説明

リンが注入されたポリシリコンのシート抵抗の減少

リンが注入されたポリシリコンのシート抵抗を減少するプロセスが存在する。一実施の形態において、MOSトランジスタ構造(300)が存在する。構造は、ゲート領域、ドレイン領域及びソース領域を有する。ゲート領域のシート抵抗を減少する方法(220)は、予め決定された温度で真性アモルファスシリコンをゲート領域に堆積する(221)。アモルファス化の種が、真性アモルファスシリコンに注入される(222)。その後、リンの種が、MOSトランジスタ構造のゲート領域に注入される(223)。この実施の形態の特徴は、アモルファス化の種としてのAr+の使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体処理に関する。更に詳しくは、本発明は、高温アニール中に高濃度にドープされたポリシリコンゲート電極からゲート酸化膜を通じたリンの侵入を最小にするプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子工業は、より高い機能の装置をよりコンパクトな領域で実現する半導体技術の進歩に依存し続けている。多数のアプリケーションに対して、更に高い機能の装置を実現するために多数の電子装置を単一のシリコンウェファに集積することが必要とされる。シリコンウェファの所定のエリアごとの電子装置の個数が増大するに従って、製造工程は更に難しくなる。
【0003】
多数の分野において種々のアプリケーションを有する多様な半導体装置が製造されている。そのようなシリコンベースの半導体装置はしばしば、pチャネルMOS(PMOS)トランジスタや、nチャネルMOS(NMOS)トランジスタや、相補型MOS(CMOS)トランジスタや、BiCMOSトランジスタのような金属−酸化膜−半導体電界効果トランジスタを含む。そのようなMOSFET装置は、導電性のゲートとシリコンのような基板との間に絶縁材料を有する。したがって、これらの装置は、一般的にIGFET(絶縁ゲートFET)と称される。
【0004】
これら半導体装置のそれぞれは、一般的に、複数の能動性装置が形成される半導体基盤を有する。所定の能動装置の特定の構造は、装置のタイプ間で変更することができる。例えば、MOSトランジスタにおいて、能動装置は、一般に、ソース領域と、ドレイン領域と、ソース領域とドレイン領域との間の電流を調整するゲート電極とを有する。
【0005】
さらに、そのような装置を、複数のウェファ製造工程で製造されるデジタル又はアナログ装置、例えば、CMOS,BiCOMS、バイポーラ等とすることができる。基板を、シリコン、ガリウム砒素(GaAs)、又は超小型電子回路を組み立てるのに適した他の基板とすることができる。
【0006】
一例では、DMOSトランジスタを組み立てるのに用いられる製造技術は、ポリシリコンゲートエッジの下のドレイン領域をドープするよう十分に大きな拡散を行うために一般に高いサーマルバジェットを利用する。アニール中、ポリシリコンゲートからのリンは、ゲート酸化膜を通じてトランジスタのチャネル領域に拡散する。リンの侵入によって、装置のしきい値電圧が変更するとともに、短チャネル装置のVTロールオフが増大する。これら両方の影響が装置のパフォーマンスを低下させる。
【0007】
従来のプロセスにおいて、高濃度にリンがドープされたポリシリコン(≧e20cm−3)から熱的に成長した酸化膜を通じて単結晶シリコンへのリンの拡散が、長時間に亘る拡散時間の高温アニール(≧1100℃)の後に観察される。不所望なリンの侵入は、公称しきい値電圧の値に影響を及ぼし、さらに、短チャネル装置のしきい値電圧のロールオフを低下する。
【0008】
所望のしきい値電圧を維持するとともにVTロールオフを許容しうるレベルに維持する必要がある。そのような工程は、装置の歩留まりを増大することによってコストを減少する。
【発明の開示】
【0009】
一例において、MOSトランジスタ構造が存在する。この構造は、ゲート領域と、ドレイン領域と、ソース領域とを有する。ゲート領域のシート抵抗を減少する方法は、予め決定された温度で真性アモルファスシリコンをゲート領域に堆積する。アモルファス化の種は、第1の予め決定されたドーズ量でゲート領域の真性アモルファス化シリコンに注入される。第2の予め決定されたドーズ量で、リンの種がゲート領域に注入される。この例の他の特徴は、約53℃から約550℃の範囲にある予め決定された温度での真性アモルファスシリコンの堆積を含む。さらに、ポリシリコンのシート抵抗を約18Ω/□から約30Ω/□の範囲で適合する。また、前記アモルファス化の種の前記第1の予め決定されたドーズ量は、約1×1015cm−2から約3×1015cm−2の範囲にあり、前記リンの前記第2の予め決定されたドーズ量は、約1×1014cm−2から約1.6×1016cm−2の範囲にある。
【0010】
他の例において、MOS集積回路の形成方法がある。この方法は、基板上にゲート酸化膜を形成する。予め決定された温度で、ゲート酸化膜にアモルファスシリコンを堆積する。予め決定されたドーズ量で、アモルファスシリコンをAr+注入によってアモルファス化する。アモルファスシリコンにリンを注入する。アモルファスシリコンのパターニングはゲート領域を規定する。
【0011】
