説明

ハイブリッド車両

【課題】減速回生中のシフトダウンに関し、運転者の違和感を減少し、また、電力の回収漏れを抑制すること。
【解決手段】第1及び第2変速機構と、前記第1変速機構に接続された電動機と、前記第1及び第2変速機構と断続される内燃機関と、を備えたハイブリッド車両において、運転者の制動要求中、前記電動機による減速回生を行う減速回生制御手段と、運転者の制動要求により前記減速回生制御手段が前記減速回生を行っている場合であって、前記第1変速機構により実現される所定の変速段を選択中に、前記制動要求に係る制動要求量が所定量減少した場合は前記第1変速機構により実現される、前記所定の変速段よりも低速側の変速段に切り替える一方、減少しない場合は前記所定の変速段を維持するシフト制御手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機と内燃機関とを備えたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機としていわゆるデュアルクラッチ式変速機が知られている(特許文献1及び2)。デュアルクラッチ式変速機は、異なる変速段を実現する2つの変速機構を備え、この2つの変速機構と内燃機関とを断続することで、変速時に駆動輪への動力伝達の途切れを抑制することが可能である。また、このようなデュアルクラッチ式変速機を適用したハイブリッド車両も提案されている(特許文献1及び2)。特許文献1及び2に記載のハイブリッド車両では、変速機構の一方に電動機(モータ)を接続し、この電動機により減速回生(回生制動)を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−179208号公報
【特許文献2】特開2010−89537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に変速段の切り替えは、車速といった車両の走行状態に基づき行われる。しかし、運転者のブレーキ操作を契機として減速回生を行っている場合に、走行状態に基づきシフトダウンが行われると、電動機と駆動輪との動力伝達が一時的に途切れることにより制動力が一時的に抜けた状態となって運転者に違和感を与える場合がある。また、電動機と駆動輪との動力伝達が一時的に途切れることにより、電力の回収漏れが生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、減速回生中のシフトダウンに関し、運転者の違和感を減少し、また、電力の回収漏れを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第1及び第2変速機構と、前記第1変速機構に接続された電動機と、前記第1及び第2変速機構と断続される内燃機関と、を備えたハイブリッド車両において、運転者の制動要求中、前記電動機による減速回生を行う減速回生制御手段と、運転者の制動要求により前記減速回生制御手段が前記減速回生を行っている場合であって、前記第1変速機構により実現される所定の変速段を選択中に、前記制動要求に係る制動要求量が所定量減少した場合は前記第1変速機構により実現される、前記所定の変速段よりも低速側の変速段に切り替える一方、減少しない場合は前記所定の変速段を維持するシフト制御手段と、を備えたことを特徴とするハイブリッド車両が提供される。
【0007】
この構成によれば、運転者の制動要求量が減少した場合は制動力の減少を運転者が予定している。よって、これを契機としてシフトダウンを行って制動力が一時的に抜けた状態となっても運転者が余り違和感を感じないことになる。そして、運転者の制動要求量が減少しない場合は変速段を維持することで、減速回生を継続でき、電力の回収漏れを抑制することができる。
【0008】
本発明においては、前記ハイブリッド車両を減速する、ブレーキバイワイヤ式の摩擦ブレーキ装置と、前記摩擦ブレーキ装置を制御するブレーキ制御手段と、を備えてもよい。
【0009】
ブレーキバイワイヤ式の摩擦ブレーキ装置を備えたことで、制動時の摩擦ブレーキ装置と減速回生との分配を任意に制御でき、減速回生を優先した制御が可能となる。このため、電力の回収漏れを抑制することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記ブレーキ制御手段は、運転者の制動要求により前記減速回生制御手段が前記減速回生を行っている場合であって、前記シフト制御手段が前記第1変速機構により実現される、前記所定の変速段よりも高速側の変速段から、該高速側の変速段よりも低速側の変速段へシフトダウンする場合に、前記ハイブリッド車両の減速加速度が所定値を超える場合は前記摩擦ブレーキ装置を作動し、超えない場合は非作動としてもよい。
【0011】
相対的に高速側の変速段においては、シフトダウンに伴って制動力が一時的に抜けた状態となっても、運転者が違和感を感じ難いところ、減速加速度が大きい状態にあっては制動力の抜けが大きくなって運転者が違和感を感じるおそれがあることから、摩擦ブレーキ装置を作動することで、制動力の抜けを補い、運転者の違和感を減少できる。
【0012】
また、本発明においては、前記電動機が発電した電力を蓄電する蓄電器を備え、前記蓄電器の蓄電量が規定量を超える場合、運転者の制動要求により、前記ブレーキ制御手段は前記摩擦ブレーキ装置を作動させる一方、前記減速回生制御手段は前記減速回生を行わなくてもよい。
【0013】
蓄電量が多い場合は、減速回生による蓄電が適当でないことから摩擦ブレーキ装置を優先させることで、必要な制動力を確保できる。
【0014】
また、本発明においては、前記電動機が発電した電力を蓄電する蓄電器を備え、前記蓄電器の蓄電量が前記規定量を超える場合、運転者の制動要求により、前記内燃機関と、前記第1及び第2変速機構のうち、選択中の変速段を実現する変速機構とを接続状態としてもよい。
【0015】
蓄電量が多い場合は、減速回生による蓄電が適当でないことからエンジンブレーキを活用して、必要な制動力を確保できる。
【0016】
