説明

ペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法、電子機能素子材料として用いられるペロブスカイト型酸化物、ペロブスカイト型酸化物を用いた電子機能素子及び電子装置

【課題】モット絶縁体であるペロブスカイト型酸化物の絶縁体相−金属相間の相転移を容易に誘起することができるペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法を提供する。
【解決手段】本発明のペロブスカイト型酸化物の相転移を誘起するための相転移誘起方法は、絶縁体相にあるペロブスカイト型酸化物に、これまでの数kV/cmよりも2桁低い40V/cm〜80V/cm程度の電場を印加することで、絶縁体相にあるペロブスカイト型酸化物を金属相に相転移させると共に、電場の印加により金属相に相転移したペロブスカイト型酸化物を冷却させることで、常磁性金属相にあるペロブスカイト型酸化物を強磁性金属相に相転移させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ca2RuO4等のモット絶縁体であるペロブスカイト型酸化物の相転移を誘起するための相転移誘起方法、電子機能素子材料として用いられるペロブスカイト型酸化物、ペロブスカイト型酸化物を用いた電子機能素子及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新奇の量子相転移現象の探索は、現在の物理学の重要なテーマの1つである。また、量子相転移現象には、磁気記録媒体等の電子デバイスへの応用が期待されている。
【0003】
ところで、超伝導、強磁性、モット転移等の量子相転移現象を実現するためには、高圧力や高磁気等といった特殊な設備環境を作り出さなければならない。このため、このような量子相転移現象の実現には大型の圧力装置や磁気装置、高度に熟練した圧力技術や磁気技術が必要とされている。
【0004】
また、そのように作り出される極限環境の下で量子相転移現象を測定可能な実験手段は、現在、非常に限られている。
【0005】
このため、高圧力、高磁気等の極限環境の下で現れる量子相転移現象を実用化することは、現実には、非常に困難な状況になってしまっている。
【0006】
このような状況を考慮して、近年、光や電場を物質に印加することにより、物質のキャリア数や電子相関を制御しようという試みが盛んに研究されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0007】
光や電場を物質に印加することで量子相転移現象を誘起することができれば、上述したような、高度な圧力技術や特別な実験環境を必要としなくても、その量子相転移現象を測定するための実験が可能となる。さらに、光や電場の制御は圧力や磁気の制御と比較して容易であり、このため、電子デバイス応用の可能性が飛躍的に増加する。
【0008】
ところが、現実には、電場で電荷注入し、超伝導、強磁性、モット転移等の量子相転移を誘起することは容易なことではない。もちろん、電場で量子相転移現象を誘起することに成功できれば、電場が圧力に変わる外部パラメータとして有力な実験手法になることは間違いない。
【0009】
一方、電場で物質の磁性(強磁性)を制御すること、すなわち、Electromagnetsが様々な物質で報告されている。そして、近年、強誘電体に電場を印加することで強磁性が発生する、いわゆるマルチフェロイクスが熱く研究されている。しかし、これまで発見されてきた物質は絶縁体であり、しかも強磁性の誘起には強電場を必要とするものであった。
【0010】
例えば、特許文献1には、金属元素Mと6つの酸素OからなるMO6八面体から構成されるペロブスカイト型酸化物またはその類縁の酸化物におけるMO6八面体同士の相対的な配置を、圧力印加により調節することによって、電気伝導性や磁性等の電子状態を制御することができる、結晶構造歪による固体電子物性の制御方法が記載されている。
【0011】
この結晶構造歪による固体電子物性の制御方法では、ペロブスカイト型酸化物の結晶構造の構成要素であるMO6八面体が相対的にどのようにネットワークを作っているかに着目し、その相対位置によって、電気伝導性や磁性を制御している。
【0012】
そして、この制御方法では、そのMO6八面体同士の相対的な配置を調節するための具体的手法として、圧力を印加する手法が具体的に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−75415号公報(平成16年3月11日公開)
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】井上公、「遷移金属酸化物単結晶への電界効果ドーピング」、応用物理、社団法人応用物理学会、2005年7月、74巻、7号、p. 944-949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、電場誘起のモット転移も、それだけでも興味あるテーマである。それは、モット転移近傍では様々な量子臨界現象が起こるからである。また、何桁もの急激な抵抗変化はスイッチング素子として最適である。
【0016】
上述したように、モット転移等の量子相転移現象は、元素置換による電荷注入、あるいは、圧力印加による電子相関の制御によって行なわれてきた。
【0017】
しかし、圧力印加は、技術的困難さと共に、圧力下で測定できる手段が限られてしまうといった課題があった。
【0018】
また、元素置換は、同時に電子の乱れも物質に導入してしまうので、低温での本質的量子現象が隠されてしまうといった課題もあった。
【0019】
これに対し、電場によるキャリアの制御ができれば、量子臨界現象を容易に探索できるだけでなく、電子デバイス等への応用の面でも波及効果が大きい。
【0020】
これまで、電場誘起のモット転移は、Ni酸化物や有機物では報告されている。しかし、しきい電場は酸化物で数kV/cm、有機物で4kV/cmと、金属化するにはかなりの高電圧が必要である。さらに、電場誘起した金属相で超伝導や強磁性等の量子化相転移現象(基底状態)を観測した例は未だにない。
【0021】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、モット絶縁体であるペロブスカイト型酸化物の絶縁体相−金属相間の相転移を容易に誘起することができるペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法、電子機能素子材料として用いられるペロブスカイト型酸化物、ペロブスカイト型酸化物を用いた電子機能素子及び電子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明者等は、圧力下でモット転移した後に低温で遍歴強磁性を示すモット絶縁体Ca2RuO4を用いて鋭意検討した結果、モット絶縁体Ca2RuO4に対し、乾電池1個に満たないわずかな電場を加えることで、絶縁破壊、すなわち、絶縁体−金属転移を引き起こし、さらに、その後、印加電圧を電池2〜3個程度の電圧値まで上昇させ、冷却することにより金属強磁性が出現することを明らかにした。
【0023】
