説明

ナビゲーション装置

【課題】計算負荷をより低減させながらも時々刻々と変化する渋滞状況を考慮した適切な経路を運転者に提示するナビゲーション装置を提供すること。
【解決手段】探索範囲を複数のエリアR1乃至R3に分割し渋滞情報を考慮して経路探索を行うナビゲーション装置100は、交通情報に基づいて所定時刻における予測渋滞情報を生成する予測渋滞情報生成手段11と、車輌が各エリアに到達する時刻における予測渋滞情報を各エリアに適用する予測渋滞情報適用手段12とを備える。また、ナビゲーション装置100は、現在地Pを中心とする同心円群で区切られた領域を複数のエリアR1乃至R3として設定するエリア設定手段13を備え、同心円群は、地域別または時間帯別に予め定められた一定距離刻みで半径が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のエリア毎に経路探索を行うナビゲーション装置に関し、特に、各エリアに車輌が到達する時刻に適した渋滞予測情報を適用して経路探索を行うナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、設定した目的地までの経路を探索して案内を行うナビゲーションシステムであって、探索データおよびエリアに関する情報を含む地図データ並びに交通情報を格納する記憶装置と、目的地までの複数の経路を探索し、それら経路が所定エリアを通過する場合、その所定エリア内のリンクについて通過予測時刻を算出する探索処理部と、所定エリア内のリンクについて、交通情報に基づき通過予測時刻における予測交通情報を作成する予測処理部とを有するナビゲーションシステムが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
このナビゲーションシステムは、所定エリア内の全てのリンクについて通過予測時刻を算出してから予測交通情報を作成するので、時々刻々と変化する渋滞状況を考慮した最適な経路を運転者に提示することができる。
【特許文献1】特開2006−17610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のナビゲーションシステムは、所定エリアの数または所定エリア内のリンクの数が多くなるにつれて通過予測時刻の算出に要する計算量が増大し制御装置に掛かる計算負荷を増大させてしまう。
【0005】
上述の状況に鑑み、本発明は、計算負荷をより低減させながらも時々刻々と変化する渋滞状況を考慮した適切な経路を運転者に提示するナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係るナビゲーション装置は、経路探索範囲を複数のエリアに分割し渋滞情報を考慮して経路探索を行うナビゲーション装置であって、交通情報に基づいて所定時刻における予測渋滞情報を生成する予測渋滞情報生成手段と、車輌が各エリアに到達する時刻における予測渋滞情報を前記各エリアに適用する予測渋滞情報適用手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第二の発明は、第一の発明に係るナビゲーション装置であって、現在地を中心とする同心円群で区切られた領域を前記複数のエリアとして設定するエリア設定手段を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第三の発明は、第二の発明に係るナビゲーション装置であって、前記同心円群は、地域別または時間帯別に予め定められた一定距離刻みで半径が増大することを特徴とする。
【0009】
また、第四の発明は、第二の発明に係るナビゲーション装置であって、前記同心円群は、平均車速に基づいて算出される所定時間当りの走行距離刻みで半径が増大することを特徴とする。
【0010】
また、第五の発明は、第一の発明に係るナビゲーション装置であって、現在地を中心とする補助同心円群で区切られた複数の補助エリアと現在地から所定角度範囲に拡がる扇形エリアとの重複領域である各対象エリアに含まれる道路の交通情報に基づいて前記各対象エリアにおける平均車速を算出する平均車速算出手段と、現在地を中心とし、前記各対象エリアにおける平均車速に基づいて算出される所定時間当りの走行距離刻みで半径が増大する主要同心円群で区切られた領域を前記複数のエリアとして設定するエリア設定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述の手段により、本発明は、計算負荷をより低減させながらも時々刻々と変化する渋滞状況を考慮した適切な経路を運転者に提示するナビゲーション装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明に係るナビゲーション装置100の構成例を示す図であり、車載器であるナビゲーション装置100は、制御装置1、通信装置2、入力装置3、測位装置4、記憶装置5および表示装置6から構成される。
