説明

デバイスおよび表示装置

【課題】基板上に形成された絶縁膜の応力を低減し、歩留まりが向上したデバイスおよびこのデバイスを備えた表示装置を提供する。
【解決手段】本開示の表示装置は、基板と、基板上の一部の領域に形成された金属層と、金属層上に設けられると共に、金属層未形成領域の少なくとも一部に溝を有する第1絶縁膜とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)等のデバイスおよびこのデバイスを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、TFT等のデバイスはガラス基板上へ形成するため、絶縁膜の応力等は重要視されていなかった。また、コストを抑えるため、例えば特許文献1ではコンタクトホールの製造工程を削減したTFTの製造方法が開示されており、現在ではこの方法が主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−164874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、液晶表示装置、有機EL表示装置および電子泳動型表示装置等に代表される表示装置では、より薄型、且つ、軽量な表示装置が求められている。表示装置を薄型、且つ、軽量にするためには、支持体であるガラス基板の薄型化あるいはプラスチック基板等の可撓性を有する基板を用いることが考えられる。
【0005】
しかしながら、このような基板上に高い応力を有する絶縁膜を形成すると、その応力による膜剥がれや基板の破壊などが起こり、歩留まりが低下するという問題があった。
【0006】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、基板上に形成された絶縁膜の応力を低減し、歩留まりが向上したデバイスおよびこのデバイスを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のデバイスは、基板と、基板上の一部の領域に形成された金属層と、金属層上に設けられると共に、金属層未形成領域の少なくとも一部に溝を有する第1絶縁膜とを備えたものである。
【0008】
本開示の表示装置は、本開示のデバイスを備えたものである。
【0009】
本開示のデバイスおよび表示装置では、基板の一部の領域に形成された金属層を介して基板上に形成された第1絶縁膜のうち、金属層未形成領域の少なくとも一部に溝を設けることにより、第1絶縁膜の応力が軽減される。
【0010】
本開示のデバイスおよび表示装置では、金属層を介して基板上に設けられた第1絶縁膜のうち、金属未形成領域の第1絶縁膜の少なくとも一部に溝を設けるようにしたので、第1絶縁膜の応力が軽減される。よって、基板からの第1絶縁膜等の膜剥がれの発生が抑制され、歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の一実施の形態に係る表示装置の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した表示装置中のTFT層の一部を表す平面図および断面図である。
【図3】図1に示した表示装置の製造工程を表す流れ図である。
【図4】本開示の効果の一例を説明する断面図である。
【図5】本開示の変形例1に係る表示装置の構成を表す断面図である。
【図6】本開示の変形例2に係る表示装置の構成を表す断面図である。
【図7】(A)は適用例1の裏側から見た外観を表す斜視図、(B)は表側から見た外観を表す斜視図である。
【図8】適用例2の外観を表す斜視図である。
【図9】(A)は適用例3の表側から見た外観を表す斜視図、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図10】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図11】適用例5の外観を表す斜視図である。
【図12】(A)は適用例6の開いた状態の正面図、(B)はその側断面、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
金属層を介して基板上に設けられた第1絶縁膜に溝を有する表示装置
2.変形例1
第1絶縁膜と第3絶縁膜との間に第2の絶縁膜が設けられた表示装置
3.変形例2
第2絶縁膜上に直接表示層が設けられた表示装置
3.適用例
【0013】
1.実施の形態
(表示装置1の構成)
図1は本開示の一実施の形態に係る表示装置1の断面構成を表したものである。この表示装置1は、例えば、電気泳動現象を利用して画像(例えば文字情報等)を表示する電気泳動型ディスプレイ(いわゆる電子ペーパーディスプレイ)であり、基板11上にTFT層10および表示層20が積層された構成を有している。なお、図1は、表示装置1の構造を模式的に表したものであり、実際の寸法・形状とは異なる。