すなわち、本発明におけるペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法は、ペロブスカイト型酸化物の相転移を誘起するための相転移誘起方法であって、前記ペロブスカイト型酸化物は、組成式Axyzで表されるペロブスカイト型結晶構造を有し、前記組成式Axyzにおいて、前記元素Aは、アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記元素Bは、遷移元素から選ばれる少なくとも1種の元素のうち、4d軌道または5d軌道に存在する電子が10個未満である元素である場合において、絶縁体相にあるペロブスカイト型酸化物に所定の電圧を与えることにより、前記ペロブスカイト型酸化物に所定の電場を印加する電場印加ステップと、前記電場印加ステップにおいて前記ペロブスカイト型酸化物に印加される前記電場を用いて、前記絶縁体相にある前記ペロブスカイト型酸化物を金属相に相転移させる第1の相転移誘起ステップとを含む。
【0024】
上記のペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法では、絶縁体相にあるペロブスカイト型酸化物に所定の電圧を与えてペロブスカイト型酸化物に所定の電場を印加し、その印加電場を用いて、ペロブスカイト型酸化物を絶縁体相から金属相に相転移させている。
【0025】
このため、従来では圧力印加や元素置換によって行なわれていたペロブスカイト型酸化物における絶縁体相−金属相間の相転移、つまり、モット転移を、電場を印加することにより誘起することができる。
【0026】
すなわち、ペロブスカイト型酸化物への電場印加は、圧力印加や元素置換と比較して、より簡単な装置構成により実現することができるので、ペロブスカイト型酸化物のモット転移を従来と比べて容易に行なうことが可能となる。
【0027】
前記第1の相転移誘起ステップにおいて前記金属相に相転移した前記ペロブスカイト型酸化物の雰囲気中の温度を降温する降温ステップと、前記降温ステップにおいて前記ペロブスカイト型酸化物を冷却させて、前記金属相にある前記ペロブスカイト型酸化物を強磁性金属相に相転移させる第2の相転移誘起ステップとをさらに含むことが好ましい。
【0028】
この場合、金属相に相転移したペロブスカイト型酸化物の雰囲気中の温度を降温し、ペロブスカイト型酸化物を冷却させて、金属相にあるペロブスカイト型酸化物を強磁性金属相に相転移させることができる。
【0029】
前記ペロブスカイト型酸化物を前記金属相に相転移させるときの雰囲気中の温度は、356K以下であることが好ましい。
【0030】
前記ペロブスカイト型酸化物を前記金属相に相転移させるために印加すべき前記電場のしきい値の設定範囲は、雰囲気中が常温であるときに40V/cm以上80V/cm以下であることが好ましい。
【0031】
前記ペロブスカイト型酸化物が前記金属相に相転移した後においては、前記ペロブスカイト型酸化物に印加される前記電場が25V/cm以下になるまでは前記金属相が維持されることが好ましい。
【0032】
前記ペロブスカイト型酸化物を前記強磁性金属相に相転移させるときの雰囲気中の温度は、25K以下であることが好ましい。
【0033】
前記ペロブスカイト型酸化物の組成式は、A3Ru27、A2RuO4、ARuO3、A4Ru310、A2IrO4、A3Ir27及びA2RhO4のうちのいずれかであって、且つ、前記元素Aは、Ca、Sr、Ba、Laのうちのいずれかであることが好ましい。
【0034】
本発明におけるペロブスカイト型酸化物は、電子機能素子の材料として用いられるペロブスカイト型酸化物であって、前記ペロブスカイト型酸化物は、組成式Axyzで表されるペロブスカイト型結晶構造を有し、前記組成式Axyzにおいて、前記元素Aは、アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記元素Bは、遷移元素から選ばれる少なくとも1種の元素のうち、4d軌道または5d軌道に存在する電子が10個未満である元素である場合において、前記ペロブスカイト型酸化物は、自身に印加される電場を用いて、絶縁体相と金属相との間を相転移することにより、前記電子機能素子の機能を実現する。
【0035】
上記のペロブスカイト型酸化物では、電場印加により絶縁体相と金属相との間を相転移することができるので、この電場印加による相転移を用いた新たな電子機能素子を実現することができる。
【0036】
前記ペロブスカイト型酸化物は、前記絶縁体相から前記金属相に相転移した後において、自身の温度の昇降を用いて、常磁性金属相と強磁性金属相との間を相転移することにより、前記電子機能素子の機能を実現することが好ましい。
【0037】
この場合、温度の昇降により常磁性金属相と強磁性金属相との間を相転移することができるので、この温度の昇降による相転移を用いた新たな電子機能素子を実現することができる。
【0038】
本発明における電子機能素子は、上記のペロブスカイト型酸化物を用いて所定の機能を実現する。
【0039】
上記の電子機能素子では、ペロブスカイト型酸化物の相転移を用いた新たな電子機能素子を実現することができる。
【0040】
本発明における電子装置は、上記のペロブスカイト型酸化物より成る可変抵抗部を有する電子機能素子と、前記可変抵抗部に印加する電圧を調整する電圧調整手段と、前記電子機能素子周辺の雰囲気温度を調整する温度調整手段と、を備える。
【0041】
上記の電子装置では、電圧調整手段の電圧調整及び温度調整手段の温度調整により、ペロブスカイト型酸化物の相転移条件をフレキシブルに変更することができる。
【0042】
この場合、前記温度調整手段は、前記雰囲気温度を、前記ペロブスカイト型酸化物が金属体から絶縁体に相転移する温度より低い温度に維持し、前記電圧調整手段は、前記ペロブスカイト型酸化物が前記絶縁体から前記金属体に相転移する第1の電圧より高い電圧を、前記可変抵抗部に印加するか、前記ペロブスカイト型酸化物が前記絶縁体から前記金属体に相転移する第2の電圧より低い電圧を、前記可変抵抗部に印加することにより、前記可変抵抗部の抵抗値を変更する、こととしてもよい。
【0043】
このようにすれば、上記の電子装置を、揮発性のメモリとして動作させることができる。
【0044】
また、前記温度調整手段は、前記雰囲気温度を、前記ペロブスカイト型酸化物が前記絶縁体から前記金属体に相転移する第1の温度より低く、前記ペロブスカイト型酸化物が前記金属体から前記絶縁体に相転移する第2の温度より高い温度に維持し、前記電圧調整手段は、前記ペロブスカイト型酸化物が絶縁体から金属体に相転移する第1の電圧より高い電圧を、前記可変抵抗部に印加することにより、前記可変抵抗部の抵抗値を変更する、こととしてもよい。
【0045】
このようにすれば、上記の電子装置を、不揮発性のメモリとして動作させることができる。
【0046】
また、前記可変抵抗部に加える圧力を調整する圧力調整手段をさらに備える、こととしてもよい。
【0047】
圧力調整手段の圧力調整により、ペロブスカイト型酸化物の相転移条件をフレキシブルに変更することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明のペロブスカイト型酸化物の相転移を誘起するための相転移誘起方法は、以上のように、絶縁体相にあるペロブスカイト型酸化物に所定の電圧を与えることにより、前記ペロブスカイト型酸化物に所定の電場を印加する電場印加ステップと、前記電場印加ステップにおいて前記ペロブスカイト型酸化物に印加される電場を用いて、前記絶縁体相にある前記ペロブスカイト型酸化物を金属相に相転移させる第1の相転移誘起ステップとを含む方法である。
【0049】
それゆえ、モット絶縁体であるペロブスカイト型酸化物の絶縁体相−金属相間の相転移を容易に誘起することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物の相転移を誘起するための相転移誘起方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物の相転移を評価するための測定回路の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物の電流−電圧特性を示すグラフ図である。
