位置測定方法及び位置測定装置
【課題】測定された対象物の位置データに基づいて得られる補正後のデータの精度を高める。
【解決手段】対象物を実測して得た位置データに基づき該対象物の位置の基準となるマスターデータに対する補正値を算出し、該マスターデータに補正値を加味した補正位置データに基づいて前記対象物の所定部位に作業を行う構成の装置に適用される位置測定方法であって、対象物の複数のサンプル各々に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する事前測定ステップと、該事前測定ステップで取得された前記各サンプルの基準点の位置データに基づいて前記マスターデータを事前に算出する事前算出ステップと、対象物に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する実測ステップと、該実測ステップで取得された前記位置データに基づいて前記事前算出ステップで算出されたマスターデータに対する補正値を算出する補正値算出ステップとを有する。
【解決手段】対象物を実測して得た位置データに基づき該対象物の位置の基準となるマスターデータに対する補正値を算出し、該マスターデータに補正値を加味した補正位置データに基づいて前記対象物の所定部位に作業を行う構成の装置に適用される位置測定方法であって、対象物の複数のサンプル各々に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する事前測定ステップと、該事前測定ステップで取得された前記各サンプルの基準点の位置データに基づいて前記マスターデータを事前に算出する事前算出ステップと、対象物に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する実測ステップと、該実測ステップで取得された前記位置データに基づいて前記事前算出ステップで算出されたマスターデータに対する補正値を算出する補正値算出ステップとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の位置を測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の生産現場では、所定箇所まで搬送されて停止した車体に、防錆、防振、防音用のシーラ剤が塗装される。通常、この塗装作業はロボットアームに搭載されたシーリングガンを用いることによって自動化され、シーリングガンから吐出されるシーラ剤が車体の所定部位に塗布されるようロボットアームの駆動制御が実行されている。
【0003】
適切な部位にシーラ剤を塗装すべく車体の搬送や停止の制御を精密に実行すると多大なイニシャルコスト及びメンテナンスコストを要するため、車体の停止位置の精度は塗装作業で要求される精度よりも低くなりがちである。このため、ロボットアームを制御する装置は、まず停止した車体に設けられている基準点の位置を測定し、予め記憶されたマスターデータを測定された位置のずれ量に相当する補正値を算出する。ロボットアームの駆動制御はマスターデータをこの補正値を用いて補正することにより得られる位置データに基づいて実行され、これにより車体の停止位置の精度を過度に高くすることなくシーラ剤が適切な部位に塗布され得る(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、CAD値やCAM値等の理想的ではあるが机上の設計データをマスターデータとして利用し、このマスターデータを測定された三次元の位置データに応じて補正するよう構成された位置測定装置が開示されている。また、この位置測定装置は、6本のロボットアームの各々に1台ずつカメラが設けられて構成されている。これら6台のカメラは3組に分けられ、各組2台のカメラがステレオ視により基準点を撮像する。この撮像結果に基づいて3つの基準点の三次元の位置データを取得するようになっている。
【特許文献1】特許第2767417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際には、複数の鋼板を溶接してなる車体を設計データどおりに生産することは困難であるため、実際に生産された車体の寸法と設計データの寸法との間には不可避的な偏差がある。このため、特許文献1のように設計データをマスターデータとして利用すると、補正後のデータには実際の寸法と設計上の寸法との偏差が残ったままとなる。このようにマスターデータとして設計データを利用した場合には、特異解が発生して補正値を精度よく算出することが困難となり、シーラ剤の塗布位置がずれる場合がある。
【0006】
しかも、特許文献1によると、ロボットアーム1台につきカメラが1台設けられており、別個のロボットアームに取り付けられた2台のカメラでステレオ視による画像を生成する構成となっている。ロボットアームにはカメラの重量や自重に基づいて鉛直下向きの撓みが不可避的に発生するため、この各ロボットアームの撓みによってステレオベースや挟角が所望の値から外れ、基準点の位置測定を高精度に行うことが困難となっている。ロボットアームの撓みを予め考慮したロボットアームの駆動制御を実行するとなると、制御内容が煩雑になってカメラのセッティングに要する時間が長くなる。このため、塗装作業に要する時間が長くなり、自動車の生産性に影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、対象物の位置の測定を精度よく行うこと、さらには対象物の位置データの補正を精度よく行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る位置測定方法は、対象物を実測して得た位置データに基づき該対象物の位置の基準となるマスターデータに対する補正値を算出し、該マスターデータに補正値を加味した補正位置データに基づいて前記対象物の所定部位に作業を行う構成の装置に適用される位置測定方法であって、対象物の複数のサンプル各々に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する事前測定ステップと、該事前測定ステップで取得された前記各サンプルの基準点の位置データに基づいて前記マスターデータを事前に算出する事前算出ステップと、対象物に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する実測ステップと、該実測ステップで取得された前記位置データに基づいて前記事前算出ステップで算出されたマスターデータに対する補正値を算出する補正値算出ステップとを有することを特徴としている。
【0009】
かかる構成によれば、対象物のサンプルを利用して対象物の基準点の位置の基準となるマスターデータが作成され、実測された位置データに基づいて該マスターデータを補正するための補正値が算出される。このように、理想的な設計データをマスターデータとして用いるのではなく、実測によって取得したデータをマスターデータとして利用し、同じく実測された位置データに基づいて補正値を算出し、この補正値に従ってマスターデータを補正して取得されたデータに基づいて対象物に対する作業を行うようになっている。このため、対象物に対する作業を正確に行うことができるようになる。
【0010】
前記事前測定ステップにおいて、ステレオ視により前記サンプルを撮影した一対の画像に基づいて、三次元の前記位置データが取得され、前記実測ステップにおいて、ステレオ視により前記対象物を撮影した一対の画像に基づいて、三次元の前記位置データが取得されてもよい。かかる構成によれば、三次元の位置データが取得され、高度な位置測定が実現される。
【0011】
前記事前算出ステップにおいて、前記マスターデータが各サンプルの基準点の位置データを平均することによって算出されてもよい。かかる構成によれば、マスターデータの算出を平易に行うことができるとともに、サンプル数を増やすことによって信頼性の高いデータを作成することができるようになる。
【0012】
前記事前測定ステップにおいて、前記各サンプルに設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、前記事前算出ステップにおいて、該複数の基準点の各々について前記マスターデータを算出し、前記実測ステップにおいて、対象物に設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、
前記補正値算出ステップが、前記マスターデータ間の位置関係を、前記各マスターデータが通る第1の円によって定義するステップと、前記実測ステップで測定された各基準点間の位置関係を、各基準点が通る第2の円によって定義するステップと、前記第1の円を規定する第1の座標系を前記第2の円を規定する第2の座標系に変換するための座標変換量を算出するステップと、式L1(φ)2+L2(φ)2+……+Ln(φ)2が最小値をとるときの角度φを求めるステップとを有し、ここで、φは、前記第1の円の法線周りに回転したときの回転角、Ln(φ)は、前記第1の円が角度φだけ法線回りに回転したときの、n個目のマスターデータと該n個目のマスターデータと対応する基準点の位置データとの間の距離であり、更に、前記座標変換量及び前記角度φを前記補正値として算出するステップとを有していてもよい。かかる構成によれば、最小二乗法を利用して補正値が算出されており、複数の基準点それぞれについてバランスよく補正することができるようになる。
【0013】
前記事前測定ステップにおいて、前記各サンプルに設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、前記事前算出ステップにおいて、該複数の基準点の各々について前記マスターデータを算出し、前記実測ステップにおいて、対象物に設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、前記補正値算出ステップが、前記各マスターデータ間の位置関係を規定する第1座標系と、前記実測ステップで測定された前記各基準点間の位置関係を規定する第2座標系とを定めるステップと、前記第1座標系を前記第2座標系に変換するための座標変換量を前記補正値として算出するステップとを有していてもよい。かかる構成によれば、座標の変換を行うだけで補正値を算出することができるようになり、補正値を簡便に算出することができるようになる。
【0014】
本発明に係る位置測定装置は、測定対象物の位置の基準となるマスターデータを記憶する記憶部と、対象物に設けられた基準点の位置を測定して位置データを取得する測定部と、該測定部で取得された位置データに基づいて前記マスターデータを補正するための補正値算出部とを有する位置測定装置であって、測定対象物の実測の事前に、前記測定部により前記測定対象物の複数のサンプルの各々に設けられた基準点の位置が測定されて各サンプルの基準点の位置データが取得され、前記記憶部に該取得された各位置データに基づいて算出された前記マスターデータが記憶され、測定対象物の実測時に、前記補正値算出部が、前記記憶部に記憶された前記マスターデータを、実測された測定対象物の基準点の位置データに基づいて補正する構成であることを特徴としている。かかる装置においても上記同様の作用を生じる。
