図3に、以上により形成されるセラミックス及びセンサ電極部構造の模式的な俯瞰図を示す。本発明によるセラミックスセンサでは、ナノメータオーダーの幅をもつセラミックスが縞状に配置され、セラミックスが延在する方向と交差する方向に、センサ電極がセラミックスの両端に配置される。
【0029】
図1では、周期型位相シフトマスクを用いてセラミックスパターンを形成する方法について説明したが、セラミックスパターンのパターニング方法については上記に限らず様々なリソグラフィ方法を適用することができる。
【0030】
図4に、ポリSiパターンを用いて形成したサイドウォールを利用してセラミックスパターンを形成する方法について説明する。
まず、図4(a)に示すように、Si基板101表面にSi酸化膜102を形成した後、例えばマスクを介した紫外線露光による通常のリソグラフィ手段を用いてポリSi薄膜をパターニングして、所定のセンサ領域内にヒータ配線103及び温度センサ配線104を形成する。その後、さらに、上記の全体をSi酸化膜105及びSi窒化膜106で被覆する。この工程は、実施例1の図1(a)と同じである。
【0031】
次に、Si窒化膜106上に膜厚150nmのポリSi膜114を堆積した後、実施例1図1(b)での説明と同様のArF露光法により、60nmのラインアンドスペース(縞状)レジストパターンを形成し、上記レジストパターンをマスクとしてポリSi膜をエッチングする。エッチング時の寸法シフトにより、周期120nm、すなわち120nmごとに、100nmの間隔をもって幅20nmのポリSiパターン114を形成する。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、膜厚40nmのSi酸化膜115を一様かつ等方的(コンフォーマル)に堆積する。
さらに図4(c)に示すように全面を上方から異方性エッチングして、上記ポリSiパターンの側壁に幅40nmのサイドウォール116を形成する。
しかる後に、図4(d)に示すように、上記ポリSiをエッチング除去する。これにより、周期60nmで幅40nm、すなわち60nmごとに20nmの間隔をもって幅40nmのSi酸化膜パターン117が形成される。
【0033】
図4(d)で形成されたSi酸化膜パターン117に対し、図1(c)以降のプロセスを適用することにより、ピッチ60nm、幅20nmのセラミックスパターンを形成可能である。
上述した方法の他に、例えば電子線描画法を用いることにより、さらに微細な格子パターンを形成することが可能で、これにより、さらに感度向上が可能である。但し、電子線描画法は生産性が低いという問題点がある。
【0034】
また、ナノインプリントを用いることにより、微細かつ低コストのパターン形成が可能である。ナノインプリントを使用する場合、レジストを用いず、Si酸化膜を塗布型ガラス(SOG)に代え、上記液体状態のSOGを直接パターニングすることが可能である。例えば、液体状のSOG膜に、表面に所望の格子状凹凸パターンを有するナノインプリントマスターを押し当て、加熱後、マスターを剥離することにより、SOG薄膜に微細格子パターンを形成する。SOGは焼成することによりほぼ完全なSi酸化膜となり、やはり図1(b)以降の上記プロセスに適用可能である。ナノインプリント法を用いることにより、最終的に、例えば幅10nm、ピッチ20nm程度の縞状セラミックスパターンを形成することが可能である。もちろん ナノインプリント法を用いて通常のレジストをパターニングしてこれをマスクとしてエッチングにより下地膜を形成してもよい。
【0035】
本センサを単独で用いる場合には、センサ領域外の基板表面は、どのような状態であってもかまわない。例えば、基板全面がセラミックスパターンであってもよく、または酸化膜または窒化膜上にセラミックスが付着した状態であってもかまわない。この場合、第1の熱処理後の研磨は必ずしも必要ない。セラミックス前駆体の膜厚は酸化膜パターンの高さより低いので、酸化膜パターン間にセラミックス前駆体が埋め込まれたとき、酸化膜パターンの側壁が一部露出するため、フッ酸等でエッチングすると酸化膜パターン上のセラミックスは酸化膜パターンとともにリフトオフされ除去されるからである。
【0036】
また、第2の熱処理は必ずしも必須ではなく、第1の熱処理で最終的な焼成を行ってもよい。より高温で焼成を行うことによりセラミックスセンサの経時安定性が向上する。摂氏800度で焼成を行った場合のセラミックスの平均的結晶粒径は数ミクロン程度であり、セラミックパターンの幅方向寸法よりはるかに大きい。このため、粒界はパターンの延長方向のみに存在する。典型的なセラミックス部の長さ方向寸法は数10から数百ミクロンであり、粒界数は100から1000以下である。このため、粒界による電気抵抗成分はセラミックス自体の抵抗成分と比較して小さく、従って使用中粒界状態に何らかの変化が生じても、特性上の変化は殆どない。さらに高温の焼成を行うと、結晶粒径はセラミックス部の長さ方向寸法より大きくなり、センサ部セラミックスは実質的に単結晶となるため、経時的に非常に安定な特性が得られる。
【0037】
また、上記の説明では、セラミックスパターンを縞状に形成したが、縞状に代えて格子状に形成することも可能である。
格子状にセラミックスパターンを形成したときの平面図を図5に、俯瞰図を図6に示す。図5において、ヒータ配線503および温度センサ配線504の上部に格子状のセラミックスパターン510が形成され、セラミックスパターンの両端部にセンサ電極部511がセラミックスパターンと接続されて配置される。
【0038】
さらに、複数の格子状セラミックスパターンを、酸化薄膜を挟んで積層した後、酸化膜をエッチングする等することによりセラミックスの3次元格子を形成してもよい。これらにより(1)センサ電極間の電流パスが増える、(2)電流パスの周囲のセラミックスの表面積が増える、の2つの理由からセンサ感度がさらに向上する。
以上の手法により、一般に直接的な加工が困難なセラミックスを、標準的なLSI加工プロセスとゾルゲル法を組み合わせることにより、特殊な加工装置等を用いることなく、比較的容易にナノメータレベルの寸法でパターン化することができる。
【実施例2】
【0039】
次に、実施例1で述べたセンサを集積回路とモノリシックに集積化する方法について述べる。
図7は、本実施例によるセンサと集積回路をモノリシックに集積化した集積化ガスセンサの製造プロセスを示す模式図である。
まず、図7(a)に示すように、Si基板201上の所定の集積回路領域202に通常のCMOS集積回路プロセスを用いて集積回路トランジスタ203を作製する。即ち、ウエル形成、フィールド酸化膜(トレンチアイソレーションでもよい)によるアイソレーション、ゲート酸化膜、ゲート、拡散層によるソース、ドレイン、及び高融点金属プラグからなるコンタクトを形成する。また、ここで必要に応じて集積回路トランジスタ同士を接続するための第1配線も形成してよい。
【0040】
一方、上記Si基板上の所定のセンサ領域204には、まず所定の酸化膜205を形成後、上記酸化膜上にポリSi膜でヒータ用配線206と温度センサ用配線207を形成する。上記両配線はその末端部において上記集積回路の所定のポリSi上コンタクトと接続するよう、集積回路領域まで延長されている。
【0041】
次に、上記基板の全面に酸化膜208を堆積する。上記酸化膜205は上記トランジスタのフィールド酸化膜で、又、上記ポリSi膜は上記トランジスタのゲート層で、上記酸化膜208はトランジスタの層間絶縁膜と兼用してもよい。しかる後に全面を平坦化する。
次に、図7(b)に示すように、全面に窒化膜209を堆積し、その上の上記センサ領域204上に、実施例1に示した方法を用いて、セラミックス格子パターン210を作製し、その後、セラミックス格子パターン210をカバーするように酸化膜217及び全面に窒化膜211を堆積し上記セラミックスパターンを覆う。セラミックスパターン形成工程のセラミックス前駆体塗布前までの全工程はCMOS集積回路の製造ラインで行い、その後のセラミックスパターン及び上記窒化膜形成工程はセンサ専用工程で行う。