【図4】図4(A)は、単結晶試料に歪みを加えたときの本発明の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物のX線回折結果を示すグラフ図であり、図4(B)は、単結晶試料に歪みを加えていないときの本発明の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物のX線回折結果を示すグラフ図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物の抵抗の温度依存性を示すグラフ図である。
【図6】図5のグラフ図における温度が0K〜30K付近を拡大したグラフ図である。
【図7】従来のペロブスカイト型酸化物の抵抗の温度依存性を示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物の磁化測定結果を示すグラフ図である。
【図9】本発明の実施の形態2における電界効果トランジスタの構成を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3におけるMRAMの基本的な素子の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態3におけるMRAMの他の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態4における電子機能素子の構造を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態4におけるメモリ装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図12の電子機能素子のペロブスカイト型酸化物層の抵抗の温度依存性の一例を示すグラフである。
【図15】絶縁体相におけるペロブスカイト型酸化物層の電圧−電流特性の一例を示すグラフである。
【図16】双安定相におけるペロブスカイト型酸化物層の電圧−電流特性の一例を示すグラフである。
【図17】図12の電子機能素子のペロブスカイト型酸化物層の抵抗の圧力依存性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の実施の形態について図1〜図17に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0052】
〔実施の形態1〕
先ず、本発明の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物について説明する。
【0053】
本発明の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物の単結晶は、公知の単結晶作製法、例えばFZ(フローティング・ゾーン)法等を用いて作製することができる。
【0054】
また、本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物を層状で用いる場合、LPE(リキッド・フェーズ・エピタキシー)法を用いる、あるいは、低ガス圧雰囲気で真空成膜法により形成することが好ましい。
【0055】
真空成膜法の中では、MBE(モレキュラー・ビーム・エピタキシー)法、レーザーアブレーション法や、高周波マグネトロンスパッタリング、直流スパッタリング、対向ターゲットスパッタリング、イオンビームスパッタリング等に代表されるスパッタリング法等が好ましい。
【0056】
これら成膜法で作製する場合、エピタキシャル成長をさせるために、基板温度を少なくとも550℃以上750℃以下とすること、あるいは、成膜後にこれらの温度近傍で熱処理することが好ましい。
【0057】
また、面内の一軸方向に異方性を形成するために、基板に対して一方向に磁界をかけながら成膜を行なうこと、一方向に磁界をかけながら350℃以下程度で熱処理すること、あるいは、単結晶基板の選択により特定方向に配向成長させること等が好ましい。
【0058】
本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物は、組成式Axyzで表されるペロブスカイト型結晶構造を有している。そして、この組成式Axyzにおいて、元素Aは、アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素である。
【0059】
また、元素Bは、遷移元素から選ばれる少なくとも1種の元素のうち、4d軌道または5d軌道に存在する電子が10個未満である元素である。
【0060】
具体的には、本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物は、その組成式が、A3Ru27、A2RuO4、ARuO3、A4Ru310、A2IrO4、A3Ir27及びA2RhO4のうちのいずれかであって、且つ、元素Aが、Ca、Sr、Ba、Laのうちのいずれかであるであることが好ましく、Ca2RuO4であることがより好ましい。
【0061】
次に、本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物の相転移を誘起するための相転移誘起方法について説明する。図1は、本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0062】
図1に示すように、本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法は、ペロブスカイト型酸化物に対する絶縁体相から金属相への第1の相転移を誘起する第1の相転移誘起ステップ(ステップS101)と、ステップS101において金属相に相転移したペロブスカイト型酸化物に対する常磁性金属相から強磁性金属相への第2の相転移を誘起する第2の相転移誘起ステップ(ステップS102)と、を含んでいる。
【0063】
本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法では、上記のステップS101において誘起される第1の相転移は、ペロブスカイト型酸化物に対して電場を印加することにより実現されている。背景技術の欄でも述べたように、従来では、ペロブスカイト型酸化物における絶縁体相から金属相への相転移、すなわち、公知のモット転移は、元素置換による電荷注入、あるいは、圧力印加による電子相関の制御によって行なわれてきた。元素置換による電荷注入による場合であれば、同時に電子の乱れも物質に導入してしまい、低温での本質的量子現象が隠されてしまうといった課題があった。また、圧力印加による場合であれば、圧力印加の技術的困難さと共に、圧力下で測定できる手段が限られてしまうといった課題があった。
【0064】
一方、本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法によれば、ペロブスカイト型酸化物の絶縁体相から金属相への第1の相転移を電場の印加により実現することができる。この電場印加は、圧力印加や元素置換と比較して、より簡単な設備環境を用いて行なうことができる。
【0065】
さらに、本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法では、ペロブスカイト型酸化物の絶縁体相から金属相への第1の相転移を非常に弱い電場の印加により実現することができる。このため、この電場印加は、Ni酸化物や有機物のモット転移を電場印加により行なう場合と比較して、より簡単な設備環境を用いて行なうことができる。