また、本発明においては、前記シフト制御手段は、運転者の制動要求があった場合に、選択中の変速段が前記第2変速機構で実現される変速段である場合に、前記第1変速機構で実現される変速段に変速段を切り替えてもよい。
【0017】
電動機が接続された第1変速機構を優先的に利用することで、電力の回収漏れを抑制することができる。
【0018】
また、本発明においては、前記シフト制御手段は、前記制動要求量が前記所定量減少しないことにより前記所定の変速段を維持したまま、前記ハイブリッド車両が停止した場合には、最低段に変速段を切り替えてもよい。
【0019】
次の発進を円滑なものとすることができ、運転者の操作感を向上できる。
【0020】
また、本発明においては、前記所定の変速段が、所定の車速以下の場合に選択される変速段であってもよい。或いは、前記所定の変速段が、前記第1変速機構により実現される変速段のうち、低速側から2つ目の変速段であってもよい。
【0021】
相対的に低速段では、シフトダウンに伴って制動力が一時的に抜けた状態となった場合に運転者が違和感を感じ易いことから、上記の制御による運転者の違和感解消が効果的に現れる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、減速回生中のシフトダウンに関し、運転者の違和感を減少し、また、電力の回収漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動系の概略を示す図。
【図2】制御部のブロック図。
【図3】減速回生時のシフト制御、ブレーキ制御の説明図。
【図4】減速回生時のシフト制御、ブレーキ制御のタイミングチャート。
【図5】(A)は減速回生制御のフローチャート、(B)は蓄電量の規定量の説明図。
【図6】シフト制御のフローチャート。
【図7】ブレーキ制御のフローチャート。
【図8】クラッチ制御のフローチャート。
【図9】本発明の他の実施形態に係るハイブリッド車両の概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
<構成の概略>
図1は本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動系の概略を示す図であり、特に、スケルトン図で示した変速機1周辺の構成を示している。概説すると、内燃機関Eg或いは電動機Mから出力される駆動力は、変速機1、終減速装置2を介して駆動軸3に伝達され、駆動輪DWを回転してハイブリッド車両の推進力を得て該車両を加速させる。また、電動機Mによる減速回生やブレーキ装置4によりハイブリッド車両の制動力を得て該車両を減速させる。
【0025】
内燃機関Egは例えばガソリンエンジンであり、その出力軸(クランク軸)には発進デバイスとしてクラッチC1、C2が接続されている。クラッチC1は変速機1の第1変速機構10、特に主軸11と内燃機関Egとを断続し、クラッチC2は変速機1の第2変速機構20、特に主軸21と内燃機関Egとを断続する。クラッチC1及びC2は例えば摩擦式ディスククラッチである。
【0026】
電動機Mは、例えば、3相ブラシレスモータであり、回転子Mrと固定子Msとを備える。電動機MはインバータITを介して蓄電器BTに蓄電された電力の供給を受けて駆動力を出力し(力行)、また、発電機として機能してインバータITを介して蓄電器BTに電力を蓄電する(回生)。回生時の回転子Mrに生じる回転抵抗を利用して制動力を得ることができる。蓄電器BTは例えば二次電池である。
【0027】
本実施形態の場合、電動機Mは第1変速機構10に接続されている。詳細には、電動機Mは第1変速機構10の主軸11と同軸上に配置され、電動機Mの回転子Mrが第1変速機構10の主軸11の端部に固定されており、回転子Mrが主軸11と同軸上で回転する。このため、主軸11の回転力は常時回転子Mrに伝達される。本実施形態では、主軸11と回転子Mrとを固定する構成としたが、主軸11の回転力が電動機Mに常時伝達される任意の構成を採用可能である。
【0028】
終減速装置3は駆動軸3、3と接続された差動機構を備え、変速機1の出力ギヤGfを介して変速機1との間で動力伝達する。ブレーキ装置4は、摩擦式のブレーキ装置であり、図1の例では車体側のキャリパと、駆動輪DWないし駆動軸3側のブレーキディスクと、を備えたディスクブレーキを想定している。しかし、ドラムブレーキ等の他の摩擦式のブレーキ装置も採用可能である。
【0029】
本実施形態の場合、ブレーキ装置4はブレーキバイワイヤ式であり、運転者の制動要求は、後述する制御部40を常に介在するものとなる。ブレーキ装置4をブレーキバイワイヤ式とすることで、制動時のブレーキ装置4と電動機Mによる減速回生との分配を任意に制御でき、減速回生を優先した制御が可能となる。このため、電動機Mによる電力の回収漏れを抑制することができる。
【0030】
<変速機の構成>
変速機1は、前進7段、後進1段の変速段を有する変速機であり、奇数段を実現する第1変速機構10及びクラッチC1と、偶数段及び後進段を実現する第2変速機構20及びクラッチC2と、を主要な構成としたデュアルクラッチ式変速機である。
【0031】
第1変速機構10は、一方端部がクラッチC1に、他方端部が電動機Mの回転子Mrに、それぞれ固定された主軸11を備える。主軸11には後進段用の駆動ギヤGrと常時噛み合う従動ギヤGr’が固定されている。
【0032】
主軸11の他方端部には、また、遊星歯車機構PGのサンギヤPGsが固定されている。遊星歯車機構PGは主軸11と同軸上に配置され、サンギヤPGs、リングギヤPGr、サンギヤPGs及びリングギヤPGrに噛合するピニオンギヤPGp、及び、ピニオンギヤPGpを回転自在に支持すると共に主軸11回りに回転自在なキャリアPGc、を備える。
【0033】
キャリアPGcは、主軸11と同軸の筒体であって、主軸11と同軸上で回転自在に支持された連結軸14により支持されている。連結軸14には3速用の駆動ギヤG3が固定されており、連結軸14、キャリアPGc及びピニオンギヤPGp、並びに、駆動ギヤG3は、主軸11と同軸上で一体的に回転自在となっている。
