説明

トルイジンスルホンアミド、及び阻害剤としてのそれらの使用

本発明は、細胞増殖及び細胞分裂を阻害し、低酸素条件下において低酸素誘導因子(HIF)に媒介される転写及びシグナル伝達の活性化を阻害する、式(I)の化合物(式中、Rは単環式の5員又は6員のヘテロアリールであり、Rはフェニル、又は単環式の5員若しくは6員のヘテロアリールであり、他の置換基は特許請求の範囲において規定される通りである)を提供する。一態様では、本発明の化合物は、炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、及び過剰な血管新生を特徴とする疾患からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防のための薬物の調製に有用である。本発明の化合物、及び言及される疾患又は障害の治療又は予防に有用な第2の治療薬又は放射線を含む、医薬組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞増殖及び細胞分裂を阻害し、低酸素条件下において低酸素誘導因子(HIF)に媒介される転写及びシグナル伝達の活性化を阻害する、新規な化合物を提供する。一態様では、本発明の化合物は、炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、及び過剰な血管新生を特徴とする疾患からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防のための薬物の調製に有用である。本発明の化合物、及び言及される疾患又は障害の治療又は予防に有用な第2の治療薬又は放射線を含む、医薬組成物も提供される。
【背景技術】
【0002】
不十分な酸素供給に対する細胞の正常な応答は、低酸素シグナル伝達経路により媒介される。この応答は、多数の生理学的(physiolocial)機能、例えば腫瘍の発生及び転移、アポトーシスに対する抵抗性、新たな血管の形成の誘導、並びに代謝等にとって重要である。低酸素シグナル伝達に関する包括的な概説に関しては、例えば非特許文献1を参照されたい。
【0003】
低酸素の結果として、例えば腫瘍において、この高速で成長する組織の種類における酸素及び栄養素の可用性の低減を付加的な補因子と協働して補うための、転写因子(低酸素誘導因子、HIF)、中でもHIF−1α及びHIF−1βのヘテロ二量体の複合体のレベルの増大が、観察される。嫌気条件下では、HIF−1αの恒常性はその分解の低減により不均衡なものとなっているため、低酸素応答要素(HRE)を介するシグナル伝達の増強が可能となり、多数の生存因子及び成長因子の発現の増大をもたらす。
【0004】
低酸素の病態は、非腫瘍組織にも見出される。例えば、網膜症は、目の網膜に対する非炎症性の損傷を表す一般的な用語である。この病態は、低酸素状態をもたらす不十分な血液供給により引き起こされることが最も一般的である。特に、糖尿病の人は、網膜症のリスクを有する。糖尿病患者の網膜における酸素の欠乏は、脆い新生血管を、網膜に沿ってまた目の内側を充たす透明なゲル様の硝子体液中において成長させる。適時な治療を行わぬ場合、これらの新たな血管は、出血し、視界を曇らせ、網膜を破壊する可能性がある。線維血管性の増殖も、部分的な網膜剥離を引き起こすことがある。新たな血管が、目の前房中まで成長し、血管新生緑内障を引き起こすこともある。
【0005】
近年、HIF−1活性の阻害が、マクロファージ及び好中球の活性化及び罹患組織中への浸潤におけるその役割に基づき、炎症を予防するように作用する可能性もあることの証拠が、集まってきている(例えば非特許文献2を参照されたい)。
【0006】
上で概説した理由のために、HIFの機能を阻害する化合物は、炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、及び過剰な血管新生を特徴とする疾患からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防のための価値のある薬物である。
【0007】
腫瘍の発生、進行及び転移におけるHIF−1の重要性のために、がん療法のためのHIF−1阻害剤を同定するためにかなりの量の労力が費やされている。多数の小分子及びRNA構築物、例えばsiRNAが、HIF−1経路の阻害を示すことが報告されている(例えば非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)。しかしながら、これらの化合物はHIF−1阻害以外の活性を有することが多く、それらのほとんどは、有用な医薬品に必要とされる所望の薬物動態特性又は毒性プロファイルを欠く。さらに、該化合物の幾つかは、ロックド核酸アンチセンスオリゴヌクレオチドであるHIF−1阻害剤EZN−2968のように、経口投与することができないという欠点を有する。
【0008】
上で引用した科学文献により、種々の増殖性及び炎症性の疾患又は障害、低酸素関連病変、並びに過剰な血管新生を特徴とする疾患のより効率的な治療をもたらす新たな治療薬に対する医療上の必要性が高いことが強調される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Qingdong Ke and Max Costa, Molecular Pharmacology (2006), vol. 70, no. 5
【非特許文献2】Giaccia et al., Drug Discovery, vol. 2, October 2003
【非特許文献3】Kung AL et al, Cancer Cell (2004), vol. 6, p. 33 ff
【非特許文献4】Rapisarda A, et al. Cancer Res. (2002), vol. 62, p. 4316 ff.
【非特許文献5】Tan C.et al, Cancer Res. (2005), vol. 65, p. 605 ff
【非特許文献6】Mabjeesh NJ, et al, Cancer Cell, (2003), vol. 3, p. 363ff
【非特許文献7】Kong X, et al, Mol Cell Biol (2006), vol. 26, p. 2019 ff.
【非特許文献8】Kong D, et al, Cancer Res. (2005), vol. 65, p. 9047 ff.
【非特許文献9】Chau N. et al., Cancer Res. (2005), vol. 65, p. 4918 ff
【非特許文献10】Welsh S, et al., Mol Cancer Ther (2004), vol. 3, p. 233 ff
【発明の概要】
【0010】
本発明は、疾患又は障害を予防又は治療することができる新規な化合物を提供する。本明細書において提示されるデータにより、本発明による化合物が、驚くべきことに、(i)低酸素条件下におけるHIFに媒介される転写の活性化の、及び(ii)細胞増殖の、非常に強力な阻害剤であることが確立される。
【0011】
第1の態様では、本発明は、式I:
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、
は、単環式の5員又は6員のヘテロアリールであり、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−CN、ハロゲン、N−O(該窒素原子は該単環式の5員又は6員のヘテロアリールの一体部分(integral part)である)、−OH、アルコキシ、−SH、S−アルキル、−NH、NH−アルキル、N−ビス−アルキル、NHOH、NMeOH、NMe(OMe)、−NO、−CF、−OCF及びC〜Cヒドロキシアルキルからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
はH又はC〜Cアルキルであり、
はH又は−CHであり、
は、フェニル、又は単環式の5員若しくは6員のヘテロアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロゲン、−CN、−CF、−OCF、C〜Cヒドロキシアルキル、−OH、−SH、S−アルキル、−CN、N−ビス−アルキル、シアノアセチレン、−NO、−NR、−C(O)R、N−O(該窒素原子は該単環式の5員又は6員のヘテロアリールの一体部分である)、及び(Rがフェニルである場合)ジオキシメチレン架橋(−O−CH−O−)を共に形成する2つの置換基からなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
はH又は−CHであり、
はC〜Cアルキルであり、
はH又はアルキルであり、
はH又はC〜Cアルキルであり、
ただしRは5−クロロ(choloro)−チオフェン−2−イルではなく、R及びRは同時にHではない)
による構造を有する化合物に関する。
【0014】
さらなる一態様では、本発明は、本発明による化合物又はその薬学的に許容可能な塩、並びに炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、及び病態生理学的な過剰血管新生(hyper-vascularisation)を特徴とする疾患からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防に有用な第2の治療薬、並びに任意に薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む、医薬組成物に関する。
【0015】
さらなる一態様では、本発明は、炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、及び病態生理学的な過剰血管新生を特徴とする疾患からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防のための薬物の調製のための、本発明による化合物又は本発明による組成物の使用に関する。
【0016】
別の態様では、本発明は、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害を治療する方法であって、放射線療法、化学療法、免疫療法、レーザー/マイクロ波温熱療法、又はアンチセンスDNA及びRNAを使用する遺伝子療法を患者が受ける前に、受ける間に、及び/又は受けた後に、上記患者に対して本発明による化合物又は組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することは意図されないことを理解すべきである。他に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0018】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"Amultilingual glossary of biotechnological terms:(IUPACRecommendations)", Leuenberger, H. G. W, Nagel, B.and Klbl, H. eds.(1995),Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland)で説明されているように定義される。
【0019】
以下の本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈上他に必要な場合以外は、「を含む(comprise)」という単語、並びに「を含む(comprises)」及び「を含む(comprising)」等の変化形は、記載の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を包含することを示唆するが、任意の他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を除外することを示唆しないと理解されよう。
【0020】
複数の文書が、本明細書の本文を通して引用される。上記のもの又は下記のもののいずれかに関わらず、本明細書で引用される文書(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造業者の仕様書、取扱説明書等を含む)の各々は、その全体が参照により本明細書に援用される。本明細書のいかなる記載事項も、本発明が先の発明に基づくこのような開示に先行する権利を有しないことを承認するものとは解釈されない。
【0021】
以下に、アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル及びアルキニルという用語の定義を提示する。これらの用語は、本明細書の残りにおけるその使用の各々の例において、それぞれ規定の意味及び好ましい意味を有する。ただし本明細書を通じたそれらの使用の幾つかの例では、これらの用語の好ましい意味が示される。
【0022】
「アルキル」という用語は、飽和の直鎖又は分岐鎖の炭素鎖を表す。好ましくは、該炭素鎖は、1個〜10個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の炭素原子を含む(例えばメチル、エチルメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル)。アルキル基は、特に記載がない限り(where indicated)、任意に置換される。
【0023】
「C〜Cヒドロキシアルキル」という用語は、モノ−又はポリ−ヒドロキシル化C〜C(すなわち1個、2個、3個又は4個の炭素原子を含む)アルキルを表す。好ましくは、この用語は、モノ−ヒドロキシル化C〜Cアルキル基、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチルを表す。
【0024】
「ヘテロアルキル」という用語は、飽和の直鎖又は分岐鎖の炭素鎖を表す。好ましくは該炭素鎖は、1個〜9個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個の炭素原子を含み(例えばメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル)、同じ又は異なるヘテロ原子が1回又は複数回、例えば1回、2回、3回割り込む(interrupted)。好ましくはヘテロ原子は、O、S及びNから選択される(例えばCH−O−CH、CH−O−C、C−O−CH、C−O−C等)。ヘテロアルキル基は、任意に置換される。
【0025】
「ヘテロアリール」という用語は好ましくは、炭素原子の少なくとも1つが、1個、2個、3個若しくは4個(5員環に対して)、又は1個、2個、3個若しくは4個(6員環に対して)の同じ又は異なるヘテロ原子(好ましくはO、N及びSから選択される)により置き換えられた、5員又は6員の芳香族の単環式の環を表す。例は、フラニル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3−トリアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3,−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,2,3−トリアジニル、1,2,4−トリアジニル及び1,3,5−トリアジニルである。
【0026】
本明細書で使用する場合の「単環式」は、任意の複数の融合した芳香族又はヘテロ芳香族の環を除く、芳香族又はヘテロ芳香族の環を1つだけ有する置換基を表す。
【0027】
「アルケニル」という用語は、1つ又は複数の二重結合を含有するオレフィン性の不飽和の炭素原子を表す。一例はプロペニルである。好ましくは、アルケニル鎖は、2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含む(例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル、sec−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル)。
【0028】
「アルキニル」という用語は、1つ又は複数の三重結合を有する不飽和の炭素原子を表す。一例は、プロパルギルラジカルである。好ましくは、アルキニル鎖は、2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含む(例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、ヘキシニル、ペンチニル又はオクチニル)。
【0029】
本発明の化合物の好ましい一実施形態では、アルキルラジカル、アリールラジカル、アルケニルラジカル又はアルキニルラジカルにおける水素原子を、1つ又は(ore)複数のハロゲン原子により、互いに独立して置換してもよい。1つのラジカルは、トリフルオロメチルラジカルである。
【0030】
2つ以上のラジカルを互いに独立して選択することができる場合、「独立して」という用語は、該ラジカルが同じであってもよく又は異なっていてもよいことを意味する。
【0031】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本発明の化合物の塩を表す。本発明の化合物の好適な薬学的に許容可能な塩は、例えば、本発明の化合物の溶液を、薬学的に許容可能な酸、例えば塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸又はリン酸の溶液と混合することにより形成することができる酸付加塩を含む。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有する場合には、その好適な薬学的に許容可能な塩は、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩又はカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩);及び好適な有機リガンド(例えば、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、アルキルスルホン酸イオン及びアリールスルホン酸イオン等の対アニオン(counteranions)を使用して形成されるアンモニウムカチオン、四級アンモニウムカチオン及びアミンカチオン)により形成される塩を含み得る。薬学的に許容可能な塩の例示的な例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物塩、酪酸塩、エデト酸カルシウム、ショウノウ(camphorate)、カンファースルホン酸塩(camphorsulfonate)、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物塩、クエン酸塩、クラブラン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩(estolate)、エシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩(glycolylarsanilate)、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物塩、イソチオネート(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩(embonate))、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド(triethiodide)、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられるがこれらに限定されない(例えばBerge, S. M., et al, "Pharmaceutical Salts", Journal ofPharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照されたい)。或る特定の具体的な本発明の化合物は、化合物を塩基付加塩又は酸付加塩に変換することを可能とする塩基性及び酸性の両方の官能性(functionalities)を含有する。
【0032】
化合物の中性形態を、従来の方法で塩を塩基又は酸と接触させると共に親化合物を単離することにより、再生することができる。化合物の親形態は、或る特定の物理的特性(例えば極性溶媒における溶解性)において様々な塩形態と異なるが、それ以外は、塩形態は、本発明の目的に関して化合物の親形態と同等である。
【0033】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態の化合物を提供する。本明細書で記載される化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学的変化を受けて一般式(I)〜一般式(III)の化合物をもたらす化合物である。プロドラッグは、患者への該プロドラッグの投与後にin vivoの生理学的作用、例えば加水分解、代謝等により本発明の化合物へと化学的に修飾される薬理学的に活性な又は不活性な化合物である。加えて、ex vivo環境において化学的方法又は生化学的方法により、プロドラッグを本発明の化合物へと変換することができる。例えばプロドラッグを、好適な酵素を有する経皮パッチリザーバで与えた場合、本発明の化合物へとゆっくりと変換することができる。プロドラッグの製造及び使用に関与する適合性(suitability)及び技法は、当業者に既知である。エステルを含むプロドラッグの包括的な議論に関しては、Svensson and Tunek, Drug Metabolism Reviews 16.5 (1988)及びBundgaard, Design of Prodrugs,Elsevier (1985)を参照されたい。保護された(masked)酸性アニオンの例としては、様々なエステル、例えばアルキル(例えばメチル、エチル)、シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)、アラルキル(例えばベンジル、p−メトキシベンジル)及びアルキルカルボニルオキシアルキル(例えばピバロイルオキシメチル)のエステルが挙げられる。アミンが、in vivoでエステラーゼにより切断されて遊離の薬剤及びホルムアルデヒドを放出する、アリールカルボニルオキシメチル置換誘導体として保護されている(Bungaard J. Med. Chem. 2503 (1989))。また、酸性のNH基を含有する薬剤、例えばイミダゾール、イミド、インドール等が、N−アシルオキシメチル基で保護されている(Bundgaard Design of Prodrugs, Elsevier (1985))。ヒドロキシ基が、エステル及びエーテルとして保護されている。欧州特許第0 039 051号(Sloan and Little, Apr. 11, 1981)は、マンニッヒ塩基のヒドロキサム酸プロドラッグ、それらの調製及び使用を開示している。
【0034】
本発明の化合物及びまた本発明によるその調製のための出発物質を、本明細書に示されるように、並びに代替的には当業者に既知の方法及び標準的手順により、すなわち文献(例えば標準的な作業においては、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie[Methods of OrganicChemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart)中で説明されているように、当業者に既知であり、この反応に好適な反応条件下で、合成することができる。
【0035】
必要に応じて出発物質を、反応混合物から該物質を単離せず、代わりに直ちに該物質をさらに本発明の化合物へと変換することにより、in situで形成することもできる。一方、反応を段階的に実施することが可能である。一般的な手順は、不特定の立体化学を有する化合物の調製に関するように示されていることに留意すべきである。しかしながら、このような手順は、特定の立体化学を有する(例えば、立体中心(sterogenic center)での立体化学が(S)又は(R)である)これらの化合物に概して適用可能である。加えて、多くの場合、既知の方法を使用して、例えば反転(inversion)により、1つの立体化学(例えば(R))を有する化合物を利用して反対の立体化学(すなわち(S))を有する化合物を製造することができる。
【0036】
本発明の或る特定の化合物は、非溶媒和形態で、及び溶媒和形態(水和形態を含む)で存在し得る。概して、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等のものであり、本発明の範囲内に包含されることが意図される。本発明の或る特定の化合物は、複数の結晶形態又は非結晶形態で存在し得る。概して、全ての物理的形態が、本発明が意図する使用に関して同等であり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0037】
或る特定の本発明の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)又は二重結合を有する。ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体、及び個々の異性体は全て、本発明の範囲内に包含されることが意図される。したがって、本発明の化合物は、立体異性体の混合物、特にエナンチオマーの混合物、及び精製された立体異性体、特に精製されたエナンチオマー、又は立体異性体として濃縮された混合物、特にエナンチオマーとして濃縮された混合物を含む。以下の式(I)〜式(III)により表される化合物の個々の異性体、及びその任意の全体的に又は部分的に平衡化した混合物も、本発明の範囲内に含まれる。本発明は、1つ又は複数のキラル中心が反転したその異性体との混合物としての、以下の式により表される化合物の個々の異性体も包含する。また、式(I)〜式(III)の化合物の全ての互変異性体及び互変異性体の混合物が、式(I)〜式(III)並びに好ましくはこれらに対応する式及び下位式(subformulas)の化合物の範囲内に含まれることが理解される。
【0038】
得られたラセミ体を、それ自体既知の方法により機械的に又は化学的に、異性体に分割することができる。ジアステレオマーは好ましくは、光学活性分割剤との反応によりラセミ混合物から形成される。
【0039】
好適な分割剤の例は、光学的に活性な酸、例えばD体及びL体の酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、又は様々な光学的に活性なカンファースルホン酸、例えば−カンファースルホン酸である。光学活性分割剤(例えばジニトロベンゾイルフェニルグリシン)を充填したカラムを用いるエナンチオマー分割も有利であり、好適な溶離液の一例は、ヘキサン/イソプロパノール/アセトニトリル混合物である。
【0040】
標準的な精製プロセス、例えばクロマトグラフィ又は分別晶出等によりジアステレオマー分割を実施することもできる。
【0041】
既に光学的に活性な出発物質を使用することによる上で記載される方法により、式(I)〜式(III)の光学的に活性な化合物を得ることも可能である。
【0042】
本発明は、疾患又は障害の予防又は治療のための、新規な組成物、化合物、並びにこれらの化合物及び組成物の使用を提供する。
【0043】
第1の態様では、本発明は、式I:
【0044】
【化2】