【0066】
したがって、このペロブスカイト型酸化物の絶縁体相から金属相への第1の相転移である新奇の量子相転移現象を用いることにより、従来にはなかった新規の電子機能素子を実現することができる。
【0067】
次に、本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法では、上記のステップS102において誘起される第2の相転移は、金属相に相転移したペロブスカイト型酸化物を徐々に温度を降下させると共に、そのペロブスカイト型酸化物に印加する電場を徐々に大きくすることにより実現されている。
【0068】
したがって、このペロブスカイト型酸化物の絶縁体相から金属相への第1の相転移である新奇の量子相転移現象を用いることにより、又は第1の相転移である新奇の量子相転移現象と、金属相から強磁性金属相への第2の相転移である新奇の量子相転移現象とを組み合わせて用いることにより、従来にはなかった新規の電子機能素子を実現することができる。
【0069】
(実施例1)
本実施例1では、本実施の形態におけるペロブスカイト型酸化物に含まれるCa2RuO4を公知のFZ法を用いて作製し、単結晶試料を準備した。その試料の作製条件を下記に示す。
[作製条件]
試料:原料棒(酸化物混合原料2CaCO+1.33RuO)を1350℃で12時間焼結し、赤外線集中加熱炉を用いたFZ法で約10mm/hの成長速度で単結晶試料を成長させたもの
サイズ:(径;φ)5(mm)×(長さ;L)50(mm)
また、本実施例1では、出来上がった試料を加工(適当なサイズにカット、劈開)した後、以下の測定に用いた。測定に用いた代表的な試料のサイズとしては、面積0.002cm、厚さ0.0075cmであった。
【0070】
次に、図2に示すように、上記の試料と負荷抵抗とを電気的に直列接続した測定回路10を構成し、この測定回路10を用いて、この試料に対する電流−電圧特性を測定した。
【0071】
ここで、この測定回路10においては、負荷抵抗11は0Ω〜80Ω程度であり、試料に急激な電流が流れ込むことを防止するために接続されている。
【0072】
なお、この負荷抵抗11の値やその有無は、使用する電源によって異なるものであることは言うまでもない。したがって、試料の絶縁破壊によりリミッターを越える電流が流れる場合は必要となるが、高電圧・大電流に対応できる電源を使用したときには、必ずしも必要ではない。例えば、後述する図3、図5、図6の測定では、負荷抵抗11は不要であり、図4(A)の測定では、負荷抵抗11の値は50Ω〜100Ωとなる。
【0073】
また、2端子測定のための2つの電極が、試料12の長さ方向の両端部に接触されており、このため、2つの電極間の距離はLとなる。したがって、試料12に印加される電場は、試料に印加される電圧をこの距離Lで割ったものとなる。
【0074】
この測定回路10には、電圧源13と電流計14とから構成された電場印加装置15が直列接続されており、この電場印加装置15の電圧源13から供給される電圧が測定回路10全体に印加される。また、電場印加装置15の電流計14は、電圧源13から供給される電圧が測定回路10に印加されると、測定回路10に流れる電流を測定する。
【0075】
負荷抵抗11の両端部には、電圧計16が接続されており、この電圧計16を用いて負荷抵抗11の両端部間の電圧を測定する。
【0076】
この測定回路10では、このようにして測定回路10を流れる電流及び負荷抵抗11の両端部の電圧を測定し、それらの測定結果に基づいて試料12の電流−電圧特性を評価する。
【0077】
次に、試料12の電流−電圧特性の評価結果について説明する。
【0078】
この評価においては、温度を300K(常温)とし、電場印加装置15の電圧源13から供給される電圧を1mV/秒で上昇させながら、この測定回路10に印加した。図3に、その電流−電圧特性を測定した結果を示す。
【0079】
図3に示すように、印加電圧が0.6Vまでに達する以前では、電流はほとんど流れることがなく、試料12の電流−電圧特性から算出される、試料12の抵抗は約200Ωであった。
【0080】
ところが、印加電圧が0.6Vに達した時点で、すなわち、印加電場が80V/cmに達した時点で、この測定回路10に急激に電流が流れ始め、その後、印加電圧の上昇に伴い、流れる電流も上昇した。試料12の抵抗としては、印加電圧が0.6Vに達する以前と比較して、2桁も小さくなった。
【0081】
このことから、この試料12が乾電池1個に満たないわずかな電圧である0.6Vで金属化したことが分かる。
【0082】
次に、印加電圧が0.6Vに達した時点で金属化し、その金属化の後、印加電圧を0.8Vまで上昇させた後、今度は、印加電圧を0.8Vから電圧を減少させた。このときの温度は、300Kである。
【0083】
図3に示すように、印加電圧が0.2Vに達するまでは、すなわち、印加電場が25V/cmに達するまでは、試料12が金属状態を維持していることが分かる。
【0084】
このようにして、本発明者等は、モット絶縁体Ca2RuO4に乾電池1個に満たないわずかな電圧を印加することにより、モット絶縁体Ca2RuO4に絶縁破壊、すなわち、絶縁体−金属転移を引き起こすことができることを明らかにした。
【0085】
また、図3に示すように、試料12の電流−電圧特性の曲線はヒステリシスを描いている。この大きなヒステリシスの存在は、モット絶縁体Ca2RuO4への電圧印加により誘起される絶縁体−金属転移が1次相転移であることを意味している。
【0086】
さらに、図3に示した評価結果では、印加電圧を0.8Vから0.2Vまで減少させた時点で、試料12の破壊が起こっている。この破壊の発生は、印加電圧が0.2Vに達したとき、試料12の結晶系である斜方晶系が、c軸が長く、体積の小さなL−Pbcaから、c軸が短く、体積の大きなS−Pbcaに構造転移したことを示唆している。
【0087】
すなわち、試料12の破壊の発生時に、この試料12は、L−Pbcaを持つ金属相からS−Pbcaを持つ絶縁体相へ相転移していると考えることができる。
【0088】
このことは、次の事柄からも裏付けられる。すなわち、従来、モット絶縁体Ca2RuO4は加圧や冷却による相転移に伴ってモット転移(金属化)すると共に、金属相から絶
縁体相に戻るときの体積膨張に伴って単結晶試料を構成するモット絶縁体Ca2RuO4が破壊されてしまうことが知られている。
【0089】
したがって、電圧印加によりモット転移(金属化)した上記の試料に起こった破壊が、金属相から絶縁体相への構造転移に起因するものと考えられるからである。
【0090】
ここで、図4(A)に、上記の電流−電圧特性の評価に用いた試料と同一の試料についてのX線回折の評価結果を示す。
【0091】
ここでは、試料に印加される電圧が0V、1.5V、2.5V、2.7V、2.8Vの各々のときにおける、X線回折結果が示されている。
【0092】
図4(A)に示すように、印加電圧が0Vであるときには、試料はc軸の短いS−Pbcaの斜方晶系を持つ絶縁体相にあることが分かる。また、印加電圧が2.8Vであるときには、試料はc軸の長いL−Pbcaの斜方晶系を持つ金属相にあることが分かる。
【0093】
さらに、印加電圧が2.5V及び2.7Vであるときには、試料はS−Pbcaの斜方晶系を持つ絶縁体相とL−Pbcaの斜方晶系を持つ金属相の2つの相が共存する2相共存相にあることが分かる。
【0094】
この2相共存相やヒステリシスの存在は、S−PbcaからL−Pbcaへの構造転移が、潜熱を伴う1次相転移であることを意味する。
【0095】
すなわち、この試料は、電圧の印加、つまり、電場の印加により、絶縁体相から金属相への相転移が誘起されている。