【0014】
制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータであり、経路探索手段10、予測渋滞情報生成手段11、予測渋滞情報適用手段12、エリア設定手段13および平均車速算出手段14に対応するプログラムをROMに記憶し、それらプログラムをRAM上に展開して対応する処理をCPUに実行させる。
【0015】
通信装置2は、ナビゲーション装置100と通信センタ等の外部施設との間の通信を制御するための装置であり、例えば、携帯電話用周波数や特定省電力周波数等を利用した無線通信を制御し、外部施設からの信号を受信する受信装置、および、外部施設へ信号を送信する送信装置としての役割を担う。
【0016】
また、通信装置2は、光ビーコン、電波ビーコン、FM局から送信されるVICS(Vehicle Information and Communication System)情報を受信したり、走行する道路に埋設された路車間通信用の通信機等から渋滞情報を受信したりする。
【0017】
入力装置3は、ナビゲーション装置100に対する操作入力を受け付ける装置であり、例えば、エスカッションスイッチ、タッチパネル、ジョイスティック、リモートコントローラ等があり、表示装置6に表示させた画面を介して目的地等を入力するために利用される。
【0018】
測位装置4は、車両の位置を測定するための装置であり、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機によりGPSアンテナを介してGPS衛星が出力するGPS信号に基づいて車両位置を測位・演算する。測位方法は、単独測位や相対測位(干渉測位を含む。)等の如何なる方法であってもよいが、好ましくは精度の高い相対測位が用いられる。この際、自車位置は、舵角センサ、車速センサ、ジャイロセンサ等の各種センサの出力や、ビーコン受信機及びFM多重受信機を介して受信される各種情報に基づいて補正されてもよい。
【0019】
記憶装置5は、ナビゲーションに利用する各種情報を格納するための装置であり、例えば、交通情報データベース50や地図情報データベース51を格納するハードディスクがある。
【0020】
交通情報データベース50は、交通情報を体系的に蓄積したデータベースであり、例えば、5分刻みで更新されるVICS情報を過去の所定期間(例えば、1年間)にわたって蓄積したデータベースである。
【0021】
「交通情報」は、交通管制システムの情報を収集して作成された渋滞情報や交通規制情報等で構成され、進行方向別に各リンクを通過するために要する時間(以下、「リンク旅行時間」という。)を要素として有する。
【0022】
「リンク」とは、道路を構成する単位であり、例えば、三叉路以上の交差点を境界にして区切られる。道路を構成するリンクには、識別番号としての道路リンクIDが付与される。
【0023】
地図情報データベース51は、地図情報を体系的に格納したデータベースであり、例えば、画像情報と道路リンクIDとの間の関係や道路リンクID同士の接続関係を記憶する。
【0024】
表示装置6は、地図情報や経路の探索結果を表示するための装置であり、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等がある。
【0025】
次に、制御装置1が有する各種手段について説明する。
【0026】
経路探索手段10は、測位装置4により測定された現時点における車両の位置情報と入力装置3を介して入力された目的地の位置情報と記憶装置5に記憶された地図情報とに基づいて、現在地から目的地に至るまでの最適な経路を導き出すための手段であり、例えば、最短経路探索アルゴリズムとしてダイクストラ法を用い最短経路を探索する。
【0027】
また、経路探索手段10は、例えば、渋滞情報に基づいて渋滞が発生しているリンクを認識し、そのリンクを避けながら最も早く目的地に到達できる最速経路を探索するようにする。
【0028】
予測渋滞情報生成手段11は、未来の所定時刻(基準時刻)におけるリンクの渋滞状況を予測した予測渋滞情報を生成するための手段であり、例えば、現在時刻と交通情報データベース50に蓄積された過去の交通情報とに基づいて所定エリアにおける予測渋滞情報を生成する。
【0029】