【0034】
連結軸12、13は、主軸11と同軸の筒体であって、主軸11と同軸上で回転自在に支持されている。連結軸12には5速用の駆動ギヤG5が、連結軸13には7速用の駆動ギヤG7が、それぞれ固定されており、連結軸12と駆動ギヤG5、連結軸13と駆動ギヤG5は、それぞれ、主軸11と同軸上で一体的に回転自在となっている。
【0035】
1速及び後進段用のシフタSF1rは、遊星歯車機構PGのリングギヤPGrと変速機ケース1aとの接続・解放を行う。3速及び7速用のシフタSF37は、主軸11と連結軸14(駆動ギヤG3)との接続・解放、及び、主軸11と連結軸13(駆動ギヤG7)の接続・解放を行う。5速用のシフタSF5は、主軸11と連結軸12(駆動ギヤG5)の接続・解放を行う。これらのシフタはドグクラッチ/ブレーキ等の係合機構である。
【0036】
第2変速機構10は、主軸11と同軸の筒体であって、主軸11と同軸上で回転自在に支持された主軸21を備える。主軸21の一方端部にはクラッチC2が、他方端部にはギヤGaが、それぞれ固定されている。
【0037】
第2変速機構10は、また、主軸11と平行に、回転自在に設けられたアイドル軸26、中間軸22を備える。アイドル軸26にはギヤGaと常時噛み合うアイドルギヤGiが固定されている。中間軸22にはアイドルギヤGiと常時噛み合うギヤGbが固定されている。
【0038】
連結軸23乃至25は、中間軸22と同軸の筒体であって、中間軸22と同軸上で回転自在に支持されている。連結軸23には4速用の駆動ギヤG4が、連結軸24には6速酔うの駆動ギヤG6が、連結軸25には2速酔うの駆動ギヤG2が、それぞれ固定され、これらは、それぞれ、中間軸22と同軸上で一体的に回転自在となっている。
【0039】
2速及び6速用のシフタSF26は、中間軸22と連結軸25(駆動ギヤG2)との接続・解放、及び、中間軸22と連結軸24(駆動ギヤG6)の接続・解放を行う。4速用のシフタSF4は、中間軸22と連結軸23(駆動ギヤG4)の接続・解放を行う。これらのシフタはドグクラッチ等の係合機構である。
【0040】
第2変速機構10は、また、主軸11と平行に、回転自在に設けられた中間軸27を備える。中間軸27にはギヤGbと常時噛み合うギヤGcが固定されている。連結軸28は、中間軸27と同軸の筒体であって、中間軸27と同軸上で回転自在に支持されている。連結軸28には後進段用の駆動ギヤGrが固定されている。後進段用のシフタSFrは、中間軸27と連結軸28(駆動ギヤGr)との接続・解放を行う。このシフタSFrはドグクラッチ等の係合機構である。
【0041】
変速機1は、主軸11と平行に、回転自在に設けられたカウンタ軸30を備える。カウンタ軸30には、終減速装置2の差動機構と常時噛み合う出力ギヤGfと、パーキングロック機構を構成するパーキングギヤGpと、4速・5速用の従動ギヤG45と、6速・7速用の従動ギヤG67と、2速・3速用の従動ギヤG23と、が固定されている。
【0042】
従動ギヤG45は、駆動ギヤG4及びG5と常時噛み合っている。従動ギヤG67は、駆動ギヤG6及びG7と常時噛み合っている。従動ギヤ23は、駆動ギヤG2及びG3と常時噛み合っている。
【0043】
係る構成からなる変速機1の、内燃機関Egを駆動源とした場合の各変速段選択時の態様について説明する。まず、1速、3速、5速、7速の場合について説明する。これらの変速段を選択する場合は、クラッチC1を接続状態とし、クラッチC2を解放状態とする。
【0044】
1速の場合、シフタSF1rにより遊星歯車機構PGのリングギヤPGrと変速機ケース1aとを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC1→主軸11・サンギヤPGs→ピニオンギヤPGp・キャリアPGc・連結軸14・駆動ギヤG3→従動ギヤG23・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、1速が実現される。
【0045】
3速の場合、シフタSF37により、主軸11と連結軸14とを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC1→主軸11・連結軸14・駆動ギヤG3→従動ギヤG23・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、3速が実現される。
【0046】
5速の場合、シフタSF5により、主軸11と連結軸12とを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC1→主軸11・連結軸12・駆動ギヤG5→従動ギヤG45・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、5速が実現される。
【0047】
7速の場合、シフタSF37により、主軸11と連結軸13とを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC1→主軸11・連結軸13・駆動ギヤG7→従動ギヤG67・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、7速が実現される。
【0048】
2速、4速、6速の変速段を選択する場合は、クラッチC1を解放状態とし、クラッチC2を接続状態とする。
【0049】
2速の場合、シフタSF26により、中間軸22と連結軸25とを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC2→主軸21・ギヤGa→アイドルギヤGi→ギヤGb・中間軸22・連結軸25・駆動ギヤG2→従動ギヤG23・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、2速が実現される。
【0050】
