説明

ターボ過給機

【課題】本発明の目的は、従来のターボ過給機よりも翼車の軸心方向の短縮化を図ることができるターボ過給機の提供にある。
【解決手段】タービン翼車及びコンプレッサ翼車を同軸に一体形成し、タービン翼車とコンプレッサ翼車との境界部の径がほぼ翼車径以上に設定された複合翼車11と、複合翼車11を収容するハウジング16と、ハウジング16に備えられ、複合翼車11を回転自在に支持する翼車軸受32とを有し、ハウジング16の内部空間は複合翼車11によりタービン室35とコンプレッサ室36に2分割され、翼車軸受32は、複合翼車11の外周部よりも外側に位置する部分のハウジング16に配置され、複合翼車11におけるタービン翼車及びコンプレッサ翼車との境界部を支持し、タービン室35とコンプレッサ室36間での流体の流通を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はターボ過給機に関し、特に、タービン翼車及びコンプレッサ翼車が一体化された複合翼車を有するターボ過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のターボ過給機としては、例えば、特許文献1に開示された排気ガス遠心過給機が存在する。
この種のターボ過給機では、タービン羽根と圧縮機羽根(コンプレッサ羽根)との共通の中央円板を備えた羽根車が用いられている。
タービン羽根と圧縮機羽根との共通の中央円板が一体化された羽根車の両端には軸部が設けられ、各軸部が軸受により回転自在に保持されている。
この種のターボ過給機によれば、タービン羽根と圧縮機羽根との共通の中央円板を備えていることから、従前のターボ圧縮機では必要とされたタービン羽根と圧縮機羽根を繋ぐ中間シャフトが節約できるとしている。
【特許文献1】特開昭55−128603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されたこの種のターボ過給機では、タービン羽根及び圧縮機羽根を有する翼車の両端に設けられた両軸部が軸受により夫々保持されるから、軸部の寸法分だけ短縮化の効果が相殺されているほか、少なくとも、翼車を支持するために複数の軸受を必要とするという問題がある。
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、従来のターボ過給機よりも翼車の軸心方向の短縮化を図ることができるターボ過給機の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、本発明は、タービン翼車及びコンプレッサ翼車を同軸に一体形成し、前記タービン翼車と前記コンプレッサ翼車との境界部の径がほぼ翼車径以上に設定された複合翼車と、該複合翼車を収容するハウジングと、前記ハウジングに備えられ、前記複合翼車を回転自在に支持する翼車軸受とを有し、前記ハウジングの内部空間は前記複合翼車によりタービン室とコンプレッサ室に2分割され、前記翼車軸受は、前記複合翼車の外周部よりも外側に位置する部分の前記ハウジングに配置され、前記複合翼車における前記タービン翼車及び前記コンプレッサ翼車との境界部を支持し、前記タービン室と前記コンプレッサ室間での流体の流通を遮断することを特徴とする。
【0006】
本発明のターボ過給機では、複合翼車の両端から軸部を突出させて設ける必要がないため、ターボ過給機の軸心方向の寸法を従来よりもさらに短縮化することができる。
【0007】
また、本発明では、上記のターボ過給機において、前記複合翼車は鋳造により一体形成してもよい。
【0008】
この場合、複合翼車を鋳造による1工程により得ることができるほか、材料を1種類とすることができる。
これによりターボ過給機の製造コストを削減しやすくなるほか、ターボ過給機の製造工程を短縮化しやすくなる。
【0009】
また、本発明では、上記のターボ過給機において、前記ハウジングは、鋳造により一体形成された鋳造ハウジングであり、一体形成後の前記鋳造ハウジングの分割により得られる2つのハウジング部材を含ませてもよい。
【0010】
この場合、ハウジングを鋳造による1工程により得ることができるほか、材料を1種類とすることができるので、ターボ過給機の製造コストをさらに削減しやすくなるほか、ターボ過給機の製造工程をより短縮化しやすくなる。
また、一体形成後の鋳造ハウジングを分割することにより、複合翼車を収容することができる。
