説明

トランジスタ基板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】可撓性を有するとともに、TFTの性能安定性が高いトランジスタ基板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一方の面にガスバリア層20が設けられたプラスチック基材12と、前記プラスチック基材上に設けられ、ゲート電極42、ゲート絶縁層30、酸化物半導体又は有機半導体を含む活性層44、ソース電極46、及びドレイン電極48を有する電界効果型薄膜トランジスタ40と、を含み、前記ガスバリア層が、少なくとも1つの有機層24と少なくとも1つの無機層22,26とが積層した構造を有し、且つ、前記ゲート絶縁層が、少なくとも1つの有機層34と少なくとも1つの無機層32,36とが積層した構造を有することを特徴とするトランジスタ基板10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタ基板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子などを用いた薄型の表示装置が多く利用されている。例えば、有機EL素子を用いた表示装置では、ガラス等の支持基板上に、陽極電極、少なくとも発光層を含む有機EL層、陰極を順次積層して有機EL素子を形成し、大気中の酸素や水分から有機EL素子を保護するための封止層を設ける。両電極の引出配線(端子)を介して外部の配線と接続し、電界を印加することにより、電極間に挟まれた領域の発光層において正孔と電子が再結合して発光する。
【0003】
そして、カラー表示をする場合には、一般的に、基板上の直交する方向、例えば縦横に、赤(R)、緑(G)、青(B)といった発光色が異なる画素を多数配列し、画素を個々に駆動させる。
画素を駆動させる方式としては、パッシブマトリクス方式とアクティブマトリクス方式がある。パッシブマトリクス方式では、基板上に、陽極、有機EL層、陰極を順次パターニングし、陽極と陰極との交点が画素となって駆動する。
【0004】
一方、アクティブマトリクス方式では、画素ごとに電界効果型薄膜トランジスタ(適宜、「薄膜トランジスタ」又は「TFT」という。)を形成し、薄膜トランジスタにより画素(有機エレクトロルミネッセンス素子)が駆動される。図4は、アクティブマトリクス方式の回路構成の一例を示している。一般的に、アクティブマトリクス方式では、画素70ごとにスイッチ素子とドライブ素子を含む薄膜トランジスタと、データ記憶のためのキャパシタを有する素子駆動回路が形成されており、走査線とデータ線で選択された画素に電流が流れて発光する。
【0005】
図5及び図6は、薄膜トランジスタの基本的な構成を概略的に示している。基板68上にゲート74、絶縁層84、アモルファスシリコン又はポリシリコンの半導体層76が順次積層され、さらにシリコン半導体層76上にはソース電極80とドレイン電極82が所定の間隔Lを開けて形成されている。ドレイン電極82は画素電極78とも接続しており、ゲート74に所定の電圧を印加することでシリコン半導体層76を介してソース−ドレイン間に電流が流れ、画素電極78に電流を供給することができる。
【0006】
基板68に関しては、ガラス基板のほか、プラスチック製の基板を用いた表示装置が提案されている。厚みの薄いプラスチック基板であれば可撓性を有し、曲げたり丸めたりすることができる。しかし、プラスチック基板は、ガスバリア性が低く、大気中の酸素や水分が透過して素子の劣化を招きやすい。
例えば、プラスチック基板の表面に、酸化ケイ素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物又は無機窒化物からなるガスバリア層を形成するとともに、薄膜トランジスタの半導体層をIn−Ga−Zn−O系酸化物により形成すること、さらに、薄膜トランジスタを酸化ケイ素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物又は無機窒化物からなる保護層で覆うことが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2007−115735号公報
【特許文献2】特開2007−115808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
無機物からなるガスバリア層を形成したプラスチック基板上に酸化物半導体層を有するTFTを形成し、さらにTFTを無機物の保護層で被覆すれば、酸素や水分の透過が抑制されるものの、曲げによって剥離や亀裂が生じ易く、TFT又は素子を構成する電極又は配線が断線し易い。本発明者らの研究によれば、例えば、曲げを繰り返したり、長時間曲げた状態にすると、キャリア移動度が6.8cm/Vsecから1cm/Vsecに低下したり、on/off比が10から10に低下するなど、TFTの性能が大きく変化し易いことがわかった。
【0009】
本発明は、可撓性を有するとともに、TFTの性能安定性が高いトランジスタ基板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明では以下のトランジスタ基板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置が提供される。
<1> 少なくとも一方の面にガスバリア層が設けられたプラスチック基材と、前記プラスチック基材上に設けられ、ゲート電極、ゲート絶縁層、酸化物半導体又は有機半導体を含む活性層、ソース電極、及びドレイン電極を有する電界効果型薄膜トランジスタと、を含み、前記ガスバリア層が、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とが積層した構造を有し、且つ、前記ゲート絶縁層が、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とが積層した構造を有することを特徴とするトランジスタ基板。
<2> 前記電界効果型薄膜トランジスタ上に、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とが積層した構造を有する平坦化層をさらに含むことを特徴とする<1>に記載のトランジスタ基板。
<3> 前記電界効果型薄膜トランジスタを封止する、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とが積層した構造を有する封止層をさらに含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載のトランジスタ基板。
<4> 前記ガスバリア層、前記ゲート絶縁層、前記平坦化層、及び前記封止層のうちの少なくとも1つの層において、該層を構成する有機層と無機層のそれぞれ厚みが、無機層厚<有機層厚<無機層厚×20、の関係を満たすことを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載のトランジスタ基板。
<5> 前記ガスバリア層、前記ゲート絶縁層、前記平坦化層、及び前記封止層のうちの少なくとも1つの層において、該層を構成する有機層が、下記一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートと、低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートを含む重合性組成物が硬化した層であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載のトランジスタ基板。
【化1】