4速の場合、シフタSF4により、中間軸22と連結軸23とを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC2→主軸21・ギヤGa→アイドルギヤGi→ギヤGb・中間軸22・連結軸23・駆動ギヤG4→従動ギヤG45・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、4速が実現される。
【0051】
6速の場合、シフタSF26により、中間軸22と連結軸24とを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC2→主軸21・ギヤGa→アイドルギヤGi→ギヤGb・中間軸22・連結軸24・駆動ギヤG6→従動ギヤG67・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、6速が実現される。
【0052】
以上により1速から7速までが実現できる。変速段を1段ずつシフトアップする場合やシフトダウンする場合は、クラッチC1、C2の接続・解放の切り替え前に、シフタによる次段の切り替えを行って待機することができるので、変速時間を短縮できる。
【0053】
後進段を選択する場合は、クラッチC1を解放状態とし、クラッチC2を接続状態とする。そして、シフタSFrにより、中間軸27と連結軸28とを接続状態とし、また、シフタSF1rにより、遊星歯車機構PGのリングギヤPGrと変速機ケース1aとを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC2→主軸21・ギヤGa→アイドルギヤGi→ギヤGb→ギヤGc・中間軸27・連結軸28・駆動ギヤGr→従動ギヤGr’・主軸11・サンギヤPGs→ピニオンギヤPGp・キャリアPGc・連結軸14・駆動ギヤG3→従動ギヤG23・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、後進段が実現される。
【0054】
<制御部>
次に、本実施形態のハイブリッド車両の駆動系の制御部の構成について説明する。図2は制御部40のブロック図である。制御部40は、CPU等の処理部41と、RAM、ROM等の記憶部42と、外部デバイスと処理部41とをインターフェースするインターフェース部43と、を備える。
【0055】
処理部41は記憶部41に記憶されたプログラムを実行し、各種のセンサ50の検出結果に基づいて、各種のアクチュエータ60、インバータITを制御する。各種のセンサ50には、後述する制御例との関係では、例えば、ブレーキペダルセンサ51、車速センサ52、加速度センサ53、蓄電量センサ54、等が含まれる。
【0056】
ブレーキペダルセンサ51は、運転者によるブレーキペダルの操作及び操作量を検出するセンサであり、本実施形態の場合、操作検出中は運転者の制動要求があるものとし、操作量(踏み込み量)に比例して制動要求量とする。
【0057】
車速センサ52は車両の車速を検出し、加速度センサ53は車両の加速度、特に減速加速度を検出する。なお、車速や加速度の検出には、直接的に検出する方法のほかに、他のデータから演算する方法も採用可能である。蓄電量センサ54は蓄電器BTの蓄電量(残容量)を検出する。蓄電量センサ54としては、例えば、蓄電器BTから充放電される電流を検出するセンサを挙げることができ、充放電量の積算値から蓄電量を演算可能である。
【0058】
アクチュエータ60には、変速機1のクラッチC1、C2を駆動するアクチュエータ、各シフタを駆動するアクチュエータ、ブレーキ装置4を駆動するアクチュエータ等が含まれ、例えば、モータ、制御弁、ソレノイド等である。
【0059】
記憶部42には、処理部41が実行するプログラムのほか、各種のデータが記憶される。図2には、その一例として変速機のシフトタイミングを規定した変速マップ42aが図示されている。変速マップ42aは車両の状態等に応じて複数種類用意される。シフトタイミングは、車両の走行状態に基づき設定されており、本実施形態の場合、基本的には車速と駆動軸トルクとの関係で規定される。駆動軸トルクは駆動軸3のトルクであり、センサにより直接検出する他、内燃機関Egや電動機M、ブレーキ装置4の状態から演算することも可能である。
【0060】
<制御例>
変速機1のシフト制御及びこれに関連する制御について説明する。変速機1のシフト制御は、基本的に、変速マップ42aを参照して走行状態を基準とする。そして、シフトアップであるのであれば、1速→2速→3速→...7速と1段ずつ行い、シフトダウンも同様に、7速→6速→5速→...1速と1段ずつ行うことを基本とする。
【0061】
一方、本実施形態の変速機1は、第1変速機構10に電動機Mが接続された構成である。したがって、減速回生中は第1変速機構10の変速段である、7速、5速、3速、1速を積極的に採用することで、より多くの電力を回収できる。但し、変速段を切り替える場合には、ギヤの掛け替えを行う必要がある。その際、シフタを作動させることから、一時的に電動機Mと駆動輪DWないし駆動軸3との動力伝達が途切れて制動力が抜ける。また、回転数合わせのために電動機Mを力行させる場合もあり、制動力が抜ける。これは運転者に違和感を与える場合がある。
【0062】
図4(A)は5速から3速へシフトダウンする場合の、ブレーキ装置4のブレーキトルク、電動機Mのトルク、駆動軸3のトルクの変化のタイミングチャートである。同図の例ではブレーキ装置4を作動させず、電動機Mの減速回生により制動力を得ている状態でシフトダウンする場合を示している(Nはニュートラル)。
【0063】
5速から3速へのシフトダウンが決定されると、電動機Mの減速回生による制動力を徐々に落として0にしてからギヤの掛け替えを開始する。同図の例では、その間、回転数合わせのために電動機Mを力行させている。これらの間、減速側で駆動軸トルクが減少し、制動力が抜ける。その後、3速が確立して、再び、電動機Mの減速回生による制動力を増していくことで、制動力が復帰する。
【0064】
このような制動力が抜けた状態は相対的に低速側の変速段において大きくでやすく、運転者に違和感を与える場合がある。但し、相対的に高速側の変速段においても、減速加速度が大きい状態にあっては大きくでて運転者に違和感を与える。
【0065】
