説明

側面発光半導体素子及び側面発光半導体素子の製造方法

【課題】歩留まりがよく、局所的な領域から光を放出する側面発光半導体素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る側面発光半導体素子は、Mgの濃度が、5×1019cm-3以下にドープされたAlGaN層と、AlGaN層及び活性層を含む積層構造の上部に形成されるストライプ状のリッジと、AlGaN層が露出するリッジ以外の積層構造の上面に形成されるショットキーバリアとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面発光半導体素子及び側面発光半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を表示するディスプレイ装置等に用いられる半導体発光素子として、ドットマトリックス・ディスプレイ装置に用いられる半導体発光素子、携帯電話の液晶ディスプレイ装置用のバックライトに用いられる半導体発光素子、テレビの液晶ディスプレイ装置用のバックライトに用いられる半導体発光素子等が、代表に挙げられる。
【0003】
例えば、ドットマトリックス・ディスプレイ装置は、赤色LED(Light Emitting Diode)、緑色LED、及び、青色LEDの半導体発光素子を並べて配置する。
【0004】
また、携帯電話の液晶ディスプレイ装置は、青色LED及び黄色LEDの半導体発行素子を、バックライトとして配置する。携帯電話の液晶ディスプレイ装置は、青色LED及び黄色LEDの半導体発行素子により白色光を形成することができる。
【0005】
また、テレビの液晶ディスプレイ装置は、赤色LED、緑色LED、及び、青色LEDの半導体発光素子を、バックライトとして並べて配置する。テレビの液晶ディスプレイ装置は、赤色LEDと、青色LEDと比べて、緑色LEDを多く用いる。
【0006】
ここで、かかるディスプレイ装置等において、エネルギー効率を高めるために、局所的な領域から光を放出する半導体発光素子が、求められている。
【0007】
かかる半導体発光素子として、活性層を含む積層構造の上部に形成されるストライプ状のリッジを備えた側面発光半導体素子が、一般的に、知られている。
【0008】
具体的には、図8に示すように、側面発光半導体素子は、n型窒化物半導体層(n型コンタクト層502乃至n型光ガイド層504)と、MQW活性層506と、p型窒化物半導体層(p型第1光ガイド層507乃至p型コンタクト層510)とを備え、p型窒化物半導体層に、ストライプ状のリッジが形成されている。
【0009】
側面発光半導体素子は、p電極513と電気的に接続しているp型コンタクト層510の上面を除いて、該リッジの露出面を絶縁膜515で覆う構造を備える(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
かかる側面発光半導体素子の製造方法は、第1に、p型窒化物半導体層にストライプ状のリッジを形成し、続けて、該リッジ上に絶縁膜を形成する。
【0011】
第2に、該リッジの上部のp型コンタクト層510上に形成された絶縁膜515を除去し、少なくとも露出したp型コンタクト層510上にp電極513を形成することにより、側面発光半導体素子を製造することができる。
【0012】
かかる側面発光半導体素子によれば、p電極513と、n電極514との間に電流を流した際に、p電極513から流れる正孔は、リッジに集中し、更にリッジの下方に相当するMQW活性層506の領域に集中する。その結果、かかるリッジの下方に相当するMQW活性層506の領域において、正孔と電子とが再結合することにより、光を放出することができる。すなわち、側面発光半導体素子は、局所的な領域から光を放出することができる。
【0013】
かかる側面発光半導体素子は、高い電流狭窄効果、電流閉じ込め効果、光閉じ込め効果を実現することができ、一般的に、エネルギー効率の高い構造として評価されている。
【特許文献1】特開2001-15851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述のような従来の側面発光半導体素子の製造方法において、リッジの上部のp型コンタクト層510上に形成された絶縁膜515のみを取り除くのが困難であるため、歩留まりが向上しないという問題点があった。
【0015】
そこで、本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、歩留まりがよく、局所的な領域から光を放出する側面発光半導体素子及び側面発光半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る側面発光半導体素子の第1の特徴は、Mgの濃度が、5×1019cm-3以下にドープされたAlGaN層と、AlGaN層及び活性層を含む積層構造の上部に形成されるストライプ状のリッジと、AlGaN層が露出する前記リッジ以外の積層構造の上面に形成されるショットキーバリアとを備えることを要旨とする。
【0017】
かかる特徴によれば、AlGaN層及び活性層を含む積層構造の上部に形成されるストライプ状のリッジと、AlGaN層が露出するリッジ以外の積層構造の上面に形成されるショットキーバリアとを備えるため、該リッジにおいて、p電極とオーミック接触すべき部分の絶縁膜のみを取り除く必要が無くなり、歩留まりが向上する。
【0018】