(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、R1とR2は、互いに結合して環を形成しても良い。R3およびR4は、それぞれ置換基を表す。mおよびnは、それぞれ0〜5の整数であり、m≧2のとき、R3は同じでも異なっていてもよく、n≧2のとき、R4は同じでも異なっていてもよい。ただし、R3およびRのうち少なくとも2つは、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。)
<6> 前記一般式(1)は、下記一般式(2)で表されることを特徴とする<5>に記載のトランジスタ基板。
【化2】


(一般式(2)中、R’およびR’は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、LおよびLは、それぞれ、連結基であり、AcおよびAcは、それぞれ、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
<7> 前記低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートは、アクリル当量が、110〜180であることを特徴とする<5>又は<6>に記載のトランジスタ基板。
<8> 前記低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基を2〜6個含むことを特徴とする<5>〜<7>のいずれかに記載のトランジスタ基板。
<9> 前記重合性組成物が、さらに酸性モノマーを含むことを特徴とする<5>〜<8>のいずれかに記載のトランジスタ基板。
<10> 前記重合性組成物が、下記一般式(P)で表される化合物を含むことを特徴とする<5>〜<9>のいずれかに記載のトランジスタ基板。
【化3】


(一般式(P)中、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Ac、AcおよびAcはそれぞれアクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、X、XおよびXはそれぞれ2価の連結基を表す。)
<11> 前記重合性組成物は、前記一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートを70〜90重量%、及び、前記低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートを10〜30重量%含むことを特徴とする<5>〜<10>のいずれかに記載のトランジスタ基板。
<12> 前記ガスバリア層、前記ゲート絶縁層、前記平坦化層、及び前記封止層のうちの少なくとも1つの層において、該層を構成する無機層が、アルミニウムおよび/またはケイ素の、酸化物もしくは窒化物であることを特徴とする<1>〜<11>のいずれかに記載のトランジスタ基板。
<13> 前記ガスバリア層、前記ゲート絶縁層、前記平坦化層、及び前記封止層のうちの少なくとも1つの層において、無機層と有機層が交互に積層している構造を有することを特徴とする<1>〜<12>のいずれかに記載のトランジスタ基板。
<14> 前記ガスバリア層、前記ゲート絶縁層、前記平坦化層、及び前記封止層のうちの少なくとも1つの層が、無機層、有機層、及び無機層の順に積層している構造を有することを特徴とする<1>〜<13>のいずれかに記載のトランジスタ基板。
<15> <1>〜<14>のいずれかに記載のトランジスタ基板を有し、画素毎に、前記電界効果型薄膜トランジスタと、該電界効果型薄膜トランジスタによって駆動される有機エレクトロルミネッセンス素子が形成されていることを特徴する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可撓性を有するとともに、TFTの性能安定性が高いトランジスタ基板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係るトランジスタ基板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置について説明する。
本発明に係るトランジスタ基板は、少なくとも一方の面にガスバリア層が設けられたプラスチック基材と、前記プラスチック基材上に設けられ、ゲート電極、ゲート絶縁層、酸化物半導体又は有機半導体を含む活性層、ソース電極、及びドレイン電極を有する電界効果型薄膜トランジスタと、を含み、前記ガスバリア層が、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とが積層した構造を有し、且つ、前記ゲート絶縁層が、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とが積層した構造を有する。
【0013】
図1は、本発明に係るトランジスタ基板の構成の一例(第1実施形態)を概略的に示している。このトランジスタ基板10は、プラスチック基材12と、該プラスチック基材12の片面に設けられたガスバリア層20と、ガスバリア層20を介してプラスチック基材12上に設けられた薄膜トランジスタ40と、を有している。
【0014】
<プラスチック基材>
プラスチック基材12は、可撓性を有するとともに、支持体としての強度を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
【0015】
プラスチック基材12の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、トランジスタ基板10の用途、目的等に応じて選択すればよい。一般的には、製造容易性、取り扱い性等の観点から、板状のプラスチック基材であることが好ましい。プラスチック基材12の構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。また、プラスチック基材12は、単一部材で構成されていてもよいし、2つ以上の部材で構成されていてもよい。
プラスチック基材12の厚みも、トランジスタ基板10の用途、目的等に応じて選択すればよく、通常は、1〜800μm、好ましくは10〜200μmである。
また、熱可塑性のプラスチック基材を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0016】
<ガスバリア層>
本発明におけるガスバリア層20は、少なくとも1層の有機層と少なくとも1層の無機層とから構成される。本実施形態では、無機層22、有機層24、及び無機層26が積層してガスバリア層20が形成されている。
なお、ガスバリア層20を構成する層数に関しては特に制限はないが、生産性、製造コスト等の観点から、典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。
また、ガスバリア層20が複数の無機層を含む場合、各無機層は異なる材料で形成してもよいが、剥離防止や成膜容易性の観点から、同じ材質又は組成が近い材質で形成することが好ましい。複数の有機層を有する場合も、同様の理由から、各有機層は同じ材質又は組成が近い材質で形成することが好ましい。
【0017】
また、有機層24からのイオン溶出を防止するとともに、TFT40の形成プロセス中の剥離をより効果的に抑制する観点から、有機層と無機層とが交互に積層していることが好ましく、特に、図1に示されるように、2つの無機層22,26の間に有機層24が挟まれるように積層された構造を有すれば、有機層24からのイオン溶出が防止されるとともに、TFT40の形成プロセス中の剥離も効果的に抑制することができる。
【0018】
また、本発明におけるガスバリア層20は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、ガスバリア層を構成する組成が層厚方向に有機領域と無機領域が連続的に変化するいわゆる傾斜材料層を含んでいてもよい。前記傾斜材料の例としては、キムらによる論文「Journal of Vacuum Science and Technology A Vol. 23 p971−977(2005 American Vacuum Society) ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー A 第23巻 971頁〜977ページ(2005年刊、アメリカ真空学会)」に記載の材料や、米国公開特許2004−46497号明細書に開示されているように有機領域と無機領域が界面を持たない連続的な層等が挙げられる。簡略化のため、本明細書では、有機層と有機領域は「有機層」として、無機層と無機領域は無機層として記述する。
【0019】
−有機層−
本発明におけるガスバリア層20を構成する有機層24とは有機ポリマーを主成分とする有機層であることが好ましい。ここで主成分とは、有機層24を構成する成分のうち含有量(重量%)が最も多い成分が有機ポリマーであることをいい、通常は、有機層24を構成する成分の80重量%以上が有機ポリマーであることをいう。
ガスバリア層20の有機層24を構成する有機ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステルおよびアクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂、あるいはポリシロキサン等の有機珪素ポリマーなどが挙げられる。
有機層24は単独の材料からなっていても混合物からなっていてもよいし、サブレイヤーの積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように無機層との界面が明確で無く、組成が層厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0020】
ガスバリア層20の有機層24は、好ましくは、(A)下記一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートと、(B)低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化して形成することができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含む意味で使用される。また、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0021】
(A)一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレート
【化4】