【0096】
なお、図4(A)に示した評価では、このような絶縁体相−金属相間の相転移は、印加電圧が1.5Vを越えた付近で起こっている。印加電圧が0Vであるとき、試料の抵抗が約200Ωであったが、1.6V以上の印加電圧により金属相が出現すると、試料の抵抗は約10Ωまで小さくなった。
【0097】
また、図4(A)に示した評価では、試料をX線の照射位置に正確に固定させるため、ガラス基板に単結晶試料を、電極材(銀ペースト)を用いて完全に固定した。これに対して、試料の電極を薄い金の蒸着膜とし、その電極に0.0025cmの金線を取り付けただけの配置、すなわち、単結晶試料に歪みが生じていない状態でも測定を行なった。これにより、図4(B)に示すような測定結果が得られた。図4(A)に示すように単結晶試料に歪みを加えた場合には、単結晶試料の結晶伸縮性が妨げられ、絶縁破壊電圧が、図4(B)の場合と比較して増大しているのがわかる。
【0098】
このことから逆に、試料にひずみを加えることで、試料の絶縁破壊電圧を制御することができると言える。したがって、例えば、圧電素子などに試料を固定し、ab面(RuO2面内)方向に試料を圧縮することで絶縁破壊電圧を減少させ、一方、ab面(RuO2面内)方向に試料が膨張または収縮することを妨げることで絶縁破壊電圧を増加させることができる。
【0099】
(実施例2)
本実施例2では、絶縁体相から金属相へ転移した試料を用いて、その抵抗の温度依存性を測定した。その降温条件は、4(K/分)である。
【0100】
ここでは、上記の実施例1において金属相に転移した試料を用い、その試料を徐々に降温させながら、試料の電流−電圧特性から抵抗を算出した。また、試料を降温させるときに印加電圧としては、4V、及び、5Vを用いて行なった。
【0101】
図5に、試料の抵抗の温度依存性を示し、図6に、図5の0K〜30K付近の拡大図を示す。
【0102】
図5及び図6に示すように、試料の印加電圧を4Vとしたときに、温度を5Kまで降温しても、試料の金属状態を維持することができた。また、印加電圧が4Vであったときには、温度が10Kに達した時点で、試料の抵抗の急激な減少が観測された。さらに、試料の金属状態を低温まで維持するために最低限必要な電圧は4Vであった。
【0103】
また、印加電圧が5Vであったときには、温度が12.5Kに達した時点で、試料の抵抗の急激な減少が観測された。
【0104】
ところで、このような試料の抵抗の減少は、公知の圧力印加によるモット転移(金属化)したモット絶縁体Ca2RuO4においても観測されている。図7は、その観測結果である。
【0105】
図7に示す観測結果は、モット絶縁体Ca2RuO4における強磁性秩序の発生による磁気散乱の減少による現象と理解されている。そして、図5及び図6に示した、試料の抵抗の急激な減少が開始する温度が、図7に示した強磁性転移温度と見事に一致している。
【0106】
この2つの温度の一致から、上記の実施例1で電圧の印加によりモット転移(金属化)したモット絶縁体Ca2RuO4において、強磁性が出現したことが分かる。
【0107】
なお、上記の観測においては、モット絶縁体Ca2RuO4における強磁性金属相への転移は10K以下の温度で出現しているが、現在観測されている圧力印加に基づく相図からは、モット絶縁体Ca2RuO4における強磁性金属相への転移は、25K以下の温度で出現することが既に実証されている。
【0108】
このことから、本実施の形態における電場印加に基づいて金属相に転移したモット絶縁体Ca2RuO4においても、同様に、10K以下の温度で強磁性金属相への転移が出現することが予想される。
【0109】
次に、SQUID磁化測定装置を用いて試料に出現した強磁性を直接観測した結果を図8に示す。この観測においては、磁場を0.1テスラ、温度を6Kとし、電場なし(0V/cm)と電場を加えたとき(220V/cm)の2つの条件下における磁化測定を行なった。
【0110】
図8において、横軸をスキャン幅とし、試料の位置がそのスキャン幅の中心位置である。縦軸は磁化に比例したSQUID信号(電圧)であり、凸型信号は磁場の方向に磁化が発生していることを意味する。
【0111】
図8に示すように、電場を加えることで試料に強磁性の出現を意味する大きな信号が出現した。この測定結果から求められるRu1個当たりの磁化は0.015μB/Ru‐ionであり、強磁性の出現を強く示唆するものであった。
【0112】
〔実施の形態2〕
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本発明の実施の形態2は、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物を用いた電子機能素子を説明する形態である。
【0113】
本実施の形態における電子機能素子は、公知の電界効果トランジスタにおけるシリコン導電層を置換する、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物からなる層を有する電界効果トランジスタである。
【0114】
本実施の形態における電界効果トランジスタは、ペロブスカイト型酸化物層に形成されたソース領域及びドレイン領域と、そのソース領域とドレイン領域との間に配置されたゲート構造と、を備えている。図9は、本実施の形態における電界効果トランジスタの構成を示す断面図である。
【0115】
図9に示すように、本実施の形態における電界効果トランジスタ20は、ゲート電極21と、基板26上に堆積されたペロブスカイト型酸化物層25と、ペロブスカイト型酸化物層25を挟むようにして基板26上に堆積され、互いに反対の型の高濃度な不純物イオンを有するソース領域23及びドレイン領域24と、ゲート電極21とペロブスカイト型酸化物層25との間に配置されたゲート絶縁層22と、を備えている。
【0116】
本実施の形態における電界型トランジスタの導電性チャネル層は、ペロブスカイト型酸化物層25を用いて実現されている。以下、この電界効果トランジスタの動作について説明する。
【0117】
図9において、ゲート電極21に正電圧が印加された場合には、ゲート電極21に印加された正電圧がゲート絶縁層22を介してペロブスカイト型酸化物層25に印加される。
【0118】
そして、この正電圧がペロブスカイト型酸化物層25の絶縁体相から金属相への相転移を誘起する電圧を越えると、ペロブスカイト型酸化物層25が金属化する。
【0119】
このペロブスカイト型酸化物層25の金属化により、ペロブスカイト型酸化物層25内に高導電性チャネル(図示省略)が形成される。したがって、この電界効果トランジスタ20は導通状態となる。
【0120】
すなわち、ソース領域23とドレイン領域24との間にバイアス電圧が印加される場合に、この電界効果トランジスタ20を介して電流が流れることになる。
【0121】
次に、図9において、ゲート電極21に負電圧が印加された場合には、ゲート電極21に印加された負電圧がゲート絶縁層22を介してペロブスカイト型酸化物層25に印加される。
【0122】
そして、この負電圧がペロブスカイト型酸化物層25の絶縁体相から金属相への相転移を誘起する電圧を下回ると、ペロブスカイト型酸化物層25が再び絶縁体に戻ることになる。
【0123】
このペロブスカイト型酸化物層25が絶縁体に戻ることにより、ペロブスカイト型酸化物層25内に形成されていた高導電性チャネル(図示省略)が消滅する。したがって、この電界効果トランジスタ20は非導通状態となる。
【0124】
すなわち、ソース領域23とドレイン領域24との間にバイアス電圧が印加されても、この電界効果トランジスタ20を介して電流が流れることはない。
【0125】
〔実施の形態3〕
