説明

ドライ洗浄方法およびドライ洗浄装置

【課題】被処理物の表面に存在する有機物等の汚染物を高い効率で除去することができると共に、被処理物の表面の濡れ性を向上させることができ、被処理物の表面に高い密着性を有する薄膜を形成することができるドライ洗浄方法およびドライ洗浄装置を提供する。
【解決手段】被処理物1に大気圧プラズマを作用させることにより洗浄処理する第1洗浄工程と、この第1洗浄工程によって洗浄処理された被処理物1にエキシマランプから放射されたエキシマ光を照射することにより洗浄処理する第2洗浄工程とを有し、搬送される被処理物1に対して被処理物1の搬送方向の上流位置に大気圧プラズマ装置20を配置し、被処理物1の搬送方向の下流位置にエキシマ光照射装置30を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子やフラットパネルディスプレイの製造工程において、ウエハやガラス基板等の基板の表面を洗浄するために好適なドライ洗浄方法およびドライ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイ、太陽電池などの製造工程においては、一般に、シリコンウエハやガラス基板等の基板に対して密着性の高い薄膜を形成するために、基板の表面を洗浄処理することによって、当該基板の表面に存在する有機物等の汚染物を除去することが行われており、基板の表面を洗浄処理する方法としては、水や有機溶剤等を使用しないドライ洗浄方法が広く利用されている。
このようなドライ洗浄方法としては、大気圧またはその近傍の圧力下において、希ガスおよび窒素ガス等のプラズマ用ガスを流過させながら高周波電界を印加することによってプラズマを発生させ、このプラズマを被処理物の表面に作用させることによって、当該被処理物の表面を洗浄する大気圧プラズマ洗浄法(特許文献1参照。)、被処理物の表面に、エキシマランプからのエキシマ光を照射すると共に、エキシマ光の照射により生じたラジカル酸素、オゾン等の活性酸素を作用させることによって、当該被処理物の表面を洗浄する光洗浄法(特許文献2参照。)が知られている。
【0003】
而して、大気圧プラズマ洗浄法によれば、プラズマによって被処理物の表面に存在する有機物等の汚染物を酸化または還元して除去することができ、濡れ性(親水性)を向上することができる、とされている。
一方、光洗浄法によれば、エキシマ光によって被処理物の表面に存在する有機物等の汚染物を分解すると共に、エキシマ光の照射により生じた活性酸素によって分解物を酸化して除去することができ、濡れ性(親水性)を向上することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−102271号公報
【特許文献2】特許第3964131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大気圧プラズマ洗浄法においては、ガラス基板等の被処理物の表面の濡れ性の向上、すなわち接触角を小さくすることができるが、実際に、被処理物の表面に薄膜を形成した場合には、高い密着性を有する薄膜が得られない、という問題がある。
一方、光洗浄法においては、大気圧プラズマ洗浄法に比較して、被処理物の表面に高い密着性を有する薄膜を得ることが可能であるが、被処理物自体の表面の濡れ性を向上させること(接触角を小さくすること)が困難である、という問題がある。
【0006】
本発明者らは上記の問題について鋭意検討を重ねた結果、以下のことが判明した。
大気圧プラズマ洗浄法においては、処理後の被処理物の表面に親水基を形成することができるが、有機物等の汚染物の除去等が十分に行われていないため、高い密着性を有する薄膜を形成することが困難である。
一方、光洗浄法においては、被処理物の表面に存在する有機物等の汚染物を十分に除去することが可能であるが、被処理物例えばガラス基板の表面に親水基が形成されにくいため、濡れ性を十分に向上させることが困難である。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、被処理物の表面に存在する有機物等の汚染物を高い効率で除去することができると共に、被処理物の表面の濡れ性を向上させることができ、被処理物の表面に高い密着性を有する薄膜を形成することができるドライ洗浄方法およびドライ洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のドライ洗浄方法は、被処理物に大気圧プラズマを作用させることにより、当該被処理物を洗浄処理する第1洗浄工程と、