(一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、RとRは、互いに結合して環を形成しても良い。RおよびRは、それぞれ置換基を表す。mおよびnは、それぞれ0〜5の整数であり、m≧2のとき、Rは同じでも異なっていてもよく、n≧2のとき、Rは同じでも異なっていてもよい。ただし、RおよびRのうち少なくとも2つは、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。)
【0022】
一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、RとRは、互いに結合して環を形成しても良い。RおよびRは、水素原子、アルキル基、アリール基のいずれも好ましいが、アルキル基としてはメチル基がより好ましく、アリール基としては、フェニル基がより好ましい。RおよびRは、水素原子またはアルキル基であることがさらに好ましい。RおよびRがともにアルキル基であって互いに結合して環を形成する場合、1,1−シクロヘキシリデン基を形成することが特に好ましい。RおよびRがともにアリール基であって互いに結合して環を形成する場合、付け根の炭素も含めてフルオレン環を形成することが特に好ましい。
また、RおよびRは置換基を有しても良い。置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、スルフィニル基(メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含み、脂肪族ヘテロ環基であってもヘテロアリール基であってもよく、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基等)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されていてもよい。
【0023】
およびRは置換基を表す。RおよびRの例としては、前述のRおよびRに対する置換基と同様のものが例示できる。
mおよびnは、それぞれ0〜5の整数であり、m≧2のとき、Rは同じでも異なっていてもよく、n≧2のとき、Rは同じでも異なっていてもよい。
一般式(1)で表される(メタ)アクリレートは、RおよびRのうち少なくとも2つは、(メタ)アクリロイルオキシ基を含み、好ましくはRおよびRが(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。(メタ)アクリロイルオキシ基を含む基の好ましい例としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、2−アクリロイルオキシエトキシ基、2−メタクリロイルオキシエトキシ基、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロポキシ基、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ基、2−オクタノイルオキシ−3−アクリロイルオキシプロポキシ基、2−ヘプタノイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ基、2、3−ビス(アクリロイルオキシ)プロポキシ基、2、3−ビス(メタクリロイルオキシ)プロポキシ基等が挙げられる。
【0024】
一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートは、下記一般式(2)で表される芳香族(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【化5】


(一般式(2)中、R’およびR’は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、LおよびLは、それぞれ、連結基であり、AcおよびAcは、それぞれ、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
【0025】
ここで、LおよびLは、それぞれ2価の連結基を表すが、そのような2価の連結基の例として、アルキレン基(例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、2,2−プロピレン基(2,2−プロピリデン基、1,1−ジメチルメチレン基とも呼ばれる)、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基等)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフチレン基)、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、スルホニル基、およびこれらの2価の基が複数個直列に結合した2価残基(例えば、ポリエチレンオキシエチレン基、ポリプロピレンオキシプロピレン基、2,2−プロピレンフェニレン基等)を挙げることができる。LおよびLは置換基を有してもよく、LおよびLを置換することのできる置換基の例としては、前述のRおよびRに対する置換基と同様のものが例示できる。これらの置換基は更に置換されていてもよい。この中でも、アルキレン基、アリーレン基およびこれらが複数直列に結合した2価の基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基およびこれらが複数直列に結合した2価の基がより好ましい。
【0026】
一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートの分子量は、300〜1000であることが好ましく、400〜800であることがより好ましい。一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートは、重合性組成物中に2種類以上含まれていてもよい。また、一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートのアクリル当量は、180〜360であることが好ましく、180より大きく360以下であることがより好ましく、210〜330であることがさらに好ましい。
【0027】
以下に、一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
(B)低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレート
一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートは、単独で用いるよりも低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートを混合した方が高いバリア能を得ることができる。ここで、低アクリル当量とは、アクリル当量が200以下のものをいう。本発明で用いられる低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートは、公知のものを広く採用できる。本発明で用いる低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートは、好ましくはアクリル当量が110〜180の(メタ)アクリレートであり、より好ましくはアクリル当量が120〜180の(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくはアクリル当量が130〜170の(メタ)アクリレートである。尚、アクリル当量とは、(メタ)アクリレートモノマーの分子量を官能基数で割った値である。
また、本発明で用いる低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートは、2〜6個の(メタ)アクリロイルオキシ基を含むことが好ましい。
【0033】
以下に、本発明で用いる低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
(C)酸性モノマー
有機層24の形成に用いる重合性組成物には、酸性モノマーが含まれていても良い。酸性モノマーを含めることにより、層間密着性が向上する。酸性モノマーとは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸等の酸性基を含有するモノマーをいう。本発明で用いる酸性モノマーは、カルボン酸基またはリン酸基を含有するモノマーが好ましく、カルボン酸基またはリン酸基を含有する(メタ)アクリレートがより好ましく、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0040】
−リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート−
リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(P)で表される化合物を含んでいることがより好ましい。リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、無機層22,26との密着が良くなる。
【0041】
【化15】


