説明

位置検出システム

【課題】検出対象ごとの移動の履歴の分析を容易にするとともに情報の秘匿性を高めた位置検出システムを提供する。
【解決手段】送信装置1は定位置に固定され疎密波を間欠的に送波する疎密波送波部11と、赤外線を伝送媒体とするワイヤレス信号により識別データを送信する識別データ送信部12とを備える。受信装置2は、移動体のような位置検出の検出対象に搭載され、疎密波を受波することにより受信装置2の位置を記憶部26に格納する。受信装置2は、検出対象を特定する固有情報を入力する固有情報入力部28と、制御部20で求めた送信装置1の位置の履歴と固有情報入力部28から入力した固有情報とを記憶する記憶部27と、記憶部27に格納した記憶内容を非無線の伝送経路で取り出すインターフェイス26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒質の圧力変化を周期的に繰り返す超音波や媒質の圧力変化が単発的であるいわゆる圧力波のような疎密波を利用して検出対象の位置を検出する位置検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ショッピングカートに現在位置を検出する機能を付加し、ショッピングカートの位置に応じて商品などの情報を提供する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のショッピングカートは、距離センサ、方向センサ、高さセンサを用いることによって、ショッピングカートの位置を検出するものであるから、初期位置を合わせるために、規定のスタート位置で位置情報をリセットする必要がある。
【0003】
また、ショッピングカートの位置に応じて商品などの情報を提供する技術としては、ショッピングカートにICタグを設けておき、商品の展示台に設けたリーダによってICタグの識別情報を読み取ることで、ショッピングカートの接近を検出することも考えられている(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−107183号公報
【特許文献2】特開2005−108180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の技術では、ショッピングカートを使用するたびに、ショッピングカートをスタート位置に合わせて位置情報をリセットする必要があるから、使い勝手が悪いという問題を有している。また、ショッピングカートの位置を検出して商品情報を提示するだけなので、どのような顧客がどのような商品を購入したりどのような商品に関心を持つのかを分析することはできない。
【0005】
特許文献2に記載の技術では、ショッピングカートをスタート位置に合わせて位置情報をリセットするというような手間はかからないが、ショッピングカートが商品に近付いたことを検出するだけであるから、ショッピングカートの移動の履歴を分析するのはやや困難である。また、特許文献1に記載のものと同様に、ショッピングカートが商品に近付いたときに商品情報を提示するだけなので、どのような顧客がどのような商品を購入したりどのような商品に関心を持つのかを分析することはできない。
【0006】
特許文献2には、各ショッピングカートを他から識別するための識別情報をICタグに記憶させているが、ショッピングカートは不特定多数の人が使用するものであり、ICタグに記憶させた識別情報は各ショッピングカートに固定的に設定されているから、ショッピングカートを利用する顧客を識別する情報としては利用することができず、結局、顧客と商品とを結びつけることができない。しかも、識別情報を無線伝送路を用いて授受しているから、識別情報が傍受されて第三者に利用される可能性があり、顧客の個人情報を含む情報の伝送には適さないものである。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、検出対象の位置の履歴と検出対象の固有情報とを一旦記憶部に格納した後に非無線の伝送経路を通して取り出すことにより、検出対象の移動の履歴の分析を容易にするとともに情報の秘匿性を高め、しかも、固有情報を入力する固有情報入力部を設けることにより、検出対象に応じた固有情報をいつでも入力可能とし、検出対象ごとの位置の履歴を分析可能とした位置検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、定位置に固定され疎密波を間欠的に送波する送信装置と、位置検出の検出対象に搭載され送信装置から送波された疎密波を受波することにより送信装置の相対的な位置を検出する受信装置とを備え、送信装置は、疎密波を送波する疎密波送波部を備え、受信装置は、疎密波送波部から送波された疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換する受波素子を複数個配列したアレイセンサからなる疎密波受波部と、疎密波受波部の各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と各受波素子の配置位置とに基づいて疎密波受波部に対する疎密波の到来方向を求めるとともに送信装置との距離を求める位置演算部と、受信装置を搭載した検出対象を特定する固有情報を入力する固有情報入力部と、位置演算部で求めた送信装置の相対位置の履歴と固有情報入力部から入力した固有情報とを記憶する記憶部と、記憶部に格納した記憶内容を非無線の伝送経路で取り出すインターフェイスとを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、検出対象の固有情報と位置の履歴とを対応付けて記憶部に記憶させるので、検出対象が移動した経路を検出対象ごとに分析することが可能になる。