説明

ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置

【課題】透過率、低温で硬化した際の環化率のバランス優れたポリアミド樹脂を提供すること、また、前記ポリアミド樹脂を適用することにより、リフロー耐性に優れたポジ型感光性樹脂組成物提供すること、また、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置を提供する。
【解決手段】樹脂中のアミノフェノールの2つの芳香環がメチレンを介して結合している構造を含むポリアミド樹脂100重量部に対して、感光性ジアゾキノン化合物を1〜50重量部含むポジ型感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の保護膜、絶縁膜には、耐熱性が優れ又卓越した電気特性、機械特性等を有するポリイミド樹脂が用いられているが、最近は高極性のイミド環由来のカルボニル基が無いことから耐湿信頼性が良いとされるポリベンゾオキサゾール樹脂が最先端の半導体装置で使われ始めている。又ポリベンゾオキサゾール樹脂やポリイミド樹脂自身に感光性を付与し、パターン作成工程の一部を簡略化できるようにし、工程短縮及び歩留まり向上に効果のある感光性樹脂組成物が開発されている。
更に最近では、安全性の面からアルカリ水溶液で現像ができるポジ型感光性樹脂組成物が開発されている。例えば、特許文献1にはベース樹脂であるポリベンゾオキサゾール前駆体と感光剤であるジアゾキノン化合物より構成されるポジ型感光性樹脂組成物が開示されている。これは高い耐熱性、優れた電気特性、微細加工性を有し、ウェハーコート用のみならず絶縁用樹脂組成物としての可能性も有している。このポジ型感光性樹脂組成物の現像メカニズムは以下のようになっている。未露光部のジアゾキノン化合物はアルカリ水溶液に不溶であり、ベース樹脂と相互作用することでこれに対し耐性を持つようになる。一方、露光することによりジアゾキノン化合物は化学変化を起こし、アルカリ水溶液に可溶となり、ベース樹脂の溶解を促進させる。この露光部と未露光部との溶解性の差を利用し、露光部を溶解除去することにより未露光部のみの塗膜パターンの作成が可能となるものである。
【0003】
塗膜パターンを形成したポジ型感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂は、最終的に300℃近い高温で硬化することにより脱水閉環し、耐熱性に富むポリベンゾオキサゾール樹脂となる。一方、近年は半導体装置の著しい小型化、高集積化により、特に記憶素子では、耐熱性が従来よりも低くなってきており、歩留まり向上の為、より低温で硬化可能なポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂が必要とされている。低温で硬化する際に重要となるのは、硬化後の樹脂の環化率である。環化率が低いと、残存するアルカリ可溶基の影響で吸水率が高くなる為に耐湿信頼性や、耐薬品性が低下し、誘電率も高くなる。
環化率を向上させようとして、例えば、特許文献2には分子鎖を動き易くする為、エーテル結合を含むビス(アミノフェノール)を用いたポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂が開示されているが、露光時に活性光線として利用されることが多い365nmの波長を持つ紫外線(i線)に対し樹脂の透過率が非常に低くパターン形成が難しいという問題がある。
【0004】
また最近では、半導体装置の小型化、高集積化による多層配線化、チップサイズパッケ−ジ(CSP)、ウエハ−レベルパッケ−ジ(WLP)への移行等により、従来のワイヤ−ボンディングからバンプを用いた実装形態へと移行してきている。バンプを搭載する際には、フラックスを使用してリフロ−を通すのが一般的であるが、この時には先のポジ型感光性樹脂の硬化膜とフラックスが接触することになり、しばしば皺やクラックがポジ型感光性樹脂の硬化膜に発生するという問題がある。
【0005】
この様に、環化率・透過率・リフロー耐性のバランスに優れた感光性樹脂組成物の開発が最近強く望まれている。
【0006】
【特許文献1】特公平1−46862号公報
【特許文献2】特許第3078175号公報
【0007】
上記文献記載の従来技術は以下の点で改善の余地を有していた。
環化率が低い硬化膜の場合、比較的化学的に不安定な未環化部分を有しているために、レジスト剥離液などの薬品耐性が低いことが問題であった。
耐熱性・機械特性を向上させるために基本骨格に共役した芳香族を有するモノマーを導入した樹脂は、その芳香環の光吸収性が高いため、パターニングに必要な紫外領域光の透過率が低く、露光部において光反応を十分に進行させることができない。結果、低感度であったり、パターン形状に不具合が発生したりするという問題があった。
一方、紫外領域光の透過率を確保するため脂肪族を有するモノマーを導入した樹脂は、バンプを搭載する際フラックスを使用してリフローを通す一般的なプロセスにおいて、先のポジ型感光性樹脂の硬化膜とフラックスが直接接することにより、しばしば皺やクラックがポジ型感光性樹脂の硬化膜に発生し、リフロー耐性が低いという問題があった。
このように、従来のポジ型感光性樹脂組成物は、環化率が高くリフロー耐性が良好である一方でi線透明性がほとんど無いといった極端な特性を有するものであり、実際に使用するには制限が多いのが実情であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、透過率、低温で硬化した際の環化率に優れたポリアミド樹脂、リフロー耐性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記[1]〜[13]に記載の本発明により達成される。
[1]
一般式(1)で示されるポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、感光性ジアゾキノン化合物(B)を1〜50重量部含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化6】