【0015】
前記基準点をステレオ視により撮影する第1及び第2のカメラを備え、前記測定部は該第1及び第2のカメラで撮影された一対の画像に基づいて基準点の位置データを測定するよう構成されており、該第1及び第2のカメラが、単一のロボットアームに取り付けられていることが好ましい。かかる構成によれば、同一のロボットアームにステレオ視するカメラが取り付けられることにより、ロボットアームに撓みが発生してもステレオベースや挟角が変更されることはない。したがって、ステレオ視により撮影した画像に基づく位置測定を高精度に行うことができるようになる。
【0016】
前記ロボットアームに、前記補正部により補正された位置データに基づいて対象物に所定の作業を行う作業装置が搭載されていることを特徴とする請求項7に記載の位置測定装置。かかる構成によれば、撮像結果に基づく位置の測定及び位置データの補正処理の終了後ただちに所定の作業に移行することができ、位置計測を利用した作業に要する時間の短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、特異解を発生することなく対象物の位置データの補正を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付する図面を参照して本発明に係る実施の形態について説明する。
【0019】
ここでは、本発明に係る対象物の実施例を自動車の車体として説明する。図1は自動車の生産現場の一部概要を平面視で模式的に示す説明図、図2はそれを背面視で模式的に示す説明図である。図1及び図2に示す生産現場には、多数の鋼板を溶接してなる車体100の搬送経路をなすレール1が設けられている。レール1には走行ユニット2を介して複数のハンガー3が吊るされており、各ハンガー3は車体100の側方の窓枠部101に係合している。このようにハンガー3によって吊り下げられた車体100は、走行ユニット2の動作に基づいてレール1に沿って搬送される。
【0020】
この搬送経路中には、車体100の床裏部102や鋼板の合わせ目に防錆用、防音用、防振用のシーラ剤をシーリング塗布したりスプレー塗装するための塗装エリア5が設定されている。この塗装エリア5には、複数台の多関節型のロボット6a,6b,6c,6dが設けられている。各ロボット6a,6b,6c,6dは、複数のアーム7と、アーム同士を揺動可能に連結する関節8とを有してなる。ロボット6a,6b,6cの先端アーム9には、後述する車体に防錆及び防水用のシーラ材を塗布するために用いるシーリングガン25や、搬送されて停止した車体の位置を計測するために用いるカメラ33等が搭載されており、ロボット6dにはシーリングガン25が搭載されている。なお、図3は、ロボット6a,6b,6cの全体の外観を参照するための左側面図であり、その先端アーム9には、1台のシーリングガン25と、左右に並ぶ2台のカメラ33が搭載されている。
【0021】
この塗装エリア5は掘割状になっており、一対の上床面10の相互間を車体100が搬送される。各上床面10,10及び下床面11のそれぞれには、車体100の搬送方向に延在するスライドレール12が設けられている。ロボット6a,6b,6cは、上床面に設けられたスライドレール12に沿ってスライド可能になっており、ロボット6dは下床面に設けられたスライドレール12に沿ってスライド可能になっている。
【0022】
また、この塗装エリア5には、後述する原点位置の確認のために利用され、キャリブレーション孔13aが形成されたキャリブレーションスタンド13が設けられている。
【0023】
図4は先端アーム9の正面斜視図、図5はその背面斜視図、図6はその正面図、図7はその背面図、図8はその平面図、図9はその底面図、図10はその右側面図、図11はその左側面図、図12はその正面視断面図である。以下のロボットハンド9についての方向は、便宜上カメラの光軸を水平に向けた場合にカメラの被写体側を前側、その反対側を後側としている。但し、この方向の概念は、上記塗装エリア内でのロボットの動作に応じて適宜変更されるものである。
【0024】
図4乃至図12に示すように、先端アーム9は関節8に揺動可能に取り付けられた基部ブラケット21を有し、この基部ブラケット21には先端側に延びるブラケット23が締結されている。
【0025】
ブラケット23の先端面には更に先端側に延びるステー24が締結されている。このステー24の先端部にはブラケット23の延在方向に対して傾斜する傾斜面24aが形成されており、この傾斜面24aにシーリングガン25が締結されている。シーリングガン25は上記シーラ剤を車体100(図1,図2,図15参照)に噴射する装置であり、シーリングガン25にはシーラ剤を供給するホース26が接続されている。ブラケット23にはこのホース26を固定するためのホースブラケット27が外側に締結されている。
【0026】
また、ブラケット23にはカメラブラケット28が締結されている。カメラブラケット28は、ブラケット23から起立するように設けられた起立部29と、起立部29の上端面に締結されてブラケット23と平行に延びる取付部30とを有し、起立部29と取付部30とは正面視でT字形状をなしている。
【0027】
取付部30は、起立部29に対して先端側に延在している。このため、起立部29の先端面には、先端側に突出して取付部30の裏面に固定されたリブ31が接合されており、このリブ31によって取付部30に固定される部材の重量が支えられている。これにより取付部30の撓みが防止される。
【0028】
取付部30は起立部29に対して左右方向に延在しており、この取付部30の上面の左右各端部には、カメラホルダ32が1つずつ締結され、各カメラホルダ32によって円筒状の鏡筒34を有したカメラ33が保持されている。このカメラ33は、CCDやCMOS等の光電変換素子を備え、撮像結果をこの光電変換素子において電気信号に変換して外部に出力する構成となっている。カメラ33の焦点距離や倍率等は、鏡筒34の外面に設けられたダイヤル35によって撮影するのに適切な所定値に設定されている。なお、カメラ33が取り付けられた取付部30の鉛直下向きの撓みを防止するため、取付部30の裏面に、リブ31から取付部30の延在方向に延びるブラケットを設けてもよい。
【0029】
また、取付部30にはカメラカバー36が締結され、このカメラカバー36によってカメラ33の表面全体が覆われている。これら一対のカメラ33は、ステレオ視による画像処理を可能にすべく、互いの光軸が交わるようにして配置されている。このように、同一のカメラブラケット28にステレオ視する2台のカメラ33を設置したことにより、アーム7(図1参照)の動作、および該アーム7の鉛直下向きの撓み量に関わらず、ステレオベースδ及び挟角θが一定になる。したがって、いわゆるハンドアイタイプにおいて、ステレオ視による画像に基づいた位置計測を精巧に行うことができるようになる。
【0030】
取付部30の前端面には、一対のカメラカバー36の相互間において、ランプカバー37が締結されており、このランプカバー37によってリング蛍光ランプ等の照明光源38が取り付けられている。
【0031】
ホース26はカメラ33に対して下側に配置されており、ランプカバー37はカメラ33の対物レンズの後方に配置されており、シーリングガン25は一対のカメラ33の相互間に配置されている。このため、ブラケット23に対して多種の部品が固定されているが、カメラの視野内にこれらの部品が位置することはなく、その上でこれら部品の集約配置が実現されている。
【0032】
図13は上記カメラ33により撮像された画像を処理するとともにシーリングガン25の動作を制御する制御系の構成を説明するブロック図である。図13に示す制御装置40は、CPU41、ROM42、RAM43及び入出力インターフェイス(以下、I/F)44を備えたマイクロコンピュータであり、これら各要素41〜44はバス45を介して接続されている。CPU41は、I/F44を介して入力された情報やRAM43に記憶されている情報に基づいてROM42に記憶されたプログラムを実行し、I/F44を介して接続される機器の動作制御を行う。
【0033】
I/F44には、入力装置として6台のカメラ33が接続されている。これらカメラ33は3組に分けられ、各組はステレオ視する2台のカメラ33から構成されている。これら各組を構成する2台のカメラ33は、前述したように、同一のカメラブラケット28(先端アーム9)に取り付けられている。このため、前述したように、各組の2台のカメラ33によってステレオ視による画像に基づいた位置計測を精巧に行うことができる。
【0034】
I/F44には、出力装置として、複数の上記シーリングガン25、複数の走行軸モータ46、複数のアーム駆動モータ47が接続されている。走行軸モータ46は各ロボット6a,6b,6c,6d(図1,図2参照)をスライドレール12(図1,図2参照)に沿って走行させる駆動源である。アーム駆動モータ28は各ロボット6a,6b,6c,6dの関節8を駆動してアーム7(図1,図2参照)を揺動させる駆動源である。なお、ここでは、複数のロボット6a,6b,6c,6dの動作を単一の制御装置によって制御する形態を例示したが、各ロボット6a,6b,6c,6dに対して個別のコントローラを分散して設けるようなシステム構成であってもよい。
【0035】
以下、上記ロボット6a,6b,6c,6dの動作と上記制御装置40により実行される制御の内容とについて説明する。
【0036】
まず、各ロボットの可動範囲内において共通の座標系を使用可能なようにする。この処理自体は公知であるため、その概要を簡単に説明する。各ロボット6a,6b,6c,6dにニードルバー(図示せず)を取り付ける。このニードルバーは、カメラ33(図2参照)は取り付けたままとしてシーリングガン25(図2参照)に替えて設けられる。次に、ロボットの動作範囲内の任意の接触点を設定する。この接触点は、単一でもよいが複数であることが好ましい。また、この接触点は隣接するロボットの姿勢が同じ姿勢をとったときに互いのニードルバーが接触するものと予め想定される点に設定されていることが好ましい。これは、アームの撓みによる影響を極力避けるためである。
【0037】
次に、隣接する2つのロボットに取り付けられたニードルバーの先端が上記のように設定された任意の接触点に移動するよう、2つのロボットを駆動する。そして、一方のニードルバーの所定部位と、他方のニードルバーの所定部位とを点接触させる。そのときのロボットの座標値とロボットの座標値を出力する。2つの座標値に基づいて、一方のロボットの座標値を他方の座標値に変換するための変換行列を算定する。任意の接触点が複数設定されている場合には、この手順が接触点ごとに繰り返し行われることとなる。