【0014】
基板11は、TFT層10および表示層20を支持するものであり、可撓性を有するものである。具体的には、例えば、ガラス,石英,シリコン,ガリウム砒素等の無機材料あるいは、ポリイミド,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリカーボネート(PC),ポリエーテルスルホン(PES),ポリエチルエーテルケトン(PEEK),芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等のプラスチック材料等からなる。また、基板11はある程度の厚みがあればよいが、具体的には、例えば1μm〜700μmであることが好ましい。
【0015】
バリア層12は、水分や有機ガスによるTFT層10および表示層20の劣化を防止するものであり、例えば、酸化シリコン(SiO2),窒化シリコン(Si34),酸化アルミニウム(Al23),窒化アルミニウム(AlN),酸化タンタル(Ta25)または酸化窒化アルミニウム(AlOx1-x(但し、X=0.01〜0.2))により形成される。バリア層12はCVD装置,ALD(Atomic Layer Deposition)装置,PLD(Pulsed Laser Deposition)装置,スパッタリング装置,EB蒸着装置またはイオンレーティング装置等を用いて成膜することができる。
【0016】
TFT層10は、複数のデバイスを含む層である。この複数のデバイスは、薄膜(電極等の金属層や、絶縁膜など)を含むものであり、具体的には、画素を選択するためのスイッチング素子としてのTFTの他、容量素子(保持容量素子など)、配線(走査線,信号線など)および電極(画素電極など)等が挙げられる。すなわち、TFT層10に含まれるデバイスは、TFT、容量素子、配線および電極のうちの少なくとも1つである。なお、上記したTFTは、チャネル層10A(図2)として無機半導体層を用いた無機TFTあるいは、有機半導体層を用いた有機TFTのどちらにより構成されていてもよい。
【0017】
図1に示した本実施の形態におけるTFT層10では、金属層13上に第1絶縁膜14が設けられている。更に、第1絶縁膜14上の、電極13Bに対向する領域にも金属層15(電極13B対応する電極)が設けられ、第1絶縁膜14および金属層15の全面には第3絶縁膜16が設けられている。
【0018】
金属層13は、例えば、ここではゲート電極13Aおよび容量素子の一対の電極のうちの下部側の容量電極13Bであり、金属層15は容量素子の一対の容量電極のうちの上部側の容量電極である。金属層13,15は一般的な導電材料、例えばモリブデン(Mo),クロム(Cr),タンタル(Ta),チタン(Ti),アルミニウム(Al)およびアルミニウム合金等のうちの1種よりなる単層膜、または2種以上よりなる積層膜により構成されている。なお、アルミニウム合金としては、例えばアルミニウム−ネオジム合金が挙げられる。なお、金属層15には、ここでは図示していないが、ソース・ドレイン電極が含まれている。
【0019】
第1絶縁膜14は、金属層13(ゲート電極13Aおよび容量電極13B)を保護すると共に、ゲート電極13A,容量電極13B,金属層(容量電極)15およびソース・ドレイン電極の短絡を防ぐものであり、例えば、SiO2,Si34,SiNOおよびAl23等のうちの1種よりなる単層膜である。第1絶縁膜14の膜厚は特に問わないが、各電極間の絶縁性を保つために、例えば100〜500nmであることが好ましい。なお、第1絶縁膜14の材料は上記無機材料に限らず、有機材料、例えばPVA(ポリビニルアルコール),PVP(ポリビニルフェノール),ノボラック樹脂,アクリル樹脂,フッ素系樹脂などを用いることができる。
【0020】
本実施の形態では、第1絶縁膜14には金属層13が形成されていない領域(金属層未形成領域A)に溝14Aが設けられている。具体的には、溝14Aは金属層13の形成領域および第1絶縁膜14の外周部を除く領域の少なくとも一部に形成される。これにより、第1絶縁膜14の応力が緩和される。
【0021】
図2(A)は、本実施の形態における表示装置1のうちTFT層10の一部の平面構成を表したものであり、図2(B)は、図2(A)のI−I'線に沿った断面構成を表したものである。ここでは、溝14Aは、ゲート電極13Aと外周部との間(13A1),ゲート電極13Aと容量電極13Bとの間(13A2)および容量電極13Bと外周部との間(13A3)に設けられている。溝14Aの深さ(第1絶縁膜14の積層方向)は特に問わないが、第1絶縁膜14の厚さと同等であることが好ましく、第1絶縁膜14を貫通していてもよい。特に、溝14Aが貫通していることにより第1絶縁膜14の応力を効果的に低減することができる。また、溝14Aの幅(第1絶縁膜14の平行方向)は、例えば4μm以上であることが好ましい。なお、各金属層13の側面は短絡を防ぐために少なくとも4μm程度の厚みで第1絶縁膜14に覆われているようにすることが望ましい。また、溝14A内は後述する第3絶縁膜16によって充填されている。