【0042】
その後、十分な洗浄を行った後、基板をCMOS集積回路の製造ラインに戻し、以下のプロセスを行う。
まず図7(c)に示すように集積回路領域の上記窒化膜をエッチング除去し、所定の多層配線212を形成して集積回路部を完成する。
【0043】
次に図7(d)に示すように、パッド部上の窒化Si封止膜およびSi酸化膜に開口213を形成する。この時点でセンサ領域上はSi窒化膜および多層配線形成時に堆積された層間絶縁膜、上記封止膜で覆われている。そこで、センサ領域上の上記封止膜、層間絶縁膜と窒化膜を順次エッチングして除去し、センサ窓214を形成してセラミックスパターン表面を露出する。
【0044】
以降の工程はいわゆる実装工程(後工程)ラインにおいて行う。
図7(e)に示すように、セラミックパターンの末端部に一対のセンサ電極を、また上記電極と上記パッドのうち所定のものを結ぶ配線215を形成する。例えば、セラミックパターンの一部と所定の配線にレジストで開口を形成、金属を蒸着してリフトオフ等を行うことにより形成する。
【0045】
最後に、図7(f)に示すように、実施例1同様にして、ほぼ前記センサ領域に対応するSi基板裏面より、Si基板を表面酸化膜までエッチングを行い、前記センサ領域にメンブレン216を形成する。メンブレンを形成するのは熱容量を低減するため、ヒータ部分の基板を薄くする必要があるからである。
【0046】
このように、人工的なナノ構造を有するセラミックスガスセンサを、集積回路とモノリシックに集積化することにより、センサシステムの小型化、低コスト化を実現できる。また、センサ近傍に、アンプなどのアナログのLSIを集積することによりセンサと集積回路との間にのるノイズを低減することができ、センサの高感度化を実現することが可能となる。さらには、チップ上にAD変換、マイコンを集積化すると、ガス種判定、経時的変化のモニタリング等が可能となり、センサを搭載したチップのインテリジェント化が図れる。
【0047】
ゾルゲル法によるセラミックス形成時の汚染を避けるため、トランジスタ作製はセラミックスパターン形成より先に行うことが好ましい。この場合、セラミックスの焼成温度は、トランジスタの性能劣化を生じない範囲に抑えることが望ましい。また、コンタクト用高融点金属の融点より低いことが望ましい。具体的には、800度以下とすることが好ましい。
【0048】
一方、セラミックパターン形成、窒化膜による封止の後、集積回路領域の洗浄を入念に行い、上記汚染に細心の注意を払った場合には、上記順番を逆としても、すなわちトランジスタ作成をセラミックスパターン形成の後で行ってもよい。この場合、セラミックスの焼成を十分に高い温度で行うことができるため、センサの経時安定性がさらに向上する。
【実施例3】
【0049】
ガスセンサの応用においては、しばしば長期間にわたりエネルギー的に自立して動作させることが要求される。例えば電池1個で数年間安定して動作し続ける必要がある。この場合、センサ特性自体の安定性に加え、低消費電力化が重要である。
セラミックガスセンサの消費電力を支配するのは、センサ加熱用のヒータであるため、低消費電力化は(1)ヒータの熱容量削減及び(2)ヒータ部からの放熱の削減、の2点が必要である。上記(1)、(2)の優先順位は、センサの動作シーケンスに依存するが、いずれにせよ、(1)(2)ともにヒータの小型化により達成される。
【0050】
具体的には、ヒータの体積、表面積、ヒータと周辺部の接触部分の縮小が必要であるが、このためには、実施例2に示したバルクMEMSより表面MEMSが有利である。表面MEMS技術とは、半導体集積回路で用いられるような薄膜の堆積、リソグラフィによるレジストマスク形成、エッチングを繰り返すことにより、基板上に構造物を形成する技術の総称である。半導体集積回路同等の加工技術を用いるので、前述のバルクMEMSに比べて微細な構造体を高精度に形成可能という特長がある。
【0051】
以下、表面MEMSによるマイクロヒータと実施例1によるガスセンサを集積した例について述べる。
図8は、本実施例によるセンサと集積回路をモノリシックに集積化した集積化ガスセンサの製造プロセスを示す模式図である。
まず、図8(a)に示すように、Si基板301上の所定の集積回路領域302に通常のCMOS集積回路プロセスを用いて集積回路トランジスタ303を作製する。即ち、ウエル形成、フィールド酸化膜によるアイソレーション、ゲート酸化膜、ゲート、拡散層によるソース、ドレイン、及び高融点金属プラグからなるコンタクトを形成する。
【0052】
次に、図8(b)に示すように、上記Si基板上の所定のセンサ領域304には、まず所定の酸化膜305及び窒化膜306を堆積後、タングステン犠牲層膜パターン307を形成し、さらに上記犠牲層膜パターン上に窒化膜308を堆積する。さらに窒化シリコン上に、適当な金属材料を用いてヒータ用配線と温度センサ用配線309を形成し、再び窒化膜310で埋め込む。
【0053】
次に、図8(c)に示すように、上記センサ領域上に、実施例1に示した方法を用いて、セラミックス格子パターン311を作製し、その後、全面に酸化膜312(及び必要に応じて窒化膜313)を堆積し上記セラミックスパターンを覆う。
次に、図8(d)に示すように、集積回路領域の窒化膜や酸化膜をエッチング除去した後、所定の多層配線314を形成して集積回路部を完成する。
【0054】
その後、図8(e)に示すように、本基板の表面から上記犠牲層膜パターンまで貫通する開口315を形成し、上記開口を介して上記犠牲層膜をエッチング除去して空洞316を形成する。
【0055】
最後に、図8(f)に示すように、基板全面にCVDによりシリコン酸化膜を堆積し上記開口315を埋め込み、上記空洞316を封止した。但し、上記空洞封止は必須ではない。空洞内を真空とすると熱損失は若干抑制される。さらにセラミックスパターン上及び配線パッド上の上記酸化膜を除去する。最後に、セラミックパターンの末端部に一対のセンサ電極を、また上記電極と上記パッドのうち所定のものを結ぶ配線317を形成し、センサ以外の領域を封止膜(図示せず)で覆う。
【0056】
セラミックセンサの焼成温度が低い場合、セラミックス膜の形成を集積回路の配線形成後に行うことができる。この場合、マイクロヒータとガスセンサを集積回路領域の直上に設けることができる。マイクロヒータを集積回路領域上に設ける場合、マイクロヒータ用薄膜メンブレンは実施例2で述べたようなバルクMEMSで作成することができない。従って、実施例3で述べたような表面MEMSを用いて形成する必要がある。
【0057】
このように、表面MEMS技術を用いることによりセンサに使用するヒータを小型化することができ、ヒータの熱容量の削減、ヒータ部からの放熱量の削減を行うことによりセンサの低電力化を実現することが可能となる。また、ヒータの小型化によりチップ面積を大幅に低減することが可能である。
【実施例4】
【0058】
本実施例では、実施例3に示した表面MEMS技術を用いてセンサと集積回路とをモノシリックに集積した場合を示す。
まず、図9(a)に示すように、Si基板401上の所定の領域に通常のCMOS集積回路プロセスを用いて集積回路トランジスタ402を作製する。
次に、図9(b)に示すように、所定の多層配線403を形成して集積回路部を完成させる。
次に、図9(c)に示すように、窒化膜404を堆積後、上記窒化膜上に所定のセンサ領域を含むタングステン犠牲層膜パターン405を形成し、さらに上記犠牲層膜パターン上に窒化膜406を堆積する。
さらに窒化シリコン上に、適当な金属材料を用いてヒータ用配線と温度センサ用配線407を形成し、再び窒化膜408で埋め込む。
【0059】
