説明

プラスチック製品の製造方法及び製造装置

【課題】設備費用を抑えながら、幅広い製品形状に対応できるプラスチック製品の製造方法を提供する。
【解決手段】口型ホルダ28を装着した状態のインジェクション型12の内部に溶融した熱可塑性樹脂を射出することにより、口型ホルダ28と一体となるような状態でパリソン30成形し、次に、このパリソン30が硬化する前に、パリソン30と口型ホルダ28をインジェクション型12から離脱させ、このうちの口型ホルダ28を保持することによってパリソン30をインジェクション型12からブロー型52まで移送し、さらに、ブロー型52の入口部に口型ホルダ28を固定することによってパリソン30をブロー型52の内部に挿入状態で保持するとともに、パリソン30を密閉した状態で、パリソン30の内部にブローエアAを導入することにより、成形空間58に応じた形状の製品100を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジェクション成形とブロー成形を併用して中空プラスチック製品を製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性プラスチック製品の成形法として広く普及しているインジェクションブロー成形法とは、インジェクション成形によって有底筒状の予備成形体であるパリソンを成形した後、ブロー成形によって当該パリソンの内部にエアを吹き込んで前記パリソンを膨張変形させることにより、所定の形状の製品を成形する方法をいう(例えば非特許文献1〜3参照)。このインジェクションブロー成形法は、さらに以下の2種類に分類できる。
(a)インジェクション成形により成形したパリソンを一旦冷却、固化した後、別工程で再加熱、ブロー成形を行う2ステージタイプのインジェクションブロー
(b)インジェクション成形により成形したパリソンを、高温のまま、例えば120度ずつインデックス回転される3ステーションマシンを用いて雄金型ごとブロー型へ移送し、引き続きブロー成形を行うもので、これらの工程が同一設備内で行われる1ステージタイプのインジェクションブロー
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】中條澄著「エンジニアのためのプラスチック教本」 工業調査会、1997年12月1日発行
【非特許文献2】松岡信一著「プラスチック成形加工」 コロナ社、2002年5月発行
【非特許文献3】伊保内賢、倉持智宏 著「プラスチック入門」 工業調査会、1999年4月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記2ステージタイプのインジェクションブローでは再加熱工程が必要なため設備費が高くなるとともに、インジェクション成形の後でパリソンを冷却・固化させる時間が必要なため、生産量が少ないほど製造効率が悪くなるという問題があった。
【0005】
また、1ステージタイプのインジェクションブローでは再加熱工程は不要となるが、成形機械が大型化・専用化されるため、やはり設備費が高くなるとともに、少量生産に向かないという問題があった。また、雄金型ごとインデックス回転するためのスペース等が必要なため、比較的小さい製品の製造にしか向いておらず、製品形状の自由性に欠けるという問題もあった。
【0006】
本発明は上記のような従来方法の問題に鑑み、設備費用を抑えながら、幅広い製品形状に対応できるプラスチック製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、インジェクション成形されたパリソンを引き続きブロー成形によって所定の製品形状に成形するプラスチック製品の製造方法であって、インジェクション型を含むインジェクション成形機を用いて、あらかじめホルダを装着した状態のインジェクション型の内部に溶融した熱可塑性樹脂を射出することにより、前記パリソンを、その一方端に当該ホルダが一体に取り付けられるような状態で成形するインジェクション工程と、成形されたパリソンが硬化する前に、前記パリソンとホルダを前記インジェクション型から離脱させ、このうちのホルダを保持することによって前記パリソンをインジェクション成形機から移送する移送工程と、成形空間を内部に有するブロー型を含みかつ前記インジェクション成形機とは独立したブロー成形機を用いて、前記移送してきたパリソンを、ブロー型の入口部に前記ホルダを固定することによって当該ブロー型の内部に挿入状態で保持し、さらに前記パリソンを所定の密閉手段により密閉した状態で、前記パリソンの内部にブローエアを導入することにより、前記成形空間に応じた形状の製品を成形するブロー工程とを含み、前記インジェクション型は、凸部を有する雄型と当該凸部に対応した凹部を有する雌型とを備え、前記パリソンの形状に対応したキャビティ空間をその雄型と雌型の間に形成するとともに、当該キャビティ空間内に溶融樹脂を導入するための樹脂流入路を前記雄型の内部と雌型の内部の両側に備え、前記インジェクション工程は、前記インジェクション型に備わる2つの樹脂流入路のうちの一方の樹脂流入路を閉塞した状態で、もう一方の樹脂流入路を通じて前記キャビティ空間内に溶融樹脂を射出することにより前記パリソンを成形する工程であることを特徴とするものである。
【0008】
この製造方法によれば、あらかじめホルダを装着した状態のインジェクション型の内部に溶融した熱可塑性樹脂を射出することにより、ホルダと一体となるような状態でパリソンを成形し、次にこのうちのホルダを保持することによってパリソンをインジェクション型からブロー型まで移送する構成となっているため、パリソンが硬化する前にインジェクション工程を終了させて当該硬化前のパリソンを容易かつ素早くブロー型まで移送することができ、その結果、パリソンに再加熱を施すことなく直接ブロー成形を行うことが可能となる。従って、ブロー成形の前にパリソンを再加熱する必要のあった従来の2ステージタイプのインジェクションブローに比べて設備費を安くすることが可能である。
【0009】
また一方で、従来の1ステージタイプのインジェクションブローと異なり、インジェクション工程とブロー工程を同一の機械内で行う必要がないため、インジェクション成形機とブロー成形機を独立した設備で構成でき、その結果、両設備に汎用の成形機械を使用することが可能となる。従って、これらの設備が同一機械内に組み込まれることによって必然的に設備が大型化する1ステージタイプのインジェクションブローと比べても設備費を安くすることが可能である。また、インジェクション成形機とブロー成形機が独立していることで、インジェクション型(パリソン)の形状はそのままにブロー型のみを取り替えることによって各種形状の製品を得ることができるため、設備が専用化されているために製品の形状を変更しようとすると設備全体を改造又は取り替える必要のあった従来の1ステージタイプのインジェクションブローに比べ、安いコストで幅広い製品形状に対応することも可能である。