しかも、固有情報は固有情報入力部から入力することができるから、検出対象に応じた固有情報をいつでも入力することができ、たとえば、ショッピングカートのように不特定多数の人が使用する部材でも、使用する各個人ごとの固有情報を与えることが可能になる。さらに、記憶部の記憶内容は非無線の伝送経路で取り出すので、無線伝送路を用いる場合に比較して固有情報の秘匿性が高くなる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記送信装置は、固有の識別データをワイヤレス信号を用いて送信する識別データ送信部を備え、前記受信装置は、識別データ送信部からの識別データを受信する識別データ受信部を備え、前記位置演算部は、疎密波の受波時刻と識別データの受信時刻との関係に基づいて送信装置との距離を求めることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、送信装置の固有の識別データを受信装置が受信するから、複数台の送信装置が存在している場合でも混信なく送信装置との相対位置を求めることができる。また、位置演算部では識別データの受信時刻と疎密波の受波時刻との関係を用いて送信装置から受信装置までの疎密波の伝達時間を知ることができ、この伝達時間を用いることで送信装置までの距離を知ることができる。
【0012】
請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記受信装置は、時刻を計時する時計部を備え、前記記憶部に送信装置の相対位置を格納する際に時計部で計時している時刻を対応付けて格納することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、検出対象の移動した位置を時刻と対応付けているから、検出対象の移動速度の変化を分析することができ、検出対象が停止していた場所や検出対象の移動した平均速度などを求めることが可能になる。
【0014】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、前記インターフェイスは、前記記憶部の記憶内容を外部装置に転送するとともに外部装置から時刻情報を受信する機能を有し、前記時計部は外部装置からの時計情報を用いて時刻を修正する機能を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、時計部で計時している時刻を外部装置の管理する時刻に自動的に合わせるから、時刻の精度が高くなるとともに、外部装置が複数台の受信装置を管理する場合に、各受信装置の時刻をほぼ一致させることが可能になる。
【0016】
請求項5の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記インターフェイスは、人体が接触可能な電極と、人体に装着されたリーダライタとの間で電極に触れた人体を伝送経路の一部に用いたデータ通信を可能にするデータ通信装置とを備え、リーダライタは、受信したデータを記憶する機能と、記憶したデータを送信する機能とを備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、人体を伝送経路の一部に用いるとともに人体に装着したリーダライタを介在させて受信装置と外部装置との間でデータを転送することができるから、有線でのデータ通信のようなケーブルの接続が不要であり、無線でのデータ通信に比較するとデータの漏洩を防止して秘匿性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構成によれば、検出対象の固有情報と位置の履歴とを記憶部に記憶させるので、検出対象が移動した経路を検出対象ごとに分析することが可能になるという利点がある。また、固有情報は固有情報入力部から入力することができるから、検出対象に応じた固有情報をいつでも入力することができ、たとえば、ショッピングカートのように不特定多数の人が使用する部材でも、使用する各個人ごとの固有情報を与えることが可能になる。さらに、検出対象が移動した経路を記憶内容として記憶部に蓄積し、記憶部の記憶内容をインターフェイスを通して外部に取り出すのであって、記憶部の記憶内容を非無線の伝送経路で取り出すので、無線伝送路を用いる場合に比較すると情報の漏洩の可能性を低減でき固有情報の秘匿性が高くなるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施形態1)
本実施形態では、位置検出システムとして、図2に示すように、建物内で床面FL上を移動する移動体(たとえば、ショッピングカート)を位置検出の検出対象Obとし、検出対象Obが移動した位置を追跡する動線計測システムを例示する。検出対象Obの位置を追跡するために、床面FLの上方である天井面CLの定位置には疎密波を送波する送信装置1を設置し、検出対象Obには疎密波を受波する受信装置2を搭載する。したがって、既知の位置に送信装置1が配置されることになる。本実施形態では、送信装置1を天井面CLに設置する例を示しているが、壁面に設置してもよい。また、受信装置2において送信装置1の相対位置を計測し、送信装置1に関する既知の座標位置と計測した相対位置とから受信装置2の座標位置を求めるものとする。本実施形態では、疎密波として媒質(空気)の圧力変化が単発的に生じる圧力波を用いる。
【0020】