【0045】
(式中、
は、単環式の5員又は6員のヘテロアリールであり;H;アルキル、好ましくは1個〜10個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の炭素原子を含むアルキル鎖、例えばメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル又はオクチル;アルケニル、特に2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルケニル鎖、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル、sec−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル又はオクテニル;アルキニル、好ましくは2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、ヘキシニル、ペンチニル又はオクチニル;−CN;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;N−O(該窒素原子は該単環式の5員又は6員のヘテロアリールの一体部分である);−OH;アルコキシ、特にC〜Cアルコキシ、例えばC、C、C、C、C又はCアルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso−プロポキシ、ブトキシ、iso−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ又はヘキソキシ;−SH;S−アルキル、特にC〜C S−アルキル、例えばC、C、C、C、C又はC S−アルキル;−NH;NH−アルキル、特にC〜C NH−アルキル、例えばC、C、C、C、C又はC NH−アルキル;N−ビス−アルキル、好ましくはC〜C N−ビス−アルキル、例えばC、C、C、C、C又はC N−ビス−アルキル;NHOH;NMeOH;NMe(OMe);−NO;−CF;−OCF、及びC〜Cヒドロキシアルキル、特にC〜Cヒドロキシアルキル、例えばC、C、C又はCヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチルからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
は、H、又はC〜Cアルキル、すなわち1個〜4個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個若しくは4個の炭素原子を含むアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル若しくはiso−ブチルであり、
はH又は−CHであり、
は、フェニル、又は単環式の5員若しくは6員のヘテロアリールであり;アルキル、好ましくは1個〜10個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の炭素原子を含むアルキル鎖、例えばメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル又はオクチル;アルケニル、特に2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルケニル鎖、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル、sec−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル又はオクテニル;アルキニル、好ましくは2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、ヘキシニル、ペンチニル又はオクチニル;アルコキシ、特にC〜Cアルコキシ、例えばC、C、C、C、C又はCアルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso−プロポキシ、ブトキシ、iso−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ又はヘキソキシ;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;−CN;−CF;−OCF;C〜Cヒドロキシアルキル、特にC〜Cヒドロキシアルキル、例えばC、C、C又はCヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチル;−OH;−SH;S−アルキル、特にC〜C S−アルキル、例えばC、C、C、C、C又はC S−アルキル;−CN;N−ビス−アルキル、好ましくはC〜C N−ビス−アルキル、例えばC、C、C、C、C又はC N−ビス−アルキル;シアノアセチレン;−NO;−NR、好ましくは−NH又はNH−アルキル、より好ましくは−NH又は−NH−C〜Cアルキル、すなわち−NH−CH、−NH−エチル、−NH−Cアルキル又は−NH−Cアルキル、及び最も好ましくは−NH、NH(CH)又はN(CH;−C(O)R、好ましくはアセチル、プロピオニル、iso−プロピオニル、ブチリル又はiso−ブチリル;N−O(該窒素原子は該単環式の5員又は6員のヘテロアリールの一体部分である)、並びに(Rがフェニルである場合)ジオキシメチレン架橋(−O−CH−O−)を共に形成する2つの置換基からなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
はH又は−CHであり、
は、C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル又はiso−ブチルであり、
は、H、又はアルキル、好ましくは1個〜10個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個の炭素原子を含むアルキル鎖、例えばメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル若しくはオクチルであり、
は、H、又はC〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル若しくはiso−ブチルであり、
ただしRは5−クロロ−チオフェン−2−イルではなく、R及びRは同時にHではない)
による構造を有する化合物に関する。
【0046】
好ましい一実施形態では、Rは3−アルコキシ置換ピリダジン−6−イルではなく、R及びRは同時にHではない。
【0047】
が、メチル、エチル、メトキシ、−OC、−CF、−OCF、CN、F及び−NHからなる群から選択される置換基で任意に置換された、単環式の5員又は6員のヘテロアリールである化合物も好ましい。
【0048】
化合物のさらなる好ましい一実施形態では、R及びRはHであり、Rは、メチル、エチル、メトキシ、−OC、−CF、−OCF、CN、F及び−NHからなる群から選択される置換基で任意に置換された、単環式の5員又は6員のヘテロアリールである。
【0049】
本発明の化合物のR置換基及び/又はR置換基は、好ましい実施形態では、ヘテロ原子を1つだけ有する場合があり、及び/又は2つ未満若しくは3つ未満の置換基で置換される場合がある。
【0050】
本発明の化合物のさらなる好ましい一実施形態は、以下の置換基を有する:R及びRがHであり、Rが、メチル、エチル、メトキシ、−OC、−CF、−OCF、CN、F及び−NHからなる群から選択される置換基で任意に置換された、単環式の5員若しくは6員のヘテロアリールであり、R基が2つ未満若しくは3つ未満の置換基で置換され、並びに/又はRが単環式の5員若しくは6員のヘテロアリールである場合、Rがヘテロ原子を1つだけ含むことがこの文脈では好ましい。
【0051】
好ましい一実施形態では、本発明の化合物は、式II:
【0052】
【化3】

【0053】
による構造を有する。
【0054】
式III:
【0055】
【化4】

【0056】
による構造を有する本発明の化合物も好ましい。
【0057】
本発明の化合物の好ましい一実施形態では、Rは、式IV:
【0058】
【化5】

【0059】
(式中、
及びR10は各々個々に、H;C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル若しくはiso−ブチル;C〜Cアルケニル、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル若しくはsec−ブテニル;C〜Cアルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル若しくは3−ブチニル;−CN;−C(O)R、好ましくはアセチル、プロピオニル、iso−プロピオニル、ブチリル若しくはiso−ブチリル;シアノアセチレン;ハロゲン、特にF、Cl、Br若しくはI;−OH;C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso−プロポキシ、ブトキシ、iso−ブトキシ若しくはtert−ブトキシ;−SH;C〜C S−アルキル、例えばC、C、C若しくはC S−アルキル;−NH;C〜C NH−アルキル、例えばC、C、C若しくはC NH−アルキル;C〜C N−ビス−アルキル、例えばC、C、C若しくはC N−ビス−アルキル;−NO;−CF;−OCF;及びC〜Cヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル若しくはヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル若しくは2−ヒドロキシブチルからなる群から選択され;又はR及びR10は、ジオキシメチレン架橋(−O−CH−O−)を共に形成し、
11及びR12は各々個々に、H;C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル又はiso−ブチル;C〜Cアルケニル、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル又はsec−ブテニル;C〜Cアルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル又は3−ブチニル;−CN;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;−OH;C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso−プロポキシ、ブトキシ、iso−ブトキシ又はtert−ブトキシ;−SH;C〜C S−アルキル、例えばC、C、C又はC S−アルキル;−CF;−OCF;−NH;−N(CH、及びC〜Cヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチルからなる群から選択され、
は上で示した意味を有し(例えばメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル又はiso−ブチルであり)、
*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)
による構造を有する。
【0060】
が式(IV)の構造を有する好ましい実施形態では、(a)RがCNであり、R10、R11及びR12がHである;(b)R10がCNであり、R、R11及びR12がHである;(c)R、R10及びR11がHであり、R12がCNである;(d)Rがエチニルであり、R10、R11及びR12がHである;(e)R10がエチニルであり、R、R11及びR12がHである;(f)R、R10及びR11がHであり、R12がエチニルである;(g)RがCNであり、R10、R11及びR12のうちの1つが、OH、若しくはC〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso−プロポキシ、ブトキシ、iso−ブトキシ若しくはtert−ブトキシである;(h)R10がCNであり、R、R11及びR12のうちの1つ、好ましくはRが、ハロゲン、特にF、OH、若しくはC〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso−プロポキシ、ブトキシ、iso−ブトキシ若しくはtert−ブトキシである;又は(i)R、R10及びR11のうちの1つ、好ましくはRが、OH、若しくはC〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso−プロポキシ、ブトキシ、iso−ブトキシ若しくはtert−ブトキシであり、R12がCNである;好ましくはR10がCNであり、RがOH、若しくはC〜Cアルコキシ、好ましくはメトキシであることが特に好ましい。
【0061】
好ましくは上記の化合物において、R及びR12が同時にメトキシである場合はない。
【0062】
11及びR12がHである本発明の化合物は、さらに好ましい。
【0063】
本発明の化合物の別の好ましい実施形態では、Rはメチルであり、RはH、メチル又はエチル、好ましくはHであり、RはHである。
【0064】
本発明の化合物の好ましい一実施形態では、Rは、式V:
【0065】
【化6】

