説明

パターン検査装置

【目的】検査時間の増大を抑制しつつ、検査精度を向上させるパターン検査装置を提供する。
【構成】被検査試料のパターン面に形成されたパターンを検査するパターン検査装置であって、光源と、パターン面のフーリエ変換面に設けられ光源から射出された光線を異なる形状および方向を有する第1および第2の照明光に分割する機能を備える光学素子を有し、第1および第2の照明光によりパターン面の第1および第2のパターン領域をそれぞれ異なる照明条件で照明する照明光学系と、第1および第2のパターン領域を照明した第1および第2の照明光を透過する対物レンズと、第1および第2の検出センサと、対物レンズを透過した第1および第2の照明光をそれぞれ第1および第2の検出センサに結像する第1および第2の結像光学系とを備えることを特徴とするパターン検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定試料のパターンを検査するパターン検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体装置の高集積化に伴い、マスク(あるいはレチクル)に形成されるパターンの微細化が進んできている。そのため、マスクのパターンの欠陥検査装置にも高性能なものが求められている。
【0003】
欠陥検査装置の解像力を向上させるための方法として、照明光の照明条件を変える方法がある。一般的に、照明を輪帯照明にすると空間周波数の高域が強調される。また、照明のNA(開口数)を適当に絞ると空間周波数の中域が強調される。
【0004】
マスクの検査装置としては、検査対象のマスクパターンには粗密が有るため、空間周波数の中域、高域共に分解能を上げることが望ましい。このために、例えば、輪帯照明の検査と円形照明の検査を2回行う方法も有る。しかし、この方法では、検査時間が増大して生産性を損なう。
【0005】
一方、検査時間を短縮するために、複数の結像光学系を有する検査装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−93431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、検査時間の増大を抑制しつつ、検査精度を向上させるパターン検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパターン検査装置は、被検査試料のパターン面に形成されたパターンを検査するパターン検査装置であって、光源と、前記パターン面のフーリエ変換面に設けられ前記光源から射出された光線を異なる形状および方向を有する第1および第2の照明光に分割する機能を備える光学素子を有し、前記第1および第2の照明光により前記パターン面の第1および第2のパターン領域をそれぞれ異なる照明条件で照明する照明光学系と、前記第1および第2のパターン領域を照明した前記第1および第2の照明光を透過する対物レンズと、第1および第2の検出センサと、前記対物レンズを透過した前記第1および第2の照明光をそれぞれ前記第1および第2の検出センサに結像する第1および第2の結像光学系とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記態様のパターン検査装置において、前記光学素子が前記光源から射出される光線を分割するために2つの領域で構成され、一方の領域の形状が輪帯状であることが望ましい。
【0010】
上記態様のパターン検査装置において、前記光学素子が前記光源から射出される光線を分割するために2つの領域で構成され、一方の領域に前記光源から射出される光線の方向を変えるためのウェッジプレートが設けられていることが望ましい。
【0011】
上記態様のパターン検査装置において、前記光学素子が前記光源から射出される光線を分割するために2つの領域で構成され、一方の領域に前記光源から射出される光線の方向を変えるための回折格子が設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検査時間の増大を抑制しつつ、検査精度を向上させるパターン検査装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】マスク検査装置の構成図である。
【図2】光学素子の一例の説明図である。
【図3】判定回路の欠陥同定処理の一例を示す図である。
【図4】光学素子の別の一例の説明図である。
【図5】フーリエ変換面での照明光とマスクのパターン面のパターン領域との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