予測渋滞情報生成手段11は、例えば、日付、曜日、天気等の条件から似たような条件の過去データを交通情報データベースから抽出し、抽出した過去データに基づいて未来の所定時刻における所定エリア内にある各リンクの渋滞状況を予測する。
【0030】
また、予測渋滞情報生成手段11は、現在時刻から所定時間遡ってリンク旅行時間の推移をグラフ化し、過去のデータとの間でパターンマッチングを行うことにより似たようなリンク旅行時間の推移パターンを抽出し、抽出したパターンのその後の推移から未来の所定時刻におけるリンク旅行時間を推定して予測渋滞情報を生成する。
【0031】
また、予測渋滞情報生成手段11は、所定エリア(例えば、2km四方)にある全てのリンクにおいて同じ基準時刻の予測渋滞情報を生成する。予測渋滞情報の基準時刻をリンク毎に変えると、計算負荷が増大してしまうからである。
【0032】
例えば、予測渋滞情報生成手段11は、6月の金曜日の午後5時時点において、15分後の予測渋滞情報を生成する場合には、過去の6月の金曜日の午後5時15分のデータを参照する。
【0033】
予測渋滞情報適用手段12は、予測渋滞情報生成手段11により生成された予測渋滞情報を経路探索手段10による探索に適用するための手段である。
【0034】
例えば、制御装置1は、所定エリアに自車が到達する時刻を予測し、予測渋滞情報生成手段11によりその時刻における予測渋滞情報を生成させる。
【0035】
その後、予測渋滞情報適用手段12は、予測渋滞情報生成手段11により生成された予測渋滞情報を経路探索手段10に対して出力し、経路探索手段10が所定エリアにおける経路を探索する際に、通信装置2により受信した現時点における渋滞情報の代わりにその予測渋滞情報を使用させる。
【0036】
エリア設定手段13は、経路探索範囲を分割するために経路探索範囲に複数のエリアを設定するための手段であり、例えば、測位装置4により測位された自車位置を中心として同心円で区切られるエリアを設定する。
【0037】
図2は、エリア設定手段13により設定されたエリアの分割例を示す図であり、図2(a)は、半径が2km刻みで増大する同心円、図2(b)は、半径が4km刻みで増大する同心円で規定されるエリアを示す。半径の増大幅は、以下、「エリアスライス間隔」とする。
【0038】
図2(a)において、エリアR1は、現在地を中心とした半径2kmの円形領域であり、エリアR2は、現在地から2km乃至4kmの位置にあるドーナッツ状の領域であり、エリアR3は、現在地から4km乃至6kmの位置にあるドーナッツ状の領域である。
【0039】
また、図2(b)において、エリアR4は、現在地を中心とした半径4kmの円形領域であり、エリアR5は、現在地から4km乃至8kmの位置にあるドーナッツ状の領域であり、エリアR6は、現在地から8km乃至12kmの位置にあるドーナッツ状の領域である。
【0040】
図2(a)で示す分割例は、例えば、平均車速が比較的小さくなる市街地や都市部等或いは朝、夕の渋滞ピーク時間帯に適用され、図2(b)で示す分割例は、例えば、平均車速が比較的大きくなる郊外や都市周辺部等或いは渋滞の少ない時間帯に適用される。
【0041】
このように、エリアスライス間隔は、所定時間(例えば、15分間)に車輌が移動できる距離として、時間帯、地域、曜日、季節等毎に予め設定され、そのエリア内の平均車速が大きい程大きく設定される。例えば、東京都千代田区における午前8時のエリアスライス間隔が2kmであるのに対し、東京都千代田区における午前2時(渋滞の少ない深夜の時間帯)のエリアスライス間隔が10kmとなるように設定される。
【0042】
なお、エリアスライス間隔は、車輌が15分間で移動できる距離として設定されるが、例えば、VICS情報の配信間隔である5分間で車輌が移動できる距離として設定されてもよく、より長い時間(例えば、30分間)で車輌が移動できる距離として設定されてもよい。
【0043】
制御装置1は、エリア設定手段13により生成された各エリアに車輌が到達する時刻を予測し、予測された時刻における各エリアの予測渋滞情報を予測渋滞情報生成手段11により生成させ、予測渋滞情報適用手段12により経路探索手段10が各エリアにおける経路を探索する際に使用する現時点の渋滞情報をその予測渋滞情報で置き換えさせる。
【0044】
これにより、ナビゲーション装置100は、各エリアに進入する時刻における渋滞状況を用いて経路探索を行うので、より適切な経路を探索することができ、目的地への到着予定時刻の精度を向上させることができる。
【0045】