【0066】
(式中、
A、B、D及びEは各々個々に、窒素原子、CR13及びN−Oからなる群から選択され、
Gは、酸素原子、硫黄原子及びNR14からなる群から選択され、
13は、H;C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−OH;−SH;S−アルキル、例えばC、C又はC S−アルキル;−CF;−OCF;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;−NR1516、好ましくは−NH又は−NH−C〜Cアルキル、すなわち−NH−CH、−NH−エチル、−NH−Cアルキル又は−NH−Cアルキル、及び最も好ましくは−NH、NH(CH)又はN(CH;−NO;−CN;−C(O)R;アセチレン;シアノアセチレン;C〜Cヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチル、並びにRを式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物と連結するσ(シグマ)結合からなる群から選択され、
14は、H、C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル又はiso−ブチル、及びより好ましくはメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;並びにRを式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物と連結するσ(シグマ)結合からなる群から選択され、
15及びR16は各々個々に、H、又はC〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル若しくはiso−ブチルであり、
は上で示した意味を有し(例えばメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル又はiso−ブチルであり)、
*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)
による構造を有する。
【0067】
本発明の化合物の別の好ましい実施形態では、Rは、式VI:
【0068】
【化7】

【0069】
(式中、
L及びTは各々個々に、CH基又は窒素原子又はN−Oであり、
M、N及びQは各々個々に、窒素原子、CR17基及びN−Oからなる群から選択され、
17は、H;C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−CF;−OCF;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;−OH;−NO;−SH;C〜C S−アルキル、例えばC、C又はC S−アルキル;−NR1516、好ましくは−NH又は−NH−C〜Cアルキル、すなわち−NH−CH、−NH−エチル、−NH−Cアルキル又は−NH−Cアルキル、及び最も好ましくは−NH、NH(CH)又はN(CH;C〜Cヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチル;−C(O)R、好ましくはアセチル、プロピオニル、iso−プロピオニル、ブチリル又はiso−ブチリル;アセチレン;シアノアセチレン、並びに−CNからなる群から選択され、
15及びR16は各々個々に、H、又はC〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル若しくはiso−ブチルであり、
は上で示した意味を有し(例えばメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル又はiso−ブチルであり)、
*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)
による構造を有する。
【0070】
が、
【0071】
【化8】




【0072】
(式中、
18及びR19は各々個々に、H;C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−CF;−OCF;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;−OH;−NO;−SH;C〜C S−アルキル、例えばC、C又はC S−アルキル;−NR1516、好ましくは−NH又は−NH−C〜Cアルキル、すなわち−NH−CH、−NH−エチル、−NH−C−アルキル又は−NH−C−アルキル、及び最も好ましくは−NH、NH(CH)又はN(CH;C〜C−ヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチル;アルケニル、特に2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルケニル鎖、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル、sec−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル又はオクテニル;アルキニル、好ましくは2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、ヘキシニル、ペンチニル又はオクチニル;−C(O)R、好ましくはアセチル、プロピオニル、iso−プロピオニル、ブチリル又はiso−ブチリル;シアノアセチレン、並びに−CNからなる群から選択され、
15及びR16は、上で示した意味及び好ましい意味を有する)
からなる群から選択される、本発明の化合物も好ましい。
【0073】
好ましい一実施形態では、R18はHであり、上で示した構造におけるR19は、C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−CF;−OCF;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;−OH;−NO;−SH;C〜C S−アルキル、例えばC、C又はC S−アルキル;−NR1516、好ましくは−NH又は−NH−C〜Cアルキル、すなわち−NH−CH、−NH−エチル、−NH−C−アルキル又は−NH−C−アルキル、及び最も好ましくは−NH、NH(CH)又はN(CH;C〜C−ヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチル;アルケニル、特に2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルケニル鎖、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル、sec−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル又はオクテニル;アルキニル、好ましくは2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、ヘキシニル、ペンチニル又はオクチニル;−C(O)R、好ましくはアセチル、プロピオニル、iso−プロピオニル、ブチリル又はiso−ブチリル;シアノアセチレン、並びに−CNからなる群から選択される。この文脈でのR19の最も好ましい意味は、C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、特にメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−CF;−OCF、−CN、−NO、又はハロゲン、特にF、Cl、Br若しくはIであり、メチル、メトキシ、CF又は−CNが最も好ましい意味である。
【0074】
別の好ましい実施形態では、R19はHであり、上で示した構造におけるR18は、C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−CF;−OCF;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;−OH;−NO;−SH;C〜C S−アルキル、例えばC、C又はC S−アルキル;−NR1516、好ましくは−NH又は−NH−C〜Cアルキル、すなわち−NH−CH、−NH−エチル、−NH−C−アルキル又は−NH−C−アルキル、及び最も好ましくは−NH、NH(CH)又はN(CH;C〜C−ヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチル;アルケニル、特に2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルケニル鎖、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル、sec−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル又はオクテニル;アルキニル、好ましくは2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、ヘキシニル、ペンチニル又はオクチニル;−C(O)R、好ましくはアセチル、プロピオニル、iso−プロピオニル、ブチリル又はiso−ブチリル;シアノアセチレン、並びに−CNからなる群から選択される。この文脈でのR18の最も好ましい意味は、C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、特にメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−CF;−OCF、−CN、−NO、又はハロゲン、特にF、Cl、Br若しくはIであり、メチル、メトキシ、CF又は−CNが最も好ましい意味である。
【0075】
別の好ましい実施形態では、R18及びR19は各々個々に、C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−CF;−OCF;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;−OH;−NO;−SH;C〜C S−アルキル、例えばC、C又はC S−アルキル;−NR1516、好ましくは−NH又は−NH−C〜Cアルキル、すなわち−NH−CH、−NH−エチル、−NH−C−アルキル又は−NH−C−アルキル、及び最も好ましくは−NH、NH(CH)又はN(CH;C〜C−ヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチル;アルケニル、特に2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルケニル鎖、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル、sec−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル又はオクテニル;アルキニル、好ましくは2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、ヘキシニル、ペンチニル又はオクチニル;−C(O)R、好ましくはアセチル、プロピオニル、iso−プロピオニル、ブチリル又はiso−ブチリル;シアノアセチレン、並びに−CNからなる群から選択される。この文脈でのR18及びR19の最も好ましい意味は、C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、特にメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−CF;−OCF、−CN、−NO、又はハロゲン、特にF、Cl、Br若しくはIであり、メチル、メトキシ、CF又は−CNが最も好ましい意味である。
【0076】
本発明の化合物の別の好ましい実施形態では、RはHであり、Rは、
【0077】
【化9】





【0078】
(式中、
*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)
からなる群から選択される。
【0079】
本発明の化合物のさらなる好ましい一実施形態では、Rは、好ましくは以下に示されるように任意に置換された、5員のヘテロ芳香族残基であり;好ましくは、好ましくは以下に示されるように任意に置換された、フラニル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3−トリアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3,−チアジアゾリル及び1,2,5−チアジアゾリルからなる群から選択され;より好ましくは、
【0080】
【化10】



【0081】
からなる群から選択される(ここで、
は、C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−CF;−OCF;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;−OH;−NO;−SH;C〜C S−アルキル、例えばC、C又はC S−アルキル;−NR1516、好ましくは−NH又は−NH−C〜Cアルキル、すなわち−NH−CH、−NH−エチル、−NH−Cアルキル又は−NH−Cアルキル、及び最も好ましくは−NH、NH(CH)又はN(CH;C〜Cヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチル;アルケニル、特に2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルケニル鎖、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル、sec−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル又はオクテニル;アルキニル、好ましくは2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、ヘキシニル、ペンチニル又はオクチニル;−C(O)R、好ましくはアセチル、プロピオニル、iso−プロピオニル、ブチリル又はiso−ブチリル;シアノアセチレン、並びに−CNからなる群から選択される1つ又は複数の、好ましくは1つの置換基で任意にさらに置換され、
*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)。
【0082】
上で概説したRの好ましい実施形態において、RがHであることが特に好ましい。
【0083】
が、好ましくは以下に示されるように任意に置換された、単環式の(monocylic)6員のヘテロ芳香族残基であり;好ましくは、好ましくは以下に示されるように任意に置換された、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,2,3−トリアジニル、1,2,4−トリアジニル及び1,3,5−トリアジニルからなる群から選択され;又はより好ましくは、
【0084】
【化11】


【0085】
からなる群から選択される、本発明による化合物も好ましい(ここで、
は、C〜Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル又はiso−プロピル;C〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はiso−プロポキシ;−CF;−OCF;ハロゲン、特にF、Cl、Br又はI;−OH;−NO;−SH;C〜C S−アルキル、例えばC、C又はC S−アルキル;−NR1516、好ましくは−NH又は−NH−C〜Cアルキル、すなわち−NH−CH、−NH−エチル、−NH−Cアルキル又は−NH−Cアルキル、及び最も好ましくは−NH、NH(CH)又はN(CH;C〜Cヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシル−iso−プロピル、1−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシブチル;アルケニル、特に2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルケニル鎖、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、iso−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、iso−ブテニル、sec−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル又はオクテニル;アルキニル、好ましくは2個〜8個の炭素原子、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を含むアルキニル、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、ヘキシニル、ペンチニル又はオクチニル;−C(O)R、好ましくはアセチル、プロピオニル、iso−プロピオニル、ブチリル又はiso−ブチリル;シアノアセチレン、並びに−CNからなる群から選択される1つ又は複数の、好ましくは1つの置換基で任意にさらに置換され、
*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)。
【0086】
上で概説したRの好ましい実施形態において、RがHであることが特に好ましい。
【0087】
本発明の化合物のさらなる好ましい一実施形態では、RはHである。
【0088】
以下の表1には、本発明の化合物の特定の置換基のさらに好ましい組合せを列挙しており、表に示されていない残りの置換基は、本明細書に規定される通りである。
【0089】
【表1】

表中の英文(methyl:メチル、as defined herein:本明細書に規定の通り)

