説明

プリント配線板用銅箔

【課題】 絶縁基板との接着性及びエッチング性の両方に優れ、回路パターン形成の際のエッチング性が良好でファインピッチ化に適したプリント配線板用両面処理銅箔を提供する。
【解決手段】 プリント配線板用銅箔は、銅箔基材と、銅箔基材における一方の表面の少なくとも一部を被覆する第1の被覆層と、他方の表面の少なくとも一部を被覆する第2の被覆層とを備える。第1の被覆層にはCrが18〜180μg/dm2の被覆量で存在し、第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下で、∫f2(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が20%以上で、区間[1.0、2.5]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たす。第2の被覆層は、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用の銅箔に関し、特にフレキシブルプリント配線板用の銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板はここ半世紀に亘って大きな進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子機器に使用されるまでに至っている。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して導体パターンの微細化(ファインピッチ化)や高周波対応等が求められている。
【0003】
プリント配線板は銅箔に絶縁基板を接着させて銅張積層板とした後に、エッチングにより銅箔面に導体パターンを形成するという工程を経て製造されるのが一般的である。そのため、プリント配線板用の銅箔には絶縁基板との接着性やエッチング性が要求される。
【0004】
絶縁基板との接着性を向上させる技術として、粗化処理と呼ばれる銅箔表面に凹凸を形成する表面処理を施すことが一般に行われている。例えば電解銅箔のM面(粗面)に硫酸銅酸性めっき浴を用いて、樹枝状又は小球状に銅を多数電着せしめて微細な凹凸を形成し、投錨効果によって接着性を改善させる方法がある。粗化処理後には接着特性を更に向上させるためにクロメート処理やシランカップリング剤による処理等が一般的に行われている。
【0005】
また、粗化処理が施されていない平滑な銅箔表面に錫、クロム、銅、鉄、コバルト、亜鉛、ニッケル等の金属層又は合金層を形成する方法も知られている。
【0006】
銅箔に接着させる絶縁基板にはポリイミドが使用されることが多いので、ポリイミドとの接着強度が高いクロムを銅箔表面に被覆する方法が一般的である。
【0007】
また、平滑な銅箔表面への表面処理として、ポリイミド層へのCu原子の拡散を防止する第1の金属層を形成し、当該第1の金属層上に、第2の金属層として、絶縁基板との接着性が良好なCr層をエッチング性が良好な程度に薄く形成することで、絶縁基板との良好な接着性及び良好なエッチング性を同時に得ようとする技術が研究・開発されている。これはCu原子またはCu酸化物がポリイミド側へ拡散すると、接着界面近傍のポリイミド層が脆弱になり、剥離の起点になるからである。
【0008】
銅箔表面にクロム層を被覆する方法としては、湿式処理方法や乾式処理方法等がある。このうち、湿式処理でクロム層を表面に被覆する方法としては、銅箔表面にZn層またはZn合金層を形成し、さらに当該層上にクロメート層を形成する方法と、銅箔表面にZnを含有しない層を形成し、当該層上にクロメート層を形成しない方法とがある。前者の例は特許文献1に開示されており、後者の例は特許文献2に開示されている。Zn層またはZn合金層上にクロメート層を形成する場合では、Zn層またはZn合金層中のZnと溶液中のCr6+との間で置換反応が起こり、Crの水酸化物が析出する。当該方法では、Crは水酸化物の状態で析出する。このため、析出したCrの価数は0価ではなく、ポリイミドとの接着性に優れるとされる3価となっている。
【0009】
また、乾式処理を用いた方法が、特許文献3に開示されている。特許文献3には、銅箔の表面にNi−Cr合金層を形成し、当該合金層の表面に所定の厚さの酸化物層を形成することにより、銅箔表面が平滑でアンカー効果が低い状態においても樹脂基材との接着性が大幅に上昇することが記載されている。そして、表面に1〜100nmのNi−Cr合金層が蒸着形成され、該合金層の表面に厚さ0.5〜6nmのCr酸化物層が形成され、かつ最表面の平均表面粗さRzJISが2.0μm以下である、プリント配線基板用銅箔が開示されている。
【0010】
一方、銅箔のエッチング性は、樹脂との非接着面に表面処理を施さないと、エッチング後の銅箔回路の銅部分が、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりにエッチングされる(ダレを発生する)。通常は、回路側面の角度が50°前後の「ダレ」となり、特に大きな「ダレ」が発生した場合には、樹脂基板近傍で銅回路が短絡し、不良品となる場合もある。ここで、図8に、銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真を示す。
【0011】
このような「ダレ」は極力小さくすることが必要であるが、このような末広がりのエッチング不良を防止するために、エッチング時間を延長して、エッチングをより多くして、この「ダレ」を減少させることも考えられる。しかし、この場合は、すでに所定の幅寸法に至っている箇所があると、そこがさらにエッチングされることになるので、その銅箔部分の回路幅がそれだけ狭くなり、回路設計上目的とする均一な線幅(回路幅)が得られず、特にその部分(細線化された部分)で発熱し、場合によっては断線するという問題が発生する。電子回路のファインパターン化がさらに進行する中で、現在もなお、このようなエッチング不良による問題がより強く現れ、回路形成上で、大きな問題となっている。
【0012】
これらを改善する方法として、エッチング面側の銅箔に銅よりもエッチング速度が遅い金属又は合金層を形成した表面処理が特許文献4に開示されている。この場合の金属又は合金としては、ニッケル、コバルト及びこれらの合金である。回路設計に際しては、レジスト塗布側、すなわち銅箔の表面からエッチング液が浸透するので、レジスト直下にエッチング速度が遅い金属又は合金層があれば、その近傍の銅箔部分のエッチングが抑制され、他の銅箔部分のエッチングが進行するので、「ダレ」が減少し、より均一な幅の回路が形成できるという効果をもたらし、回路側面の角度が63°〜75°という、従来技術と比較して急峻な回路形成が可能となり、大きな進歩があったと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−344174号公報
【特許文献2】特開2007−007937号公報
【特許文献3】特開2007−207812号公報
【特許文献4】特開2002−176242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した種々の樹脂との接着面の従来の表面処理技術のうち、ファインピッチの回路形成の観点からは、粗化処理により接着性を向上させる方法は不利である。すなわち、ファインピッチ化により導体間隔が狭くなると、粗化処理部がエッチングによる回路形成後に絶縁基板に残留し、絶縁劣化を起こすおそれがある。これを防止するために粗化表面すべてをエッチングしようとすると長いエッチング時間を必要とし、所定の配線幅が維持できなくなる。
【0015】
接着強度の観点からは、平滑な銅箔表面にポリイミドを積層させた方法は、粗化処理面にポリイミドを積層させる方法に比べて不利である。これは、粗化処理面ではアンカー効果によって接着強度が得られるのに対し、粗化処理を行わない場合ではアンカー効果が得られず、さらに、Cu原子がポリイミド中に拡散することで、界面近傍のポリイミド層が脆弱になり、当該部分が剥離の起点になるからである。
【0016】
また、乾式処理では、例えばNi層やNi−Cr合金層を設ける方法については絶縁基板との接着性という基本特性において改善の余地が大きい。これは前者ではポリイミド等との接着性が良好なCr3+が存在していないこと、後者では被膜がNiとの共存のため、Cr3+の存在比率が低いことが原因である。
【0017】
また、乾式処理でCr層を設ける方法は、室温では比較的高い接着強度が得られるが、この積層体が熱履歴を受けた場合、層厚みが薄いと銅箔由来のCu原子がCr層を拡散してポリイミド層内に侵入し、接着強度が劣化する。一方、Cu原子の拡散防止に十分なほどCr層が厚いと、表面処理層のエッチング性が劣る。これは回路パターン形成のためにエッチング処理を行った後に、Crが絶縁基板上に残存する「エッチング残り」と呼ばれる現象である。
【0018】
また、特許文献1及び2に記載された表面処理層は、電気めっきで形成されている。この時、銅箔自体が電気化学反応の電極として作用する。銅箔の表面はオイルピットなどの凹凸を有し、さらに表面近傍には数100nmの介在物が存在しているため、当該部分は電子の流れが阻害され、極薄の表面処理層を均一な厚さで形成し、ポリイミドとの接着性及びエッチング性を両立することは困難である。