【0022】
第3絶縁膜16は、TFTのチャネル層10Aおよび容量層等を保護あるいは平坦化する保護膜または上部に表示層20を設けるための保護膜である。第3絶縁膜16は、例えば感光性を有するアルキル樹脂材料を用いることが好ましい。また、無感光性の有機材料、例えばPVA(ポリビニルアルコール),PVP(ポリビニルフェノール),ノボラック樹脂,アクリル樹脂,フッ素系樹脂などを用いることができる。溝14Aを除く第1絶縁膜14上からの第3絶縁膜16の膜厚は、例えば1μm〜4μmであるが、この限りではない。なお、第1絶縁膜14および第2絶縁膜18の膜質は特に問わず、同等の性質、例えば同程度の膜密度を有していてもよいし、あるいは互いに異なる膜密度を有していてもよい。
【0023】
なお、上記チャネル層10A上には第2絶縁膜18が設けられている。この第2絶縁膜18は、TFTのチャネル層10Aを保護する保護膜であり、TFTのスイッチング特性の信頼性に関与する。第2絶縁膜18は、例えばSiO2,Si34,SiNO、およびAl23等のうちの少なくとも1種よりなる単層膜または2種以上からなる積層膜である。第2絶縁膜の膜厚は、例えば50〜350nmであるが、この限りではない。また、第2絶縁膜18の材料は上記無機材料に限らず、有機材料、例えばPVA(ポリビニルアルコール),PVP(ポリビニルフェノール),ノボラック樹脂,アクリル樹脂,フッ素系樹脂などを用いることができる。なお、第2絶縁膜18は、ここではTFT層10内の応力を緩和するためにチャネル層10Aの上部にのみ形成しているが、後述するように、チャネル層10A上に限らず全面に設けてもよい。
【0024】
表示層20は、例えば画素電極21と共通電極23との間に電気泳動粒子を有する電気泳動層22が挟持された構造を有する。即ち、表示装置1は、電気泳動現象を利用して画像(例えば文字情報等)を表示する電気泳動型ディスプレイである。画素電極21はTFT層12に画素ごとに設けられ、共通電極23は透明基板30の一面に亘り設けられている。画素電極21と、TFT層10の金属層15とは貫通電極17によって接続されている。なお、画素電極21と貫通電極17は画素電極21の材料を用いて同時に形成しても良い。
【0025】
電気泳動粒子は、例えば二酸化チタン等の白色顔料により構成されたものと、カーボンブラックまたはアニリンブラック等の黒色顔料により構成されたものとの2種からなる。
【0026】
透明基板30は、例えば、基板11と同様の材料を用いて構成されている。なお、この透明基板30上に、更に表示層20への水分の浸入を防止する防湿膜および外光の表示面への映り込みを防止するための光学機能膜を設けるようにしてもよい。
【0027】
以下に、本実施の形態の表示装置1の製造方法について説明する。
【0028】
(表示装置1の製造方法)
表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。即ち、まず、基板11上(具体的には、基板11の表示領域上)に、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法またはスパッタ法を用い、SiO2またはSiN等からなるバリア層12を形成したのち、後述するフォトリソグラフィ技術を用いて、各種のデバイスを含むTFT層10を形成する。次いで、TFT層10上に、例えば同様にフォトリソグラフィ技術を用いて、表示層20を形成する。そののち、この表示層20上に透明基板30を貼り合わせる。以上により、図1に示した表示装置1が完成する。なお、透明基板30に共通電極23を形成したのち電気泳動層22を形成し、電気泳動層22の表面に粘着層(図示せず)疎設けた表示層20をTFT層10に貼り付けてもよい。
【0029】
(TFT層10の製造方法)
ここで、図2はTFT層10の製造方法(デバイスの形成工程)における主要な工程例を流れ図で表したものである。
【0030】
まず、バリア層12上に、例えばスパッタ法を用いて金属膜を成膜する。次いで、この金属膜上にフォトレジスト膜を形成(塗布)したのち、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、ウェットエッチングまたはドライエッチングすることによりゲート電極13Aおよび容量電極13B等の金属層13を形成する(ステップS101)。
【0031】