また、上述の構成は、各リンクを通過する時刻を推定する代わりに各エリア(複数のリンクを含む領域)に進入する時刻を推定してその時刻における渋滞状況を予測するので、各リンクを通過する時刻を推定する場合に比べて計算負荷を低減させることができ、ナビゲーション装置100の設計の自由度を向上させることができる。
【0046】
次に、図3を参照しながら、制御装置1が現在の交通情報に応じてエリアスライス間隔をその都度変化させる処理について説明する。エリアスライス間隔を所定値に固定する上述の場合と異なり、エリアスライス間隔を決定するための処理が必要となるので計算負荷は増大するが、現在の渋滞状況をより厳密に反映させた経路探索が可能となる。
【0047】
平均車速算出手段14は、所定のエリアにおける平均車速を算出するための手段であり、例えば、地図情報データベース51から読み出した所定エリア内における全リンクのリンク長と通信装置2または交通情報データベース50を介して取得した全リンクのリンク旅行時間とに基づいて平均車速を算出する。
【0048】
図3(a)は、平均車速算出手段14によって所定エリアの平均車速を算出するまでの処理を説明する図であり、図3(b)は、算出された平均車速に基づいてエリアスライス間隔を決定し、決定されたエリアスライス間隔に基づいてエリア設定手段13が経路探索範囲を分割するためのエリアを設定する処理の流れを説明する図である。
【0049】
最初に、制御装置1は、図3(a)に示すように、測位装置4により測位された自車位置を中心として半径が一定距離(例えば、2km)刻みで増大する補助同心円群を地図上に生成し、中心円S1並びに各円で区切られるドーナッツ状の領域S2およびS3を補助エリアとして設定する。
【0050】
補助同心円群は、補助エリアを設定するために利用される同心円群であり、補助エリアは、平均車速算出の対象となる対象エリアを設定するために利用される。
【0051】
その後、制御装置1は、現在地を中心として、入力装置3を介して入力された目的地Tの方向に所定角度範囲(例えば、60°)で拡がる扇形エリアQを生成し、各補助エリアS1乃至S3と扇形エリアQとが重複する部分を平均車速算出の対象エリアC1、C2およびC3とする。
【0052】
その後、制御装置1は、各対象エリアに含まれる全リンクのリンク長合計を直近の交通情報に基づくリンク旅行時間合計(各対象エリアに含まれる全リンクのリンク旅行時間合計を意味する。)で除算することにより平均車速を算出する。なお、リンク長合計およびリンク旅行時間合計は、現在位置から目的地Tに向う方向(例えば、上り方向)のみを考慮して算出されるが、上り方向および下り方向の両方向を考慮して算出されてもよい。
【0053】
制御装置1は、補助同心円群の半径の増大幅として設定される一定距離の値が大きくなると、設定される対象エリアの数が減少するので平均車速を算出するための計算負荷が低減するが、経路探索をする際に実際の渋滞状況を反映し難くなる。反対に、補助同心円群の半径の増大幅として設定される一定距離の値が小さくなると、設定される対象エリアの数が増加するので平均車速を算出するための計算負荷が増大するが、経路探索をする際に実際の渋滞状況を反映し易くなる。
【0054】
また、補助同心円群は、半径を一定距離(例えば、2km)刻みで増大させるが、例えば、刻み幅を20%ずつ増大させ、2km、2.4km、2.88kmのように半径を増大させてもよく、2km、2km、2.5km、2.5km、3km、3kmのように周期的に半径を増大させるようにしてもよい。現在位置から離れるに従って、平均速度を狭い範囲で厳密に算出する必要性が低くなるからである。
【0055】
その後、制御装置1は、対象エリア毎に算出された平均車速に基づいて所定時間(例えば、15分間)毎の移動距離を算出する。
【0056】
例えば、対象エリアC1、C2およびC3の平均車速がそれぞれ4[km/h]、20[km/h]、4[km/h]の場合、自車は、現在地から15分刻みでそれぞれ1[km](対象エリアC1における15分間の移動距離)、1[km](対象エリアC1における15分間の移動距離)、2.6[km](対象エリアC2における6分間の移動距離2.0[km]に対象エリアC3における9分間の移動距離0.6[km]を加えた値)、1[km](対象エリアC3における15分間の移動距離)だけ目的地T方向に移動する。
【0057】
制御装置1は、図3(b)に示すように、エリア設定手段13により、算出された移動距離1[km]、1[km]、2.6[km]、1[km]をエリアスライス間隔として採用し、これらエリアスライス間隔毎に半径が増大する主要同心円群で区分される主要エリアR7乃至R10を設定する。
【0058】