以上の点に鑑みた本実施形態の制御内容を図3を参照して説明する。図3は運転者の制動要求により減速回生を行う場合の、シフト制御とブレーキ制御の内容を示す。
【0066】
まず、運転者から制動要求があり、かつ、減速回生が可能な場合において、第2変速機構20の変速段(2、4、6)を選択中である場合には、第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)に変速段を切り替える。同図の例では、1段低い変速段に切り替える例を示している。その後は第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)間でシフトダウンしていく。電動機Mが接続された第1変速機構10を優先的に利用することで、電力の回収漏れを抑制することができる。
【0067】
なお、運転者から制動要求があり、かつ、減速回生が可能な場合において、第2変速機構20の変速段(2、4、6)を選択中である場合に、変速マップ42aを参照し走行状態を基準として第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)に切り替え、その後に減速回生を開始し、以降は第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)間でシフトダウンしていく手法も採用可能である。但し、上記のように直ちに第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)に切り替える方が電力の回収効率が高い。
【0068】
また、運転者から減速要求、加速要求のいずれもなく、惰性走行中において、第2変速機構20の変速段(2、4、6)を選択中である場合には第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)に切り替えてもよい。次に減速要求がなされる可能性があるため、事前に第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)に切り替えておく趣旨である。その場合、シフトアップでもシフトダウンでもよい。
【0069】
引き続き図3を参照して、第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)が選択されたことが確認されると減速回生を開始する。シフトダウンは、基本的に7速→5速→3速→1速の順で行う。7速→5速への切り替え、及び、5速→3速の切り替えは、変速マップ42aを参照し走行状態を基準とする。
【0070】
その際、上述した制動力の抜けが生じるが減速加速度が小さい場合は左程大きく抜けが生じないと考えられることから、何もしない。一方、減速加速度が大きい場合はブレーキ装置4を作動する。例えば、減速加速度が0.15Gを超える場合である。この場合のブレーキ装置4の作動は、制動力が一定となるよう、電動機Mの減速回生と協調的に行う。図4(B)は一例として、5速から3速へシフトダウンする場合にブレーキ装置4を協調的に作動させた場合の、ブレーキ装置4のブレーキトルク、電動機Mのトルク、駆動軸3のトルクの変化のタイミングチャートである。
【0071】
5速から3速へのシフトダウンが決定されると、電動機Mの減速回生による制動力を徐々に落として0にしてからギヤの掛け替えを開始するが、電動機Mによる制動力の変化に協調的にブレーキ装置4の減速トルクを増加させることで、駆動軸トルクは一定となっている。これにより、制動力の抜けを補い、運転者の違和感を減少できる。
【0072】
図3に戻り、3速→1速の切り替えについて説明する。3速→1速の切り替えは、変速マップ42aを参照せず、運転者の制動要求量が所定量減少した場合(ブレーキペダルが一定量戻された場合)に行う。運転者の制動要求量が減少した場合は制動力の減少を運転者が予定している。よって、これを契機としてシフトダウンを行って制動力が一時的に抜けた状態となっても運転者が余り違和感を感じないことになる。制動要求量が所定量減少しない場合は3速を維持する。これにより減速回生を継続でき、電力の回収漏れを抑制することができる。制動要求量が所定量減少しない状態が継続すれば、3速のまま車両が停止し、電力を最大限回収できる。
【0073】
判定の閾値となる所定量は固定値としてもよいし、可変値としてもよい。可変値とする場合、例えば、今回の制動要求量の最大値に対する割合で定めることができる。いずれの場合であっても、運転者の制動力減少の意図が確実であるレベルであることが好ましく、例えば、ペダルストロークの3割から4割程度を基準としてもよい。
【0074】
この運転者の制動要求量の減少に基づくシフトダウン制御は、3速→1速の場合のみならず、5速→3速の場合等にも採用可能である。しかし、相対的に低速段では、シフトダウンに伴って制動力が一時的に抜けた状態となった場合に運転者が違和感を感じ易いことから、低速段でのシフトダウン制御に特に有効であり、運転者の違和感解消が効果的に現れる。
【0075】
このため、対象とする変速段は、変速マップ42a基準でいけば所定の車速以下(例えば40km以下好ましくは30km以下)の場合に選択される変速段が好ましく、また、本実施形態のように、電動機Mが接続された変速機構で実現される変速段のうち、低速側から2つ目の変速段であることが好ましい。
【0076】
なお、例えば、第2変速機構20に電動機Mを接続した構成の場合も同様の制御が可能であり、この場合、例えば、6速→4速は変速マップ42a基準でシフトダウンし、かつ、減速加速度が大きい場合はブレーキ装置4を作動する方式(上記の7速→5速、5速→3速の場合と同様。)とし、4速→2速は制動要求量の減少に基づくシフトダウン制御とすることができる。また、本実施形態では、第1変速機構10が奇数段を、第2変速機構20が偶数段を、それぞれ受け持つ形態としたが、変速段の割当てを異ならせた場合であっても、上記の制御は採用可能である。
【0077】
以下、処理部41が実行する制御の具体例を説明する。
【0078】
<減速回生制御>