次に、図9(d)に示すように、上記センサ領域上に、実施例1に示した方法を用いて、セラミックス格子パターン409を作製し、必要に応じて、全面にSi酸化膜さらにSi窒化膜を堆積して上記セラミックス格子パターンを覆う。その後、本基板の表面から上記犠牲層膜パターンまで貫通する開口410を形成し、上記開口を介して上記犠牲層膜をエッチング除去して空洞411を形成する。次にシリコン酸化膜をCVDで形成して上記空洞を封止し、さらにセラミックスパターン上及び配線パッド(図示せず)上の上記酸化膜を除去する。但し、上記空洞封止は必須ではない。空洞内を真空とすると熱損失は若干抑制される。最後にセラミックパターンの末端部に一対のセンサ電極を、また上記電極と上記パッドのうち所定のものを結ぶ配線を形成し、センサ以外の領域を封止膜で覆って本集積化ガスセンサを完成させる図10に、本実施例の方法を用いて集積化したガスセンサの模式的な俯瞰図を示す。図10ではガスセンサをアレイ状に配置している。個々のセンサを構成するセラミックス膜は、各々異なる組成を有する。又、必要に応じて異なる触媒を添加されている。個々のセンサ膜は、異なるガス種に対して異なる感度を有するので、これにより複数センサの出力によりガス種の特定が可能となる。
【0060】
本実施例では、複数センサからの出力は、別チップとして用意したAD変換回路とマイコンに入力し、ここでガス種判定の演算を行ったが、図10に示したLSI部において、上記判定を行ってもよい。この場合、1チップのみでガス濃度及び種類の判定を行うことが可能となる。又、複数のセラミックスセンサ膜を1つの基板上にモノリシックに形成することは、本実施例に限らず、実施例2又は3においても同様に有効である。
【0061】
また、本実施例において、センサ部セラミックスパターン。
の焼成を、高強度パルスレーザーのスキャニング照射により行うことも可能である。パルスレーザーによりセラミックス膜の温度は非常に高温となるが、照射後の大気中への速やかな放熱により、基板部への熱伝達が抑制され、センサ下部の多層配線及びLSI部の温度は摂氏400度以下に保たれる。これにより、表面MEMS技術を用いて形成するセラミックセンサと集積回路とをモノシリックに形成しても、セラミックスセンサを高性能かつ経時的に安定なセンサ特性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
様々な産業分野や生活をとりまく環境における、危険、人体に有害または不快、あるいは地球環境を破壊する様々なガスの検知システム、自動車エンジン制御、人体の健康状態診断システム等、本発明の産業上の利用可能性は多岐にわたる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の1実施例によるガスセンサの製造プロセスの模式図である。
【図2】本発明の1実施例によるガスセンサを構成する各層の平面的配置図である。
【図3】本発明の1実施例によるガスセンサのセラミックス部及びセンサ電極部構造の模式的な俯瞰図である。
【図4】本発明の1実施例の改良によるガスセンサの製造プロセスの一部を示す模式図である。
【図5】本発明の1実施例の改良によるガスセンサのセラミックスパターンの平面的構造を示す模式図である。
【図6】本発明の1実施例の改良によるガスセンサのセラミックス部及びセンサ電極部構造の模式的な俯瞰図である。
【図7】本発明の別の実施例によるセンサと集積回路をモノリシックに集積化した集積化ガスセンサの製造プロセスを示す模式図である。
【図8】本発明の別の実施例によるセンサと集積回路をモノリシックに集積化した集積化ガスセンサの製造プロセスを示す模式図である。
【図9】本発明の別の実施例によるセンサと集積回路をモノリシックに集積化した集積化ガスセンサの製造プロセスを示す模式図である。
【図10】本発明の別の実施例による集積化ガスセンサの模式的な俯瞰図である。
【図11】従来セラミックスガスセンサの動作原理を示す模式図である。
【図12】本発明によるセラミックスガスセンサの動作原理を示す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
101, 201, 301, 401:Si基板、102, 105, 107、115, 205, 208, 305, 312:Si酸化膜、103, 206:ヒータ配線、104, 207:温度センサ配線、106, 209, 211, 306, 308, 310, 313, 404, 406, 408:Si窒化膜、108:Si酸化膜パターン、109:セラミックス前駆体、110: 1次元格子状セラミックスパターン、111:センサ電極、112:取り出し窓、113, 216:メンブレン、114:ポリSiパターン、116:サイドウォール、117: Si酸化膜パターン、118:2次元格子状セラミックスパターン、202, 302:集積回路領域、203, 303, 402:集積回路トランジスタ、204, 304:センサ領域、210, 311, 409:セラミックス格子パターン、212, 314, 403:多層配線、213, 315, 410:開口、214:センサ窓、215, 317:配線、307, 405:犠牲層膜パターン、309, 407:温度センサ用配線、316, 411:空洞。
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックスで形成されるガスセンサに関し、特にセラミックスセンサと半導体集積回路とを集積化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野や生活をとりまく環境において、危険、人体に有害または不快、あるいは地球環境を破壊する様々なガスを検知することは非常に重要である。また、自動車エンジンの制御においてガス濃度センシングは必須であり、一方、ガスにより人体の健康状態を診断する試みも報告されている。代表的なガス濃度センシング方法の1つとして、セラミックガスセンサがある。ガス濃度によりセラミックスの電気抵抗が変化することを利用するもので、他の方法と比較して比較的小型かつ低コストという特徴がある。
【0003】
例えば自動車エンジン用セラミックガスセンサでは、表面に電極を形成した基板上にペースト状のセラミックスを塗布し、これを高温で焼成して厚さ10〜数十ミクロンのセラミックス膜を形成する。ガス濃度を検出する場合、これを200度Cから300度Cに加熱して電極間の抵抗を計測する。用いられる代表的なセラミックスとしては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タングステンがある。
【0004】
セラミックガスセンサについては、セラミックスセンサの高感度化を目指し様々な試みがなされている(例えば非特許文献1参照)。例えば結晶粒径を小さくすると、全体体積に対する表面(従って空乏層体積)の割合が増大するため、抵抗変化率が増大する。セラミックス膜の形成法としては、ペーストに代えてゾルゲル法が検討されている。ゾルゲル法では直径数ミクロンから数ナノメータのセラミックス微粒子が形成されるため、上記結晶粒を小さくする1つの手法としても有効である。また、繊維状のセラミックスを形成してガスセンサに応用する報告がある。
【0005】
セラミックガスセンサには、セラミックス膜に加え、これを加熱するヒータと温度制御、抵抗測定機能が必須である。また望ましくは、複数センサ出力からの信号解析が必要である。従来技術では、セラミックス膜、ヒータ、集積回路を、モノリシックに(同一基板上に)集積することが試みられている。いわゆるMEMS技術により薄膜絶縁膜メンブレン上にヒータ線と金属抵抗の温度依存性を利用した温度センサを設けたマイクロヒータが開発されている(例えば特許文献1、非特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5830372号明細書
【0007】
【非特許文献1】第1回AIST化学センサ国際ワークショップ予稿集、産業技術総合研究所 シナジーマテリアル研究センタ刊、2003年3月13日、第3頁から第11頁
【非特許文献2】和田、「特集 ブリッジ型マイクロヒータの放熱分析」、デンソーテクニカルレビュー、デンソー(株)、2000年6月、第5巻、p.51−p.55
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