この第1洗浄工程によって洗浄処理された被処理物にエキシマランプから放射されたエキシマ光を照射することにより、当該被処理物を洗浄処理する第2洗浄工程と
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明のドライ洗浄装置は、搬送される被処理物に対してドライ洗浄を行うドライ洗浄装置であって、
当該被処理物の搬送方向の上流位置に配置された大気圧プラズマ装置と、当該被処理物の搬送方向の下流位置に配置されたエキシマ光照射装置とを具えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被処理物の表面を大気圧プラズマによって洗浄処理した後、当該被処理物の表面をエキシマ光によって洗浄処理する、換言すれば、エキシマ光による洗浄処理の前処理として大気圧プラズマによる洗浄処理を行うため、被処理物の表面に存在する有機物等の汚染物を高い効率で除去することができると共に、被処理物の表面の濡れ性を向上させることができ、従って、被処理物の表面に高い密着性を有する薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のドライ洗浄方法を実施するためのドライ洗浄装置の一例における構成の概略を示す説明図である。
【図2】大気圧プラズマ装置の構成を示す説明図である。
【図3】エキシマ光照射装置の構成を示す説明図である。
【図4】エキシマ光照射装置におけるエキシマランプの構成を示す説明図であり、(1)は斜視図、(2)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のドライ洗浄方法を実施するためのドライ洗浄装置の一例における構成の概略を示す説明図である。
このドライ洗浄装置は、複数の搬送ローラ11が水平方向に並ぶよう配置された、被処理物1を搬送する搬送機構10を有し、この搬送機構10の上方には、筐体15が設けられている。
筐体15内には、搬送機構10による被処理物1の搬送方向の上流位置に、大気圧プラズマ装置20が配置され、搬送機構10による被処理物1の搬送方向の下流位置に、エキシマ光照射装置30が配置されている。
ここで、被処理物としては、シリコンウエハ、液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイ、太陽電池などに用いられるガラス基板などが挙げられる。
【0013】
図2は、大気圧プラズマ装置20の構成を示す説明図である。この大気圧プラズマ装置20は、例えばアルニウムよりなる略直方体状のケーシング21を有し、このケーシング21内には、高周波電源22に電気的に接続された板状の電極25が水平に配置され、この電極25の下面には誘電体層26が形成されている。図示の例では、ケーシング21が接地されており、これにより、電極25が高圧側電極とされ、ケーシング21が接地側電極とされている。また、ケーシング21の上面には、ケーシング21内にプラズマ用ガスを供給するガス供給管23が設けられ、ケーシング21の下面には、ケーシング21内に発生した大気圧プラズマを外部に放出する複数のノズル24が形成されている。
【0014】
上記の大気圧プラズマ装置20においては、大気圧またはその近傍の圧力下に、プラズマ用ガスがガス供給管23からケーシング21内に供給される。この状態で、高周波電源22によって、電極25とケーシング21との間に誘電体層26を介して高周波電界が印加されると、当該電極25と当該ケーシング21との間には誘電体バリア放電が生じ、これにより、ケーシング21と誘電体層26との間に存在するプラズマ用ガスが電離または励起されてプラズマが発生する。そして、発生したプラズマは、ケーシング21のノズル24から外部に放出される。
以上において、プラズマ用ガスとしては、窒素ガス(N2 )、アルゴンガス(Ar)、炭酸ガス(CO2 )、ヘリウムガス(He)などを主成分とし、酸素ガス(O2 )が0.01〜5体積%含有してなるものを用いることが好ましく、例えば窒素ガスとクリーンドライエア(CDA)との混合ガスを用いることができる。
また、高周波電源22から供給される電力は、周波数が例えば20〜70kHz、電圧が例えば5〜15kVrmsである。
【0015】
図3は、エキシマ光照射装置30の構成を示す説明図である。このエキシマ光照射装置30においては、下面が開口された矩形の箱型のランプハウス31内に、それぞれ波長200nm以下の真空紫外線を放射する複数(図示の例では2つ)のエキシマランプ35が配置されている。ランプハウス31の側面には、ランプハウス31内にパージガスを供給するパージガス供給口32が設けられ、ランプハウス31内におけるエキシマランプ35の側方位置には、パージガス放出口33が設けられている。
