説明

パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計

【課題】キャビティ内の気密を維持するとともに、キャビティの内部と外部との導通性を確保できるパッケージの製造方法及び圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計を提供する。
【解決手段】充填工程は、ゴム硬度が60度以上70度以下のゴム材料からなるフィルスキージを、ベース基板用ウエハ40の外面40aに沿って走査し、貫通孔30,31内にガラスフリット6aを充填する第1充填工程と、樹脂材料又は金属材料からなるスクライブスキージ90,91を、外面40aに沿って走査し、貫通孔30,31内にガラスフリット6aを充填する第2充填工程とを有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(真空パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。(例えば、特許文献1,2参照)
【0003】
ここで、図28に示すように、表面実装型の圧電振動子200は、接合材207を介して互いに陽極接合されたベース基板201及びリッド基板202と、両基板201、202の間に形成されたキャビティC内に封止された圧電振動片203とを備えている。
ベース基板201及びリッド基板202は、ガラス等からなる絶縁基板であり、ベース基板201には、ベース基板201を貫通する貫通孔204が形成されている。貫通孔204内には、貫通孔204を塞ぐ導電部材205が埋め込まれている。この導電部材205は、ベース基板201の外面に形成された外部電極206に電気的に接続されているとともに、キャビティC内にマウントされている圧電振動片203に電気的に接続されている。圧電振動片203は、例えば音叉型の振動片であって、キャビティC内においてベース基板201の内面に導電性接着剤Eを介してマウントされている。
なお、上述した圧電振動子200の製造方法としては、キャビティC用の凹部が複数形成されたリッド基板用ウエハと、複数の圧電振動片203がマウントされたベース基板用ウエハとを、接合材207を介して接合し、接合されたウエハ体を行列方向に切断することにより複数の圧電振動子200を同時に製造する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−121037号公報
【特許文献2】特開2007−13628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した導電部材205は、貫通孔204を塞いでキャビティC内の気密を維持するとともに、圧電振動片203と外部電極206とを導通させるという2つの大きな役割を担っている。特に、導電部材205と貫通孔204との密着が不十分であると、キャビティC内の気密が損なわれてしまう虞がある。また、導電部材205の表面に凹みが発生すると、導電部材205を覆うように形成される電極膜(例えば、外部電極206)に段切れが発生して、圧電振動片203と外部電極206との導通性が損なわれたりする可能性がある。
【0006】
ここで、近時では、貫通孔211内に、金属製のピン212を配置し、貫通孔211とピン212との隙間にペースト状のガラスフリット215を充填して焼成することで貫通電極を形成する方法が提案されている(図29参照)。この貫通電極を形成する方法としては、図29(a)に示すように、ベース基板用ウエハ220の貫通孔211内に金属製のピン212を配置した後、ベース基板用ウエハ220の周縁部を覆い、中央部に開口部221aを有するメタルマスク221をセットする。図29(b)に示すように、ベース基板用ウエハ220の表面に沿ってスキージ214を走査する(走査工程)。すると、ペースト状のガラスフリット215がスキージ214により押し流され、貫通孔211内に入り込む。なお、スキージ214は、ゴム硬度が80度程度のゴム材料により構成されている。
この場合、スキージ214からガラスフリット215に作用する押圧力F’により、ガラスフリット215を貫通孔211内に押し込むことで、貫通孔211の底部側まで充填できる。
【0007】
一方で、スキージ214による押圧力F’が大きすぎると、スキージ214がメタルマスク221の表面から開口部221aの内側に撓み変形し、ベース基板用ウエハ220の表面に当接するので、貫通孔211内に充填されたガラスフリット215の表層部分を掻きとってしまう虞がある。
また、上述した走査工程では、スキージ214による押圧力がベース基板用ウエハ220の面内において不均一になるという問題がある。具体的には、図30に示すように、メタルマスク221の表面から開口部221aの内側にスキージ214が撓み変形するので、ベース基板用ウエハ220の外周部分では押圧力F’が小さくなり、貫通孔211の底部側までガラスフリット215が充填され難いという問題がある。一方で、ベース基板用ウエハ220の中央部では押圧力F’が大きくなり、貫通孔211内のガラスフリット215を掻きとってしまう可能性がある(図29(c)参照)。
この状態でガラスフリット215を乾燥して焼成すると、ガラスフリット215にクラックや凹みが生じやすくなり、キャビティC内の気密が損なわれたり、段切れが発生したりして、圧電振動片203と外部電極206との導通性が損なわれる可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、キャビティ内の気密を維持するとともに、キャビティの内部と外部との導通性を確保できるパッケージの製造方法及び圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち、第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内部と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、前記貫通電極形成工程は、前記第1基板に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記第1基板の周縁部を覆い中央部に開口部が形成されたマスク材を、前記第1基板の一方の面上に密着させた状態で、前記貫通孔内に充填材を充填する充填工程とを有し、前記充填工程は、ゴム硬度が60度以上70度以下のゴム材料からなる第1スキージを、前記第1基板の前記一方の面に沿って走査し、前記貫通孔内に前記充填材を充填する第1充填工程と、樹脂材料又は金属材料からなる第2スキージを、前記一方の面に沿って走査し、前記貫通孔内に前記充填材を充填する第2充填工程とを有していることを特徴としている。
【0010】
なお、本発明の構成において、ゴム硬度とはJIS K 6253に規格化されているゴム硬さ試験法における国際ゴム硬さの数値である。
本発明の構成によれば、ゴム硬度が60度以上70以下の比較的軟らかいゴム材料からなる第1スキージを用いて第1充填工程を行うことで、第1スキージがマスク材の開口縁に倣って撓み変形する際に、第1基板における一方の面の面内全体に当接することになる。これにより、第1スキージによる押圧力が第1基板の面内全体に均一に作用することで、充填材が第1基板上の各貫通孔内の底部側まで均一に押し込まれる。その結果、各貫通孔内の底部側まで隙間なく充填材を充填できる。