【0038】
このようにして算定された変換行列を用いることにより、あるロボットの座標を隣接するロボットの座標域に拡張可能となる。なお、複数の接触点を設定した場合には、接触点ごとに変換行列が算定されることとなる。このため、これら複数の変換行列を平均して得られた平均変換行列を、座標の拡張に使用することもできる。上記の処理は、隣接するロボットの組の全てに対して行われる。
【0039】
次に、カメラ33のキャリブレーション処理が行われる。この処理自体は公知であるため、その概要を簡単に説明する。まず、上記のニードルバーを用いてキャリブレーションスタンド13(図2参照)の座標位置を測定する。上記のとおりキャリブレーションスタンド13は、塗装エリア5の適当な位置に設置されており、所定の孔13aが形成されている。この座標位置は、例えばニードルバーをキャリブレーションスタンド13の孔13a内に挿入し、ニードルバーが孔13a内に挿入されたときのロボットの座標値を座標位置として特定することにより測定される。このようにキャリブレーションスタンド13の座標位置の測定後には、カメラ33(図2参照)を用いてキャリブレーションスタンド13の孔13aを撮影し、この孔13aの撮像結果に基づいてカメラ寸法の校正を行う。このキャリブレーションの処理は、後述する基準点の測定に用いるカメラ33が搭載される予定の全てのロボット6a,6b,6cについて行われる。
【0040】
次に、本制御装置40は、ある車種に対して実際に塗装作業を行う前に、この実際の作業時に実行される処理で必要とするマスターデータの作成を行う。マスターデータの作成に際しては、生産現場において今後実際に塗装作業を行う予定の車種の車体100のサンプルを複数台(例えば3乃至10台)用意しておき、この生産現場においてこれらサンプルをハンガー3に吊り下げる。すなわち、このマスターデータは、理想的であるが机上の設計値であるCAD値やCAM値等に基づいて作成されるものではなく、実際に塗装作業を行う生産現場での事前トレーニングを通じて車種ごとに1つずつ作成される。
【0041】
図14はマスターデータを作成する手順を説明するフローチャートである。図14に示すように、まず、生産現場においてハンガー3に吊り下げられた車体100のサンプルをレール1に沿って搬送し、塗装エリア5で停止させる(ステップS1)。次いで、車体100のカメラ群33を用いてサンプルを撮像し(ステップS2)、カメラ群33から入力した画像データに基づいて、車体100に適宜定義される基準点の位置を測定する(ステップS3)。
【0042】
図15はこの車体100の撮像処理及び基準点の位置測定処理の概念図である。ここでは、いわゆるフロントエンジンタイプの車体(サンプルを含む)100を例示している。車体100の床裏部102には多数の貫通孔が形成されており、例えば、リアトランクに浸入した水を抜くための小孔103、フロントボンネットに収容されるべきエンジンを車体100に固定する際に利用される小孔104,105が形成されている。ここでは、これら小孔103,104,105をそれぞれ、カメラ33の撮像対象であってその後の位置測定の対象である基準点P1,P2,P3として利用している。
【0043】
図14中ステップS2においては、例えばロボット6aに取り付けられた2台のカメラ33で基準点P1に対応する小孔103を、ロボット6bに取り付けられた2台のカメラ33で基準点P2に対応する小孔104を、ロボット6cに取り付けられた2台のカメラ33で基準点P3に対応する小孔105をそれぞれステレオ視で撮像する。
【0044】
図14中ステップS3においては、各組の2台のカメラ33が撮像した2つの画像から小孔の像103,104,105をパターンマッチングによって特定し、特定した像位置について三角測量の原理を利用した計算式から基準点P1,P2,P3としての三次元位置を検出する。基準点P1,P2,P3の位置は三次元座標系において定義される。なお、このステップS3には、二値化処理などの他の画像処理を適宜追加してもよい。
【0045】
図14に戻り、位置検出の処理(ステップS3)が終了すると、次いでこの検出した位置情報をRAM43(図13参照)に記憶する(ステップS4)。そして、位置データを取得したサンプルの台数が所定値に達したか否かが判断され(ステップS5)、所定値に達していない場合は、次のサンプルに対してステップS1〜S4の処理が再び行われる。
【0046】
所定台数のサンプルの位置データを取得した場合には、これら位置データに基づいて各基準点P1,P2,P3の位置のマスターデータが作成される(ステップS6)。各マスターデータは、基準点P1,P2,P3ごとに取得された複数の位置データを平均することによって作成される。このとき適宜外れ値を除外した上でマスターデータを作成するようにしてもよい。この外れ値を選定するために、CAD値やCAM値を利用することも可能である。そして、このように作成された各基準点P1,P2,P3についてのマスターデータがRAM43に記憶される(ステップS7)。
【0047】
次に、上記事前トレーニングを通じて作成されたマスターデータを利用して行われる実際の塗装作業を行う手順について図16に基づいて説明する。図16に示すように、まず、事前トレーニングと同様にして車体100を搬送して塗装エリア5で停止させ(ステップS11)、停止した車体100に形成されている小孔103、104,105をステレオ視により撮像し(ステップS12)、入力された画像データに基づいて基準点P1′,P2′,P3′の位置を測定し(ステップS13)、測定されたデータに基づいてマスターデータを補正するための補正値を算出する(ステップS14)。
【0048】
図17はこの補正の手順を説明するフローチャートであり、図18はこの補正処理の概念図である。図17及び図18に示すように、まず、マスターデータによって定義される基準点P1をX軸上に位置させる座標系を規定し、その座標系の原点を中心Oとして基準点P1,P2,P3を通る円Cを求める。また、計測された基準点P1′をX′軸上に位置させる座標系を設定し、その座標系の原点を中心O′として基準点P1′,P2′,P3′を通る円C′を求める(ステップS41)。すなわち、ステップS41においては、基準点P1を基準にした3つの基準点P1,P2,P3間の位置関係と、基準点P1′を基準にした3つの基準点P1′,P2′,P3′間の位置関係とをそれぞれ、二次元座標系に規定される円によって定義する処理が実行されている。
【0049】
次いで、マスターデータ側の円Cの中心が計測値側の円C′の中心O′と一致するように円Cを平行移動させる(ステップS42)。そして、この平行移動後の円Cを規定する平面を計測値側の円C′を規定する平面と一致させるため、円Cを規定する平面を回転移動させる(ステップS43)。すなわち、ステップS42,S43においては、基準点P1を基準にして設定された座標系を、基準点P1′を基準にして設定された座標系に変換する処理が実行されている。
【0050】
そして、この回転移動後の面内で規定される円Cを、中心O′を通る法線回りに角度φだけ回転したときに、L1(φ)2+L2(φ)2+L3(φ)2が最小値をとる角度φを求める(ステップS44)。ここで、L1(φ)は、角度φだけ回転した後の基準点P1と測定値P1′との距離、L2(φ)は、同基準点P2と測定値P2′との距離、L3(φ)は、同基準点P3と測定値P3′との距離である。すなわち、ステップS44においては、最小二乗法の原理を利用して、マスターデータにおける基準点間の位置関係を定義する円Cを、測定された基準点間の位置関係を定義する円C′に近似させる処理が実行されている。
【0051】
そして、ステップS42〜S44を経て円Cが移動した量を補正値として算出する(ステップS45)。
【0052】
図16に戻り、このようにして算出された補正値を用いてマスターデータを補正し、補正されたデータ(補正位置データ)に基づいて車体100の所定部位に塗装作業が行われる(ステップS15)。図15を参照して、この塗装作業によって、フェンダー106にシーラ剤が塗布されるとともに、車体100の床裏部102に複数条のシーリングビード107が形成される。シーリングビード107の形成は窓枠部101を通じて車体100内にオペレートされたシーリングガン25により行われる。本実施形態では、このように室内シーリングを行うロボット6a,6b、6cにカメラ33を搭載していることから、位置計測を終了した後直ちに塗装作業に移行することができる。また、カメラを持たないロボット6dの駆動制御も、ロボット6a,6b,6cを利用して算出された補正位置データに基づいて実行するようにしている。このように、カメラ33が搭載されたロボット6a,6b,6cをマスターロボット、シーリングガン25のような作業装置のみを搭載したロボット6dをスレーブロボットとするシステム構成によって塗装作業を行うこともできる。
【0053】
このようにCPU41の処理内容に基づけば、CPU41は、カメラ33から入力した撮像結果を示す画像信号に基づいて車体100の基準点の三次元位置を測定する測定部と、測定部により測定された基準点の位置データに基づいてマスターデータを補正するための補正値を算出する補正値算出部と、補正値算出部により補正された車体の補正位置データに基づいてアーム7(図1参照)の揺動制御とシーリングガン25の揺動制御を実行する作業制御部とを機能的に有することとなる。該測定部においては事前トレーニングでのサンプルの基準点の位置の測定が行われ、CPU41は更にこの測定部によって事前測定されたサンプルの位置データに基づいて車体の基準点のマスターデータを算出するマスターデータ算出部を機能的に有することとなる。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、事前トレーニングで作成されたマスターデータに基づいて測定された基準点P1′,P2′,P3′の位置を補正している。このため、現実の生産過程に即した補正値を得ることができ、塗装作業を適切に行うことができるようになる。より具体的には、設計データと実際に生産された車体のデータとの間の公差をなくすことができ、また、この公差を生み出す車体100を形成するときに利用される溶接ロボットの動作の癖や、走行ユニット2の停止動作の癖などをマスターデータ側に吸収することができ、補正誤差を小さくすることができるようになっている。また、ロボット6a,6b,6cのアーム7の撓みも事前トレーニングによってマスターデータ内に吸収することができ、補正誤差を小さくすることができる。アーム7の撓みはカメラ33の解像度に比べて大きいことが一般的であるため、位置計測を正確に行う上で、この撓みを吸収することができることは特に有効である。
【0055】