【0016】
図4は、エキシマ光照射装置30におけるエキシマランプ35の構成を示す説明図であり、(1)は斜視図、(2)は断面図である。このエキシマランプ35は、エキシマ用ガスが気密に封入された放電空間Sを形成する放電容器36を有する。この放電容器36は、互いに対向するそれぞれ矩形の上壁部分36aおよび下壁部分36bと、上壁部分36aおよび下壁部分36bの周縁部を連接する4つの側壁部分36c,36d,36e,36fよりなる扁平な箱型のものであって、全体が真空紫外線の透過性に優れたシリカガラス(石英ガラス)により構成されている。放電容器36における上壁部分36aの外面(図4において上面)には、網状の一方の電極37が設けられ、当該放電容器36における下壁部分36bの外面(図4において下面)には、網状の他方の電極38が設けられており、一方の電極37および他方の電極38の各々は、高周波電源(図示省略)に接続されている。
放電容器36を構成する材料としては、真空紫外線を良好に透過するもの、具体的には、合成石英ガラスなどのシリカガラス、サファイアガラスなどを用いることができる。
放電容器36の寸法の具体的な一例を示すと、上壁部分36a、下壁部分36bの幅方向の長さが42mm、側壁部分36c、36d、36e、36fの高さ方向の長さが15mm、肉厚が2.5mmである。
【0017】
一方の電極37および他方の電極38を構成する材料としては、アルミニウム、ニッケル、金などの金属材料を用いることができる。また、一方の電極37および他方の電極38は、上記の金属材料を含む導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、或いは上記の金属材料を真空蒸着することにより、形成することができる。
放電容器36内に封入されるエキシマ用ガスとしては、真空紫外線を放射するエキシマを生成し得るもの、具体的には、キセノン、アルゴン、クリプトン等の希ガス、または、希ガスと、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素等のハロゲンガスとを混合した混合ガスなどを用いることができる。エキシマ用ガスの具体的な例を、放射される紫外線の波長と共に示すと、キセノンガスでは172nm、アルゴンとヨウ素との混合ガスでは191nm、アルゴンとフッ素との混合ガスでは193nmである。
また、エキシマ用ガスの封入圧は、例えば10〜100kPaである。
【0018】
上記のエキシマ光照射装置30においては、エキシマランプ35における一方の電極37と他方の電極38との間に、高周波電源によって高周波電界が印加され、当該高周波電界によって、エキシマランプ35における放電容器36内において誘電体バリア放電が発生し、この誘電体バリア放電によってエキシマ用ガスに由来するエキシマ分子が形成され、これにより、真空紫外線が放射される。
【0019】
このようなドライ洗浄装置においては、被処理体1が、搬送機構10によって大気圧プラズマ装置20の直下の位置に搬送され、この被処理体1に対して、大気圧プラズマ装置20におけるノズル24の各々から放出される大気圧プラズマを作用させることにより、被処理物1を洗浄処理する第1洗浄工程が行われる。この第1洗浄工程が終了した後、被処理体1が、搬送機構10によってエキシマ光照射装置30の直下の位置に搬送され、この被処理物1に対して、エキシマ光照射装置30におけるエキシマランプ35からのエキシマ光を照射することにより、被処理物1を洗浄処理する第2洗浄工程が行われ、以て、被処理物1の洗浄が達成される。
【0020】
以上において、第1洗浄工程における大気圧プラズマによる処理時間は、例えば0.2〜1.0秒間である。
また、第2洗浄工程におけるエキシマ光による処理時間は、例えば1.0〜6.0秒間である。
また、第2洗浄工程は、第1洗浄工程に連続して行われることが好ましく、具体的には、第1の工程が終了してから1時間以内に行われることが好ましい。
【0021】
本発明のドライ洗浄方法およびドライ洗浄装置によれば、被処理物1の表面に大気圧プラズマ装置20からの大気圧プラズマを作用させることによって、当該被処理物1を洗浄処理した後、この被処理物1の表面にエキシマ光照射装置30からのエキシマ光を照射することによって、当該被処理物1を洗浄処理する、換言すれば、エキシマ光による洗浄処理の前処理として大気圧プラズマによる洗浄処理を行うため、被処理物1の表面に存在する有機物等の汚染物を高い効率で除去することができると共に、被処理物1の表面の濡れ性を向上させることができ、従って、被処理物1の表面に高い密着性を有する薄膜を形成することができる。