[2]
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂中のZが、式(2)の群より選ばれてなる[1]記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化7】

[3]
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂中のZが、式(3)の群より選ばれてなる[1]または[2]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化8】

[4]
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂中のYが、式(4)の群より選ばれてなる[1]乃至[3]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化9】

[5]
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂中のYが、式(5)の群より選ばれてなる[1]乃至[4]のいずれか記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化10】

[6]
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂の365nmの透過率が15%以上である[1]乃至[5]のいずれか記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[7]
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂の250℃90分硬化時の環化率が60%以上である[1]乃至[6]のいずれか記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[8]
更にフェノール化合物(C)を含むものである[1]乃至[7]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[9]
[1]乃至[8]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする硬化膜。
[10]
[9]に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする保護膜。
[11]
[9]に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
[12]
[9]に記載の硬化膜を有していることを特徴とする半導体装置
[13]
[9]に記載の硬化膜を有していることを特徴とする表示体装置
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透過率、低温で硬化した際の環化率に優れたポリアミド樹脂、リフロー耐性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、一般式(1)で示されるポリアミド樹脂(A)1
00重量部に対して、感光性ジアゾキノン化合物(B)を1〜50重量部含むことを特徴
とする。保護膜、絶縁膜は、上記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする。更に半導体装置、表示体装置は、上記保護膜、絶縁膜で構成されていることを特徴とする。以下に本発明のポジ型感光性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0012】
本発明における一般式(1)で示されるポリアミド樹脂中のXは、アミノフェノールの2つの芳香族環がメチレンを介して結合している構造を含むことを特徴としている。メチレンにより2つの芳香環の共役が切断されることにより、ポリアミド樹脂の透過率が向上する。さらに、メチレンは立体的に小さな構造でありそれがポリアミド樹脂の主鎖に存在していることにより、分子鎖が動きやすくなり、ポリアミド樹脂の環化性が向上すると考えられる。結果、そのポリアミド樹脂を使用したポジ型感光性樹脂組成物の耐薬品性も向上すると考えられる。また、同理由により、ポリアミド樹脂が平坦構造をとり易くなるためポリアミド樹脂の結晶性が向上しフラックス成分などが染み込みにくくなり、その結果、ポジ型感光性樹脂組成物のリフロー耐性が向上すると考えられる。
【0013】
【化11】