【0019】
さらに、ポリイミドとの接着性に有効なCrを銅箔表面に付着させるためにはZn層またはZn合金層上にクロメート層を形成する必要があるが、特許文献1に記載されたように、Ni−Zn合金層上にクロメート層を形成した場合、接着界面近傍におけるクロム酸化物濃度が低くなり、高い接着強度を得られないことを本発明者らは見出した。また、特許文献2に記載されたように、Zn層またはZn合金層上にクロメート層を形成しない場合には、ZnとCr6+との間の置換反応を利用することができないため、Crの付着量に限界がある。
【0020】
また、近年、回路の微細化、高密度化がさらに進行し、回路側面の傾斜角がより急峻な75°を超えること、できれば80°以上を実現することが求められるようになってきた。特許文献4に記載される技術ではこれらには対応できない。
【0021】
さらに特許文献4に記載される表面処理層はソフトエッチングにより除去する必要があること、さらには樹脂との非接着面表面処理銅箔は、銅張積層板に加工される工程で、樹脂の貼付け等の高温処理が施される。これは表面処理層の酸化を引き起こし、結果として銅箔のエッチング性は劣化する。
【0022】
前者については、エッチング除去の時間をなるべく短縮し、きれいに除去するためには、表面処理層の厚さを極力薄くすることが必要であること、また後者の場合には、熱を受けるために、下地の銅層が酸化され(変色するので、通称「ヤケ」と言われている。)、レジストの塗布性(均一性、密着性)の不良やエッチング時の界面酸化物の過剰エッチングなどにより、パターンエッチングでのエッチング性、ショート、回路パターンの幅の制御性などの不良が発生するという問題があるので、改良が必要か又は他の材料に置換することが要求されている。
【0023】
そこで、本発明は、絶縁基板との接着性及びエッチング性の両方に優れ、回路パターン形成の際のエッチング性が良好でファインピッチ化に適したプリント配線板用両面処理銅箔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
従来、被覆層を薄くすると接着強度が低下するということが一般的な理解であった。しかしながら、本発明者らは、鋭意検討の結果、銅箔上にCr層をナノメートルオーダーの極薄の厚みで均一に設けた場合には、湿式めっきに比べて、接着界面近傍の酸化物Crの濃度を高くすることができ、優れた絶縁基板との密着性を得ることができた。厚みを極薄にすることでエッチング性の低いCrの使用量が削減され、被覆層が均一であることからエッチング性に有利である。また、Cu原子の拡散を防止する層を前述のCr直下に設けることで、過酷な使用環境に耐えうる銅張積層基板を提供することが可能になる。
また、本発明者らは、鋭意検討の結果、銅箔の樹脂との非接着面側には白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含む被覆層を設けた場合には、回路側面の傾斜角が80°以上となるような回路を形勢できることを見出した。これにより、近年の回路の微細化、高密度化に十分対応しうる回路を形成することができる。
【0025】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、銅箔基材と、銅箔基材における一方の表面の少なくとも一部を被覆する第1の被覆層と、他方の表面の少なくとも一部を被覆する第2の被覆層とを備えたプリント配線板用銅箔であって、第1の被覆層にはCrが18〜180μg/dm2の被覆量で存在し、第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下で、∫f2(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が20%以上で、区間[1.0、2.5]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たし、第2の被覆層が、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含むプリント配線板用銅箔である。
【0026】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の一実施形態においては、第2の被覆層に含まれる白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上である。
【0027】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の別の一実施形態においては、第2の被覆層における白金の付着量が1050μg/dm2以下、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下、金の付着量が1000μg/dm2以下である。
【0028】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、第2の被覆層における白金の付着量が15〜1050μg/dm2、パラジウムの付着量が10〜600μg/dm2、金の付着量が10〜1000μg/dm2である。
【0029】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、第2の被覆層における白金の付着量が20〜400μg/dm2、パラジウムの付着量が20〜250μg/dm2、金の付着量が20〜400μg/dm2である。
【0030】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、第1の被覆層にはCrが30〜145μg/dm2の被覆量で存在する。
【0031】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、第1の被覆層にはCrが36〜75μg/dm2の被覆量で存在する。
【0032】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、第1の被覆層が、銅箔基材表面から順に積層した、金属の単体又は合金からなる中間層、及び、Crからなる表層で構成され、中間層が、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、V、Sn、Mn及びCrの少なくともいずれか1種を含む。
【0033】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、中間層が、Ni、Mo、Ti、Zn及びCoのいずれか1種の単体で構成され、中間層には、Ni、Mo、Ti、Zn及びCoのいずれか1種が15〜1030μg/dm2の被覆量で存在する。
【0034】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、中間層には、Niが15〜440μg/dm2、Moが25〜1030μg/dm2、Tiが15〜140μg/dm2、Znが15〜750μg/dm2、又は、Coが25〜1030μg/dm2の被覆量で存在する。
【0035】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、中間層が、Ni、Zn、V、Sn、Mn、Cr及びCuの少なくともいずれか2種の合金で構成され、中間層には、Ni、Zn、V、Sn、Mn及びCrのいずれか2種が20〜1700μg/dm2の被覆量で存在する。
【0036】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、中間層が、Niと、Zn、V、Sn、Mn及びCrのいずれか1種とからなるNi合金で構成されている。
【0037】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、中間層が、被覆量が15〜1000μg/dm2のNi及び5〜750μg/dm2のZnからなるNi−Zn合金、合計被覆量が20〜600μg/dm2のNi及びVからなるNi−V合金、合計被覆量が18〜450μg/dm2のNi及びSnからなるNi−Sn合金、被覆量が15〜450μg/dm2のNi及び5〜200μg/dm2のMnからなるNi−Mn合金、被覆量が20〜440μg/dm2のNi及び5〜110μg/dm2のCrからなるNi−Cr合金で構成されている。
【0038】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、前記中間層が、Cuと、Zn及びNiのいずれか1種又は2種とからなるCu合金で構成されている。
【0039】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、中間層が、Znの被覆量が15〜750μg/dm2であるCu−Zn合金、Ni被覆量が15〜440μg/dm2であるCu−Ni合金、又は、Ni被覆量が15〜1000μg/dm2且つZn被覆量が5〜750μg/dm2であるCu−Ni−Zn合金で構成されている。
【0040】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、第1の被覆層の断面を透過型電子顕微鏡によって観察すると最大厚さが0.5〜12nmであり、最小厚さが最大厚さの80%以上である。