【0010】
ここで、インジェクション型の内部(キャビティ空間)に溶融樹脂を導入するための樹脂流入路は、インジェクション型の雄型の内部に設けられていた方が、製品の外面側にゲート跡が残らない(ゲート部がパリソンの内面側に形成される)ため、製品を良好な外観に仕上げる上で望ましい。しかしながら、パリソンの形状によっては、インジェクション型の雌型側に樹脂流入路を配置することにより、ゲート部がパリソンの外面側に形成されるようにした方が、溶融樹脂の滞留等による成形不良を生じ難くできる場合があり、このことは、実際に成形を行ってみて初めて判明するということも少なくない。
【0011】
そこで、本発明では、前記インジェクション型として、前記雄型の内部と雌型の内部の両側に前記樹脂流入路を備えるものを用い、これら2つの樹脂流入路のうちの一方の樹脂流入路を閉塞した状態で、もう一方の樹脂流入路を通じて前記キャビティ空間内に溶融樹脂を射出するようにしている。これにより、2つの樹脂流入路のいずれかを選択的に使用することができるため、非常に便利である。
【0012】
前記インジェクション工程は、前記パリソンとして、その一方端に開口部を有して他方端に底部を有する筒状のパリソンを成形するとともに、前記ホルダとして、当該パリソンの一方端と一体化する際にそのパリソンの一方端の開口部を閉塞しないようにするための貫通孔を有する口型ホルダを用いる工程であることとしてもよい。この場合、前記ブロー工程においてパリソンを密閉する密閉手段は、前記パリソンの一方端に取り付けられている口型ホルダの貫通孔を前記ブローエアの導入路を確保しつつ閉塞することによって実現することができる。
【0013】
この場合、前記ブロー工程において、前記パリソンの他方端の底部を軸方向に大きく変形させることにより、比較的深底の製品を成形したいときもある。しかし、このようにパリソンと製品との軸方向の寸法差が大きいと、パリソンにエアを吹き込むのみでは確実に製品を成形することが難しくなる。従ってこのような場合は、前記ブロー工程を、前記ブローエアの導入前又は導入中に、前記口型ホルダの貫通孔を挿通して前記パリソンの底部を内面側から押圧することが可能な延伸棒を用いて前記パリソンを軸方向に延伸変形させることによって行うことが好ましい。これにより、パリソンと製品との軸方向の寸法差が大きい場合でも、確実に製品を成形することができる。
【0014】
この場合、前記延伸棒として、エアが通る中空部と、この中空部に通じて表面に開口するエア吹出孔とを備えたものを用いれば、前記ブロー工程は、当該延伸棒を用いて前記エア吹出孔から吹き出すブローエアを前記パリソンの内部に導入することによって行うことができる。すなわち、前記延伸棒が、パリソンの内部にエアを導入するためのブロー配管としての役割も兼用するため、ブロー成形機の構造が簡素化されることになる。
【0015】
一方、前記インジェクション工程は、前記パリソンとして、その一方端と他方端の両側に開口部を有する筒状のパリソンを成形するとともに、前記ホルダとして、当該パリソンの一方端と一体化する際にそのパリソンの一方端の開口部を閉塞しないようにするための貫通孔を有する口型ホルダを用いる工程であることとしてもよい。この場合、前記ブロー工程においてパリソンを密閉する密閉手段は、前記パリソンの一方端に取り付けられている口型ホルダの貫通孔を前記ブローエアの導入路を確保しつつ閉塞するとともに、前記パリソンの他方端を前記ブロー型の内部の底面に当接させることによって実現することができる。
【0016】
このようにブロー型の内部の底面に当接するパリソンの他方端は、ブロー成形中に安定して保持・密閉される必要がある。このため、前記ブロー型としては、前記パリソンの他方端と当接した状態でそのパリソンの他方端の開口部に嵌挿可能な突設部を有する底面と、当該パリソンの他方端の外周と密接可能でかつパリソンに食い込むような周状の突起を有する周接面とを備えるブロー型を用いることが好ましい。これにより、前記パリソンの他方端を径方向と軸方向の両方向に固定しながら、安定した状態でブロー成形を行うことが可能となる。
【0017】
前記ホルダについては、製品の成形後にこれを製品から取り外す必要がある場合、ホルダとして分割可能なホルダを用い、その分割面に磁石を埋設することが好ましい。これにより、ホルダを製品から取り外す作業を、ホルダを分割することで容易に行うことができるとともに、一度分割したホルダを容易に再結合することができる。
【0018】
一方、製品によっては製品の一部を構成するようにデザインされた部材を製品の一方端に一体に取り付けたい場合がある。このような場合、前記ホルダとして当該デザイン部材を用いるとよい。これにより、後工程でこれを取り付ける必要がなくなり、製造効率を高めることができる。
【0019】
また、これとは別のデザイン部材を製品の外面に一体に取り付けたい場合もある。この場合は、当該デザイン部材を前記ブロー型の内面にあらかじめ挿着した状態で前記ブロー工程を行うとよい。
【0020】
以上のような製造方法においては、前記ブロー工程を行っている間に、新たなパリソンを成形するインジェクション工程を並行して行うようにすることが好ましい。すなわち、インジェクション工程によってパリソンを成形し、そのパリソンに対してブロー工程を行っている間に、新たなパリソンを成形するインジェクション工程をすぐに開始して以後これを繰り返すものである。このようにすれば、前記インジェクション工程とブロー工程が並行して連続的に行われるため、製品の成形サイクル時間を大幅に短縮することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明のプラスチック製品の製造方法によれば、設備費用を抑えながら、幅広い製品形状に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
この実施の形態にかかるプラスチック製品の製造方法は、次の各工程を含む。
【0023】
1)インジェクション工程
この工程は、図1に示すインジェクション成形機10を用いて筒状の予備成形体であるパリソン30を成形する工程である。具体的には、あらかじめ口型ホルダ28を装着した状態のインジェクション型12の内部に溶融した熱可塑性樹脂を射出することにより、口型ホルダ28と一体となるような状態でパリソン30を成形する工程である。
【0024】