また、バンドギャップエネルギーの高いAlGaNに対して、Mgの濃度が、5×1019cm-3以下にドープされたAlGaN層を備えることにより、AlGaN層の正孔(ホール)濃度は、小さくなるため、正孔が、ショットキーバリアからAlGaN層へ流れにくくなり、ショットキーバリアとAlGaN層との間の抵抗は、高くなる。これにより、かかる側面発光半導体素子は、リッジにのみ正孔を流しやすくなり、該リッジで容易に電流狭窄効果、電流閉じ込め効果、光閉じ込め効果を実現し、活性層の狭い領域から光を放出することができる。
【0019】
従って、歩留まりがよく、局所的な領域から光を放出する側面発光半導体素子を得ることができる。
【0020】
本発明の第1の特徴において、リッジの上部は、Mgの濃度が、1×1019cm-3以上にドープされたGaN層であってもよい。
【0021】
かかる特徴によれば、リッジの上部は、Mgの濃度が、1×1019cm-3以上にドープされたGaN層であるため、リッジの上部の正孔濃度は、高くなり、リッジの電流狭窄効果を更に向上することができる。
【0022】
本発明の第1の特徴において、ショットキーバリア上の少なくとも一部とリッジ上とに、Pd又はNiからなる金属層を更に備えてもよい。
【0023】
かかる特徴によれば、ショットキーバリア上の少なくとも一部とリッジ上とに、Pd又はNiからなる金属層を備えることにより、AlGaN層及びGaN層に対して、オーミック特性を取り易い電極を得ることができるため、リッジの上部に更に、正孔を流れやすくするため、該リッジの電流狭窄効果を更に向上することができる。
【0024】
本発明の第2の特徴は、側面発光半導体素子の製造方法であって、Mgの濃度が、5×1019cm-3以下にドープされたAlGaN層及び活性層を含む積層構造の上部に、イオン衝撃を利用するドライエッチングによりストライプ状のリッジを形成する工程と、AlGaN層が露出するリッジ以外の積層構造の上面に、イオン衝撃を利用するドライエッチングによりショットキーバリアを形成する工程とを有することを要旨とする。
【0025】
かかる発明によれば、Mgの濃度が、5×1019cm-3以下にドープされたAlGaN層及び活性層を含む積層構造の上部にリッジを形成し、AlGaN層が露出するリッジ以外の積層構造の上面に、イオン衝撃を利用するドライエッチングによる適度なダメージが与えられることにより、正孔が流れにくくなるn型反転層(すなわち、ショットキーバリア)が形成される。ショットキーバリアとAlGaN層との間の抵抗が高くなり、リッジにのみ正孔を流れやすくするため、該リッジで容易に電流狭窄効果、電流閉じ込め効果、光閉じ込め効果を実現し、活性層の狭い領域から光を放出することができる。
【0026】
従って、歩留まりがよく、局所的な領域から光を放出する側面発光半導体素子を製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、歩留まりがよく、局所的な領域から光を放出する側面発光半導体素子及び側面発光半導体素子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意するべきである。
【0029】
したがって、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0030】
(本発明の実施形態に係る側面発光半導体素子の構成)
図1を参照して、本発明の実施形態に係る側面発光半導体素子の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る側面発光半導体素子の断面構造を示す。本実施形態に係る側面発光半導体素子の一例として、青色に発光する側面発光型のLED(Light Emitting Diode)について説明する。
【0031】
本実施形態に係る側面発光半導体素子は、図1に示すように、n型コンタクト層102と、n型クラッド層103と、n型光ガイド層104と、n型超格子層105と、MQW活性層106と、p型第1光ガイド層107と、p型第2光ガイド層108と、p型クラッド層109と、p型コンタクト層110とからなる積層構造を備えている。上述の積層構造の上部(すなわち、p型クラッド層109の一部及びp型コンタクト層110には、ストライプ状のリッジが形成されている。
【0032】
n電極114は、n型コンタクト層102の主面に、Al/Ti/Auの多層金属膜によって形成されている。また、n電極114は、Al/Ni/Auの多層金属膜や、Al/Pd/Auの多層金属膜によって形成されていてもよい。
【0033】
p電極113は、ショットキーバリア1091上の少なくとも一部とリッジ上とにPd層、Au層の順に積層され、p型コンタクト層110とオーミック接触している。なお、p電極113は、Pd層の代わりにNi層を積層し、Ni層、Au層によって形成されてもよい。
【0034】
n型コンタクト層102は、SiがドープされたGaNによって形成されている。
【0035】
n型クラッド層103は、SiがドープされたAl0.05GaNによって形成されている。
【0036】
n型光ガイド層104は、アンドープGaNによって形成されている。
【0037】
n型超格子層105は、InGaN層及びGaN層を交互に積層した超格子構造であり、InGaN層及びGaN層は、1層あたりの厚みが30nm以下である。
【0038】
MQW活性層106は、Inを含む窒化物半導体によって形成されている多重量子井戸構造(MQW構造:Multi Quantum Well)である。
【0039】