【0090】
本発明の化合物の特に好ましい一実施形態では、化合物は、表2及び表3に列挙される化合物の群から選択される。
【0091】
さらなる一態様では、本発明は、疾患又は障害の予防又は治療のための、本発明による化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0092】
以下の実施例で示されるように、本発明の化合物の有利な特性は、細胞増殖を効果的に阻害するそれらの能力、及びHIF阻害剤としてのそれらの活性を含む。例えば、本発明の化合物が、低酸素条件下でHIFに媒介される転写の活性化を阻害することが示された。したがって、本発明の化合物を、病態生理学的なHIFシグナル伝達を特徴とする障害の治療のための薬物の調製のために使用することができる。医学、生物学及び/又は薬理科学の当業者は、障害が望ましくないHIFシグナル伝達を特徴とするかどうかを、日常的な方法論により決定することができる。このような疾患に罹患した組織は、HIF応答要素(HRE)の活性化により誘導される遺伝子を過剰発現する。HIF−1は、配列NCGTGを一般的に含有するプロモーターにおけるHIF応答要素(HRE)と結合することにより作用する。上記プロモーターにより調節されるHIF活性により影響を受ける遺伝子は当該技術分野で既知であり、複数の概説にも記載された(例えばGregg L. Semenza, Nature Reviews, Oct. 2003, vol. 3の図3を参照されたい)。
【0093】
動物研究において、HIF−1の過剰発現は、腫瘍の成長の増大、血管新生の増大、転移、及び線維症、例えば腎線維症(Semenza, G, Drug Discovery Today, vol. 12, no. 19/20, October 2007、Kimura, Kuniko, et al., American Journal of Physiology (2008), 295(4, Pt. 2), F1023-F1029を参照されたい。概説に関してはN.J. Mabjeesh etal., Histol. Histopathol (2007)22:559-572を参照されたい)と関連する。線維症は、臓器又は組織における過剰な線維結合組織の形成又は発生である。近年、HIF−1活性の阻害が、マクロファージ及び好中球の活性化及び罹患組織中への浸潤におけるその本質的な役割に基づき、炎症を予防するようにも作用することが明らかになった(例えば非特許文献2を参照されたい)。
【0094】
医薬組成物
上で言及した理由のために、本発明の化合物を、炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、及びまた病態生理学的な過剰血管新生を特徴とする疾患を治療するために使用することができる。したがってさらなる一態様として、本発明は、本発明の化合物を上述の疾患又は障害のうちの1つを治療するのに有用な少なくとも1つのさらなる薬学的に活性な化合物と組み合わせた、治療用組成物を提供する。上記少なくとも1つのさらなる薬学的に活性な化合物の存在により本発明の化合物の治療の有効性を増幅することができる(逆も成立する)ため、このような治療用組成物は有用である。例えば、アンチセンス遺伝子療法を介してHIF1α活性を阻害することにより、肝細胞癌に働く(combat)ドキソルビシンの治療の有効性が増強されることが示された(Liu,Fengjun et. al., Cancer Science (2008), 99(10), 2055-2061を参照されたい)。
【0095】
したがってさらなる一態様では、本発明は、本発明による化合物又はその薬学的に許容可能な塩、並びに炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、及び病態生理学的な過剰血管新生を特徴とする疾患からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防に有用な第2の治療薬、並びに任意に薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む、医薬組成物に関する。このような組成物は、例えば、相乗的な治療効果を得るのにも、また腫瘍細胞の薬剤抵抗性を防止するのにも有用である。現在の化学療法が概して、治療の有効性を改善するために、及び腫瘍細胞の適応の可能性を低減させるために、異なる細胞傷害化合物及び/又は細胞分裂抑制化合物のカクテル(cocktail)を投与することを伴うのも、これらの理由のためである。
【0096】
さらなる一態様では、本発明は、放射線療法と組み合わせる、本発明による化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む、医薬組成物に関する。
【0097】
本発明の任意の組成物を、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤若しくは担体、又はそれらの混合物と混和することができる。
【0098】
本発明の化合物(それらの薬学的に許容可能な塩、エステル、及び薬学的に許容可能な溶媒和物を含む)を単独で投与することができるとしても、特にヒトの治療に関しては、薬学的な担体、賦形剤又は希釈剤との混和物として投与されるのが一般的である。医薬組成物は、ヒト医学及び獣医学においてはヒト又は動物への使用のためのものであり得る。本明細書で記載される医薬組成物の様々な異なる形態のためのこのような好適な賦形剤の例は、"Handbook of Pharmaceutical Excipients", 2nd Edition, (1994)(A Wade and PJ Weller編)に見出すことができる。治療用の使用のための許容可能な担体又は希釈剤は薬学分野において既知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R Gennaro編)(1985)に記載されている。
【0099】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、薬学的に許容可能な担体は、固体又は液体のいずれであってもよい。固体形態の調製物としては、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤(cachets)、坐剤及び分散性顆粒が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香料、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤又は封入材料としても作用し得る、1つ又は複数の物質であり得る。
【0100】
粉末においては、担体は微粉化した固体であり、微粉化した活性成分との混合物中に存在する。錠剤においては、活性成分は、必要な結合特性を有する担体と好適な比率で混合され、所望の形状及び大きさで圧縮される。
【0101】
粉末及び錠剤は、好ましくは5%〜80%、より好ましくは20%〜70%の活性化合物(単数又は複数)を含有する。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等である。「調製物(preparation)」という用語は、カプセルをもたらす担体としての封入材料を伴う活性化合物の配合物(formulation)を含むことを意図し、該カプセルにおいて活性成分は、他の担体と共に又は他の担体を伴わずに担体に取り囲まれており、そのようにして担体と結合している。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ剤及びトローチ剤を、経口投与に好適な固体投与形態として使用することができる。
【0102】
坐剤を調製するために、低融点ワックス、例えば脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物を最初に融解し、その中に活性成分を撹拌等により均一に分散させる。その後融解した均一な混合物を、都合の良い大きさの型に注ぎ込み、冷却することにより、固化させる。
【0103】
液体形態調製物としては、溶液、懸濁液及びエマルション、例えば水又は水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。眼への局所適用のためには液体形態が特に好ましい。非経口注入のために、ポリエチレングリコール水溶液の溶液で液体調製物を構築することができる。
【0104】
経口使用に好適な水溶液を、活性成分を水に溶解すること、並びに好適な着色料、香料、安定剤及び増粘剤を必要に応じて添加することにより、調製することができる。経口使用に好適な水性懸濁液は、粘性材料(例えば天然又は合成のガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の既知の懸濁剤)と共に、微粉化した活性成分を水に分散させることにより、作製することができる。
【0105】
使用直前に経口投与のための液体形態調製物に変換することが意図される固体形態調製物も含まれる。このような液体形態としては、溶液、懸濁液及びエマルションが挙げられる。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色料、香料、安定剤、緩衝剤、人工及び天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含有していてもよい。
【0106】
医薬調製物は、好ましくは単位投与形態である。このような形態では調製物は、適当量の活性成分を含有する単位用量へと細分割される(subdivided)。単位投与形態は、包装した調製物であってもよく、該包装は、個別の量の調製物、例えば包装した錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末を含有する。また、単位投与形態は、カプセル、錠剤、カシェ剤若しくはトローチ剤それ自体であってもよく、又は単位投与形態は、適当数の、包装した形態のこれらのいずれかであってもよい。
【0107】
興味深いことに、HIF阻害剤、例えば本発明の化合物は、化学療法薬剤に対する腫瘍の抵抗性の発達を防止することができると共に、がん細胞を放射線療法に対してより感受性にすることができる(例えばPalayoor ST, et al., Int J Cancer. 2008 Nov 15; 123(10):2430-7及びGregg L. Semenza, Nature Reviews, Oct. 2003, vol. 3を参照されたい)。したがって、本発明の化合物と組み合わせて本発明の医薬組成物を製造することができる有用な第2の治療薬としては、(さらなる)HIF−1阻害剤、細胞傷害化合物及び細胞分裂抑制化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
HIF−1阻害剤は、例えばPX−478(S−2−アミノ−3−[4'−N,N,−ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェニルプロピオン酸N−オキシド二塩酸塩);トポイソメラーゼ−1阻害剤、例えば8,9−ジメトキシ−5−(2−N,N−ジメチルアミノエチル)−2,3−メチレンジオキシ−5H−ジベンゾ[c,h][1,6]ナフチリジン−6−オン(ARC−111又はトポベイル(topovale)としても知られる)又は(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14−(4H,12H)−ジオン一塩酸塩(トロポテカン(tropotecan)とも称される);エキノマイシン;ケトミン(NSC289491);シクロスポリンA;3−[2−[4−[ビス(4−フルオロフェニル)メチレン]−1−ピペリジニル]−2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−4(1H)−キナゾリノン(R59949);PIK3K/Akt/mTorシグナル伝達カスケードの阻害剤、例えばLY294002、ウォルトマニン又はラパマイシン;MAPKシグナル伝達カスケードの阻害剤、例えばMEK1阻害剤(PD98059);可溶性グアニルシクラーゼ刺激因子、例えば3−(5’−ヒドロキシメチル−2’−フリル)−1−ベンジルインダゾール(YC−1);熱ショックタンパク質90阻害剤、特にラディシコール、ラディシコール類似体(KF58333)又はゲルダナマイシン;微小管破壊剤、特に例えばタキソール、ビンクリスチン又は2−メトキシエストラジオール;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、例えばFK228;チオレドキシン阻害剤、特にPX−12又はプレウロチン(pleurotin);UCNO−1;ジフェニレンヨードニウム、ゲネステイン及びカルボキシアミド−トリアゾールからなる群から選択することができる。
【0109】
多くの細胞傷害化合物又は細胞分裂抑制化合物が、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、例えば腫瘍疾患又はがん疾患の治療に精通した当業者にとって既知である。例えば、細胞傷害化合物及び細胞分裂抑制化合物としては、純粋な又は混合の抗エストロゲン薬、例えばファスロデックス(faslodex)、タモキシフェン又はラロキシフェン;トポイソメラーゼI又はIIの任意の阻害剤、例えばカンプトテシン(topo I)又はエトポシド(topo II);アロマターゼ活性を阻害することにより作用する任意の化合物、例えばアナストロゾール又はレトロゾール;HER2シグナル伝達を妨げる任意の調製物、例えばハーセプチン;DNAに挿入される(interchelates)任意の化合物、例えばドキソルビシンが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の化合物と併用することができる特に好ましい細胞分裂抑制薬又は細胞傷害薬は、アルキル化物質、抗代謝剤、抗生物質、エポチロン、核内受容体アゴニスト及びアンタゴニスト、抗アンドロゲン薬、抗エストロゲン薬、白金化合物、ホルモン及び抗ホルモン薬、インターフェロン、及び細胞周期依存性タンパク質キナーゼ(CDK)の阻害剤、シクロオキシゲナーゼ及び/又はリポキシゲナーゼの阻害剤、生体(biogeneic)脂肪酸及び脂肪酸誘導体、例えばプロスタノイド及びロイコトリエン、タンパク質キナーゼの阻害剤、タンパク質ホスファターゼの阻害剤、脂質キナーゼの阻害剤、白金配位錯体、エチレンイミン(ethyleneimenes)、メチルメラミン、トラジン(trazines)、ビンカアルカロイド、ピリミジン類似体、プリン類似体、アルキルスルホネート、葉酸類似体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、特にアセジアスルホン(acediasulfone)、アクラルビシン(aclarubicine)、アンバゾン、アミノグルテチミド、L−アスパラギナーゼ、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ホリネートカルシウム、カルボプラチン、カペシタビン(carpecitabine)、カルムスチン、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダプソン、ダウノルビシン、ジブロムプロパミジン、ジエチルスチルベストロール(diethylstilbestrole)、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンジイン、エピルビシン、エポチロンB、エポチロンD、リン酸エストラムスチン(estramucinphosphate)、エストロゲン、エチニルエストラジオール(ethinylestradiole)、エトポシド、フラボピリドール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ホスフェストロール、フラゾリドン、ゲムシタビン、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシカルバミド、ヒドロキシメチルニトロフラントイン、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート(hydroxyprogesteronecaproat)、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イドクスウリジン、イホスファミド、インターフェロンγ、イリノテカン、ロイプロリド、ロムスチン、ラルトテカン(lurtotecan)、マフェニドスルフェートオラミド(mafenide sulfate olamide)、メクロレタミン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール(megastrolacetate)、メルファラン、メパクリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトロニダゾール、ミトマイシンC、ミトポドジド、ミトタン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、ナリジクス酸、ニフラテル、ニフロキサジド、ニフララジン(nifuralazine)、ニフルチモックス、ニムスチン、ニモラゾール(ninorazole)、ニトロフラントイン、ナイトロジェンマスタード、オレオムシン(oleomucin)、オキソリニン酸、ペンタミジン、ペントスタチン、フェナゾピリジン、フタリルスルファチアゾール、ピポブロマン、プレドニムスチン、プレドニゾン、プレウシン(preussin)、プロカルバジン、ピリメタミン、ラルチトレキセド、ラパマイシン、ロフェコキシブ、ロシグリタゾン、サラゾスルファピリジン、塩化アクリフラビニウム(scriflaviniumchloride)、セムスチン、ストレプトゾシン(streptozocine)、スルファカルバミド、スルファセタミド、スルファクロルピリダジン(sulfachlopyridazine)、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファエチドール、スルファフラゾール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、コトリモキサゾール、スルファメトキシジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファチアゾール、スルフイソミジン、スタウロスポリン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、ターチポシド(tertiposide)、テストラクトン、プロピオン酸テストステロン(testosteronpropionate)、チオグアニン、チオテパ、チニダゾール、トポテカン、トリアジコン、トレオスルファン、トリメトプリム、トロホスファミド、UCN−01、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、及びゾルビシン、又はそのそれぞれの誘導体若しくは類似体である。上で示した薬剤の幾つかは、ここではがん療法のために同時に投与されるので、2つ以上の細胞分裂抑制薬及び/又は細胞傷害薬が本発明の組成物中に含まれ得ることも想定される。