続いて、バリア層12および金属層13上を覆うように、第1絶縁膜14を、例えばCVD法またはスパッタ法を用いて成膜する(ステップS102)。具体的には、まず、原料ガスとしてシラン(SiH4),アンモニア(NH3),窒素を含む混合ガスを用いたプラズマCVD法により、SiNよりなる第1絶縁膜14を成膜する。次いで、半導体層(図示せず)を成膜する(ステップS103)。具体的には、半導体材料としてアモルファスシリコンをスパッタ法により成膜したのち、フォトリソグラフィ法を用いて所望の形状にパターニングし、エッチング等を用いて所望のパターンを形成する。
【0032】
次に、金属層13の導通部分を形成するため、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし第1絶縁膜14をパターニングする(ステップS104)。具体的には、エッチング処理を行うことによって第1絶縁膜14をパターニングし、金属層13の導通部分を形成する。このエッチング処理は、例えばドライエッチング等でフッ素系のガスを用いて化学的および物理的に行う。または、フッ酸等の薬液を用いたウエットエッチング等を用いてもよい。この際、本実施の形態では、図2(A),(B)に示したように非導通部分である金属層未形成領域Aの第1絶縁膜14も同時に除去することが好ましいが、必ずしも同時に除去せずに個別にエッチングしてもよい。
【0033】
続いて、第1絶縁膜14上に金属膜を、例えばスパッタ法を用いて成膜したのち、フォトリソグラフィ法を用いて所望の形状にパターニングしソース・ドレイン電極および容量素子の電極等を含む金属層15を形成する(ステップS105)。
【0034】
次に、チャネル層10Aを形成したのち、チャネル層10A,第1絶縁膜14および金属層15上の全面に、第2絶縁膜18をCVD法またはスパッタ法を用いて成膜する。具体的には、例えばCVD法またはスパッタ法を用いて成膜する(ステップS106)。具体的には、まず、上述した第1絶縁膜の成膜方法と同様に、原料ガスとしてシラン(SiH4),アンモニア(NH3),窒素を含む混合ガスを用いたプラズマCVD法により、SiN等よりなる第2絶縁膜18を成膜する。但し、応力緩和の観点により図2(A)に示したようにチャネル層10Aの上部にのみフォトリソグラフィ法を用いてパターニングする。さらに第1絶縁膜14および金属層15上に第3絶縁膜16を例えばアルキルモノマーを含有する感光性有機材料を用いてフォトリソグラフィ法を用いて貫通電極17を設けるためのスルーホールをパターニングする。
【0035】
続いて、第1絶縁膜14および金属層15上に感光性有機材料からなる第3絶縁膜16を、例えばCVD法またはスパッタ法を用いて成膜する(ステップS106)。なお、ここでは感光性有機材料を用いたが無感光性樹脂を塗布および焼成し、フォトリソグラフィ法を用いて貫通電極17を設けるための貫通孔を、酸素ガスを用いてドライエッチング法あるいはウェットエッチング法にてパターニングしてもよい。これにより、第1絶縁膜14に設けられた溝14A内にも第3絶縁膜16を充填する構造となる。
【0036】
最後に画素電極21および貫通電極17を、金属層13および金属層15の形成方法と同様の手法で形成する。これにより、ゲート電極13A,容量電極13Bおよび各種配線等のデバイスを含むTFT層10が形成される。なお、金属層21および貫通電極17は一般的な導電材料、例えばモリブデン(Mo),クロム(Cr),タンタル(Ta),チタン(Ti),In合金であるITOやIGO,IGZO等の透明電極、アルミニウム(Al)およびアルミニウム合金等のうちの1種よりなる単層膜、または2種以上よりなる積層膜により構成されている。アルミニウム合金としては、例えばアルミニウム−ネオジム合金が挙げられる。
【0037】
次に、本実施の形態の表示装置1の作用および効果について説明する。
【0038】
前述のように、ガラス基板上にTFT等のデバイスを備えた表示装置では、コストを抑えるためにコンタクトホールの形成工程を削減したTFTの製造方法が用いられており、ゲート電極を備えたガラス基板上にはゲート絶縁膜のベタ膜が形成されている。このゲート絶縁膜は、TFT(特にゲート電極)の耐圧性およびTFTの信頼性を保つために膜密度の高い緻密な膜となっている。このゲート絶縁膜は、半導体層を保護するための保護膜や平坦化膜と比較して非常に大きな応力を有している。このため、可撓性を有する基板上にTFT等を形成する際には、ゲート絶縁膜と保護層等との応力の差およびこれら層が積層されていることによって膜割れあるいは膜剥がれ等が起こり、歩留まりが低下するという問題があった。
【0039】
この問題を解決する方法として、例えばゲート絶縁膜の膜厚を薄くすることでゲート絶縁膜の応力を低減する方法がある。しかしながら、ゲート絶縁膜を薄くすると、耐圧性が低下したり、ゲート電極とソース・ドレイン電極等の各電極間の絶縁性が損なわれること等があり、信頼低が低下する虞がある。また、ゲート絶縁膜の膜密度を低くすることでも応力を低減することが可能であるが、上記ゲート絶縁膜の薄膜化と同様の理由で適当な手法とは言えなかった。