主要同心円群は、主要エリアを設定するために利用される同心円群であり、主要エリアには、それぞれ基準時刻が異なる予測渋滞情報が適用される。
【0059】
これにより、ナビゲーション装置100は、一定のエリアスライス間隔を用いる代わりに、現在の渋滞状況に応じてエリアスライス間隔を決定し各エリアに進入する時刻をより厳密に推定してから各エリアに適用する予測渋滞情報の基準時刻を決定するので、より適切な経路を探索することができ、目的地Tへの到着予定時刻の精度をさらに向上させることができる。
【0060】
また、上述の構成は、一定のエリアスライス間隔を用いる場合と同様、各リンクを通過する時刻を推定する代わりに各エリア(複数のリンクを含む領域)に進入する時刻を推定してその時刻における渋滞状況を予測するので、各リンクを通過する時刻を推定する場合に比べて制御装置1の計算負荷を低減させることができ、制御装置1に求められる条件(処理速度等)を緩和させることができる。
【0061】
次に、図4乃至図6を参照しながらナビゲーション装置100が経路を探索する処理の流れについて説明する。
【0062】
図4は、表示装置6に表示される経路探索画面の表示例であり、点線で示される同心円および引き出し線は説明のためのもので実際の画面には表示されない。
【0063】
図4は、現在地Pを中心にエリアスライス間隔を2kmとするエリアR1乃至R3を示し、中心円エリアR1には現在時刻である午前10時の渋滞情報が適用され、ドーナッツエリアR2、R3にはそれぞれ15分後、30分後の予測渋滞情報が適用され、それぞれの時刻における渋滞区間が所定色で強調表示される。
【0064】
図5は、エリアスライス間隔を予め記憶装置5に登録する処理の流れを示すフローチャートである。
【0065】
最初に、ナビゲーション装置100は、地域別、時間帯別に平均車速を算出する(ステップS1)。
【0066】
ナビゲーション装置100は、例えば、「JIS X 0401−1976 地域メッシュコード」に規定される統合地域メッシュにおける10倍地域メッシュ毎であって、かつ、1時間毎の平均車速を過去一年間の交通情報に基づいて算出する。
【0067】
ナビゲーション装置100は、例えば、所定地域(例えば、東京都千代田区)における全リンクのリンク長合計を所定時間帯(例えば、午前10:00から午前11:00)における全リンクのリンク旅行時間(平均値)で除することにより平均車速を算出する。
【0068】
その後、ナビゲーション装置100は、エリアスライス間隔を算出する(ステップS2)。ナビゲーション装置100は、例えば、算出した平均車速から所定時間(例えば、15分間)で車輌が移動できる距離を算出し、その距離をその地域、その時間帯におけるエリアスライス間隔とする。
【0069】
ナビゲーション装置100は、例えば、東京都千代田区における午前10:00から午前11:00の時間帯における平均車速を8[km/h]であると算出した場合、エリアスライス間隔を2[km](15分間で車輌が移動できる距離)に設定する。
【0070】
ナビゲーション装置100は、上述の処理を日本全国の全ての地域における全ての時間帯について実行し、各地域、各時間帯におけるエリアスライス間隔を算出してエリアスライス間隔データベースに格納する。
【0071】
ナビゲーション装置100は、他のコンピュータにおいて上述の処理により生成されたエリアスライス間隔データベースを出荷時にナビゲーション装置100の記憶装置5に格納するようにしてもよく、最新の交通情報(通信装置2を介して交通情報を受信することにより随時更新される交通情報データベースの情報。)に基づいて電源起動時毎にエリアスライス間隔を算出しエリアスライス間隔データベースを更新するようにしてもよい。
【0072】
図6は、入力装置3を介して目的地Tが入力された場合に経路探索を実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0073】
最初に、ナビゲーション装置100は、入力装置3を介して入力された目的地Tに関する情報を取得する(ステップS11)。
【0074】
その後、ナビゲーション装置100は、測位装置4により測位された現在地Pに関する情報と現在時刻(例えば、午前10時とする。)とに対応するエリアスライス間隔をエリアスライス間隔データベースから取得する(ステップS12)。
【0075】
その後、ナビゲーション装置100は、エリア設定手段13により、ステップS12で取得したエリアスライス間隔(2km)毎に増大する同心円で区切られるエリアR1、R2およびR3を設定し、現在地Pから近い順に振られるエリア番号Nに1をセットする(ステップS13)。
