説明

リード線保持穴とその加工方法

【課題】
基板へのリード線の実装に当って、リード線にかかる応力を少なくして断線を防ぐ、リード線の保持穴を提供する。
【解決手段】
基板の側辺近くにリード線挿通用の丸穴を設け、この丸穴の基板側縁部に丸穴と重合して袴状の開口部を設け、この重合部にリード線を挟持する狭窄部を設けたリード線保持穴とし、リード線を開口部から差込む構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板にリード線を半田付けするときのリード線の保持穴とこの保持穴の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプリント基板にリード線を実装する手段としては、基板に丸穴を形成し、リード線を立て形に挿通して裏面から半田付けする方法や、基板の表面にリード線を置き、この位置で半田付けする方法、さらには基板に丸穴を形成し、この丸穴の裏側からリード線を挿通して基板の表面を半田付けするなど色々な実装手段が採用されている。
【特許文献1】特開2003−115676号公報
【特許文献2】実開平7−3179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなリード線の実装方法では、半田部分とリード線が一体化するためリード線にかかる応力がこの接合部分に集中するため断線し易い傾向にある。またリード線を丸穴に挿通してリード線を折曲してでの実装では、リード線自体に応力が掛りこの部分で断線する危険もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明者はこの点に鑑み、リード線の基板への保持穴の形状、及びこれによるリード線の操作手順について種々試作を繰返した結果本発明に到達したものであって、本発明は図1に示すようなリード線保持穴の形状とすることによって、リード線に掛る応力を少なくし、保持穴の形状を特種なものとすることによって、リード線の操作手順も負担のかからない容易なものとしたものである。
【0005】
本発明の保持穴は、リード線挿通用の丸穴(1)とリード線差込み用の袴状の開口部(2)とリード線Rを挟持閉塞する狭窄部(3)を設けることによりリード線Rの保持を確実にすると共に、リード線にかかる応力を少なくすることによって実装した後のリード線Rの断線を少なくすることに成功した。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、実装に当ってリード線に無理な応力をかけることなく確実なリード線の保持が可能であり、半田付け時の操作が簡易であり、また保持穴の形成に当っても加工工程を単純工程とすることができるため従来の基板の形成に比較して安全確実であるという卓越した作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に示すように、本発明の基板に設けるリード線保持穴は、リード線Rを通す保持穴であって、丸穴(1)と袴状に開口されたリード線R差込み口(2)と、これによって形成された狭窄部(3)とから形成されている。
このため形状からして丸穴(1)は実施例中では頭(1)と称し、狭窄部(3)は本文を通して頚(3)とし、末広がりの袴状開口部は単に開口部(2)とする。
【0008】
保持穴はこのような形状であって、リード線Rは、図2に示されているように基板の保持穴上にリード線Rを置き、芯を出したリード線の先端を半田付けBして開口部(2)側からリード線Rを差込み、頚(3)の部分に圧入させて頭(1)の部分にリード線Rを納めて実装を完了させる。このように基板への実装に当ってはリード線Rを折ること曲げることなく回路基板が完成される。
【0009】
したがって、請求項4に記載するように、保持穴の形状寸法は図4を参照して頚(3)の幅をAとし、リード線を差込む開口部(2)の幅をBとしたとき、
リード線の芯線径<A<リード線の外皮径
リード線の外皮径<B
とすることにより基板に対してリード線Rは開口部(2)からの差込みが容易であり保持穴の頭(1)に密着し、頚(3)によって挟持して固定される。
【実施例】
【0010】
(例1) この実施例は、請求項1,2及び4の実施例であって、図1に示すように、本発明のリード線保持穴は、基板Aに対してリード線Rを挿通する頭(1)とリード線Rを差込む袴状の開口部(2)と、この両者の中間にある狭窄部を形成する頚(3)から形成されている。
【0011】
この保持穴の成形にあっては、図1を参照して、リード線挿通用の頭(1)をドリル加工によって形成し、この頭(1)を基板A端側から山形の刃を有する金型パンチによって山形刃の頂部がドリル加工で成形した頭(1)に接して重合するように打抜き加工して袴状の開口部(2)を形成することによって頚部(3)が成形される。