本発明のこれまでの要約は、本発明の開示例の各々又は各態様を表すことを意図するものではない。他の態様及び実施の形態を、図面及び詳細な説明において提供する。
【0012】
本発明は、添付図面に関連して本発明の種々の実施の形態の以下の詳細な説明を考慮することによって更に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明が幾多の変更及び変形に従うが、本発明の細目を一例として添付図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明は、説明される特定の実施の形態に限定されるものではない。それに対して、本発明は、添付した特許請求の範囲によって規定されたような本発明の範囲内にある全ての変更、等価物及び変形をカバーする。
【0014】
図1を参照すると、従来のプロセス100において、ゲート酸化膜をシリコン−オン−インシュレータ(SOI)上に成長させる(110)。
【0015】
ポリシリコンをゲート酸化膜に堆積し、その状態でリンをポリシリコンにドープする(120)。次に、所望の形態を規定するためにポリシリコンにパターニングが施される(130)。酸化膜が、パターニングされたポリシリコンに堆積される(140)。エッチングによってスペーサが形成される(150)。スクリーン酸化膜をポリシリコン上で成長させる(160)。n−LDDを注入すべきエリアをマスクする(170)。ポリシリコン領域をマスクによって保護する。マスキング後、n−LDDが注入される(180)。その後、注入された種を拡散させる(190)。これらの拡散領域は、最終的にはトランジスタのソース領域及びドレイン領域を規定する。プロセスの更なる詳細を、図3A〜3Eの説明の際に概説する。
【0016】
図3A〜3Eは、図1の説明で概説したステップを断面において示す。シリコン−オン−インシュレータ(SOI)基板にDMOS装置を組み立てる際には、図3A参照。SOI基板300は、シリコン層310、ベース酸化膜(BOX)層320及びSOI層330を有する。酸化膜340を成長させる。酸化膜は、ウェット環境で約800℃の温度で成長させる。約30nmの厚さまで成長させる。従来のプロセスにおいて、ポリシリコン層350を、成長した酸化膜340の上に約680℃の温度で堆積する。ポリシリコン層350を堆積した状態でリンをドープする。図3B参照。ポリシリコン層350を堆積するとともにそれにドープを行ったので、ポリシリコン層350がパターニングされる。DMOS装置の所望の形態が規定される。ポリシリコン層は、最終的にはDMOSトランジスタのゲート構造の一部となる。酸化物が、ポリシリコンのパターニングで規定されたポリシリコン及び領域150’に堆積される。酸化物は、約680℃の温度において約300nmの厚さで堆積される。酸化物コーティングは、下層の形態に対応する。図3C参照。プラズマエッチング(すなわち、「スペーサエッチング」)によって、酸化物コーティングがエッチングされてスペーサ360を形成する。図3D参照。(後のステップの)注入のチャンネリングを防止するために、1000℃のドライ環境において酸化物を約18nmの厚さで成長させる。SND(浅いN拡散)マスクを適用する。約40keVのエネルギー、3.5×1013cm−2及び0°でのリンのn型の低い濃度でドープされたドレイン(LDD)注入物が、ソース/ドレイン領域180に配置される。図3E参照。注入領域180を活性化するために、基板100は、約480分の間約1100℃の拡散が施される。
【0017】
従来のプロセスに対して、本発明による実施の形態では、ドープされたポリシリコンを、約540℃で堆積された真性アモルファスシリコンに置換する。アモルファスシリコンの堆積後、シリコンを更にアモルファス化するためにAr+(アルゴンイオン)を注入する。その後、アモルファスシリコンにリンが注入される。このアモルファスシリコンは、従来のプロセスのポリシリコン350を置換する。図2参照。プロセス200は、図1で概説したものと類似している。ゲート酸化膜をSOI基板上に成長させる(210)。しかしながら、変更された処理フロー220は、真性アモルファスシリコン221の堆積を含む。真性アモルファスシリコンの堆積後、Ar+の注入によるアモルファス化を行う(222)。変更されたプロセス220は、リンの注入によって完了する(223)。残りの処理ステップ230〜290は、図1の処理ステップに従う。
【0018】
図4参照。本発明によるプロセスの一例において、プロットは、ポリシリコン堆積温度に対するN+ドープポリシリコンのシート抵抗を示す。約540℃において、シート抵抗(410)は約140Ω/□であり、それに対して、約625℃において、シート抵抗(430)は約325Ω/□まで上昇する。シート抵抗は、従来のプロセスの一例の約半分未満になる。シート抵抗(420)は、約555℃の堆積温度で約145Ω/□まで上昇する。
【0019】