【0022】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば大気圧プラズマ装置20およびエキシマ光照射装置30は、共通の筐体15内に配置されている必要はなく、互いに独立した装置を用いることができる。
【実施例】
【0023】
図2に示す構成に従い、下記の仕様の大気圧プラズマ装置を作製した。
ケーシングの材質:アルミニウム
電極の材質:スーパーインバー(表面:アルミナ溶射500μm)
電極の寸法:50mm×300mm
ケーシングと誘電体層との離間距離:0.5mm
電圧 7.3kVp-p 、周波数:62k Hz、定格電力:1114VA
【0024】
また、図3および図4に示す構成に従い、それぞれ下記の仕様のエキシマランプを具えたエキシマ光照射装置(1)およびエキシマ光照射装置(2)を作製した。
[エキシマ光照射装置(1)]
放電容器の材質:合成石英ガラス,放電容器の全長:1640mm
一方の電極および他方の電極の寸法:1540mm
定格電力:約500W
エキシマランプの数:2本
[エキシマ光照射装置(2)]
放電容器の材質:合成石英ガラス,放電容器の全長:1640mm
一方の電極および他方の電極の寸法:1540mm
定格電力:約500W
エキシマランプの数:1本
【0025】
〈実施例1〉
縦横の寸法が100mm×100mm、厚みが0.7mmのITO膜付きガラス基板よりなる被処理物に対して、以下のようにしてドライ洗浄を行った。
大気圧プラズマ装置のケーシング内に、プラズマ用ガスとして流量が150l/minの窒素ガスおよび流量が1l/minのクリーンドライエア(CDA)を供給しながら(プラズマ用ガス中の酸素濃度が約0.14体積%)、当該大気圧プラズマ装置を作動させると共に、ノズルから被処理物の表面までの距離が4mm、搬送速度が6.0m/minの条件で被処理物を搬送し、搬送される被処理物の表面にノズルから放出される大気圧プラズマを作用させることにより、当該被処理物の表面に対して洗浄処理を行った。ここで、被処理物の表面に対する実質的な処理時間は約0.3秒間である。
次いで、エキシマ光照射装置(1)のランプハウス内に、パージ用ガスとして流量が200l/minの窒素ガスを供給しながら、当該エキシマ光照射装置を作動させると共に、ランプハウスの下面からの被処理物の表面までの距離が4mm、搬送速度が6.0m/minの条件で被処理物を搬送し、搬送される被処理物の表面にエキシマ光を照射することにより、当該被処理物の表面に対して洗浄処理を行った。ここで、被処理物の表面に対する実質的な処理時間は2.0秒間であり、積算光量は約80mJ/cm2 である。また、大気圧プラズマ装置による洗浄処理が終了してからエキシマ光照射装置(1)による洗浄処理を開始するまでの時間は0.5秒間であった。
【0026】
〈比較例1〉
エキシマ光照射装置(1)による洗浄処理のみを行い、大気圧プラズマ装置による洗浄処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、被処理物に対してドライ洗浄を行った。
【0027】
〈比較例2〉
大気圧プラズマ装置による洗浄処理のみを行い、エキシマ光照射装置(1)による洗浄処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、被処理物に対してドライ洗浄を行った。
【0028】
〈比較例3〉
最初にエキシマ光照射装置(1)による洗浄処理を行った後、大気圧プラズマ装置による洗浄処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、被処理物に対してドライ洗浄を行った。
【0029】
〔評価〕
実施例1および比較例1〜3でドライ洗浄された被処理物について、その表面のX線光電子分光分析(XPS)を行うことにより、O−C=O、C−CおよびC−Hのピーク強度を調べた。未洗浄の被処理物のピーク強度を1としたときの相対値を下記表1に示す。 また、実施例1および比較例1〜3でドライ洗浄された被処理物の表面の水との接触角を測定した。結果を下記表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1の結果から明らかなように、実施例1でドライ洗浄された被処理物は、その表面のC−CおよびC−Hのピーク強度が小さく、高い効率で有機物が除去されており、また、水との接触角が小さくて濡れ性が向上したことが確認された。
【0032】
〈実施例2〉
縦横の寸法が100mm×100mm、厚みが0.7mmのガラス基板よりなる被処理物に対して、以下のようにしてドライ洗浄を行った。