パリソン30は、成形直後の状況を示す図2のように、一方端に開口部30aを有し、他方端に底部30bを有する筒状を成す。口型ホルダ28は、このパリソン30の一方端に一体に取り付けられる。なお、本明細書において筒状とは、後述する変形実施例にかかるパリソン530(図12(a))のような、底の浅い容器状のものをも含む概念である。
【0025】
口型ホルダ28は、パリソン30の開口部30aと略同形の貫通孔28aを有するリング状の部材であり、パリソン30の一方端の外周を取り囲むような形状を有している。この口型ホルダ28の内周面には雌ネジ29が設けられているため、これに対応してパリソン30の一方端の外周にはネジ部が形成される。なお、このようなネジ部が必要なければ雌ネジ29は省略してもよい。
【0026】
また、口型ホルダ28は、図4に示すように、構成部品281、282から成る分割構造を有している。これは、後述するブロー工程によって得られた製品100(図3(c))から口型ホルダ28を取り外す作業を、口型ホルダ28を分割することによって容易に行い得るようにするためである。さらに、この口型ホルダ28の構成部品281、282の各分割面には磁石40が埋設されている。これにより、一度分割した口型ホルダ28を容易に結合して再利用できるようになっている。
【0027】
再び図1に戻ると、インジェクション型12は、雄型14と雌型16を向かい合わせた構造となっており、その内部にパリソン30を成形し得る構成となっている。
【0028】
雄型14は、雄枠型17と雄中子型18から構成されており、雌型16も同様に、雌枠型19と雌中子型20から構成されている。雄枠型17と雌枠型19は、複数の型板(17a〜17d、及び19a〜19c)を組み合わせて構成されている。そして、雄枠型17と雌枠型19の最も内側の型板(17a及び19a)に、雄中子型18と雌中子型20が、例えばボルト等によってそれぞれ固定されている。
【0029】
雄中子型18は凸部18a(図2)を有し、雌中子型20はこの凸部18aに対応した凹部20a(図2)を有しており、この間にパリソン30を成形するためのキャビティ空間22(成形品に相当する空間)を形成している。この構成によれば、パリソン30の形状を変更したい場合、この雄中子型18と雌中子型20のみを取り替えることで対応することができる(インジェクション型12全体を取り替える必要がない)。なお、特に不要であれば、雄中子型18と雌中子型20は、雄枠型17と雌枠型19とそれぞれ一体としてもよい。
【0030】
雄中子型18の根元部分には、口型ホルダ28を装着することが可能となっている。また、雄中子型18と口型ホルダ28の各合わせ面には磁石40が埋設されている。これにより、口型ホルダ28は雄中子型18に着脱可能に固定される。なお、口型ホルダ28が、例えばある程度の嵌合力によって着脱可能に固定されるような場合は、この磁石40は省略してもよい。
【0031】
雄型14には、この口型ホルダ28に当接するようなエジェクターピン24が、その内部に(型板17a,bと雄中子型18を貫通する状態で)設けられている。エジェクターピン24は、口型ホルダ28を押し出す方向に突出可能に構成されており、インジェクション型12を開放した際には、このエジェクターピン24が口型ホルダ28を強制的に押し出すようになっている(図2)。これにより、口型ホルダ28と雄中子型18が磁石40により結合していても、口型ホルダ28を雄中子型18から容易に離脱させることが可能となっている。
【0032】
また、雄型14(型板17d)には、原料の樹脂を溶融(可塑化)して射出するためのスクリュ(図示省略)の射出部分であるノズル26が連結されており、溶融樹脂はこのノズル26から雄型14内に流入する。そして、流入した溶融樹脂をキャビティ空間22まで導入するため、雄型14の内部には、樹脂流入路32が設けられている。
【0033】
この樹脂流入路32には、パリソン30の成形時に樹脂が余分に残るため、その部分にゲート部34(成形品の入口部分)が形成されるが、本実施形態では、樹脂流入路32はキャビティ空間22との連結部(ピンゲート部34a)で小孔状に絞られているため、インジェクション型12が開放されてパリソン30が取り出される際には、パリソン30はこのピンゲート部34aの部分でゲート部34と分断される。これにより、パリソン30にはわずかなゲート跡しか残らないようになっている。しかも、本実施形態では雄型14側から溶融樹脂を流入させるようにしたため、このゲート跡はパリソン30の内面側に残ることになる。従って、製品100(図3)の外面側にはゲート跡が残らないため、その外観はより良好なものとなる。
【0034】
しかしながら、パリソン30の形状によっては、雌型16側から溶融樹脂を流入させる(ゲート部34がパリソン30の外面側に形成されるようにする)方が、溶融樹脂の滞留等による成形不良を生じ難くできる場合があり、このことは、実際に成形を行ってみて初めて判明することも少なくない。従って、本実施形態では、雌型16側にも雄型14と同様に樹脂流入路36を設けている。これにより、雄型14側の樹脂流入路32と、雌型16側の樹脂流入路36を選択的に使用することが可能となっている。雌型16側から溶融樹脂を流入させた方が好ましい場合は、ノズル26を雌型16に連結することにより、雌型16側の樹脂流入路36を使用すればよい。ただし、本実施形態では雌型16側の樹脂流入路36は使用しないため、その先端に栓38をすることによって樹脂流入路36を密封している。
【0035】
以上のようなインジェクション成形機10を用いてパリソン30を成形する手順は、まず、インジェクション型12の内部(雄中子型18の根元部分)に口型ホルダ28を装着しておき、その状態でインジェクション型12を型締めする。次に図略のスクリュによって原料の樹脂を溶融(可塑化)させ、インジェクション型12の内部に当該溶融樹脂をノズル26から射出する。すると、溶融樹脂が樹脂流入路32を通ってキャビティ空間22内に充填され、パリソン30が成形される。この際、あらかじめインジェクション型12の内部に装着されていた口型ホルダ28の内周部に密着するようにしてパリソン30の一方端が成形されるため、パリソン30は、その一方端において口型ホルダ28と一体化するような状態で成形される。
【0036】
2)移送工程
この工程は、前記インジェクション工程で成形したパリソン30を、これが硬化する前に、インジェクション型12から離脱させてブロー成形機50(図3)まで移送する工程である。
【0037】