【0041】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、ポリイミド硬化相当の熱処理を行ったとき、前記第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下で、∫f2 (x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が20%以上で、区間[1.0、2.5]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たす。
【0042】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、ポリイミド硬化相当の熱処理が行われたプリント配線板用銅箔であって、前記第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下で、∫f2 (x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が20%以上で、区間[1.0、2.5]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たす。
【0043】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、第1の被覆層を介して絶縁基板が形成されたプリント配線板用銅箔に対し、該絶縁基板を該第1の被覆層から剥離した後の該第1の被覆層の表面を分析したとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とし、金属クロムの濃度が最大となる表層からの距離をFとすると、区間[0、F]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0で、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下を満たす。
【0044】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、第2の被覆層が、白金合金、パラジウム合金又は金合金で構成され、該第2の被覆層において、白金、パラジウム又は金が50質量%を超えて含まれる。
【0045】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、第2の被覆層が、白金合金、パラジウム合金又は金合金で構成され、該合金が亜鉛、リン、ホウ素、モリブデン、タングステン、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種以上の元素を含む。
【0046】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、銅箔基材と第2の被覆層との間、及び/又は、第2の被覆層上に、耐熱層を備える。
【0047】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、耐熱層は、亜鉛又は亜鉛合金で構成され、亜鉛合金は、亜鉛と、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上とで構成される。
【0048】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、耐熱層の亜鉛の付着量が30〜1000μg/dm2である。
【0049】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、プリント配線板がフレキシブルプリント配線板である。
【0050】
本発明は別の一側面において、圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種の金属単体層、又は、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種を主成分とする合金層を形成して銅張り積層板を作製する工程と、銅張り積層板を塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングし、銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程とを含む電子回路の形成方法である。
【0051】
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る銅箔で構成された圧延銅箔又は電解銅箔を準備する工程と、銅箔の第2の被覆層をエッチング面として銅張積層板を作製する工程と、銅張り積層板を塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングし、銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程とを含む電子回路の形成方法である。
【0052】
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る銅箔を備えた銅張積層板である。
【0053】
本発明に係る銅張積層板の一実施形態においては、銅箔がポリイミドに接着している構造を有する。
【0054】
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る銅張積層板を材料としたプリント配線板である。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、絶縁基板との接着性及びエッチング性の両方に優れ、回路パターン形成の際のエッチング性が良好でファインピッチ化に適したプリント配線板用両面処理銅箔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例16の銅箔(成膜後)の第1の被覆層付近のTEM写真(断面)である。
【図2】回路パターンの一部の表面写真、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図、及び、該模式図を用いたエッチングファクター(EF)の計算方法の概略である。
【図3】実施例16の銅箔(ポリイミドワニス硬化相当の熱処理後)の第1の被覆層付近のXPSによるデプスプロファイルである。
【図4】実施例48により形成された回路およびその断面を示す写真である。
【図5】比較例29の銅箔(電気めっき後)のXPSによるデプスプロファイルである。
【図6】比較例30の銅箔(電気めっき後)のXPSによるデプスプロファイルである。
【図7】比較例33により形成された回路を示す写真である。
【図8】銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
(銅箔基材)
本発明に用いることのできる銅箔基材の形態に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0058】
本発明に用いることのできる銅箔基材の厚さについても特に制限はなく、プリント配線板用に適した厚さに適宜調節すればよい。例えば、5〜100μm程度とすることができる。但し、ファインパターン形成を目的とする場合には30μm以下、好ましくは20μm以下であり、典型的には5〜20μm程度である。
【0059】
本発明に使用する銅箔基材には粗化処理をしないのが好ましい。従来は特殊めっきで表面にμmオーダーの凹凸を付けて表面粗化処理を施し、物理的なアンカー効果によって樹脂との接着性を持たせるケースが一般的であった。しかしながら一方でファインピッチや高周波電気特性は平滑な箔が良いとされ、粗化箔では不利な方向に働くからである。また、粗化処理工程が省略されるので、経済性・生産性向上の効果もある。従って、本発明で使用される箔は、特別に粗化処理をしない箔である。
【0060】
(第1の被覆層:絶縁基板との接着面側)
銅箔基材の一方の表面の少なくとも一部には、Crを含む第1の被覆層が形成されている。被覆する箇所には特に制限は無いが、絶縁基板との接着が予定される箇所とするのが一般的である。Crを含む第1の被覆層の存在によって絶縁基板との接着性が向上する。また、第1の被覆層は、銅箔基材表面から順に積層した、金属の単体又は合金からなる中間層、及び、Crからなる表層で構成され、中間層が、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、V、Sn、Mn及びCrの少なくともいずれか1種を含むのが好ましい。また、中間層は、銅箔基材表面から順に積層した、Ni、Zn、V、Sn、Mn、Cr及びCuの少なくともいずれか2種の合金で構成されていてもよい。また、中間層は、Niと、Zn、V、Sn、Mn及びCrのいずれか1種とからなるNi合金で構成されていてもよく、Cuと、Zn及びNiのいずれか1種又は2種とからなるCu合金で構成されていてもよい。一般に、銅箔と絶縁基板の間の接着力は高温環境下に置かれると低下する傾向にあるが、これは銅が表面に熱拡散し、絶縁基板と反応することにより引き起こされると考えられる。これに対し、予め銅の拡散防止に優れる上記中間層を銅箔基材の上に設けたことで、銅の熱拡散が防止できる。ここで、銅の拡散防止のために設ける種々の中間層の中で、Cu合金層には、表面へ拡散させたくない銅が含まれているが、銅を合金化しているため、表面への拡散は無く、良好な接着性を有すると共に、エッチング性にも悪影響を及ぼさない。