送信装置1は、図1に示すように、疎密波を送波する疎密波送波部11と、赤外線を伝送媒体としたワイヤレス信号を送信する識別データ送信部12とを備える。疎密波送波部11および識別データ送信部12は、それぞれドライバ13,14を介して制御部10からの指示を受けて動作する。制御部10はワンチップマイコンからなり、CPU、RAM、ROM、シリアル通信用インターフェイスを包含している。疎密波送波部11からは疎密波を間欠的に送波し、識別データ送信部12は識別データを含んだワイヤレス信号を送信する。識別データは制御部10に設定されており、送信装置1ごとに固有の識別データが設定される。疎密波の送波タイミングおよびワイヤレス信号の送信タイミングは制御部10において制御される。具体的には識別データを含むワイヤレス信号の送信と同時に疎密波を送波しており(実際には、ワイヤレス信号を送信する時刻と疎密波を送波する時刻との間には、ワンチップマイコンの命令処理に要する時間程度の時間遅れはある)、ワイヤレス信号と疎密波とは所定の出力間隔で間欠的に出力される。上述した送信装置1の機能は制御部10を構成しているワンチップマイコンに適宜のプログラムを搭載することにより実現される。
【0021】
受信装置2は、送信装置1に設けた疎密波送波部11から送波された疎密波を受波する疎密波受波部21を備え、疎密波受波部21は疎密波を受波すると電気信号である受波信号を出力する。つまり、疎密波受波部21は疎密波を受波信号に変換する。また、受信装置2は、送信装置1に設けた識別データ送信部12から送信されたワイヤレス信号を受信する識別データ受信部22も設けられる。識別データ受信部22は、ワイヤレス信号からキャリアを除去して識別データを抽出する。識別データ受信部22で抽出されたパルス列からなる識別データは制御部20に入力され、識別データを送信した送信装置1が制御部20において認識される。制御部20はマイクロコンピュータを主構成要素としており、CPU、RAM、ROM、シリアル通信インターフェイスを包含している。
【0022】
また、制御部20には、入出力が可能なインターフェイス26が付加される。インターフェイス26には、TIA/EIA−232−EやUSBなどの仕様のシリアルインターフェイスのほかSCSIのような仕様のパラレルインターフェイスなどを採用することができ、外部装置としてのコンピュータサーバのような管理装置(図示せず)において受信装置2での検出結果を利用できるようにしてある。インターフェイス26は、必ずしもケーブルを必要とはしないが、無線伝送路を用いない構成を採用する。
【0023】
疎密波受波部21は、複数個の受波素子を配列したアレイセンサであって、制御部20では各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と受波素子の配列位置とに基づいて疎密波の到来方向、すなわち検出対象Obの存在する方向を求める。ここで求める方向は疎密波受波部21に対する相対的な方向であるが、送信装置1の配置は既知であるから、送信装置1の配置を特定する絶対座標における疎密波の到来方向を求めることができる。
【0024】
上述したように疎密波の到来方向を求めるには、疎密波を受波した受波素子での受波時刻の時間差を含む情報が必要であるから、疎密波受波部21から出力される受波信号をA/D変換部23をデジタル信号である受波データに変換した後、各受波素子に対応する出力を一時記憶するデータ格納部24に格納する。疎密波受波部21は到来する疎密波を常時受波しているが、A/D変換部23およびデータ格納部24の動作タイミングは、制御部20からの指示によってタイミング制御部25が制御する。タイミング制御部25は、CPLD(Complex Programmable Logic Device)あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成されており、A/D変換部23およびデータ格納部24の動作タイミングを制御するエネーブル信号を生成するほか、データ格納部24の記憶領域を指定するためのアドレスを生成する。
【0025】
制御部20では、識別データ受信部22からシリアル通信インターフェイスを通して入力される識別データが、あらかじめ登録されている範囲内の識別データであるときには、タイミング制御部25に指示し受波信号に対応する受波データをデータ格納部24に格納するための待機状態になる。この待機状態は、識別データを含むワイヤレス信号を受信した後から設定される受波可能時間内に制限されている。つまり、受波可能時間以外において疎密波受波部21で受波された疎密波は、受波データに変換されずデータ格納部24にも格納されないから、疎密波受波部21では、実質的に受波可能時間内でのみ疎密波を受波することになる。
【0026】
受波可能時間は一定時間であって、受波可能時間が開始された後に受波可能時間内で疎密波受波部21が疎密波を受波すると、各受波素子が疎密波を受波した時刻情報を含む形で受波信号に対応する受波データがデータ格納部24に格納される。また、受波可能時間が終了すると、その後に受波した疎密波は無効になる。
【0027】
データ格納部24に格納された受波データは受波可能時間の終了後に制御部20に読み込まれ、各受波素子での受波時刻の時間差に相当する時間を求めるために、隣接する受波素子に対応する受波データを時間軸方向に既定した時間分だけシフトして加算する。
【0028】
この処理について簡単に説明する。いま、疎密波受波部21において受波素子40が図3に示すように同一平面上において一次元的に等間隔で配列されているものとする(実際には二次元的に配列されている)。受波素子40が配列された面に対する超音波の波面の角度がθであるとき、疎密波の到来方向もθになる。音速をc、受波素子40の配列ピッチ(中間間の距離)をLとすれば、到来方向がθである疎密波の波面が隣接する受波素子40に到達する際の時間差ΔTは、ΔT=L・sinθ/cである。すなわち、θ=sin−1(ΔT・c/L)であって、時間差ΔTを求めると到来方向θを求めることができる。