【0011】
また、本発明では、上記のターボ過給機において、前記ハウジングは、前記タービン室の近傍に位置する冷却水路を有してもよい。
【0012】
この場合、ハウジングがタービン室の近傍に位置する冷却水路を有することにより、ハウジングにおけるタービン室付近が冷却される。
このため、タービン室の排気の熱によるハウジングを通じたコンプレッサ室への熱伝達が抑制され、コンプレッサ室における吸気の吸入効率の低下を抑制することができる。
【0013】
また、本発明では、上記のターボ過給機において、前記タービン翼車と前記コンプレッサ翼車との境界部の径が翼車径と同径に設定されてもよい。
【0014】
この場合、境界部の径が翼車径と同径に設定されていることにより、複合翼車の大径化を抑制することができるほか、境界部の径が翼車径と同径に設定されていない場合と比較して複合翼車を形成することが容易である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来のターボ過給機よりも翼車の軸心方向の短縮化を図ることができるターボ過給機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔第1の実施形態〕
以下、第1の実施形態のターボ過給機を図面に基づき説明する。
図1は、第1の実施形態に係るターボ過給機を破断して示す側面図であり、図2は第1の実施形態に係るハウジング形成を説明する概略側面図である。
この実施形態のターボ過給機は、内燃機関としての自動車用ディーゼルエンジンに適用されるターボ過給機である。
図1に示すように、ターボ過給機10は、タービン羽根13とコンプレッサ羽根14を有する複合翼車11と、複合翼車11を収容するハウジング16と、ハウジング16に備えられ、複合翼車11を回転自在に支持する翼車軸受32とを有する。
【0017】
複合翼車11は、タービン翼車とコンプレッサ翼車の背面同士を貼り合わせような概観を持ち、両端へ向かって縮径する回転体12を有する。
回転体12は、軸心P方向の一方(図1において右方向)の端部へ向かう縮径面12aと、他方(図1において左方向)の端部へ向かう縮径面12bが形成されている。
回転体12における一方の縮径面12aには多数のタービン羽根13が形成され、他方の縮径面12bには多数のコンプレッサ羽根14が形成されている。
回転体12の一部及びタービン羽根13はタービン翼車に相当する要素を構成し、回転体12の一部及びコンプレッサ羽根14はコンプレッサ翼車に相当する要素を構成する。
【0018】
回転体12における両縮径面12a、12bの間には、最大径を有する中間部12cが位置し、中間部12cは軸心P方向に所定の肉厚を持つ部位であり、複合翼車11におけるタービン翼車とコンプレッサ翼車の境界部を含む。
因みに、この実施形態における境界部の径は、タービン翼車及びコンプレッサ翼車の翼車径と同径に設定されているが、境界部の径はほぼ翼車径以上に設定されてもよい。
中間部12cの外周面には、断面円弧状の軸受用摺動溝15が形成されている。
軸受用摺動溝15は、複合翼車11をハウジング16に対して回転自在に保持する翼車軸受32の内周面33が摺接する部位である。
中間部12cの外周面に軸受用摺動溝15が形成されていることにより、従来のターボ過給機とは異なり、複合翼車11の軸心P方向の両端に軸部は存在せず、従来のターボ過給機よりも複合翼車11の軸心方向の短縮化が図られている。
【0019】
この実施形態に係る複合翼車11は鋳造により一体形成されており、複合翼車11の材料は複合翼車11の耐熱性を高めるため、複合翼車11の材料はニッケル系金属材料が用いられている。
鋳造により得られた複合翼車11は、軸受用摺動溝15の切削加工等が施される。
【0020】
次に、ハウジング16について説明する。
ハウジング16は一方に配置されるタービンハウジング部材17と、他方に配置されタービンハウジング部材17に接合されるコンプレッサハウジング部材18とを有する。
ハウジング16は鋳造による一体形成により得られ、タービンハウジング部材17及びコンプレッサハウジング部材18は鋳造の時点で一体形成されている。
ハウジング16はタービンハウジング部材17からコンプレッサハウジング部材18へ貫通する内部空間を有する。
タービンハウジング部材17とコンプレッサハウジング部材18は、図2に示すように、鋳造後の一体形成された鋳造ハウジングWを分割することにより得られる部材である。