(一般式(P)中、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Ac、AcおよびAcはそれぞれアクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、X、XおよびXはそれぞれ2価の連結基を表す。
一般式(P)で表される化合物は、以下の一般式(P−1)で表される単官能モノマー、以下の一般式(P−2)で表される2官能モノマー、および以下の一般式(P−3)で表される3官能モノマーが好ましい。
【0042】
【化16】

【0043】
【化17】

【0044】
【化18】

【0045】
Ac、Ac、Ac、X、XおよびXの定義は、一般式(P)における定義と同じである。一般式(P−1)および(P−2)において、Rは重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Rは重合性基を有しない置換基または水素原子を表す。
一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、X、XおよびXは、一般式(2)におけるLと同様の基である。X、XおよびXとして好ましいのは、アルキレン基、またはアルキレンオキシカルボニルアルキレン基である。
一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、重合性基を有しない置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた基などを挙げることができる。好ましいのはアルキル基である。
アルキル基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であっても構わないが、好ましいのは直鎖アルキル基である。アルキル基は、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
アリール基の炭素数は、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。アリール基の具体例として、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
【0046】
一般式(P)で表されるモノマーを1種類だけ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、組み合わせて用いる場合は、一般式(P−1)で表される単官能モノマー、一般式(P−2)で表される2官能モノマー、および一般式(P−3)で表される3官能モノマーのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のリン酸エステル基を有する重合性モノマー類として、日本化薬(株)製のKAYAMERシリーズ、ユニケミカル(株)製のPhosmerシリーズ等、市販されている化合物をそのまま用いてもよく、新たに合成された化合物を用いてもよい。
【0047】
以下に、本発明で好ましく用いられる酸性モノマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
【化19】