図5参照。本発明によるプロセスの一例において、堆積温度及び予めアモルファス化するためのAr+の注入に対する約360nmのポリシリコンのシート抵抗を、530℃及び540℃の二つのポリシリコン堆積温度のそれぞれのウェファのサンプル数に対してプロットする。ポリシリコン中のリン濃度を、シート抵抗を増大することなく予めアモルファス化する技術を用いて減少することができる。ゲート酸化膜に侵入するリンが、1100℃/480分のアニールの場合に比べて減少する。曲線510,520は、Ar+の注入のないウェファに対するものである。530℃において、シート抵抗は約72Ω/□となり、540℃において、シート抵抗は約55Ω/□となる。曲線515,525は、Ar+の注入のあるウェファに対するものである。530℃において、シート抵抗は約220Ω/□となり、540℃において、シート抵抗は28Ω/□となる。
【0020】
説明した実施の形態において、Ar+を、アモルファス化の種として選択した。他の種も選択することができる。例えば、シリコンをアモルファス化するがドーパントとして機能しない十分重いSi+又は他の種が適切である。
【0021】
本発明の複数の特定の実施の形態を参照して説明したが、当業者は、特許請求の範囲で説明する本発明の範囲を逸脱することなく幾多の変更を行えることを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ドープされたポリシリコンプロセスの従来の処理フローを示す。
【図2】本発明の実施の形態によるポリシリコンゲート領域を組み立てる処理フローを示す。
【図3】図1のプロセスによって製造されたシリコン−オン−インシュレータ基板上のDMOS装置の断面を示す。
【図4】ポリシリコン堆積温度に対するN+ドープされたポリシリコンシート抵抗Rsのプロットである。
【図5】本発明のAr+注入のある及び本発明のAr+注入のない二つの温度のポリシリコン堆積温度に対するポリシリコンシート抵抗Rのプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート領域(150)、ドレイン領域(180)及びソース領域(180)を有するMOSトランジスタ構造において、前記ゲート領域のシート抵抗を減少する方法(220)であって、予め決定された温度で真性アモルファスシリコン(221)を前記ゲート領域に堆積し、第1の予め決定されたドーズ量でアモルファス化用の種(222)を、前記ゲート領域の前記真性アモルファスシリコンに注入し、第2の予め決定されたドーズ量でリンの種を注入することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記予め決定された温度が約530℃から約550℃の範囲にあることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記アモルファス化の種が、シリコンをアモルファス化するのに十分重いことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記アモルファス化の種が、アルゴン及びシリコンを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記ポリシリコンのシート抵抗を、約18Ω/□から約30Ω/□の範囲で適合することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記予め決定された温度が約535℃から約545℃の範囲にあることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記予め決定された温度が約540℃であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記アモルファス化の種の前記第1の予め決定されたドーズ量が、約1×1015cm−2から約3×1015cm−2の範囲にあることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記リンの前記第2の予め決定されたドーズ量が、約1×1014cm−2から約1.6×1016cm−2の範囲にあることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記リンの前記第2の予め決定されたドーズ量が、約3.0×1015cm−2であることを特徴とする方法。
【請求項11】
MOS集積回路(300)を形成する方法(200)であって、ゲート酸化膜(210)を基板(300)上に形成し、予め決定された温度でアモルファスシリコン(221)を前記ゲート酸化膜(140)に堆積し、予め決定されたドーズ量で前記アモルファスシリコン(222)をAr+注入によってアモルファス化し、別の予め決定されたドーズ量でリン(223)を前記アモルファスシリコンに注入し、前記アモルファスシリコン(230)をパターニングしてゲート領域(350)を規定することを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図3E】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−515217(P2008−515217A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534162(P2007−534162)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053208
【国際公開番号】WO2006/035411
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】