なお、カメラ33を搭載したロボット6a,6b,6cは噴霧されたシーラ剤が付着して汚れ易い下床面11には配置されていない。このため、カメラ33にはシーラ剤の付着を防護するシャッター機構を設ける必要がなくなり、カメラの周辺構造及び制御系の構成を簡略化することができる。また、シャッター機構の開閉時間を確保する必要がなくなるため、塗装作業に要する時間の短縮化にも繋がる。照明光源38も同様にして下床面11から除かれるため、照明光源38の汚れも防ぐことができるようになる。
【0056】
このように下床面11には撮像に関係する多数の部品が省略されているため、複数車種に対応するカメラ及び照明光源の点数の削減を図ることができるとともに、ここに塗装専用のロボットを多数配置することができるようになる。このため、コンベア長やブース長の短縮化及び全工程時間の短縮化を図ることができ、初期設備投資額を少なくすることができる。また、生産現場の保全作業を安価に行うことができるようになる。
【0057】
また、同一の生産現場において異なる車種を作業対象として取り扱ういわゆる混流生産を実施する場合には、追加される車種に対して実際に作業を行う事前にトレーニングを行ってマスターデータを作成することとなる。このように車種ごとにマスターデータを作成しておくだけで、容易に混流生産に対応することができる。
【0058】
さらに、本実施形態ではロボット6a,6b,6cにカメラ33を搭載しているため、車種間で基準点の位置が大幅に変更されることがあっても、ロボット6a,6b,6cの動作に基づいて容易に各車種の基準点を視野内に収めることができる。また、スライドレール12に沿って各ロボット6a〜6dは移動可能になっている。したがって、混流生産が実施される場合であっても、カメラ33及び照明光源38の台数を増加させる必要はない。最終的に塗装エリア5をコンパクトに建設でき、環境面からも良好である。
【0059】
次に、マスターデータの補正処理の別の手順を説明する。図19はその手順を説明するフローチャートであり、図20はこの補正処理の概念図である。図19及び図20に示すように、まず、基準点P1についてのマスターデータを原点とし、基準点P2についてのマスターデータをP軸上にとり、基準点P3をPQ平面上に位置させるようなPQ座標系を設定し、測定された基準点P1′を原点とし、基準点P2′をP′軸上にとり、基準点P3′をP′Q′平面上に位置させるようなP′Q′座標系を設定する(ステップS141)。このように、本実施形態においては、基準点P3を基準点P1,P2を基準にした二次元座標系に位置させることによって基準点P1,P2,P3間の位置関係を定義し、基準点P3′を基準点P1′,P2′を基準にした二次元座標系に位置させることによって基準点P1′,P2′,P3′間の位置関係を定義している。
【0060】
次に、基準点P1についてのマスターデータの座標をP1′上に平行移動し(ステップS142)、P軸をP′軸に一致させるように変換し(ステップS143)、Q軸をQ′軸に一致させるように変換する(ステップS144)。そして、ステップS142〜S143における座標の変換量を補正値として算出する(ステップS145)。すなわち、ステップS142〜S143においては座標を定義する軸の移動によって基準点間の位置関係を互いに近似させる処理が実行されている。
【0061】
このように本変更例においても、事前トレーニングにおいて作成されたマスターデータに基づいて測定値が補正されるため、この補正後の補正位置データに基づいて適切に塗布作業を行うことができるようになる。
【0062】
しかも、この補正方法は、簡単な座標変換のみで行うことができるため、上記実施形態と比べて簡便に補正値を算出することができる点で有利となっている。但し、この変更例においては、ステップS142〜S144の手順の順番に応じた重み付けがなされてしまうため、基準点P3の補正精度は基準点P1の補正精度に比べて低くなる。上記の実施形態は、最小二乗法を利用することによってこのような基準点相互間での重み付けが解消され、基準点の位置関係をバランスよく補正することができる点で本変更例に対して有利となっている。
【0063】
これまで、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の範囲は上記の構成に限られず、適宜変更可能である。例えば、カメラの焦点距離は固定であっても可変であっても良い。さらに、取付部30上に設置されるカメラ33が、そのステレオベースδや挟角θが変化するよう可動に構成されていてもよい。
【0064】
なお、本実施形態においては、多関節型ロボットを例示したが、ロボットの形態はこれに限られず、円筒座標型ロボットや直交座標型ロボット等の他の形態のロボットにも好適に適用される。また、塗装作業に限らず、他の用途においても本位置計測方法を適宜適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、対象物の位置の測定を行う技術分野において広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】自動車の生産現場の一部概要を平面視で模式的に示す説明図である。
【図2】自動車の生産現場の一部概要を背面視で模式的に示す説明図である。
【図3】ロボットの全体の外観を示す右側面図である。
【図4】先端アームの正面斜視図である。
【図5】先端アームの背面斜視図である。
【図6】先端アームの正面図である。
【図7】先端アームの背面図である。
【図8】先端アームの平面図である。
【図9】先端アームの底面図である。
【図10】先端アームの右側面図である。
【図11】先端アームの左側面図である。
【図12】先端アームの正面断面図である。
【図13】カメラにより撮像された画像の処理とシーリングガンの駆動制御を実行する制御系の構成を説明するブロック図である。
【図14】マスターデータの作成手順を説明するフローチャートである。
【図15】図14及び図16に示す撮像処理及び基準点の位置測定処理の概念図である。
【図16】塗装作業の手順を説明するフローチャートである。
【図17】補正処理の手順を説明するフローチャートである。
【図18】図17に示す補正処理の概念図である。
【図19】補正処理の変更例の手順を説明するフローチャートである。
【図20】図19に示す補正処理の変更例の概念図である。
【符号の説明】
【0067】
6a,6b,6c,6d ロボット
25 シーリングガン
28 カメラブラケット
33 カメラ
100 車体(サンプル含む)
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の位置を測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の生産現場では、所定箇所まで搬送されて停止した車体に、防錆、防振、防音用のシーラ剤が塗装される。通常、この塗装作業はロボットアームに搭載されたシーリングガンを用いることによって自動化され、シーリングガンから吐出されるシーラ剤が車体の所定部位に塗布されるようロボットアームの駆動制御が実行されている。
【0003】
適切な部位にシーラ剤を塗装すべく車体の搬送や停止の制御を精密に実行すると多大なイニシャルコスト及びメンテナンスコストを要するため、車体の停止位置の精度は塗装作業で要求される精度よりも低くなりがちである。このため、ロボットアームを制御する装置は、まず停止した車体に設けられている基準点の位置を測定し、予め記憶されたマスターデータを測定された位置のずれ量に相当する補正値を算出する。ロボットアームの駆動制御はマスターデータをこの補正値を用いて補正することにより得られる位置データに基づいて実行され、これにより車体の停止位置の精度を過度に高くすることなくシーラ剤が適切な部位に塗布され得る(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、CAD値やCAM値等の理想的ではあるが机上の設計データをマスターデータとして利用し、このマスターデータを測定された三次元の位置データに応じて補正するよう構成された位置測定装置が開示されている。また、この位置測定装置は、6本のロボットアームの各々に1台ずつカメラが設けられて構成されている。これら6台のカメラは3組に分けられ、各組2台のカメラがステレオ視により基準点を撮像する。この撮像結果に基づいて3つの基準点の三次元の位置データを取得するようになっている。
【特許文献1】特許第2767417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際には、複数の鋼板を溶接してなる車体を設計データどおりに生産することは困難であるため、実際に生産された車体の寸法と設計データの寸法との間には不可避的な偏差がある。このため、特許文献1のように設計データをマスターデータとして利用すると、補正後のデータには実際の寸法と設計上の寸法との偏差が残ったままとなる。このようにマスターデータとして設計データを利用した場合には、特異解が発生して補正値を精度よく算出することが困難となり、シーラ剤の塗布位置がずれる場合がある。
【0006】
しかも、特許文献1によると、ロボットアーム1台につきカメラが1台設けられており、別個のロボットアームに取り付けられた2台のカメラでステレオ視による画像を生成する構成となっている。ロボットアームにはカメラの重量や自重に基づいて鉛直下向きの撓みが不可避的に発生するため、この各ロボットアームの撓みによってステレオベースや挟角が所望の値から外れ、基準点の位置測定を高精度に行うことが困難となっている。ロボットアームの撓みを予め考慮したロボットアームの駆動制御を実行するとなると、制御内容が煩雑になってカメラのセッティングに要する時間が長くなる。このため、塗装作業に要する時間が長くなり、自動車の生産性に影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、対象物の位置の測定を精度よく行うこと、さらには対象物の位置データの補正を精度よく行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る位置測定方法は、対象物を実測して得た位置データに基づき該対象物の位置の基準となるマスターデータに対する補正値を算出し、該マスターデータに補正値を加味した補正位置データに基づいて前記対象物の所定部位に作業を行う構成の装置に適用される位置測定方法であって、対象物の複数のサンプル各々に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する事前測定ステップと、該事前測定ステップで取得された前記各サンプルの基準点の位置データに基づいて前記マスターデータを事前に算出する事前算出ステップと、対象物に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する実測ステップと、該実測ステップで取得された前記位置データに基づいて前記事前算出ステップで算出されたマスターデータに対する補正値を算出する補正値算出ステップとを有することを特徴としている。