【0049】
(D)その他の重合性成分、ポリマー
有機層24の形成に用いる重合性組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、(メタ)アクリレート以外のモノマー(例えば、スチレン誘導体、無水マレイン酸誘導体、エポキシ化合物、オキセタン誘導体など)や、各種のポリマー(例えば、ポリエステル、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等)を含んでも良い。
【0050】
(構成比)
有機層24の形成に用いる重合性組成物における一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートの混合比率は、樹脂成分中、30〜99重量%であることが好ましく、50〜95重量%であることがより好ましく、60〜90重量%であることがさらに好ましく、70重量%〜90重量%であることが特に好ましい。
一方、上記重合性組成物における低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートの混合比率は1〜70重量%であることが好ましく、5〜50重量%であることがより好ましく、10〜40重量%であることがさらに好ましく、10〜30重量%であることが特に好ましい。
また、上記重合性組成物における、酸性モノマーの混合比率は、0〜30重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることがさらに好ましい。
また、上記重合性組成物において、その他の重合性成分、ポリマーの混合比率は、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
(種類)
有機層24の形成に用いる重合性組成物に含まれるモノマーの組み合わせとしては、例えば、以下のものが挙げられるが、本発明におけるモノマーの組み合わせはこれらに限定されるものではない。
(a)一般式(2)で表される芳香族(メタ)アクリレートであって、R’およびR’は、それぞれ、アルキル基であり、LおよびLはそれぞれ置換アルキレン基である化合物と、3官能(メタ)アクリレートの組み合わせ。
(b)一般式(2)で表される芳香族(メタ)アクリレートであって、R’およびR’は、それぞれ、アルキル基であり、LおよびLはそれぞれアルキレン基、もしくはアルキレンオキシアルキレン基である化合物と、6官能(メタ)アクリレートの組み合わせ。
(c)一般式(2)で表される芳香族(メタ)アクリレートであって、R’およびR’は、それぞれ、アルキル基であり、LおよびLはそれぞれアルキレン基、もしくはアルキレンオキシアルキレン基である化合物と、6官能(メタ)アクリレートと、酸性モノマーの組み合わせ。
【0052】
(重合開始剤)
有機層24の形成に用いる重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、サートマー(Sartomer)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT)、同じくオリゴマー型のエザキュアKIPシリーズ等が挙げられる。
【0053】
(有機層の形成方法)
有機層24の形成方法としては、特に定めるものではないが、例えば、溶液塗布法や真空成膜法により形成することができる。溶液塗布法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。本発明においてはポリマーを溶液塗布しても良いし、特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報等に開示されているような無機物を含有するハイブリッドコーティング法を用いてもよい。
【0054】
本発明では、通常、重合性化合物を含む組成物を光照射して硬化させる。照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.1J/cm以上が好ましく、0.5J/cm以上がより好ましい。重合性化合物として、(メタ)アクリレート系化合物を採用する場合、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0055】
モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0056】
有機層24の厚みは1層あたり300nm〜900nmであり、400nm〜800nmが好ましい。有機層24をこのような範囲とすることにより、バリア性が向上し、さらに、密着性が高くなる。
有機層24は、その上に形成する無機層26、さらに、ガスバリア層20の上に形成するTFT40を形成し易いように平滑であることが好ましい。有機層24の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満が好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。有機層24の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層24の形成はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0057】
有機層24の硬度は高いほうが好ましい。有機層24の硬度が高いと、その上の無機層26が平滑に形成され、その結果としてバリア能が向上する。有機層24の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層24の微小硬度は100N/mm以上であることが好ましく、120N/mm以上であることがより好ましく、150N/mm以上であることが特に好ましい。
【0058】
−無機層−
ガスバリア層20を構成する無機層22,26は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層22,26の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。
【0059】
無機層22,26に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、CeおよびTaから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物または酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、ZnおよびTiから選ばれる金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましく、特にSiまたはAlの金属酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
【0060】
本発明により形成される無機層22,26の平滑性は、1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.5nm以下がより好ましい。平滑性の高い無機層22,26を形成するため、無機層22,26の形成はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0061】
無機層22,26の厚みは特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmである。無機層は複数のサブレイヤーから成る積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機層24との界面が明確で無く、組成が層厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0062】
(有機層と無機層の積層)
ガスバリア層20を構成する有機層と無機層の積層は、所望の層構成に応じて、例えば、有機層と無機層を順次繰り返し成膜することにより行う。例えば、無機層を、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などの真空成膜法で形成する場合、有機層も前記フラッシュ蒸着法のような真空成膜法で形成することが好ましい。バリア層20を成膜する間、途中で大気圧に戻すことなく、常に1000Pa以下の真空中で有機層と無機層を積層することが特に好ましい。圧力は100Pa以下であることがより好ましく、50Pa以下であることがより好ましく、20Pa以下であることがさらに好ましい。
【0063】
前記したように、本発明に係るガスバリア層20は、特に、有機層と無機層を交互に積層した層構成、特に、無機層22、有機層24、無機層26の層構成を有することが好ましい。また、例えば2層の有機層と2層の無機層を交互に積層する場合は、例えば、プラスチック基材12側から有機層/無機層/有機層/無機層の順に積層していても良いし、無機層/有機層/無機層/有機層の順に積層しても良い。
【0064】
なお、有機層と無機層のそれぞれの厚みは、無機層厚<有機層厚<無機層厚×20、との関係を満たすことが特に好ましい。有機層24の厚みが無機層22,26の厚みよりも大きければ、プラスチック基材12が本来有する可撓性の低下が抑制されるともに、曲げを繰り返してもガスバリア層20の剥離や亀裂が生じ難いという利点がある。但し、無機層の厚みに対して有機層の厚みが極度に大き過ぎると、バリア性が十分確保できないなどのおそれもあるため、有機層の厚さは無機層の厚みの20倍よりも小さいことが好ましい。
【0065】
<薄膜トランジスタ>
薄膜トランジスタ40は、プラスチック基材12上にガスバリア層20を介して設けられており、ゲート電極42、ゲート絶縁層30、酸化物半導体又は有機半導体を含有する活性層44、ソース電極46、及びドレイン電極48から構成されている。なお、プラスチック基材12のガスバリア層20が設けられた面とは反対側の面にTFT40が設けられていてもよい。また、プラスチック基材12の両面にガスバリア層20が設けられ、いずれか一方の面にTFT40が設けられてもよい。
【0066】
(ゲート電極)
ゲート電極42は、電圧の印加により、ソース電極46とドレイン電極48との間に流れる電流を制御する。ゲート電極42を形成する材料としては、例えば、Al、Mo、Cr、Ta、Ti、Au、Ag等の金属、Al−Nd、APC等の合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電層、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられる。
例えば、ガスバリア層20(無機層26)上に、選択した材料でスパッタリングにより成膜した後、フォトリソグラフィによってパターニングされたゲート電極42を形成する。ゲート電極42の厚みは、10nm以上1000nm以下とすることが好ましい。
【0067】
(ゲート絶縁層)
ゲート絶縁層30は、ゲート電極42と、活性層44、ソース電極46、及びドレイン電極48を絶縁状態に隔てる層であり、本発明では、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層から構成される。本実施形態に係るゲート絶縁層30は、無機層32、有機層34、及び無機層36が積層して構成されている。
ゲート絶縁層30の有機層34と無機層32,36を構成する材料としては、それぞれ前記したガスバリア層20を構成する有機層24と無機層22,26と同様の材料が挙げられ、各層32,34,36の厚みや形成方法もガスバリア層20の場合と同様である。
【0068】
(活性層)
ゲート絶縁層30上には活性層(チャネル層)44が形成されている。本発明における活性層44は、酸化物半導体又は有機半導体を含んでいる。
活性層44は、好ましくはIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体、より好ましくは非晶質酸化物半導体により形成する。In−Ga−Zn−O系酸化物半導体としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。これらの酸化物半導体は、電子キャリア濃度が高いほど電子移動度が高くなる、つまり、電気伝導度が大きいほど電子移動度が高くなる(参考文献:Nature Vol.432 (25 November 2004) p488-492)。
【0069】
In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物半導体からなる活性層44であれば、スパッタリングによって低温で成膜することができる。形成すべき活性層44に応じて、フォトリソグラフィによってIn−Ga−Zn−O系非晶質酸化物半導体の層をパターニングしてもよいし、形成すべき活性層44に対応した孔を有するマスクを介して所定の位置及び形状に活性層44を形成してもよい。
【0070】
活性層44は、有機半導体により形成してもよい。低温成膜可能であり、導電性及び光透過性を有する種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物などの有機半導体を用いることができる。
