説明

ハイブリッド自動車

【課題】電動機に接続されたギヤ機構での異音の抑制と内燃機関の運転効率の低下の抑制との両立を図る。
【解決手段】効率優先運転ポイントでエンジンが運転されると共に要求トルクTr*が駆動軸に出力されるようエンジンと二つのモータとを制御すると第2モータから出力されるトルクが異音トルク範囲内となるときには(S170)、異音抑制動作ラインと要求パワーPe*とを用いて得られる第1仮運転ポイントと(S180)、第2モータから出力されるトルクが異音トルク範囲の上限よりも大きくなると共に要求パワーPe*がエンジンから出力されるよう設定される第2仮運転ポイントと(S190)、のうち回転数が小さい方の運転ポイントでエンジンが運転されると共に要求トルクTr*が駆動軸に出力されるようエンジンと二つのモータとを制御する(S200〜S270)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に関し、詳しくは、内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、駆動軸にギヤ機構を介して接続された電動機と、発電機および電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備えるハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、第1のモータ(MG1)と、車軸に連結された駆動軸とエンジンのクランクシャフトとモータMG1の回転軸とにリングギヤとキャリアとサンギヤとが接続された動力分配統合機構と、減速ギヤを介して駆動軸に回転軸が接続された第2のモータ(MG2)と、を備えるハイブリッド自動車において、エンジンを効率よく運転する制約とエンジンに要求される要求パワーとを用いて得られる回転数およびトルクからなる運転ポイントでエンジンが運転されると共に要求トルクが駆動軸に出力されるようエンジンの目標回転数や目標トルク,モータMG1,MG2のトルク指令を設定するとモータMG2のトルク指令が値0近傍となるときには、値0近傍から若干離れたトルクをモータMG2のトルク指令に再設定し、エンジンから要求パワーが出力されると共に要求トルクが駆動軸に出力されるようエンジンの目標回転数や目標トルク,モータMG1のトルク指令を再設定し、これらを用いてエンジンとモータMG1,MG2とを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、上述の制御により、減速ギヤを介して接続された第2モータから出力されるトルクが値0近傍となることに起因する減速ギヤでの異音の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−262585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド自動車では、減速ギヤでの異音を抑制することができるものの、エンジンの運転効率が必要以上に悪化してしまう場合が生じる。このため、減速ギヤでの異音を抑制することとエンジンの運転効率の低下を抑制することとの両立を図ることが課題一つとされている。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、電動機に接続されたギヤ機構での異音の抑制と内燃機関の運転効率の低下の抑制との両立を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸にギヤ機構を介して接続された電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記駆動軸に要求される要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、
前記設定された要求トルクに基づいて前記内燃機関から出力すべき要求パワーを設定する要求パワー設定手段と、
前記内燃機関を効率よく運転するための回転数とトルクとの関係として定められた効率優先制約に対して前記設定された要求パワーを適用して得られる回転数およびトルクからなる効率優先運転ポイントで前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求トルクに基づくトルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する通常制御を実行すると前記電動機から出力されるトルクが前記ギヤ機構で異音を生じ得る範囲として定められた異音トルク範囲内となるときには、前記内燃機関の運転効率よりも前記ギヤ機構での異音の抑制を優先するために前記効率優先制約よりも回転数が大きくなる傾向の回転数とトルクとの関係として定められた異音抑制制約に対して前記設定された要求パワーを適用して得られる回転数およびトルクからなる異音抑制制約起因運転ポイントと、前記電動機から出力されるトルクが前記異音トルク範囲の上限より大きくなると共に前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されるよう設定される回転数およびトルクからなる電動機トルク起因運転ポイントと、のうち回転数が小さい方の運転ポイントで前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求トルクに基づくトルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、内燃機関を効率よく運転するための回転数とトルクとの関係として定められた効率優先制約に対して駆動軸に要求される要求トルクに基づく内燃機関から出力すべき要求パワーを適用して得られる回転数およびトルクからなる効率優先運転ポイントで内燃機関が運転されると共に要求トルクに基づくトルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する通常制御を実行すると電動機から出力されるトルクがギヤ機構で異音を生じ得る範囲として定められた異音トルク範囲内となるときには、内燃機関の運転効率よりもギヤ機構での異音の抑制を優先するために効率優先制約よりも回転数が大きくなる傾向の回転数とトルクとの関係として定められた異音抑制制約に対して要求パワーを適用して得られる回転数およびトルクからなる異音抑制制約起因運転ポイントと、電動機から出力されるトルクが異音トルク範囲の上限より大きくなると共に内燃機関から要求パワーが出力されるよう設定される回転数およびトルクからなる電動機トルク起因運転ポイントと、のうち回転数が小さい方の運転ポイントで内燃機関が運転されると共に要求トルクに基づくトルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する。異音抑制制約起因運転ポイントや電動機トルク起因運転ポイントは効率優先運転ポイントに比して回転数が大きくなると共にトルクが小さくなるが、一般に、内燃機関から要求パワーを出力する場合の内燃機関の運転効率は、その運転ポイントが効率優先運転ポイントから離れているほど低下する。したがって、異音抑制制約起因運転ポイントと電動機トルク起因運転ポイントと、のうち回転数が小さい方の運転ポイントで内燃機関を運転することにより、ギヤ機構での異音の抑制と内燃機関の運転効率の低下の抑制との両立を図ることができる。