【0009】
かかる構成によれば、対象物のサンプルを利用して対象物の基準点の位置の基準となるマスターデータが作成され、実測された位置データに基づいて該マスターデータを補正するための補正値が算出される。このように、理想的な設計データをマスターデータとして用いるのではなく、実測によって取得したデータをマスターデータとして利用し、同じく実測された位置データに基づいて補正値を算出し、この補正値に従ってマスターデータを補正して取得されたデータに基づいて対象物に対する作業を行うようになっている。このため、対象物に対する作業を正確に行うことができるようになる。
【0010】
前記事前測定ステップにおいて、ステレオ視により前記サンプルを撮影した一対の画像に基づいて、三次元の前記位置データが取得され、前記実測ステップにおいて、ステレオ視により前記対象物を撮影した一対の画像に基づいて、三次元の前記位置データが取得されてもよい。かかる構成によれば、三次元の位置データが取得され、高度な位置測定が実現される。
【0011】
前記事前算出ステップにおいて、前記マスターデータが各サンプルの基準点の位置データを平均することによって算出されてもよい。かかる構成によれば、マスターデータの算出を平易に行うことができるとともに、サンプル数を増やすことによって信頼性の高いデータを作成することができるようになる。
【0012】
前記事前測定ステップにおいて、前記各サンプルに設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、前記事前算出ステップにおいて、該複数の基準点の各々について前記マスターデータを算出し、前記実測ステップにおいて、対象物に設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、
前記補正値算出ステップが、前記マスターデータ間の位置関係を、前記各マスターデータが通る第1の円によって定義するステップと、前記実測ステップで測定された各基準点間の位置関係を、各基準点が通る第2の円によって定義するステップと、前記第1の円を規定する第1の座標系を前記第2の円を規定する第2の座標系に変換するための座標変換量を算出するステップと、式L1(φ)2+L2(φ)2+……+Ln(φ)2が最小値をとるときの角度φを求めるステップとを有し、ここで、φは、前記第1の円の法線周りに回転したときの回転角、Ln(φ)は、前記第1の円が角度φだけ法線回りに回転したときの、n個目のマスターデータと該n個目のマスターデータと対応する基準点の位置データとの間の距離であり、更に、前記座標変換量及び前記角度φを前記補正値として算出するステップとを有していてもよい。かかる構成によれば、最小二乗法を利用して補正値が算出されており、複数の基準点それぞれについてバランスよく補正することができるようになる。
【0013】
前記事前測定ステップにおいて、前記各サンプルに設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、前記事前算出ステップにおいて、該複数の基準点の各々について前記マスターデータを算出し、前記実測ステップにおいて、対象物に設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、前記補正値算出ステップが、前記各マスターデータ間の位置関係を規定する第1座標系と、前記実測ステップで測定された前記各基準点間の位置関係を規定する第2座標系とを定めるステップと、前記第1座標系を前記第2座標系に変換するための座標変換量を前記補正値として算出するステップとを有していてもよい。かかる構成によれば、座標の変換を行うだけで補正値を算出することができるようになり、補正値を簡便に算出することができるようになる。
【0014】
本発明に係る位置測定装置は、測定対象物の位置の基準となるマスターデータを記憶する記憶部と、対象物に設けられた基準点の位置を測定して位置データを取得する測定部と、該測定部で取得された位置データに基づいて前記マスターデータを補正するための補正値算出部とを有する位置測定装置であって、測定対象物の実測の事前に、前記測定部により前記測定対象物の複数のサンプルの各々に設けられた基準点の位置が測定されて各サンプルの基準点の位置データが取得され、前記記憶部に該取得された各位置データに基づいて算出された前記マスターデータが記憶され、測定対象物の実測時に、前記補正値算出部が、前記記憶部に記憶された前記マスターデータを、実測された測定対象物の基準点の位置データに基づいて補正する構成であることを特徴としている。かかる装置においても上記同様の作用を生じる。
【0015】
前記基準点をステレオ視により撮影する第1及び第2のカメラを備え、前記測定部は該第1及び第2のカメラで撮影された一対の画像に基づいて基準点の位置データを測定するよう構成されており、該第1及び第2のカメラが、単一のロボットアームに取り付けられていることが好ましい。かかる構成によれば、同一のロボットアームにステレオ視するカメラが取り付けられることにより、ロボットアームに撓みが発生してもステレオベースや挟角が変更されることはない。したがって、ステレオ視により撮影した画像に基づく位置測定を高精度に行うことができるようになる。
【0016】
前記ロボットアームに、前記補正部により補正された位置データに基づいて対象物に所定の作業を行う作業装置が搭載されていることを特徴とする請求項7に記載の位置測定装置。かかる構成によれば、撮像結果に基づく位置の測定及び位置データの補正処理の終了後ただちに所定の作業に移行することができ、位置計測を利用した作業に要する時間の短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、特異解を発生することなく対象物の位置データの補正を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付する図面を参照して本発明に係る実施の形態について説明する。
【0019】
ここでは、本発明に係る対象物の実施例を自動車の車体として説明する。図1は自動車の生産現場の一部概要を平面視で模式的に示す説明図、図2はそれを背面視で模式的に示す説明図である。図1及び図2に示す生産現場には、多数の鋼板を溶接してなる車体100の搬送経路をなすレール1が設けられている。レール1には走行ユニット2を介して複数のハンガー3が吊るされており、各ハンガー3は車体100の側方の窓枠部101に係合している。このようにハンガー3によって吊り下げられた車体100は、走行ユニット2の動作に基づいてレール1に沿って搬送される。
【0020】
この搬送経路中には、車体100の床裏部102や鋼板の合わせ目に防錆用、防音用、防振用のシーラ剤をシーリング塗布したりスプレー塗装するための塗装エリア5が設定されている。この塗装エリア5には、複数台の多関節型のロボット6a,6b,6c,6dが設けられている。各ロボット6a,6b,6c,6dは、複数のアーム7と、アーム同士を揺動可能に連結する関節8とを有してなる。ロボット6a,6b,6cの先端アーム9には、後述する車体に防錆及び防水用のシーラ材を塗布するために用いるシーリングガン25や、搬送されて停止した車体の位置を計測するために用いるカメラ33等が搭載されており、ロボット6dにはシーリングガン25が搭載されている。なお、図3は、ロボット6a,6b,6cの全体の外観を参照するための左側面図であり、その先端アーム9には、1台のシーリングガン25と、左右に並ぶ2台のカメラ33が搭載されている。
【0021】
この塗装エリア5は掘割状になっており、一対の上床面10の相互間を車体100が搬送される。各上床面10,10及び下床面11のそれぞれには、車体100の搬送方向に延在するスライドレール12が設けられている。ロボット6a,6b,6cは、上床面に設けられたスライドレール12に沿ってスライド可能になっており、ロボット6dは下床面に設けられたスライドレール12に沿ってスライド可能になっている。
【0022】
また、この塗装エリア5には、後述する原点位置の確認のために利用され、キャリブレーション孔13aが形成されたキャリブレーションスタンド13が設けられている。
【0023】
図4は先端アーム9の正面斜視図、図5はその背面斜視図、図6はその正面図、図7はその背面図、図8はその平面図、図9はその底面図、図10はその右側面図、図11はその左側面図、図12はその正面視断面図である。以下のロボットハンド9についての方向は、便宜上カメラの光軸を水平に向けた場合にカメラの被写体側を前側、その反対側を後側としている。但し、この方向の概念は、上記塗装エリア内でのロボットの動作に応じて適宜変更されるものである。
【0024】
図4乃至図12に示すように、先端アーム9は関節8に揺動可能に取り付けられた基部ブラケット21を有し、この基部ブラケット21には先端側に延びるブラケット23が締結されている。
【0025】
ブラケット23の先端面には更に先端側に延びるステー24が締結されている。このステー24の先端部にはブラケット23の延在方向に対して傾斜する傾斜面24aが形成されており、この傾斜面24aにシーリングガン25が締結されている。シーリングガン25は上記シーラ剤を車体100(図1,図2,図15参照)に噴射する装置であり、シーリングガン25にはシーラ剤を供給するホース26が接続されている。ブラケット23にはこのホース26を固定するためのホースブラケット27が外側に締結されている。
【0026】
また、ブラケット23にはカメラブラケット28が締結されている。カメラブラケット28は、ブラケット23から起立するように設けられた起立部29と、起立部29の上端面に締結されてブラケット23と平行に延びる取付部30とを有し、起立部29と取付部30とは正面視でT字形状をなしている。
【0027】
取付部30は、起立部29に対して先端側に延在している。このため、起立部29の先端面には、先端側に突出して取付部30の裏面に固定されたリブ31が接合されており、このリブ31によって取付部30に固定される部材の重量が支えられている。これにより取付部30の撓みが防止される。
【0028】
取付部30は起立部29に対して左右方向に延在しており、この取付部30の上面の左右各端部には、カメラホルダ32が1つずつ締結され、各カメラホルダ32によって円筒状の鏡筒34を有したカメラ33が保持されている。このカメラ33は、CCDやCMOS等の光電変換素子を備え、撮像結果をこの光電変換素子において電気信号に変換して外部に出力する構成となっている。カメラ33の焦点距離や倍率等は、鏡筒34の外面に設けられたダイヤル35によって撮影するのに適切な所定値に設定されている。なお、カメラ33が取り付けられた取付部30の鉛直下向きの撓みを防止するため、取付部30の裏面に、リブ31から取付部30の延在方向に延びるブラケットを設けてもよい。
【0029】