実施の形態のパターン検査装置は、被検査試料のパターン面に形成されたパターンを検査するパターン検査装置である。そして、光源と、パターン面のフーリエ変換面に設けられ光源から射出された光線を異なる形状および方向を有する第1および第2の照明光に分割する機能を備える光学素子を有し、第1および第2の照明光によりパターン面の第1および第2のパターン領域をそれぞれ異なる照明条件で照明する照明光学系と、第1および第2のパターン領域を照明した第1および第2の照明光を透過する対物レンズと、第1および第2の検出センサと、対物レンズを透過した第1および第2の照明光をそれぞれ第1および第2の検出センサに結像する第1および第2の結像光学系とを備える。
【0016】
実施の形態のパターン検査装置は、上記構成を備えることにより、異なる照明条件で照明された画像を、同時に取得することが可能となる。したがって、検査時間の増大を抑制しつつ、検査精度を向上させるパターン検査装置を実現できる。
【0017】
以下、パターン検査装置として、半導体装置の製造で用いられるマスク(あるいはレチクル、またはフォトマスク)の欠陥を検査するマスク検査装置を例に説明する。もっとも、本発明はマスク検査装置以外にも、例えば、半導体ウェハ上の欠陥を検査するウェハ検査装置等に適用しても同様の作用・効果を得ることができる。
【0018】
図1は、マスク検査装置の構成図である。マスク検査装置10は、マスクの光学画像データを得るための画像取得部12と、画像取得部12の制御および画像取得部12で得られた光学画像データの処理を行う制御部14とを備えている。
【0019】
画像取得部12は、例えばレーザを使用する光源16を備えている。また、光源16から被検査試料であるマスク18までの間の光路に設けられる照明光学系20を備えている。マスク18の一方の面であるパターン面には、例えば、半導体装置の配線層などのパターンが形成されている。このマスク18は、例えば、水平方向に移動可能なステージ(図示せず)上に載せられている。
【0020】
そして、マスク18のパターン面を照明した照明光を透過する対物レンズ22と、第1の検出センサ24および第2の検出センサ26を備えている。また、対物レンズ22を透過した照明光を第1および第2の検出センサ24、26に、マスクパターンの光学画像として結像する第1の結像光学系28および第2の結像光学系30を備えている。
【0021】
照明光学系20は、光源16から射出された光線を拡大するための、ビームエキスパンダ32を備えている。そして、拡大された光線を、分割するための光学素子34がマスク18のパターン面のフーリエ変換面に相当する位置に設けられている。
【0022】
光学素子34は、光線40を異なる形状および方向を有する第1の照明光40aおよび第2の照明光40bに分割する機能を備える。ここで、第1および第2の照明光40a、40bが異なる形状を有するとは、分割直後の照明光を、その照明光の進行方向に対し垂直な平面で見た場合に、それぞれが異なる形状を示すことを意味する。
【0023】
図2は、光学素子の一例の説明図である。図2(a)は断面図、図2(b)は平面図である。
【0024】
光学素子34は、光源から射出される光線を分割するために2つの領域、すなわち第1の領域34a、第2の領域34bで構成されている。そして、第1の領域34aの形状は円形状であり、第2の領域34bの形状は輪帯状(あるいはドーナッツ状)である。そして、第1の領域34aは素ガラスが設けられるか中空である。また、第2の領域34bには、入射する光線の方向を変えるための回折格子が設けられている。
【0025】
図2(a)に示すように、光源から光学素子34に入射される光線40のうち、第1の領域34aを通過する光線は、円形状の第1の照明光40aとして直進する。一方、第2の領域34bを通過する光線は、回折格子で回折して曲げられることにより、わずかに方向を変えた輪帯状の第2の照明光40bとなって進む。
【0026】
照明光学系20には、コンデンサレンズ42が設けられる。そして、光学素子34で分割された第1の照明光40aと第2の照明光40bがコンデンサレンズ42を通過し、マスク18のパターン面上の位置の異なる第1のパターン領域44aおよび第2のパターン領域44bを、それぞれ異なる照明条件で照明するよう照明光学系20が構成されている。
【0027】
なお、図1の光学素子34は、図2に例示した光学素子を適用するものとする。上述のように、光学素子34はマスク18のパターン面のフーリエ変換面に設けられている。したがって、回折格子での回折角に応じた分だけ、第2のパターン領域44bの位置を第1のパターン領域に対してシフトすることが可能になる、と同時に第2のパターン領域44bにおいて輪帯照明を実現できる。また、第1のパターン領域44aにおいては、円形照明が実現できる。
【0028】
第1の結像光学系28と第2の結像光学系30は、マスク18のパターン面上で異なる視野を持つように設計されている。図1のマスク検査装置10では、第1の結像光学系28は第1のパターン領域44aを撮像可能な視野を有し、第2の結像光学系30は第2のパターン領域44bを撮像可能な視野を有するよう構成されている。