上述のNi等の金属及び合金を中間層として被覆することにより良好なCu拡散防止効果が得られるが、その他の金属や合金でも、Cu拡散防止効果が得られれば、本発明に係る中間層の構成材料として使用可能である。
また、上記中間層よりも絶縁基板との接着性に優れたCr層を該中間層の上に設けることで更に絶縁基板との接着性を向上することができる。Cr層の厚さは中間層の存在のおかげで薄くできるので、エッチング性への悪影響を軽減することができる。なお、本発明でいう接着性とは常態での接着性の他、高温下に置かれた後の接着性(耐熱性)及び高湿度下に置かれた後の接着性(耐湿性)も指す。このようなプリント配線板用銅箔は、被覆層は極薄で厚さが均一である。当該構成にしたことで絶縁基板との接着性が向上した理由は明らかではないが、中間層の上に最表面として樹脂との接着性に非常に優れているCr単層被膜を形成したことで、イミド化時の高温熱処理後(約350℃にて30分〜数時間程度)も高接着性を有する単層被膜構造を保持しているためと推測される。また、被覆層を極薄にするとともに中間層とCr層の二層構造としてCrの使用量を減らしたことにより、エッチング性が向上したと考えられる。
【0061】
具体的には、第1の被覆層は以下の構成を有する。
(1)第1の被覆層の同定
第1の被覆層は、XPS、若しくはAES等表面分析装置にて表層からアルゴンスパッタし、深さ方向の化学分析を行い、夫々の検出ピークの存在によって同定することができる。また、夫々の検出ピークの位置から被覆された順番を確認することができる。
【0062】
(2)付着量
一方、第1の被覆層は非常に薄いため、XPS、AESでは正確な厚さの評価が困難である。そのため、本願発明においては、第1の被覆層の厚さは単位面積当たりの被覆金属の重量で評価することとした。本発明に係る第1の被覆層には、Crが18〜180μg/dm2の被覆量で存在する。Crが18μg/dm2未満だと十分なピール強度が得られず、Crが180μg/dm2を超えるとエッチング性が有意に低下する傾向にある。Crの被覆量は好ましくは30〜145μg/dm2、より好ましくは36〜75μg/dm2である。
また、第1の被覆層が中間層を有し、中間層が、Ni、Mo、Ti、Zn及びCoのいずれか1種の単体で構成されているとき、中間層には、Ni、Mo、Ti、Zn及びCoのいずれか1種が15〜1030μg/dm2の被覆量で存在することが好ましい。このとき、被覆量が15μg/dm2未満だと十分なピール強度が得られず、1030μg/dm2を超えるとエッチング性が有意に低下する傾向にある。また、このとき、中間層には、Niが15〜440μg/dm2、Moが25〜1030μg/dm2、Tiが15〜140μg/dm2、Znが15〜750μg/dm2、又は、Coが25〜1030μg/dm2の被覆量で存在するのが好ましい。それぞれ被覆層のピール強度及びエッチング性の両方を担保するためである。
また、中間層が、銅箔基材表面から順に積層した、Ni、Zn、V、Sn、Mn、Cr及びCuの少なくともいずれか2種の合金で構成されているとき、中間層には、Ni、Zn、V、Sn、Mn及びCrのいずれか2種が20〜1700μg/dm2の被覆量で存在するのが好ましい。このとき、被覆量が20μg/dm2未満だと十分なピール強度が得られず、1700μg/dm2を超えるとエッチング性が有意に低下する傾向にある。
また、中間層が、Niと、Zn、V、Sn、Mn及びCrのいずれか1種とからなるNi合金で構成されているとき、中間層は、被覆量が15〜1000μg/dm2のNi及び5〜750μg/dm2のZnからなるNi−Zn合金、合計被覆量が20〜600μg/dm2のNi及びVからなるNi−V合金、合計被覆量が18〜450μg/dm2のNi及びSnからなるNi−Sn合金、被覆量が15〜450μg/dm2のNi及び5〜200μg/dm2のMnからなるNi−Mn合金、被覆量が20〜440μg/dm2のNi及び5〜110μg/dm2のCrからなるNi−Cr合金で構成されているのが好ましい。それぞれ被覆層のピール強度及びエッチング性の両方を担保するためである。
また、中間層が、Cuと、Zn及びNiのいずれか1種又は2種とからなるCu合金で構成されているとき、中間層は、Znの被覆量が15〜750μg/dm2であるCu−Zn合金、Ni被覆量が15〜440μg/dm2であるCu−Ni合金、又は、Ni被覆量が15〜1000μg/dm2且つZn被覆量が5〜750μg/dm2であるCu−Ni−Zn合金で構成されているのが好ましい。それぞれ被覆層のピール強度及びエッチング性の両方を担保するためである。
【0063】
(3)透過型電子顕微鏡(TEM)による観察
本発明に係る第1の被覆層の断面を透過型電子顕微鏡によって観察したとき、最大厚さは0.5〜12nm、好ましくは1.0〜2.5nmであり、最小厚さが最大厚さの80%以上、好ましくは85%以上で、非常にばらつきの少ない被覆層である。第1の被覆層厚さが0.5nm未満だと耐熱試験、耐湿試験において、ピール強度の劣化が大きく、厚さが12nmを超えると、エッチング性が低下するためである。厚さの最小値が最大値の80%以上である場合、第1の被覆層の厚さは、非常に安定しており、耐熱試験後も殆ど変化がない。TEMによる観察では第1の被覆層が中間層及びCr層で構成されている場合、中間層及びCr層の明確な境界は見出しにくく、単層のように見える(図1参照)。また、このとき、本発明者の検討結果によればTEM観察で見出される第1の被覆層はCrを主体とする層と考えられ、中間層はその銅箔基材側に存在するとも考えられる。本発明においては、TEM観察した場合の被覆層の厚さは単層のように見える被覆層の厚さと定義する。ただし、観察箇所によっては被覆層の境界が不明瞭なところも存在し得るが、そのような箇所は厚さの測定箇所から除外する。
【0064】
第1の被覆層が中間層及びCr層で構成されている場合、中間層によってCuの拡散が抑制されるため、安定した厚さを有すると考えられる。本発明の銅箔は、ポリイミドフィルムと接着し、耐熱試験(温度150℃で空気雰囲気下の高温環境下に168時間放置)を経た後に樹脂を剥離した後においても、被覆層の厚さは殆ど変化なく、最大厚さが0.5〜12nmであり、最小厚さにおいても最大厚さの80%維持されることが可能である。
【0065】
(4)第1の被覆層表面の酸化状態
まず、被覆層最表面(表面から0〜1.0nmの範囲)には内部の銅が拡散していないことが、接着強度を高める上では望ましい。従って、本発明に係るプリント配線板用銅箔では、第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下とするのが好ましい。
【0066】
また、ポリイミド硬化相当の熱処理を行ったとき、前記第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下であるのが好ましい。
【0067】
また、第1の被覆層を介して絶縁基板が形成されたプリント配線板用銅箔に対し、該絶縁基板を該第1の被覆層から剥離した後の該第1の被覆層の表面を分析したとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とし、金属クロムの濃度が最大となる表層からの距離をFとすると、区間[0、F]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下であることが望ましい。
【0068】
また、第1の被覆層最表面においては、クロムは金属クロムとクロム酸化物が両方存在しているが、内部の銅の拡散を防止し、接着力を確保する観点では金属クロムの方が望ましいものの、良好なエッチング性を得る上ではクロム酸化物の方が望ましい。そこで、エッチング性と接着力の両立を図る上では、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫f2(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が20%以上で、区間[1.0、2.5]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たすことが好ましい。
【0069】
また、ポリイミド硬化相当の熱処理を行ったとき、第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫f2 (x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が20%以上で、区間[1.0、2.5]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たすことが好ましい。
【0070】
また、ポリイミド硬化相当の熱処理が行われたプリント配線板用銅箔であって、第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫f2 (x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が20%以上で、区間[1.0、2.5]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たすことが好ましい。