さらに、仮に第1充填工程において貫通孔内で充填材の表層部分に凹み等が存在しても、本発明では樹脂材料や金属材料の比較的硬い材料からなる第2スキージを用いて第2充填工程を行う。第2スキージはほとんど撓むことなく第1基板上を移動するので、第1基板上に沿って充填材を均しつつ、貫通孔の開口縁の内側に充填材を充填できる。すなわち、仮に第1充填工程において、貫通孔内で充填材の表層部分に凹み等が存在しても、第2充填工程において凹み部分を埋めるように充填材を充填できる。これにより、貫通孔内の全体に隙間なく充填材を充填できる。
なお、第2充填工程の終了後、第1基板の一方の面上における充填材の塗布領域には所定の膜厚で充填材が残存することになる。そのため、後の乾燥工程で充填材の体積が減少したとしても、第1基板上に残存した充填材が貫通孔内に入り込むことになるので、貫通孔内で充填材に凹み等が生じるのを確実に抑制できる。
したがって、第1基板の面内全体で貫通孔内に充填材の凹みや未充填領域が形成されるのを抑制し、焼成後の充填材にクラックや凹み等が形成されるのを抑制できる。その結果、キャビティ内の気密性を確保できる。また、貫通電極を覆うように形成される電極膜(例えば、外部電極等)に段切れが発生するのを抑制し、キャビティの内部と外部との導通性を確保できる。
【0011】
また、前記第1充填工程と前記第2充填工程との間に、前記充填材を乾燥させる乾燥工程を有していることを特徴としている。
この構成によれば、第2充填工程に先立って、第1充填工程で充填された充填材を乾燥させることで、第1充填工程で充填された充填材の体積を予め減少させておくことができる。この場合、第2充填工程では、乾燥工程を経て体積減少した凹み部分を埋めるように充填材が充填されることになる。
これにより、第2充填工程の終了後に行われる最終乾燥工程では、第2充填工程で充填された充填材のみが体積減少することになるので、第1,2充填工程の終了後にまとめて最終乾燥工程を行う場合に比べて、充填材の体積減少を抑制できる。よって、充填材に凹み等が形成されるのを確実に抑制できる。
【0012】
また、本発明のパッケージは、パッケージの製造方法で製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法で製造されているため、キャビティ内の気密性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性に優れたパッケージを提供できる。
【0013】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の気密性に優れたパッケージを備えているので、振動特性に優れた圧電振動子を提供できる。また、キャビティの内部と外部との導通性に優れた圧電振動子を提供することができる。
【0014】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0017】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、振動特性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性に優れた圧電振動子を備えているので、特性及び信頼性に優れた製品を提供できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るパッケージ及びパッケージの製造方法によれば、キャビティ内の気密を維持するとともに、キャビティの内部と外部との導通性を確保できる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、振動特性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性に優れた圧電振動子を製造することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、特性及び信頼性に優れた製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】圧電振動子のリッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図3のA−A線に沿う側面断面図である。
【図4】圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動片の平面図である。
【図6】圧電振動片の底面図である。
【図7】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図8】ガラスフリットの斜視図である。
【図9】圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図10】ウエハ体の分解斜視図である。
【図11】ベース基板用ウエハの一部分を示す斜視図である。
【図12】鋲体の斜視図である。
【図13】充填工程を説明するための工程図であり、ベース基板用ウエハにメタルマスクがセットされた状態を示す平面図である。
【図14】第1充填工程を説明するための工程図であり、図13のC−C線に相当する断面図である。
【図15】第1充填工程を説明するための工程図であり、図13のC−C線に相当する断面図である。
【図16】第1充填工程を説明するための工程図であり、図13のC−C線に相当する断面図である。
【図17】第1充填工程を説明するための工程図であり、図13のC−C線に相当する断面図である。
【図18】第2充填工程を説明するための工程図であり、図13のC−C線に相当する断面図である。
【図19】第2充填工程を説明するための工程図であり、図13のC−C線に相当する断面図である。
【図20】第2充填工程を説明するための工程図であり、図13のC−C線に相当する断面図である。
【図21】第2充填工程を説明するための工程図であり、図13のC−C線に相当する断面図である。
【図22】図15のD矢視図である。
【図23】図19のE矢視図である。
【図24】第2乾燥工程の終了後のベース基板用ウエハを示す断面図である。
【図25】実施形態に係る発振器の構成図である。
【図26】実施形態に係る電子機器の構成図である。
【図27】実施形態に係る電波時計の構成図である。
【図28】従来の圧電振動子の断面図である。
【図29】従来の貫通電極の形成方法を示す工程図であり、ベース基板の断面図である。
【図30】図28(b)のF矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
次に、本発明の実施形態に係る圧電振動子を、図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図である。図2は、圧電振動子のリッド基板を取り外した状態の平面図である。図3は、図2のA−A線に沿う側面断面図である。図4は、圧電振動子の分解斜視図である。なお図4では、図面を見易くするために、後述する圧電振動片4の励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17及び重り金属膜21の図示を省略している。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2及びリッド基板3が接合材35を介して陽極接合されたパッケージ5と、パッケージ5のキャビティCに収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0021】
図5は圧電振動片の平面図であり、図6は底面図であり、図7は図5のB−B線に沿う断面図である。
