説明

フィルム状接着剤、フィルム状異方導電性接着剤

【課題】製造工程において、高度な分散技術を必要とせず、また品質管理に多大な労力を費やすことなく、ボイドの発生を効果的に抑制することができることができるフィルム状接着剤を提供する
【解決手段】本発明に係るフィルム状接着剤は、分子量10000以上のフェノキシ樹脂と、エポキシ基を含んだアクリルモノマーをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を含む第1のエポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、前記潜在性硬化剤との反応性を有する第2のエポキシ樹脂とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤、フィルム状異方導電性接着剤に関し、特に電極、回路等を設けた配線板や電子部品等を接着し、かつ電気的に接続するためのフィルム状接着剤およびフィルム状異方導電性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高機能化の流れの中で、構成部品(例えば、液晶製品における電子部品)内の接続端子の微小化が進んでいる。このため、エレクトロニクス実装分野においては、そのような端子間の接続を容易に行える接着剤として、フィルム状異方導電性接着剤が広く使用されている。例えば、金メッキされた銅電極が形成されたフレキシブルプリント配線板(FPC)とITO電極が形成されたガラス基板との接続や、フレキシブルプリント配線板とガラスエポキシ基材上に金メッキされた銅電極が形成されたリジッド基板(PCB)との接合、ICチップ等の電子部品とリジッド基板の接合、およびフレキシブルプリント配線板同士の接合等多くの接続に使用されている。
【0003】
このフィルム状異方導電性接着剤は、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂に導電性粒子を分散させた接着剤であり、接続対象の間に挟まれ、加熱、加圧されて、接続対象を接着する。即ち、加熱、加圧により接着剤中の樹脂が流動して同一基板上の隣接する電極間の隙間を封止すると同時に、導電性粒子の一部が対峙する電極の間に噛み込まれて電気的接続が達成される。
【0004】
銅電極が形成されたリジッド基板とフレキシブルプリント配線板との接続を例に挙げると、図4に示すように、フィルム状異方導電性接着剤102はリジッド基板101とフレキシブルプリント配線板103との間、より正確にはリジッド基板101上に形成された電極104とフレキシブルプリント配線板103上に形成された電極105との間に挟みこまれる。この状態が図5に示す保存時の状態であり、このときの粘度である保存時粘度は比較的大きいため、フィルム状異方導電性接着剤102は流動しない。
【0005】
フレキシブルプリント配線板103とリジッド基板101とを接続する場合には、フィルム状異方導電性接着剤102を、フレキシブルプリント配線板103およびリジッド基板101とともに加熱し流動化させた状態で、フレキシブルプリント配線板103およびリジッド基板101を互いに圧着する。このときフィルム状異方導電性接着剤102の粘度は大きく低下するため、図6に示すように、電極104および電極105の間から押し出され、リジッド基板101とフレキシブルプリント配線板103との間に充填される。
【0006】
フィルム状異方導電性接着剤102が加熱されることで熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂の硬化反応が開始され、やがて図5に示すように粘度が上昇して接着時粘度に達することにより、図7に示すように、フレキシブルプリント配線板103とリジッド基板101との接着が完了する。この状態においてフィルム状異方導電性接着剤102はほぼ硬化反応が完了するため、フレキシブルプリント配線板103とリジッド基板101は完全に固定される。
【0007】
ここで、加熱時におけるフィルム状異方導電性接着剤102の粘度が低すぎ、流動性が大きすぎると、フレキシブルプリント配線板103とリジッド基板101との間からフィルム状異方導電性接着剤102が流れ出してしまい、空隙(ボイド)ができる場合がある。また逆に、加熱時におけるフィルム状異方導電性接着剤102の粘度が高すぎ、流動性が小さすぎると、フレキシブルプリント配線板103とリジッド基板101との間全体にフィルム状異方導電性接着剤102が完全に充填されず、空隙(ボイド)ができる場合がある。
【0008】
なお、加熱時間が長く取れるのであれば、加熱時の樹脂流動の調節が容易であるため、ボイドの抑制も比較的容易であるが、コストダウン、製造工程の短縮が強く望まれる現在において、加熱時間はむしろ短縮することが要望されており、樹脂流動の調節によるボイドの抑制は一層困難な状況となっている。
【0009】
また、このフィルム状異方導電性接着剤においては、当該フィルム状異方導電性接着剤の厚み方向に相対峙する、接続された電極間の抵抗(接続抵抗、または導通抵抗)を低くするという導通性能と、フィルム状異方導電性接着剤の面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)を高くするという絶縁性能が必要とされている。そして、一般に、このような性能を有するフィルム状異方導電性接着剤として、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とし、金、銀、亜鉛、錫、半田、インジウム、パラジウム等の導電性粒子とマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有するものが開示されている。