図5(A)は減速回生制御の例を示すフローチャートであり、主に減速回生の実行開始の判定処理に関する。
【0079】
S1では、運転者の制動要求開始時か否かを判定する。ブレーキペダルセンサ51による運転者のブレーキペダルの操作の検出結果が、非検出状態から検出状態に変化した場合に制動要求開始時と判定する。該当する場合はS2へ進み、該当しない場合はS8へ進む。S8ではその他の処理を行う。ここでは、例えば、減速回生実行中の処理や、制動要求の終了による減速回生の終了に関わる処理、或いは、制動要求以外の条件による減速回生の実行の判定等の処理を行う。
【0080】
S2では蓄電器BTの蓄電量が第1規定量を超えているか否かを判定する。該当する場合はS7へ進み、該当しない場合はS3へ進む。S3では蓄電器BTの蓄電量が第2規定量を超えているか否かを判定する。該当する場合はS6へ進み、該当しない場合はS4へ進む。
【0081】
図5(B)は蓄電量の規定量の説明図である。本実施形態では、第1規定量は満充電に近く、これ以上の充電が適切でない蓄電量に相当し、第2規定量は、必要な蓄電量には達しているが、未だ充電の余地がある蓄電量に想定する場合を想定している。
【0082】
S4では、S5の減速回生制御実行の準備として、シフト待ちを行う。ここでは、現在選択されている変速段が第2変速機構20の変速段(2、4、6)である場合に、図3に示したように第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)に切り替えるための時間だけ処理を遅延させる処理を行う。現在選択されている変速段が第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)の場合は待たずにS5へ進む。
【0083】
S5ではインバータITに対して制御命令を出力して電動機Mによる減速回生制御を実行する。減速回生中の制動力は、運転者の制動要求量に応じたものであることが好ましい。S6では自然回収を行う。蓄電量が第2規定値を超えているため、充電量が限られる。このため、ここではインバータITにより、蓄電器BTと電動機Mとが電気的に接続された状態のみとし、回転子Mrの回転により自然に発電した電気を蓄電器BTに充電する。第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)が選択された場合は、この自然回収により蓄電器BTが充電される場合がある。S7では非回収とする。蓄電量が第1規定値を超えているため、充電は望ましくない。このため、ここではインバータITにより、蓄電器BTと電動機Mとを電気的に切り離した状態とする。以上により一単位の処理が終了する。
【0084】
<シフト制御>
次に、図6を参照してシフト制御について説明する。図6はシフト制御のフローチャートであり、主に、減速回生実行中のシフト制御に関する。
【0085】
S11では、運転者が制動要求中か否かを判定する。ブレーキペダルセンサ51による運転者のブレーキペダルの操作の検出結果が検出状態の場合は制動要求中と判定する。該当する場合はS12へ進み、該当しない場合はS25へ進む。S25ではその他の処理を行う。ここでは、例えば、加速要求時等のシフト制御を変速マップ42aに基づき行う。
【0086】
S12では、運転者の制動要求開始時か否かを判定する。ブレーキペダルセンサ51による運転者のブレーキペダルの操作の検出結果が、非検出状態から検出状態に変化した場合に制動要求開始時と判定する。該当する場合はS13へ進み、該当しない場合はS16へ進む。S13では現在選択中の変速段が、第2変速機構20の変速段(2、4、6)の変速段か否かを判定する。該当する場合は、S14へ進み、該当しない場合は現在選択中の変速段が第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)であるため、一単位の処理を終了する。
【0087】
S14では、蓄電器BTの蓄電量が第2規定量を超えているか否かを判定する。該当する場合(減速回生が開始される場合(S5))はS15へ進み、該当しない場合は一単位の処理を終了する。S15では第1変速機構10の変速段(1、3、5、7)を選択して一単位の処理が終了する。この後、上記のS5の処理で減速回生が開始されることになる。
【0088】
S16では、減速回生を実行中か否かを判定する。該当する場合はS18へ進み、該当しない場合(自然回収、非回収)はS17へ進む。S17では変速マップ42aに基づきシフト制御を行う。S18では、現在選択中の変速段が3速か否かを判定する。該当する場合はS21へ進み、該当しない場合はS19へ進む。S19では現在選択中の変速段が5速又は7速か否かを判定する。該当する場合はS20へ進み、該当しない場合(1速の場合)は一単位の処理を終了する。S20では変速マップ42aに基づきシフト制御を行う。
【0089】
S21では、運転者の制動要求量の減少量が所定量以上か否かを判定する。該当する場合はS22へ進み、該当しない場合(減速回生中で3速維持)はS23へ進む。S22では3速から1速にシフトダウンし、一単位の処理が終了する。S23では車両が停止したか否かを判定する。車速センサ52の検出結果が車速0kmである場合は車両が停止したと判定する。該当する場合はS24へ進み、該当しない場合(減速回生中で3速維持)は一単位の処理を終了する。
【0090】
S24に至った場合、減速回生中で3速維持のまま、車両が停止し、これ以上の電力の回収は無い。よって、最低段の変速段(1速)にシフトダウンする。つまり、3速から1速へシフトダウンすることになる。次の発進を円滑なものとすることができ、運転者の操作感を向上できる。以上で一単位の処理を終了する。
【0091】
<ブレーキ制御>
次に、図7を参照してブレーキ装置4の制御について説明する。図7はブレーキ制御のフローチャートであり、主に、減速回生実行中のシフト制御に関する。
【0092】
S31では、運転者が制動要求中か否かを判定する。ブレーキペダルセンサ51による運転者のブレーキペダルの操作の検出結果が検出状態の場合は制動要求中と判定する。該当する場合はS32へ進み、該当しない場合はS38へ進む。S38ではその他の処理を行う。ここでは、例えば、車両の姿勢制御のためのブレーキ装置4の制御等を行う。