【0071】
また、第1の被覆層を介して絶縁基板が形成されたプリント配線板用銅箔に対し、絶縁基板を該第1の被覆層から剥離した後の第1の被覆層の表面を分析したとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、金属クロムの濃度が最大となる表層からの距離をFとすると、区間[0、F]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たすことが好ましい。
【0072】
クロム濃度及び酸素濃度はそれぞれ、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られたCr2p軌道及びO1s軌道のピーク強度から算出する。また、深さ方向(x:単位nm)の距離は、SiO2換算のスパッタレートから算出した距離とする。クロム濃度は酸化物クロムの濃度と金属クロム濃度との合計値であり、酸化物クロムの濃度と金属クロム濃度に分離して解析することが可能である。
【0073】
(第2の被覆層:回路形成予定面側)
絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、第2の被覆層が形成されている。第2の被覆層は、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含んでいる。第2の被覆層が白金で構成されている場合は、白金の付着量が1050μg/dm2以下であるのが好ましく、15〜1050μg/dm2であるのがより好ましく、20〜400μg/dm2であるのが更により好ましい。第2の被覆層がパラジウムで構成されている場合は、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下であるのが好ましく、10〜600μg/dm2であるのがより好ましく、20〜250μg/dm2であるのが更により好ましい。第2の被覆層が金で構成されている場合は、金の付着量が1000μg/dm2以下であるのが好ましく、10〜1000μg/dm2であるのがより好ましく、20〜400μg/dm2であるのが更により好ましい。第2の被覆層の白金の付着量が15μg/dm2未満、第2の被覆層のパラジウムの付着量が10μg/dm2未満、及び、第2の被覆層の金の付着量が10μg/dm2未満であると、それぞれ効果が十分でない。一方、第2の被覆層の白金の付着量が1050μg/dm2、第2の被覆層のパラジウムの付着量が600μg/dm2、及び、第2の被覆層の金の付着量が1000μg/dm2を超えると、それぞれ初期エッチング性に悪影響を及ぼす。
また、第2の被覆層が、白金合金、パラジウム合金又は金合金で構成される場合、第2の被覆層において、白金、パラジウム又は金が50質量%を超えて含まれるのが好ましい。
【0074】
また、第2の被覆層が、白金合金、パラジウム合金又は金合金で構成される場合、合金に含まれる他の成分は、通常知られているものであればいずれも用いることができる。例えば、亜鉛、リン、ホウ素、モリブデン、タングステン、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種以上の元素を含むものは、エッチング速度が銅より遅く、エッチングファクターを改善する効果を有する。
【0075】
銅箔基材と第2の被覆層との間には、耐熱層を備えていてもよい。耐熱層は、亜鉛又は亜鉛合金で構成され、亜鉛合金は、亜鉛と、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上とで構成されているのが好ましい。この場合、耐熱層の亜鉛の付着量は、30〜1000μg/dm2である。30μg/dm2未満では、耐酸化性(ヤケ性改善)に効果がない。また、1000μg/dm2を超えると、効果が飽和すると共に、第2の被覆層が有する効果を減殺させてしまう。
【0076】
また、第2の被覆層上には、防錆効果を高めるためにさらにクロム層若しくはクロメート層及び又はシラン処理層を形成することができる。
(本発明に係る銅箔の製法)
本発明に係るプリント配線板用銅箔は、スパッタリング法により形成することができる。すなわち、スパッタリング法によって銅箔基材の一方の表面の少なくとも一部を、第1の被覆層により被覆する。第1の被覆層が中間層及びCr層で構成される場合、例えば、銅箔基材表面に、厚さ0.25〜5.0nm、好ましくは0.3〜4.0nm、より好ましくは0.5〜3.0nmの中間層及び厚さ0.25〜2.5nm、好ましくは0.4〜2.0nm、より好ましくは0.5〜1.0nmのCr層で順に被覆することにより製造することができる。電気めっきでこのような極薄の被膜を積層すると、厚さにばらつきが生じ、耐熱・耐湿試験後にピール強度が低下しやすい。
ここでいう厚さとは上述したXPSやTEMによって決定される厚さではなく、スパッタリングの成膜速度から導き出される厚さである。あるスパッタリング条件下での成膜速度は、0.1μm(100nm)以上スパッタを行い、スパッタ時間とスパッタ厚さの関係から計測することができる。当該スパッタリング条件下での成膜速度が計測できたら、所望の厚さに応じてスパッタ時間を設定する。なおスパッタは、連続又はバッチ何れで行っても良く、被覆層を本発明で規定するような厚さで均一に積層することができる。スパッタリング法としては直流マグネトロンスパッタリング法が挙げられる。
【0077】
次に、銅箔基材の第1の被覆層を形成した表面の反対側の少なくとも一部を、第2の被覆層により被覆する。具体的には、スパッタリング法によって、銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種の金属単体層、又は、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種を主成分とする合金層を形成することにより第2の被覆層を形成する。合金層としては、例えば、白金−亜鉛合金、白金−リン合金、白金−モリブデン合金、白金−タングステン合金、白金−鉄合金、又は、白金−コバルト合金等を挙げることができる。第2の被覆層は、スパッタリング法に限らず、例えば、電気めっき、無電解めっき等の湿式めっき法で形成してもよい。
【0078】
(プリント配線板の製造)
本発明に係る銅箔を用いてプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造例を示す。
【0079】
まず、銅箔と絶縁基板を貼り合わせて銅張積層板を製造する。銅箔が積層される絶縁基板はプリント配線板に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等を使用する事ができる。
【0080】
貼り合わせの方法は、リジッドPWB用の場合、ガラス布などの基材に樹脂を含浸させ、樹脂を半硬化状態まで硬化させたプリプレグを用意する。プリプレグと銅箔の被覆層を有する面を重ね合わせて加熱加圧させることにより行うことができる。
【0081】
フレキシブルプリント配線板(FPC)用の場合、ポリイミドフィルム又はポリエステルフィルムと銅箔の被覆層を有する面をエポキシ系やアクリル系の接着剤を使って接着することができる(3層構造)。また、接着剤を使用しない方法(2層構造)としては、ポリイミドの前駆体であるポリイミドワニス(ポリアミック酸ワニス)を銅箔の被覆層を有する面に塗布し、加熱することでイミド化するキャスティング法や、ポリイミドフィルム上に熱可塑性のポリイミドを塗布し、その上に銅箔の被覆層を有する面を重ね合わせ、加熱加圧するラミネート法が挙げられる。キャスティング法においては、ポリイミドワニスを塗布する前に熱可塑性ポリイミド等のアンカーコート材を予め塗布しておくことも有効である。
【0082】
本発明に係る銅箔の効果はキャスティング法を採用してFPCを製造したときに顕著に表れる。すなわち、接着剤を使用せずに銅箔と樹脂とを貼り合わせようとするときには銅箔の樹脂への接着性が特に要求されるが、本発明に係る銅箔は樹脂、とりわけポリイミドとの接着性に優れているので、キャスティング法による銅張積層板の製造に適しているといえる。
【0083】
本発明に係る銅張積層板は各種のプリント配線板(PWB)に使用可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、導体パターンの層数の観点からは片面PWB、両面PWB、多層PWB(3層以上)に適用可能であり、絶縁基板材料の種類の観点からはリジッドPWB、フレキシブルPWB(FPC)、リジッド・フレックスPWBに適用可能である。
【0084】
上述のように作製した銅張積層板の銅箔上に形成された第2の被覆層表面にレジストを塗布し、マスクによりパターンを露光し、現像することによりレジストパターンを形成したものをエッチング液に浸漬する。このとき、エッチングを抑制する白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種の金属単体層、又は、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種を主成分とする合金層は、銅箔上のレジスト部分に近い位置にあり、レジスト側の銅箔のエッチングは、この金属単体層又は合金層近傍がエッチングされていく速度よりも速い速度で、金属単体層又は合金層から離れた部位の銅のエッチングが進行することにより、銅の回路パターンのエッチングがほぼ垂直に進行する。これにより銅の不必要部分を除去されて、次いでエッチングレジストを剥離・除去して回路パターンを露出することができる。