分割する理由は、複合翼車11及び翼車軸受32をハウジング16内に収容するためである。
なお、この実施形態のハウジング16は鋳鉄を材料にしている。
【0021】
タービンハウジング部材17は、中央に軸心P方向に沿う排気用吐出通路19と、排気用吐出通路19のコンプレッサハウジング部材18寄りから半径方向に向かって形成された排気ディフューザ20と、排気ディフューザ20の周りに渦巻き状に形成された排気ボリュート21とを有する。
排気ボリュート21は、図示しないエンジンの排気マニホールドと接続されている。
排気ボリュート21、排気ディフューザ20及び排気用吐出通路19は、エンジンの排気流路を構成し、排気流路は排気ボリュート21から排気ディフューザ20を経て排気用吐出通路19へ至る排気の流通を許容する。
【0022】
タービンハウジング部材17におけるコンプレッサハウジング部材18との接合面の内周側には、タービン側溝部22が形成されており、翼車軸受32の外周面34に対応する軸受用装着溝29の一部を構成する。
軸受用装着溝29は、コンプレッサハウジング部材18におけるコンプレッサ側溝部27と共に翼車軸受32の外周面34を保持する。
タービンハウジング部材17におけるコンプレッサハウジング部材18との接合面には、冷却水路30の一部を形成するタービン側凹部23が形成されている。
さらに、タービンハウジング部材17には排気用吐出通路19の近傍に別の冷却水路31が形成されている。
各冷却水路30、31は排気の熱によるハウジング16の過度の高温化を回避するための水路であり、図示しない冷却水配管と接続されている。
【0023】
コンプレッサハウジング部材18は、中央の軸心P方向に沿う吸気用吸入通路24と、吸気用吸入通路24のタービンハウジング部材17寄りから半径方向に向かって形成された吸気ディフューザ25と、吸気ディフューザ25の周りに渦巻き状に形成された吸気ボリュート26を有する。
吸気ボリュート26は図示しないエンジンの吸気マニホールドに接続されている。
吸気用吸入通路24、吸気ディフューザ25及び吸気ボリュート26は、吸気流路を構成し、吸気流路は吸気用吸入通路24から吸気ディフューザ25を経て吸気ボリュート26へ至る吸気の流通を許容する。
【0024】
コンプレッサハウジング部材18におけるタービンハウジング部材17との接合面には、コンプレッサ側溝部27が形成されており、コンプレッサ側溝部27はタービン側溝部22とともに軸受用装着溝29を構成し、翼車軸受32の外周面34を保持する。
コンプレッサハウジング部材18におけるタービンハウジング部材17との接合面には、冷却水路30の一部を形成し、タービン側凹部23と対応するコンプレッサ側凹部28が形成されている。
タービンハウジング部材17とコンプレッサハウジング部材18が接合された状態では、両凹部23、28はハウジング16を冷却する冷却水路30を構成する。
【0025】
次に、翼車軸受32について説明するが、この実施形態に係る翼車軸受32は環状のすべり軸受であり、その断面は円形である。
翼車軸受32の材料は銅系金属材料を採用している。
翼車軸受32の内周面33の一部は、複合翼車11の軸受用摺動溝15に嵌め込まれているが、複合翼車11と摺接する状態にある。
つまり、複合翼車11は翼車軸受32に対して回転自在である。
一方、翼車軸受32の外周面34の一部は、ハウジング16における軸受用装着溝29に装着されており、翼車軸受32はハウジング16に固定される。
【0026】
複合翼車11が翼車軸受32を介してハウジング16に備えられた状態では、複合翼車11及び翼車軸受32によりハウジング16内の空間部は2分割される。
分割された一方の空間部はタービン室35であり、他方の空間部はコンプレッサ室36を形成する。
タービン室35はタービン羽根13が収容される排気流路の空間であり、コンプレッサ室36はコンプレッサ羽根14が収容される吸気流路の空間である。
翼車軸受32は、タービン羽根13とコンプレッサ羽根14との境界部である中間部12cの外周面を支持し、複合翼車11とハウジング16との間を埋めることから、翼車軸受32が複合翼車11を回転自在に保持する軸受としての機能と、タービン室35とコンプレッサ室36との間での流体の移動を妨げるシール部材としての機能を有する。
複合翼車11においてタービン翼車に相当するタービン羽根13及び回転体12の一部(タービン羽根13側)はタービン室35を臨む。