【0010】
また、このフィルム状異方導電性接着剤を作製する際には、一般に、まず、主成分であるエポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を、所定の溶媒中に溶解した溶液に、導電性粒子を添加して、接着剤用の複合材料を作製する。次いで、当該複合材料を攪拌して、導電性粒子を均一に分散させた後、離形処理したフィルム上に、当該複合材料を塗布し、乾燥、固化させることにより、作製される。
【0011】
ここで、フィルム状異方導電性接着剤により、電極、回路等を設けたフレキシブルプリント配線板やリジッド基板等を接着する場合に作業効率を高めるとの観点から、接着剤の作製の際に、予め、硬化剤を添加することが一般的に行われる。また、この硬化剤は、室温では、殆ど硬化反応を起こさないが、一定温度以上(例えば、120℃)に加熱することにより、速やかに硬化反応を行うものであるため、接着剤を作製する際には、当該硬化剤の硬化反応が起こらないように、溶媒の沸点(例えば、150℃)よりも低い温度で、上述の乾燥処理が行われる。その結果、作製された接着剤中に溶媒が残留する場合があり、当該残留した溶媒が、電極、回路等を設けたフレキシブルプリント配線板やリジッド基板等を接着する際の加熱により蒸発し、接着剤にボイドが発生する場合がある。
【0012】
また、硬化速度を速めるとの観点から、絶縁性の熱硬化性樹脂として、分子量が2000以下の低分子量エポキシ樹脂を使用することが一般的に行われる。この低分子量エポキシ樹脂は、上述の硬化剤と速やかに反応し、接着性能を高める役割を有するものであるが、当該低分子量エポキシ樹脂の沸点が低い(例えば、250℃)場合、電極、回路等を設けたフレキシブルプリント配線板やリジッド基板等を接着する際に、低分子量エポキシ樹脂の一部が硬化剤と反応せず、蒸発する場合があり、その結果、接着剤にボイドが発生する場合がある。
【0013】
そして、上述のボイドが発生すると、フィルム状異方導電性接着剤の熱硬化性樹脂の耐熱性、および耐湿性が低下して、当該熱硬化性樹脂の物性に悪影響を及ぼし、結果として、上述の絶縁抵抗が低下するという問題があった。また、フレキシブルプリント配線板やリジッド基板をフィルム状接着剤を介して接着する際に、フィルム状接着剤の熱硬化性樹脂と、金属電極との接着力が低下し、フレキシブルプリント配線板とリジッド基板との接続信頼性が低下するという問題があった。
【0014】
そこで、当該ボイドの発生を抑制すべく、シリコーンオイルを配合したエポキシ樹脂組成物が提案されている。より具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化剤、無機充填剤、および親水性、および疎水性を有する両親媒性のシリコーンオイルからなるエポキシ樹脂組成物が開示されている。当該シリコーンオイルは、界面活性効果を有するため、樹脂や無機充填剤を均一に分散でき、成形時のボイドの発生を低減できると記載されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0015】
しかし、特許文献1および特許文献2に提示されたシリコーンオイルを配合したエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂とシリコーンオイルの相溶性が不十分であるため、例えば、当該エポキシ樹脂組成物を使用した接着剤を介して、加熱処理を行うことにより、フレキシブルプリント配線板をリジッド基板上に実装する際に、一旦粘度が下がるため、エポキシ樹脂とシリコーンオイルが相分離する場合がある。従って、当該相分離により、シリコーンオイルが接着界面に局在化すると、接着剤の接着力が大幅に低下してしまい、フレキシブルプリント配線板とリジッド基板との接続信頼性が低下するという問題があった。
【0016】
そこで、特許文献3には、平均粒径が2μm以下の絶縁性の樹脂微粒子を含有する技術が提示されている。例えば、フレキシブルプリント配線板の金属電極(例えば、金メッキが施された銅電極)をリジッド基板の配線電極(例えば、金メッキが施された銅電極)に接続する際に、熱硬化性樹脂におけるボイドの発生を効果的に抑制することができる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平9−316305号公報
【特許文献2】特開平10−60228号公報
【特許文献3】特開2008−84545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
確かに絶縁性の樹脂微粒子はエポキシ樹脂との相溶性も大きく、相分離の問題も発生しない。従って、樹脂微粒子を十分に分散させることができれば、特許文献3の方法によりボイドの発生を効果的に抑制することができる。しかし、樹脂微粒子が凝集して接続界面に存在すると、安定接続・接着を妨げることになるという問題があった。係る問題を解消するためには樹脂微粒子を十分に分散させることが必要であるため、高度な分散技術を駆使せねばならず、品質管理に多大な労力が必要であった。
【0019】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、製造工程において、高度な分散技術を必要とせず、また品質管理に多大な労力を費やすことなく、ボイドの発生を効果的に抑制することができることができるフィルム状接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係るフィルム状接着剤は、分子量10000以上のフェノキシ樹脂と、エポキシ基を含んだアクリルモノマーをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を含む第1のエポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、前記潜在性硬化剤との反応性を有する第2のエポキシ樹脂とを含有する。