【0110】
上で言及したように、HIF阻害剤はがん細胞を化学療法及び放射線療法に対してより脆弱にする。したがって、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害を効果的に治療するために、本発明の化合物を他の活性な薬剤(medicinal agents)と同時に投与することができ、及び/又は他の抗がん療法、抗腫瘍療法若しくは抗増殖性疾患療法と併せて投与することができる。一態様では、本発明は、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害を治療する方法であって、放射線療法、化学療法、免疫療法、レーザー/マイクロ波温熱療法、又はアンチセンスDNA及びRNAを使用する遺伝子療法(例えばMoeller et al., Cancer Cell 2004 5429-441を参照されたい)を患者が受ける前に、受ける間に、及び/又は受けた後に、上記患者に対して本発明による化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0111】
さらなる一態様では、本発明は、既に上で概説したように、炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、例えば糖尿病性網膜症、虚血性再かん流傷害、虚血性心筋四肢疾患(ischemic myocardial and limb disease)、虚血性脳卒中、敗血症及び敗血性ショック(例えばLiu FQ, et al., Exp Cell Res. 2008 Apr 1;314(6): 1327-36を参照されたい);並びに病態生理学的な過剰血管新生を特徴とする疾患、例えば骨肉腫における血管形成(例えばYang, Qing-cheng et al., Dier Junyi Daxue Xuebao(2008), 29(5),504-508を参照されたい)、黄斑変性、特に加齢性黄斑変性及び血管増殖性網膜症(例えばKim JH, etal., J Cell Mol Med. 2008 Jan 19を参照されたい)からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防のための薬物の調製のための本発明による化合物又は本発明による組成物の使用を提供する。
【0112】
既に上で言及したように、HIF阻害剤、例えば本発明の化合物は炎症性疾患又は炎症性障害を治療するのに有用である。例えば、酸素依存性HIFアイソフォームが乾癬皮膚で強く上方調節されることが示された(例えばRosenberger C, et al., J Invest Dermatol. 2007 Oct; 127(10):2445-52を参照されたい)。さらにHIF阻害剤、ネオバスタット(neovastat)が喘息における気道炎症を阻害することが示された(例えばLee SY,et al., Vascul Pharmacol. 2007 Nov-Dec; 47(5-6):313-8を参照されたい)。さらに、最近の証拠により、HIFが低酸素条件下での関節リウマチにおける関節の炎症及び破壊に関与することも示されている(例えば、Ahn, J. K., et al., Rheumatology(Oxford, UnitedKingdom)(2008), 47(6), 834-839を参照されたい)。したがって、本発明の使用の好ましい一実施形態では、炎症性疾患は、アテローム動脈硬化症、関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患、乾癬、特に尋常性乾癬、頭部乾癬(psoriasis capitis)、滴状乾癬、屈側性乾癬(psoriasis inversa);神経皮膚炎;魚鱗癬(ichtyosises);円形脱毛症;全頭脱毛症;亜全頭脱毛症(alopeciasubtotalis);全身脱毛症;びまん性脱毛症(alopecia diffusa);アトピー性皮膚炎;皮膚の紅斑性狼瘡;皮膚の皮膚筋炎;アトピー性湿疹;モルヘア;強皮症;蛇行型円形脱毛症;アンドロゲン性脱毛症;アレルギー性皮膚炎;刺激性接触皮膚炎;接触皮膚炎;尋常性天疱瘡;落葉状天疱瘡;増殖性天疱瘡;瘢痕性粘膜類天疱瘡;水疱性類天疱瘡;粘膜類天疱瘡;皮膚炎;ジューリング疱疹状皮膚炎;じんま疹;リポイド類壊死症;結節性紅斑;単純性痒疹;結節性痒疹;急性痒疹;リニアIgA皮膚症;多形性光皮膚症;日光性紅斑;皮膚の発疹;薬疹;慢性進行性紫斑;異汗性湿疹(dihydroticeczema);湿疹;固定薬疹;光アレルギー性皮膚反応;及び口囲皮膚炎(perioraledermatitis)からなる群から選択される。したがって、本発明のさらなる好ましい一実施形態は、1つ又は複数の本発明の化合物とこのような炎症性疾患又は炎症性病態を治療するのに現在使用されている薬物療法(medication)との組合せを包含し、この組合せは薬理科学分野の当業者により決定することができる。組合せに関するこのような治療法は、例えば抗炎症性ステロイド、抗酸化剤、炎症プロセスと関連する或る特定のサイトカイン若しくは細胞エピトープを捕捉する若しくはこれらと結合する治療抗体若しくは融合タンパク質、又はメトトレキサートのようなジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤の群から選択することができる。
【0113】
本発明の化合物は抗増殖効果を示す。さらに、HIF阻害剤、例えば本発明の化合物は、様々ながん疾患の治療に効果的な薬物である(例えばGregg L. Semenza, Nature Reviews, Oct. 2003, vol. 3による総説、及びまたN.J. Mabjeesh et al., Histol. Histopathol(2007), 22:559-572による総説を参照されたい)。したがって、過剰増殖性疾患が腫瘍疾患又はがん疾患、前癌状態、異形成、組織球増殖症、血管増殖性疾患、及びウイルス誘導性増殖性疾患からなる群から選択される、本発明の使用も好ましい。したがって、本発明の使用の好ましい一実施形態では、過剰増殖性疾患は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、T細胞リンパ腫又は白血病、例えば皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)と関連するリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、及び急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病(acute myeloid leukemia)、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病(chronicmyelogenous leukemia)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、中皮腫、小児固形腫瘍、神経膠腫、骨がん及び軟部組織肉腫、成人の一般的な固形腫瘍、例えば頭頚部がん(例えば口腔がん、喉頭がん及び食道がん)、尿生殖器がん(例えば前立腺がん、膀胱がん、腎(renal)がん(特に悪性の腎細胞癌(RCC))、子宮がん、卵巣がん、精巣がん、直腸がん及び結腸がん)、肺がん(例えば小細胞癌及び非小細胞肺癌、例えば扁平上皮癌及び腺癌)、乳がん、膵臓がん、黒色腫及び他の皮膚がん、基底細胞癌、転移性皮膚癌、潰瘍型及び乳頭型の両方の扁平上皮癌、胃がん、脳がん、肝臓がん、副腎(adrenal)がん、腎臓(kidney)がん、甲状腺がん、髄様癌、骨肉腫(osteosarcoma)、軟部組織肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫(veticulum cell sarcoma)、及びカポジ肉腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫(osteogenic sarcoma)、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、精上皮腫、胚性癌、ウイルムス腫瘍、小細胞肺癌、上皮癌、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、緑内障、血管腫、重鎖病並びに転移からなる群から選択される腫瘍疾患又はがん疾患である。
【0114】
本発明の化合物により治療可能な前癌状態は好ましくは、皮膚の前癌状態、特に光線角化症、皮角(cutaneaous horn)、光線口唇炎、タール角化症、ヒ素角化症、X線角化症、ボーエン病、ボーエン様丘疹症、悪性黒子、硬化性苔癬及び粘膜紅色苔癬(lichen rubbermucosae);消化管の前癌状態、特に紅板症、白板症、バレット食道、プランマー・ヴィンソン症候群、下腿潰瘍(crural ulcer)、巨大肥厚性胃炎(gastropathiahypertrophica gigantea)、境界型癌(borderline carcinoma)、新生物性腸ポリープ、直腸ポリープ、陶器様胆嚢;婦人科前癌状態、特に乳管上皮内癌(carcinomaductale in situ)(CDIS)、子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)、白板症、子宮内膜増殖症(グレードIII)、外陰ジストロフィー、外陰上皮内腫瘍(VIN)、胞状奇胎;泌尿器前癌状態、特に膀胱乳頭腫、ケイラー赤色肥厚症、精巣上皮内腫瘍(TIN)、白板症;上皮内癌(CIS);慢性炎症により引き起こされる前癌状態、特に膿皮症、骨髄炎、集簇性ざ瘡、尋常性狼瘡及び瘻孔からなる群から選択される。
【0115】
異形成はがんの前兆であることが多く、例えば上皮中に見出され得る。異形成は非新生物性細胞成長の最も無秩序な形態であり、個々の細胞の均一性、及び細胞の構造的配向(architectural orientation)の喪失を伴う。異形成細胞は多くの場合、異常に大きな濃く染まった核を有し、多形性を示す。異形成は、慢性の刺激又は炎症が存在する場所で発生することを特徴とする。本発明の化合物により治療することができる異形成障害としては、無汗性外胚葉異形成、前後異形成、窒息性胸郭異形成、心房指異形成(atriodigital dysplasia)、気管支肺異形成、脳異形成、子宮頚部異形成、軟骨外胚葉異形成、鎖骨頭蓋異形成、先天性外胚葉異形成、頭蓋骨幹異形成、頭蓋手根足根骨異形成、頭蓋骨幹端異形成、象牙質異形成、骨幹異形成、外胚葉異形成、エナメル質異形成、脳眼異形成、半肢骨端異形成(dysplasiaepiphysialis heminelia)、多発性骨端異形成、点状骨端異形成(dysplasia epiphysalis punctata)、上皮異形成、顔面指趾生殖器異形成、下顎の家族性線維性異形成、家族性白色襞性異形成、線維筋性異形成、線維性骨異形成、開花性骨異形成、遺伝性腎−網膜異形成、発汗性外胚葉異形成、発汗減少症性外胚葉異形成、リンパ球減少性胸腺異形成、乳腺異形成、下顎顔面異形成、骨幹端異形成(metaphysicaldysplasia)、モンディーニ型内耳異形成、単骨性線維性骨異形成、粘膜上皮異形成、多発性骨端異形成、眼耳脊椎異形成、眼歯指異形成、眼脊椎異形成、歯原性異形成、眼下顎四肢異形成、根尖性セメント質異形成、多発性線維性骨異形成、偽軟骨発育不全脊椎骨端異形成、網膜異形成、中隔視神経異形成、脊椎骨端異形成、及び心室橈骨異形成が挙げられるがこれらに限定されない。
【0116】
エストロゲン受容体は、ホルモン17β−エストラジオール(エストロゲン)により活性化される受容体群を表す。2つのタイプのエストロゲン受容体が存在する:細胞内受容体の核ホルモンファミリーの成員であるER、及びGタンパク質共役受容体であるエストロゲンGタンパク質共役受容体GPR30(GPER)。エストロゲン及びエストロゲン受容体は、乳がん、卵巣がん、結腸がん、前立腺がん及び子宮内膜がん、並びに他の疾患に関与している。本発明の化合物はエストロゲン受容体に媒介される転写活性を阻害することができるため、上記疾患を治療するのに使用することができる。
【0117】
したがって、さらなる好ましい一実施形態では、本発明に従って治療可能な過剰増殖性障害は、エストロゲン受容体シグナル伝達を低減させることによる利益を受ける障害、すなわち健常な組織と比較して増大したエストロゲン受容体シグナル伝達と関連する障害である。本発明の化合物のこの特定の適合性は、潜在的に細胞複製を阻害することを通じて、また可能性としては本発明の化合物の付加的な活性を通して、本発明の化合物がエストロゲン受容体シグナル伝達の阻害をもたらすという事実に基づいている。したがって、治療することのできる好ましい疾患、病態及び/又は障害は、乳腫瘍、子宮内膜腫瘍及び子宮の腫瘍からなる群から選択される。疾患がエストロゲン受容体活性の増大と関連するか否かは、以下の実験部でより詳細に説明されるように、様々な当該技術分野で既知の方法、例えば、発現タンパク質の量を決定する例えば免疫学的方法による疾患組織におけるER発現レベルの決定により、転写ERをコードする核酸の量を決定する方法、例えばRT−PCR、ノーザンブロット法、核ランオン(nuclear run-ons)等により、及び検出可能なレポーター、例えばCAT、ルシフェラーゼ、GFP等の発現を駆動するER受容体認識要素を含む核酸構築物の活性を決定する方法により、測定することができる。好ましくは、エストロゲン受容体シグナル伝達を低減させることによる利益を受ける障害は、健常な組織と比較して疾患組織(tisse)で少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%のエストロゲン受容体シグナル伝達の増大を示す障害である。好ましくはこの増大は、ER受容体認識要素を含む核酸、及びこの要素により駆動されたレポーターの発現の増大に基づき測定する。
【0118】
細胞複製の阻害を通して作用する、エストロゲン受容体シグナル伝達のアンタゴニストとしての治療的使用では、本発明の使用に利用される化合物を1日約0.02mg/kg〜約20mg/kgの初期投与量で投与する。約0.05mg/kg〜約2mg/kgの1日用量範囲が好ましく、約0.05mg/kg〜約1mg/kgの1日用量範囲が最も好ましい。しかしながら、投与量は患者の要求、治療される病態の重症度、及び利用される化合物に応じて変わり得る。特定の状況に関する適切な投与量の決定は実務家(practitioner)の技能の範囲内である。一般的には、治療は化合物の最適用量未満のより少ない投与量で開始する。その後、環境下で最適な効果が達成されるまで、投与量を少しずつ増大させる。便宜上、1日投与量全体を必要に応じて1日の間で何回かに分けて投与することができる。
【0119】
塩/エステル