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本発明の実施の形態3は、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物を用いた他の電子機能素子を説明する形態である。
【0126】
本実施の形態における電子機能素子は、公知の磁気ランダムアクセスメモリ(以下、単に「MRAM」と呼ぶ。)における強磁性層を置換する、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物からなる層を有するMRAMである。
【0127】
上記の実施の形態1において、本発明者等は、電圧印加によりモット転移したペロブスカイト型酸化物に強磁性が出現することを見出した。本実施の形態におけるMRAMは、本発明者等が見出したペロブスカイト型酸化物に出現する強磁性を利用するものである。
【0128】
なお、MRAMの基本となる素子として巨大磁気抵抗効果を用いた素子とトンネル磁気抵抗効果を用いた素子の2種類がある。本実施の形態では、いずれの素子についても適用可能である。
【0129】
図10は、本実施の形態におけるMRAMの基本的な素子の構成を示す斜視図である。
【0130】
図10に示すように、本実施の形態におけるMRAM30は、第1強磁性層31と、非磁性層32と、第2強磁性層33とが、この順に配置された3層構造を備えている。
【0131】
このMRAM30の第1強磁性層及び第2強磁性層31、33は、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物から構成されている。そして、このMRAM30のメモリ情報は、第1強磁性層及び第2強磁性層31、33の各スピンの向きにより保持されており、この第1強磁性層及び第2強磁性層31、33の向きが相対的に平行か反平行かによりメモリ情報の「1」、「0」を規定している。
【0132】
通常、第1強磁性層31と第2強磁性層33との相対的なスピンの向きが反平行のとき、スピンの向きが平行のときに比べて、磁気抵抗の値が大きくなる。この磁気抵抗の値の差を利用して、メモリ情報の「1」、「0」の違いを読み出すことができる。
【0133】
上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物の強磁性の出現は、上述したように、温度が10Kの付近で観測されている。このため、本実施の形態におけるMRAMは、例えば、冷凍機等の冷却装置を制御するための制御装置に搭載される記憶装置として用いることができる。
【0134】
〔実施の形態4〕
次に、本発明の実施の形態4について説明する。本発明の実施の形態4では、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物を用いた電子機能素子を備えるメモリ装置について説明する。
【0135】
本実施の形態におけるメモリ装置は、抵抗変化型メモリ(以下、単に「ReRAM」と呼ぶ)である。
【0136】
図12には、本実施の形態に係る電子機能素子100の構造が示されている。この電子機能素子100は、電界効果トランジスタ(FET)である。図12に示すように、電子機能素子100は、基板50上に形成されている。この基板50に、ソース領域51と、ドレイン領域52が形成されている。ソース領域51とドレイン領域52との間のチャンネル53の上には、ゲート絶縁膜54が形成されている。また、ソース領域51上には、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物から成る可変抵抗素子層55が積層されている。
【0137】
図12に示すように、ドレイン領域52にビット線60を接続し、ゲート絶縁膜54をワード線61に接続し、可変抵抗素子層55をソース線62に接続すれば、電子機能素子100をメモリセルとして用いることができる。
【0138】
図13には、電子機能素子100をメモリセルとするメモリ装置200の構成が示されている。メモリ装置200は、メモリセルとしての電子機能素子100、ビット線60、ワード線61、ソース線62に加え、ゲート電圧調整手段70、ソース電圧調整手段71、データ読出手段72、温度調整手段73、圧力調整手段74を備える。
【0139】
ゲート電圧調整手段70は、ワード線61に接続されている。ソース電圧調整手段71は、ビット線60、ソース線62に接続されている。データ読出手段72はビット線60に接続されている。書き込み又は読み出しを行う際に、ゲート電圧調整手段70は、ワード線61を介してゲート絶縁膜53に適切な電圧を印加する。そして、ソース電圧調整手段71は、ビット線60とソース線62を介して、可変抵抗素子層55→ソース領域51→チャンネル53→ドレイン領域52間に電圧を印加する。データ読出手段72は、ビット線60の電位に基づいて、電子機能素子100に保持されたデータを読み出す。
【0140】
温度調整手段73は、メモリ装置200の温度、すなわち電子機能素子100の周辺の雰囲気温度を調整する。圧力調整手段74は、例えば、不図示の圧電素子などを駆動して可変抵抗素子層55に圧力を加えてひずみを与える。
【0141】
このメモリ装置200は、温度調整手段73によって調整される電子機能素子100の温度によっては、ROM(Read Only Memory)としても動作するし、RAM(Random Access Memory)としても動作する。
【0142】
図14には、電子機能素子100の可変抵抗素子層55として採用されるペロブスカイト型酸化物の一例であるモット絶縁体Ca2RuO4の抵抗の温度依存性のグラフが示されている。このグラフでは、可変抵抗素子層55に0.26GPaの圧力を加えた状態で、雰囲気温度を300K以下の温度から330K以上の温度へ昇温し、続いて300K以下の温度に降温させたときのモット絶縁体Ca2RuO4の抵抗の変化の様子が示されている。
【0143】
図14に示すように、雰囲気温度を300K付近から昇温させると、モット絶縁体Ca2RuO4は、第1の温度としての328Kで金属体に相転移する。金属体に相転移した後、雰囲気温度を降温させると、モット絶縁体Ca2RuO4は、雰囲気温度が328Kより下がっても金属体のままであるが、第2の温度としての302Kで絶縁体に相転移する。
【0144】
ここで、302Kより小さい温度領域を絶縁体相Iとし、302K以上328未満を双安定相IIとし、328K以上を金属相IIIとする。絶縁体相Iと、双安定相IIとでは、モット絶縁体Ca2RuO4は、異なった電圧−電流特性を示す。
【0145】
図15には、0.26GPaの圧力を加え、雰囲気温度を301Kとしたときの、モット絶縁体Ca2RuO4の電圧−電流特性の一例が示されている。図15に示すように、印加する電圧を0Vから上げていくと、モット絶縁体Ca2RuO4は、約1.4V付近で、絶縁体から金属体に相転移する。さらに、金属体に相転移したモット絶縁体Ca2RuO4に対して印加する電圧を下げていき、その電圧が約0.5Vになると、モット絶縁体Ca2RuO4は、金属体から絶縁体に相転移する。この圧力条件及び温度条件において、モット絶縁体Ca2RuO4の電圧−電流特性は、電圧の正負によらず、対称となっている。
【0146】
この特性を利用して、圧力調整手段74により、可変抵抗素子層55に0.26GPaの圧力を加え、温度調整手段73により、雰囲気温度を絶縁体相I(例えば301K)に調整すれば、メモリ装置200を、揮発性メモリとして動作させることができる。
【0147】