銅張積層板に回路パターンを形成するために用いるエッチング液に対しては、金属単体層又は合金層のエッチング速度は、銅よりも十分に小さいためエッチングファクターを改善する効果を有する。エッチング液は、塩化第二銅水溶液、又は、塩化第二鉄水溶液等を用いることができるが、特に塩化第二鉄水溶液が有効である。微細回路はエッチングに時間が掛かるが、塩化第二鉄水溶液の方が塩化第二銅水溶液よりもエッチング速度が早いためである。また、第2の被覆層を形成する前に、あらかじめ銅箔基材表面に耐熱層を形成しておいてもよい。
【実施例】
【0085】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0086】
(例1:実施例1〜43:絶縁基板との密着性評価)
実施例1〜5及び7〜43の銅箔基材として、厚さ18μmの圧延銅箔(日鉱金属製C1100)を用意した。圧延銅箔の表面粗さ(Rz)は0.7μmであった。また、実施例6の銅箔基材として、厚さ18μmの無粗化処理の電解銅箔を用意した。電解銅箔の表面粗さ(Rz)は1.5μmであった。
【0087】
スパッタリングに使用した各種単体(a〜e)は純度が3Nのものを用いた。また、
各種合金(f〜l)を以下の手順で作製した。まず、電気銅またはニッケルに表1(スパッタリングターゲットの合金成分〔質量%〕)に示す組成の元素をそれぞれ添加して高周波溶解炉でインゴットを鋳造し、これに600〜900℃で熱間圧延を施した。さらに500〜850℃で3時間均質化焼鈍した後、表層の酸化層を取り除き、スパッタリング用のターゲットとして使用した。
【0088】
【表1】

【0089】
この銅箔の片面に対して、以下の条件であらかじめ銅箔基材表面に付着している薄い酸化膜を逆スパッタにより取り除き、a〜l及びCr単層のターゲットをスパッタリングすることにより、中間層及びCr層を順に成膜した。被覆層の厚さは成膜時間を調整することにより変化させた。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・ターゲット:
中間層=a〜l
Cr層用=Cr(純度3N)
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
【0090】
被覆層を設けた銅箔に対して、以下の手順により、ポリイミドフィルムを接着した。
(1)7cm×7cmの銅箔に対しアプリケーターを用い、宇部興産製Uワニス−A(ポリイミドワニス)を乾燥体で25μmになるよう塗布。
(2)(1)で得られた樹脂付き銅箔を空気下乾燥機で130℃30分で乾燥。
(3)窒素流量を10L/minに設定した高温加熱炉において、350℃30分でイミド化。
【0091】
また、上記ポリイミドフィルムの接着試験とは別に、「耐熱試験」として、被覆層を設けた銅箔にポリイミドフィルムを接着させずにそのまま窒素雰囲気下で350℃、2時間加熱した。
【0092】
<付着量の測定>
50mm×50mmの銅箔表面の皮膜をHNO3(2重量%)とHCl(5重量%)を混合した溶液に溶解し、その溶液中の金属濃度をICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SFC−3100)にて定量し、単位面積当たりの金属量(μg/dm2)を算出した。なお、本発明において、Cu合金をターゲットとした場合のCuとその他の金属の付着量は同条件でTi箔上に成膜した場合の分析値を用いた。
また、後述するAu,Pd、Ptの付着量測定は、王水で表面処理銅箔サンプルを溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。
【0093】
<XPSによる測定>
被覆層のデプスプロファイルを作成した際のXPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.0nm/min(SiO2換算)
・XPSの測定結果において、酸化物クロムと金属クロムとの分離はアルバック社製解析ソフトMulti Pak V7.3.1を用いて行った。
・接着強度測定時のポリイミド硬化条件(350℃×30分)よりも過酷な条件の熱履歴(350℃×120分)を施した皮膜を分析した。
【0094】
<TEMによる測定>
被覆層をTEMによって観察したときのTEMの測定条件を以下に示す。後述の表中に示した厚さは、観察視野中に写っている被覆層全体の厚さを1視野について50nm間の厚さの最大値、最小値を測定し、任意に選択した3視野の最大値と最小値を求め、最大値、及び、最大値に対する最小値の割合を百分率で求めた。また、表中の「耐熱試験後」のTEM観察結果とは、試験片の被覆層上に上記手順によりポリイミドフィルムを接着させた後、試験片を下記の高温環境下に置き、得られた試験片からポリイミドフィルムを90°剥離法(JIS C 6471 8.1)に従って剥離した後のTEM像である。図1に、実施例16のTEMによる成膜後の観察写真を例示的に示す。中間は図1からは確認できない。これは該当部が銅合金層になっていて母材の銅箔と区別がつかなくなっているためである。図1で確認されるのはCr層であると推定される。本発明では母材との境界が明瞭である層のみの厚みを計測した。
・装置:TEM(日立製作所社、型式H9000NAR)
・加速電圧:300kV
・倍率:300000倍
・観察視野:60nm×60nm
【0095】
<接着性評価>
上記のようにしてポリイミドを積層した銅箔について、ピール強度を積層直後(常態)、温度150℃で空気雰囲気下の高温環境下に168時間放置した後(耐熱性)、及び温度40℃°相対湿度95%空気雰囲気下の高湿環境下に96時間放置した後(耐湿性)の三つの条件で測定した。ピール強度は90°剥離法(JIS C 6471 8.1)に準拠して測定した。
【0096】
<エッチング性評価>
上記のようにして作製した銅箔の該被覆層に白いテープを貼り付け、エッチング液(塩化銅二水和物、塩化アンモニウム、アンモニア水、液温50℃)に7分間浸漬させた。その後、テープに付着したエッチング残渣の金属成分をICP発光分光分析装置により定量し、以下の基準で評価した。
×:エッチング残渣が140μg/dm2以上
△:エッチング残渣が70μg/dm2以上140μg/dm2未満
〇:エッチング残渣が70μg/dm2未満
【0097】
(例2:比較例1〜28)
例1で使用した圧延銅箔基材の片面にスパッタ時間を変化させ、後述の表の厚さの被膜を形成した。被覆層を設けた銅箔に対して、例1と同様の手順により、ポリイミドフィルムを接着した。
【0098】
(例3:比較例29)
例1で使用した圧延銅箔基材の片面に、特開2005−344174号公報に教示されたNi―Znめっき処理、クロメート処理、及び、シランカップリング剤処理をそれぞれ以下の条件で施した。
〔Ni―Znめっき処理〕
・硫酸ニッケル 1.5g/l(Ni換算)
・ピロリン酸亜鉛 0.5g/l(Zn換算)
・ピロリン酸カリウム 200g/l
・pH 9
・浴温 40℃
・電流密度 5A/dm2
〔クロメート処理〕
・CrO3 1g/l
・浴温 35℃
・電流密度 8A/dm2
〔シランカップリング剤処理〕
・γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 5g/l溶液を塗布
【0099】
(例4:比較例30)
例1で使用した圧延銅箔基材の片面に、特開2007−007937号公報に教示されたNiめっき処理、クロメート処理、及び、シランカップリング剤処理をそれぞれ以下の条件で施した。
〔Niめっき処理〕
・NiSO4/7H2O 300g/l(Ni2+として)
・H3BO3 40g/l
・浴温 25℃
・電流密度 1.0A/dm2
〔クロメート処理〕
・CrO3 1g/l
・浴温 25℃
・電流密度 2.0A/dm2
〔シランカップリング剤処理〕
・3−アミノプロピルトリエトキシシラン 0.3%溶液を塗布
【0100】
(例5:実施例44〜107:エッチングによる回路形状)
例1で良好な密着性が得られた実施例3、9、21、24及び39の銅箔の未処理面側に付着している薄い酸化膜を逆スパッタにより取り除き、Au、Pt又はPdのターゲットをスパッタリングすることにより、各金属層を形成した。被覆層の厚さは成膜時間を調整することにより変化させた。成膜時間を除く他の条件は例1の条件で行った。さらにこれらの表面処理とは反対面に例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次にAu、Pt又はPdの各被膜を成膜した面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
【0101】
<エッチング条件>
・塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
・液温:50°C
・スプレー圧:0.15MPa
(50μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=33μm/17μm