【0012】
このように本発明のリード線保持穴はドリル加工とパンチ加工の2段の加工によってパンチ金型の山形頂部の刃の傷みを防ぐことが可能となり、リード線Rの基板Aへの実装に当っては図2のイ図、ロ図、ハ図の手順のように実装する。Bは半田ランドである。図示の上段aはそれぞれの平面図を示し、下段bはそれぞれのX−X断面図を示している。そして、イ図はリード線Rを基板Aに実装する前の未着の状態図で、ロ図はリード線Rの先端を芯出しして半田付Bをした未だリード線Rの未処理の状態図を示している。ハ図はリード線Rを開口部(2)から差込み、頚部(3)に押込んで頭(1)に嵌め込んだ実装完了の図を示すもので、図示するように本発明のリード線保持穴を用いて基板Aにリード線Rを実装する際は、リード線を強制的に曲げたり、折ることなく、ストレスを与えない形で実装することができる。
【0013】
(例2) この実施例は、請求項3に該当する実施例であって、基板Aの内部にリード線を実装する実施例である。リード線保持穴の成形を順を追って説明すると、図5のイ図を参照して、基板Aの適所にリード線挿通用の丸穴(1)をドリルによって形成する。そしてこの丸穴(1)の近くにリード線挿入用の大穴Dを形成する。この大穴Dの成形に当っては、図示するように、パンチの側面に山形の刃を有する金型パンチによって、このパンチの山形刃の頂部が丸穴に接するように重合させて打抜き加工してリード線挿通用の丸穴に袴状の開口部を形成して、基板Aの内部にリード線R保持用の穴が形成される。したがってこのリード線保持穴は頭(1)と頚部(3)と袴状の開口部(2)が形成される。(図5のハ図に相当)
【0014】
図5のニ図はリード線Rの先端を半田付Bとしてこの保持穴にリード線Rを実装した平面図であり、同ホ図はニ図X−X断面図である。図5ニ、ホ図を参照してリード線Rの実装を説明すると、外皮をむいたリード線Rの先を大穴Dの下側から通してリード線Rの先端を半田付し、リード線Rを開口部(2)から頚(3)の部分に押し込み、頭(1)に納
めてホ図の如く完成させる。
【0015】
(例3) この実施例は請求項4に係るもので、リード線保持穴の寸法形状は、図4を参照して丸穴(1)と山形を有する金型パンチによって形成される狭窄部の幅A、基板端に形成したリード線差込み開口部の幅をBとしたとき
リード線の芯径<A<リード線の外皮径であり
リード線の外皮径<B
とすることによってリード線Rはスムーズに開口部(2)から差込むことができ、頚となる狭窄部(3)に強く押込めながら頭となる丸穴(1)に納めることができ、これによってリード線Rは外部からの無理な抵抗がなく確実に保持できる。
【0016】
(例4) この実施例は2本のリード線Rを用いた保持穴の加工及びリード線の基板への実装方法を示す請求項5に係るもので図3および図4を参照する。
図3を参照して双頭の保持穴を説明すると基板Aの側辺近くにリード線挿通用の丸穴2個をドリル加工により隣接して設ける。そしてこの隣接している2個の丸穴(1),(1)の基板端から山形刃を有する金型パンチによって、この山形刃の頂部が2個の丸穴(1),(1)の接合している部分に当るように打抜き加工して袴状の開口部(2)を形成する。この際には図示するように山形刃と2個の丸穴の接した部位に狭窄部(頚)が形成されて2双の頭(1)と頚(3)と袴状の開口部(2)によって形成されたリード線保持穴が完成する。
【0017】
この2双の頭(1)を有する保持穴を利用した複合リード線の実装について図6で説明する。イ図は双頭(1),(1)を設けた複合リード線保持穴を基板Aに設けた平面図で半田ランドを双頭上に示す。ロ図は複合リード線Rの先端を芯出しして半田付Bをして基板A上に配した平面図を示し、ハ図は一方のリード線Rを双頭の一方の穴内に挿入し、頚部(3)を通して開口部(2)に下方に向けて伸出させ、他方のリード線Rも同様にして頚部(3)を通して開口部(2)から伸出させて実装を完成させる。
【0018】
(例5) この実施例は請求項6に示されている多軸ケーブルに対しての基板Aへの実装についての実施例であって、図7を参照してイ図は多軸ケーブル(10)の先端側の外皮(11)をむいてリード線Rを表出して各リード線Rの外皮をむいて芯線(12)を露出した状態図である。
実施例においては、このような多数のリード線Rを束在している多軸ケーブルの基板Aへのリード線Rの保持穴の成形である。