【0093】
S32では減速回生実行中か否かを判定する。該当する場合はS34へ進み、該当しない場合(自然回収、非回収)はS33へ進む。S33ではブレーキ装置4を作動させる。蓄電器BTの蓄電量が多い場合は、減速回生による蓄電が適当でないことからブレーキ装置4を優先させることで、必要な制動力を確保できる。この場合、ブレーキ装置4の制動力は、運転者の制動要求量に応じたものであることが好ましい。
【0094】
S34では、減速加速度が所定値を超えているか否かを判定する。減速加速度は加速度センサ53の検出結果に基づく。該当する場合はS35へ進み、該当しない場合はS37へ進む。S35では、7速→5速又は5速→3速のシフトダウン中か否かを判定する。該当する場合はS36へ進み、該当しない場合はS37へ進む。S37ではブレーキ装置4を作動しない。
【0095】
S36ではブレーキ装置4を作動する。この場合は図3で「作動」と示した場合に相当する。よって、電動機Mによる制動力の変化に協調的にブレーキ装置4の減速トルクを制御する。以上により一単位の処理が終了する。
【0096】
<クラッチ制御>
次に、図8を参照してクラッチC1、C2の制御について説明する。図8はクラッチ制御のフローチャートであり、主に、制動中の内燃機関Egによるエンジンブレーキの利用の有無に関する。
【0097】
S41では、運転者が制動要求中か否かを判定する。ブレーキペダルセンサ51による運転者のブレーキペダルの操作の検出結果が検出状態の場合は制動要求中と判定する。該当する場合はS42へ進み、該当しない場合はS47へ進む。S47ではその他の処理を行う。
【0098】
S42では蓄電器BTの蓄電量が第1規定量を超えているか否かを判定する。該当する場合はS46へ進み、該当しない場合はS43へ進む。S43では蓄電器BTの蓄電量が第2規定量を超えているか否かを判定する。該当する場合はS45へ進み、該当しない場合はS44へ進む。
【0099】
S44へ至った場合は減速回生中となるので、クラッチを解放する。減速回生中は第1変速機構10の変速段が選択されるので、クラッチC1を解放状態とする。エンジンブレーキを効かさないことで、電動機Mにより減速回生による発電効率を高められる。
【0100】
S45へ至った場合は自然回収中となる。この場合は、運転者の制動要求量に応じてクラッチの接続、解放を選択する。制動要求量が所定量より大きい場合はクラッチを接続してエンジンブレーキを利かせる。接続するクラッチは、第1変速機構10の変速段を選択している場合はクラッチC1、第2変速機構の変速段を選択している場合はクラッチC2となる。制動要求量が所定量以下の場合はクラッチを解放し、自然回収を可能とする。
【0101】
S46へ至った場合は非回収中となる。この場合は、電動機Mによる制動力が全く無いので、クラッチを接続してエンジンブレーキを利かせる。蓄電量が多い場合は、減速回生による蓄電が適当でないことからエンジンブレーキを活用して、必要な制動力を確保できる。接続するクラッチは、第1変速機構10の変速段を選択している場合はクラッチC1、第2変速機構の変速段を選択している場合はクラッチC2となる。以上により一単位の処理が終了する。
【0102】
<第2実施形態>
第1実施形態の変速機1とは異なる変速機に対しても、上記の各制御は適用可能である。例えば、変速機1では、主軸11と、主軸21とを同軸の多重構造としたが、平行に配置した構成等も採用可能である。
【0103】
また、変速段数も変速機1のものに限られない。図9は本発明の他の実施形態に係るハイブリッド車両の概略を示す図である。図9の変速機1’は前進5段、後進1段の変速段を有する変速機であるが、図1の変速機1と基本的な構成は共通している。よって、変速機1の構成に対応する構成については同じ符号を付して説明を割愛し、異なる構成についてのみ説明する。
【0104】
変速機1’では、変速機1の駆動ギヤG6、G7、従動ギヤG67、シフタSF37、SF5、SF4、SF26、連結軸13、14が無い。逆に、変速機1’は、3速及び5速用のシフタSF35、2速及び4速用のSF24を備える。シフタSF35は、主軸11と連結軸14(駆動ギヤG3)との接続・解放、及び、主軸11と連結軸12(駆動ギヤG5)の接続・解放を行う。シフタSF24は、中間軸22と連結軸25(駆動ギヤG2)との接続・解放、及び、中間軸22と連結軸23(駆動ギヤG4)の接続・解放を行う。
【0105】
続いて、内燃機関Egを駆動源とした場合の各変速段選択時の態様について説明する。まず、1速、3速、5速の場合について説明する。これらの変速段を選択する場合は、クラッチC1を接続状態とし、クラッチC2を解放状態とする。
【0106】
1速の場合、シフタSF1rにより遊星歯車機構PGのリングギヤPGrと変速機ケース1aとを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC1→主軸11・サンギヤPGs→ピニオンギヤPGp・キャリアPGc・連結軸14・駆動ギヤG3→従動ギヤG23・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、1速が実現される。
【0107】
3速の場合、シフタSF35により、主軸11と連結軸14とを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC1→主軸11・連結軸14・駆動ギヤG3→従動ギヤG23・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、3速が実現される。
【0108】
5速の場合、シフタSF35により、主軸11と連結軸12とを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC1→主軸11・連結軸12・駆動ギヤG5→従動ギヤG45・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、5速が実現される。