【0076】
その後、ナビゲーション装置100は、予測渋滞情報生成手段11により現在時刻10時の予測渋滞情報を生成し、或いは、直近の交通情報に基づく渋滞情報を取得して、予測渋滞情報適用手段12によりその予測渋滞情報または渋滞情報をエリアR1に適用する(ステップS14)。なお、同心円で区切られるエリアの設定は、目的地Tを含むエリアが生成されるまで継続され、エリアR1乃至R3の3つに限定されるものではない。
【0077】
その後、ナビゲーション装置100は、現在地Pを含むエリアR1が目的地Tを含むエリアであるか否かを判定し(ステップS15)、目的地Tを含まない場合には(ステップS15のNO)、エリア番号Nに1を加算して(ステップS16)、エリアR1の次に近いエリアであるエリアR2に対してステップS14を実行する。
【0078】
その後、ナビゲーション装置100は、2番目のエリアR2に対し、予測渋滞情報生成手段11により生成される10時15分(15分後)の予測渋滞情報を適用し(ステップS14)、さらに、3番目のエリアスライスR3に対し、予測渋滞情報生成手段11により生成される10時30分(30分後)の予測渋滞情報を適用する(ステップS14)。
【0079】
ナビゲーション装置100は、予測渋滞情報を適用したエリアに目的地Tが含まれると判定した場合(ステップS15のYES)、経路探索手段10により現在地Pから目的地Tへの経路を探索する(ステップS17)。
【0080】
これにより、ナビゲーション装置100は、図4に示すように、10時15分に渋滞が予測される区間J1および10時30分に渋滞が予測される区間J2を回避しながら最短時間で目的地Tに至る経路を探索することができる。
【0081】
次に、図7および図8を参照しながらナビゲーション装置100が経路を探索する別の処理の流れについて説明する。ここで説明する処理は、エリアスライス間隔を一定距離とせず現在の渋滞状況に基づいて算出する点で、図4乃至図6を参照しながら説明した処理とは異なる。
【0082】
図7は、図4と同様、表示装置6に表示される経路探索画面の表示例であり、点線で示される主要同心円群および引き出し線は説明のためのもので実際の画面には表示されない。
【0083】
図7は、エリアスライス間隔データベースに登録された一定のエリアスライス間隔ではなく、現在の渋滞状況に基づいて算出されたエリアスライス間隔毎に半径が増大する主要同心円群で区分される主要エリアR7乃至R10を示し、中心円エリアR7には現在時刻である午前10時の渋滞情報が適用され、ドーナッツエリアR8、R9、R10にはそれぞれ15分後、30分後、45分後の予測渋滞情報が適用され、それぞれの時刻における渋滞区間が所定色で強調表示される。
【0084】
図8は、入力装置3を介して目的地Tが入力された場合に経路探索を実行する処理の流れを示すフローチャートであり、図6で示した処理がエリアスライス間隔データベースに登録されたエリアスライス間隔を読み出して利用するのに対し、所定エリアの平均車速を現在の交通情報に基づいて算出し(ステップS22)、その車速に基づいてエリアスライス間隔を算出する(ステップS23)点において相違する。他のステップは、図6のフローチャートに示す処理と同じであるため説明を省略する。
【0085】
最初に、ナビゲーション装置100は、入力装置3を介して入力された目的地Tに関する情報を取得すると(ステップS21)、現在地Pを中心として所定距離(例えば、2km)毎に半径が増大する補助同心円群で区切られる複数の補助エリア、および、現在地Pから目的地T方向に所定角度範囲(例えば、目的地Tの両側にそれぞれ30°)に拡がる扇形エリアを生成し(図3参照。)、複数の補助エリアと扇形エリアとが重複する領域である対象エリアの平均車速を平均車速算出手段14により算出する(ステップS22)。
【0086】
その後、ナビゲーション装置100は、各対象エリアの平均車速に基づいて所定時間(例えば、15分間)刻みに自車の移動距離を算出し、算出した距離をエリアスライス間隔とする(ステップS23)。
【0087】
その結果、ナビゲーション装置100は、現在の渋滞状況に基づいてエリアスライス間隔を算出し、図7に示すようにエリアスライス間隔を主要エリアR7、R8、R9、R10で4[km]、1[km]、2[km]、3[km]とそれぞれ異ならせることができる。
【0088】
これにより、ナビゲーション装置100は、エリアスライス間隔を一定とする場合に比べ、各エリアに適用される予測渋滞情報の基準時刻をより一層現在の渋滞状況に即したものとすることができ、例えば、図4において予測された渋滞区間と図7において予測された渋滞区間とが異なるように、現在の渋滞状況に即したより精度の高い経路探索を提供することができる。