【0014】
式(1)で示されるポリアミド樹脂中のZは、有機基を表し、R3は、水酸基、O−R2で、R2は炭素数1〜15の有機基、mは0〜2の整数で同一でも異なっていても良い。
【0015】
式(1)で示されるポリアミド樹脂中のZは、例えば下記(2)式で示されるものが挙げられる。
【化12】

【0016】
これら中で特に好ましいものとしては、下記(3)式で示されるもの等が挙げられ、1種または2種以上混合して用いてもよい。
【化13】

【0017】
式(1)で示されるポリアミド樹脂中のYは、有機基を表し、R1は水酸基、カルボキシル基、O−R2、COO−R2で、R2は炭素数1〜15の有機基、nは0〜4の整数で同一でも異なっていても良い。但し、R3が水酸基の場合、その結合位置はアミノ基のオルソ位でなければならず、R3が水酸基でない場合、R1の少なくとも1つはカルボキシル基でなければならない。
【0018】
式(1)で示されるポリアミド樹脂中のYは、例えば、下記(4)式で示されるものが挙げられる。
【化14】

【0019】
これら中で特に好ましいものとしては、下記(5)式で示されるもの等が挙げられるが、1種または2種以上混合して用いてもよい。
【化15】

【0020】
上述の式(1)で示されるポリアミド樹脂中のYは、反応収率等を高めるため、例えば、ジカルボン酸の場合には1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を予め反応させた活性エステルの型のジカルボン酸誘導体を用いてもよく、テトラカルボン酸の場合は対応する無水物を用いてもよい。
【0021】
上述の式(1)で示されるポリアミド樹脂において、Zの置換基としてのO−R2、Yの置換基としてのO−R2、COO−R2は、水酸基、カルボキシル基のアルカリ水溶液に対する溶解性を調節する目的で、炭素数1〜15の有機基で保護された基であり、必要により水酸基、カルボキシル基を保護しても良い。R2の例としては、ホルミル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0022】
上述の式(1)で示されるポリアミド樹脂において、繰り返し単位aは20〜100mol%、繰り返し単位bは0〜80mol%であることが好ましく、さらに好ましくは、繰り返し単位aは30〜100mol%、繰り返し単位bは0〜70mol%である。aが上述の範囲未満の場合、ポリアミド樹脂の透過率、環化率及びポジ型感光性樹脂組成物のリフロー耐性のバランスが崩れてしまう場合がある。
【0023】
このポリアミド樹脂を約250〜400℃で加熱すると脱水閉環し、ポリイミド、又はポリベンゾオキサゾール、或いは両者の共重合という形で耐熱性樹脂が得られる。
【0024】
また、上述の式(1)で示されるポリアミド樹脂は、該ポリアミド樹脂の末端のアミノ基を、アルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基、または環式化合物基を含む酸無水物を用いてアミドとしてキャップすることが好ましい。これにより、
保存性を向上させることができる。
このような、アミノ基と反応した後のアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基または環式化合物基を含む酸無水物に起因する基としては、例えば式(6)、式(7)で示される基等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0025】
【化16】

【0026】
【化17】

【0027】
これらの中で特に好ましいものとしては、式(8)で選ばれる基が好ましい。これにより、特に保存性を向上することができる。
【0028】
【化18】

【0029】
またこの方法に限定される事はなく、該ポリアミド樹脂中に含まれる末端の酸をアルケ
ニル基又はアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基又は環式化合物基を含むアミン誘導体を用いてアミドとしてキャップすることもできる。
【0030】
本発明で用いる感光性ジアゾキノン化合物(B)は、例えばフェノール化合物と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸とのエステルが挙げられる。具体的には、式(9)〜式(13)に示すエステル化合物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0031】
【化19】