【0029】
以上の関係から、各受波素子40で受波した疎密波に対応する受波信号を到来方向θに対応した時間差ΔT分だけ遅延させると、時間軸方向において受波信号の位置を一致させることができることがわかる。たとえば、隣り合う3個の受波素子40から図4(a)〜(c)のような受波信号が出力され、隣接する受波素子40から出力される受波信号が時間差ΔTを有しているものとする。この場合、隣接する受波素子40から得られる受波信号を、適宜の遅延手段によって互いにΔTだけ遅延させる。つまり、図4(c)の受波信号を2ΔTだけ遅延させ、図4(b)の受波信号をΔTだけ遅延させると、両受波信号は時間軸方向において図4(a)の受波信号の位置に一致する。各受波素子40の出力である受波信号の時間軸方向における位置が一致していれば、これらの受波信号を加算したときに加算結果は大きな振幅になる。言い換えると、加算結果の振幅が大きければ、疎密波の到来方向θは当該遅延時間ΔTに対応しているといえる。
【0030】
本実施形態では、受信信号を時間軸方向に偏移させるのではなく、受波データを時間軸方向に偏移させる構成を採用しているが、到来方向θを算出する目的においては差異はない。しかして、制御部20ではデータ格納部24に格納された受波データに対して、あらかじめ設定した複数種類の遅延時間を適用して遅延させた後に加算し、加算結果が最大になるときの遅延時間を求める。この遅延時間は時間差ΔTに対応するから、遅延時間にあらかじめ到来方向θを対応付けておくことにより、疎密波の到来方向をただちに求めることができる。遅延時間は、たとえば到来方向を5度刻みで検出することができるように設定される。上述のように受波データを時間軸方向に偏移させた後に加算する処理を遅延加算処理と呼ぶ。遅延加算処理は制御部20に設定したプログラムにより実現される。
【0031】
以上説明したように、受信装置2では送信装置1からのワイヤレス信号を受信し、制御部20に登録された範囲内の識別データを含むワイヤレス信号であることを確認すると、受波可能時間の制限内で受波信号を待ち受け、受波可能時間内に受波した疎密波のみを用いて疎密波の到来方向を算出する。
【0032】
ここに、上述したように、ワイヤレス信号の送信と疎密波の受波とのタイミングには既知の一定の時間遅れがあるが、識別データ送信部12からのワイヤレス信号の送信と識別データ受信部22でのワイヤレス信号の受信とは実質的に同時とみなせるから、識別データ受信部22でのワイヤレス信号の受信時刻と、疎密波受波部21での疎密波の受波時刻との時間差は、既知の時間遅れを考慮して計算すると実質的に疎密波が媒質中を伝播する時間とみなすことができる。したがって、制御部20では、ワイヤレス信号を受信してから疎密波を受波するまでの時間によって受信装置2に対する送信装置1の相対的な距離を求める。つまり、送信装置1の方向と距離とを知ることができるから、受信装置2では送信装置1の三次元位置を求めることができる。なお、上述した制御部20の動作はマイクロコンピュータに適宜のプログラムを搭載することにより実現され、制御部20において送信装置1の三次元位置を求めるから制御部20が位置演算部として機能する。
【0033】
ところで、上述した管理装置は、検出対象Obとは別に設けられる。たとえば、検出対象Obがショッピングカートであれば、管理装置とともに用いることにより、ショッピングカートの移動した位置を追跡する動線計測システムを構成することができる。この場合、制御部20で求めた位置の履歴を記憶部27に格納しておき、インターフェイス26を介して接続される管理装置に記憶部27の記憶内容を転送する。記憶部27には、フラッシュメモリあるいはハードディスクを用いる。
【0034】
記憶部27には受信装置2に設定された固有情報も格納される。固有情報は、受信装置2、検出対象Ob、検出対象Obの使用者などを特定する情報であり、たとえば、検出対象Obがショッピングカートである場合には、ショッピングカートの固体情報とショッピングカートの使用者を特定する個人情報とを用いればよい。個人情報は、必ずしも個人を特定する情報でなくてもよく、たとえば年齢と性別程度の情報であってもよい。年齢と性別とを固有情報として位置の履歴とともに記憶部27に登録しておけば、管理装置で年齢別や男女別に関心を持つ商品の傾向を整理することが可能になり、ある種のマーケティングリサーチが可能になる。
【0035】
固有情報は固有情報入力部28から入力される。固有情報入力部28は、キーボードを用いてもよいが、磁気カードやICカードを読み取るカードリーダを用いれば、ショッピングカードなどの情報を読み取って固体情報を取り込むことが可能になる。
【0036】
本実施形態では、受信装置2にディスプレイとスピーカとの少なくとも一方を用いた情報提示部29を設けてあり、固体情報入力部28から読み取った固体情報に対して記憶部27に適宜の提示情報が記憶されている場合には、情報提示部29を通して使用者に情報を提示する。
【0037】
たとえば、ショッピングカートに取り付けたカードリーダにショッピングカードを読み取らせると、ショッピングカードに登録された固有情報に照応した商品情報(お勧め商品や関心を持ちそうな新商品などの情報)を記憶部27から抽出し、情報提示部29により提示する。情報提示部29による商品情報の提示は、制御部20で検出している位置と連動させてもよい。たとえば、制御部20で検出した位置によって、提示しようとする商品情報に関連する商品を陳列した商品棚に受信装置2が近付いたと判断したとき(商品棚の位置を中心とする所定範囲をあらかじめ設定しておき、その範囲内に入ったことを検出したとき)、その陳列棚の商品に関連する商品情報を情報提示部29に提示するのである。このような情報提示によって、顧客に満足度の高い情報提示が可能になる。情報提示部29に提示する情報は、管理装置から記憶部27にあらかじめ取り込んでおけばよい。