一方、コンプレッサ翼車に相当するコンプレッサ羽根14及び回転体12の一部(コンプレッサ羽根14側)はコンプレッサ室36を臨む。
【0027】
次に、ターボ過給機10の作用について説明する。
エンジンの運転により、排気ガスが排気ボリュート21に送り込まれると、排気ガスは排気ボリュート21から排気用吐出通路19を通過する。
高温・高圧の排気ガスが排気流路を通過することにより複合翼車11が回転されるが、複合翼車11は翼車軸受32に対して摺動して回転する。
複合翼車11の回転により、コンプレッサ羽根14が吸気用吸入通路24から空気を取り込むとともに、吸気ボリュート26へ取り込んで空気を圧縮して送り込む。
ターボ過給機10の作動時において、タービン室35の内部には高温・高圧の排気ガスが存在し、コンプレッサ室36の内部には吸気用の空気が存在するが、翼車軸受32がハウジング16と複合翼車11の隙間を埋めていることから、タービン室35とコンプレッサ室36との間での流体(排気ガス、吸気用の空気)の流通を遮断する。
【0028】
ターボ過給機10の作動時において、タービン室35を流れる排気ガスは高温の燃焼ガスが主体であるから、ハウジング16を加熱するが、ハウジング16に形成された冷却水路30、31に冷却水を流通させることにより、ハウジング16の過度の温度上昇は抑制される。
複合翼車11もハウジング16同様に排気ガスにより加熱されるが、複合翼車11の熱は翼車軸受32を介してハウジング16側へ逃がされる。
複合翼車11から逃がされた熱はハウジング16の接合面付近を加熱することになるが、冷却水路30の冷却水により冷却される。
【0029】
この実施形態に係るターボ過給機10によれば以下の効果を奏する。
(1)複合翼車11における中間部12cに軸受用摺動溝15を設けたことから、複合翼車11を回転自在に保持する軸受としての機能と、タービン室35とコンプレッサ室36との間での流体の移動を妨げるシール部材としての機能を有する単一の翼車軸受32を介して複合翼車11をハウジング16に回転自在に保持することができる。これにより、ターボ過給機10の部品点数を従来のターボ過給機よりも削減することができる。
【0030】
(2)複合翼車11の中間部12cに単一の翼車軸受32を用いることができることから、従来のターボ過給機のように複合翼車11の軸心方向の両端に軸部を設ける必要がないほか、複数の軸受を用いる必要がない。さらに、この軸部が不要になることにより従来のターボ過給機よりも軸心P方向の寸法を短縮化しやすく、ターボ過給機10の小型化及び軽量化に寄与する。
【0031】
(3)複合翼車11が鋳造によりタービン翼車及びコンプレッサ翼車を同軸に一体形成されているから、複合翼車11を複数の部材から形成させる必要がなく、複合翼車11の部品点数を削減することができるほか、複合翼車11の製作コストを低減させることができる。
【0032】
(4)ハウジング16は、鋳造により一体形成された鋳造ハウジングWをタービンハウジング部材17とコンプレッサハウジング部材18に分割することにより得られるため、複合翼車11のハウジング16内への収容を可能としているほか、ハウジング16の部品点数を従来のターボ過給機よりも削減できる。
【0033】
(5)ハウジング16に冷却水路30、31を設けたことから、タービン室35を通過する排気ガスの熱によりハウジング16が過度に温度上昇することがない。また、複合翼車11もハウジング16と同様に排気ガスとの接触により加熱されるが、複合翼車11の熱は翼車軸受32を介してハウジング16側へ熱を逃がすことができる。複合翼車11のコンプレッサ側が過度に加熱されることがないことから、コンプレッサ室36における吸気用の空気の温度上昇を抑制することができ、吸入効率の低下を抑制することができる。
(6)複合翼車11における境界部としての中間部12cの径が翼車径と同径に設定されていることにより、複合翼車11の大径化を抑制することができるほか、境界部の径が翼車径と同径に設定されていない場合と比較して複合翼車11を形成することが容易である。
【0034】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態に係るターボ過給機ついて図3に基づき説明する。
図3は第2の実施形態に係るターボ過給機を破断して示す側面図である。