・仕上がり回路トップ(上部)幅:15μm
・エッチング時間:10〜130秒
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路トップ(上部)幅:10μm
・エッチング時間:30〜170秒
・エッチング終点の確認:時間を変えてエッチングを数水準行い、光学顕微鏡で回路間に銅が残存しなくなるのを確認し、これをエッチング時間とした。
【0102】
<エッチングファクターの測定条件>
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点をP点とし、このP点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図2に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅箔の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
【0103】
(例6:実施例108〜110:耐熱層の効果)
以下の条件で18μm厚の圧延銅箔にZnめっきを施し、これとは反対面に実施例3の表面処理を、Znめっきを行った面にAuを2nm、スパッタリングで蒸着させた。さらに、実施例3の表面処理が施された面に例1の手順でポリイミドフィルムを接着させ、これとは反対面に例5の手順で回路を印刷し、エッチングで回路を形成した。
<Znめっき>
・Zn:1〜10g/L
・pH:3〜3.7
・液温:25〜60℃
・電流密度:1〜15A/dm2
・時間:1〜10秒
【0104】
(例7:比較例31〜45:Au、Pd、Ptの付着量)
例1で使用した実施例9、21、24及び39の反対面に、例5と同様にAu、Pd又はPtの各層をスパッタリングで形成し、エッチングで回路を形成した。
【0105】
(例8:比較例46:従来技術との比較(絶縁基板との接着面を粗化処理))
片面に粗化処理された18μm箔の圧延銅箔の粗化処理面とは反対面に例5と同様にPd層を2nm成膜した。次にこの銅箔の粗化処理面にポリイミドフィルムを接着させ、Pd層が成膜された面には例5の手順で回路を印刷し、エッチングで回路を形成した。
【0106】
(例9:比較例47:従来技術との比較(S面Ni処理))
18μm厚の圧延銅箔の片面に次の条件でNiめっきを施した後、反対面に実施例2の表面処理を施し、さらにこの面に例1の手順でポリイミドフィルムを接着させた。この後、Niめっきを施した面に例3の手順で回路を印刷し、エッチングで回路を形成した。
<Niめっき>
・Ni:25g/L
・pH:3.2
・液温:25〜60℃
・電流密度:30A/dm2
・時間:3秒
【0107】
(例10:比較例48:ブランク材)
18μm厚の圧延銅箔の片面に例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次に反対面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を例5の条件で実施した。
例1〜10の各測定結果を表2〜11に示す。
【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

【0113】
【表7】

【0114】
【表8】

【0115】
【表9】

【0116】
【表10】

【0117】
【表11】

【0118】
(実施例1〜43)
実施例1〜2、5〜43は、いずれも良好なピール強度及びエッチング性を有している。また、実施例3及び4はエッチング性が前述実施例に比べてやや劣ったものの、ピール強度は良好であった。
また、図3に実施例16の銅箔(ポリイミドワニス硬化相当の熱処理後)のXPSによるデプスプロファイルを示す。Cr層内では表層に酸化物Cr層が存在し、その直下に金属Crの層が存在している。酸化物Cr及び金属Crの濃度が最大となる表層からの距離は互いに異なるので、両者は2層に分離しているといえる。表層から1nmの範囲内では、電気めっきと異なり、酸化物Crの原子濃度比は20%を超えていた。その他の実施例でも表層近傍において酸化物Crの原子濃度比は20%を超えていた。また、いずれの実施例においても、表層までCu原子の拡散は認められなかった。これはCr層の直下にCu原子の拡散防止のための中間層を設けた効果であると推定される。
【0119】
(実施例44〜110)
実施例44〜110ではいずれも矩形方に近い断面の回路を形成することができた。
またAu層の下にZn層を設けた実施例108〜110では、Zn層をAu層の下地に設けていない実施例45よりもさらに矩形方に近い断面の回路を形成することができた。
図4に、実施例48により形成された回路の写真およびその断面写真を示す。
【0120】
(比較例1〜30)
比較例1は、Crの被覆量が18μg/dm2未満であり、ピール強度が不良であった。
比較例2は、Crの被覆量が180μg/dm2超であり、エッチング性が不良であった。
比較例3〜28は、Crの被覆量が18〜180μg/dm2の範囲内であったが、中間層に用いた各種元素に係る被覆量に起因して、各種ピール強度又はエッチング性が不良であった。
比較例29及び30は、それぞれ、耐熱、耐湿ピール強度が不良であった。図5及び6に示した比較例20及び30の銅箔のXPSによるデプスプロファイルから、表層から0〜1nmの範囲における3価のCr量が少なかったためだと推定される。
【0121】
(比較例31〜48)
比較例31〜45ではAu、Pt又はPdの付着量がそれぞれ1000μg/dm2、1050μg/dm2、600μg/dm2を超えていたために、矩形方の断面の回路を形成することができなかった。ここで、例として、図7に、比較例33により形成された回路の写真を示す。
比較例46では絶縁基板との接着面に粗化処理が施されているので、基板側の銅箔(粗化粒子)をエッチングするのに時間がかかり、矩形の断面の回路を形成することができなかった。
比較例47ではNiがAu、Pt、Pdよりも腐食速度が低いので、矩形の断面の回路を形成することができなかった。
比較例48は銅箔の両表面が未処理であるブランク材であり、矩形方の断面の回路を形成することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔基材と、該銅箔基材における一方の表面の少なくとも一部を被覆する第1の被覆層と、他方の表面の少なくとも一部を被覆する第2の被覆層とを備えたプリント配線板用銅箔であって、
前記第1の被覆層にはCrが18〜180μg/dm2の被覆量で存在し、該第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下で、∫f2(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が20%以上で、区間[1.0、2.5]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たし、
前記第2の被覆層が、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含むプリント配線板用銅箔。
【請求項2】
前記第2の被覆層に含まれる金属が、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上である請求項1に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項3】
前記第2の被覆層における白金の付着量が1050μg/dm2以下、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下、金の付着量が1000μg/dm2以下である請求項2に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項4】
前記第2の被覆層における白金の付着量が15〜1050μg/dm2、パラジウムの付着量が10〜600μg/dm2、金の付着量が10〜1000μg/dm2である請求項3に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項5】
前記第2の被覆層における白金の付着量が20〜400μg/dm2、パラジウムの付着量が20〜250μg/dm2、金の付着量が20〜400μg/dm2である請求項4に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項6】
前記第1の被覆層にはCrが30〜145μg/dm2の被覆量で存在する請求項1〜5のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項7】
前記第1の被覆層にはCrが36〜75μg/dm2の被覆量で存在する請求項6に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項8】
前記第1の被覆層が、前記銅箔基材表面から順に積層した、金属の単体又は合金からなる中間層、及び、Crからなる表層で構成され、
前記中間層が、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、V、Sn、Mn及びCrの少なくともいずれか1種を含む請求項1〜7のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項9】