本発明に有用な組成物内の化合物又は本発明に有用な化合物は、塩又はエステル、特に薬学的に許容可能な塩又はエステルとして存在し得る。本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩としては、好適な酸付加塩又はその塩基性塩が挙げられる。好適な薬学的な塩のレビュー(review)は、Berge et al, J Pharm Sci, 66,1-19(1977)に見ることができる。塩は、例えば鉱酸等の無機強酸、例えば硫酸、リン酸若しくはハロゲン化水素酸によって;有機強カルボン酸、例えば置換されていない若しくは(例えばハロゲンにより)置換された、1個〜4個の炭素原子を有するアルカンカルボン酸、例えば酢酸によって;飽和若しくは不飽和のジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸若しくはテトラフタル酸によって;ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸若しくはクエン酸によって;アミノ酸、例えばアスパラギン酸若しくはグルタミン酸によって;安息香酸によって;又は有機スルホン酸、例えば置換されていない若しくは(例えばハロゲンにより)置換された、(C〜C)−アルキル−スルホン酸若しくはアリール−スルホン酸、例えばメタン−スルホン酸若しくはp−トルエンスルホン酸によって形成される。
【0120】
エステルは、エステル化される官能基に応じて有機酸又はアルコール/水酸化物を用いて形成される。有機酸としては、カルボン酸、例えば置換されていない若しくは(例えばハロゲンにより)置換された、1個〜12個の炭素原子を有するアルカンカルボン酸、例えば酢酸;飽和若しくは不飽和のジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸若しくはテトラフタル酸;ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸若しくはクエン酸;アミノ酸、例えばアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;安息香酸;又は有機スルホン酸、例えば置換されていない若しくは(例えばハロゲンにより)置換された、(C〜C)−アルキル−スルホン酸若しくはアリール−スルホン酸、例えばメタン−スルホン酸若しくはp−トルエンスルホン酸が挙げられる。好適な水酸化物としては、無機水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムが挙げられる。アルコールとしては、置換されていなくてもよく若しくは(例えばハロゲンにより)置換されていてもよい、1個〜12個の炭素原子を有するアルカンアルコールが挙げられる。
【0121】
同位体
本発明の化合物は、このような化合物を構成する1つ又は複数の原子に関する、非天然の割合の原子同位体を含有してもよい。本発明の作用因子又はその薬学的に許容可能な塩の変動同位体(isotopic variation)は、少なくとも1つの原子が、同じ原子番号を有するが通常自然に見られる原子質量と異なる原子質量を有する原子に置き換わったものと規定される。該作用因子及びその薬学的に許容可能な塩に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体、例えばそれぞれH、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Clが挙げられる。該作用因子及びその薬学的に許容可能な塩の或る特定の変動同位体、例えば、放射性同位体、例えばH又は14Cが組み込まれたものが、薬剤及び/又は基質の組織分布研究に有用である。トリチウム化した、すなわちHの、及び炭素−14、すなわち14Cの同位体がその調製のしやすさ及び検出能から特に好ましい。さらに、同位体、例えばデュートリウム、すなわちHによる置換は、代謝安定性の増大に起因する或る特定の治療的利点、例えばin vivo半減期の増大、又は投薬要件の低減をもたらすことができ、そのため或る環境下で好まれ得る。本発明の作用因子及び本発明のその薬学的に許容可能な塩の変動同位体は一般的に、好適な試薬の適切な変動同位体を用いて、従来の手順により調製することができる。
【0122】
本発明の化合物及び組成物の変動同位体は全て、放射性を有するか否かにかかわらず、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0123】
溶媒和物
本発明は、本発明に有用な一般式(I)〜一般式(III)のいずれかによる組成物又は化合物の中に化合物の溶媒和物形態も含む。特許請求の範囲で使用されるこの用語はこれらの形態を包含する。
【0124】
多形(Polymorphs)
本発明はさらに、様々な結晶形態、多形形態及び水和(又は無水)形態の、本発明に有用な本発明の組成物内の化合物又は式(I)による化合物に関する。化学的な化合物を、このような化合物の合成的な調製に用いられる溶媒からの(form)精製及び/又は単離方法をわずかに変更することによりこのような形態のいずれかで単離することができることが製薬業界内で十分に確立されている。
【0125】
投与
本発明による化合物を、経口投与、直腸投与、胃内投与、頭蓋内投与、並びに非経口投与、例えば静脈内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、皮内投与、皮下投与及び同様の投与の経路を含む様々な既知の経路により投与することができる。非経口投与及び特定の静脈内投与(好ましくはデポー注射による)が好ましい。投与経路に応じて、種々の薬学的配合物が要求され、それらの中でも幾つかは、例えば消化管における本発明の化合物の分解を防止するために薬剤配合物に保護コーティングを塗布することを要求し得る。
【0126】
したがって、好ましくは、本発明の化合物を、シロップ、注入溶液若しくは注射溶液、錠剤、カプセル、カプレット(capslet)、トローチ剤、リポソーム、坐剤、硬膏、絆創膏、遅延型カプセル、粉末又は遅延放出配合物として配合する。好ましくは希釈剤は水、緩衝液、緩衝塩溶液又は塩溶液であり、担体は好ましくはココアバター及びビテベソール(vitebesole)からなる群から選択される。
【0127】
本発明の化合物の投与のための特定の好ましい医薬品形態は、注射使用に好適な形態であり、滅菌水溶液又は滅菌分散液、及び滅菌注射溶液又は滅菌注射分散液の即席調製のための滅菌粉末を含む。全ての場合において、最終的な溶液形態又は分散液形態は滅菌されており、かつ流体でなければいけない。典型的には、このような溶液又は分散液は、例えば水緩衝水溶液、例えば生体適合性緩衝液、エタノール、ポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、その好適な混合物、界面活性剤又は植物油を含有する溶媒又は分散媒を含む。本発明の化合物は、特に非経口投与のためにリポソーム中に配合することもできる。リポソームにより、遊離型薬剤と比較した場合の循環中の半減期の増大、及び封止型薬剤の持続的なより多くの放出という利点がもたらされる。
【0128】
注入溶液又は注射溶液の滅菌は、抗細菌剤又は抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸又はチメロサール(thimersal)のような保存料の添加を含むが、これらに限定されない当該技術分野で認識されるあらゆる技法により達成することができる。さらには、等張剤、例えば糖類又は塩類、特に塩化ナトリウムを注入溶液又は注射溶液に組み込むことができる。
【0129】
本発明の化合物を1つ又は幾つか含有する滅菌注射溶液の製造は、要求される量で各化合物を要求されるような上で列挙された様々な成分を有する適切な溶媒に組み込み、その後滅菌することにより達成される。滅菌粉末を得るために、上記溶液を必要に応じて真空乾燥又は凍結乾燥する。本発明の好ましい希釈剤は、水、生理学的な許容可能な緩衝液、生理学的な許容可能な緩衝塩溶液又は塩溶液である。好ましい担体はココアバター及びビテベソールである。既に上で言及された好ましい賦形剤の他に、以下の賦形剤も様々な医薬品形態の本発明の化合物と共に使用するために選択することができるが、これらに限定されない:
a)結合剤、例えばラクトース、マンニトール、結晶性ソルビトール、二塩基性リン酸塩、リン酸カルシウム、糖類、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等;
b)潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、硬化植物油、ロイシン、グリセリド及びステアリルフマル酸ナトリウム、
c)崩壊剤、例えばデンプン、クロスカルメロース(croscaramellose)、メチルセルロースナトリウム、アガー、ベントナイト、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等。
【0130】
他の好適な賦形剤は、American Pharmaceutical Associationにより刊行された医薬賦形剤のハンドブック(参照により本明細書に援用される)に見ることができる。
【0131】
障害の重症度、及び本発明の化合物のうちの1つで治療可能な特定のタイプに、並びに治療される各患者、例えば患者の一般的健康状態等に応じて、治療効果又は予防効果を誘発するために異なる用量の各化合物が要求されることが理解されるものとする。適切な用量の決定は担当医師の裁量の範囲内である。本発明の治療的使用又は予防的使用における本発明の化合物の平均1日投与量は約0.1mg〜約3gの範囲内であることを考慮する。しかしながら、本発明の好ましい使用において、本発明の化合物を、1.0mg〜1000mgの範囲、好ましくは10mg〜500mgの範囲、好ましくは50mg〜200mgの範囲の量、それを必要とする被験体に投与する。本発明の化合物による治療期間及び投与頻度は、治療される疾患の重症度、並びに各々の個々の患者の病態及び特異的な(idiosyncratic)応答に応じて変わる。
【0132】
当該技術分野で知られるように、所定の組成物の薬学的に効果的な量は投与経路によっても変わる。概して、要求される量は、投与が胃腸管を介する;例えば坐剤による、直腸を介する、又は胃内プローブによるものである場合、より大きく、投与経路が非経口、例えば静脈内である場合、より小さい。典型的には、本発明の化合物は、直腸投与又は胃内投与が用いられる場合、50mg〜3g、好ましくは50mg〜500mgの範囲で、非経口投与が用いられる場合、10mg〜500mgの範囲で、投与する。
【0133】
本発明の化合物により治療可能な障害を発症するリスクを有することが知られている場合、本発明による医薬組成物の予防的投与が可能であり得る。これらの場合において、本発明の化合物をそれぞれ、好ましくは、上で概説した1日当たりの好ましい用量及び特に好ましい用量で投与する。この投与は各障害を発症するリスクが軽減するまで継続することができる。しかしながらほとんどの場合、本発明の化合物を疾患/障害が診断された時点で投与する。これらの場合では、第1の用量の本発明の化合物を1日に1回、2回、3回又は4回投与することが好ましい。好ましくは投与を1日間、1週間又は1ヶ月間中断し、それから各疾患の症状が悪化しなくなるか、又は改善するまで繰り返す。
【0134】
本発明の意義の範囲内で、置換基又は変数の組合せは、このような組合せが安定した又は化学的に実現可能な化合物をもたらす場合にのみ許容される。安定した化合物又は化学的に実現可能な化合物は、水分又は他の化学的に反応性の高い条件の非存在下で少なくとも1週間40℃以下の温度に維持した場合に実質的に変化しない化合物である。本発明は本明細書で開示される化合物の任意の塩基性の窒素含有基の四級化も想定している。水溶性若しくは油溶性、又は水分散性若しくは油分散性の生成物をこのような四級化により得ることができる。
【0135】
本発明の様々な変更形態及び変形形態が、本発明の範囲を逸脱することなく当業者にとって明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態との関連で説明しているが、特許請求される本発明はこのような特定の実施形態に過度に限定されないとすることを理解されたい。実際、関連分野の当業者にとって明らかである、本発明を実施するために記載された形態の様々な変更形態が、本発明に含まれることが意図される。
【0136】
以下の実施例及び図面は本発明の単なる例示にすぎず、添付の特許請求の範囲により示されるような本発明の範囲を限定するものとしては決して解釈すべきではない。
【実施例】
【0137】
実験部
実施例で使用される全ての出発物質は市販されているか、又は有機化学の訓練を受けた平均的な当業者により、例えば実施例1で概説されるような日常的な研究作業により不当な負担なく合成され得る。
【0138】
実施例1で与えられる指針の他に、式I〜式IIIの化合物の合成に、及び式I〜式IIIの化合物の合成に関与する中間体の合成に利用することができる代替的な合成的変換が、当業者にとって既知であるか、又は当業者が容易に知ることができる。合成的変換のコレクションは、資料、例えばJ. March. Advanced Organic Chemistry, 4th ed.;John Wiley : New York(1992) R. C. Larock. Comprehensive OrganicTransformations, 2nd ed.;Wiley-VCH : New York(1999);F. A. Carey;R. J. Sundberg. Advanced OrganicChemistry, 2nd ed.;Plenum Press : New York(1984) T. W.Greene;P. G. M. Wuts. Protective Groups in OrganicSynthesis, 3rd ed.;John Wiley : New York(1999). L. S.Hegedus. Transition Metals in the Synthesis of Complex Organic Molecules, 2nded.;University Science Books: Mill Valley, CA(1994) L.A. Paquette, Ed. The Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis ;John Wiley : New York(1994). A. R. Katritzky;O. Meth-Cohn;C. W. Rees, Eds. ComprehensiveOrganic Functional Group Transformations;Pergamon Press: Oxford, UK(1995). G. Wilkinson;F. G A. Stone;E. W. Abel, Eds. Comprehensive Organometallic Chemistry;Pergamon Press : Oxford, UK(1982). B. M.Trost;I. Fleming. Comprehensive Organic Synthesis;Pergamon Press : Oxford, UK(1991) A. R. Katritzky;C. W. Rees Eds. Comprehensive Heterocylic Chemistry;Pergamon Press : Oxford, UK(1984) A. R.Katritzky;C. W. Rees;E. F. V.Scriven, Eds. Comprehensive Heterocylic Chemistry;PergamonPress : Oxford, UK(1996). C. Hansch;P. G. Sammes;J. B. Taylor, Eds.Comprehensive Medicinal Chemistry : Pergamon Press: Oxford, UK(1990)に見ることができる。
【0139】
加えて、合成方法論及び関連のトピックのレビューの繰り返し(recurring)としては、Organic Reactions;John Wiley : New York;Organic Syntheses;John Wiley : New York;Reagents for OrganicSynthesis : John Wiley : New York;The Total Synthesisof Natural Products;John Wiley : New York;The Organic Chemistry of Drug Synthesis;JohnWiley : New York;Annual Reports in Organic Synthesis;Academic Press : San Diego CA;及びMethoden derOrganischen Chemie(Houben-Weyl);Thieme : Stuttgart, Germanyが挙げられる。さらに、合成的変換のデータベースとしては、CAS OnLine又はSciFinderのいずれかを用いて検索することができるChemical Abstracts、SpotFireを用いて検索することができるHandbuch der Organischen Chemie(Beilstein)、及びREACCSが挙げられる。
【0140】
本明細書の化合物は、ISIS/Draw Add−Inに関するAutoNom Standardソフトウェアを用いて、IUPAC規格(standard)に従って命名した。
【0141】
実施例1:本発明の化合物の合成
本発明による一般式(I)〜一般式(III)の化合物を例えば以下のスキームに従って調製することができる:
【0142】
【化12】