【0038】
ところで、送信装置1における疎密波送波部11を構成している送波素子には、圧電素子からなる超音波振動子を用いてもよいが、圧電素子は一般にせん鋭度(Q値)が100を越えるから残響時間が比較的長く、残響時間を考慮すると疎密波を送波する時間間隔が長くなる。つまり、送信装置1を搭載する検出対象が移動体であるときには、移動体の位置を細かく計測することができない。
【0039】
そこで、疎密波送波部11には、図5に示す構造を有した残響時間の短い送波素子30を用いるのが望ましい。この送波素子30は、単結晶のp形のシリコン基板からなる支持基板31の一表面(図5における上面)側に多孔質シリコン層からなる熱絶縁層32が形成され、熱絶縁層32上に金属薄膜(たとえば、タングステン薄膜)からなる発熱体層33が形成され、さらに、支持基板31の上記一表面側に発熱体層33と電気的に接続された一対の電極パッド34が形成されている。支持基板31の平面形状は長方形状であって、熱絶縁層32、発熱体層33も平面形状はそれぞれ長方形状に形成される。
【0040】
この送波素子30は熱励起式であって、発熱体層33に温度変化が生じるように発熱体層33に通電し、発熱体層33に接触している媒質の膨張収縮を促すことによって疎密波を発生させる。つまり、発熱体層33の両端の電極パッド34間に通電し発熱体層33に温度変化を生じさせることで、発熱体層33に接触している媒質である空気に温度変化を生じさせる。発熱体層33に接触している空気は、発熱体層33の温度上昇時には膨張し発熱体層33の温度下降時には収縮するから、発熱体層33への通電を制御することによって空気中を伝搬する疎密波を発生させることができるのである。
【0041】
圧電素子からなる送波素子はせん鋭度(Q値)が大きいものであるから、疎密波を瞬間的に発生させたとしても、圧電素子の駆動を停止した後も図6(b)に示すように、共振によって残響が継続する。これに対して、図5に示した熱励起式の送波素子30は、せん鋭度が小さく、実質的に共振周波数を持たないものである。熱励起式の送波素子30では、上述したように、一対の電極パッド34を介した発熱体層33への通電に伴う発熱体層33の温度変化に伴って疎密波を発生する。
【0042】
つまり、発熱体層33へ与える駆動電圧ないし駆動電流の波形が正弦波形状であるときには、当該正弦波形の2倍の周波数の疎密波を発生させることができる。したがって、電極パッド34に印加する駆動電圧の波形を、正弦波の半周期に相当する孤立波とすれば、図6(a)に示すような正弦波形の1周期分の疎密波を発生させることができる。しかも、熱励起式の送波素子30は実質的に共振周波数を持たないから残響時間はごく短くなる。また、圧電素子は固有の共振周波数を有するので発生可能な疎密波の周波数範囲が狭いが、熱励起式の送波素子30は実質的に共振周波数を持たないので発生可能な疎密波の周波数範囲が広範囲になる。しかも、駆動電圧もしくは駆動電流の波形を孤立波とすれば、図6(a)に示すように1周期程度の疎密波を発生させることができる。
【0043】
上述した熱励起式の送波素子30は、支持基板31としてp形のシリコン基板を用いており、熱絶縁層32を多孔度が60〜80%(望ましくは略70%)の多孔質シリコン層により構成している。これは、多孔度が60%未満では断熱効果が小さくなり、多孔度が80%を越えると構造的に脆くなるからである。この熱絶縁層32は、支持基板31として用いるシリコン基板の一部をフッ化水素水溶液とエタノールとの混合液からなる電解液中で陽極酸化処理することにより形成することができる。ここに、陽極酸化処理の条件(たとえば、電流密度、通電時間など)を適宜設定することにより、熱絶縁層32となる多孔質シリコン層の多孔度や厚みそれぞれを所望の値とすることができる。
【0044】
多孔質シリコン層は、多孔度が高くなるにつれて熱伝導率および熱容量が小さくなることが知られている。たとえば、熱伝導率が148W/(m・K)、熱容量が1.63×106J/(m・K)の単結晶のシリコン基板を陽極酸化し、多孔度が60%の多孔質シリコン層を形成すると、この多孔質シリコン層は、熱伝導率が1W/(m・K)、熱容量が0.7×106J/(m・K)になる。本実施形態では、上述のように多孔度が略70%の多孔質シリコン層により熱絶縁層32を形成してあり、熱絶縁層32の熱伝導率が0.12W/(m・K)、熱容量が0.5×106J/(m・K)になっている。
【0045】
なお、熱伝導度および熱容量について熱絶縁層32を支持基板31に比べて小さくし、熱伝導度と熱容量との積についても熱絶縁層32を支持基板31に比べて十分に小さくすることにより、発熱体層33の温度変化を空気に効率よく伝達することができ、発熱体層33と空気との間で効率よく熱交換させることができる。しかも、支持基板31が熱絶縁層32からの熱を効率よく受け取るから熱絶縁層32の熱を逃がすことができ発熱体層33からの熱が熱絶縁層32に蓄積されるのを防止することができる。
【0046】
発熱体層33は、高融点金属の一種であるタングステンにより形成してあり、熱伝導率が174W/(m・K)、熱容量が2.5×106J/(m・K)となっている。発熱体層33の材料はタングステンに限らず、たとえば、タンタル、モリブデン、イリジウムなどを採用してもよい。
【0047】