ロ図は基板Aに対して先ずリード線挿通用の丸穴(1)をドリル加工によって環状に多数開口する。この丸穴(1)群の中心に多軸ケーブル(10)挿通用の大穴(15)を開口するが、この開口に当ってはパンチ加工を用いる。そしてパンチ加工に用いる刃は円形刃であり、この円形の周面には山形に形成した多数の刃を設けること、そしてこの山形刃の頂部が環状の丸穴(1)にそれぞれ接して重合するようにして切断する。
【0019】
これによって成形された多軸ケーブル(10)保持穴はロ図の平面図に示される。この平面図によると中央の大穴には多軸ケーブル(10)が挿入され、この多軸ケーブル(10)はイ図に示されている多数のリード線Rが環状の丸穴(1)に向けられ放射状にバラされて1本毎各保持穴に向けられる。Bは半田ランドであって、各リード線Rの先端を半田付けして固定し開口部(2)から差込まれ、狭窄部の頚(3)に圧入されて頭(1)に嵌入されて納められる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
上述のように、本発明のリード線の基板Aに対しての保持穴は、ドリル加工とパンチ加工の2段操作によるもので、加工工程が2段となるが、リード線の保持がやさしく無理な折り曲げや穴への差込みがないため実装が容易であるため電気機器の使用中に断線の事故が少なくなり長期の使用が可能となる。
【0021】
本発明のリード線保持穴にあっては、実装に当ってリード線Rの他端に何らかの機器が装着されている場合でも、リード線Rの半田付けに当って穴に挿通する工程でなく、開口部(2)から差込むため何ら障害もなく実装が可能となるという利点をも有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】基本となるリード線保持穴及び成形加工図
【図2】基板への実装手順説明図
【図3】双頭形保持穴の加工図
【図4】保持穴の形状の説明図
【図5】リード線保持穴の別の実施例図
【図6】複数リード線の実装説明図
【図7】多軸ケーブルのリード線保持穴の実施例図
【符号の説明】
【0023】
1 丸穴(頭)
2 狭窄部(頚)
3 袴状開口部
10 多軸ケーブル
11 多軸ケーブルの外皮
12 芯線
A プリント基板
B 半田付け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の側辺近くにリード線挿通用の丸穴を設け、該丸穴の基板側辺縁部に丸穴と重合して袴状の開口部を設けてリード線差込み口としたことを特徴としたリード線保持穴。
【請求項2】
基板の側辺近くにリード線挿通用の丸穴をドリル加工によって形成し、該基板端側から山形刃を有する金型パンチによって該山形刃の頂部が前記丸穴に接して重合するように打抜き加工によって袴状の開口部を形成することを特徴としたリード線保持穴の加工方法。
【請求項3】
基板内部にリード線挿通用の丸穴をドリル加工によって形成し、該丸穴の近くに大穴Dを形成する。この大穴Dの成形は側面に山形刃を有する金型パンチによって該山形パンチの頂部が前記丸穴に接するように重合させて打抜き加工して成形し、前記丸穴に袴状の開口部を形成することを特徴としたリード線保持穴の加工方法。
【請求項4】
リード線保持穴の寸法形状は、丸穴と山形刃を有する金型パンチによって形成される保持穴頚部の幅をA、基板端に形成したリード線差込み開口部の幅をBとしたとき、
リード線の芯径<A<リード線の外皮径であって
リード線の外皮径<B
であることを特徴としたリード線保持穴。
【請求項5】
基板側辺近くにリード線挿通用の丸穴2個をドリル加工により隣接して設け、該2個の丸穴の基板端から山形刃を有する金型パンチによって、該山形刃の頂部が、前記2個の丸穴の接合部に当るように打抜き加工して袴状の開口部を形成することを特徴とした複合リード線の保持穴の加工方法。
【請求項6】
基板内部にリード線挿通用の丸穴を多数環状に形成し、該環状に設けた多数の丸穴の中心に多軸ケーブル挿通用の円形穴を設け、該円形穴に対して、外周に山形の刃を設けた金型パンチによって山形刃の頂部が前記環状に設けた丸穴に接して重合するように打抜き加工して各丸穴に袴状の開口部を形成し、多軸ケーブルの芯線を形成する各リード線を挿通して保持することを特徴とした多軸ケーブルのリード線保持穴の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−294784(P2007−294784A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122889(P2006−122889)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(592018179)株式会社創成電子 (10)
【Fターム(参考)】