【0109】
2速、4速の変速段を選択する場合は、クラッチC1を解放状態とし、クラッチC2を接続状態とする。
【0110】
2速の場合、シフタSF24により、中間軸22と連結軸25とを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC2→主軸21・ギヤGa→アイドルギヤGi→ギヤGb・中間軸22・連結軸25・駆動ギヤG2→従動ギヤG23・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、2速が実現される。
【0111】
4速の場合、シフタSF24により、中間軸22と連結軸23とを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC2→主軸21・ギヤGa→アイドルギヤGi→ギヤGb・中間軸22・連結軸23・駆動ギヤG4→従動ギヤG45・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、4速が実現される。
【0112】
後進段を選択する場合は、クラッチC1を解放状態とし、クラッチC2を接続状態とする。そして、シフタSFrにより、中間軸27と連結軸28とを接続状態とし、また、シフタSF1rにより、遊星歯車機構PGのリングギヤPGrと変速機ケース1aとを接続状態とする。すると、内燃機関Eg→クラッチC2→主軸21・ギヤGa→アイドルギヤGi→ギヤGb→ギヤGc・中間軸27・連結軸28・駆動ギヤGr→従動ギヤGr’・主軸11・サンギヤPGs→ピニオンギヤPGp・キャリアPGc・連結軸14・駆動ギヤG3→従動ギヤG23・カウンタ軸30・出力ギヤGf→終減速装置2の経路で動力伝達が行われて、後進段が実現される。
【0113】
このように変速機1’は変速機1に比べて、6速、7速が無いが、この点を除いて変速機1を用いた上記第1実施形態と同様の制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0114】
Eg 内燃機関
M 電動機
10 第1変速機構
20 第2変速機構
40 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2変速機構と、
前記第1変速機構に接続された電動機と、
前記第1及び第2変速機構と断続される内燃機関と、
を備えたハイブリッド車両において、
運転者の制動要求中、前記電動機による減速回生を行う減速回生制御手段と、
運転者の制動要求により前記減速回生制御手段が前記減速回生を行っている場合であって、前記第1変速機構により実現される所定の変速段を選択中に、前記制動要求に係る制動要求量が所定量減少した場合は前記第1変速機構により実現される、前記所定の変速段よりも低速側の変速段に切り替える一方、減少しない場合は前記所定の変速段を維持するシフト制御手段と、
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記ハイブリッド車両を減速する、ブレーキバイワイヤ式の摩擦ブレーキ装置と、
前記摩擦ブレーキ装置を制御するブレーキ制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記ブレーキ制御手段は、
運転者の制動要求により前記減速回生制御手段が前記減速回生を行っている場合であって、前記シフト制御手段が前記第1変速機構により実現される、前記所定の変速段よりも高速側の変速段から、該高速側の変速段よりも低速側の変速段へシフトダウンする場合に、前記ハイブリッド車両の減速加速度が所定値を超える場合は前記摩擦ブレーキ装置を作動し、超えない場合は非作動とすることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記電動機が発電した電力を蓄電する蓄電器を備え、
前記蓄電器の蓄電量が規定量を超える場合、運転者の制動要求により、前記ブレーキ制御手段は前記摩擦ブレーキ装置を作動させる一方、前記減速回生制御手段は前記減速回生を行わないことを特徴とする請求項2又は3に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記電動機が発電した電力を蓄電する蓄電器を備え、
前記蓄電器の蓄電量が前記規定量を超える場合、運転者の制動要求により、前記内燃機関と、前記第1及び第2変速機構のうち、選択中の変速段を実現する変速機構とを接続状態とすることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記シフト制御手段は、
運転者の制動要求があった場合に、選択中の変速段が前記第2変速機構で実現される変速段である場合に、前記第1変速機構で実現される変速段に変速段を切り替えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項7】
前記シフト制御手段は、
前記制動要求量が前記所定量減少しないことにより前記所定の変速段を維持したまま、前記ハイブリッド車両が停止した場合には、最低段に変速段を切り替えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項8】
前記所定の変速段が、所定の車速以下の場合に選択される変速段であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項9】
前記所定の変速段が、前記第1変速機構により実現される変速段のうち、低速側から2つ目の変速段であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−101711(P2012−101711A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252926(P2010−252926)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】