なお、異音抑制制約起因運転ポイントは、効率優先運転ポイントよりも回転数を大きくして内燃機関から遊星歯車機構を介して駆動軸に伝達されるトルク変動を抑制することによってギヤ機構での異音を抑制可能な運転ポイントであり、電動機トルク起因運転ポイントは、電動機からの出力トルクを異音トルク範囲の上限より大きくすることによってギヤ機構での異音を抑制可能な運転ポイントである、ものとすることもできる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記通常制御を実行すると前記電動機から出力されるトルクが前記異音トルク範囲内となるときには、前記電動機から出力されるトルクが前記異音トルク範囲の上限より大きくなるよう前記電動機トルク起因運転ポイントのトルクを設定すると共に該設定した電動機トルク起因運転ポイントのトルクで前記設定された要求パワーを除して前記電動機トルク起因運転ポイントの回転数を設定する手段である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】効率優先動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図5】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図6】異音抑制動作ラインの一例と第1仮回転数Ne1と第1仮トルクTe1とを設定する様子とを図6に示す説明図である。
【図7】効率優先運転ポイント(回転数Ne0,トルクTe0)と第1仮運転ポイント(回転数Ne1,トルクTe1)と第2仮運転ポイント(回転数Ne2,トルクTe2)との関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関として構成されたエンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して複数のピニオンギヤ33を連結したキャリア34が接続されると共に駆動輪63a,63bにギヤ機構60とデファレンシャルギヤ62とを介して連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aにリングギヤ32が接続されて遊星歯車機構として構成された3軸式の動力分配統合機構30と、例えば周知の同期発電電動機として構成されて動力分配統合機構30のサンギヤ31にロータが接続されたモータMG1と、例えば周知の同期発電電動機として構成されて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介してロータが接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されてインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力のやりとりを行なうバッテリ50と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
【0013】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により吸入空気量調節制御や燃料噴射制御,点火制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための種々の制御信号、例えば、スロットルバルブや燃料噴射弁,点火プラグ,可変バルブタイミング機構への駆動制御信号などが出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0014】
モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0015】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧やバッテリ50の正極側の出力端子に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいてバッテリ50に蓄えられている蓄電量の全容量(蓄電容量)に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0016】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0017】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード,エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードおよび充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであるから、両者を合わせてエンジン運転モードとして考えることができる。
【0018】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2は、実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0019】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の蓄電割合SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0020】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図3に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除すること(Nr=Nm2/Gr)によって求めたりすることができる。
【0021】
続いて、エンジン22を効率よく運転する(エンジン22の運転効率の向上を図る)ための回転数とトルクとの関係として定められた動作ライン(以下、効率優先動作ラインという)に対して要求パワーPe*を適用して得られる回転数およびトルクをエンジン22を運転すべき運転ポイントにおける目標回転数Ne*と目標トルクTe*として設定する(ステップS120)。効率優先動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図4に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とは、効率優先動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。以下、この目標回転数Ne*および目標トルクTe*からなる運転ポイントを効率優先運転ポイントという。
【0022】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算したモータMG1の目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS130)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図5に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0023】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0024】