【0021】
同構成によれば、エポキシ基を含んだアクリルモノマーをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を含む第1のエポキシ樹脂を含有するため、エポキシ基を含んだアクリルモノマーの種類や量、およびラジカル重合の程度を制御することにより、第1のエポキシ樹脂の量、分子量を容易に制御することができる。従って、かかる制御により、例えば、フレキシブルプリント配線板をリジッド基板上にフィルム状接着剤を介して実装するために、加熱処理を行う際のフィルム状接着剤の粘度を自在に制御することが可能となり、かかる際のボイド発生を抑制できる。
【0022】
本発明に係るフィルム状接着剤は、前記ラジカル重合物は、ラジカル反応開始剤に光を照射することによって開始されるラジカル反応によって、前記アクリルモノマーを重合させたラジカル重合物であることが好ましい。
【0023】
同構成によれば、ラジカル重合物は、ラジカル反応開始剤に光を照射することによって開始されるラジカル反応によって、前記アクリルモノマーを重合させたラジカル重合物であるため、ラジカル反応開始のために熱を必要としない。従って、製造時において、加熱の必要がなく、容易に生産できる。また、加熱の必要がないため、製造時において、熱によって反応が進む第2のエポキシ樹脂や熱硬化性樹脂に影響を与えることもない点においても、製造が容易となる。
【0024】
本発明に係るフィルム状接着剤は、前記第1のエポキシ樹脂は、エポキシ基を含んだアクリルモノマーとラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーとをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を更に含む。
【0025】
同構成によれば、第1のエポキシ樹脂は、エポキシ基を含んだアクリルモノマーとラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーとをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を含むため、ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーが2つ以上のアクリルモノマーを重合させることができる。ラジカル反応部位を1つしか持たないアクリルモノマーのみであった場合、ラジカル重合反応において、2つのアクリルモノマーが重合したラジカル重合物しか生成されない。同構成によれば、複数のラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーが他のアクリルモノマーを複数重合させることができるため、ラジカル重合物のバリエーションが多くなり、所望の粘度にフィルム状接着剤を調整することが一層容易となる。
【0026】
本発明に係るフィルム状接着剤は、前記アクリルモノマーが脂肪族系であることが好ましい。
同構成によれば、アクリルモノマーが脂肪族系であるため、アクリルモノマーをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を含む第1のエポキシ樹脂が、柔軟性を有する。従って、硬化後のフィルム状接着剤に柔軟性を与えることが可能となり、接着性が向上する。
【0027】
本発明に係るフィルム状接着剤は、前記エポキシ樹脂がナフタレン型エポキシ樹脂であることが好ましい。同構成によれば、エポキシ樹脂がナフタレン型エポキシ樹脂であるため、最終硬化物の耐熱性が向上するとともに、熱硬化反応速度を速めることができる。
【0028】
本発明に係るフィルム状異方導電性接着剤は、上述のフィルム状異方導電性接着剤に導電性粒子を含有させたフィルム状異方導電性接着剤である。上述のフィルム状異方導電性接着剤に導電性粒子を含有させているため、例えば、対峙する電極を有するリジッド基板を接着するだけで導電性粒子6により電極同士を導通接続することが可能となる。
【0029】
本発明に係るフィルム状異方導電性接着剤は、前記導電性粒子が針状または直鎖状であり、長径方向を厚み方向に配向させることが好ましい。同構成によれば、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、多数の配線電極−金属電極間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、高度な分散技術を必要とせず、また品質管理に多大な労力を費やすことなく、ボイドの発生を効果的に抑制することができることができるフィルム状接着剤を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルム状異方導電性接着剤により、フレキシブルプリント配線板を実装したリジッド基板を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフィルム状異方導電性接着剤において使用される導電性粒子を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフィルム状異方導電性接着剤において使用される導電性粒子を説明するための図である。
【図4】フィルム状異方導電性接着剤による基板の接続方法を説明する図面であり、保存時の状態を説明する断面図である。