セラミックスセンサの最も簡単化された動作原理を、図11を用いて説明する。これらのセラミックスは半導体多結晶でありその結晶粒間には間隙が存在する。間隙に空気が進入すると、結晶粒表面で空気中の酸素分子が分解し酸素原子として吸着する。電子吸引性の高い酸素原子はセラミックス中の電子を吸引するため、セラミックス結晶粒の表面には空乏層が形成され、またセラミックス中の電気伝導に寄与可能なキャリヤ(電子)数が減少する。ここで還元性ガス分子が進入すると、表面吸着した酸素分子と結合するとともに、電子をセラミックス側へもどすため、セラミックス中のキャリヤ数が増大して電気抵抗が減少する。この電気抵抗の変化を検出することにより、ガス検知が可能となる。
【0009】
セラミックス結晶粒の表面に形成される空乏層の厚さは一定であるため、結晶粒が小さいほど還元性ガス分子の有無による電気抵抗の変動が大きく、ガスセンサとしての感度がよい。また、様々なセラミックス材料に対する抵抗変化率がガス種によって異なることから、異種セラミックスセンサを用いて複数種のガス濃度を計測する、又はガス種を判別することも可能である。
【0010】
しかしながら、ガスセンサに用いられるセラミックスは結晶粒または微粒子は一般に熱エネルギー等により粒成長を生じる。結晶粒または微粒子径が小さいほど上記粒成長は容易に生じ、この結果センサ特性が変化してしまう。一方、前述のようにガスセンサの高感度化には結晶粒径または微粒子径の縮小が好ましい。従って、経時安定性(耐久性)と感度にトレードオフの関係が生じる。
また、セラミックス膜は一般に加工が困難であり、上述したSi集積回路とモノリシックに集積化ことが難しい。
【0011】
本発明の課題は、高感度・高耐久性なセラミックスセンサを作成すること、また加工が容易で、集積回路とモノシリックに集積可能なセラミックスセンサを作成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1方向に延在し、前記第1方向と交差する方向に沿って配置される複数の矩形状のセラミックス構造体を用いてセンサ膜を構成し、複数のセラミックス構造体同士の間隔をあけて形成し、該間隔をナノメータレベルとする。
また、本発明は、あらかじめナノメータレベルの寸法でパターン状に加工したテンプレート上に、ゾルゲル法を用いてセラミックス薄膜を形成することにより、ナノメータレベルの寸法でパターン化されたセラミックス薄膜を作製する。
また、本発明は、人工的なナノ構造を有するセラミックスガスセンサを、集積回路とモノリシックに集積化する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分に高い生産性をもって高感度、高信頼のセラミックガスセンサを実現できる。
【実施例1】
【0014】
図1は、本実施例によるガスセンサの製造プロセスをセンサの断面図を用いて模式的に示した図である。
まず、図1(a)に示すように、Si基板101表面にSi酸化膜102を形成した後、例えばマスクを介した紫外線露光による通常のリソグラフィ手段を用いてポリSi薄膜をパターニングして、所定のセンサ領域内にヒータ配線103及び温度センサ配線104を形成する。その後、さらに、上記の全体をSi酸化膜105及びSi窒化膜106で被覆する。
【0015】
次に、図1(b)に示すように、セラミックスパターンを形成するための下地膜として膜厚150nmのSi酸化膜107を堆積した後、所定の反射防止膜とレジストを塗布し、これを開口数0.8のArF縮小投影露光装置と周期型位相シフトマスクを用いて露光、現像し、60nmのラインアンドスペースのレジストパターンを形成する。なお、ここでいうラインアンドスペースとは、幅60nmのパターン(ライン)同士を60nmの間隔(スペース)をもって縞状に配置することである。
【0016】
上記レジストパターンをマスクとして上記Si酸化膜107をエッチングして、レジストパターンを上記Si酸化膜に転写し、空間周期120nmで幅60nmのSi酸化膜パターン108を形成する。上記縞状のSi酸化膜パターン108は前記センサ領域内にのみ形成し、それ以外は一様な酸化膜で覆われている。
【0017】
次に、図1(c)に示すように、有機金属錯体溶液(例えば、スズ、亜鉛、タングステン等の金属アルコキサイドやナフテン酸スズ溶液等)をセラミックス前駆体として、平坦面に対する膜厚が50nmとなるような条件で回転塗布し、上記セラミックス前駆体109を上記Si酸化膜の縞状のパターンとパターンとの間に流し込む。しかる後に、第1の熱処理を行い、セラミックス前駆体109をゲル化する。
【0018】
次に、図1(d)に示すように、上記基板の表面を研磨して酸化膜107上のゲルを除去し、さらに、第二の熱処理により、上記ゲルを高温焼成してセラミックス化する。ここでは、高温焼成は摂氏800度で行う。しかる後に、上記Si酸化膜107を希釈フッ酸を用いてエッチング除去し、これにより、Si窒化膜106上に周期120nmで幅60nm、高さ60nmの縞状セラミックスパターン110を形成する。
【0019】
なお、本実施例では幅60nmのパターン同士を、60nmの間隔をもって配置したが、酸化膜エッチング時の横方向シフトにより酸化膜が若干、具体的にはおよそ10nm太くなり、幅70nmのSi酸化膜パターンが形成されることが想定される。また、セラミックスパターンの幅はできるだけ細くしたいので、酸化膜パターン(テンプレートパターン)の幅は逆にできるだけ太いことが好ましい。従って、レジストパターンの幅もある程度太くすることが好ましい。又、セラミックスパターンの面積密度はできるだけ高いことが好ましいので、上記縞の空間周期はできるだけ小さいことが好ましい。
【0020】
また、本実施例ではSi酸化膜パターン間の間隔、即ちセラミックスパターンの幅は60nmであるが、これに限らない。好ましくは100nm以下、より好ましくは30nm以下とすることが好ましい。セラミックスの空乏層の厚さは数nmなので、上記幅が100nm以下であれば抵抗変化率は数%以上となり、回路的に検知可能となるためである。
【0021】
次に、図1(e)に示すように、上記セラミックスの縞状のパターン上に1対のセンサ電極111(図1中には図示せず)及びその取り出し配線を形成し、さらに、Si酸化膜105及びSi窒化膜106に前記ヒータ配線及び温度センサ配線の取り出し窓112を形成する。
【0022】
最後に、図1(f)に示すように、前記センサ領域に対応するSi基板裏面より、Si基板を表面酸化膜までエッチングして、前記センサ領域にメンブレン113を形成する。
Si基板裏面より、Si基板を表面酸化膜までエッチングして基板表面にメンブレンを形成する技術は、いわゆるバルクMEMSと呼ばれる技術分野で頻繁に用いられる公知技術である。この技術で加工される寸法は通常数百ミクロン以上、パターン精度としては数から数十ミクロン程度であり、又エッチングされたSiウエハの側壁角制約から、隣接パターンとの間隔も数百ミクロン必要である。
【0023】
図12に、本発明の手法により形成されたセラミックスガスセンサの動作原理を示す。従来セラミックスガスセンサと異なるのは、セラミックス構造の形状のみであり、基本的な動作原理、すなわちセラミックス表面における酸素吸着とガスによるその還元反応は従来同様である。上記立体的構造に代えて、厚さ100nm好ましくは50nm以下のセラミックス薄膜の電気抵抗を計測することによりガス濃度を計測してもよい。
【0024】
本発明により形成されたセンサの動作について説明する。ヒータ配線103に電流を流しセンサ領域の温度を上昇するとともに、温度センサ配線104の抵抗を計測することによりセンサ領域の温度を計測し、計測結果をヒータ配線電流値にフィードバックすることによりセンサ領域を所望の温度に制御する。これら温度制御回路については、公知の方法を用いる。ガス濃度はセンサ電極111を用いてセンサ電極間の縞状のセラミックスパターン110の抵抗を計測することにより求める。
【0025】