【0029】
マスク18を透過した第1および第2の照明光40a、40bは対物レンズ22を透過し、ハーフミラー46で2方向に分岐される。そして、第1のパターン領域44aを照明した第1の照明光40aは、第1の結像光学系28に設けられた第1の結像レンズ48によって、第1の検出センサ24に結像するよう第1の結像光学系28が構成されている。また、第2のパターン領域44bを照明した第2の照明光40bは、第2の結像光学系30に設けられた第2の結像レンズ50によって、第2の検出センサ26に結像するよう第2の結像光学系30が構成されている。
【0030】
すなわち、図1の構成では、第1の検出センサ24は円形照明で撮像された画像を取得する。また、第2の検出センサ26は輪帯照明で撮像された画像を取得する。そして、取得された画像はそれぞれ検出センサにより電子的な画像データに変換される。
【0031】
制御部14は、第1の比較回路52、第2の比較回路54、判定回路56、第1のストレージ58、第2のストレージ60、およびディスプレイ62を備えている。
【0032】
第1の検出センサ24は画像データを、第1の比較回路52に出力する。第1の比較回路52は第1の検出センサ24から得られた画像データと、第1のストレージ58に蓄えられた参照画像データとの比較照合を行い、欠陥検出を行う。検出された欠陥信号は判定回路56に出力される。
【0033】
第2の検出センサ26は画像データを、第2の比較回路54に出力する。第2の比較回路54は第2の検出センサ26から得られた画像データと、第1のストレージ58に蓄えられた参照画像データとの比較照合を行い、欠陥検出を行う。検出された欠陥信号は判定回路56に出力される。
【0034】
判定回路56での比較照合は、参照画像データとして、描画データから生成した画像データを用いる、いわゆるDie to Database比較であっても、参照画像データとして、同一ダイの別の個所から取得された画像データを用いる、いわゆるDie to Die比較であっても構わない。
【0035】
判定回路56は、マスク位置を計測する変位計64によって得られたマスク位置情報と第1の比較回路52および第2の比較回路54から得られた欠陥情報から、マスク18上の欠陥分布のマッピングを行う。
【0036】
例えば、第1の比較回路52から得られた欠陥および第2の比較回路54から得られた欠陥のうち互いに位置が同一の欠陥は、同一の欠陥とみなす処理を行う。このような処理を行った上で、欠陥情報を第2のストレージ60に蓄える。欠陥情報は必要に応じてディスプレイ62に表示する。
【0037】
図3は、判定回路の欠陥同定処理の一例を示す図である。照明条件が異なるため特性が異なる2種類の画像に対して独立に欠陥検出を行った場合、2つの検出結果が得られる。欠陥の種類によっては、一方の照明条件で検出できるものがある。したがって、図4に示すように、第1の比較回路52から得られた欠陥の集合Aと第2の比較回路54から得られた欠陥の集合Bの結びA∪Bをもって最終結果とすることが望ましい。
【0038】
このように、マスク欠陥検査装置10によれば、円形照明と輪帯照明という2つの異なる照明条件での欠陥検査を同時に実行することが可能となる。したがって、検査時間の増大を抑制しつつ、広い空間周波数領域において高解像度が得られ、検査精度が向上するマスク検査装置を実現できる。
【0039】
図4は、光学素子の別の一例の説明図である。図4(a)は断面図、図4(b)は平面図である。
【0040】
光学素子34は、光源から射出される光線を分割するために2つの領域、すなわち第1の領域34a、第2の領域34bで構成されている。そして、第1の領域34aの形状は円形状であり、第2の領域34bの形状が輪帯状(あるいはドーナッツ状)である。そして、第1の領域34aには、入射する光線の方向を変えるための透明で、例えばガラスで形成されるウェッジプレートが設けられている。このウェッジプレートは、例えば、光学素子の外枠から支持部材で支えられる。また、第2の領域34bは、素ガラスが設けられるか中空となっている。
【0041】
図4(a)に示すように、光源から光学素子34に入射される光線40のうち、第1の領域34aを通過する光線は、ウェッジプレートで屈折し曲げられることにより、わずかに方向を変えた円形状の第1の照明光40aとなる。一方、第2の領域34bを通過する光線は輪帯状の第2の照明光40bとして直進する。
【0042】
ウェッジプレートを用いる場合、回折格子で光線を曲げる場合よりも簡易かつ安価に製造できるという利点がある。
【0043】
なお、光学素子の構成は、図2や図4で説明した構成に限られることはなく、光源から射出された光線を異なる形状および方向を有する第1および第2の照明光に分割し、第1および第2のパターン領域をそれぞれ異なる照明条件で照明することを可能にする構成であれば構わない。例えば、円形の光線を左右2つの半円形状に分割し、一方を曲げる構成であっても構わない。