上述の熱励起式の送波素子30は、支持基板31の厚さを525μm、熱絶縁層32の厚さを10μm、発熱体層33の厚さを50nm、各電極パッド34の厚さを0.5μmとしてある。ただし、これらの厚さは一例であり、とくに限定する主旨ではない。また、支持基板31の材料としてSiを採用しているが、支持基板31の材料はSiに限らず、たとえば、Ge,SiC,GaP,GaAs,InPなどの陽極酸化処理による多孔質化が可能な他の半導体材料でもよい。
【0048】
ところで、受信装置2の疎密波受波部21に用いる受波素子40は、疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換するものであり、疎密波受波部21には1枚の基板(図示せず)に複数個の受波素子40を配列して構成してある。ここでは、受波素子40を2次元的に配列したアレイセンサを構成しているものとする。アレイセンサにおいて、受波素子40の中心間距離(配列ピッチ)は疎密波送波部11から発生させる疎密波の波長程度(たとえば、疎密波の波長の0.5〜5倍程度)に設定することが望ましい。これは、疎密波の波長の0.5倍よりも小さいと疎密波の波面が隣り合う受波素子40にそれぞれ到達する時刻の時間差が小さくなり、時間差の検出が困難になるからである。受波素子40として、圧電素子を用いることが可能であるが、疎密波送波部11と同様に、残響の少ない構成が望ましい。したがって、疎密波の圧力(音圧)を静電容量の変化に変換する静電容量式の受波素子40を用いることが望ましい。
【0049】
この種の受波素子40は、図7に示す構成のものがある。図示する受波素子40は、マイクロマシンニング技術により形成され、シリコン基板に厚み方向に貫通する窓孔41aを設けることで形成された矩形枠状のフレーム41と、フレーム41の一表面側において窓孔41aを囲む四辺のうちの一辺に固定されるとともに窓孔41aを覆う形に配置されたカンチレバー型の受圧板42とを備える。フレーム41の上記一表面には熱酸化膜45を介してシリコン酸化膜46が積層され、さらにシリコン酸化膜46の表面はシリコン窒化膜47で覆われる。受圧板42の一端部は熱酸化膜45を介してフレーム41に固定され、受圧板42の他端部はシリコン基板の厚み方向においてシリコン酸化膜46に対向する。シリコン酸化膜46における受圧板42の他端部との対向面には金属薄膜(たとえば、クロム膜など)からなる固定電極43aが形成され、受圧板42の他端部において固定電極43aと対向している部位であって固定電極43aとの対向面の背面側には金属薄膜(たとえば、クロム膜など)からなる可動電極43bが形成される。フレーム41の他表面にはシリコン窒化膜48が形成される。ここに、受圧板42は、各シリコン窒化膜47,48とは別工程で形成されるシリコン窒化膜により構成される。
【0050】
図7に示す静電容量式の受波素子40では、受圧板42に疎密波の圧力(音圧)が作用すると、疎密波の圧力に応じて固定電極43aと可動電極43bとの距離が変化するから、固定電極43aと可動電極43bとの間の静電容量を検出することにより、疎密波の圧力を検出することができる。したがって、固定電極43aと可動電極43bとの間に直流バイアス電圧を印加しておけば、固定電極43aと可動電極43bとの間には疎密波の圧力に応じた電圧変化が生じ、疎密波の音圧を電気信号に変換することができる。この種の静電容量式の受波素子40はせん鋭度が圧電素子よりも小さいから、圧電素子を用いる場合よりも受波できる疎密波の周波数帯域幅を広くとることができる。
【0051】
なお、受波素子40は図7の構造に限定されるものではなく、たとえば、シリコン基板などをマイクロマシンニング技術などにより加工して形成され疎密波の圧力を受けるダイヤフラム部からなる可動電極と、ダイヤフラム部に対向する背板部からなる固定電極との間の静電容量を検出する構成を採用してもよい。この構成では、疎密波の圧力が作用していない状態でのダイヤフラム部と背板部とのギャップ長を規定する絶縁膜からなるスペーサ部を設け、背板部には複数の排気孔を貫設する。
【0052】
図5に示した熱励起式の送波素子30のせん鋭度(Q値)は1程度であり、図7に示した静電容量式の受波素子40のせん鋭度は3〜4程度であって、圧電素子に比較するとせん鋭度が大幅に小さい。したがって、送波素子および受波素子に圧電素子を用いる場合に比較すると、疎密波送波部11から送波される疎密波に含まれる残響成分の割合が少なくなり、疎密波受波部21から出力される受波信号に含まれる残響成分の割合が少なくなる。つまり、送波時には疎密波の送波間隔を短くすることができ、受波時には短い時間間隔で疎密波を受波しても疎密波に対応する受波信号が重複しないように分離することができる。なお、送波素子30および受波素子40のせん鋭度(Q値)はいずれも10以下が望ましく、さらに望ましくは5以下とする。
【0053】
(実施形態2)
本実施形態は、図8に示すように、実施形態1の構成に加えて時刻を計時する時計部16を設けたものである。時計部16はリアルタイムクロックICからなり、セットした時刻をもとに時刻を計時する。時計部16で計時される時刻は、制御部20において検出した位置と対応付けて記憶部27に登録される。つまり、制御部20で検出された位置が更新されるたびに記憶部27には位置と時刻とが格納される。
【0054】
このように、受信装置2の位置と時刻とを対応付けて記憶部27に格納しておくことにより、管理装置では記憶部27の記憶内容から、特定の位置に停止していた時間や特定の場所間の移動速度などを知ることが可能になる。したがって、検出対象Obがショッピングカートである場合には、どの商品の近くで停止していたか、あるいはどの商品に近付くときの速度が速かったかなどの情報を取得することができ、固有情報で対応付けられた顧客の嗜好を分析するための情報として用いることができる。
【0055】