また、取付部30にはカメラカバー36が締結され、このカメラカバー36によってカメラ33の表面全体が覆われている。これら一対のカメラ33は、ステレオ視による画像処理を可能にすべく、互いの光軸が交わるようにして配置されている。このように、同一のカメラブラケット28にステレオ視する2台のカメラ33を設置したことにより、アーム7(図1参照)の動作、および該アーム7の鉛直下向きの撓み量に関わらず、ステレオベースδ及び挟角θが一定になる。したがって、いわゆるハンドアイタイプにおいて、ステレオ視による画像に基づいた位置計測を精巧に行うことができるようになる。
【0030】
取付部30の前端面には、一対のカメラカバー36の相互間において、ランプカバー37が締結されており、このランプカバー37によってリング蛍光ランプ等の照明光源38が取り付けられている。
【0031】
ホース26はカメラ33に対して下側に配置されており、ランプカバー37はカメラ33の対物レンズの後方に配置されており、シーリングガン25は一対のカメラ33の相互間に配置されている。このため、ブラケット23に対して多種の部品が固定されているが、カメラの視野内にこれらの部品が位置することはなく、その上でこれら部品の集約配置が実現されている。
【0032】
図13は上記カメラ33により撮像された画像を処理するとともにシーリングガン25の動作を制御する制御系の構成を説明するブロック図である。図13に示す制御装置40は、CPU41、ROM42、RAM43及び入出力インターフェイス(以下、I/F)44を備えたマイクロコンピュータであり、これら各要素41〜44はバス45を介して接続されている。CPU41は、I/F44を介して入力された情報やRAM43に記憶されている情報に基づいてROM42に記憶されたプログラムを実行し、I/F44を介して接続される機器の動作制御を行う。
【0033】
I/F44には、入力装置として6台のカメラ33が接続されている。これらカメラ33は3組に分けられ、各組はステレオ視する2台のカメラ33から構成されている。これら各組を構成する2台のカメラ33は、前述したように、同一のカメラブラケット28(先端アーム9)に取り付けられている。このため、前述したように、各組の2台のカメラ33によってステレオ視による画像に基づいた位置計測を精巧に行うことができる。
【0034】
I/F44には、出力装置として、複数の上記シーリングガン25、複数の走行軸モータ46、複数のアーム駆動モータ47が接続されている。走行軸モータ46は各ロボット6a,6b,6c,6d(図1,図2参照)をスライドレール12(図1,図2参照)に沿って走行させる駆動源である。アーム駆動モータ28は各ロボット6a,6b,6c,6dの関節8を駆動してアーム7(図1,図2参照)を揺動させる駆動源である。なお、ここでは、複数のロボット6a,6b,6c,6dの動作を単一の制御装置によって制御する形態を例示したが、各ロボット6a,6b,6c,6dに対して個別のコントローラを分散して設けるようなシステム構成であってもよい。
【0035】
以下、上記ロボット6a,6b,6c,6dの動作と上記制御装置40により実行される制御の内容とについて説明する。
【0036】
まず、各ロボットの可動範囲内において共通の座標系を使用可能なようにする。この処理自体は公知であるため、その概要を簡単に説明する。各ロボット6a,6b,6c,6dにニードルバー(図示せず)を取り付ける。このニードルバーは、カメラ33(図2参照)は取り付けたままとしてシーリングガン25(図2参照)に替えて設けられる。次に、ロボットの動作範囲内の任意の接触点を設定する。この接触点は、単一でもよいが複数であることが好ましい。また、この接触点は隣接するロボットの姿勢が同じ姿勢をとったときに互いのニードルバーが接触するものと予め想定される点に設定されていることが好ましい。これは、アームの撓みによる影響を極力避けるためである。
【0037】
次に、隣接する2つのロボットに取り付けられたニードルバーの先端が上記のように設定された任意の接触点に移動するよう、2つのロボットを駆動する。そして、一方のニードルバーの所定部位と、他方のニードルバーの所定部位とを点接触させる。そのときのロボットの座標値とロボットの座標値を出力する。2つの座標値に基づいて、一方のロボットの座標値を他方の座標値に変換するための変換行列を算定する。任意の接触点が複数設定されている場合には、この手順が接触点ごとに繰り返し行われることとなる。
【0038】
このようにして算定された変換行列を用いることにより、あるロボットの座標を隣接するロボットの座標域に拡張可能となる。なお、複数の接触点を設定した場合には、接触点ごとに変換行列が算定されることとなる。このため、これら複数の変換行列を平均して得られた平均変換行列を、座標の拡張に使用することもできる。上記の処理は、隣接するロボットの組の全てに対して行われる。
【0039】
次に、カメラ33のキャリブレーション処理が行われる。この処理自体は公知であるため、その概要を簡単に説明する。まず、上記のニードルバーを用いてキャリブレーションスタンド13(図2参照)の座標位置を測定する。上記のとおりキャリブレーションスタンド13は、塗装エリア5の適当な位置に設置されており、所定の孔13aが形成されている。この座標位置は、例えばニードルバーをキャリブレーションスタンド13の孔13a内に挿入し、ニードルバーが孔13a内に挿入されたときのロボットの座標値を座標位置として特定することにより測定される。このようにキャリブレーションスタンド13の座標位置の測定後には、カメラ33(図2参照)を用いてキャリブレーションスタンド13の孔13aを撮影し、この孔13aの撮像結果に基づいてカメラ寸法の校正を行う。このキャリブレーションの処理は、後述する基準点の測定に用いるカメラ33が搭載される予定の全てのロボット6a,6b,6cについて行われる。
【0040】
次に、本制御装置40は、ある車種に対して実際に塗装作業を行う前に、この実際の作業時に実行される処理で必要とするマスターデータの作成を行う。マスターデータの作成に際しては、生産現場において今後実際に塗装作業を行う予定の車種の車体100のサンプルを複数台(例えば3乃至10台)用意しておき、この生産現場においてこれらサンプルをハンガー3に吊り下げる。すなわち、このマスターデータは、理想的であるが机上の設計値であるCAD値やCAM値等に基づいて作成されるものではなく、実際に塗装作業を行う生産現場での事前トレーニングを通じて車種ごとに1つずつ作成される。
【0041】
図14はマスターデータを作成する手順を説明するフローチャートである。図14に示すように、まず、生産現場においてハンガー3に吊り下げられた車体100のサンプルをレール1に沿って搬送し、塗装エリア5で停止させる(ステップS1)。次いで、車体100のカメラ群33を用いてサンプルを撮像し(ステップS2)、カメラ群33から入力した画像データに基づいて、車体100に適宜定義される基準点の位置を測定する(ステップS3)。
【0042】
図15はこの車体100の撮像処理及び基準点の位置測定処理の概念図である。ここでは、いわゆるフロントエンジンタイプの車体(サンプルを含む)100を例示している。車体100の床裏部102には多数の貫通孔が形成されており、例えば、リアトランクに浸入した水を抜くための小孔103、フロントボンネットに収容されるべきエンジンを車体100に固定する際に利用される小孔104,105が形成されている。ここでは、これら小孔103,104,105をそれぞれ、カメラ33の撮像対象であってその後の位置測定の対象である基準点P1,P2,P3として利用している。
【0043】
図14中ステップS2においては、例えばロボット6aに取り付けられた2台のカメラ33で基準点P1に対応する小孔103を、ロボット6bに取り付けられた2台のカメラ33で基準点P2に対応する小孔104を、ロボット6cに取り付けられた2台のカメラ33で基準点P3に対応する小孔105をそれぞれステレオ視で撮像する。
【0044】
図14中ステップS3においては、各組の2台のカメラ33が撮像した2つの画像から小孔の像103,104,105をパターンマッチングによって特定し、特定した像位置について三角測量の原理を利用した計算式から基準点P1,P2,P3としての三次元位置を検出する。基準点P1,P2,P3の位置は三次元座標系において定義される。なお、このステップS3には、二値化処理などの他の画像処理を適宜追加してもよい。
【0045】
図14に戻り、位置検出の処理(ステップS3)が終了すると、次いでこの検出した位置情報をRAM43(図13参照)に記憶する(ステップS4)。そして、位置データを取得したサンプルの台数が所定値に達したか否かが判断され(ステップS5)、所定値に達していない場合は、次のサンプルに対してステップS1〜S4の処理が再び行われる。
【0046】
所定台数のサンプルの位置データを取得した場合には、これら位置データに基づいて各基準点P1,P2,P3の位置のマスターデータが作成される(ステップS6)。各マスターデータは、基準点P1,P2,P3ごとに取得された複数の位置データを平均することによって作成される。このとき適宜外れ値を除外した上でマスターデータを作成するようにしてもよい。この外れ値を選定するために、CAD値やCAM値を利用することも可能である。そして、このように作成された各基準点P1,P2,P3についてのマスターデータがRAM43に記憶される(ステップS7)。
【0047】
次に、上記事前トレーニングを通じて作成されたマスターデータを利用して行われる実際の塗装作業を行う手順について図16に基づいて説明する。図16に示すように、まず、事前トレーニングと同様にして車体100を搬送して塗装エリア5で停止させ(ステップS11)、停止した車体100に形成されている小孔103、104,105をステレオ視により撮像し(ステップS12)、入力された画像データに基づいて基準点P1′,P2′,P3′の位置を測定し(ステップS13)、測定されたデータに基づいてマスターデータを補正するための補正値を算出する(ステップS14)。
【0048】
図17はこの補正の手順を説明するフローチャートであり、図18はこの補正処理の概念図である。図17及び図18に示すように、まず、マスターデータによって定義される基準点P1をX軸上に位置させる座標系を規定し、その座標系の原点を中心Oとして基準点P1,P2,P3を通る円Cを求める。また、計測された基準点P1′をX′軸上に位置させる座標系を設定し、その座標系の原点を中心O′として基準点P1′,P2′,P3′を通る円C′を求める(ステップS41)。すなわち、ステップS41においては、基準点P1を基準にした3つの基準点P1,P2,P3間の位置関係と、基準点P1′を基準にした3つの基準点P1′,P2′,P3′間の位置関係とをそれぞれ、二次元座標系に規定される円によって定義する処理が実行されている。
【0049】