そして、要求トルクTr*にモータMG1のトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(3)により計算すると共に(ステップS140)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との差分をモータMG2の回転数Nm2で除することによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(4)および式(5)により計算し(ステップS150)、設定した仮トルクTm2tmpを式(6)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS160)。ここで、式(6)は、図5の共線図から容易に導くことができる。
【0025】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (6)
【0026】
次に、モータMG2のトルク指令Tm2*を閾値Trefおよび閾値(−Tref)と比較する(ステップS170)。ここで、閾値Trefおよび閾値(−Tref)は、減速ギヤ35などで歯打ちによる異音が生じ得る範囲である異音トルク範囲の上限および下限として定められ、閾値Trefは、例えば、2Nmや3Nm,5Nmなどの値を用いることができる。モータMG2から出力されるトルクが値0近傍で推移すると、若干のアクセル開度Accの変化などによってモータMG2から出力されるトルクが値0を跨いで反転し、減速ギヤ35などで歯打ちによる異音を生じることがある。ステップS170の処理は、ステップS120〜S160で設定したエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を用いてエンジン22とモータMG1,MG2とを制御する通常制御を実行すると減速ギヤ35などで歯打ちによる異音が生じ得るか否かを判定する処理である。
【0027】
モータMG2のトルク指令Tm2*が閾値(−Tref)より小さいときや閾値Trefより大きいときには、減速ギヤ35などで歯打ちによる異音は生じないと判断し、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS270)、本ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量調節制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、この場合、効率優先運転ポイントでエンジン22を運転しながら要求トルクTr*に基づくトルクを駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力して走行することができる。
【0028】
モータMG2のトルク指令Tm2*が閾値(−Tref)以上で閾値Tref以下のときには、減速ギヤ35などで歯打ちによる異音を生じ得ると判断し、エンジン22の運転効率よりも減速ギヤ35などでの異音の抑制を優先するための回転数とトルクとの関係として定められた動作ライン(以下、異音抑制動作ラインという)に対して要求パワーPe*を適用してエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*の第1の仮の値である第1仮回転数Ne1および第1仮トルクTe1を設定し(ステップS180)、モータMG2から出力されるトルクが閾値Trefより若干大きなトルクTset(閾値Trefにマージンを加えたトルク)となるよう、トルクTsetと動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いてエンジン22の目標トルクTe*の第2の仮の値である第2仮トルクTe2を次式(7)により計算すると共に計算した第2仮トルクTe2で要求パワーPe*を除してエンジン22の目標回転数Ne*の第2の仮の値である第2仮回転数Ne2を計算する(ステップS190)。以下、第1仮回転数Ne1および第1仮トルクTe1からなる運転ポイントを第1仮運転ポイントといい、第2仮回転数Ne2および第2仮トルクTe2からなる運転ポイントを第2仮運転ポイントという。異音抑制動作ラインの一例と第1仮回転数Ne1と第1仮トルクTe1とを設定する様子とを図6に示す。図6では、参考のために、効率優先動作ラインを一点鎖線で示した。異音抑制動作ラインは、回転数が所定回転数Neref以下の領域では同一のトルクや同一の要求パワーPe*に対して効率優先動作ラインよりも回転数が大きくなる傾向に設定され、回転数が所定回転数Nerefより大きい領域では効率優先動作ラインと同一に設定される。これは、以下の理由による。まず、回転数が所定回転数Neref以下の領域については、エンジン22の回転数を大きくして、エンジン22から動力分配統合機構30を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32a,減速ギヤ35に伝達されるトルク変動を抑制することによって、モータMG2から出力されるトルクの変動によって減速ギヤ35で歯打ちを生じる場合でもその程度を抑制するためである。また、回転数が所定回転数Nrefより大きい領域については、通常、この領域でエンジン22の運転ポイントが設定されるときには要求トルクTr*や要求パワーPe*が比較的大きいことから、モータMG2から出力されるトルクが異音トルク範囲内となる可能性が低く、減速ギヤ35などで異音が生じ得る可能性が低いと考えられるためである。こうして設定される第1仮運転ポイントは、効率優先運転ポイントよりも回転数を大きくしてエンジン22から動力分配統合機構30を介してリングギヤ軸32aに伝達されるトルク変動を抑制することによって減速ギヤ35などでの異音を抑制可能な運転ポイントとなり、第2仮運転ポイントは、モータMG2からの出力トルクを異音トルク範囲の上限より大きくすることによって減速ギヤ35などでの異音を抑制可能な運転ポイントとなる。
【0029】
Te*=(1+ρ)・(Tr*-Tset・Gr) (7)
【0030】
続いて、設定した第1仮回転数Ne1と第2仮回転数Ne2とを比較し(ステップS200)、第1仮回転数Ne1が第2仮回転数Ne2以下のときには、第1仮回転数Ne1および第1仮トルクTe1をエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*として設定し(ステップS210)、前述のステップS130〜S160の処理と同様に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し(ステップS230〜S260)、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS270)、本ルーチンを終了する。一方、第1仮回転数Ne1が第2仮回転数Ne2より大きいときには、第2仮回転数Ne2および第2仮トルクTe2をエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*として設定し(ステップS210)、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し(ステップS230〜S260)、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS270)、本ルーチンを終了する。即ち、第1仮運転ポイント(回転数Ne1,トルクTe1)と第2仮運転ポイント(回転数Ne2,トルクTe2)とのうち回転数が小さい方の運転ポイントでエンジン22を運転するのである。以下、このようにする理由について説明する。