なお、時計部16の時刻合わせは、管理装置によって行うのが望ましい。つまり、時計部16には時刻情報が与えられると時刻を修正する機能を設け、管理装置にはインターフェイス26を通して時計部16に時刻情報を与える機能を設けておくのが望ましい。インターフェイス26では記憶部27の記憶内容が管理装置で読み出される際に、管理装置からの時計情報を受信する機能を有しており、制御部20ではインターフェイス26を通して受信した時計情報を時計部16に与えることによって時計部16の時刻を修正させる。この構成を採用することにより、記憶部26の記憶内容を管理装置で読み出す際に時計部16の時刻が自動的に修正されるから、受信装置2の時計部16で計時する時刻を管理装置の時刻にほぼ一致させておくことができる。つまり、複数台の受信装置2を1台の管理装置で管理する場合には、各受信装置2における時計部16で計時する時刻をほぼ一致させることができる。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【0056】
(実施形態3)
本実施形態は、受信装置2と管理装置との間のデータの受け渡しの際の秘匿性を高めるために、受信装置2のインターフェイス26を、図9に示すように、一対の電極17a,17bと、電極17a,17bを通して人体Mを伝送経路とするデータ通信を可能にするデータ通信装置(図示せず)とで構成している。
【0057】
人体Mにはリーダライタ50が装着され、リーダライタ50に設けた電極51a,51bと受信装置2の電極17a,17bとの間の伝送経路の一部として人体Mが用いられる。図示するリーダライタ50は人体Mの片方の腕部に装着される。したがって、リーダライタ50には、腕部に装着するためのリストバンドのような装着具が設けられる。リーダライタ50に設けた電極51a,51bは、ともに人体Mに接触し、図示する構成では、両電極51a,51bが腕の長手方向に離間して配置されている。また、受信装置2の一方の電極17aは人体Mの一部(たとえば、指先)が接触可能になるように配置され、受信装置2の他方の電極17bは人体Mには接触せず、人体Mから離間するように配置される。
【0058】
データ通信装置は、制御部20から出力されたデータで変調した交流電圧を一対の電極17a,17bに印加するように構成される。また、データ通信装置は、一対の電極17a,17bに印加された交流電圧からデータを抽出して制御部20に与える機能も備える。リーダライタ50も同様の構成のデータ通信装置(図示せず)を内蔵しており、さらにリーダライタ50にはデータ通信装置を通して受信したデータを記憶する記憶部(図示せず)が設けられる。データ通信装置は記憶部に記憶したデータを送信する機能も備える。
【0059】
受信装置2とリーダライタ50との間でデータ通信を行うには、リーダライタ50を装着した腕の指先を受信装置2の電極17aに接触させる。この状態において、電極17a−人体M−電極51a−人体M−電極51b−人体M−(人体Mと電極17bとの間の静電容量)−電極17bというループ状の伝送経路が形成される。この伝送経路に含まれるインピーダンスを考察すると、電極17aと電極51aとの間に人体MによるインピーダンスZ1があり、電極51a,51bの間に人体MによるインピーダンスZ2がある。また、電極17bと人体Mとは接触していないが、電極17bと人体Mとの間の静電容量によるインピーダンスZ4がある。電極51bと電極17bとのインピーダンスには、静電容量によるインピーダンスZ4のほか、人体MによるインピーダンスZ3も含まれる。さらに、電極17aと人体Mとの接触抵抗によるインピーダンスZ5や、電極51a,51bと人体Mとの接触抵抗によるインピーダンスZ6も伝送経路に含まれる。なお、電極51bと電極17bとの間には図9に破線で示した経路も含まれる。
【0060】
電極17a,17bには交流電圧が印加されるから、静電容量によるインピーダンスZ4を含む伝送経路を通してデータを伝送することが可能になる(この種のいわゆる人体伝送の技術は周知であって、たとえば特開2001−77735号公報に記載されている)。
【0061】
上述したリーダライタ50を用いることによって、受信装置2の記憶部26に格納された記憶内容をリーダライタ50で読み出すことが可能になる。受信装置2から記憶内容をリーダライタ50に読み出す際には、人体Mを通していわば有線でデータ通信を行っているから、無線伝送路のようにデータが外部に漏洩する可能性が少なくデータの秘匿性が高くなる。また、通常の有線伝送路を用いる場合のようなコネクタなどの接続が不要であって、リーダライタ50を装着した人が指先を電極17aに触れるだけでよいから、ケーブルの着脱作業が不要である。
【0062】
ここに、受信装置2と通信可能なリーダライタ50をあらかじめ受信装置2に登録した識別情報を持つリーダライタ50に制限しておけば、受信装置2の記憶内容が不用意に読み出されることが防止され、データの秘匿性が一層高くなる。また、指先を電極17aに接触させた時点で、受信装置2とリーダライタ50との間で交信することによりリーダライタ50によるデータの読出を開始するようにし、データの読出が終了した時点で、リーダライタ50において終了を示す報知を行うようにすれば、受信装置2の記憶内容をリーダライタ50に確実に取り込むことが可能になる。この報知は受信装置2で行ってもよいのはもちろんのことである。
【0063】
リーダライタ50に取り込まれたデータは、図示しない管理装置に取り出される。管理装置は、受信装置2と同様に、人体Mに接触する電極と人体Mとは静電容量によって結合される非接触の電極とを有し、リーダライタ50との間でデータ通信を行う。リーダライタ50と管理装置との間では、リーダライタ50が受信装置2の記憶部26から読み込んだデータを管理装置に引き渡す。この場合も、データの転送終了をリーダライタ50において報知すればよい。この報知を管理装置で行ってもよいのはもちろんのことである。