前記中間層が、Ni、Mo、Ti、Zn及びCoのいずれか1種の単体で構成され、該中間層には、Ni、Mo、Ti、Zn及びCoのいずれか1種が15〜1030μg/dm2の被覆量で存在する請求項8に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項10】
前記中間層には、Niが15〜440μg/dm2、Moが25〜1030μg/dm2、Tiが15〜140μg/dm2、Znが15〜750μg/dm2、又は、Coが25〜1030μg/dm2の被覆量で存在する請求項9に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項11】
前記中間層が、Ni、Zn、V、Sn、Mn、Cr及びCuの少なくともいずれか2種の合金で構成され、該中間層には、Ni、Zn、V、Sn、Mn及びCrのいずれか2種が20〜1700μg/dm2の被覆量で存在する請求項8に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項12】
前記中間層が、Niと、Zn、V、Sn、Mn及びCrのいずれか1種とからなるNi合金で構成された請求項8に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項13】
前記中間層が、被覆量が15〜1000μg/dm2のNi及び5〜750μg/dm2のZnからなるNi−Zn合金、合計被覆量が20〜600μg/dm2のNi及びVからなるNi−V合金、合計被覆量が18〜450μg/dm2のNi及びSnからなるNi−Sn合金、被覆量が15〜450μg/dm2のNi及び5〜200μg/dm2のMnからなるNi−Mn合金、被覆量が20〜440μg/dm2のNi及び5〜110μg/dm2のCrからなるNi−Cr合金で構成された請求項12に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項14】
前記中間層が、Cuと、Zn及びNiのいずれか1種又は2種とからなるCu合金で構成された請求項8に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項15】
前記中間層が、Znの被覆量が15〜750μg/dm2であるCu−Zn合金、Ni被覆量が15〜440μg/dm2であるCu−Ni合金、又は、Ni被覆量が15〜1000μg/dm2且つZn被覆量が5〜750μg/dm2であるCu−Ni−Zn合金で構成された請求項14に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項16】
前記第1の被覆層の断面を透過型電子顕微鏡によって観察すると最大厚さが0.5〜12nmであり、最小厚さが最大厚さの80%以上である請求項1〜15のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項17】
ポリイミド硬化相当の熱処理を行ったとき、前記第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下で、∫f2 (x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が20%以上で、区間[1.0、2.5]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たす請求項1〜16のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項18】
ポリイミド硬化相当の熱処理が行われたプリント配線板用銅箔であって、前記第1の被覆層のXPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とすると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下で、∫f2 (x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が20%以上で、区間[1.0、2.5]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0を満たす請求項1〜17のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項19】
前記第1の被覆層を介して絶縁基板が形成されたプリント配線板用銅箔に対し、該絶縁基板を該第1の被覆層から剥離した後の該第1の被覆層の表面を分析したとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の金属クロムの原子濃度(%)をf1(x)とし、酸化物クロムの原子濃度(%)をf2(x)とし、全クロムの原子濃度(%)をf(x)とし(f(x)= f1(x)+ f2(x))、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をk(x)とし、金属クロムの濃度が最大となる表層からの距離をFとすると、区間[0、F]において、0.1≦∫f1(x)dx/∫f2(x)dx≦1.0で、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx + ∫k(x)dx)が10%以下を満たす請求項1〜18のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項20】
前記第2の被覆層が、白金合金、パラジウム合金又は金合金で構成され、該第2の被覆層において、白金、パラジウム又は金が50質量%を超えて含まれる請求項2〜19のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項21】
前記第2の被覆層が、白金合金、パラジウム合金又は金合金で構成され、該合金が亜鉛、リン、ホウ素、モリブデン、タングステン、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種以上の元素を含む請求項2〜20のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項22】
前記銅箔基材と前記第2の被覆層との間に、耐熱層を備えた請求項1〜21のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項23】
前記耐熱層は、亜鉛又は亜鉛合金で構成され、
前記亜鉛合金は、亜鉛と、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上とで構成される請求項22に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項24】
前記耐熱層の亜鉛の付着量が30〜1000μg/dm2である請求項23に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項25】
プリント配線板はフレキシブルプリント配線板である請求項1〜24のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項26】
圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種の金属単体層、又は、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種を主成分とする合金層を形成して銅張り積層板を作製する工程と、
前記銅張り積層板を塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングし、銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程と、
を含む電子回路の形成方法。
【請求項27】
請求項1〜25のいずれかに記載の銅箔で構成された圧延銅箔又は電解銅箔を準備する工程と、
前記銅箔の第2の被覆層をエッチング面として銅張積層板を作製する工程と、
前記銅張り積層板を塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングし、銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程と、
を含む電子回路の形成方法。
【請求項28】
請求項1〜25の何れかに記載の銅箔を備えた銅張積層板。
【請求項29】
前記銅箔がポリイミドに接着している構造を有する請求項28に記載の銅張積層板。
【請求項30】
請求項28又は29に記載の銅張積層板を材料としたプリント配線板。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−166018(P2011−166018A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29062(P2010−29062)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】