【0032】
【化20】

【0033】
【化21】

【0034】
【化22】

【0035】
【化23】

式中Qは、水素原子、式(13)のいずれかから選ばれるものである。ここで各化合物のQのうち、少なくとも1つは式(13)である。
【0036】
本発明で用いる感光性ジアゾキノン化合物(B)の添加量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して1〜50重量部が好ましい。より好ましくは10〜40重量部である。下限値以上だと露光部のアルカリ水溶液に対する溶解性が上がる為パターニング性が良好になり、高解像度で感度も向上する。上限値以下だと、スカムのみならず、感光剤自身による膜中の透明性低下が適度に抑えられることにより高感度、高解像度になる。
【0037】
更に本発明では、高感度で更に現像後の樹脂残り(スカム)無くパターニングできるよう
にフェノール性化合物(C)を併用することができる。具体的な構造としては、例えば、式(14)〜式(20)のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない
【0038】
【化24】

【0039】
【化25】

【0040】
【化26】

【0041】
【化27】

【0042】
【化28】

【0043】
【化29】

【0044】
【化30】

【0045】
(C)フェノール化合物の添加量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して1〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜25重量部である。1重量部以上だと現像時にスカム発生が抑制され、露光部の溶解性が促進されることにより感度が向上し、上限値以下だと残膜率、解像度の低下、冷凍保存中における析出が起こらず好ましい。
【0046】
本発明における樹脂組成物およびポジ型感光性樹脂組成物には、必要によりレベリング剤、シランカップリング剤等の添加剤を含んでも良い。
本発明においては、これらの成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられ、単独でも混合して用いても良い。
【0047】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の使用方法は、まず該組成物を適当な支持体、例えば、シリコンウエハー、セラミック基板、アルミ基板等に塗布する。塗布量は、半導体装置上に塗布する場合、硬化後の最終膜厚が0.1〜30μmになるよう塗布する。膜厚が下限値を下回ると、半導体装置の保護膜としての機能を十分に発揮することが困難となり、上限値を越えると、微細な加工パターンを得ることが困難となるばかりでなく、加工に時間がかかりスループットが低下する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等がある。次に、60〜130℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜500
nmの波長のものが好ましい。
【0048】
次に照射部を現像液で溶解除去することによりパターンを得る。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等のアルカリ類の水溶液、及びこれにメタノール、エタノールのごときアルコール類等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0049】
一般的な現像メカニズムは、未露光部のジアゾキノン化合物はアルカリ水溶液に不溶であり、ベース樹脂と相互作用することでアルカリ水溶液に対し耐性を持つようになる。一方、露光することによりジアゾキノン化合物は化学変化を起こし、アルカリ水溶液に可溶となり、ベース樹脂の溶解を促進させる。この露光部と未露光部との溶解性の差を利用し、露光部を溶解除去することにより未露光部のみの塗膜パターンの作製が可能となるものである。
半導体装置の高集積化が近年進み高精細なパターンを作製する必要があるため、ポリアミド樹脂には、露光光線として例えば365nm(i線)のようなより短波長での透過率が
必要になってきている。本発明のポリアミド樹脂は、365nmの透過率が15%以上であることが好ましく、さらに好ましくは、40%以上である。365nmの透過率が上述の範囲未満の場合、ジアゾキノン化合物が十分にアルカリ可溶性化合物に変化しないため、現像時に樹脂残りやスカムを発生させパターンを得る事ができなくなってしまう。
【0050】
次に、現像によって形成したパターンをリンスする。リンス液としては、蒸留水を使用する。次に加熱処理を行い、オキサゾール環、又はオキサゾール環及びイミド環を形成し、耐熱性に富む最終パターンを得る。
加熱処理は高温でも低温でも可能であり、高温での加熱処理温度は、280℃〜380℃が好ましく、より好ましくは290℃〜350℃である。低温での加熱処理温度は150℃〜280℃が好ましく、より好ましくは180℃〜260℃である。
【0051】
上記最終パターンの250℃90分硬化時の環化率は60%以上が好ましく、さらに好ましくは、80%以上が好ましい。250℃90分硬化時の環化率が上述の範囲未満の場合、レジスト剥離液などの薬液耐性が不十分なため半導体装置などの信頼性が悪化する。
【0052】
次に、本発明によるポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜について説明する。ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物である硬化膜は、半導体素子等の半導体装置用途のみならず、TFT型液晶や有機EL等の表示体装置用途、多層回路の層間絶縁膜やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜としても有用である。
【0053】
半導体装置用途の例としては、半導体素子上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなるパッシベーション膜、パッシベーション膜上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなるバッファーコート膜等の保護膜、また、半導体素子上に形成された回路上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなる層間絶縁膜等の絶縁膜、また、α線遮断膜、平坦化膜、突起(樹脂ポスト)、隔壁等を挙げることができる。
【0054】
表示体装置用途の例としては、表示体素子上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜
を形成してなる保護膜、TFT素子やカラーフィルター用等の絶縁膜または平坦化膜、MVA型液晶表示装置用等の突起、有機EL素子陰極用等の隔壁等を挙げることができる。その使用方法は、半導体装置用途に準じ、表示体素子やカラーフィルターを形成した基板上にパターン化されたポジ型感光性樹脂組成物層を、上記の方法で形成することによるものである。表示体装置用途の、特に絶縁膜や平坦化膜用途では、高い透明性が要求されるが、このポジ型感光性樹脂組成物層の硬化前に、後露光工程を導入することにより、透明性に優れた樹脂層が得られることもでき、実用上更に好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
<実施例1>
ポリアミド樹脂の合成
イソフタル酸とジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸をそれぞれ1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾールと反応させてジカルボン酸誘導体(活性エステル)を合成した。活性エステル化したイソフタル酸28.8g(0.072モル)と活性エステル化したジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸141.8g(0.288モル)と4,4′‐メチレンビス(2−アミノフェノール)92.1g(0.40モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン900gを加えて溶解させた。その後オイルバスを用いて75℃にて12時間反応させた。
次にN−メチル−2−ピロリドン250gに溶解させた4−エチニルフタル酸無水物17.2g(0.10モル)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し目的のポリアミド樹脂を得た。
【0056】
透過率評価
ポリアミド樹脂3.0gをN−メチル−2−ピロリドン10.0gに溶解した樹脂を石英板にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分乾燥し、膜厚5μmの塗膜を得た。この塗膜の透過率を紫外可視分光光度計(島津製作所製)により測定した。波長365nmにおける透過率は20%であった。
【0057】
ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の合成
フェノール式(B−1)15.82g(0.025モル)と、トリエチルアミン8.40g(0.083モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、テトラヒドロフラン135gを加えて溶解させた。この反応溶液を10℃以下に冷却した後に、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロライド22.30g(0.083モル)をテトラヒドロフラン100gと共に10℃以上にならないように徐々に滴下した。その後10℃以下で5分攪拌した後、室温で5時間攪拌して反応を終了させた。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、式(Q−1)の構造で示されるナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を得た。
【0058】
ポジ型感光性樹脂組成物の作製
合成したポリアミド樹脂(A)100g、式(Q−1)の構造を有するナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物15gをN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解した後、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過しポジ型感光性樹脂組成物を得た。
【0059】
加工性評価
このポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で3分プリベークし、膜厚約7.2μmの塗膜を得た。この塗膜に凸版印刷(株)製・マスク(テストチャートNo.1:幅0.88〜50μmの残しパターン及び抜きパターンが描かれている)を通して、i線ステッパー((株)ニコン製・4425i)を用いて、露光量を変化させて照射した。
次に2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に30秒で2回パドル現像することによって露光部を溶解除去した後、純水で10秒間リンスした。その結果、パターンが成形されていることが確認できた。
【0060】
環化率評価