【0040】
これに対して本実施の形態では、基板11上の一部の領域に形成されたゲート電極13Aおよび容量電極13B等からなる金属層13を介して基板11上に形成された第1絶縁膜14のうち、金属層未形成領域Aの少なくとも一部に溝14Aを設けるようにした。これにより、第1絶縁膜14の膜厚および膜密度を損なうことなく、第1絶縁膜14の応力を低減することが可能となる。
【0041】
以上のように本実施の形態では、金属層13を介して基板11上に設けられた第1絶縁膜14のうち、金属層未形成領域Aの少なくとも一部に溝14Aを設けるようにしたので、第1絶縁膜14の応力を低減することが可能となる。即ち、基板11からの第1絶縁膜14等の膜剥がれの発生が抑制され、歩留まりが向上する。
【0042】
また、溝14Aを貫通させた場合には、第1絶縁膜14と第3絶縁膜16との積層部分が少なくなるため、更に基板11からの第1絶縁膜14の膜剥がれの発生を抑制することが可能となる。
【0043】
更に、基板11が可撓性基板である場合には、製造工程において異物が混入し易い。このため、同一金属層による各電極(例えば、本実施の形態ではゲート電極12Aと電極12B)をフォトリソグラフィ法によるパターニングによって形成する場合、フォトレジスト膜を露光する前に、例えばフォトレジスト膜上あるいはフォトマスク(露光マスク)上に異物(パーティクル)が存在すると、エッチングの際に所望のパターンを形成することができなくなる。このため、エッチング不良が発生し、配線上の断線、あるいは図4(A)に示したような異物による短絡(ショート)が発生する。その結果、場合によっては、点状欠陥または線状欠陥となり、製造歩留まりが低下してしまうことになる。
【0044】
これに対して、本実施の形態のように第1絶縁膜14に溝14Aを設け、更にこの溝14Aを貫通孔とすることにより、異物混入の問題を解決することができる。即ち、第1絶縁膜と異物が同じ材料である場合には、溝14Aの形成時における第1絶縁膜14のパターニングにより、図4(B)に示したように第1絶縁膜14の除去と同時に異物を同時に除去することができる。これにより、ゲート電極13Aと容量電極13Bとの間、あるいはここでは示していない各配線間および配線−電極間における短絡不良等の発生を抑えることができる。よって、工程数を増やすことなく歩留まりを向上させることが可能となる。また、第1絶縁膜14と異物が異なる材料であっても、エッチング溶液を適宜選択することによって第1絶縁膜14の除去工程において異物を除去することが可能となる。あるいは、露光時間を長くすることでも異物を除去することが可能となる。
【0045】
(変形例1)
図5は変形例1に係る表示装置1Aの断面構成を表したものである。この表示装置1Aは、第1絶縁膜14と第3絶縁膜16との間全面に、第2絶縁膜18を備えたものである。その点を除き、表示装置1Aは上記実施の形態の表示装置1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0046】
本変形例における第2絶縁膜18は、基板11の全面に設けられている。これにより、製造工程が簡略になると共に、バリア層12の効果が強化される。第2絶縁膜は、上記実施の形態と同様に、例えばSiO2,Si34,SiNO、およびAl23等のうちの少なくとも1種よりなる単層膜または2種以上からなる積層膜であ英、その膜厚は、例えば50〜350nmであるが、この限りではない。なお、第2絶縁膜18の材料は上記無機材料に限らず、有機材料、例えばPVA(ポリビニルアルコール),PVP(ポリビニルフェノール),ノボラック樹脂,アクリル樹脂,フッ素系樹脂などを用いることができる。
【0047】
第3絶縁膜16は、ポリイミド樹脂やアクリル樹脂からなり、更に感光性を有することが望ましい。これにより、画素電極21とゲート配線あるいはソース配線との絶縁距離が広くなるため、寄生容量が減少し、画素電極21の端部をゲート配線やソース配線の上方に重ねて配置することが可能となる。即ち、画素電極21の有効面積を拡大することができる。第3絶縁膜16の膜厚は特に問わないが、1μm〜3μm程度であることが好ましい。これにより、TFT,ゲート配線およびソース配線に起因する段差を平坦化することが可能となる。なお、第3絶縁膜16の材料は上記有機材料に限らず、無機材料、例えばSiO2,Si34、SiNOおよびAl23等を用いてもよく、第3絶縁膜16は、これら材料を1種用いた単層膜、あるいは2種以上用いた積層膜としてもよい。
【0048】
なお、上記第1の実施の形態で説明した溝14Aは、図5に示したように第2絶縁膜18および第3絶縁膜16によって充填されているがこれに限らず、第2絶縁膜18のみで充填されるようにしてもよい。
【0049】