【0031】
図7は、効率優先運転ポイント(回転数Ne0,トルクTe0)と第1仮運転ポイント(回転数Ne1,トルクTe1)と第2仮運転ポイント(回転数Ne2,トルクTe2)との関係の一例を示す説明図である。図中、効率優先動作ラインや異音抑制動作ライン,エンジン22の運転効率ηについても図示した。いま、エンジン22から要求パワーPe*を出力するときを考えると、エンジン22の運転ポイントは、回転数が大きいほどトルクは小さくなる。また、図7から分かるように、エンジン22から要求パワーPe*を出力するときのエンジン22の運転効率ηは、エンジン22の運転ポイントが効率優先運転ポイントから離れているほど低下する。このため、効率優先運転ポイントでエンジン22が運転されながら要求トルクTr*に基づくトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定するとモータMG2のトルク指令Tm2*が異音トルク範囲内となるときに、第1仮運転ポイントと第2仮運転ポイントとのうち回転数が小さい方(効率優先運転ポイントに近い方)の運転ポイントでエンジン22を運転することにより、減速ギヤ35での異音を抑制することができると共に、このときに必ず第1仮運転ポイントでエンジン22を運転するものやこのときに必ず第2仮運転ポイントでエンジン22を運転するものに比して、エンジン22の運転効率ηの低下を抑制することができる。即ち、減速ギヤ35での異音の抑制とエンジン22の運転効率ηの低下の抑制との両立を図ることができる。
【0032】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、効率優先動作ラインに対して要求パワーPe*を適用して得られる回転数およびトルクからなる効率優先運転ポイントでエンジン22が運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジン22とモータMG1,MG2とを制御する通常制御を実行するとモータMG2から出力されるトルクが異音トルク範囲内となるときには、効率優先制約よりも回転数が大きくなる傾向の異音抑制動作ラインに対して要求パワーPe*を適用して得られる第1仮回転数Ne1および第1仮トルクTe1からなる第1仮運転ポイントと、モータMG2から出力されるトルクが異音トルク範囲の上限よりも大きなトルクTsetとなると共に要求パワーPe*がエンジン22から出力されるよう設定される第2仮回転数Ne2および第2仮トルクTe2からなる第2仮運転ポイントと、のうち回転数が小さい方の運転ポイントでエンジン22が運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を再設定してエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するから、減速ギヤ35での異音の抑制とエンジン22の運転効率ηの低下の抑制との両立を図ることができる。
【0033】
実施例のハイブリッド自動車20では、通常制御を実行するとモータMG2から出力されるトルクが異音トルク範囲内となるときに、閾値Trefより若干大きなトルクTsetがモータMG2から出力されるようトルクTsetと動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて上述の式(7)により第2仮トルクTe2を計算すると共に計算した第2仮トルクTe2で要求パワーPe*を除して第2仮回転数Ne2を計算するものとしたが、モータMG2から出力されるトルクが閾値Trefよりも大きくなると共に要求パワーPe*がエンジン22から出力されるよう第2仮回転数Ne2および第2仮トルクTe2を設定するものであれば如何なる方法で第2仮回転数Ne2および第2仮トルクTe2を設定するものとしても構わない。
【0034】
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
【0035】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求される要求トルクTr*を設定する図2の駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求トルク設定手段」に相当し、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として要求パワーPe*を計算する図2の駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求パワー設定手段」に相当し、効率優先動作ラインに対して要求パワーPe*を適用して得られる回転数およびトルクからなる効率優先運転ポイントでエンジン22が運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するとモータMG2から出力されるトルクが異音トルク範囲内となるときには、効率優先制約よりも回転数が大きくなる傾向の異音抑制動作ラインに対して要求パワーPe*を適用して得られる第1仮回転数Ne1および第1仮トルクTe1からなる第1仮運転ポイントと、モータMG2から出力されるトルクが異音トルク範囲の上限よりも大きなトルクTsetとなると共に要求パワーPe*がエンジン22から出力されるよう設定される第2仮回転数Ne2および第2仮トルクTe2からなる第2仮運転ポイントと、のうち回転数が小さい方の運転ポイントでエンジン22が運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を再設定してエンジンECU24やモータECU40に送信する図2の駆動制御ルーチンのステップS120以降の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、受信した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24と、受信したトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40と、が「制御手段」に相当する。