図3に示すように、この実施形態に係るターボ過給機40は、2個の翼車軸受62により回転自在に保持される複合翼車41を有する。
この実施形態に係る複合翼車41は、第1の実施形態よりも軸心P方向の寸法がやや長く設定されており、軸心P方向の寸法が長く設定された分は、中間部42cの軸心P方向の長さを拡大する。
【0035】
複合翼車41における中間部42cの外周面には一対の軸受用摺動溝45が連設されている。
このため、翼車軸受62に複合翼車41が備えられた状態では、翼車軸受62が軸心P方向に並列状態で配置される。
なお、複合翼車41におけるタービン羽根43、コンプレッサ羽根44及び各縮径面42a、42bは第1の実施形態の複合翼車11と同一構成である。
【0036】
第2の実施に係るターボ過給機40のハウジング46は、鋳造により一体形成された鋳造ハウジングを2分割した2つのハウジング部材47、48から構成されている。
このハウジング46は、具体的には、第1の実施形態と同様にタービンハウジング部材47及びコンプレッサハウジング部材48から構成されるが、この実施形態では、両ハウジング部材47、48の接合面は排気ボリュート51と干渉する位置に形成されている。
【0037】
従って、コンプレッサハウジング部材48の一部は、タービンハウジング部材47とともにタービン室65を構成する要素となっている。
コンプレッサハウジング部材48において、複合翼車41の中間部42cと対向する内周面には、一対の軸受用装着溝59が形成されている。
各軸受用装着溝59の軸心P方向における位置は、複合翼車41における軸受用摺動溝45の位置と一致する。
【0038】
コンプレッサハウジング部材48の軸受用装着溝59の近傍に一対の冷却水路60が形成されている。
冷却水路60の流路断面積は、コンプレッサハウジング部材48における軸受用装着溝59近傍の軸心方向の肉厚増大により、第1の実施形態の冷却水路30よりも拡大されている。
一方、タービンハウジング部材47には第1の実施形態と同じ冷却水路61が形成されている。
【0039】
この実施形態に係るターボ過給機40は、第1の実施形態の作用効果(3)〜(5)とほぼ同等の作用効果を奏する。
さらに言うと、この実施形態に係るターボ過給機40によれば、翼車軸受62が2個となることで第1の実施形態に係るターボ過給機10よりも部品点数は増加するものの、翼車軸受62が1個の場合と比べて複合翼車11はより安定して回転自在に保持される。
【0040】
さらに、2個の翼車軸受62を用いることから各翼車軸受62が夫々障害物となってタービン室65とコンプレッサ室66との間の流体の流通を一層妨げる。
また、2個の翼車軸受62を用いることから、翼車軸受62が1個の場合と比べて、複合翼車41の熱をハウジング46へ逃がし易く、複合翼車41におけるコンプレッサ側の過度の温度上昇が抑制される。
【0041】
翼車軸受62が1個の場合と比べて、2個の翼車軸受62を用いることから、複合翼車41におけるタービン羽根43とコンプレッサ羽根44の距離が長くなり、両者43、44の距離が長くなることによりタービン側の熱がコンプレッサへ伝達され難い。
2個の翼車軸受62を用いることから、ハウジング46における軸受用装着溝59付近の部位の肉厚増大により、冷却水路60の流路断面積を拡大することができ、冷却水路60の流路断面積の拡大はハウジング46及び複合翼車41の冷却を促進しやすい。
【0042】
なお、上記の第1、第2の実施形態に係るターボ過給機は本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 第1、第2の実施形態では、複合翼車の軸心方向と直交するハウジングの接合面が形成されるように、鋳造後の鋳造ハウジングを2分割しているが、例えば、軸心方向に沿って鋳造ハウジングを2分割してもよく、少なくとも、複合翼車及び翼車軸受をハウジング内へ収容することができるように2分割するのであれば、ターボ過給機の条件に応じて分割の仕方は適宜選択できる。
【0043】
○ 第1、第2の実施形態では、環状のすべり軸受を翼車軸受として用いたが、翼車軸受の種類や形状は特に問われない。少なくとも、複合翼車の中間部を回転自在に保持する軸受としての機能と、タービン室とコンプレッサ室との間の流体の流通を一層妨げるシール部材としての機能を備えていることが好ましい。例えば、別例として図4(a)に示すように複数の軸受部材71から形成される分割式の翼車軸受でもよい。あるいは、図4(b)に示すように、軸受機能とシール機能を有する軸受部材72とシール機能のみ有するシール部材73から構成される翼車軸受でもよく。又は、図4(c)に示すように、螺旋体74を翼車軸受として複合翼車における中間部の外周面に巻き付けるようにしてもよい。