【図5】フィルム状異方導電性接着剤による基板の接続方法を説明する図面であり、保存時から接着時にいたるフィルム状異方導電性接着剤の粘度変化を示すグラフである。
【図6】フィルム状異方導電性接着剤による基板の接続方法を説明する図面であり、加熱時の状態を説明する断面図である。
【図7】フィルム状異方導電性接着剤による基板の接続方法を説明する図面であり、接着時の状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るフィルム状異方導電性接着剤により、フレキシブルプリント配線板を実装したリジッド基板を示す断面図である。本実施形態のフィルム状異方導電性接着剤を用いたフレキシブルプリント配線板等の配線板の実装方法としては、熱硬化性樹脂を主成分とするフィルム状異方導電性接着剤に加熱加圧処理を行うことにより、熱硬化性樹脂を硬化させ、フレキシブルプリント配線板の金属電極をリジッド基板の配線電極に接続する。
【0033】
より具体的には、図1に示すように、リジッド基板1上にフィルム状異方導電性接着剤2を載置し、当該フィルム状異方導電性接着剤2を所定の温度に加熱した状態で、リジッド基板1の方向へ所定の圧力で加圧し、フィルム状異方導電性接着剤2をリジッド基板1上に仮接着する。次いで、フレキシブルプリント配線板3を下向きにした状態で、リジッド基板1の表面に形成された電極4と、フレキシブルプリント配線板3の表面に形成された電極5との位置合わせをしながら、フレキシブルプリント配線板3をフィルム状異方導電性接着剤2上に載置することにより、リジッド基板1とフレキシブルプリント配線板3との間にフィルム状異方導電性接着剤2を介在させる。次いで、フィルム状異方導電性接着剤2が所定の温度になるように、適切な温度に加熱された圧着部材であるプレスヘッド(不図示)を、フレキシブルプリント配線板3の上方に設置し、当該プレスヘッドをリジッド基板1の方向に移動させて、フィルム状異方導電性接着剤2を所定の温度に加熱した状態で、フレキシブルプリント配線板3を介して、当該フィルム状異方導電性接着剤2をリジッド基板1の方向へ所定の圧力で加圧することにより、フィルム状異方導電性接着剤2を加熱溶融させる。なお、上述のごとく、フィルム状異方導電性接着剤2は、熱硬化性樹脂を主成分としているため、当該フィルム状異方導電性接着剤2を上述の温度にて加熱をすると、含有される熱硬化性樹脂が流動して、一旦軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。そして、予め設定したフィルム状異方導電性接着剤2の硬化時間が経過すると、フィルム状異方導電性接着剤2の硬化温度の維持状態、および加圧状態を開放し、冷却を開始することにより、図2に示すように、フィルム状異方導電性接着剤2を介して電極4と電極5を接続し、フレキシブルプリント配線板3をリジッド基板1上に実装する。
【0034】
また、電極4、電極5としては銅箔等の金属箔を積層し、当該金属箔を、常法により、露光、エッチング、メッキ処理することにより形成された電極が使用される。
ここで、本実施形態においては、分子量10000以上のフェノキシ樹脂と、エポキシ基を含んだアクリルモノマーをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を含む第1のエポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、潜在性硬化剤との反応性を有する第2のエポキシ樹脂とを含有する点に特徴がある。より具体的には、まず、分子量10000以上のフェノキシ樹脂と、エポキシ基を含んだアクリルモノマーと、ラジカル反応開始剤と、潜在性硬化剤と、潜在性硬化剤との反応性を有する第2のエポキシ樹脂とを予め混合する。かかる混合物にたとえば光照射することによりラジカル反応を進行させ、ラジカル重合物を含む第1のエポキシ樹脂を生成させる。この、第1のエポキシ樹脂を含んだ、混合物をフィルム形状に形成することによりフィルム状異方導電性接着剤2を得る。
【0035】
ラジカル反応開始剤としては、特に限定されないが、過酸化物であることが好ましい。特に光によってラジカル反応を開始するものは、加熱により潜在性硬膜剤に影響を与えずにラジカル反応を開始することができるので、原材料を全て混合した後にラジカル反応を開始することができ、使用しやすく好ましい。
【0036】
第2のエポキシ樹脂としては、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。一般的にナフタレン型エポキシ樹脂は耐熱性が高いことが知られている。従って、かかるナフタレン型エポキシ樹脂を含んだフィルム状異方導電性接着剤の耐熱性を向上させることができる。また、ナフタレン型エポキシ樹脂を含んだエポキシ樹脂は熱硬化反応時の反応速度が速く、フィルム状異方導電性接着剤を熱硬化させる際に反応時間を短くできる。
【0037】
アクリルモノマーとしては、ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーを更に用いることが好ましい。ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーはアクリルモノマーを2つ以上ラジカル重合させることができるため、ラジカル重合反応により、アクリルモノマーが3つ以上重合した第1のエポキシ樹脂を生成させることができる。従って、ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーを用いることにより第1のエポキシ樹脂に広い分子量分布を持たせることができるため、フィルム状異方導電性接着剤2の粘度設計を容易にコントロールできるようになる。即ち、ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーの添加量を調整することにより、フィルム状異方導電性接着剤2の粘度を容易にコントロールできる。なお、ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーは、エポキシ基を含んだものであっても、含まないものであっても用いることができる。