電子機能素子100にデータをセットする際には、ゲート電圧調整手段70によりワード線61を介して電子機能素子100にゲート電圧を印加しつつ、ソース電圧調整手段71により、ソース線62及びビット線60を介して、可変抵抗素子層55に、第1の電圧としての約1.4V以上の電圧を印加する。これにより、可変抵抗素子層55は、金属体に遷移する。
【0148】
データをセットした後、可変抵抗素子層55には、0.5V以上1.4V未満の電源電圧が印加されている。これにより、可変抵抗素子層55の抵抗値は維持されている。したがって、ゲート電圧調整手段70によりゲート電圧を印加すれば、データ読出手段72が、ビット線60の電位を読み取ることにより、セットされたデータを読み出すことができる。
【0149】
また、データをセットした後にリセットする際には、ゲート電圧調整手段70によりワード線61を介して電子機能素子100にゲート電圧を印加しつつ、ソース電圧調整手段71によりソース線62及びビット線60を介して可変抵抗素子層55に印加する電圧を、第2の電圧としての0.5Vより低くする。これにより、可変抵抗素子層55は、絶縁体に遷移する。
【0150】
上述のように、可変抵抗素子層55には、0.5V以上1.4V未満の電源電圧が印加されている。これにより、可変抵抗素子層55の抵抗値は維持されている。したがって、ゲート電圧調整手段70によりゲート電圧を印加すれば、データ読出手段72が、ビット線60の電位を読み取ることにより、リセットされたデータを読み出すことができる。
【0151】
一方、図16には、0.26GPaの圧力を加え、雰囲気温度を310Kに調整したときの、モット絶縁体Ca2RuO4の電圧−電流特性の一例が示されている。図16に示すように、印加する電圧を0Vから上げていくと、モット絶縁体Ca2RuO4は、約1.4V付近で、絶縁体から金属体に相転移する。しかしながら、金属体に相転移したモット絶縁体Ca2RuO4に対して、印加する電圧を下げていっても、モット絶縁体Ca2RuO4は、金属体の状態を維持し続ける。この場合のモット絶縁体Ca2RuO4の電圧−電流特性は、電圧0に対して非対称となる。
【0152】
この特性を利用して、圧力調整手段74により、可変抵抗素子層55に0.26GPaの圧力を加え、温度調整手段73により、雰囲気温度を双安定相II(例えば310K)に調整すれば、メモリ装置200を、不揮発性メモリとして機能させることができる。
【0153】
電子機能素子100にデータをセットする際には、ゲート電圧調整手段70によりゲート電圧を印加しつつ、ソース電圧調整手段71により、可変抵抗素子層55に、第1の電圧としての1.4V以上の電圧を印加する。
【0154】
その後、可変抵抗素子層55に印加される電圧が0になっても、可変抵抗素子層55の抵抗値は維持されているため、ゲート電圧調整手段70によりゲート電圧を印加すれば、データ読出手段72がビット線60の電位を読み取ることにより、セットされたデータを読み出すことができる。
【0155】
絶縁体相I、双安定相II、絶縁体相IIIの温度範囲は、圧力調整手段74によって可変抵抗素子層55に加えられる圧力によって調整することができる。図17に示すように、可変抵抗素子層55に加えられる圧力が0.26GPaとなっている場合には、絶縁体から金属体への第1の温度は328Kであり、金属体から絶縁体への第2の温度は302Kであった。
【0156】
これに対して、可変抵抗素子層55に加えられる圧力が0GPaとなっている場合には、絶縁体から金属体への第1の温度は362Kであり、金属体から絶縁体への第2の温度は、344Kであった。このように、可変抵抗素子層55に加えられる圧力を調整すれば、揮発性メモリとして動作させる時の温度や、不揮発性メモリとして動作させる時の温度を変えることができる。
【0157】
逆に言うと、可変抵抗素子層55に印加される電圧を変えるのではなく、可変抵抗素子層55に加えられる圧力を変化させることによって、メモリ装置200のデータのセット、リセットを制御するようにすることもできる。
【0158】
同様に、可変抵抗素子層55の周辺の雰囲気温度を変化させることによって、メモリ装置200のデータのセット、リセットを制御するようにすることもできる。
【0159】
このように、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物を用いたトランジスタ100を用いれば、常温常圧下において、ROMとRAMの両方の特性を必要に応じて使い分けることができるメモリを作製することができる。
【0160】
なお、ReRAMの構成は、図12、図13に示すものには限られず、他の回路構成を有するReRAMであっても、図13乃至図17に示されるペロブスカイト型酸化物の温度、電圧、圧力に関する特性を利用して、高速で駆動するROM、RAMを構築することは可能である。例えば、図9に示す電界効果トランジスタ20を用いて、メモリ装置を構築するようにしてもかまわない。
【0161】
また、上述した特性を考慮すれば、電子機能素子100を圧力センサーやひずみゲージとして用いることも可能である。
【0162】
〔その他の実施の形態〕
上記の実施の形態2においては、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物を用いた電界効果トランジスタを開示し、上記の実施の形態3においては、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物を用いたMRAMを開示し、上記の実施の形態4においては、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物を用いたReRAMを開示したが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0163】
例えば、上記の実施の形態1におけるペロブスカイト型酸化物の低温状態での強磁性の出現現象を利用した温度検出素子や磁場センサーであっても、本発明に含まれるものである。
【0164】
また、上記の実施の形態3におけるMRAMは、図11に示したように、3層構造を基本とするものであったが、本発明はこの構造に限られるものではない。例えば、図11に示すように、単層構造のMRAMも実現可能である。
【0165】
すなわち、図11に示すMRAM40は、ペロブスカイト型酸化物層41の上部に複数の第1電極配線V1〜V4を配置すると共に、その下部に複数の第2電極配線H1〜H4を配置している。そして、これら第1電極配線V1〜V4と第2電極配線H1〜H4とは互いに交差し、マトリックス状に配置されている。
【0166】
これまでの圧力印加により誘起される強磁性では、磁場の方向で正負の符号を異にする約80%の磁気抵抗が得られるという、異方的巨大磁気抵抗効果が観測されている。
【0167】
この効果は、高性能の磁気センサーとしての利用が期待されるが、圧力印加中の現象を実用化するには困難が多かった。
【0168】
一方、図11に示すMRAM40では、強磁性の誘起が電場印加によるため、その制御が簡単であり、上記のような異方的巨大磁気抵抗効果を容易に実用化できる。
【0169】
例えば、図11に示したMRAM40において、図中Aで示す領域に強磁性を誘起させる場合であれば、この領域に第1電極配線V2と第2電極配線H2とを用いて電圧を与えて、この領域に電場を印加すればよい。そうすることにより、この領域のみに強磁性を出現させることができる。
【0170】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0171】