【0036】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関として構成されたエンジン22に限定されるものではなく、水素エンジンなど、如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機であっても構わない。「遊星歯車機構」としては、遊星歯車機構として構成された3軸式の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続されたものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介してロータが接続されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸にギヤ機構を介して接続されたものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、発電機や電動機と電力のやりとりが可能なものであれば如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「要求トルク設定手段」としては、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定するものに限定されるものではなく、アクセル開度Accだけに基づいて要求トルクを設定するものなど、走行に要求される要求トルクを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「要求パワー設定手段」としては、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として要求パワーPe*を計算するものに限定されるものではなく、要求トルクに基づいて内燃機関から出力すべき要求パワーを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく、単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、効率優先動作ラインに対して要求パワーPe*を適用して得られる回転数およびトルクからなる効率優先運転ポイントでエンジン22が運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するとモータMG2から出力されるトルクが異音トルク範囲内となるときには、効率優先制約よりも回転数が大きくなる傾向の異音抑制動作ラインに対して要求パワーPe*を適用して得られる第1仮回転数Ne1および第1仮トルクTe1からなる第1仮運転ポイントと、モータMG2から出力されるトルクが異音トルク範囲の上限よりも大きなトルクTsetとなると共に要求パワーPe*がエンジン22から出力されるよう設定される第2仮回転数Ne2および第2仮トルクTe2からなる第2仮運転ポイントと、のうち回転数が小さい方の運転ポイントでエンジン22が運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を再設定してエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するものに限定されるものではなく、内燃機関を効率よく運転するための回転数とトルクとの関係として定められた効率優先制約に対して要求パワーを適用して得られる回転数およびトルクからなる効率優先運転ポイントで内燃機関が運転されると共に要求トルクに基づくトルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する通常制御を実行すると電動機から出力されるトルクがギヤ機構で異音を生じ得る範囲として定められた異音トルク範囲内となるときには、内燃機関の運転効率よりもギヤ機構での異音の抑制を優先するために効率優先制約よりも回転数が大きくなる傾向の回転数とトルクとの関係として定められた異音抑制制約に対して要求パワーを適用して得られる回転数およびトルクからなる異音抑制制約起因運転ポイントと、電動機から出力されるトルクが異音トルク範囲の上限より大きくなると共に内燃機関から要求パワーが出力されるよう設定される回転数およびトルクからなる電動機トルク起因運転ポイントと、のうち回転数が小さい方の運転ポイントで内燃機関が運転されると共に要求トルクに基づくトルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0037】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0038】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸にギヤ機構を介して接続された電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記駆動軸に要求される要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、
前記設定された要求トルクに基づいて前記内燃機関から出力すべき要求パワーを設定する要求パワー設定手段と、
前記内燃機関を効率よく運転するための回転数とトルクとの関係として定められた効率優先制約に対して前記設定された要求パワーを適用して得られる回転数およびトルクからなる効率優先運転ポイントで前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求トルクに基づくトルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する通常制御を実行すると前記電動機から出力されるトルクが前記ギヤ機構で異音を生じ得る範囲として定められた異音トルク範囲内となるときには、前記内燃機関の運転効率よりも前記ギヤ機構での異音の抑制を優先するために前記効率優先制約よりも回転数が大きくなる傾向の回転数とトルクとの関係として定められた異音抑制制約に対して前記設定された要求パワーを適用して得られる回転数およびトルクからなる異音抑制制約起因運転ポイントと、前記電動機から出力されるトルクが前記異音トルク範囲の上限より大きくなると共に前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されるよう設定される回転数およびトルクからなる電動機トルク起因運転ポイントと、のうち回転数が小さい方の運転ポイントで前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求トルクに基づくトルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記通常制御を実行すると前記電動機から出力されるトルクが前記異音トルク範囲内となるときには、前記電動機から出力されるトルクが前記異音トルク範囲の上限より大きくなるよう前記電動機トルク起因運転ポイントのトルクを設定すると共に該設定した電動機トルク起因運転ポイントのトルクで前記設定された要求パワーを除して前記電動機トルク起因運転ポイントの回転数を設定する手段である、
ハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−111449(P2012−111449A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264364(P2010−264364)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】