【0038】
また、上述の熱硬化性樹脂とは別に、高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂をフィルム状異方導電性接着剤2は含有する。フェノキシ樹脂としては、ビスフェールA型骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF型骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールA型骨格とビスフェノールF型骨格を共に有するフェノキシ樹脂等を使用することができる。また、フィルム形状を形成する必要性より、フェノキシ樹脂は分子量10000以上であることが必要となる。また、ここでいう「平均分子量」とは、THF展開のゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)から求められたポリスチレン換算の重量平均分子量のことをいう。
【0039】
また、フィルム状異方導電性接着剤2が含有する潜在性硬化剤は、低温での貯蔵安定性に優れ、室温では殆ど硬化反応を起こさないが、熱等により、速やかに硬化反応を行う硬化剤である。この潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第3級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、酸無水物系、フェノール系、および、これらの変性物が例示され、これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0040】
また、これらの潜在性硬化剤中でも、低温での貯蔵安定性、および速硬化性に優れているとの観点から、イミダゾール系潜在性硬化剤が好ましく使用される。イミダゾール系潜在性硬化剤としては、公知のイミダゾール系潜在性硬化剤を使用することができる。より具体的には、イミダゾール化合物のエポキシ樹脂との付加物が例示される。イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾールが例示される。
【0041】
また、特に、これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜およびケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、長期保存性と速硬化性という矛盾した特性の両立を図ることができるため、好ましい。従って、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が、特に好ましい。
【0042】
そして、本実施形態においては、フィルム状異方導電性接着剤2として、例えば、上述のエポキシ樹脂を主成分とするフィルム状異方導電性接着剤2中に、微細な金属粒子(例えば、球状の金属微粒子や金属でメッキされた球状の樹脂粒子からなる金属微粒子)が多数、直鎖状に繋がった形状、または針形状を有する、所謂アスペクト比が大きい形状を有する金属粉末により形成された導電性粒子6が分散されたものを使用することができる。なお、ここで言うアスペクト比とは、図3に示す、導電性粒子6の短径(導電性粒子6の断面の長さ)Rと長径(導電性粒子6の長さ)Lの比のことを言う。
【0043】
また、このフィルム状異方導電性接着剤2において、導電性粒子6の長径Lの方向を、フィルム状異方導電性接着剤2を形成する時点で、フィルム状異方導電性接着剤2の厚み方向(または、フィルム状異方導電性接着剤2の厚み方向)Xにかけた磁場の中を通過させることにより、当該厚み方向Xに配向させて用いる構成としている。このような配向にすることにより、フィルム状異方導電性接着剤2の面方向(厚み方向Xに直交する方向であって、図1の矢印Yの方向。フィルム状異方導電性接着剤2の面方向)においては、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、厚み方向Xにおいては、多数の電極4−電極5間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。
【0044】
また、本発明に使用される金属粉末は、その一部に強磁性体が含まれるものが良く、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることが好ましい。これは、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子6を配向させることが可能になるからである。例えば、ニッケル、鉄、コバルトおよびこれらを含む2種類以上の合金等を挙げることができる。
【0045】
なお、導電性粒子6のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定するが、断面が円でない導電性粒子6の場合は、断面の最大長さを短径としてアスペクト比を求める。また、導電性粒子6は、必ずしもまっすぐな形状を有している必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても、問題なく使用できる。この場合、導電性粒子6の最大長さを長径としてアスペクト比を求める。