本発明では、矩形状のセラミックスの構造体を十分な間隔をもって形成している。したがって、セラミックスを形成する際の高温焼成による熱エネルギーによりセラミックスの構造体は、セラミックス構造体が延在する方向に粒成長し、構造体同士が接合して構造体が延在する方向と交差する方向に粒成長するのを防ぐことができる。これにより、セラミックセンサの高感度化を実現できる。また、セラミックス構造体を形成時に高温焼成し十分に緻密化するため、使用時にヒータを用いて熱負荷を行っても結晶粒成長等が容易に生じず、経時安定性、耐久性を保つことができる。
【0026】
また、一般に直接的な加工が困難なセラミックスを、標準的なLSI加工プロセスとゾルゲル法を組み合わせることにより、特殊な加工装置等を用いることなく、比較的容易にナノメータレベルの寸法でパターン化することができる。ナノメータレベルの寸法で構造体を作成することにより、セラミックセンサの感度を向上させることが可能となる。
なお、本実施例では下地膜を形成するためにシリコン酸化膜を用いたが、これに限られるものではなく、セラミックス及びその下地膜とのエッチング選択比が取れる膜であればよい。
【0027】
図2に、図1に示した積層構造のいくつかの層におけるパターンの平面模式図を示す。図2(a)は、ヒータ配線103及び温度センサ配線104のパターンである。図2(b)は、縞状セラミックスパターン110である。図2(c)は、センサ電極111のパターンである。図2(d)は、前記ヒータ配線及び温度センサ配線の取り出し窓112及びメンブレン113領域のパターンである。
【0028】
図3に、以上により形成されるセラミックス及びセンサ電極部構造の模式的な俯瞰図を示す。本発明によるセラミックスセンサでは、ナノメータオーダーの幅をもつセラミックスが縞状に配置され、セラミックスが延在する方向と交差する方向に、センサ電極がセラミックスの両端に配置される。
【0029】
図1では、周期型位相シフトマスクを用いてセラミックスパターンを形成する方法について説明したが、セラミックスパターンのパターニング方法については上記に限らず様々なリソグラフィ方法を適用することができる。
【0030】
図4に、ポリSiパターンを用いて形成したサイドウォールを利用してセラミックスパターンを形成する方法について説明する。
まず、図4(a)に示すように、Si基板101表面にSi酸化膜102を形成した後、例えばマスクを介した紫外線露光による通常のリソグラフィ手段を用いてポリSi薄膜をパターニングして、所定のセンサ領域内にヒータ配線103及び温度センサ配線104を形成する。その後、さらに、上記の全体をSi酸化膜105及びSi窒化膜106で被覆する。この工程は、実施例1の図1(a)と同じである。
【0031】
次に、Si窒化膜106上に膜厚150nmのポリSi膜114を堆積した後、実施例1図1(b)での説明と同様のArF露光法により、60nmのラインアンドスペース(縞状)レジストパターンを形成し、上記レジストパターンをマスクとしてポリSi膜をエッチングする。エッチング時の寸法シフトにより、周期120nm、すなわち120nmごとに、100nmの間隔をもって幅20nmのポリSiパターン114を形成する。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、膜厚40nmのSi酸化膜115を一様かつ等方的(コンフォーマル)に堆積する。
さらに図4(c)に示すように全面を上方から異方性エッチングして、上記ポリSiパターンの側壁に幅40nmのサイドウォール116を形成する。
しかる後に、図4(d)に示すように、上記ポリSiをエッチング除去する。これにより、周期60nmで幅40nm、すなわち60nmごとに20nmの間隔をもって幅40nmのSi酸化膜パターン117が形成される。
【0033】
図4(d)で形成されたSi酸化膜パターン117に対し、図1(c)以降のプロセスを適用することにより、ピッチ60nm、幅20nmのセラミックスパターンを形成可能である。
上述した方法の他に、例えば電子線描画法を用いることにより、さらに微細な格子パターンを形成することが可能で、これにより、さらに感度向上が可能である。但し、電子線描画法は生産性が低いという問題点がある。
【0034】
また、ナノインプリントを用いることにより、微細かつ低コストのパターン形成が可能である。ナノインプリントを使用する場合、レジストを用いず、Si酸化膜を塗布型ガラス(SOG)に代え、上記液体状態のSOGを直接パターニングすることが可能である。例えば、液体状のSOG膜に、表面に所望の格子状凹凸パターンを有するナノインプリントマスターを押し当て、加熱後、マスターを剥離することにより、SOG薄膜に微細格子パターンを形成する。SOGは焼成することによりほぼ完全なSi酸化膜となり、やはり図1(b)以降の上記プロセスに適用可能である。ナノインプリント法を用いることにより、最終的に、例えば幅10nm、ピッチ20nm程度の縞状セラミックスパターンを形成することが可能である。もちろん ナノインプリント法を用いて通常のレジストをパターニングしてこれをマスクとしてエッチングにより下地膜を形成してもよい。
【0035】
本センサを単独で用いる場合には、センサ領域外の基板表面は、どのような状態であってもかまわない。例えば、基板全面がセラミックスパターンであってもよく、または酸化膜または窒化膜上にセラミックスが付着した状態であってもかまわない。この場合、第1の熱処理後の研磨は必ずしも必要ない。セラミックス前駆体の膜厚は酸化膜パターンの高さより低いので、酸化膜パターン間にセラミックス前駆体が埋め込まれたとき、酸化膜パターンの側壁が一部露出するため、フッ酸等でエッチングすると酸化膜パターン上のセラミックスは酸化膜パターンとともにリフトオフされ除去されるからである。
【0036】
また、第2の熱処理は必ずしも必須ではなく、第1の熱処理で最終的な焼成を行ってもよい。より高温で焼成を行うことによりセラミックスセンサの経時安定性が向上する。摂氏800度で焼成を行った場合のセラミックスの平均的結晶粒径は数ミクロン程度であり、セラミックパターンの幅方向寸法よりはるかに大きい。このため、粒界はパターンの延長方向のみに存在する。典型的なセラミックス部の長さ方向寸法は数10から数百ミクロンであり、粒界数は100から1000以下である。このため、粒界による電気抵抗成分はセラミックス自体の抵抗成分と比較して小さく、従って使用中粒界状態に何らかの変化が生じても、特性上の変化は殆どない。さらに高温の焼成を行うと、結晶粒径はセラミックス部の長さ方向寸法より大きくなり、センサ部セラミックスは実質的に単結晶となるため、経時的に非常に安定な特性が得られる。
【0037】
また、上記の説明では、セラミックスパターンを縞状に形成したが、縞状に代えて格子状に形成することも可能である。
格子状にセラミックスパターンを形成したときの平面図を図5に、俯瞰図を図6に示す。図5において、ヒータ配線503および温度センサ配線504の上部に格子状のセラミックスパターン510が形成され、セラミックスパターンの両端部にセンサ電極部511がセラミックスパターンと接続されて配置される。
【0038】
さらに、複数の格子状セラミックスパターンを、酸化薄膜を挟んで積層した後、酸化膜をエッチングする等することによりセラミックスの3次元格子を形成してもよい。これらにより(1)センサ電極間の電流パスが増える、(2)電流パスの周囲のセラミックスの表面積が増える、の2つの理由からセンサ感度がさらに向上する。
以上の手法により、一般に直接的な加工が困難なセラミックスを、標準的なLSI加工プロセスとゾルゲル法を組み合わせることにより、特殊な加工装置等を用いることなく、比較的容易にナノメータレベルの寸法でパターン化することができる。
【実施例2】
【0039】
次に、実施例1で述べたセンサを集積回路とモノリシックに集積化する方法について述べる。
図7は、本実施例によるセンサと集積回路をモノリシックに集積化した集積化ガスセンサの製造プロセスを示す模式図である。