大気圧プラズマ装置のケーシング内に、プラズマ用ガスとして流量が150l/minの窒素ガスおよび流量が1l/minのクリーンドライエア(CDA)を供給しながら(プラズマ用ガス中の酸素濃度が約0.14体積%)、当該大気圧プラズマ装置を作動させると共に、ノズルから被処理物の表面までの距離が4mm、搬送速度が5.0m/minの条件で被処理物を搬送し、搬送される被処理物の表面にノズルから放出される大気圧プラズマを作用させることにより、当該被処理物の表面に対して洗浄処理を行った。ここで、被処理物の表面に対する実質的な処理時間は約0.4秒間である。
次いで、エキシマ光照射装置(2)のランプハウス内に、パージ用ガスとして流量が300l/minの窒素ガスを供給しながら、当該エキシマ光照射装置を作動させると共に、ランプハウスの下面からの被処理物の表面までの距離が4mm、搬送速度が5.0m/minの条件で被処理物を搬送し、搬送される被処理物の表面にエキシマ光を照射することにより、当該被処理物の表面に対して洗浄処理を行った。ここで、被処理物の表面に対する実質的な処理時間は1.2秒間であり、積算光量は約60mJ/cm2 である。また、大気圧プラズマ装置による洗浄処理が終了してからエキシマ光照射装置(2)による洗浄処理を開始するまでの時間は0.5秒間であった。
【0033】
〈比較例4〉
エキシマ光照射装置(2)による洗浄処理のみを行い、大気圧プラズマ装置による洗浄処理を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして、被処理物に対してドライ洗浄を行った。
【0034】
〈比較例5〉
大気圧プラズマ装置による洗浄処理のみを行い、エキシマ光照射装置(2)による洗浄処理を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして、被処理物に対してドライ洗浄を行った。
【0035】
〈比較例6〉
最初にエキシマ光照射装置(2)による洗浄処理を行った後、大気圧プラズマ装置による洗浄処理を行ったこと以外は実施例2と同様にして、被処理物に対してドライ洗浄を行った。
【0036】
〔評価〕
実施例2および比較例4〜6でドライ洗浄された被処理物について、その表面のX線光電子分光分析(XPS)を行うことにより、C原子、Si原子およびO原子の割合を測定し、Si原子に対するC原子の比(C/Si)を求めた。結果を下記表2に示す。
また、実施例2および比較例4〜6でドライ洗浄された被処理物の表面の接触角を測定した。結果を下記表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
表2の結果から明らかなように、実施例2でドライ洗浄された被処理物は、その表面の珪素原子に対する炭素原子のピーク比率が小さく、高い効率で有機物が除去されており、また、水との接触角が小さくて濡れ性が向上したことが確認された。
【符号の説明】
【0039】
1 被処理物
10 搬送機構
11 搬送ローラ
15 筐体
20 大気圧プラズマ装置
21 ケーシング
22 高周波電源
23 ガス供給管
24 ノズル
25 電極
26 誘電体層
30 エキシマ光照射装置
31 ランプハウス
32 パージガス供給口
33 パージガス放出口
35 エキシマランプ
36 放電容器
36a 上壁部分
36b 下壁部分
36c,36d,36e,36f 側壁部分
37 一方の電極
38 他方の電極
S 放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に大気圧プラズマを作用させることにより、当該被処理物を洗浄処理する第1洗浄工程と、
この第1洗浄工程によって洗浄処理された被処理物にエキシマランプから放射されたエキシマ光を照射することにより、当該被処理物を洗浄処理する第2洗浄工程と
を有することを特徴とするドライ洗浄方法。
【請求項2】
搬送される被処理物に対してドライ洗浄を行うドライ洗浄装置であって、
当該被処理物の搬送方向の上流位置に配置された大気圧プラズマ装置と、当該被処理物の搬送方向の下流位置に配置されたエキシマ光照射装置とを具えてなることを特徴とするドライ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−131149(P2011−131149A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292077(P2009−292077)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】