本変形例における表示装置1Aでは、溝14Aを有する第1絶縁膜14と、第3絶縁膜16との間に第2絶縁膜18を設けるようにしたので、上記実施の形態の効果に加えて、画素電極21とゲート配線あるいは信号線等との干渉が抑制されるという効果を奏する。これにより、画素電極21の面積を大きくすることが可能となる。また、画素電極21に無透過の金属を用いることにより、半導体層へ照射される光を遮り、光電効果等によるTFTの特性劣化を抑制することができる。
【0050】
(変形例2)
図6は変形例2に係る表示装置1Aの断面構成を表したものである。この表示装置1Bは、第1絶縁膜14上に第2絶縁膜18を設け、この第2絶縁膜18上に直接表示層20を設けた点が上記変形例1の表示装置1Aと異なる。その点を除き、表示装置1Bは上記変形例1の表示装置1Aと同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0051】
ここで第2絶縁膜18は上記変形例1における第3絶縁膜と同じ材料によって構成されているが、その膜厚は、100nm〜500nmであることが望ましい。なお、本変形例における第2絶縁膜の膜厚は、上記実施の形態および変形例1における第2絶縁膜の膜厚よりも厚くすることが好ましい。これにより、画素電極との寄生容量を低減することができる。
【0052】
本技術の表示装置は、各種用途の電子機器に適用可能であり、その電子機器の種類は特に限定されない。この表示装置は、例えば、以下の電子機器に搭載可能である。ただし、以下で説明する電子機器の構成はあくまで一例であるため、その構成は適宜変更可能である。
【0053】
図7は、電子ブックの外観構成を表している。この電子ブックは、例えば、表示部110および非表示部120と、操作部130とを備えている。なお、操作部130は、(A)に示したように非表示部120(筐体)の前面に設けられていてもよいし、(B)に示したように上面に設けられていてもよい。なお、表示装置は、図7に示した電子ブックと同様の構成を有するPDAなどに搭載されてもよい。
【0054】
図8は、テレビジョン装置の外観構成を表している。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル210およびフィルターガラス220を含む映像表示画面部200を備えている。
【0055】
図9は、デジタルスチルカメラの外観構成を表しており、(A)および(B)は、それぞれ前面および後面を示している。このデジタルスチルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部310と、表示部320と、メニュースイッチ330と、シャッターボタン340とを備えている。
【0056】
図10は、ノート型パーソナルコンピュータの外観構成を表している。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体410と、文字等の入力操作用のキーボード420と、画像を表示する表示部430とを備えている。
【0057】
図11は、ビデオカメラの外観構成を表している。このビデオカメラは、例えば、本体部510と、その本体部510の前面に設けられた被写体撮影用のレンズ520と、撮影時のスタート/ストップスイッチ530と、表示部540とを備えている。
【0058】
図12は、携帯電話機の外観構成を表している。(A)および(B)は、それぞれ携帯電話機を開いた状態の正面および側面を示している。(C)〜(G)は、それぞれ携帯電話機を閉じた状態の正面、左側面、右側面、上面および下面を示している。この携帯電話機は、例えば、上側筐体610と下側筐体620とが連結部(ヒンジ部)630により連結されたものであり、ディスプレイ640と、サブディスプレイ650と、ピクチャーライト660と、カメラ670とを備えている。
【0059】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、表示層13として画素電極と共通電極との間に電気泳動粒子を有する電気泳動型ディスプレイを挙げて説明したが、液晶,有機EL(Electro-Luminescence)あるいは無機EL等により構成されていてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態等において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件等は限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、第1絶縁膜14および第2絶縁膜18の膜質は同等であってもよく、あるいは第1絶縁膜14と第2絶縁膜18の膜質をいれかえてもよい。
【0061】
更に、上記実施の形態等では、表示装置1の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0062】