まず、図7(a)に示すように、Si基板201上の所定の集積回路領域202に通常のCMOS集積回路プロセスを用いて集積回路トランジスタ203を作製する。即ち、ウエル形成、フィールド酸化膜(トレンチアイソレーションでもよい)によるアイソレーション、ゲート酸化膜、ゲート、拡散層によるソース、ドレイン、及び高融点金属プラグからなるコンタクトを形成する。また、ここで必要に応じて集積回路トランジスタ同士を接続するための第1配線も形成してよい。
【0040】
一方、上記Si基板上の所定のセンサ領域204には、まず所定の酸化膜205を形成後、上記酸化膜上にポリSi膜でヒータ用配線206と温度センサ用配線207を形成する。上記両配線はその末端部において上記集積回路の所定のポリSi上コンタクトと接続するよう、集積回路領域まで延長されている。
【0041】
次に、上記基板の全面に酸化膜208を堆積する。上記酸化膜205は上記トランジスタのフィールド酸化膜で、又、上記ポリSi膜は上記トランジスタのゲート層で、上記酸化膜208はトランジスタの層間絶縁膜と兼用してもよい。しかる後に全面を平坦化する。
次に、図7(b)に示すように、全面に窒化膜209を堆積し、その上の上記センサ領域204上に、実施例1に示した方法を用いて、セラミックス格子パターン210を作製し、その後、セラミックス格子パターン210をカバーするように酸化膜217及び全面に窒化膜211を堆積し上記セラミックスパターンを覆う。セラミックスパターン形成工程のセラミックス前駆体塗布前までの全工程はCMOS集積回路の製造ラインで行い、その後のセラミックスパターン及び上記窒化膜形成工程はセンサ専用工程で行う。
【0042】
その後、十分な洗浄を行った後、基板をCMOS集積回路の製造ラインに戻し、以下のプロセスを行う。
まず図7(c)に示すように集積回路領域の上記窒化膜をエッチング除去し、所定の多層配線212を形成して集積回路部を完成する。
【0043】
次に図7(d)に示すように、パッド部上の窒化Si封止膜およびSi酸化膜に開口213を形成する。この時点でセンサ領域上はSi窒化膜および多層配線形成時に堆積された層間絶縁膜、上記封止膜で覆われている。そこで、センサ領域上の上記封止膜、層間絶縁膜と窒化膜を順次エッチングして除去し、センサ窓214を形成してセラミックスパターン表面を露出する。
【0044】
以降の工程はいわゆる実装工程(後工程)ラインにおいて行う。
図7(e)に示すように、セラミックパターンの末端部に一対のセンサ電極を、また上記電極と上記パッドのうち所定のものを結ぶ配線215を形成する。例えば、セラミックパターンの一部と所定の配線にレジストで開口を形成、金属を蒸着してリフトオフ等を行うことにより形成する。
【0045】
最後に、図7(f)に示すように、実施例1同様にして、ほぼ前記センサ領域に対応するSi基板裏面より、Si基板を表面酸化膜までエッチングを行い、前記センサ領域にメンブレン216を形成する。メンブレンを形成するのは熱容量を低減するため、ヒータ部分の基板を薄くする必要があるからである。
【0046】
このように、人工的なナノ構造を有するセラミックスガスセンサを、集積回路とモノリシックに集積化することにより、センサシステムの小型化、低コスト化を実現できる。また、センサ近傍に、アンプなどのアナログのLSIを集積することによりセンサと集積回路との間にのるノイズを低減することができ、センサの高感度化を実現することが可能となる。さらには、チップ上にAD変換、マイコンを集積化すると、ガス種判定、経時的変化のモニタリング等が可能となり、センサを搭載したチップのインテリジェント化が図れる。
【0047】
ゾルゲル法によるセラミックス形成時の汚染を避けるため、トランジスタ作製はセラミックスパターン形成より先に行うことが好ましい。この場合、セラミックスの焼成温度は、トランジスタの性能劣化を生じない範囲に抑えることが望ましい。また、コンタクト用高融点金属の融点より低いことが望ましい。具体的には、800度以下とすることが好ましい。
【0048】
一方、セラミックパターン形成、窒化膜による封止の後、集積回路領域の洗浄を入念に行い、上記汚染に細心の注意を払った場合には、上記順番を逆としても、すなわちトランジスタ作成をセラミックスパターン形成の後で行ってもよい。この場合、セラミックスの焼成を十分に高い温度で行うことができるため、センサの経時安定性がさらに向上する。
【実施例3】
【0049】
ガスセンサの応用においては、しばしば長期間にわたりエネルギー的に自立して動作させることが要求される。例えば電池1個で数年間安定して動作し続ける必要がある。この場合、センサ特性自体の安定性に加え、低消費電力化が重要である。
セラミックガスセンサの消費電力を支配するのは、センサ加熱用のヒータであるため、低消費電力化は(1)ヒータの熱容量削減及び(2)ヒータ部からの放熱の削減、の2点が必要である。上記(1)、(2)の優先順位は、センサの動作シーケンスに依存するが、いずれにせよ、(1)(2)ともにヒータの小型化により達成される。
【0050】
具体的には、ヒータの体積、表面積、ヒータと周辺部の接触部分の縮小が必要であるが、このためには、実施例2に示したバルクMEMSより表面MEMSが有利である。表面MEMS技術とは、半導体集積回路で用いられるような薄膜の堆積、リソグラフィによるレジストマスク形成、エッチングを繰り返すことにより、基板上に構造物を形成する技術の総称である。半導体集積回路同等の加工技術を用いるので、前述のバルクMEMSに比べて微細な構造体を高精度に形成可能という特長がある。
【0051】
以下、表面MEMSによるマイクロヒータと実施例1によるガスセンサを集積した例について述べる。
図8は、本実施例によるセンサと集積回路をモノリシックに集積化した集積化ガスセンサの製造プロセスを示す模式図である。
まず、図8(a)に示すように、Si基板301上の所定の集積回路領域302に通常のCMOS集積回路プロセスを用いて集積回路トランジスタ303を作製する。即ち、ウエル形成、フィールド酸化膜によるアイソレーション、ゲート酸化膜、ゲート、拡散層によるソース、ドレイン、及び高融点金属プラグからなるコンタクトを形成する。
【0052】
次に、図8(b)に示すように、上記Si基板上の所定のセンサ領域304には、まず所定の酸化膜305及び窒化膜306を堆積後、タングステン犠牲層膜パターン307を形成し、さらに上記犠牲層膜パターン上に窒化膜308を堆積する。さらに窒化シリコン上に、適当な金属材料を用いてヒータ用配線と温度センサ用配線309を形成し、再び窒化膜310で埋め込む。
【0053】
次に、図8(c)に示すように、上記センサ領域上に、実施例1に示した方法を用いて、セラミックス格子パターン311を作製し、その後、全面に酸化膜312(及び必要に応じて窒化膜313)を堆積し上記セラミックスパターンを覆う。
次に、図8(d)に示すように、集積回路領域の窒化膜や酸化膜をエッチング除去した後、所定の多層配線314を形成して集積回路部を完成する。
【0054】
その後、図8(e)に示すように、本基板の表面から上記犠牲層膜パターンまで貫通する開口315を形成し、上記開口を介して上記犠牲層膜をエッチング除去して空洞316を形成する。
【0055】
最後に、図8(f)に示すように、基板全面にCVDによりシリコン酸化膜を堆積し上記開口315を埋め込み、上記空洞316を封止した。但し、上記空洞封止は必須ではない。空洞内を真空とすると熱損失は若干抑制される。さらにセラミックスパターン上及び配線パッド上の上記酸化膜を除去する。最後に、セラミックパターンの末端部に一対のセンサ電極を、また上記電極と上記パッドのうち所定のものを結ぶ配線317を形成し、センサ以外の領域を封止膜(図示せず)で覆う。
【0056】
セラミックセンサの焼成温度が低い場合、セラミックス膜の形成を集積回路の配線形成後に行うことができる。この場合、マイクロヒータとガスセンサを集積回路領域の直上に設けることができる。マイクロヒータを集積回路領域上に設ける場合、マイクロヒータ用薄膜メンブレンは実施例2で述べたようなバルクMEMSで作成することができない。従って、実施例3で述べたような表面MEMSを用いて形成する必要がある。