【0044】
○ 第1、第2の実施形態では、鋳造によりタービン翼車及びコンプレッサ翼車を同軸に一体形成した複合翼車としたが、複数の部品から一体形成される複合翼車を妨げるものではなく、例えば、タービン翼車とコンプレッサ翼車を貼り合わせて一体形成した複合翼車を用いてもよい。この場合、タービン翼車とコンプレッサ翼車の材料を互いに相違させることが可能となる。また、複合翼車の製造方法も鋳造に限定されず、例えば、鍛造や、切削により複合翼車を得るようにしてもよい。
○ 第1、第2の実施形態では、複合翼車は金属材料としたが、複合翼車の材料は金属材料に限定されない。金属材料のほか、セラミックス、耐熱樹脂等の材料を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態に係るターボ過給機を破断して示す側面図である。
【図2】第1の実施形態に係るハウジング形成を説明する概略側面図である。
【図3】第2の実施形態に係るターボ過給機を破断して示す側面図である。
【図4】翼車軸受の別例を示す図であり。図4(a)は分割式の翼車軸受の正面図、図4(b)は軸受部材とシール部材の組み合わせかならなる翼車軸受の正面図、図4(c)は螺旋体からなる翼車軸受の斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
10、40 ターボ過給機
11、41 複合翼車
12c、42c 中間部
13、43 タービン羽根
14、44 コンプレッサ羽根
15、45 軸受用摺動溝
16、46 ハウジング
17、47 タービンハウジング部材
18、48 コンプレッサハウジング部材
29、59 軸受用装着溝
30、31、60、61 冷却水路
32、62 翼車軸受
35、65 タービン室
36、66 コンプレッサ室
71 軸受部材
72 軸受部材
73 シール部材
74 螺旋体
P 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼車及びコンプレッサ翼車を同軸に一体形成し、前記タービン翼車と前記コンプレッサ翼車との境界部の径がほぼ翼車径以上に設定された複合翼車と、該複合翼車を収容するハウジングと、前記ハウジングに備えられ、前記複合翼車を回転自在に支持する翼車軸受とを有し、
前記ハウジングの内部空間は前記複合翼車によりタービン室とコンプレッサ室に2分割され、
前記翼車軸受は、前記複合翼車の外周部よりも外側に位置する部分の前記ハウジングに配置され、前記複合翼車における前記タービン翼車及び前記コンプレッサ翼車との境界部を支持し、前記タービン室と前記コンプレッサ室間での流体の流通を遮断することを特徴とするターボ過給機。
【請求項2】
前記複合翼車は鋳造により一体形成されることを特徴とする請求項1記載のターボ過給機。
【請求項3】
前記ハウジングは、鋳造により一体形成された鋳造ハウジングであり、一体形成後の前記鋳造ハウジングの分割により得られる2つのハウジング部材を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のターボ過給機。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記タービン室の近傍に位置する冷却水路を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のターボ過給機。
【請求項5】
前記タービン翼車と前記コンプレッサ翼車との境界部の径が翼車径と同径に設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のターボ過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−196327(P2008−196327A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29872(P2007−29872)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】