【0064】
この構成により、リーダライタ50と管理装置とを接続するケーブルが不要である上に、リーダライタ50と管理装置との間でデータ通信を行う際のデータの秘匿性を確保することができる。
【0065】
なお、本実施形態の構成では、管理装置と受信装置2との間でデータを直接授受せず、リーダライタ50を介在させているから、受信装置2に設けた時計部16の時刻を管理装置の時刻に合わせて自動修正することはできないが、リーダライタ50に時計機能を持たせ、リーダライタ50で計時する時刻を用いて受信装置2の時計部17で計時する時刻を自動修正することは可能である。さらに、リーダライタ50が計時する時刻を管理装置が計時する時刻で自動修正してもよい。
【0066】
以上説明したように、本実施形態では有線伝送路を用いる場合のようなケーブル接続の煩わしさがなく、無線伝送路を用いる場合に比較してデータの秘匿性が高くなる。したがって、受信装置2で取得した固有情報を管理装置に転送する際の利便性が高くなる。なお、他の構成および動作は実施形態1、2と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施形態1を示すブロック図である。
【図2】同上の使用例を示す概略構成図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】同上に用いる送波素子の一例を示す断面図である。
【図6】同上の動作説明図である。
【図7】同上に用いる受波素子の一例を示し、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。
【図8】実施形態2を示すブロック図である。
【図9】実施形態3を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0068】
1 送信装置
2 受信装置
10 制御部
11 疎密波送波部
12 識別データ送信部
16 時計部
17a 電極
17b 電極
20 制御部(位置演算部)
21 疎密波受波部
22 識別データ受信部
23 A/D変換器
24 データ格納部
25 タイミング制御部
26 インターフェイス
28 固有情報入力部
27 記憶部
40 受波素子
50 リーダライタ
M 人体
Ob 検出対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定位置に固定され疎密波を間欠的に送波する送信装置と、位置検出の検出対象に搭載され送信装置から送波された疎密波を受波することにより送信装置の相対的な位置を検出する受信装置とを備え、送信装置は、疎密波を送波する疎密波送波部を備え、受信装置は、疎密波送波部から送波された疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換する受波素子を複数個配列したアレイセンサからなる疎密波受波部と、疎密波受波部の各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と各受波素子の配置位置とに基づいて疎密波受波部に対する疎密波の到来方向を求めるとともに送信装置との距離を求める位置演算部と、受信装置を搭載した検出対象を特定する固有情報を入力する固有情報入力部と、位置演算部で求めた送信装置の相対位置の履歴と固有情報入力部から入力した固有情報とを記憶する記憶部と、記憶部に格納した記憶内容を非無線の伝送経路で取り出すインターフェイスとを備えることを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記送信装置は、固有の識別データをワイヤレス信号を用いて送信する識別データ送信部を備え、前記受信装置は、識別データ送信部からの識別データを受信する識別データ受信部を備え、前記位置演算部は、疎密波の受波時刻と識別データの受信時刻との関係に基づいて送信装置との距離を求めることを特徴とする請求項1記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記受信装置は、時刻を計時する時計部を備え、前記記憶部に送信装置の相対位置を格納する際に時計部で計時している時刻を対応付けて格納することを特徴とする請求項1または請求項2記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記インターフェイスは、前記記憶部の記憶内容を外部装置に転送するとともに外部装置から時刻情報を受信する機能を有し、前記時計部は外部装置からの時計情報を用いて時刻を修正する機能を有することを特徴とする請求項3記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記インターフェイスは、人体が接触可能な電極と、人体に装着されたリーダライタとの間で電極に触れた人体を伝送経路の一部に用いたデータ通信を可能にするデータ通信装置とを備え、リーダライタは、受信したデータを記憶する機能と、記憶したデータを送信する機能とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−33210(P2007−33210A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216385(P2005−216385)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】