まず、図2に示すように、パリソン30が硬化する前に、インジェクション型12を開放する。このとき、パリソン30は口型ホルダ28とともに雄型14(雄中子型18)側に残るため、これらを離脱させるべく、雄型14からエジェクターピン24を突出させる。これにより、口型ホルダ28が強制的に押し出されて雄型14から離脱するとともに、口型ホルダ28と一体化しているパリソン30もこれに伴って離脱する。なお、このときに雄型14の内部に残るゲート部34は、複数の型板(17a〜17d)から成る雄型枠17を適当な分割面で分割することによって自動的に脱落させることができる。溶融樹脂を雌型16側から流入させる場合(樹脂流入路36を使用する場合)も、雌型枠19を分割することで同様に脱落させることができる。
【0038】
次に、やはりパリソン30が硬化する前に、離脱した口型ホルダ28とパリソン30のうちの口型ホルダ28を保持することによって、これらをブロー成形機50(図3)まで移送する。このように口型ホルダ28を保持することによって移送を行うのは、パリソン30がまだ硬化していないために、これを直接保持することができないためである。従って、当該移送は、必ず口型ホルダ28を保持することによって行う。なお、移送は機械を用いてもよいし、人が行ってもよい。人が移送する場合、口型ホルダ28の材質として例えば軽量のアルミニウム合金を用いれば、移送に伴う負担を軽減することができる。
【0039】
3)ブロー工程
この工程は、前記移送工程で移送されてきたパリソン30に対し、図3に示すブロー成形機50を用いてブロー成形を行うことにより、製品100を得る工程である。
【0040】
ブロー成形機50のブロー型52は、左右に分割・スライド可能に構成されるスライド型54と、底部に固定される敷型56から成り、その内部に製品100の形状に相当する成形空間58を有している。また、スライド型54の上部(成形空間58の入口部)は、口型ホルダ28を挟み込んで固定するための凹部を有している。これにより、パリソン30を成形空間58の内部に安定した状態で保持できるようになっている。
【0041】
また、ブロー成形機50は、口型ホルダ28を閉塞することによってパリソン30を密閉することが可能な押え蓋60と、この押え蓋60を貫通し、口型ホルダ28の貫通孔28aを通じてパリソン30の内部にブローエアAを導入することが可能なブロー配管62とを有している。
【0042】
以上のようなブロー成形機50を用いてブロー成形を行う手順は、まず図3(a)に示すように、ブロー型52のスライド型54の上部に口型ホルダ28を固定することによって、パリソン30を成形空間58内に挿入状態で保持する。そして、押え蓋60によってパリソン30を密閉し、その状態でブロー配管62からパリソン30の内部にブローエアAを導入する。
【0043】
すると、図3(b)に示すように、まだ硬化していないパリソン30は、内部に吹き込まれたブローエアAによって膨張変形する。このようにして、成形空間58に応じた形状の製品100が得られる。そして、樹脂が固化した時点で、図3(c)に示すように、スライド型54を開放して製品100を取り出すとともに、口型ホルダ28を分割してこれを製品100から取り外す。
【0044】
以上のような製造方法においては、インジェクション成形されたパリソン30に対し、再加熱を施すことなく直接ブロー成形を行うため、パリソン30が硬化する前にこれをブロー成形機50まで確実に移送する必要がある。このため、各工程の時間を適切に管理することが重要である。この時間は樹脂材質や重量等に応じて適宜設定すべきものであるが、以下にその一例を示す。
【0045】
<実施例1>
a)成形品
材質…アクリル
重量…200g
平均肉厚…約5mm
b)成形条件
(インジェクション工程)
射出温度…240±10℃
射出完了までの時間…約10秒(射出5秒、保圧5秒)
射出完了後の冷却時間…5〜7秒
型開放時の樹脂表面温度…150〜170℃
(移送工程)
パリソン取り出し時の樹脂表面温度…140〜150℃
インジェクション成形機からブロー成形機までの移送時間…5〜7秒
(ブロー工程)
ブロー開始時の樹脂表面温度…130〜140℃
ブロー時間…5〜10秒
ブロー完了後の樹脂表面温度…80〜90℃
このような条件で成形を行った結果、インジェクション成形されたパリソン30を、これが硬化する前にブロー成形機50まで移送してブロー成形を行うことができ、良好な製品100を得ることができた。
【0046】
ここで、製品100を連続生産する場合の、1個あたりの成形に要する成形サイクル時間について考える。まず、各工程を1工程ずつ順番に行った場合は、この時間は当然各工程に要する時間を合計したものと等しくなる。これに対し、インジェクション工程によってパリソン30を成形し、そのパリソン30に対してブロー工程を行っている間に、新たなパリソン30を成形するインジェクション工程をすぐに開始して以後これを繰り返すようにすれば、成形サイクル時間は大幅に短縮される。すなわち、インジェクション工程とブロー工程を並行して連続的に行うことにより、この成形サイクル時間を、インジェクション工程とブロー工程のうちのどちらか片方の工程(正確にはより時間を要する方の工程)単体の時間で済ませるわけである。なお、このためには口型ホルダ28は複数用意する必要がある。
【0047】
具体的に、上記実施例1に基づいて考えると、各工程を1工程ずつ順番に行った場合、成形サイクル時間は、上記の時間にさらに口型ホルダ28の装着時間や製品100の取り出し時間等を加算した30〜40秒程度になる。これに対し、インジェクション工程とブロー工程を並行して行えば、インジェクション工程単体の時間である20秒程度で済むことになる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、パリソン30を口型ホルダ28と一体となるような状態でインジェクション成形し、次にこのうちの口型ホルダ28を保持することによって、硬化する前の状態のパリソン30をインジェクション成形機10からブロー成形機50まで移送する構成となっているため、パリソン30に再加熱を施すことなく直接ブロー成形を行うことが可能となる。従って、ブロー成形の前にパリソン30を再加熱する必要のあった従来の2ステージタイプのインジェクションブローに比べて設備費を安くすることが可能である。
【0049】