なお、本開示は以下のような構成もとることができる。
(1)基板と、前記基板上の一部の領域に形成された金属層と、前記基板および前記金属層上に設けられると共に、金属層未形成領域の少なくとも一部に対応する位置に溝を有する第1絶縁膜とを備えたデバイス。
(2)前記溝は前記第1絶縁膜上に形成された第3絶縁膜によって充填されている、前記(1)に記載のデバイス。
(3)前記金属層の側面は前記第1絶縁膜によって覆われている、前記(1)または(2)に記載のデバイス。
(4)前記溝は前記第1絶縁膜の積層方向に貫通している、前記(1)乃至(3)のうちのいずれか1つに記載のデバイス。
(5)前記第1絶縁膜と前記第3絶縁膜との間に第2絶縁膜を有し、前記溝は前記第2絶縁膜または前記第2絶縁膜および前記第3絶縁膜によって充填されている、前記(2)乃至(4)のいずれか1つに記載のデバイス。
(6)前記金属層は、薄膜トランジスタまたは容量素子の電極または配線である、前記(1)乃至(5)のうちのいずれか1つに記載のデバイス。
(7)前記基板は可撓性を有する、前記(1)乃至(6)のうちのいずれか1つに記載のデバイス。
(8)基板上にデバイスと、表示層とを備え、前記子デバイスは、前記基板上の一部の領域に形成された金属層と、前記基板および前記金属層上に設けられると共に、金属層未形成領域の少なくとも一部に対応する位置に溝を有する第1絶縁膜とを有する表示装置。
(9)前記表示層は一対の電極間に電気泳動層を有する、前記(8)に記載の表示装置。
(10)前記表示層は一対の電極間に液晶層を有する、前記(8)に記載の表示装置。
(11)前記表示層は一対の電極間に有機EL層を有する、前記(8)に記載の表示装置。
(12)前記表示層は一対の電極間に無機EL層を有する、前記(8)に記載の表示装置。
【符号の説明】
【0063】
1,1A…表示装置、10…TFT層、11…基板、12…バリア層、13,15…金属層、14…第1絶縁膜、16…第3絶縁膜、17…貫通電極、18…第2絶縁膜、20…表示層、21…画素電極、22…電気泳動層、23…共通電極、30…透明基板、A…金属層未形成領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の一部の領域に形成された金属層と、
前記基板および前記金属層上に設けられると共に、金属層未形成領域の少なくとも一部に対応する位置に溝を有する第1絶縁膜と
を備えたデバイス。
【請求項2】
前記溝は前記第1絶縁膜上に形成された第3絶縁膜によって充填されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記金属層の側面は前記第1絶縁膜によって覆われている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記溝は前記第1絶縁膜の積層方向に貫通している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1絶縁膜と前記第3絶縁膜との間に第2絶縁膜を有し、前記溝は前記第2絶縁膜または前記第2絶縁膜および前記第3絶縁膜によって充填されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記金属層は、薄膜トランジスタまたは容量素子の電極または配線である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記基板は可撓性を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
基板上にデバイスと、表示層とを備え、
前記子デバイスは、
前記基板上の一部の領域に形成された金属層と、
前記基板および前記金属層上に設けられると共に、金属層未形成領域の少なくとも一部に対応する位置に溝を有する第1絶縁膜と
を有する表示装置。
【請求項9】
前記表示層は一対の電極間に電気泳動層を有する、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示層は一対の電極間に液晶層を有する、請求項8に記載の表示装置。
【請求項11】
前記表示層は一対の電極間に有機EL層を有する、請求項8に記載の表示装置。
【請求項12】
前記表示層は一対の電極間に無機EL層を有する、請求項8に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−243935(P2012−243935A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112315(P2011−112315)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】