【0046】
フィルム状異方導電性接着剤2の作製方法としては、例えば、分子量10000以上のフェノキシ樹脂と、エポキシ基を含んだアクリルモノマーと、ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーと、ラジカル反応開始剤としての過酸化物と潜在性硬化剤と、潜在性硬化剤との反応性を有するナフタレン型エポキシ樹脂とを混合する。この混合溶液に紫外線照射等を行うことによりラジカル反応を開始させ、エポキシ基を含んだアクリルモノマーと、ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーと、過酸化物とを完全に反応させる。
【0047】
次いで、反応終了後の混合溶液に、所定の割合で導電性粒子6を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することにより導電性粒子6を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製する。そして、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、所定の磁束密度の磁場中、所定の乾燥温度(例えば、60℃)で乾燥、固化させることにより作製される。
【0048】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態においてはエポキシ基を含んだアクリルモノマーをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を含む第1のエポキシ樹脂を含有するため、エポキシ基を含んだアクリルモノマーの種類や量、およびラジカル重合の程度を制御することにより、第1のエポキシ樹脂の量、分子量を容易に制御することができる。従って、かかる制御により、例えば、フレキシブルプリント配線板をリジッド基板上にフィルム状接着剤を介して実装するために、加熱処理を行う際のフィルム状接着剤の粘度を自在に制御することが可能となり、かかる際のボイド発生を抑制できる。
【0049】
(2)本実施形態においては、ラジカル重合物は、ラジカル反応開始剤に光を照射することによって開始されるラジカル反応によって、前記アクリルモノマーを重合させたラジカル重合物であるため、ラジカル反応開始のために熱を必要としない。そのため製造時において、加熱の必要がなく、容易に生産できる。また、加熱の必要がないため、製造時において、熱によって反応が進む第2のエポキシ樹脂や熱硬化性樹脂に影響を与えることもない点においても製造が容易となる。
【0050】
(3)本実施形態においては、第1のエポキシ樹脂は、エポキシ基を含んだアクリルモノマーとラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーとをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を含むため、ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーが2つ以上のアクリルモノマーを重合させることができる。ラジカル反応部位を1つしか持たないアクリルモノマーのみであった場合、ラジカル重合反応において、2つのアクリルモノマーが重合したラジカル重合物しか生成されない。同構成によれば、複数のラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーが他のアクリルモノマーを複数重合させることができるので、ラジカル重合物のバリエーションが多くなり、所望の粘度にフィルム状接着剤を調整することが一層容易となる。
【0051】
(4)本実施形態においては、アクリルモノマーが脂肪族系であるため、アクリルモノマーをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を含む第1のエポキシ樹脂が、柔軟性を有する。従って、硬化後のフィルム状接着剤に柔軟性を与えることが可能となり、接着性が向上する。
【0052】
(5)本実施形態においては、第2のエポキシ樹脂としてナフタレン型エポキシ樹脂を用いるため、硬化物の耐熱性が向上するとともに、熱硬化反応速度を速めることができる。
【0053】
(6)本実施形態においては、導電性粒子が針状または直鎖状であり、長径方向を厚み方向に配向させることが好ましい。同構成によれば、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、多数の配線電極−金属電極間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。
【0054】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
・上記実施形態においては、フィルム状異方導電性接着剤を例示したが、導電性粒子を省略して通常のフィルム状接着剤を作成しても良い。電極同士が直接接触する用途であれば、導電性の無いフィルム状接着剤を用いることが可能である。またフィルム状接着剤は電極以外の接続にも使用することが可能である。
【0055】
・上記実施形態においては、導電性粒子6として強磁性のものを使用し、所定の磁束密度の磁場中において乾燥・固化しているが、他の構成であっても良い。導電性粒子6の長径方向を膜厚方向Xに配向できるのであれば、他の方法を用いても良い。また、配向の必要がなければ、磁場を与えることを割愛してもよい。製造コストの削減に利する。