また一方で、従来の1ステージタイプのインジェクションブローと異なり、インジェクション工程とブロー工程を同一の機械内で行う必要がないため、インジェクション成形機10とブロー成形機50を独立した設備で構成でき、その結果、両設備に汎用の成形機械を使用することが可能となる。従って、これらの設備が同一機械内に組み込まれることによって必然的に設備が大型化する1ステージタイプのインジェクションブローと比べても設備費を安くすることが可能である。また、インジェクション成形機10とブロー成形機50が独立していることで、インジェクション型12(パリソン30)の形状はそのままにブロー型52のみを取り替えることによって各種形状の製品100を得ることができる。ただし、製品100の形状や大きさが極端に変わる場合は、インジェクション型12も変更する必要があるが、その場合でもインジェクション型12の種類は少なくしつつ、多種多様な製品100を製造することができる。これに対し、従来の1ステージタイプのインジェクションブローの場合は、設備が専用化されているために製品100の形状を変更しようとすると設備全体を改造又は取り替える必要が生じるため、本実施形態の製造方法の方が、安いコストで幅広い製品100の形状に対応することが可能である。さらには、インジェクション成形機10とブロー成形機50として汎用の成形機械を使用できるということは、製造効率上も有利に作用する。すなわち、従来の1ステージタイプのインジェクションブローの場合は、機械が大型化・複雑化することによって製品100の成形サイクル時間が必然的に長くなるが、本実施形態の製造方法の場合はそのようなことがない。具体的には、従来の1ステージタイプのインジェクションブローによる成形サイクル時間は、一般的に60秒程度であるが、本実施形態の製造方法によれば、上記実施例1の場合のように、わずか20秒程度で済むのである。
【0050】
なお、本実施形態では、口型ホルダ28は、成形後の製品100から容易に取り外すことができるように分割可能に構成したが、状況によってはこれを一体構造(分割不可)としてもよい。例えば、図5(a)に示すような形状の製品200を成形した場合、口型ホルダ128は、その回りを取り囲むように存在する製品200に邪魔されて分割できないため、口型ホルダ128は一体構造としても差し支えない。なお、この場合、口型ホルダ128を製品200から取り外す作業は、口型ホルダ128を回転させることによって行えばよい。
【0051】
また、口型ホルダ28は、本実施形態のようにパリソン30の一方端の外周を取り囲むような形状に限らず、例えば、図5(b)に示す口型ホルダ228のように、パリソン130の一方端の内周に沿うような形状としてもよい。この場合、口型ホルダ228の外周面に雌ネジ229を形成すれば、それに対応してパリソン130の一方端の内周面にネジ部を形成することが可能である。
【0052】
さらに、図5(c)に示す製品300のように、製品の一部を構成するようにデザインされたデザイン部材70がその一方端に取り付けられ、その状態で使用されるような場合、インジェクション工程においてこのデザイン部材70を口型ホルダ328として使用してもよい。このようにすれば、後工程でデザイン部材70を取り付ける必要がなくなり、製造効率を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態のインジェクション型12としては、横型(軸心が水平向きのもの)、縦型(軸心が鉛直向きのもの)いずれも使用可能であるが、以下の理由から縦型のものを用いることが好ましい。一つ目の理由は、パリソン30がまだ硬化する前の状態でこれをインジェクション型12から取り出すため、インジェクション型12として横型のものを用いると、パリソン30が横向きの姿勢(パリソン30の軸心が水平を向く姿勢)でインジェクション型12から取り出されることとなり、パリソン30が形崩れを起こす危険性があるからである。二つ目の理由は、ブロー型52は一般的に縦型(ブロー型52の軸心が鉛直向きのもの)であるため、インジェクション型12が横型であると、パリソン30をブロー型52まで移送する際に、パリソン30を90度回転させてからブロー型52にセットする必要が生じ、作業効率上好ましくないからである。
【0054】
本実施形態のブロー工程は、パリソン30の内部にブローエアAを吹き込むように構成されたブロー成形機50を用いて行ったが、これを、ブロー型52の内周面から、成形空間58の内部(パリソン30の外部)のエアを吸引することによりパリソン30を膨張変形させる、いわゆる真空成形機を用いて行ってもよい。
【0055】
また、ブロー工程は、図6(a)に示すような、製品の一部を構成するようにデザインされたデザイン部材170をブロー型の内面にあらかじめ挿着した状態で行うことも可能である。このようにすれば、図6(b)に示すような、外面にこのデザイン部材170が一体に取り付けられた製品400を成形することができる。
【0056】
(実施形態2)
上記実施形態1では、インジェクション工程において、パリソン30に最小限のゲート跡しか残らないような(ピンゲート方式の)インジェクション成形機10を用いたが、インジェクション成形機10として基礎的な成形機を用いた場合は、図7に示すように、直結形のゲート部134がパリソン230の外面側に残るようになる(ダイレクトゲート方式)。この場合、パリソン230をブロー成形機50に移送する前に、このゲート部134を切断し、その状態でブロー工程を行ってもよいが、そのようにすると、パリソン230を速やかにブロー成形機50まで移送することが困難になる。
【0057】
そこで、本実施形態では、図8に示すブロー成形機150を用いることにより、ゲート部134が残っている状態のパリソン230に対してもブロー成形を行うことができるようにする。すなわち、ブロー型152の敷型156に底孔156aを設けることにより、ゲート部134がこの底孔156aに挿入されるようにし、これにより、パリソン230が膨張変形する際に(図8(b))、ゲート部134が邪魔にならないようにする。しかも、この構成によれば、パリソン230がブロー型152にセットされる際、底孔156aが、ゲート部134を案内することによりパリソン230の位置決めを行うため、ブロー成形時にパリソン230の姿勢を安定させることができる。このため、ブロー成形時の偏肉などの不良を生じ難くすることが可能となる。なお、この場合、ゲート部134はブロー成形後に切断すればよい。
【0058】
(実施形態3)
本実施形態では、図10(a)に示すように、1回のインジェクション工程によって複数のパリソン330を成形する。具体的には、上記実施形態1で用いたインジェクション型12における雄中子型18と雌中子型20の代わりに、図9に示すような、複数の凸部118aを有する雄中子型118と、これに対応して複数の凹部120aを有する雌中子型120とを備えたインジェクション型(図示省略)を用いてインジェクション工程を行う。この場合、雄中子型118には、図10(a)に示すような、複数の貫通孔428aを有する口型ホルダ428をあらかじめ装着しておくことにより、この口型ホルダ428が各パリソン330の一方端に一体に取り付けられるようにする。
【0059】