【0044】
図5は、フーリエ変換面での照明光とマスクのパターン面のパターン領域との関係を示す図である。図5(a)は、第1のパターン領域と第2のパターン領域の位置がマスクのパターン面上で重ならない場合である。図5(b)は、第1のパターン領域と第2のパターン領域の位置がマスクのパターン面上で重なる場合である。
【0045】
パターン面上の第1のパターン領域44aと第2のパターン領域44bの位置関係は、光学素子で光線を曲げる際の角度を調整することで変更が可能である。この角度を変えることにより、図5(b)に示すように、第1のパターン領域44aと第2のパターン領域44bとが重なる第3のパターン領域44cを形成することも可能である。図5(b)では、第1のパターン領域44aと、第3のパターン領域44cが異なる条件の円形照明、第2のパターン領域44bが輪帯照明の条件で照明される。そして、例えば、第3のセンサを新たに設け、第1のセンサの撮像範囲70a、第2のセンサの撮像範囲70b、第3のセンサの撮像範囲70cを図5(b)のように設定することで、3種類の照明条件で、同時に欠陥検査を行うことが可能となる。
【0046】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。実施の形態の説明においては、パターン検査装置等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされるパターン検査装置の構成要素を適宜選択して用いることができる。
【0047】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【0048】
例えば、実施の形態においては、透過照明の場合を例に説明したが、反射照明においても同様の作用・効果を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 マスク検査装置
12 画像取得部
14 制御部
16 光源
18 マスク
20 照明光学系
22 対物レンズ
24 第1の検出センサ
26 第2の検出センサ
28 第1の結像光学系
30 第2の結像光学系
34 光学素子
34a 第1の領域
34b 第2の領域
40 光線
40a 第1の照明光
40b 第2の照明光
44a 第1のパターン領域
44b 第2のパターン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査試料のパターン面に形成されたパターンを検査するパターン検査装置であって、
光源と、
前記パターン面のフーリエ変換面に設けられ前記光源から射出された光線を異なる形状および方向を有する第1および第2の照明光に分割する機能を備える光学素子を有し、前記第1および第2の照明光により前記パターン面の第1および第2のパターン領域をそれぞれ異なる照明条件で照明する照明光学系と、
前記第1および第2のパターン領域を照明した前記第1および第2の照明光を透過する対物レンズと、
第1および第2の検出センサと、
前記対物レンズを透過した前記第1および第2の照明光をそれぞれ前記第1および第2の検出センサに結像する第1および第2の結像光学系とを備えることを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
前記光学素子が前記光源から射出される光線を分割するために2つの領域で構成され、一方の領域の形状が輪帯状であることを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項3】
前記光学素子が前記光源から射出される光線を分割するために2つの領域で構成され、一方の領域に前記光源から射出される光線の方向を変えるためのウェッジプレートが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパターン検査装置。
【請求項4】
前記光学素子が前記光源から射出される光線を分割するために2つの領域で構成され、一方の領域に前記光源から射出される光線の方向を変えるための回折格子が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパターン検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−230478(P2010−230478A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78233(P2009−78233)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(305008983)アドバンスド・マスク・インスペクション・テクノロジー株式会社 (105)
【Fターム(参考)】