図5〜図7に示すように、圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の両主面上に形成された溝部18とを備えている。この溝部18は、振動腕部10,11の長手方向に沿って振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0022】
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10,11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10,11を振動させる第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16,17とを有している。励振電極15、マウント電極16,17及び引き出し電極19,20は、例えば、クロム(Cr)やニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等の導電性材料の被膜により形成されている。
【0023】
励振電極15は、一対の振動腕部10,11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極である。励振電極15を構成する第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極16,17に電気的に接続されている。
【0024】
また、一対の振動腕部10,11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。
【0025】
図1,図3及び図4に示すように、リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティC用の凹部3aが形成されている。
【0026】
リッド基板3の内面全体には、陽極接合用の接合材35が形成されている。具体的に、接合材35は、凹部3aの周囲に形成されたベース基板2との接合面である額縁領域及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。本実施形態の接合材35はSi膜で形成されているが、接合材35をAlで形成することも可能である。なお接合材として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材を可能することも可能である。そして後述するように、この接合材35とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0027】
ベース基板2は、リッド基板3と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、図1から図4に示すように、板状に形成されている。
このベース基板2には、ベース基板2を貫通する一対の貫通孔30,31が形成されている。この際、一対の貫通孔30,31は、キャビティC内に収まるように形成されている。より詳しく説明すると、本実施形態の貫通孔30,31は、マウントされた圧電振動片4の基部12側に対応した位置に一方の貫通孔30が形成され、振動腕部10,11の先端側に対応した位置に他方の貫通孔31が形成されている。
【0028】
そして、これら一対の貫通孔30,31には、これら貫通孔30,31を埋めるように形成された一対の貫通電極32,33が形成されている。これら貫通電極32,33は、図3に示すように、焼成によって貫通孔30,31に対して一体的に固定された筒体6及び芯材部7によって形成されたものであり、貫通孔30,31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極38,39と引き回し電極36,37とを導通させる役割を担っている。
【0029】
筒体6は、図3,図8に示すように、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体6は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体6の中心には、芯材部7が筒体6を貫通するように配されている。筒体6及び芯材部7は、貫通孔30,31内に埋め込まれた状態で焼成されており、貫通孔30,31に対して強固に固着されている。なお、図8は筒体の斜視図である。
【0030】
上述した芯材部7は、ステンレスや銀、アルミ等の金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体6と同様に両端が平坦で、且つベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。なお、図3に示すように、貫通電極32,33が完成品として形成された場合には、上述したように芯材部7は、ベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。そして、この芯材部7は、筒体6の略中心6cに位置しており、筒体6の焼成によって筒体6に対して強固に固着されている。なお、貫通電極32,33は、導電性の芯材部7を通して電気導通性が確保されている。
【0031】
また、図2から図4に示すように、ベース基板2の内面2b側(リッド基板3との接合面側)には、一対の引き回し電極36,37がパターニングされている。一対の引き回し電極36,37は、一対の貫通電極32,33のうち、一方の貫通電極32と圧電振動片4の一方のマウント電極16とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極33と圧電振動片4の他方のマウント電極17とを電気的に接続するようにパターニングされている。
【0032】
より詳しく説明すると、一方の引き回し電極36は、圧電振動片4の基部12の真下に位置するように一方の貫通電極32の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極37は、一方の引き回し電極36に隣接した位置から、振動腕部10,11に沿って振動腕部10,11の先端側に引き回された後、他方の貫通電極33の真上に位置するように形成されている。
【0033】
そして、これら一対の引き回し電極36,37上にそれぞれバンプBが形成されており、バンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極16が、一方の引き回し電極36を介して一方の貫通電極32に導通し、他方のマウント電極17が、他方の引き回し電極37を介して他方の貫通電極33に導通するようになっている。
【0034】
また、ベース基板2の外面2aには、図1,図3及び図4に示すように、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極38,39が形成されている。つまり、一方の外部電極38は、一方の貫通電極32及び一方の引き回し電極36を介して圧電振動片4の第1の励振電極13に電気的に接続されている。また、他方の外部電極39は、他方の貫通電極33及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極14に電気的に接続されている。