そして、複数の成形空間を有するブロー型(図示省略)を用いてブロー工程を行うことにより、各パリソン330に対して同時にブロー成形を行う。その結果、図10(b)に示すような製品500を同時に複数個得ることができ、製造効率を大幅に高めることが可能である。なお、製品500としては、大量に生産される比較的小さいものが適している。
【0060】
(実施形態4)
本実施形態では、前記インジェクション工程によって、図11(a)に示すような、一方端(口型ホルダ28が取り付けられる側)に開口部430aを有し、他方端にも開口部430bを有するパリソン430を成形し、このパリソン430に対して、図11(a)〜(c)に示すブロー成形機250を用いてブロー成形を行う。
【0061】
図11(a)はブロー型252にパリソン430をセットする前の状態、図11(b)はセットした後の状態を示す図であり、また、図11(c)は同図(b)の一部拡大図である。これら図11(a)〜(c)に示すように、ブロー型252は、上記実施形態1のブロー成形機50と同様に、スライド型254と敷型256から構成される。ただし上記実施形態1と異なる構成として、スライド型254は、パリソン430がブロー型252にセットされた状態で、そのパリソン430の他方端の外周と密接するような周接面254aを有し、さらにその周接面254a上に、パリソン430に食い込むような周状の突起254bを有している。また、敷型256は、同様の状態で、パリソン430の他方端と当接するような底面256aを有し、さらにその底面256a上に、パリソン430の他方端の開口部430bに嵌挿可能な突設部256bを有している。なお、ブロー成形機250のその他の構成は上記実施形態1と同様である。
【0062】
このようなブロー成形機250を用いてブロー成形を行う手順は、まず図11(a)に示すように、スライド型254を左右に開放した状態でパリソン430をブロー型252の内部に挿入する。
【0063】
そして、図11(b)に示すように、パリソン430の他方端を敷型256の底面256aに当接させるとともに、スライド型254を閉じて口型ホルダ28をスライド型254の上部に固定することにより、パリソン430をブロー型252にセットする。すると、図11(c)に示すように、スライド型254の周接面254aがパリソン430の他方端の外周に密接するとともに、突起254bがパリソン430に食い込む。また、敷型256の底面256aに突設された突設部256bが、パリソン430の開口部430bに嵌挿される。このようにして、パリソン430の他方端が、径方向と軸方向の両方について拘束・固定されかつ閉塞される。なお、パリソン430の一方端は、図11(b)に示すように、押え蓋60によって閉塞される。以上によってパリソン430が完全に密閉される。
【0064】
次に、この状態でブロー配管62からブローエアAをパリソン430の内部に導入し、パリソン430を膨張変形させる。この際、上記のようにパリソン430の他方端は完全に固定されているため、当該膨張変形に伴ってパリソン430の他方端が逃げる(膨張変形するパリソン430の中央部に引っ張られるようにして、この他方端が上方に移動する)ことがなく、パリソン430の密閉状態が安定して維持される。
【0065】
このように、本実施形態の製造方法によれば、両端に開口部(430a、430b)を有するパリソン430に対して、安定した状態でブロー成形を行うことができる。
【0066】
(実施形態5)
本実施形態では、前記インジェクション工程によって、図12(a)に示す比較的浅底のパリソン530を成形し、このパリソン530に対して、図12(a)〜(c)に示すブロー成形機350を用いてブロー成形を行う。これにより、図12(c)に示す比較的深底の製品600を成形する。
【0067】
ブロー成形機350は、上記実施形態1のブロー成形機50と異なる構成として、延伸棒64を備えている。この延伸棒64は、内部にブローエアAが通る中空部64aと、中空部64aに通じて表面に開口するエア吹出孔64bを備えるとともに、ブロー成形時にパリソン530の底部530bを押圧する構成となっている。なお、その他の構造は上記実施形態1におけるブロー成形機50と同様である。
【0068】
このようなブロー成形機350を用いてブロー成形を行う手順は、まず図12(a)に示すように、パリソン530をブロー型352にセットする。そして、押え蓋60と延伸棒64を、図示のようにブロー型352に接近させる。すると図12(b)に示すように、延伸棒64の先端がパリソン530の底部530bを内面から押圧し、パリソン530を軸方向に延伸変形させるとともに、押え蓋60が口型ホルダ28を閉塞する。そしてこの状態で、図12(c)に示すように、延伸棒64の中空部64aに導入したブローエアAをエア吹出孔64bから吹き出させることにより、パリソン530を膨張変形させ、製品600を得る。
【0069】
以上のような本実施形態の製造方法によれば、延伸棒64を用いてパリソン530の底部530bを押圧することにより、パリソン530を軸方向に延伸変形させながらブロー成形を行うため、パリソン530と製品600との軸方向の寸法差が大きい場合でも、確実に製品600を成形することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、延伸棒64によってパリソン530を延伸変形させた後で、延伸棒64のエア吹出孔64bからブローエアAを吹き出させたが、これらを同時並行で行ってもよい。また、延伸棒64を単なる棒状体とし(延伸棒64におけるブローエアAの吹き出し機構を省略し)、その代わりに延伸棒64とは別のブロー配管(図示省略)を別途用意するようにしてもよい。
【0071】
(実施形態6)
上記実施形態1において、パリソン30や製品100の断面形状は特に限定されるものではなく、円形や多角形など各種の形状に設定し得るものである(他の実施形態も同様)。ただし、均一な肉厚の製品100を成形する観点からは、パリソン30の時点で、その断面形状を製品100と同様の断面形状としておくことが好ましい(例えば、製品100の断面形状が円形である場合は、パリソン30の断面形状も円形にするのが好ましい)。
【0072】
逆に、パリソン30と製品100の断面形状が大きく異なる場合は、製品100を成形したときに、その肉厚にばらつきが生じる恐れがある。例えば、矩形断面の製品100を成形しようとする場合、パリソン30の断面形状を通常の円形とすると、製品100の断面形状は、角部において薄肉で、各辺の中央部において厚肉の、肉厚が一定しない矩形になってしまう(各辺の中央部よりも角部の方が薄肉となるのは、円形から矩形に変形する際に、角部に相当する部分の変形量が最も大きいからである)。