具体的には、低分子有機半導体としては、ペンタセン、テトラセン、アントラセンに代表されるアセン系化合物、中心金属がCu、Zn、Co、Ni、Pb、Pt、Fe、Mg等の2価もしくは無金属フタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニン、インジウムクロロフタロシアニン、ガリウムクロロフタロシアニン等のハロゲン原子が配位した3価金属のフタロシアニン、その他バアナジルフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の酸素が配位したフタロシアニン等に代表されるフタロシアニン系顔料、インジゴ、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレンもしくはPTCDA、PTCDI、PTCBI.Me−PTCなどのペリレン系顔料、C60、C70、C76、C78、C84等フラーレン類、カーボンナノチューブ類、メロシアニン色素などの色素類などを用いることができる。
【0071】
高分子有機半導体としては、ポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)などのポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)などのポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリビニルカルバゾール、ポリフエニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィドなどのポリマーを用いることができる。
上記の材料は単体で用いてもよいし、樹脂などのバインダーに分散混合させて用いて用いることができる。
また、有機半導体の導電率を調整するために、ドナー性、もしくはアクセプター性の無機材料、無機化合物、有機化合物などのドーパントをドープしてもよい。
【0072】
有機半導体により活性層44を形成する方法としては、乾式成膜法あるいは湿式成膜法を用いることができる。乾式成膜法の具体例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法等の物理気相成長法あるいはプラズマ重合等のCVD法が挙げられる。湿式成膜法としては、キャスト法、スピンコート法、ディッピング法、LB法等の塗布法と用いることができる。また、インクジェット印刷やスクリーン印刷などの印刷法、熱転写やレーザー転写などの転写法を用いてもよい。パターニングは、フォトリソグラフィなどによる化学的エッチングにより行ってもよいし、紫外線やレーザーなどによる物理的エッチングにより行ってもよいし、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法、印刷法、転写法により行ってもよい。
【0073】
低分子有機半導体を用いる場合は、乾式成膜法が好ましく用いられ、特に真空蒸着法が好ましく用いられる。真空蒸着法は抵抗加熱蒸着法、電子線加熱蒸着法等の化合物の加熱の方法、るつぼ、ボート等の蒸着源の形状、真空度、蒸着温度、基板温度、蒸着速度等が基本的なパラメーターである。均一な蒸着を可能とするために基板12を回転させて蒸着することが好ましい。真空度は高い方が好ましく10−4Torr以下、好ましくは10−6Torr以下、特に好ましくは10−8Torr以下で真空蒸着が行われる。蒸着時のすべての工程は真空中で行われることが好ましく、基本的には化合物が直接、外気の酸素、水分と接触しないようにする。真空蒸着の上述した条件は有機層の結晶性、アモルファス性、密度、緻密度等に影響するので厳密に制御する必要がある。水晶振動子、干渉計等の層厚モニターを用いて蒸着速度をPIもしくはPID制御することが好ましい。2種類以上の化合物を同時に蒸着する場合には共蒸着法、フラッシュ蒸着法等を好ましく用いることができる。
【0074】
高分子半導体を用いる場合は、湿式成膜法により成膜することが好ましい。蒸着等の乾式成膜法を用いた場合、高分子を用いることは分解のおそれがあるため難しく、代わりとしてそのオリゴマーを好ましく用いることができる。
【0075】
活性層44の厚みは、使用する材料等にもよるが、好ましくは、10nm以上1μm以下、さらに好ましくは20nm以上500nm以下、特に好ましくは30nm以上200nm以下である。
【0076】
(ソース電極及びドレイン電極)
ソース電極46とドレイン電極48は活性層44上に互いに離間して形成されている。
ソース電極46及びドレイン電極48は、導電性材料であれば特に限定されず、例えば白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、これらの金属の合金、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、ドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体(シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン等)、これらの材料の複合体等が挙げられる。特にソース領域及びドレイン領域に用いる電極の材料は、上記の材料の中でも活性層44との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0077】
また、特に低温成膜が可能な材料、例えば酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた有機半導体を用いてソース・ドレイン電極46,48を形成することが好ましい。これらの材料を用いれば、薄膜トランジスタ全体を低温プロセスで形成することができるとともに、光透過性及び可撓性がより高い薄膜トランジスタを形成することができる。なお、有機EL表示装置では、プラスチック基材12側から光を取り出すボトムエミッションタイプと、反対側から取り出すトップエミッションタイプがあるが、ボトムエミッションタイプの有機EL表示装置を製造する場合は、薄膜トランジスタ40は光透過率が高いほど好ましく、具体的には可視光透過率が、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
ソース電極46及びドレイン電極48の形成も、ゲート電極42と同様の方法を採用することができる。
ソース電極46及びドレイン電極48の厚みは、好ましくは、10nm以上1μm以下、さらに好ましくは30nm以上500nm以下、特に好ましくは50nm以上200nm以下である。
【0078】
このような構成の第1実施形態に係るトランジスタ基板10は、TFT40の活性層44が酸化物半導体又は有機半導体から形成されているため、プラスチック基材12が有する可撓性を活かしやすい反面、酸素や水分によってTFT40(特に活性層44)の性能が変化しやすい。しかし、プラスチック基材12上のガスバリア層20と、TFT40のゲート絶縁層30が、それぞれ有機層と無機層から構成されているため、可撓性を維持しつつ、外部からの酸素や水分の浸入が効果的に抑制され、特にTFT40の活性層44の性能が変化することが効果的に抑制される。
【0079】
図2は、第2実施形態に係るトランジスタ基板11の構成を概略的に示している。このトランジスタ基板11は、TFT40上にさらに平坦化層50が形成されている。平坦化層50以外の構成は第1実施形態に係るトランジスタ基板10と同様である。
平坦化層50は、TFT40上の凹凸を小さくするために形成する層である。特にTFT40を形成する際、各電極42,46,48のパターニングを行うため表面には凹凸が生じる。例えば、このような凹凸面にさらに有機EL素子の形成を行うと、断線が生じやすくなり、特にプラスチック基材12を用いて曲げたり、丸めたりして使用する表示装置では、TFTの形成プロセスにおける剥離や、使用中の断線を招き易い。そこで、TFT40の形成後、平坦化層50を形成しておけば、前記したような剥離や断線を効果的に防ぐことができる。
【0080】
本発明に係る平坦化層50も、ガスバリア層20及びゲート絶縁層30と同様、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層から構成され、本実施形態に係る平坦化層50は、無機層52、有機層54、及び無機層56が積層されて平坦化層50が構成されている。
平坦化層50の有機層54と無機層52,56を構成する材料としては、それぞれ前記したガスバリア層20を構成する有機層24と無機層22,26と同様の材料が挙げられ、各層52,54,56の厚みや形成方法もガスバリア層20と同様である。
なお、このような有機層54と無機層52,56からなる平坦化層50をTFT40の上に設ければ、プラスチック基材12の可撓性を維持しつつ、基材12とは反対側から浸入する酸素や水分からTFT40を保護する作用も発揮し、TFT40の性能安定性を一層高める効果も期待することができる。
【0081】
<有機エレクトロルミネッセンス表示装置>
本発明に係るトランジスタ基板10,11は、TFTを備えた各種デバイスの製造に好適に利用することができるが、特に、可撓性を有する薄型の表示装置や撮像装置の製造に好適に用いることができる。
例えば、図3に示すように、第2実施形態に係るトランジスタ基板11を用い、下部電極13、有機EL層15、及び上部電極17を順次積層して有機EL素子を形成する。有機EL素子の構成は特に限定されず、公知の材料及び方法を用い、目的等に応じた層構成を有する有機EL素子を形成すればよい。本発明に係る有機EL素子は、例えば以下のような層構成を採用することができるが、以下の層構成に限定されず、適宜決めればよい。なお、製造する有機EL表示装置は、トップエミッション型でも、ボトムエミッション型でもよい。
【0082】
・陽極/発光層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0083】
(発光層)
有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光性ドーパントの混合層とした構成でも良い。発光性ドーパントは蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、2種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0084】
(封止層)
上部電極17を形成した後、封止層60を形成する。ここで、封止層60も、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とを積層して構成することが好ましい。上部電極17上に、例えば、ガスバリア層20と同様に、無機層、有機層、及び無機層を順次積層して封止層60を形成すれば、可撓性を維持しつつ、酸素や水分から有機EL素子を効果的に保護し、性能安定性を一層高めることができる。このような封止層60を構成する有機層と無機層の各材料、厚み、形成方法等もガスバリア層20と同様である。
【0085】
このように本発明に係るトランジスタ基板10,11を用いて有機EL表示装置を製造する場合、画素毎に、前記電界効果型薄膜トランジスタ40と、該電界効果型薄膜トランジスタ40によって駆動される有機エレクトロルミネッセンス素子13,15,17を形成する。これにより、可撓性を有するとともに、長期間曲げた状態にしたり、曲げを繰り返してもTFT40の性能が変化しにくく、安定して駆動するアクティブマトリクス型の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することができる。
【実施例】
【0086】
<実施例1>
−ガスバリア層の形成−
ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン社製、テオネックスQ65FA、厚さ100μm)上に、真空スパッタによってAl層(40nm厚)を形成した後、Al層上にNKエステル ABE−300(新中村化学(株)製)とDPCA−20(日本化薬(株)製)を85:15重量%の配合比の重合性組成物(合計14重量部)と重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社、IRGACURE907;1重量部)及び2−ブタノン(185重量部)とからなる組成物をワイヤーバーにて塗布し、窒素100ppm雰囲気下で紫外線照射量0.5J/cmで照射して硬化させて厚み370nmのメタクリレート層(370nm厚)を形成した。
次いで、メタクリレート層上に、真空スパッタによってAl層(40nm厚)を形成した。これにより、ポリエチレンナフタレートフィルム上に、Al(40nm)/メタクリレート(370nm)/Al(40nm)の構成のガスバリア層を形成した。
【0087】
−TFTの形成−
次に、ポリエチレンナフタレートフィルムのガスバリア層側にTFTを形成した。
上記ガスバリア層上に、順に下記層を設けた。
ゲート電極:ITOをスパッタ法により厚み30nmに蒸着した。
ゲート絶縁膜:ガスバリア層と同様に厚み370nmに形成した。
活性層:InGaZnOの組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして、RFマグネトロンスパッタ真空蒸着法により、Ar流量12sccm、O流量1.4sccm、RFパワー200W、圧力0.4Paの条件で行いIGZO膜を厚み50nmに形成した。
ソース電極及びドレイン電極:上記活性層の上にソース電極及びドレイン電極としてITOをスパッタ法により40nmの厚みに設けてTFTフィルムを作製した。
【0088】
<比較例1−3>
実施例1と同種のプラスチック基材を用い、表1に示す構成のガスバリア層及びゲート絶縁層を形成した以外は、実施例1と同様にしてトランジスタ基板を製造した。比較例1−3におけるSiOのガスバリア層及びゲート絶縁膜はいずれもスパッタ法で形成した。
【0089】
【表1】