次いで、マスターデータ側の円Cの中心が計測値側の円C′の中心O′と一致するように円Cを平行移動させる(ステップS42)。そして、この平行移動後の円Cを規定する平面を計測値側の円C′を規定する平面と一致させるため、円Cを規定する平面を回転移動させる(ステップS43)。すなわち、ステップS42,S43においては、基準点P1を基準にして設定された座標系を、基準点P1′を基準にして設定された座標系に変換する処理が実行されている。
【0050】
そして、この回転移動後の面内で規定される円Cを、中心O′を通る法線回りに角度φだけ回転したときに、L1(φ)2+L2(φ)2+L3(φ)2が最小値をとる角度φを求める(ステップS44)。ここで、L1(φ)は、角度φだけ回転した後の基準点P1と測定値P1′との距離、L2(φ)は、同基準点P2と測定値P2′との距離、L3(φ)は、同基準点P3と測定値P3′との距離である。すなわち、ステップS44においては、最小二乗法の原理を利用して、マスターデータにおける基準点間の位置関係を定義する円Cを、測定された基準点間の位置関係を定義する円C′に近似させる処理が実行されている。
【0051】
そして、ステップS42〜S44を経て円Cが移動した量を補正値として算出する(ステップS45)。
【0052】
図16に戻り、このようにして算出された補正値を用いてマスターデータを補正し、補正されたデータ(補正位置データ)に基づいて車体100の所定部位に塗装作業が行われる(ステップS15)。図15を参照して、この塗装作業によって、フェンダー106にシーラ剤が塗布されるとともに、車体100の床裏部102に複数条のシーリングビード107が形成される。シーリングビード107の形成は窓枠部101を通じて車体100内にオペレートされたシーリングガン25により行われる。本実施形態では、このように室内シーリングを行うロボット6a,6b、6cにカメラ33を搭載していることから、位置計測を終了した後直ちに塗装作業に移行することができる。また、カメラを持たないロボット6dの駆動制御も、ロボット6a,6b,6cを利用して算出された補正位置データに基づいて実行するようにしている。このように、カメラ33が搭載されたロボット6a,6b,6cをマスターロボット、シーリングガン25のような作業装置のみを搭載したロボット6dをスレーブロボットとするシステム構成によって塗装作業を行うこともできる。
【0053】
このようにCPU41の処理内容に基づけば、CPU41は、カメラ33から入力した撮像結果を示す画像信号に基づいて車体100の基準点の三次元位置を測定する測定部と、測定部により測定された基準点の位置データに基づいてマスターデータを補正するための補正値を算出する補正値算出部と、補正値算出部により補正された車体の補正位置データに基づいてアーム7(図1参照)の揺動制御とシーリングガン25の揺動制御を実行する作業制御部とを機能的に有することとなる。該測定部においては事前トレーニングでのサンプルの基準点の位置の測定が行われ、CPU41は更にこの測定部によって事前測定されたサンプルの位置データに基づいて車体の基準点のマスターデータを算出するマスターデータ算出部を機能的に有することとなる。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、事前トレーニングで作成されたマスターデータに基づいて測定された基準点P1′,P2′,P3′の位置を補正している。このため、現実の生産過程に即した補正値を得ることができ、塗装作業を適切に行うことができるようになる。より具体的には、設計データと実際に生産された車体のデータとの間の公差をなくすことができ、また、この公差を生み出す車体100を形成するときに利用される溶接ロボットの動作の癖や、走行ユニット2の停止動作の癖などをマスターデータ側に吸収することができ、補正誤差を小さくすることができるようになっている。また、ロボット6a,6b,6cのアーム7の撓みも事前トレーニングによってマスターデータ内に吸収することができ、補正誤差を小さくすることができる。アーム7の撓みはカメラ33の解像度に比べて大きいことが一般的であるため、位置計測を正確に行う上で、この撓みを吸収することができることは特に有効である。
【0055】
なお、カメラ33を搭載したロボット6a,6b,6cは噴霧されたシーラ剤が付着して汚れ易い下床面11には配置されていない。このため、カメラ33にはシーラ剤の付着を防護するシャッター機構を設ける必要がなくなり、カメラの周辺構造及び制御系の構成を簡略化することができる。また、シャッター機構の開閉時間を確保する必要がなくなるため、塗装作業に要する時間の短縮化にも繋がる。照明光源38も同様にして下床面11から除かれるため、照明光源38の汚れも防ぐことができるようになる。
【0056】
このように下床面11には撮像に関係する多数の部品が省略されているため、複数車種に対応するカメラ及び照明光源の点数の削減を図ることができるとともに、ここに塗装専用のロボットを多数配置することができるようになる。このため、コンベア長やブース長の短縮化及び全工程時間の短縮化を図ることができ、初期設備投資額を少なくすることができる。また、生産現場の保全作業を安価に行うことができるようになる。
【0057】
また、同一の生産現場において異なる車種を作業対象として取り扱ういわゆる混流生産を実施する場合には、追加される車種に対して実際に作業を行う事前にトレーニングを行ってマスターデータを作成することとなる。このように車種ごとにマスターデータを作成しておくだけで、容易に混流生産に対応することができる。
【0058】
さらに、本実施形態ではロボット6a,6b,6cにカメラ33を搭載しているため、車種間で基準点の位置が大幅に変更されることがあっても、ロボット6a,6b,6cの動作に基づいて容易に各車種の基準点を視野内に収めることができる。また、スライドレール12に沿って各ロボット6a〜6dは移動可能になっている。したがって、混流生産が実施される場合であっても、カメラ33及び照明光源38の台数を増加させる必要はない。最終的に塗装エリア5をコンパクトに建設でき、環境面からも良好である。
【0059】
次に、マスターデータの補正処理の別の手順を説明する。図19はその手順を説明するフローチャートであり、図20はこの補正処理の概念図である。図19及び図20に示すように、まず、基準点P1についてのマスターデータを原点とし、基準点P2についてのマスターデータをP軸上にとり、基準点P3をPQ平面上に位置させるようなPQ座標系を設定し、測定された基準点P1′を原点とし、基準点P2′をP′軸上にとり、基準点P3′をP′Q′平面上に位置させるようなP′Q′座標系を設定する(ステップS141)。このように、本実施形態においては、基準点P3を基準点P1,P2を基準にした二次元座標系に位置させることによって基準点P1,P2,P3間の位置関係を定義し、基準点P3′を基準点P1′,P2′を基準にした二次元座標系に位置させることによって基準点P1′,P2′,P3′間の位置関係を定義している。
【0060】
次に、基準点P1についてのマスターデータの座標をP1′上に平行移動し(ステップS142)、P軸をP′軸に一致させるように変換し(ステップS143)、Q軸をQ′軸に一致させるように変換する(ステップS144)。そして、ステップS142〜S143における座標の変換量を補正値として算出する(ステップS145)。すなわち、ステップS142〜S143においては座標を定義する軸の移動によって基準点間の位置関係を互いに近似させる処理が実行されている。
【0061】
このように本変更例においても、事前トレーニングにおいて作成されたマスターデータに基づいて測定値が補正されるため、この補正後の補正位置データに基づいて適切に塗布作業を行うことができるようになる。
【0062】
しかも、この補正方法は、簡単な座標変換のみで行うことができるため、上記実施形態と比べて簡便に補正値を算出することができる点で有利となっている。但し、この変更例においては、ステップS142〜S144の手順の順番に応じた重み付けがなされてしまうため、基準点P3の補正精度は基準点P1の補正精度に比べて低くなる。上記の実施形態は、最小二乗法を利用することによってこのような基準点相互間での重み付けが解消され、基準点の位置関係をバランスよく補正することができる点で本変更例に対して有利となっている。
【0063】
これまで、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の範囲は上記の構成に限られず、適宜変更可能である。例えば、カメラの焦点距離は固定であっても可変であっても良い。さらに、取付部30上に設置されるカメラ33が、そのステレオベースδや挟角θが変化するよう可動に構成されていてもよい。
【0064】
なお、本実施形態においては、多関節型ロボットを例示したが、ロボットの形態はこれに限られず、円筒座標型ロボットや直交座標型ロボット等の他の形態のロボットにも好適に適用される。また、塗装作業に限らず、他の用途においても本位置計測方法を適宜適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、対象物の位置の測定を行う技術分野において広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】自動車の生産現場の一部概要を平面視で模式的に示す説明図である。
【図2】自動車の生産現場の一部概要を背面視で模式的に示す説明図である。
【図3】ロボットの全体の外観を示す右側面図である。
【図4】先端アームの正面斜視図である。
【図5】先端アームの背面斜視図である。
【図6】先端アームの正面図である。
【図7】先端アームの背面図である。
【図8】先端アームの平面図である。
【図9】先端アームの底面図である。
【図10】先端アームの右側面図である。
【図11】先端アームの左側面図である。
【図12】先端アームの正面断面図である。
【図13】カメラにより撮像された画像の処理とシーリングガンの駆動制御を実行する制御系の構成を説明するブロック図である。
【図14】マスターデータの作成手順を説明するフローチャートである。
【図15】図14及び図16に示す撮像処理及び基準点の位置測定処理の概念図である。
【図16】塗装作業の手順を説明するフローチャートである。
【図17】補正処理の手順を説明するフローチャートである。
【図18】図17に示す補正処理の概念図である。
【図19】補正処理の変更例の手順を説明するフローチャートである。
【図20】図19に示す補正処理の変更例の概念図である。
【符号の説明】
【0067】
6a,6b,6c,6d ロボット
25 シーリングガン
28 カメラブラケット
33 カメラ
100 車体(サンプル含む)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を実測して得た位置データに基づき該対象物の位置の基準となるマスターデータに対する補正値を算出し、該マスターデータに補正値を加味した補正位置データに基づいて前記対象物の所定部位に作業を行う構成の装置に適用される位置測定方法であって、