【0073】
そこで、本実施形態では、上記のような場合でも、均一な肉厚の製品700(図13(b))を得ることができるようにする。すなわち、図13(a)に示すように、パリソン630の断面形状を周方向に肉厚が変動するような円形とすることにより、これがブロー成形によって矩形断面に変形したときに、図13(b)に示すような、均一な肉厚を有する矩形断面の製品700が得られるようにする。具体的には、パリソン630の断面において、変形後の製品700における角部701と辺中央部702に相当する部分に、それぞれ厚肉部631と薄肉部632を設ける。
【0074】
なお、このようなパリソン630の断面形状を均一な肉厚を有する円形に変更したい(すなわち、パリソン630の内周面を外周面と同心となるようにしたい)場合は、インジェクション型12の雄型14(雄中子型18)のみを交換すればよい。そして、このようにすれば、製品700として今度は円形断面のものを成形することが可能となる。従って、本実施形態の製造方法によれば、雄型14(雄中子型18)のみの交換により、円形断面の製品700に対応するパリソン630と、矩形断面の製品700に対応するパリソン630の、いずれをも成形することが可能である。
【0075】
(実施形態7)
本実施形態では、上記実施形態1のブロー型52の代わりに、図14(a)に示すようなブロー型452を用いる。ブロー型452は、枠材453を縦横に組み合わせたような網目状に形成されているため、このブロー型452の内部で膨張変形するパリソン(図示省略)は、枠材453によってその膨張変形が邪魔される箇所以外は、自由に膨張変形が可能となる。従って、このようなブロー型452を用いれば、図14(b)に示すような、表面に凹凸を有する製品800を成形することができる。
【0076】
なお、本実施形態の製造方法の場合、ブロー成形時のエアの圧力や成形時間によって製品800の表面凹凸量が変化するため、この表面の変形状況を外部から確認しながらブロー成形を行うことが好ましい。このため、ブロー型452は、例えば透明樹脂やガラス等の透明な材質から成る容器の内部に固定するとよい。このようにすれば、当該透明容器の外部から、内部のブロー成形の様子を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるインジェクション成形機を示す断面図である。
【図2】前記インジェクション成形機の型開放時の状況を示す図である。
【図3】本発明の第一の実施形態にかかるブロー成形機を示す断面図であり、(a)は成形前の状況、(b)は成形後の状況、(c)は型開放時の状況を示す。
【図4】本発明の第一の実施形態にかかる口型ホルダの構造を示す分解斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は前記口型ホルダの各種変形例を示す図である。
【図6】(a)は変形実施例に用いられるデザイン部材の単体の状態を示す斜視図、(b)は当該デザイン部材が製品に一体に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第二の実施形態にかかるパリソンの形状を示す斜視図である。
【図8】本発明の第二の実施形態にかかるブロー成形機を示す断面図であり、(a)は成形前の状況、(b)は成形後の状況を示す。
【図9】本発明の第三の実施形態にかかるインジェクション成形機に用いる雄中子型と雌中子型を示す断面図である。
【図10】(a)は本発明の第三の実施形態にかかるパリソンの成形状況を示す斜視図、(b)はこれを成形して得られた製品を示す斜視図である。
【図11】本発明の第四の実施形態にかかるブロー成形機を示す断面図であり、(a)はパリソンをセットする前の状況、(b)はパリソンをセットした後の状況、(c)は(b)の一部拡大図である。
【図12】本発明の第五の実施形態にかかるブロー成形機を示す断面図であり、(a)は延伸棒挿入前の状況、(b)は延伸棒挿入後の状況、(c)はブロー成形完了後の状況を示す。
【図13】(a)は本発明の第六の実施形態にかかるパリソンの横断面図、(b)はこれを成形して得られた製品の横断面図である。
【図14】(a)は本発明の第七の実施形態にかかるブロー型の形状を示す正面図、(b)はこれを用いて成形した製品の形状を示す正面図である。
【符号の説明】
【0078】
10 インジェクション成形機
12 インジェクション型
14 雄型
16 雌型
18a 凸部
20a 凹部
22 キャビティ空間
28 口型ホルダ(ホルダ)
28a 貫通孔
30 パリソン
30a 開口部
30b 底部
32、36 樹脂流入路
40 磁石
50 ブロー成形機
52 ブロー型
58 成形空間
64 延伸棒
64a 中空部
64b エア吹出孔
70 デザイン部材
100 製品
170 デザイン部材
254a 周接面
254b 突起
256a 底面
256b 突設部
A ブローエア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジェクション成形されたパリソンを引き続きブロー成形によって所定の製品形状に成形するプラスチック製品の製造方法であって、
インジェクション型を含むインジェクション成形機を用いて、あらかじめホルダを装着した状態のインジェクション型の内部に溶融した熱可塑性樹脂を射出することにより、前記パリソンを、その一方端に当該ホルダが一体に取り付けられるような状態で成形するインジェクション工程と、
成形されたパリソンが硬化する前に、前記パリソンとホルダを前記インジェクション型から離脱させ、このうちのホルダを保持することによって前記パリソンをインジェクション成形機から移送する移送工程と、
成形空間を内部に有するブロー型を含みかつ前記インジェクション成形機とは独立したブロー成形機を用いて、前記移送してきたパリソンを、ブロー型の入口部に前記ホルダを固定することによって当該ブロー型の内部に挿入状態で保持し、さらに前記パリソンを所定の密閉手段により密閉した状態で、前記パリソンの内部にブローエアを導入することにより、前記成形空間に応じた形状の製品を成形するブロー工程とを含み、
前記インジェクション型は、凸部を有する雄型と当該凸部に対応した凹部を有する雌型とを備え、前記パリソンの形状に対応したキャビティ空間をその雄型と雌型の間に形成するとともに、当該キャビティ空間内に溶融樹脂を導入するための樹脂流入路を前記雄型の内部と雌型の内部の両側に備え、
前記インジェクション工程は、前記インジェクション型に備わる2つの樹脂流入路のうちの一方の樹脂流入路を閉塞した状態で、もう一方の樹脂流入路を通じて前記キャビティ空間内に溶融樹脂を射出することにより前記パリソンを成形する工程であることを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチック製品の製造方法において、