【0035】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に、所定の駆動電圧を印加する。すると、一方の外部電極38から、一方の貫通電極32及び一方の引き回し電極36を介して、圧電振動片4の第1の励振電極13に通電される。また他方の外部電極39から、他方の貫通電極33及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極14に通電される。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電流を流すことができ、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0036】
(圧電振動子の製造方法)
次に、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法について説明する。図9は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図10は、ウエハ体の分解斜視図である。以下には、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片4を封入してウエハ体60を形成し、ウエハ体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図10以下の各図に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
【0037】
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S42以下)とを有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0038】
(圧電振動片作成工程)
図10に示すように、圧電振動片作製工程(S10)では、図5から図7に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状にパターニングするとともに、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17、及び重り金属膜21を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。次に、圧電振動片4の共振周波数の粗調を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、振動腕部10,11の重量を変化させることで行う。
【0039】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
図10に示すように、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)では、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のリッド基板用ウエハ50を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50におけるベース基板用ウエハ40との接合面に、キャビティ用の凹部3aを複数形成する(S22)。凹部3aの形成は、加熱プレス成形やエッチング加工等によって行う。次に、ベース基板用ウエハ40との接合面を研磨する。
【0040】
次に、リッド基板用ウエハ50の内面全体(ベース基板用ウエハ40との接合面及び凹部3aの内面)に接合材35を形成する接合材形成工程(S23)を行う。このように、接合材35をリッド基板用ウエハ50の内面全体に形成することで、接合材35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。なお、接合材35の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。また、接合材形成工程(S23)の前に接合面を研磨しているので、接合材35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
【0041】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2(図3参照)となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程(S30)を行う。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。
【0042】
(貫通電極形成工程)
次に、ベース基板用ウエハ40を厚さ方向に貫通し、キャビティCの内側と圧電振動子1の外側とを導通する貫通電極32,33(図3参照)を形成する貫通電極形成工程(S32)を行う。以下に、貫通電極形成工程(S32)について詳細を説明する。
貫通電極形成工程(S32)では、まず図11に示すように、例えばサンドブラスト法やプレス加工等により、ベース基板用ウエハ40を貫通する一対の貫通孔30,31を複数形成する貫通孔形成工程(S33)を行う。これにより、ベース基板用ウエハ40(ベース基板2)の外面40aから内面40bに向かって漸次径が縮径する断面テーパ状の貫通孔30,31を形成することができる。また、後に両ウエハ40を重ね合わせたときに、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3a内に収まるように一対の貫通孔30,31を複数形成する。しかも、一方の貫通孔30が圧電振動片4の基部12側に位置し、他方の貫通孔31が振動腕部10,11の先端側に位置するように形成する。なお、図11はベース基板用ウエハの一部分を示す斜視図である。
【0043】
図12は、鋲体の斜視図である。
続いて、これら複数の貫通孔30,31内に、鋲体9の芯材部7を配置する鋲体セット工程を行う(S34)。この際、鋲体9として、図12に示すように、平板状の土台部8と、土台部8上から土台部8の表面に略直交する方向に沿ってベース基板用ウエハ40の厚さよりも僅かに短い長さで形成されるとともに、先端が平坦に形成された芯材部7と、を有する導電性の鋲体9を用いる。さらに、図14に示すように、この鋲体9の土台部8の表面がベース基板用ウエハ40の内面40bに接触するまで、芯材部7を挿入する。ここで、芯材部7の軸方向と貫通孔30,31の軸方向とを略一致するように鋲体9を配置する必要がある。しかしながら、土台部8上に芯材部7が形成された鋲体9を利用するため、土台部8をベース基板用ウエハ40に接触させるまで押し込むだけの簡単な作業で、芯材部7の軸方向と貫通孔30,31の軸方向とを略一致させることができる。したがって、鋲体セット工程時における作業性を向上することができる。
【0044】
(充填工程)
図13から図21は、充填工程を説明するための工程図である。そのうち、図13はベース基板用ウエハにメタルマスクがセットされた状態を示す平面図である。また図14から図21は、図13のC−C線に相当する断面図である。なお、本来貫通孔30,31は複数個存在するが、図14から図21においては、図面を見易くするために貫通孔30を1つのみ図示している。また、同様の理由から、メタルマスク80の厚さを誇張して図示している。
図13に示すように、鋲体9がセットされたベース基板用ウエハ40を図示しない印刷装置内に搬送し、貫通孔30,31内にペースト状のガラスフリット(充填材)6aを充填する第1充填工程(S35)を行う。
【0045】
まず本実施形態の印刷装置は、ベース基板用ウエハ40を保持する図示しない治具と、ベース基板用ウエハ40におけるガラスフリット6aの塗布領域以外の領域を覆うように形成されたメタルマスク80と、図示しない移動機構により、メタルマスク80の表面に沿って互いに逆方向に走査可能に保持されたフィルスキージ(第1フィルスキージ45及び第2フィルスキージ46)とを備えている。