【0143】
【化13】

追加の工程
【0144】
式中、R〜Rは特許請求の範囲において規定されるようなものであるか、又は本明細書で規定のような特に好ましい意味を有し、RxはH及び/又はピナコラトである。
【0145】
上に示された一般的な反応スキームは以下の通りである:
【0146】
一般的手順A。1:1(v/v)のトルエン/MeOH中に誘導体1(1.0当量)、Pd(dppf)Cl・CHCl(0.1当量)及び対応するヘテロ芳香族又は芳香族のボロン酸又はボロン酸エステル(1.2当量)の入ったフラスコを激しく攪拌しながらNでパージし、2.0MのKCO水溶液(2.5当量)をゆっくりと添加した。混合物を90℃で4時間加熱した。冷却後、混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/ヘプタン、1:5から1:3へ)により精製し、誘導体2を得た(収率43%〜68%)。
【0147】
一般的手順B。CHCl中にアニリン誘導体1又はアニリン誘導体2(1.0当量)、対応する塩化スルホニル(1.1当量)及びピリジン(10当量)の入ったフラスコを室温で12時間攪拌した。混合物を濃NHCl水溶液で抽出し、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。有機溶媒を蒸発させ、粗生成物を分取HPLCにより又はフラッシュカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/ヘプタン)により精製し、誘導体3又は誘導体4を得た(70%〜定量的な収率)。
【0148】
一般的手順C。乾燥MeOH中に誘導体4(1.0当量)、Pd(dppf)Cl・CHCl(0.1当量)及び対応するヘテロ芳香族又は芳香族のボロン酸又はボロン酸エステル(1当量)の入った2ml〜5ml容のマイクロ波反応容器を激しく攪拌しながらNでパージし、2.0MのKCO水溶液(2.5当量)をゆっくりと添加した。容器に封をし、混合物をマイクロ波オーブンで90℃で30分間加熱した(CEM Discover Microwave system、Pmax=150Wに設定した)。冷却後、混合物をCHClで希釈し、セライトに通して濾過して、CHClで溶出した。有機溶媒を蒸発させ、粗生成物を分取HPLCにより又はフラッシュカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/ヘプタン)により精製し、誘導体3を得た(収率42%〜90%)。
【0149】
一般的手順D。アプローチ2は、示されるような追加の工程を任意に含んでいてもよい。ビスピナコラトジボロン(2.5当量)、Pd(dppf)Cl・CHCl(0.1当量)及びKOAc(3.0当量)を脱気した1,4−ジオキサン中に化合物4(1.0当量)を含有するフラスコに添加した。反応混合物を95℃に加熱し、4時間攪拌した。完了後、反応混合物をEtOAc(50ml)で希釈し、シリカゲルの短いカラムに通して濾過して、EtOAcでさらに溶出した。組み合わせた有機溶媒をHO及びブラインで洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、真空濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/ヘプタン、1:3)により精製し、クリーム又は白色固体としてボロン酸エステル5を得た(収率50%〜88%)。その後の工程で、化合物5をヘテロ芳香族又は芳香族の臭化物で変換し、手順A又は手順Cの後に誘導体3を得た。
【0150】
置換基R及び/又はR(アプローチ1又はアプローチ2に従い合成を行った場合、不要な反応を受ける可能性がある)を、アプローチ1又はアプローチ2による反応時には切断されないが既知の条件下で切断可能である従来の保護基により保護することができる。当業者は有機合成に利用することができる様々な保護基を知っている。保護基は例えば、Wuts, P.G.M. and Greene, T.W., Protective Groups in Organic Chemistry,3rd Ed., 1999;Wily & Sons Inc. and inKocienski, P.J., Protecting groups; 2nd Ed., 2000, Thieme MedicalPublishingにレビューされている。保護基は、保護される官能基に関して及び各保護基を選択的に除去する条件に関して、これらの参考文献で体系付けられている。使用することができる特に好ましい保護基は以下の通りである:
(i)酸性条件で、好ましくは4〜6のpHで除去される保護基(Boc又はトリチル保護基からなる群から選択される);
(ii)求核試薬により除去される保護基(Fmoc又はDde保護基からなる群から選択される);
(iii)水素化分解により除去される保護基(アリル型、tert−ブチル型、ベンジル型又はDmab(4−{N−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)−3−メチルブチル]アミノ}ベンジルエステル)からなる);
(iv)放射線により除去される保護基(ニトロベラトリルオキシカルボニル、ニトロベンジルオキシカルボニル、ジメチルジメトキシベンジルオキシカルボニル、5−ブロモ−7−ニトロインドリニル、o−ヒドロキシ−α−メチルシンナモイル及び2−オキシメチレンアントラキノンからなる群から選択される)。
【0151】
構成要素の合成
トルイジン構成要素(1)は、市販されているが、上で引用された文献に記載され、有機合成分野の通常の技術を有する者(当業者)に通常既知である標準的な官能化プロトコル又は変換プロトコルに従って合成することもできる。
【0152】
パラジウムで触媒されるカップリング反応に関する手順A及び手順Cに有用な多くの芳香族又はヘテロ芳香族のボロン酸又はボロン酸エステルは、市販されているか、又は上で引用された文献に記載され、有機合成分野の通常の技術を有する者(当業者)に通常既知である標準的な官能化プロトコル若しくは変換プロトコルに従って合成することができる。特に、このようなボロン酸/ボロン酸エステル中間体を、手順Dに例示されるように例えばそれらの対応する芳香族又はヘテロ芳香族のハロゲン化物前駆体から生成することができる。
【0153】
手順Bで使用され、そこではスルホニルクロリドで例示されたような多くの5員及び6員のヘテロ芳香族スルホン酸及びそれらの対応する活性化誘導体は、市販されているか、又は上で引用された文献に記載され、有機合成分野の通常の技術を有する者(当業者)に通常既知である標準的な官能化プロトコル若しくは変換プロトコルに従って合成することができる(具体的な方法が、例えば以下で説明されている:Caldwell, WT et al., J. Med. Chem.(1962), Vol.6,, p.58 ff;Caldwell, WT et al., JACS(1959), Vol.81, p.5166 ff;Roblin, RO et al., JACS(1950), Vol.72, p.4890 ff;Hitoshi K et al.、米国特許第5,811,571号(1998);国際公開第2006/090244号、p.38 ff;Janosik T et al., THL(2006), Vol.62,p.1699 ff;Allred GD, SERMACS(2007), Lanny LiebeskindCope Scholar Award Symposium II, 222. Sulfonyl Fluorides;及びその中で引用される参考文献)。必要に応じて、対応するチオールから直接、スルホンアミド3及び/又はスルホンアミド4を生成することも可能である(Wright SW et al., JOC(2006), Vol.71, p.1080 ff)。
【0154】
実施例2:本発明の化合物のHPLC/MS分析
化合物を以下の通り分析した:
最初の99:1から9.10分かけて1:99へと、その後1.80分間保持した線形勾配(水:アセトニトリル、調整剤(modifier)として0.2%ギ酸)によって、1.75ml/分の流速でWatersのX−bridge C18−カラム(粒径5μm、4.6×150mm(直径×長さ)を用いてHPLC/MSにより測定した。質量シグナルをWatersの3100 Mass Detectorを用いて決定した。
【0155】
実施例3:一般的な細胞培養物の維持及び細胞増殖アッセイ
MCF−7ヒト乳腺癌細胞をATCC(LGC Promochem)から入手した。CellSensor(登録商標)HRE−bla HCT116細胞株(結腸直腸癌)をInvitrogenから入手した。
【0156】
細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン、並びに選択マーカーとして5μg/mlのブラストサイジン(HRE−bla HCT116細胞株のみに対して)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM:MCF−7)又はマッコイ5A培地(HRE−bla HCT116)中、加湿(95%)空気、5% CO下37℃で成長させた。
【0157】
100μlの関連培地中に1ウェル当たり2000個の細胞で播種して、細胞増殖実験を96ウェル組織培養プレートにおいて行った。その後細胞を、化合物を添加する前に24時間、言及した条件下でインキュベートした。
【0158】
細胞増殖の阻害の程度を決定するために、細胞を製造業者の取扱説明書に従ってATPlite溶液で処理し(PerkinElmer、ATPlite 1−step Luminescence ATP Detection Assay System)、ルシフェラーゼ表示値を、確立されたプロトコルに従い発光モードのEnvision HTSマルチラベルプレートリーダー(PerkinElmer)により測定した。生データをActivityBaseデータベース(IDBS,ID Business Solutions)にインポートし、EC50値をIDBSのプログラムActivityBase XEを用いて算出した。表2は、本発明の例示的な化合物に対して上で概説した細胞増殖アッセイで得られたIC50値を示す。細胞増殖アッセイデータは、本発明の化合物ががん細胞株における細胞増殖を阻害することができることを示す。
【0159】
参照:EC50<500nM: +++
500nM〜1000nM:++
1μM〜10μM: +
【0160】
【表2】



表中英語(Example no.:実施例番号、IUPAC名:IUPAC名、Retantion time:保持時間、Mass spec.:質量分析、tubulin inhib.(at 10μM):チューブリン阻害(10μMで)、HIF assay:HIFアッセイ)
「*」を付した保持時間は、実施例2で与えられたものの代替的な方法を用いて測定した。これらの保持時間を以下の通りに決定した:
最初の99:1から9.10分かけて1:99へと、その後1.80分保持した線形勾配(水:メタノール、調整剤として0.2%ギ酸)によって、1.75ml/分の流速でWatersのX−bridge C18−カラム(粒径5μm、4.6×150mm(直径×長さ)を用いてHPLC/MSにより測定した。質量シグナルをWatersの3100 Mass Detectorを用いて決定した。