例えば、上記実施の形態では、ペロブスカイト型酸化物が絶縁体から金属体へ遷移する印加電場のしきい値を、80V/cmとしたが、実際には、40V/cm程度までしきい値を低下させることができることが可能である。すなわち、ペロブスカイト型酸化物を前記金属相に相転移させるために印加すべき電場のしきい値の設定範囲は、雰囲気中が常温であるときに40V/cm以上80V/cm以下となる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明のペロブスカイト型酸化物の相転移を誘起するための相転移誘起方法は、電場を用いてスイッチングさせることを原理とする電子機能素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0173】
10 測定回路
11 負荷抵抗
12 試料
13 電圧源
14 電流計
15 電場印加装置
16 電圧計
20 電界効果トランジスタ
21 ゲート電極
22 ゲート絶縁層
23 ソース領域
24 ドレイン領域
25、41 ペロブスカイト型酸化物層
26 基板
30、40 MRAM
31 第1強磁性層
32 非磁性層
33 第2強磁性層
50 基板
51 ソース領域
52 ドレイン領域
53 チャンネル
54 ゲート絶縁膜
55 可変抵抗素子層
60 ビット線
61 ワード線
62 ソース線
70 ゲート電圧調整手段
71 ソース電圧調整手段
72 データ読出手段
73 温度調整手段
74 圧力調整手段
100 電子機能素子
200 メモリ装置
1、V2、V3、V4 第1電極配線
1、H2、H3、H4 第2電極配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト型酸化物の相転移を誘起するための相転移誘起方法であって、
前記ペロブスカイト型酸化物は、組成式Axyzで表されるペロブスカイト型結晶構造を有し、前記組成式Axyzにおいて、前記元素Aは、アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記元素Bは、遷移元素から選ばれる少なくとも1種の元素のうち、4d軌道または5d軌道に存在する電子が10個未満である元素である場合において、
絶縁体相にあるペロブスカイト型酸化物に所定の電圧を与えることにより、前記ペロブスカイト型酸化物に所定の電場を印加する電場印加ステップと、
前記電場印加ステップにおいて前記ペロブスカイト型酸化物に印加される前記電場を用いて、前記絶縁体相にある前記ペロブスカイト型酸化物を金属相に相転移させる第1の相転移誘起ステップと
を含むことを特徴とするペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法。
【請求項2】
前記第1の相転移誘起ステップにおいて前記金属相に相転移した前記ペロブスカイト型酸化物の雰囲気中の温度を降温する降温ステップと、
前記降温ステップにおいて前記ペロブスカイト型酸化物を冷却させて、前記金属相にある前記ペロブスカイト型酸化物を強磁性金属相に相転移させる第2の相転移誘起ステップとをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法。
【請求項3】
前記ペロブスカイト型酸化物を前記金属相に相転移させるときの雰囲気中の温度は、356K以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法。
【請求項4】
前記ペロブスカイト型酸化物を前記金属相に相転移させるために印加すべき前記電場のしきい値の設定範囲は、雰囲気中が常温であるときに40V/cm以上80V/cm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法。
【請求項5】
前記ペロブスカイト型酸化物が前記金属相に相転移した後においては、前記ペロブスカイト型酸化物に印加される前記電場が25V/cm以下になるまでは前記金属相が維持されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法。
【請求項6】
前記ペロブスカイト型酸化物を前記強磁性金属相に相転移させるときの雰囲気中の温度は、25K以下であることを特徴とする請求項2に記載のペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法。
【請求項7】
前記ペロブスカイト型酸化物の組成式は、A3Ru27、A2RuO4、ARuO3、A4Ru310、A2IrO4、A3Ir27及びA2RhO4のうちのいずれかであって、且つ、前記元素Aは、Ca、Sr、Ba、Laのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のペロブスカイト型酸化物の相転移誘起方法。
【請求項8】
電子機能素子の材料として用いられるペロブスカイト型酸化物であって、
前記ペロブスカイト型酸化物は、組成式Axyzで表されるペロブスカイト型結晶構造を有し、前記組成式Axyzにおいて、前記元素Aは、アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記元素Bは、遷移元素から選ばれる少なくとも1種の元素のうち、4d軌道または5d軌道に存在する電子が10個未満である元素である場合において、
前記ペロブスカイト型酸化物は、自身に印加される電場を用いて、絶縁体相と金属相との間を相転移することにより、前記電子機能素子の機能を実現することを特徴とするペロブスカイト型酸化物。
【請求項9】
前記ペロブスカイト型酸化物は、前記絶縁体相から前記金属相に相転移した後において、自身の温度の昇降を用いて、常磁性金属相と強磁性金属相との間を相転移することにより、前記電子機能素子の機能を実現することを特徴とする請求項8に記載のペロブスカイト型酸化物。
【請求項10】
請求項8または9に記載のペロブスカイト型酸化物を用いて所定の機能を実現することを特徴とする電子機能素子。
【請求項11】
請求項8に記載のペロブスカイト型酸化物より成る可変抵抗部を有する電子機能素子と、
前記可変抵抗部に印加する電圧を調整する電圧調整手段と、
前記電子機能素子周辺の雰囲気温度を調整する温度調整手段と、
を備える電子装置。
【請求項12】
前記温度調整手段は、
前記雰囲気温度を、前記ペロブスカイト型酸化物が金属体から絶縁体に相転移する温度より低い温度に維持し、
前記電圧調整手段は、前記ペロブスカイト型酸化物が前記絶縁体から前記金属体に相転移する第1の電圧より高い電圧を、前記可変抵抗部に印加するか、前記ペロブスカイト型酸化物が前記絶縁体から前記金属体に相転移する第2の電圧より低い電圧を、前記可変抵抗部に印加することにより、前記可変抵抗部の抵抗値を変更する、
ことを特徴とする請求項11に記載の電子装置。
【請求項13】
前記温度調整手段は、
前記雰囲気温度を、前記ペロブスカイト型酸化物が絶縁体から金属体に相転移する第1の温度より低く、前記ペロブスカイト型酸化物が前記金属体から前記絶縁体に相転移する第2の温度より高い温度に維持し、
前記電圧調整手段は、前記ペロブスカイト型酸化物が前記絶縁体から前記金属体に相転移する第1の電圧より高い電圧を、前記可変抵抗部に印加することにより、前記可変抵抗部の抵抗値を変更する、
ことを特徴とする請求項11に記載の電子装置。
【請求項14】
前記可変抵抗部に加える圧力を調整する圧力調整手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−166039(P2010−166039A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283474(P2009−283474)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】