【0046】
メタルマスク80は、例えばステンレスからなる、厚さが50μm程度の平板部材である。メタルマスク80は、ベース基板用ウエハ40の周縁部を覆い、中央部に開口部80aが形成されている。
ベース基板用ウエハ40を保持する治具は、メタルマスク80の下方(裏面側)で、ベース基板用ウエハ40を保持した状態で、ベース基板用ウエハ40の厚さ方向に移動可能に構成されるとともに、ベース基板用ウエハ40の中心軸回りに回転可能に構成されている。
【0047】
図13,図14に示すように、フィルスキージ45は、長手方向がベース基板用ウエハ40の外径よりも長く形成された板状の部材であり、第1フィルスキージ45の走査面とベース基板用ウエハ40の外面40aとが平行となるように移動可能とされている。第1フィルスキージ45は、先端に向かうにつれ厚さ方向両側から先細るように形成されている。なお、図13,図16に示すように、第2フィルスキージ46は第1フィルスキージ45と同一形状に形成されている。この場合、第1フィルスキージ45は、メタルマスク80上を一端側から他端側まで移動可能に構成され、第2フィルスキージ46はメタルマスク80上を他端側から一端側まで移動可能に構成されている。すなわち、第1フィルスキージ45の終点は第2フィルスキージ46の始点側となっており、第2フィルスキージ46の終点は第1フィルスキージ45の始点側となっている。
【0048】
ここで、フィルスキージ45,46は、ゴム硬度が60度以上70度以下の比較的柔らかいゴム材料により構成されていることが好ましく、本実施形態では60度程度のゴム材料により構成されている。なお、ゴム硬度は、JIS K 6253に規格化されているゴム硬さ試験法における国際ゴム硬さの数値である。
【0049】
第1充填工程(S35)では、まずベース基板用ウエハ40を、外面40aを上方に向けた状態で印刷装置の図示しない治具にセットするとともに、ベース基板用ウエハ40の外面40a上にメタルマスク80を配置する。
【0050】
図13,図14に示すように、まず第1フィルスキージ45を第1方向S1に沿って走査することで、ガラスフリット6aを貫通孔30,31内に充填する第1走査工程(S35A)を行う。なお、以下の説明では、メタルマスク80の一端側から他端側に沿う方向を第1方向S1、他端側から一端側に沿う方向を第2方向S2とする。
具体的には、第1フィルスキージ45の走査方向手前側のメタルマスク80上にガラスフリット6aを供給する。そして、第1フィルスキージ45の先端45aをメタルマスク80(ベース基板用ウエハ40の外面40a)に押し付けた状態で、第1フィルスキージ45を第1方向S1に沿って走査する。この際、第1フィルスキージ45のアタック角θ1を15度〜25度程度に設定した状態で、ベース基板用ウエハ40の外面40aと第1フィルスキージ45の走査面とが平行となるように第1フィルスキージ45を走査する。
【0051】
図22は、図15のD矢視図である。
ここで、図15,図22に示すように、第1フィルスキージ45は、ゴム硬度が60度程度のゴム材料により構成されているため、第1フィルスキージ45をメタルマスク80に押し付けると、第1フィルスキージ45がメタルマスク80の開口縁に倣って撓み変形することで、開口部80a内に向けて凸状に湾曲する。そのため、第1フィルスキージ45の先端45aが開口部80a内に入り込んで、ベース基板用ウエハ40の外面40a全体に当接した状態で、第1フィルスキージ45が移動する。そのため、第1フィルスキージ45からベース基板用ウエハ40(ガラスフリット6a)に作用する押圧力F1がベース基板用ウエハ40の外面40a全体に均一に作用する。この状態で第1フィルスキージ45を走査すると、第1フィルスキージ45の先端45aにより第1フィルスキージ45の走査方向に沿って押し流されるようにガラスフリット6aが流動する。
【0052】
これにより、図15に示すように、ベース基板用ウエハ40上の全体に亘ってガラスフリット6aが均される。そして、貫通孔30,31の開口縁に沿って第1フィルスキージ45を移動する際に、第1フィルスキージ45の先端45aによって開口縁近傍のガラスフリット6aが、貫通孔30,31内に押し流されるように流動する。その結果、ベース基板用ウエハ40に形成された各貫通孔30,31内に均一にガラスフリット6aが充填される。この際、第1フィルスキージ45が貫通孔30,31の開口縁に倣って撓み変形した状態で移動することで、ガラスフリット6aが第1フィルスキージ45により貫通孔30,31の深さ方向に沿って効果的に押し込まれる。これにより、各貫通孔30,31内の奥側までガラスフリット6aを充填できる。なお、第1フィルスキージ45は終点まで到達すると、第1フィルスキージ45の先端45aとメタルマスク80の表面との間を離間させた状態で始点まで戻るようになっている。そのため、第1走査工程(S35A)において、メタルマスク80の開口部80a内に入り込まず、第1フィルスキージ45によって終点側まで押し流された余剰のガラスフリット(以下、余剰フリット6bという)は、メタルマスク80上におけるベース基板用ウエハ40の第1方向S1の端部(第2フィルスキージ46の始点側)に存在している。
【0053】
ところで、第1走査工程(S35A)で第1フィルスキージ45を第1方向S1に走査した場合、貫通孔30,31内におけるフィルスキージ45の走査方向手前側にはガラスフリット6aがスムーズに充填されるが、走査方向奥側等にはガラスフリット6aが充填され難く、芯材部7の奥側等にはガラスフリット6aが充填されない未充填領域Dが形成される虞がある(図16参照)。
【0054】
そのため、図16に示すように、本実施形態では、第1走査工程(S35A)の終了後、第2フィルスキージ46を第2方向S2に沿って走査することで、ガラスフリット6aを貫通孔30,31内に充填する第2走査工程(S35B)を行う。
具体的には、第2フィルスキージ46の先端46aをメタルマスク80(ベース基板用ウエハ40の外面40a)に押し付けた状態で、第2フィルスキージ46を第2方向S2に沿って走査する(図16中矢印S2参照)。この際、第2フィルスキージ46のアタック角θ2を、第1走査工程と同様に15度〜25度に設定した状態で、ベース基板用ウエハ40の面方向と第2フィルスキージ46の走査面とが平行となるように第2フィルスキージ46を走査する。
【0055】
第2フィルスキージ46を走査すると、第2フィルスキージ45の終点側に存在している余剰フリット6bが、第2フィルスキージ46の先端46aにより第2フィルスキージ46の走査方向に沿って押し流されるように流動する。その結果、上述した第1走査工程(S35A)と同様に、第2フィルスキージ46の先端46aによって貫通孔30,31の開口縁近傍のガラスフリット6aが、貫通孔30,31内に押し流されるように流動する。この際、ガラスフリット6aは、第2フィルスキージ46の走査方向手前側から貫通孔30,31内に入り込んでいく。すなわち、第1走査工程(S35A)の終了時点での未充填領域Dにガラスフリット6aがスムーズに充填される。これにより、各貫通孔30,31に隙間なくガラスフリット6aを充填できる。なお、第2フィルスキージ46は、終点まで到達すると、第2フィルスキージ46の先端46aとメタルマスク80の表面との間を離間させた状態で始点まで戻るようになっている。
【0056】
次に、第1充填工程(S35)で埋め込んだガラスフリット6aを、例えば85℃程度の温度雰囲気に保持された乾燥炉内で30分程度乾燥させる(S36:第1乾燥工程)。