【0056】
・上記実施形態においては、ラジカル反応開始剤としては、光によってラジカル反応を開始する過酸化物を用いているが、他の構成であっても良い。例えば、熱によりラジカル反応を開始するラジカル反応開始剤を用いても良い。この場合はアクリルモノマーと同ラジカル反応開始剤とのラジカル重合を進行させ、温度を低下させた後に、第2のエポキシ樹脂および潜在性硬膜剤を添加することが好ましい。
【0057】
・上記実施形態においては、ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーを用いているが、必須ではない。エポキシ基を含むとともにラジカル反応部位が1箇所のみであるアクリルモノマーだけを用いていても良い。この場合、アクリルモノマーが3つ以上ラジカル重合されたラジカル重合物は生成されないため、フィルム状接着剤の粘度の制御幅は小さくなるが、アクリルモノマーの種類や量を調整することにより所望の粘度を得ることができるのであれば、材料種を減らすことができるため、コストダウンに資する。
【0058】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【実施例1】
【0059】
〔塗工溶液の作製〕
フェノキシ樹脂として(1)インケム(株)製PKHH、ラジカル反応開始剤として(2)日本化薬(株)製KAYACURE,BP−100、エポキシ基を含んだアクリルモノマーとして(3)日本油脂(株)製ブレンマーGS、ラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーとしては(4)日本油脂(株)製ブレンマーPDBE−200を用いた。更に、第2のエポキシ樹脂として(5)JER(株)製エピコート828、マイクロカプセル型硬化剤として(6)旭化成ケミカルズ(株)製ノバキュアHXA3932HPとを用いた。また、導電性粒子として(7)長径平均が3μmである直鎖状ニッケル微粒子を用いた。
【0060】
まず(1)〜(6)をそれぞれ重量比で60/5/15/10/10/60の割合で配合し、セロソルブアセテートに溶解して固形分濃度が55重量%の樹脂溶液を作製した。この溶液を80W/cmの高圧水銀灯下に3分間放置し、取り出して撹拌しながら室温まで冷却した後、再度高圧水銀灯下放置した。この作業を5回繰り返し(2)〜(4)を完全に反応させることにより、混合溶液中に第1のエポキシ樹脂を生成させた。
【0061】
この混合溶液を室温まで冷却した後に、固形分の総量(直鎖状ニッケル微粒子+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が、樹脂固形分に対して0.5体積%となるように上記(7)直鎖状ニッケル微粒子を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することにより直鎖状ニッケル微粒子を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製した。
【0062】
〔フィルム状導電性接着剤の作製〕
上記塗工溶液を、離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、磁束密度100mTの磁場中において、70℃で30分間、乾燥、固化させることによって、膜中の直鎖状粒子が磁場方向に配向した、厚さ2035μmのフィルム状接着剤を得た。
【0063】
〔抵抗評価〕
幅80μm、高さ18μmの金メッキが施された銅電極4が、120μmの間隔を空けて32本配列されたリジッド基板1と、幅80μm、高さ18μmの金メッキが施された銅電極5が、同じく120μmの間隔を空けて32本配列されたフレキシブルプリント配線板とを用意した。その後両者を、連続する32箇所の接続抵抗が測定可能なデイジーチェーンを形成するように対向させて配置するとともに、このフレキシブルプリント配線板3とリジッド基板の間に作製した接着剤2を挟み、200℃に加熱しながら4MPaの圧力で15秒間加圧して接着させ、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得た。次いで、この接合体において、金メッキが施された銅電極、接着剤、および金メッキが施された銅電極を介して接続された連続する32箇所の抵抗値を四端子法により求め、その値を32で除することで、1箇所当たりの接続抵抗(以下、「初期接続抵抗」という。)を求めた。そして、この評価を10回繰り返し、初期接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。また、耐熱・耐湿試験として、上記の接合体を、温度を85℃、湿度を85%に設定した恒温恒湿槽中に100時間放置した後、接合体を恒温恒湿槽から取り出し、再び、上記と同様にして、接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0064】
〔ボイド評価〕
上述の接合体において、光学顕微鏡を用いてフレキシブルプリント配線板側から電極間の状態を観察・撮像し、得られた画像からボイドが発生した部分の面積を計算して、電極間におけるスペース部の面積に対するボイドの占有率を計算した。その結果を表1に示す。
【0065】
〔接着力評価〕
次いで、上述の接合体において、引張り試験機(島津製作所(株)製、商品名オートグラフAGS−500G)を使用して、リジッド基板の表面に対して90°の方向から、フレキシブルプリント配線板を剥離し、フレキシブルプリント配線板と接着剤の界面のピール強度を測定することにより、接着力(以下、「初期接着力」という。)を測定し、その値を1cm幅当たりに換算した。その結果を表1に示す。また、耐熱・耐湿試験として、上記の接合体を、温度を85℃、湿度を85%に設定した恒温恒湿槽中に100時間放置した後、接合体を恒温恒湿槽から取り出し、再び、上記と同様にして、接着力を測定した。その結果を表1に示す。