【0057】
このように、表面MEMS技術を用いることによりセンサに使用するヒータを小型化することができ、ヒータの熱容量の削減、ヒータ部からの放熱量の削減を行うことによりセンサの低電力化を実現することが可能となる。また、ヒータの小型化によりチップ面積を大幅に低減することが可能である。
【実施例4】
【0058】
本実施例では、実施例3に示した表面MEMS技術を用いてセンサと集積回路とをモノシリックに集積した場合を示す。
まず、図9(a)に示すように、Si基板401上の所定の領域に通常のCMOS集積回路プロセスを用いて集積回路トランジスタ402を作製する。
次に、図9(b)に示すように、所定の多層配線403を形成して集積回路部を完成させる。
次に、図9(c)に示すように、窒化膜404を堆積後、上記窒化膜上に所定のセンサ領域を含むタングステン犠牲層膜パターン405を形成し、さらに上記犠牲層膜パターン上に窒化膜406を堆積する。
さらに窒化シリコン上に、適当な金属材料を用いてヒータ用配線と温度センサ用配線407を形成し、再び窒化膜408で埋め込む。
【0059】
次に、図9(d)に示すように、上記センサ領域上に、実施例1に示した方法を用いて、セラミックス格子パターン409を作製し、必要に応じて、全面にSi酸化膜さらにSi窒化膜を堆積して上記セラミックス格子パターンを覆う。その後、本基板の表面から上記犠牲層膜パターンまで貫通する開口410を形成し、上記開口を介して上記犠牲層膜をエッチング除去して空洞411を形成する。次にシリコン酸化膜をCVDで形成して上記空洞を封止し、さらにセラミックスパターン上及び配線パッド(図示せず)上の上記酸化膜を除去する。但し、上記空洞封止は必須ではない。空洞内を真空とすると熱損失は若干抑制される。最後にセラミックパターンの末端部に一対のセンサ電極を、また上記電極と上記パッドのうち所定のものを結ぶ配線を形成し、センサ以外の領域を封止膜で覆って本集積化ガスセンサを完成させる図10に、本実施例の方法を用いて集積化したガスセンサの模式的な俯瞰図を示す。図10ではガスセンサをアレイ状に配置している。個々のセンサを構成するセラミックス膜は、各々異なる組成を有する。又、必要に応じて異なる触媒を添加されている。個々のセンサ膜は、異なるガス種に対して異なる感度を有するので、これにより複数センサの出力によりガス種の特定が可能となる。
【0060】
本実施例では、複数センサからの出力は、別チップとして用意したAD変換回路とマイコンに入力し、ここでガス種判定の演算を行ったが、図10に示したLSI部において、上記判定を行ってもよい。この場合、1チップのみでガス濃度及び種類の判定を行うことが可能となる。又、複数のセラミックスセンサ膜を1つの基板上にモノリシックに形成することは、本実施例に限らず、実施例2又は3においても同様に有効である。
【0061】
また、本実施例において、センサ部セラミックスパターン。
の焼成を、高強度パルスレーザーのスキャニング照射により行うことも可能である。パルスレーザーによりセラミックス膜の温度は非常に高温となるが、照射後の大気中への速やかな放熱により、基板部への熱伝達が抑制され、センサ下部の多層配線及びLSI部の温度は摂氏400度以下に保たれる。これにより、表面MEMS技術を用いて形成するセラミックセンサと集積回路とをモノシリックに形成しても、セラミックスセンサを高性能かつ経時的に安定なセンサ特性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
様々な産業分野や生活をとりまく環境における、危険、人体に有害または不快、あるいは地球環境を破壊する様々なガスの検知システム、自動車エンジン制御、人体の健康状態診断システム等、本発明の産業上の利用可能性は多岐にわたる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の1実施例によるガスセンサの製造プロセスの模式図である。
【図2】本発明の1実施例によるガスセンサを構成する各層の平面的配置図である。
【図3】本発明の1実施例によるガスセンサのセラミックス部及びセンサ電極部構造の模式的な俯瞰図である。
【図4】本発明の1実施例の改良によるガスセンサの製造プロセスの一部を示す模式図である。
【図5】本発明の1実施例の改良によるガスセンサのセラミックスパターンの平面的構造を示す模式図である。
【図6】本発明の1実施例の改良によるガスセンサのセラミックス部及びセンサ電極部構造の模式的な俯瞰図である。
【図7】本発明の別の実施例によるセンサと集積回路をモノリシックに集積化した集積化ガスセンサの製造プロセスを示す模式図である。
【図8】本発明の別の実施例によるセンサと集積回路をモノリシックに集積化した集積化ガスセンサの製造プロセスを示す模式図である。
【図9】本発明の別の実施例によるセンサと集積回路をモノリシックに集積化した集積化ガスセンサの製造プロセスを示す模式図である。
【図10】本発明の別の実施例による集積化ガスセンサの模式的な俯瞰図である。
【図11】従来セラミックスガスセンサの動作原理を示す模式図である。
【図12】本発明によるセラミックスガスセンサの動作原理を示す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
101, 201, 301, 401:Si基板、102, 105, 107、115, 205, 208, 305, 312:Si酸化膜、103, 206:ヒータ配線、104, 207:温度センサ配線、106, 209, 211, 306, 308, 310, 313, 404, 406, 408:Si窒化膜、108:Si酸化膜パターン、109:セラミックス前駆体、110: 1次元格子状セラミックスパターン、111:センサ電極、112:取り出し窓、113, 216:メンブレン、114:ポリSiパターン、116:サイドウォール、117: Si酸化膜パターン、118:2次元格子状セラミックスパターン、202, 302:集積回路領域、203, 303, 402:集積回路トランジスタ、204, 304:センサ領域、210, 311, 409:セラミックス格子パターン、212, 314, 403:多層配線、213, 315, 410:開口、214:センサ窓、215, 317:配線、307, 405:犠牲層膜パターン、309, 407:温度センサ用配線、316, 411:空洞。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地膜を形成する工程と、
前記下地膜をエッチングすることにより、第1方向に延在し、所定の間隔をもって前記第1方向と交差する方向に沿って配置される下地膜のパターンを形成する工程と、
前記所定の間隔を持って配置される下地膜のパターンの間隙にセラミックス前駆体を流し込む工程と、
前記セラミックス前駆体を焼成することにより、セラミックス前駆体をセラミックスとする工程と、
前記下地膜のパターンを除去し、前記第1方向に延在し、前記第1方向と交差する方向に沿って配置される複数のセラミックス構造体を形成する工程とを有するセラミックスセンサの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記下地膜にレジストを塗布する工程と、
前記レジストを塗布された下地膜を、周期型位相シフトマスクを用いて露光する工程とをさらに有し、
前記露光された下地膜をエッチングすることにより前記下地膜のパターンが形成されるセラミックスセンサの製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記所定の間隔は100nm以下であるセラミックスセンサの製造方法。
【請求項4】
請求項1において、
ポリシリコン膜を形成する工程と、
前記ポリシリコン膜にレジストを塗布する工程と、
前記ポリシリコン膜をエッチングすることにより、前記第1方向に延在し、所定の間隔をもって前記第1方向と交差する方向に沿って配置されるポリシリコン膜のパターンを形成する工程とをさらに有し、