【0057】
ところで、上述した第1充填工程(S35)では、貫通孔30,31の底部側まで隙間なくガラスフリット6aを充填できるものの、フィルスキージ45,46の先端45a,46aがベース基板用ウエハ40の外面40aに押し付けられながら移動するため、貫通孔30,31内に充填されたガラスフリット6aの表層部分がフィルスキージ45,46によって掻き取られる場合がある。その結果、貫通孔30,31内におけるガラスフリット6aの表面は、ベース基板用ウエハ40の外面40aに対して僅かに凹み部分Hが生じる場合がある(図18参照)。
【0058】
そこで、本実施形態では、第1乾燥工程(S36)の終了後、上述したフィルスキージ45,46とは異なるスキージ(第1スクライブスキージ90及び第2スクライブスキージ91)を用いて再度ガラスフリット6aを充填する第2充填工程(S37)を行う。
図18,図20に示すように、スクライブスキージ90,91は、上述したフィルスキージ45,46と同一形状のものであり、互いに逆方向に走査可能に構成されている。また、スクライブスキージ90,91の走査方向に対して後側は、厚さ方向に対して傾斜する逃げ面が形成されている。また、各スクライブスキージ90,91は、上述したフィルスキージ45,46に比べて硬質の材料からなり、具体的には金属材料や樹脂材料により構成されている。そして、第2充填工程(S37)に先立って、印刷装置に取り付けられたフィルスキージ45,46を取り外し、上述したスクライブスキージ90,91に交換する。
【0059】
第2充填工程(S37)では、スキージ90,91を用いて上述した第1充填工程(S35)と同様の方法により、ガラスフリット6aの充填を行う。
まず図18に示すように、ベース基板用ウエハ40を、外面40aを上方に向けた状態で印刷装置の図示しない治具にセットするとともに、ベース基板用ウエハ40の外面40a上にメタルマスク80を配置する。
そして、第1スクライブスキージ90の先端90aをメタルマスク80に当接させた状態で、第1スクライブスキージ90を第1方向S1に沿って走査する。この際、第1スクライブスキージ90のアタック角θ3を60度〜90度程度に設定した状態で、ベース基板用ウエハ40の外面40aと第1スクライブスキージ90の走査面とが平行となるように第1スクライブスキージ90を走査する。
【0060】
第1スクライブスキージ90を第1方向S1に沿って走査すると、メタルマスク80上を第1スクライブスキージ90はほとんど撓むことなく移動する。そのため、第1スクライブスキージ90からガラスフリット6aに作用する押圧力F2は、上述した第1充填工程(S35)でフィルスキージ45,46からガラスフリット6aに作用する押圧力F1に比べて弱くなる。そして、第1スクライブスキージ90の走査方向に沿って押し流されるようにガラスフリット6aが流動することで、開口部80a内にガラスフリット6aがスムーズに入り込む。これにより、ベース基板用ウエハ40上に沿ってガラスフリット6aが均され、ガラスフリット6aの表面が平坦面に形成される。この際、第1スクライブスキージ90の先端90aによって貫通孔30,31の開口縁近傍のガラスフリット6aが、貫通孔30,31内の凹み部分Hに入り込む。
【0061】
続いて、図20,図23に示すように、第2スクライブスキージ91を第2方向S2に沿って走査して、ガラスフリット6aを貫通孔30,31内に充填する第4走査工程(S37B)を行う。
具体的に、第2スクライブスキージ91の先端91aをメタルマスク80に押し付けた状態で、第2スクライブスキージ91を第2方向S2に沿って走査する(図20中矢印S2参照)。この際、第2スクライブスキージ91のアタック角θ4を、第3走査工程と同様に60度〜90度に設定した状態で、ベース基板用ウエハ40の面方向と第2スクライブスキージ91の走査面とが平行となるように第2スクライブスキージ91を走査する。
【0062】
第2スクライブスキージ91を走査すると、第2スクライブスキージ90の終点側に存在している余剰フリット6bが、第2スクライブスキージ91の先端91aにより第2スクライブスキージ91の走査方向に沿って押し流されるように流動する。その結果、上述した第3走査工程(S37A)と同様に、開口部80a内にガラスフリット6aがスムーズに入り込む。これにより、図21に示すように、ベース基板用ウエハ40上に沿ってガラスフリット6aが均され、ガラスフリット6aの表面が平坦面に形成されるとともに、貫通孔30,31内の全体に隙間なくガラスフリット6aが充填される。
【0063】
これにより、図24に示すように、貫通孔30,31内がガラスフリット6aにより完全に満たされるとともに、ベース基板用ウエハ40の外面40a上の塗布領域に所定の膜厚でガラスフリット6aが残存することになる。この場合、第2充填工程(S37)において、スクライブスキージ90,91でガラスフリット6aの表面を平坦面に均すことで、後述する焼成工程(S39)で焼成されたガラスフリット6aの表面も平坦面に形成される。
【0064】
次いで、第2充填工程(S37)で埋め込んだガラスフリット6aを第1乾燥工程(S36)と同様の条件で乾燥させる(S38:第2乾燥工程)。
【0065】
その後、乾燥させたガラスフリット6aを、600度程度の温度雰囲気下に保持された焼成炉内で焼成して硬化させる焼成工程(S39)を行う。これにより、貫通孔30,31と、貫通孔30,31内に埋め込まれたガラスフリット6aと、ガラスフリット6a内に配置された鋲体9とが互いに固着し合う。この焼成を行う際に、土台部8ごと焼成するため、芯材部7の軸方向と貫通孔30,31の軸方向とを略一致させた状態にしたまま、両者を一体的に固定することができる。
【0066】
次に、鋲体9の土台部8を研磨して除去する研磨工程を行う(S40)。これにより、筒体6及び芯材部7を位置決めさせる役割を果たしていた土台部8を除去することができ、芯材部7のみを筒体6の内部に取り残すことができる。
また、同時にベース基板用ウエハ40の外面40a(鋲体9の土台部8が配されていない側の面)を研磨して平坦面になるようにする。そして、芯材部7の先端が露出するまで研磨する。この場合、ベース基板用ウエハ40上に残存したガラスフリット6aの表面は平坦面に形成されているため、研磨工程(S40)において表面を均一に研磨することができる。そのため、研磨後のベース基板用ウエハ40を面内方向全域に亘って所望の厚さで形成することができる。その結果、筒体6と芯材部7とが一体的に固定された一対の貫通電極32,33を複数得ることができる(図3参照)。
【0067】
なお、貫通電極32,33を形成するにあたって、従来のものとは異なり、導電部にペーストを使用せずに、ガラス材料からなる筒体6と、導電性の芯材部7とで貫通電極32,33を形成している。仮に導電部にペーストを利用した場合には、焼成時にペースト内に含まれる有機物が蒸発してしまうため、ペーストの体積が焼成前に比べて顕著に減少してしまう。そのため、仮にペーストだけを貫通孔30,31内に埋め込んだ場合には、焼成後にペーストの表面に大きな凹みが生じてしまう。しかしながら、本実施形態では導電部に金属製の芯材部7を用いたため、導電部の体積減少を無くすことができる。すなわち、ベース基板用ウエハ40の表面と、筒体6及び芯材部7の両端とは、略面一な状態となる。これにより、ベース基板用ウエハ40の表面と貫通電極32,33の表面とを、略面一な状態とすることができる。なお、研磨工程(S40)を行った時点で、貫通電極形成工程(S32)が終了する。
【0068】