【0161】
実施例4:in vitroでのチューブリン重合の阻害
in vitroでのチューブリン重合の阻害の程度を評価するために、チューブリン溶液(重合/脱重合のサイクルを伴う標準的な手順を用いてブタ脳から自家(in-house)調製した(Castoldi & Popov(2003)Protein Expr. Purif. 32(1):83-88を参照されたい)を重合条件下で様々な濃度の化合物と共にインキュベートし、90分の期間にわたり生じる重合の量(340nmでのOD変化により測定されるような)を決定するために、反応速度実験を行なった。
【0162】
化合物溶液を再蒸留水で希釈し、5% DMSOを含有する10×溶液を最終的に得た。それから5μlの溶液を、チューブリンの添加に備えて384ウェルの底が透明な(clear-bottom)プレート(Corning番号3711、Corning Inc.)上のウェルに添加した。チューブリン溶液(80mMのK−PIPES[pH6.8](1mMのMgCl、1mMのEGTA)中、19.6mg/ml)を4mg/mlの最終濃度まで氷冷G−PEM緩衝液(80mMのPIPES[pH6.8]、2mMのMgCl、0.5mMのEGTA、10%グリセロール、1mMのGTP)で再懸濁し、少なくとも1分間氷上で維持した。それから50μlを予め分注した化合物溶液に添加し、プレートを5秒に設定して(setting for 5s)培地においてオービタルシェイカーにより振盪して(orbitalshaken)、直ちに第1の測定を開始した。
【0163】
実験を37℃の安定した温度に予め設定したSafire(商標)モノクロメーター(Tecan)で行い、重合の程度を90分のサイクルにわたって1分毎に340nmでの溶液の吸光度を測定することにより決定した。報告された阻害値は90分での最終的な吸光度に基づいており、この試料で得られた最小シグナル及び最大シグナルを用いて、ビヒクル対照(0.5% DMSO)を参照して算出した。
【0164】
これらの実験により実証されるように(表2を参照されたい)、様々な実施例の構造特性の変化により、細胞増殖を阻害する上で活性を有し、HIF−シグナル伝達に影響を与えるが、チューブリン阻害特性を、標的となる生成物プロファイルにおいて望まれるか否かに応じて有する又は有しない化合物の選択を導くことができる。
【0165】
参照:10μMでの阻害>50%: +
20%〜50%:+/−
<20%: −
【0166】
実施例5:低酸素条件下でのHIFに媒介される転写の活性化の阻害
化合物処理による化学的に誘導された低酸素条件下での活性化したHIFシグナル伝達応答の阻害を、製造業者の取扱説明書に従ってInvitrogenのCellSensor(登録商標)HRE−bla HCT−116の安定してトランスフェクトしたレポーター細胞株を用いて決定した。HIFは、構成的に発現したHIF1βサブユニットと3つのHIFαサブユニット(HIF1α、HIF2α、HIF3α)のうちの1つとからなる転写因子である。このアッセイは、概してHIFα活性に対して応答性である。一例では、HIF−1は低酸素条件により安定化される場合、幾つかの遺伝子を上方調節し、低酸素条件下での細胞生存を促進する。これらには、酸素非依存的なATP合成を可能とする解糖酵素、及び血管形成を促進する血管内皮成長因子(VEGF)が含まれる。HIF−1は、配列NCGTGを一般的に含有するプロモーターにおいてHIF応答要素(HRE)と結合することにより作用する。
【0167】
細胞を先に記載のように維持し、32μlのアッセイ培地(Opti−MEM[Invitrogen]、0.5% FBS、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、0.1mMの非必須アミノ酸[NEAA]、1mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのHEPES[pH7.3])中で1ウェル当たり15000個の細胞で384ウェルの底が透明なプレート(Corning 3712)に播種した。2時間のインキュベーション期間後、続いて化合物(4μl)を5% DMSO中で10×濃度で細胞に添加し、30分間通常の条件下でインキュベートした。低酸素条件を誘導するために、2mMのデフェロキサミン(DFO)溶液4μlを細胞に添加し、その後標準的なアッセイ条件下で24時間インキュベートした(記載のように)。対照ウェルは、培地だけしか含有しないウェル(細胞なし)、及び化合物の代わりに0.5% DMSOで処理したウェルを含んでいた。
【0168】
読み出しの前に、基質負荷溶液(Substrate Loading Solution)を製造業者のプロトコルに記載のように調製し、その10μlをそれぞれのウェルに添加した。室温及び暗所でのさらに2時間のインキュベーション後、蛍光をPerkinElmerのEnvision HTSにより2つの波長(青色チャネル:ex.409nm、em.460nm、緑色チャネル:ex.409nm、em.530nm)で測定した。分析のために、青色チャネルデータ及び緑色チャネルデータそれぞれから460nm及び530nmでの細胞を含まないウェルの平均シグナルを初めに減算した。それから青色/緑色の発光比を、バックグラウンド補正した青色発光値をバックグラウンド補正した緑色発光値で除算することでそれぞれのウェルに関して算出した。IC50値を、GraphPad Prism(Prism 5、GraphPad software, Inc.)を用いてこれらの比から決定した。
【0169】
これらの実験の結果(表2を参照されたい)は、本発明の化合物が、低酸素条件下で低酸素調節要素に媒介される転写活性を阻害することができることを示す。本発明の化合物は、従来技術で説明されるHIF−阻害剤化合物、例えば現在臨床試験を受けていることが報告されている唯一の小分子HIF−阻害剤であるProlX化合物PX−478等を超える効力レベルを有する。
【0170】
参照:EC50<500nM: +++
500nM〜1000nM:++
1μM〜10μM: +
【0171】
実施例6:本発明によるさらなる有用な化合物
また表3で例示される化合物が、本発明の範囲内で特に有用である。これらの化合物は、実施例1で概説したように、また上で記載したように有機化学において既知である製造の実施により製造することができる。これらの化合物は、表2で列挙され実施例3〜実施例5で試験した化合物で示されたものと同程度の阻害活性を有する。
【0172】
【表3】







表中英語(Example No:実施例番号、IUPAC name of compound:化合物のIUPAC名)
【0173】
考察
上で記載した実施例で示されたデータから直接的に、本発明の化合物がHIFの機能を阻害すると共に細胞増殖を阻害する共通の特性を有するということになる。したがって、これらの化合物は、炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、及び過剰な血管新生を特徴とする疾患からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防のための治療用化合物として有用である。
【0174】
全ての本発明の化合物が共有する上で記載した有用な特性に加えて、これらの化合物は、チューブリン組織化(organization)の阻害に関して種々の程度の効力も示す。このことは、患者の疾患状態、体質及び遺伝的素因に応じて患者ごとに選択的に投与することができる治療用化合物の提供にある本発明のさらに貴重な貢献を示す。これに関連して、チューブリン阻害剤としてさらなる活性を有する又は有しない本発明の化合物で患者を治療すべきか否かを決めることがさらに可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
は、単環式の5員又は6員のヘテロアリールであり、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−CN、ハロゲン、N−O(該窒素原子は該単環式の5員又は6員のヘテロアリールの一体部分である)、−OH、アルコキシ、−SH、S−アルキル、−NH、NH−アルキル、N−ビス−アルキル、NHOH、NMeOH、NMe(OMe)、−NO、−CF、−OCF及びC〜Cヒドロキシアルキルからなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
はH又はC〜Cアルキルであり、
はH又は−CHであり、
は、フェニル、又は単環式の5員若しくは6員のヘテロアリールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロゲン、−CN、−CF、−OCF、C〜Cヒドロキシアルキル、−OH、−SH、S−アルキル、−CN、N−ビス−アルキル、シアノアセチレン、−NO、−NR、−C(O)R、N−O(該窒素原子は該単環式の5員又は6員のヘテロアリールの一体部分である)、及び(Rがフェニルである場合)ジオキシメチレン架橋(−O−CH−O−)を共に形成する2つの置換基からなる群から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換され、
はH又は−CHであり、
はC〜Cアルキルであり、
はH又はアルキルであり、
はH又はC〜Cアルキルであり、
ただしRは5−クロロ−チオフェン−2−イルではなく、R及びRは同時にHではない)
による構造を有する化合物。
【請求項2】
化合物が、式II:
【化2】

による構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が、式III:
【化3】

による構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、式IV:
【化4】

(式中、
及びR10は各々個々に、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、−CN、−C(O)R、シアノアセチレン、ハロゲン、−OH、C〜Cアルコキシ、−SH、C〜C S−アルキル、−NH、C〜C NH−アルキル、C〜C N−ビス−アルキル、−NO、−CF、−OCF及びC〜Cヒドロキシアルキルからなる群から選択され、又はR及びR10は、ジオキシメチレン架橋(−O−CH−O−)を共に形成し、
11及びR12は各々個々に、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、−CN、ハロゲン、−OH、C〜Cアルコキシ、−SH、C〜C S−アルキル、−CF、−OCF、−NH、−N(CH及びC〜Cヒドロキシアルキルからなる群から選択され、
ただしR及びR12が同時にメトキシである場合はなく、
は上で示した意味を有し、
*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)
による構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
11及びR12がHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
がメチルであり、
がH、メチル又はエチルであり、
がHである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、式V:
【化5】

(式中、
A、B、D及びEは各々個々に、窒素原子、CR13及びN−Oからなる群から選択され、
Gは、酸素原子、硫黄原子及びNR14からなる群から選択され、
13は、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、−OH、−SH、S−アルキル、−CF、−OCF、ハロゲン、−NR1516、−NO、−CN、−C(O)R、アセチレン、シアノアセチレン、C〜Cヒドロキシアルキル、及びRを式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物と連結するσ(シグマ)結合からなる群から選択され、
14は、H、C〜Cアルキル、及びRを式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物と連結するσ(シグマ)結合からなる群から選択され、
15及びR16は各々個々に、H又はC〜Cアルキルであり、
は上で示した意味を有し、
*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)
による構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
が、式VI:
【化6】

(式中、
L及びTは各々個々に、CH基又は窒素原子又はN−Oであり、
M、N及びQは各々個々に、窒素原子、CR17基及びN−Oからなる群から選択され、
17は、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、−CF、−OCF、ハロゲン、−OH、−NO、−SH、C〜C S−アルキル、−NR1516、C〜Cヒドロキシアルキル、−C(O)R、アセチレン、シアノアセチレン及び−CNからなる群から選択され、
15及びR16は各々個々に、H又はC〜Cアルキルであり、
は上で示した意味を有し、
*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)
による構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
が、
【化7】


(式中、
18及びR19は各々個々に、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、−CF、−OCF、ハロゲン、−OH、−NO、−SH、C〜C S−アルキル、−NR1516、C〜Cヒドロキシアルキル、アルキニル、アルケニル、−C(O)R、シアノアセチレン及び−CNからなる群から選択され、
15、R16及びRは、上で示した意味を有する)
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
がHであり、Rが、
【化8】


(式中、*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)
からなる任意に置換された単環式の5員のヘテロ芳香族残基の群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
がHであり、Rが、
【化9】



(式中、*は、Rと式(I)〜式(III)のいずれかによる化合物との間の結合を示す)
からなる任意に置換された単環式の6員のヘテロ芳香族残基の群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
及び/又はRがHである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
疾患又は障害の予防又は治療のための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、並びに炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、及び病態生理学的な過剰血管新生を特徴とする疾患からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防に有用な第2の治療薬、並びに任意に薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項15】
炎症性疾患、過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害、低酸素関連病変、及び病態生理学的な過剰血管新生を特徴とする疾患からなる群から選択される疾患又は障害の治療又は予防のための薬物の調製のための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項14に記載の組成物の使用。
【請求項16】
炎症性疾患が、アテローム動脈硬化症、関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患、乾癬、特に尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、屈側性乾癬;神経皮膚炎;魚鱗癬;円形脱毛症;全頭脱毛症;亜全頭脱毛症;全身脱毛症;びまん性脱毛症;アトピー性皮膚炎;皮膚の紅斑性狼瘡;皮膚の皮膚筋炎;アトピー性湿疹;モルヘア;強皮症;蛇行型円形脱毛症;アンドロゲン性脱毛症;アレルギー性皮膚炎;刺激性接触皮膚炎;接触皮膚炎;尋常性天疱瘡;落葉状天疱瘡;増殖性天疱瘡;瘢痕性粘膜類天疱瘡;水疱性類天疱瘡;粘膜類天疱瘡;皮膚炎;ジューリング疱疹状皮膚炎;じんま疹;リポイド類壊死症;結節性紅斑;単純性痒疹;結節性痒疹;急性痒疹;リニアIgA皮膚症;多形性光皮膚症;日光性紅斑;皮膚の発疹;薬疹;慢性進行性紫斑;異汗性湿疹;湿疹;固定薬疹;光アレルギー性皮膚反応;及び口囲皮膚炎からなる群から(form)選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
過剰増殖性疾患が、腫瘍疾患又はがん疾患、前癌状態、異形成、組織球増殖症、血管増殖性疾患、及びウイルス誘導性増殖性疾患からなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
腫瘍疾患又はがん疾患が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、T細胞リンパ腫又は白血病、例えば皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)と関連するリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、及び急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、中皮腫、小児固形腫瘍、神経膠腫、骨がん及び軟部組織肉腫、成人の一般的な固形腫瘍、例えば頭頚部がん(例えば口腔がん、喉頭がん及び食道がん)、尿生殖器がん(例えば前立腺がん、膀胱がん、腎がん、子宮がん、卵巣がん、精巣がん、直腸がん及び結腸がん)、肺がん(例えば小細胞癌及び非小細胞肺癌、例えば扁平上皮癌及び腺癌)、乳がん、膵臓がん、黒色腫及び他の皮膚がん、基底細胞癌、転移性皮膚癌、潰瘍型及び乳頭型の両方の扁平上皮癌、胃がん、脳がん、肝臓がん、副腎がん、腎臓がん、甲状腺がん、髄様癌、骨肉腫、軟部組織肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、及びカポジ肉腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、精上皮腫、胚性癌、ウイルムス腫瘍、小細胞肺癌、上皮癌、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、緑内障、血管腫、重鎖病及び転移からなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
過剰増殖性疾患又は過剰増殖性障害を治療する方法であって、放射線療法、化学療法、免疫療法、レーザー/マイクロ波温熱療法、又はアンチセンスDNA及び/若しくはRNAを使用する遺伝子療法を患者が受ける前に、受ける間に、及び/又は受けた後に、前記患者に対して請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項14に記載の組成物を投与することを含む、方法。


【公表番号】特表2012−514019(P2012−514019A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543998(P2011−543998)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009338
【国際公開番号】WO2010/076034
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(500262197)ヨーロピアン モレキュラー バイオロジー ラボラトリー (13)
【出願人】(511159738)エララ ファーマシューテイカルズ ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】