【0090】
−性能評価−
得られた各TFT素子について、飽和領域ドレイン電圧Vd=40V(ゲート電圧−20V≦Vg≦40V)でのTFT伝達特性の測定を行い、TFTの電界効果移動度およびON/OFF比を評価した。TFT伝達特性の測定は、半導体パラメータ・アナライザー4156C(アジレントテクノロジー社製)を用いて行った。
【0091】
−電界効果移動度の算出方法−
飽和領域における電界効果移動度μは、TFT伝達特性から次式で求められる。
μ=(2L/W*Cox)*(∂Id1/2/∂Vg)
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、Coxはゲート絶縁膜の静電容量、Idはドレイン電流、Vgはゲート電圧を示す。
【0092】
−ON/OFF比の算出方法−
ON/OFF比はTFT伝達特性からドレイン電流Idにおける最大値Idmaxと最小値Idminとの比Idmax/Idminから求めた。
【0093】
−曲率/通常使用併用繰り返し試験−
実施例及び比較例で製造した各トランジスタ基板を、曲げた状態(R=30mm)と、平らにした状態(R=0mm)で25℃55%にて、それぞれ5分間保つ動作を1回とし、この動作を1回、10回、及び100回行った。試験後、TFTの状態を移動度とON/OFF比によって評価した。
【0094】
−曲率使用耐久性試験−
実施例及び比較例で製造した各トランジスタ基板を、曲げた状態(R=30mm)で、(1)25℃55%、(2)25℃90%の状態にて、1時間、1日、7日、及び28日間保った後、TFTの状態を移動度によって評価した。
【0095】
上記の各試験結果を表2及び3に示す。
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
以上、本発明について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。
例えば、本発明に係るトランジスタ基板のTFTは、図1及び図2に示すような構成のボトムゲート型に限定されず、ゲート絶縁層30上にソース電極46とドレイン電極48を形成した後、活性層44を形成してもよい。
また、例えば、図7に示すようなトップゲート型のTFTを形成してもよい。この場合も、活性層44を酸化物半導体又は有機半導体で形成し、ガスバリア層20とゲート絶縁層30を、それぞれ有機層24(34)と無機層22,26(32,36)を積層した構造とすれば、可撓性が良好に保たれるとともに、活性層44は両面からの酸素や水分の浸入が効果的に抑制され、性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係るトランジスタ基板の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係るトランジスタ基板の構成の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明に係る有機EL表示装置の構成の一例を示す概略図である。
【図4】アクティブマトリクス型の回路構成の一例を示す図である。
【図5】TFTの構成の一例を概略的に示す平面図である。
【図6】TFTの構成の一例を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明に係るトランジスタ基板の構成の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0099】
10,11 トランジスタ基板
12 プラスチック基材
13 下部電極
15 有機EL層
17 上部電極
20 ガスバリア層
22,26 無機層
24 有機層
30 ゲート絶縁層
32,36 無機層
34 有機層
40 電界効果型薄膜トランジスタ
42 ゲート電極
44 活性層
46 ソース電極
48 ドレイン電極
50 平坦化層
52,56 無機層
54 有機層
60 封止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面にガスバリア層が設けられたプラスチック基材と、
前記プラスチック基材上に設けられ、ゲート電極、ゲート絶縁層、酸化物半導体又は有機半導体を含む活性層、ソース電極、及びドレイン電極を有する電界効果型薄膜トランジスタと、を含み、
前記ガスバリア層が、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とが積層した構造を有し、且つ、前記ゲート絶縁層が、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とが積層した構造を有することを特徴とするトランジスタ基板。
【請求項2】
前記電界効果型薄膜トランジスタ上に、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とが積層した構造を有する平坦化層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のトランジスタ基板。
【請求項3】
前記電界効果型薄膜トランジスタを封止する、少なくとも1つの有機層と少なくとも1つの無機層とが積層した構造を有する封止層をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトランジスタ基板。
【請求項4】
前記ガスバリア層、前記ゲート絶縁層、前記平坦化層、及び前記封止層のうちの少なくとも1つの層において、該層を構成する有機層と無機層のそれぞれ厚みが、無機層厚<有機層厚<無機層厚×20、の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のトランジスタ基板。
【請求項5】
前記ガスバリア層、前記ゲート絶縁層、前記平坦化層、及び前記封止層のうちの少なくとも1つの層において、該層を構成する有機層が、下記一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートと、低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートを含む重合性組成物が硬化した層であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のトランジスタ基板。
【化1】