次に、図10に示すように、次に、一対の貫通電極32,33に電気的接続された引き回し電極36,37を形成する引き回し電極形成工程を行う(S41)。このようにして、ベース基板用ウエハ40の製作工程が終了する。
【0069】
(組立工程)
マウント工程(S42)では、作製した複数の圧電振動片4を、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極36,37の上面に接合する。具体的には、まず一対の引き回し電極36,37上にそれぞれ金等のバンプBを形成する。次に、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置し、バンプBを所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプBに押し付ける。これにより、圧電振動片4の振動腕部10,11がベース基板用ウエハ40の内面40bから浮いた状態で、基部12がバンプBに機械的に固着される。また、マウント電極16,17と引き回し電極36,37とが電気的に接続された状態となる。
【0070】
重ね合わせ工程(S50)では、圧電振動片4のマウントが終了したベース基板用ウエハ40に対して、リッド基板用ウエハ50を重ね合わせる。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、ベース基板用ウエハ40にマウントされた圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50の凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。なお、この際ベース基板用ウエハ40の貫通孔30,31とリッド基板用ウエハ50の凹部3aとが、互い連通しない位置関係で重ね合わされる。
【0071】
両基板用ウエハ40,50の重ね合わせ後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハ40,50の外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する(S60:接合工程)。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合したウエハ体60を得ることができる。
その後、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39を形成し(S70:外部電極形成工程)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。そして、ウエハ体60を切断線Mに沿って個片化する切断工程(S90)を行い、内部の電気特性検査(S100)を行う。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0072】
このように、本実施形態では、第1充填工程(S35)において、ゴム硬度が60度程度のフィルスキージ45,46を用いる一方、第2充填工程(S37)において、金属製のスクライブスキージ90,91を用いる構成とした。
この構成によれば、ゴム硬度が60度以上70以下の比較的軟らかいゴム材料からなるフィルスキージ45,46を用いて第1充填工程(S35)を行うことで、フィルスキージ45,46がメタルマスク80の開口縁に倣って撓み変形し、ベース基板用ウエハ40の外面40a全体に当接することになる。これにより、フィルスキージ45,46による押圧力F1がベース基板用ウエハ40の面内全体に均一に作用することで、ガラスフリット6aがベース基板用ウエハ40上の各貫通孔30,31内の底部側まで均一に押し込まれる。その結果、各貫通孔30,31内の底部側まで隙間なくガラスフリット6aを充填できる。
【0073】
さらに、仮に第1充填工程(S35)において貫通孔30,31内でガラスフリット6aの表層部分に凹み部分H等が存在しても、本実施形態では第1充填工程(S35)の終了後、金属材料等の比較的硬い材料からなるスクライブスキージ90,91を用いて第2充填工程(S37)を行う。これにより、スクライブスキージ90,91はほとんど撓むことなくベース基板用ウエハ40上を移動するので、ベース基板用ウエハ40上に沿ってガラスフリット6aを均しつつ、貫通孔30,31の開口縁の内側にガラスフリット6aを充填できる。すなわち、仮に第1充填工程(S35)において、貫通孔30,31内でガラスフリット6aの表層部分に凹み部分H等が存在しても、第2充填工程(S37)において凹み部分Hを埋めるようにガラスフリット6aを充填できる。これにより、貫通孔30,31内の全体に隙間なくガラスフリット6aを充填できる。
なお、第2充填工程(S37)の終了後、ベース基板用ウエハ40の外面40a上におけるガラスフリット6aの塗布領域には所定の膜厚でガラスフリット6aが残存することになる。そのため、後の第2乾燥工程(S38)でガラスフリット6aの体積が減少したとしても、ベース基板用ウエハ40の外面40a上に残存したガラスフリット6aが貫通孔30,31内に入り込むことになるので、貫通孔30,31内で筒体6に凹み等が生じるのを抑制できる。
【0074】
したがって、ベース基板用ウエハ40の面内全体で貫通孔30,31内にガラスフリット6aの凹み部分Hや未充填領域Dが形成されるのを抑制し、焼成後のガラスフリット6aにクラックや凹み等が形成されるのを抑制できる。その結果、貫通孔30,31に未充填領域D等が形成されるのを抑制し、ガラスフリット6aの焼成後に筒体6にクラックや凹み等が形成されるのを抑制できる。
【0075】
その結果、キャビティC内の気密性を確保でき、振動特性に優れた圧電振動子1を提供できる。また、貫通電極32,33を覆うように形成される電極膜(例えば、外部電極38,39等)に段切れが発生するのを抑制し、キャビティCの内部と外部との導通性に優れた圧電振動子1を提供できる。
【0076】
また、本実施形態では、第2充填工程(S37)に先立って、第1充填工程(S35)で充填されたガラスフリット6aを乾燥させておくことで、第1充填工程(S35)で充填されたガラスフリット6aの体積を予め減少させておくことができる。この場合、第2充填工程(S37)では、第1乾燥工程(S36)を経て体積減少した凹み部分Hを埋めるようにガラスフリット6aが充填されることになる。
これにより、第2充填工程(S37)の終了後に行われる第2乾燥工程(S38)では、第2充填工程(S37)で充填されたガラスフリット6aのみが体積減少することになるので、第1,2充填工程の終了後にまとめて最終乾燥工程を行う場合に比べて、ガラスフリット6aの体積減少を抑制できる。よって、ガラスフリット6aに凹み部分H等が形成されるのを確実に抑制できる。