前記インジェクション工程は、前記パリソンとして、その一方端に開口部を有して他方端に底部を有する筒状のパリソンを成形するとともに、前記ホルダとして、当該パリソンの一方端と一体化する際にそのパリソンの一方端の開口部を閉塞しないようにするための貫通孔を有する口型ホルダを用いる工程であって、
前記ブロー工程においてパリソンを密閉する密閉手段は、前記パリソンの一方端に取り付けられている口型ホルダの貫通孔を前記ブローエアの導入路を確保しつつ閉塞するものであることを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のプラスチック製品の製造方法において、
前記ブロー工程は、前記ブローエアの導入前又は導入中に、前記口型ホルダの貫通孔を挿通して前記パリソンの底部を内面側から押圧することが可能な延伸棒を用いて前記パリソンを軸方向に延伸変形させる工程であることを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のプラスチック製品の製造方法において、
前記延伸棒は、エアが通る中空部と、この中空部に通じて表面に開口するエア吹出孔とを備え、
前記ブロー工程は、当該延伸棒を用いて前記エア吹出孔から吹き出すブローエアを前記パリソンの内部に導入する工程であることを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載のプラスチック製品の製造方法において、
前記インジェクション工程は、前記パリソンとして、その一方端と他方端の両側に開口部を有する筒状のパリソンを成形するとともに、前記ホルダとして、当該パリソンの一方端と一体化する際にそのパリソンの一方端の開口部を閉塞しないようにするための貫通孔を有する口型ホルダを用いる工程であって、
前記ブロー工程においてパリソンを密閉する密閉手段は、前記パリソンの一方端に取り付けられている口型ホルダの貫通孔を前記ブローエアの導入路を確保しつつ閉塞するとともに、前記パリソンの他方端を前記ブロー型の内部の底面に当接させるものであることを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のプラスチック製品の製造方法において、
前記ブロー型は、前記パリソンの他方端と当接した状態でそのパリソンの他方端の開口部に嵌挿可能な突設部を有する底面と、当該パリソンの他方端の外周と密接可能でかつパリソンに食い込むような周状の突起を有する周接面とを備え、
前記ブロー工程は、当該ブロー型を用いて前記パリソンの他方端を径方向と軸方向の両方向に固定しながら前記パリソンの内部にブローエアを導入する工程であることを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラスチック製品の製造方法において、
前記ホルダとして分割可能なホルダを用い、その分割面に磁石を埋設することを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラスチック製品の製造方法において、
前記ホルダとして製品の一部を構成するようにデザインされた部材を用いることを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラスチック製品の製造方法において、
前記ブロー工程は、製品の一部を構成するようにデザインされた部材を前記ブロー型の内部にあらかじめ挿着した状態で前記パリソンの内部にブローエアを導入することにより、当該デザインされた部材を製品の外面に一体に取り付ける工程であることを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のプラスチック製品の製造方法において、
前記ブロー工程を行っている間に、新たなパリソンを成形するインジェクション工程を並行して行うことにより、前記インジェクション工程とブロー工程とを並行して連続的に行うことを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項11】
インジェクション成形されたパリソンを引き続きブロー成形によって所定の製品形状に成形するプラスチック製品の製造装置であって、
あらかじめホルダを装着可能なインジェクション型を含むとともに、このインジェクション型の内部に溶融した熱可塑性樹脂を射出することにより、前記パリソンを、その一方端に当該ホルダが一体に取り付けられるような状態で成形するインジェクション成形機と、
硬化する前の状態のパリソンを前記ホルダとともにインジェクション型から離脱させ、このうちのホルダを保持することによって前記パリソンをインジェクション成形機から移送する移送手段と、
成形空間を内部に有するブロー型を含むとともに、前記移送手段によって移送されてきたパリソンを、ブロー型の入口部に前記ホルダを固定することによって当該ブロー型の内部に挿入状態で保持し、さらに前記パリソンを所定の密閉手段により密閉した状態で、前記パリソンの内部にブローエアを導入することにより、前記成形空間に応じた形状の製品を成形するブロー成形機とを備え、
前記インジェクション成形機とブロー成形機とが独立した設備で構成されており、
前記インジェクション型は、凸部を有する雄型と当該凸部に対応した凹部を有する雌型とを備え、前記パリソンの形状に対応したキャビティ空間をその雄型と雌型の間に形成するとともに、当該キャビティ空間内に溶融樹脂を導入するための樹脂流入路を前記雄型の内部と雌型の内部の両側に備え、
前記インジェクション成形機は、前記インジェクション型に備わる2つの樹脂流入路のうちの一方の樹脂流入路を閉塞した状態で、もう一方の樹脂流入路を通じて前記キャビティ空間内に溶融樹脂を射出するものであることを特徴とするプラスチック製品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−105019(P2011−105019A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48497(P2011−48497)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【分割の表示】特願2005−129175(P2005−129175)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(504435438)
【出願人】(507040390)
【Fターム(参考)】