(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、R1とR2は、互いに結合して環を形成しても良い。R3およびR4は、それぞれ置換基を表す。mおよびnは、それぞれ0〜5の整数であり、m≧2のとき、R3は同じで
も異なっていてもよく、n≧2のとき、R4は同じでも異なっていてもよい。ただし、R3およびRのうち少なくとも2つは、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。)
【請求項6】
前記一般式(1)は、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項5に記載のトランジスタ基板。
【化2】


(一般式(2)中、R’およびR’は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、LおよびLは、それぞれ、連結基であり、AcおよびAcは、それぞれ、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
【請求項7】
前記低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートは、アクリル当量が、110〜180であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のトランジスタ基板。
【請求項8】
前記低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基を2〜6個含むことを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載のトランジスタ基板。
【請求項9】
前記重合性組成物が、さらに酸性モノマーを含むことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか一項に記載のトランジスタ基板。
【請求項10】
前記重合性組成物が、下記一般式(P)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれか一項に記載のトランジスタ基板。
【化3】


(一般式(P)中、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子
を表し、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、A
、AcおよびAcはそれぞれアクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、X、XおよびXはそれぞれ2価の連結基を表す。)
【請求項11】
前記重合性組成物は、前記一般式(1)で表される芳香族(メタ)アクリレートを70〜90重量%、及び、前記低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートを10〜30重量%含むことを特徴とする請求項5〜請求項10のいずれか一項に記載のトランジスタ基板。
【請求項12】
前記ガスバリア層、前記ゲート絶縁層、前記平坦化層、及び前記封止層のうちの少なくとも1つの層において、該層を構成する無機層が、アルミニウムおよび/またはケイ素の、酸化物もしくは窒化物であることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載のトランジスタ基板。
【請求項13】
前記ガスバリア層、前記ゲート絶縁層、前記平坦化層、及び前記封止層のうちの少なくとも1つの層において、無機層と有機層が交互に積層している構造を有することを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載のトランジスタ基板。
【請求項14】
前記ガスバリア層、前記ゲート絶縁層、前記平坦化層、及び前記封止層のうちの少なくとも1つの層が、無機層、有機層、及び無機層の順に積層している構造を有することを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載のトランジスタ基板。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載のトランジスタ基板を有し、画素毎に、前記電界効果型薄膜トランジスタと、該電界効果型薄膜トランジスタによって駆動される有機エレクトロルミネッセンス素子が形成されていることを特徴する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−73733(P2010−73733A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236608(P2008−236608)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】