【0077】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図25を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図25に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0078】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0079】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保され、歩留まりが向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、発振器100自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0080】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図26を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0081】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図26に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0082】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0083】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0084】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0085】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0086】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0087】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0088】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保され、歩留まりが向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、携帯情報機器自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0089】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図27を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図27に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0090】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0091】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。 続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0092】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0093】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保され、歩留まりが向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、電波時計自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0094】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0095】
例えば、上述した実施形態では、リッド基板用ウエハ50の内面に接合材35を形成したが、これとは逆に、ベース基板用ウエハ40の内面40bに接合材35を形成してもよい。この場合は、引き回し電極36,37と接合材とが接触しないように、ベース基板用ウエハ40におけるリッド基板用ウエハ50との接合面のみに形成することが好ましい。
また、上述した実施形態では、第1充填工程(S35)と第2充填工程(S37)との間に、第1乾燥工程(S36)を行う場合について説明したが、第1乾燥工程(S36)を行わず、第1充填工程(S35)及び第2充填工程(S37)を連続して行った後、まとめて乾燥工程を行っても構わない。
【0096】
また、各充填工程において、互いに逆方向から2回ずつ走査工程を行う場合について説明したが、これに限らず、各充填工程における走査工程は1回ずつでも構わない。
【0097】
また上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
さらに、上述した実施形態ではベース基板2とリッド基板3との間にキャビティCを形成した2層構造タイプの圧電振動子1に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、圧電基板をベース基板とリッド基板とで上下から挟み込むように接合した3層構造タイプの圧電振動子に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0098】
1…圧電振動子 2…ベース基板(基板) 3…リッド基板(基板) 4…圧電振動片 6a…ガラスフリット(充填材) 7…芯材部 5…パッケージ 30,31…貫通孔 32,33…貫通電極 45,46…フィルスキージ(第1スキージ) 80…メタルマスク(マスク材) 80a…開口部 90,91…スクライブスキージ(第2スキージ) 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち、第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内部と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、
前記貫通電極形成工程は、前記第1基板に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記第1基板の周縁部を覆い中央部に開口部が形成されたマスク材を、前記第1基板の一方の面上に密着させた状態で、前記貫通孔内に充填材を充填する充填工程とを有し、
前記充填工程は、
ゴム硬度が60度以上70度以下のゴム材料からなる第1スキージを、前記第1基板の前記一方の面に沿って走査し、前記貫通孔内に前記充填材を充填する第1充填工程と、
樹脂材料又は金属材料からなる第2スキージを、前記一方の面に沿って走査し、前記貫通孔内に前記充填材を充填する第2充填工程とを有していることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記第1充填工程と前記第2充填工程との間に、前記充填材を乾燥させる乾燥工程を有していることを特徴とする請求項1記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法で製造されたことを特徴とするパッケージ。
【請求項4】
請求項3記載のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項4記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項4記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項4記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−160296(P2011−160296A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21538(P2010−21538)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】