【0089】
以上の構成により、ナビゲーション装置100は、登録されたエリアスライス間隔を使用するか、或いは、現在の渋滞状況に応じて算出されたエリアスライス間隔を使用するかによって、制御装置1に掛かる計算負荷を調整し、経路探索の精度と計算負荷とのバランスを取りながら、時々刻々と変化する渋滞状況を考慮した適切な経路を運転者に提示することができる。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0091】
例えば、上述の実施例では、車載器であるナビゲーション装置100が制御装置1に経路探索手段10、予測渋滞情報生成手段11、予測渋滞情報適用手段12、エリア設定手段13および平均車速算出手段14を備えるが、通信センタ等の外部施設にある制御装置がこれら手段の全部または一部を備え、ナビゲーション装置100は、通信装置2を介して算出結果や探索結果等を受信する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】ナビゲーション装置の構成例を示す図である。
【図2】エリアの分割例を示す図である。
【図3】エリアスライス間隔を算出する処理を説明する図である。
【図4】表示装置に表示される経路探索画面の表示例(その1)である。
【図5】エリアスライス間隔を予め記憶装置に登録する処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】目的地が入力された場合に経路探索を実行する処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
【図7】表示装置に表示される経路探索画面の表示例(その2)である。
【図8】目的地が入力された場合に経路探索を実行する処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
【符号の説明】
【0093】
1 制御装置
2 通信装置
3 入力装置
4 測位装置
5 記憶装置
6 表示装置
10 経路探索手段
11 予測渋滞情報生成手段
12 予測渋滞情報適用手段
13 エリア設定手段
14 平均車速算出手段
100 ナビゲーション装置
C1〜C3 対象エリア
J1〜J6 渋滞区間
P 現在地
Q 扇形エリア
R1〜R10 エリア
S1〜S3 補助エリア
T 目的地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路探索範囲を複数のエリアに分割し渋滞情報を考慮して経路探索を行うナビゲーション装置であって、
交通情報に基づいて所定時刻における予測渋滞情報を生成する予測渋滞情報生成手段と、
車輌が各エリアに到達する時刻における予測渋滞情報を前記各エリアに適用する予測渋滞情報適用手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
現在地を中心とする同心円群で区切られた領域を前記複数のエリアとして設定するエリア設定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記同心円群は、地域別または時間帯別に予め定められた一定距離刻みで半径が増大する、
ことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記同心円群は、平均車速に基づいて算出される所定時間当りの走行距離刻みで半径が増大する、
ことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
現在地を中心とする補助同心円群で区切られた複数の補助エリアと現在地から所定角度範囲に拡がる扇形エリアとの重複領域である各対象エリアに含まれる道路の交通情報に基づいて前記各対象エリアにおける平均車速を算出する平均車速算出手段と、
現在地を中心とし、前記各対象エリアにおける平均車速に基づいて算出される所定時間当りの走行距離刻みで半径が増大する主要同心円群で区切られた領域を前記複数のエリアとして設定するエリア設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−89466(P2008−89466A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271996(P2006−271996)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】