上記ポジ型感光性樹脂組成物を2枚のシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分プリベークし、それぞれ膜厚約1μmの塗膜を得た。次に塗膜付きシリコンウエハーの1枚を2%フッ酸に浸け、フィルムを得た。このフィルムを、フーリエ変換赤外分光光度計PARAGON1000(パーキンエルマー製)を用いて測定し、1650cm−1のアミド基と1490cm−1の全芳香族に伴うピークの比(A)を算出した。次にオーブンを用いて、もう一枚の塗膜付きシリコンウエハーを250℃90分で加熱を行った後、同様にして硬化フィルムを得、フーリエ変換赤外分光光度計による測定から1650cm−1のアミド基と1490cm−1の全芳香族に伴うピークの比(B)を算出した。環化率は(1−(B/A))に100を乗じた値とした。このようにして求めた環化率は67%であった。
【0061】
リフロ−耐性評価
上記加工性評価でパターン加工されたウエハ−をクリ−ンオ−ブンにて酸素濃度1000ppm以下で、250℃90分で硬化を行った。次にこのウエハ−にタムラ化研(株)製フラックス、BF−30をスピンナ−で500rpm/5秒+1000rpm/30秒の条件で塗布した。リフロ−炉で140〜160℃/100秒(プレヒ−ト)、350℃/30秒の条件で立て続けに連続2回通した。次に40℃に加熱したキシレンで10分洗浄した後、イソプロピルアルコ−ルでリンスして乾燥させた。フラックスを除去した膜表面を金属顕微鏡で表面を観察したところ、大きなクラック、シワ等の発生はなく良好であった。
【0062】
耐薬品性評価
上記加工性評価でパターン加工されたウエハ−をクリ−ンオ−ブンにて酸素濃度1000ppm以下で、250℃90分で硬化を行った。次に室温にて東京応化製STRIPPER−106中に硬化後のウエハーを5分間浸漬した。次に、室温のイソプロピルアルコ−ルにてリンスして乾燥させた。表面を金属顕微鏡で観察したところ、シワ、剥離などの発生は無く良好であった。また、処理の前後での膜の厚み変化に大きな差は見られず良好であった。
【0063】
<実施例2,3及び比較例1,2>
実施例1におけるポリアミド樹脂の合成において、活性エステル化したカルボン酸の物質量とアミンの物質量を実施例及び比較例に合うように適切に変更し、同様にして反応させポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂を用いて実施例1と同様にしてポジ型感光性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様の評価を行った。以下に、実施例及び比較例のB−1、Q−1の構造、表1を示す。
【0064】
表1に示すように、実施例1〜3は透過率や環化率が良好であり、その結果加工性や薬液耐性要求を達成できた。また、リフロー耐性も良好であり、信頼性も良好な結果を示すものと予想される。
【0065】
【化31】

【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、高透明な前駆体樹脂であることにより加工可能で
あり、低温で硬化した際にも高環化率の特性を有するものであり、半導体装置、表示装置の表面保護膜、層間絶縁膜等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、感光性ジアゾキノン化合物(B)を1〜50重量部含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂中のZが、式(2)の群より選ばれてなる請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

【請求項3】
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂中のZが、式(3)の群より選ばれてなる請求項1または2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

【請求項4】
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂中のYが、式(4)の群より選ばれてなる請求項1乃至3のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化4】

【請求項5】
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂中のYが、式(5)の群より選ばれてなる請求項1乃至4のいずれか記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】

【請求項6】
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂の365nmの透過率が15%以上である請求項1乃至5のいずれか記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド樹脂の250℃90分硬化時の環化率が60%以上である請求項1乃至6のいずれか記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
更にフェノール化合物(C)を含むものである請求項1乃至7のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする硬化膜。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする保護膜。
【請求項11】
請求項9に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
【請求項12】
請求項9に記載の硬化膜を有していることを特徴とする半導体装置
【請求項13】
請求項9に記載の硬化膜を有していることを特徴とする表示体装置

【公開番号】特開2008−170498(P2008−170498A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−972(P2007−972)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】