前記下地膜は、前記所定の間隔をもって配置されるポリシリコン膜の上層に堆積され、
前記下地膜のエッチングを行い前記下地膜のサイドウォールが形成されることにより前記下地膜のパターンが形成されるセラミックスセンサの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記ポリシリコン膜のパターンの所定の間隔は100nm以下であり、
前記下地膜のパターンの所定の間隔は30nm以下であるセラミックスセンサの製造方法。
【請求項6】
請求項1において、
シリコン基板上にトランジスタを有する回路を形成する工程と、
前記回路と接続される配線を形成する工程とをさらに有するセラミックスセンサの製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記配線を形成する工程を、前記セラミックス構造体を形成する工程よりも後に行うセラミックスセンサの製造方法。
【請求項8】
請求項6において、
前記配線を形成する工程を、前記セラミックス構造体を形成する工程よりも前に行うセラミックスセンサの製造方法。
【請求項9】
請求項1において、
所定の間隔をもって前記酸化膜のパターンを形成することにより、前記セラミックス前駆体が前記第1方向と交差する方向に粒成長しないセラミックスセンサの製造方法。
【請求項10】
請求項1において、
前記下地膜は、シリコン酸化膜であるセラミックスセンサの製造方法。
【請求項11】
第1方向に延在し、前記第1方向と交差する方向に沿って配置される複数の矩形状の第1セラミックス構造体を有し、
前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体は所定の間隔をもって配置され、
前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体のそれぞれは、前記第1方向と交差する方向の幅が前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体を焼成するときに形成されるセラミックスの結晶粒径よりも小さいセラミックスセンサ。
【請求項12】
請求項11において、
前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体のそれぞれは、前記第1方向と交差する方向の幅が100nm以下であるセラミックスセンサ。
【請求項13】
請求項11において、
シリコン基板上に形成されたトランジスタをさらに有し、
前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体は、前記トランジスタの上部に配置されるセラミックスセンサ。
【請求項14】
請求項11において、
前記第1方向と交差する方向に延在し、前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体と交差する複数の矩形状の第2セラミックス構造体をさらに有するセラミックスセンサ。
【請求項1】
下地膜を形成する工程と、
前記下地膜をエッチングすることにより、第1方向に延在し、所定の間隔をもって前記第1方向と交差する方向に沿って配置される下地膜のパターンを形成する工程と、
前記所定の間隔を持って配置される下地膜のパターンの間隙にセラミックス前駆体を流し込む工程と、
前記セラミックス前駆体を焼成することにより、セラミックス前駆体をセラミックスとする工程と、
前記下地膜のパターンを除去し、前記第1方向に延在し、前記第1方向と交差する方向に沿って配置される複数のセラミックス構造体を形成する工程とを有するセラミックスセンサの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記下地膜にレジストを塗布する工程と、
前記レジストを塗布された下地膜を、周期型位相シフトマスクを用いて露光する工程とをさらに有し、
前記露光された下地膜をエッチングすることにより前記下地膜のパターンが形成されるセラミックスセンサの製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記所定の間隔は100nm以下であるセラミックスセンサの製造方法。
【請求項4】
請求項1において、
ポリシリコン膜を形成する工程と、
前記ポリシリコン膜にレジストを塗布する工程と、
前記ポリシリコン膜をエッチングすることにより、前記第1方向に延在し、所定の間隔をもって前記第1方向と交差する方向に沿って配置されるポリシリコン膜のパターンを形成する工程とをさらに有し、
前記下地膜は、前記所定の間隔をもって配置されるポリシリコン膜の上層に堆積され、
前記下地膜のエッチングを行い前記下地膜のサイドウォールが形成されることにより前記下地膜のパターンが形成されるセラミックスセンサの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記ポリシリコン膜のパターンの所定の間隔は100nm以下であり、
前記下地膜のパターンの所定の間隔は30nm以下であるセラミックスセンサの製造方法。
【請求項6】
請求項1において、
シリコン基板上にトランジスタを有する回路を形成する工程と、
前記回路と接続される配線を形成する工程とをさらに有するセラミックスセンサの製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記配線を形成する工程を、前記セラミックス構造体を形成する工程よりも後に行うセラミックスセンサの製造方法。
【請求項8】
請求項6において、
前記配線を形成する工程を、前記セラミックス構造体を形成する工程よりも前に行うセラミックスセンサの製造方法。
【請求項9】
請求項1において、
所定の間隔をもって前記酸化膜のパターンを形成することにより、前記セラミックス前駆体が前記第1方向と交差する方向に粒成長しないセラミックスセンサの製造方法。
【請求項10】
請求項1において、
前記下地膜は、シリコン酸化膜であるセラミックスセンサの製造方法。
【請求項11】
第1方向に延在し、前記第1方向と交差する方向に沿って配置される複数の矩形状の第1セラミックス構造体を有し、
前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体は所定の間隔をもって配置され、
前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体のそれぞれは、前記第1方向と交差する方向の幅が前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体を焼成するときに形成されるセラミックスの結晶粒径よりも小さいセラミックスセンサ。
【請求項12】
請求項11において、
前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体のそれぞれは、前記第1方向と交差する方向の幅が100nm以下であるセラミックスセンサ。
【請求項13】
請求項11において、
シリコン基板上に形成されたトランジスタをさらに有し、
前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体は、前記トランジスタの上部に配置されるセラミックスセンサ。
【請求項14】
請求項11において、
前記第1方向と交差する方向に延在し、前記複数の矩形状の第1セラミックス構造体と交差する複数の矩形状の第2セラミックス構造体をさらに有するセラミックスセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−226860(P2006−226860A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41537(P2005−41537)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]