【0066】
(比較例1)
〔塗工溶液〕の作製において、(2)〜(4)を添加せず、また、水銀灯によるラジカル反応を促進する工程を割愛して、材料(1)および(5)〜(7)を一度に配合し塗工溶液を作成した。(1)、(5)、(6)の配合割合は、90/10/60とした。それ以外は、上述の実施例1と同様にして、厚さが35μmであるフィルム状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続抵抗評価、ボイド評価および接着力評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0067】
(比較例2)
〔塗工溶液〕の作製において、(2)〜(4)と添加せず、水銀灯によりラジカル反応を促進する工程を割愛して、材料(1)、(5)〜(7)を一度に配合し塗工溶液を作成した。また、(1)、(5)、(6)の配合割合は、60/40/60とした。それ以外は、上述の実施例1と同様にして、厚さが35μmであるフィルム状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続抵抗評価、ボイド評価および接着力評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

〔評価〕
表1に示すように、実施例1は、比較例1に比し、初期値において接続抵抗が小さく、接着力が大きいことが判る。またボイド占有率も小さい。比較例1は、ラジカル反応により第1のエポキシ樹脂を作成する工程を割愛したために、製造されたフィルム状導電性接着剤の粘度管理が十分にできない結果ボイドが発生したためと考えられる。また、耐熱・耐湿試験における、接続抵抗の上昇および接着力の低下は実施例に比して大きく、ボイドが高温化で体積上昇して、品質を低下させたものと推察される。
【0069】
また比較例2は、初期値において、抵抗値は実施例1に近く、比較例1より小さい。一方接着力は実施例1および比較例1より小さい。これは比較例1に比べ流動性の小さいフェノキシ樹脂である(1)インケム(株)製PKHHの配合割合が小さくかつ実施例1が含んでいる第1のエポキシ樹脂を全く含んでいないため、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を形成する際の加熱および加圧時に流動性が過剰となり、電極間からフィルム状導電性接着剤が流出しボイドが発生したことが原因であると考えられる。このことはボイド占有率が極端に大きいことからも推察される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、電極、回路等を設けた配線板や電子部品等を接着するためのフィルム状接着剤に係るものであるため、産業上広く利用されうる。
【符号の説明】
【0071】
1…リジッド基板、2…フィルム状異方導電性接着剤、3…フレキシブルプリント配線板、4…電極、5…電極、6…導電性粒子、101…リジッド基板、102…フィルム状異方導電性接着剤、103…フレキシブルプリント配線板、104…電極、105…電極、L…導電性粒子の長径、R…導電性粒子の短径、T…樹脂層の厚み、X…フィルム状異方導電性接着剤の厚み方向、Y…フィルム状異方導電性接着剤の面方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量10000以上のフェノキシ樹脂と、
エポキシ基を含んだアクリルモノマーをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を含む第1のエポキシ樹脂と、
潜在性硬化剤と、
前記潜在性硬化剤との反応性を有する第2のエポキシ樹脂と、
を含有するフィルム状接着剤。
【請求項2】
前記ラジカル重合物は、ラジカル反応開始剤に光を照射することによって開始されるラジカル反応によって、前記アクリルモノマーを重合させたラジカル重合物である、請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
前記第1のエポキシ樹脂は、エポキシ基を含んだアクリルモノマーとラジカル反応部位を複数備えるアクリルモノマーとをラジカル重合させることにより生成されたラジカル重合物を更に含む請求項1または2に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
前記アクリルモノマーが脂肪族系である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項5】
前記エポキシ基がナフタレン型エポキシ基である請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム状異方導電性接着剤に導電性粒子を含有させたフィルム状異方導電性接着剤。
【請求項7】
前記導電性粒子が針状または直鎖状であり、長径方向を厚み方向に配向させた請求項6に記載のフィルム状異方導電性接着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−280872(P2010−280872A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137528(P2009−137528)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】