対象物の複数のサンプル各々に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する事前測定ステップと、
該事前測定ステップで取得された前記各サンプルの基準点の位置データに基づいて前記マスターデータを事前に算出する事前算出ステップと、
対象物に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する実測ステップと、
該実測ステップで取得された前記位置データに基づいて前記事前算出ステップで算出されたマスターデータに対する補正値を算出する補正値算出ステップと
を有することを特徴とする位置測定方法。
【請求項2】
前記事前測定ステップにおいて、ステレオ視により前記サンプルを撮影した一対の画像に基づいて、三次元の前記位置データが取得され、
前記実測ステップにおいて、ステレオ視により前記対象物を撮影した一対の画像に基づいて、三次元の前記位置データが取得されることを特徴とする請求項1に記載の位置測定方法。
【請求項3】
前記事前算出ステップにおいて、前記マスターデータが各サンプルの基準点の位置データを平均することによって算出されることを特徴とする請求項1または2に記載の位置測定方法。
【請求項4】
前記事前測定ステップにおいて、前記各サンプルに設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、
前記事前算出ステップにおいて、該複数の基準点の各々について前記マスターデータを算出し、
前記実測ステップにおいて、対象物に設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、
前記補正値算出ステップが、
前記マスターデータ間の位置関係を、前記各マスターデータが通る第1の円によって定義するステップと、
前記実測ステップで測定された各基準点間の位置関係を、各基準点が通る第2の円によって定義するステップと、
前記第1の円を規定する第1の座標系を前記第2の円を規定する第2の座標系に変換するための座標変換量を算出するステップと、
式L1(φ)2+L2(φ)2+……+Ln(φ)2が最小値をとるときの角度φを求めるステップとを有し、
ここで、φは、前記第1の円の法線周りに回転したときの回転角、Ln(φ)は、前記第1の円が角度φだけ法線回りに回転したときの、n個目のマスターデータと該n個目のマスターデータと対応する基準点の位置データとの間の距離であり、
更に、前記座標変換量及び前記角度φを前記補正値として算出するステップとを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置測定方法。
【請求項5】
前記事前測定ステップにおいて、前記各サンプルに設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、
前記事前算出ステップにおいて、該複数の基準点の各々について前記マスターデータを算出し、
前記実測ステップにおいて、対象物に設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、
前記補正値算出ステップが、
前記各マスターデータ間の位置関係を規定する第1座標系と、前記実測ステップで測定された前記各基準点間の位置関係を規定する第2座標系とを定めるステップと、
前記第1座標系を前記第2座標系に変換するための座標変換量を前記補正値として算出するステップとを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置測定方法。
【請求項6】
測定対象物の位置の基準となるマスターデータを記憶する記憶部と、
対象物に設けられた基準点の位置を測定して位置データを取得する測定部と、
該測定部で取得された位置データに基づいて前記マスターデータを補正するための補正値算出部とを有する位置測定装置であって、
測定対象物の実測の事前に、前記測定部により前記測定対象物の複数のサンプルの各々に設けられた基準点の位置が測定されて各サンプルの基準点の位置データが取得され、前記記憶部に該取得された各位置データに基づいて算出された前記マスターデータが記憶され、
測定対象物の実測時に、前記補正値算出部が、前記記憶部に記憶された前記マスターデータを、実測された測定対象物の基準点の位置データに基づいて補正する構成であることを特徴とする位置測定装置。
【請求項7】
前記基準点をステレオ視により撮影する第1及び第2のカメラを備え、前記測定部は該第1及び第2のカメラで撮影された一対の画像に基づいて基準点の位置データを取得する構成であり、
該第1及び第2のカメラが、単一のロボットアームに取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の位置測定装置。
【請求項8】
前記ロボットアームに、前記補正部により補正された位置データに基づいて測定対象物に所定の作業を行う作業装置が搭載されていることを特徴とする請求項7に記載の位置測定装置。
【請求項1】
対象物を実測して得た位置データに基づき該対象物の位置の基準となるマスターデータに対する補正値を算出し、該マスターデータに補正値を加味した補正位置データに基づいて前記対象物の所定部位に作業を行う構成の装置に適用される位置測定方法であって、
対象物の複数のサンプル各々に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する事前測定ステップと、
該事前測定ステップで取得された前記各サンプルの基準点の位置データに基づいて前記マスターデータを事前に算出する事前算出ステップと、
対象物に設けられている基準点の位置を測定して該基準点の位置データを取得する実測ステップと、
該実測ステップで取得された前記位置データに基づいて前記事前算出ステップで算出されたマスターデータに対する補正値を算出する補正値算出ステップと
を有することを特徴とする位置測定方法。
【請求項2】
前記事前測定ステップにおいて、ステレオ視により前記サンプルを撮影した一対の画像に基づいて、三次元の前記位置データが取得され、
前記実測ステップにおいて、ステレオ視により前記対象物を撮影した一対の画像に基づいて、三次元の前記位置データが取得されることを特徴とする請求項1に記載の位置測定方法。
【請求項3】
前記事前算出ステップにおいて、前記マスターデータが各サンプルの基準点の位置データを平均することによって算出されることを特徴とする請求項1または2に記載の位置測定方法。
【請求項4】
前記事前測定ステップにおいて、前記各サンプルに設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、
前記事前算出ステップにおいて、該複数の基準点の各々について前記マスターデータを算出し、
前記実測ステップにおいて、対象物に設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、
前記補正値算出ステップが、
前記マスターデータ間の位置関係を、前記各マスターデータが通る第1の円によって定義するステップと、
前記実測ステップで測定された各基準点間の位置関係を、各基準点が通る第2の円によって定義するステップと、
前記第1の円を規定する第1の座標系を前記第2の円を規定する第2の座標系に変換するための座標変換量を算出するステップと、
式L1(φ)2+L2(φ)2+……+Ln(φ)2が最小値をとるときの角度φを求めるステップとを有し、
ここで、φは、前記第1の円の法線周りに回転したときの回転角、Ln(φ)は、前記第1の円が角度φだけ法線回りに回転したときの、n個目のマスターデータと該n個目のマスターデータと対応する基準点の位置データとの間の距離であり、
更に、前記座標変換量及び前記角度φを前記補正値として算出するステップとを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置測定方法。
【請求項5】
前記事前測定ステップにおいて、前記各サンプルに設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、
前記事前算出ステップにおいて、該複数の基準点の各々について前記マスターデータを算出し、
前記実測ステップにおいて、対象物に設けられている複数の基準点の位置を測定して各基準点の位置データを取得し、
前記補正値算出ステップが、
前記各マスターデータ間の位置関係を規定する第1座標系と、前記実測ステップで測定された前記各基準点間の位置関係を規定する第2座標系とを定めるステップと、
前記第1座標系を前記第2座標系に変換するための座標変換量を前記補正値として算出するステップとを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置測定方法。
【請求項6】
測定対象物の位置の基準となるマスターデータを記憶する記憶部と、
対象物に設けられた基準点の位置を測定して位置データを取得する測定部と、
該測定部で取得された位置データに基づいて前記マスターデータを補正するための補正値算出部とを有する位置測定装置であって、
測定対象物の実測の事前に、前記測定部により前記測定対象物の複数のサンプルの各々に設けられた基準点の位置が測定されて各サンプルの基準点の位置データが取得され、前記記憶部に該取得された各位置データに基づいて算出された前記マスターデータが記憶され、
測定対象物の実測時に、前記補正値算出部が、前記記憶部に記憶された前記マスターデータを、実測された測定対象物の基準点の位置データに基づいて補正する構成であることを特徴とする位置測定装置。
【請求項7】
前記基準点をステレオ視により撮影する第1及び第2のカメラを備え、前記測定部は該第1及び第2のカメラで撮影された一対の画像に基づいて基準点の位置データを取得する構成であり、
該第1及び第2のカメラが、単一のロボットアームに取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の位置測定装置。
【請求項8】
前記ロボットアームに、前記補正部により補正された位置データに基づいて測定対象物に所定の作業を行う作業装置が搭載されていることを特徴とする請求項7に記載の位置測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−32339(P2010−32339A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194321(P2008−194321)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
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