具体的には、MQW活性層106は、厚みが3nmのIn0.17GaNによって形成されている井戸層と、厚みが10nmのアンドープGaNによって形成されているバリア層とを交互にそれぞれ8回積層したMQW構造である。
【0040】
p型第1光ガイド層107は、アンドープGaN又は、1%程度のInを含むIn0.01GaNによって形成されている。
【0041】
p型第2光ガイド層108は、アンドープGaNによって形成されている。
【0042】
p型クラッド層109は、Mgの濃度が、5×1019cm-3以下にドープされたAlxGa1-xN(0≦x<0.5)によって形成されている。なお、p型クラッド層109のMgの濃度は、1×1018cm-3以上であることがより好ましい。p型クラッド層109のMgの濃度は、1×1018cm-3以上であることにより、p型クラッド層109は、p型コンタクト層110からの正孔を更に流すことができる。
【0043】
p型コンタクト層110は、Mgの濃度が、1×1019cm-3以上にドープされたGaNによって形成されている。なお、p型コンタクト層110のMgの濃度は、5×1019cm-3以上、5×1020cm-3以下であることがより好ましい。p型コンタクト層110のMgの濃度が、5×1020cm-3よりも高い場合、ドープされたMgが、GaN結晶を破壊する場合がある。
【0044】
また、p型クラッド層109の上面において、p型コンタクト層110が形成されていない部分には、ショットキーバリア1091が形成されている。したがって、p型クラッド層109の上面でp型コンタクト層110が形成されていない部分は、p電極113とショットキー接触している。
【0045】
p型コンタクト層110は、p型クラッド層109の一部と共に、ストライプ状のリッジを構成しており、p型コンタクト層110の上面は、p電極113とオーミック接触している。
【0046】
(本発明の実施形態に係る側面発光半導体素子の製造方法)
以下、図2乃至図7を参照して、本実施形態に係る側面発光半導体素子の製造方法において行われる工程(プロセス)について説明する。
【0047】
図2及び図3に示すように、ステップS101において、サファイアからなる基板(以下、基板100と示す。)上に、順次、n型バッファ層101、n型コンタクト層102、n型クラッド層103、n型光ガイド層104、n型超格子層105、MQW活性層106、p型第1光ガイド層107、p型第2光ガイド層108、p型クラッド層109、p型コンタクト層110を、結晶成長(エピタキシャル成長)させる積層工程が行われる。
【0048】
具体的には、本実施形態においては、第1に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置に基板100を入れて、水素ガスを流しながら1050℃程度まで温度を上げることにより、基板100をサーマルクリーニングする。
【0049】
第2に、600℃程度までMOCVD装置内の温度を下げて、基板100上に、GaNからなるn型バッファ層101をエピタキシャル成長することにより結晶成長(以下、単に結晶成長と示す)させる。
【0050】
第3に、1000℃程度までMOCVD装置内の温度を再び上げて、n型バッファ層101上に、順次、n型コンタクト層102、n型クラッド層103、n型光ガイド層104、n型超格子層105、MQW活性層106、p型第1光ガイド層107、p型第2光ガイド層108、p型クラッド層109、p型コンタクト層110を結晶成長させる。
【0051】
図3に、かかる積層工程が行われた後の側面発光半導体素子の断面図を示す。
【0052】
ステップS102において、SOG(Spin on glass)によってストライプパターンを形成するストライプパターン形成工程が行われる。
【0053】
図4に、かかるストライプパターン形成工程における側面発光半導体素子の断面図を示す。以下、図4を参照して、ストライプパターン形成工程について具体的に説明する。
【0054】
具体的には、ストライプパターン形成工程では、第1に、p型コンタクト層110上にSOG材料を塗布する。ここで、SOG材料は、ケイ酸化合物を有機溶剤に溶解した溶液である。
【0055】
第2に、塗布したSOG材料を約450℃で焼成することで、ケイ酸ガラス(SiO)を主成分としたSOG層111を形成する。
【0056】
第3に、SOG層111上にレジスト膜を塗布し、ホトリソグラフィによってレジストパターン112を形成する。
【0057】
第4に、かかるレジストパターン112をマスクとして、SOG層111をエッチングする。かかるエッチングは、バッファードフッ酸(BHF)を用いたウェットエッチングであってもよいし、F系ガス(CF、SF等)を用いたドライエッチングであってもよい。ただし、レジストパターン112を細かく切ることができるドライエッチングを用いることが好ましい。
【0058】
第5に、Oアッシャー(Oプラズマ)やアルカリ溶液等を用いて、レジストパターン112を除去することによって、残されたSOG層111からなるストライプパターンを形成する。
【0059】
ステップS103において、誘導結合型(Induced Coupled Plasma:ICP)エッチャーを用いて、p型コンタクト層110からなるリッジを形成するリッジ構造形成工程が行われる。
【0060】
図5に、かかるリッジ構造形成工程における側面発光半導体素子の断面図を示す。以下、図5を参照して、リッジ構造形成工程について具体的に説明する。
【0061】
具体的には、第1に、ICPエッチャーを用いて、SOG層111からなるストライプパターンをマスクとして、p型コンタクト層110及びp型クラッド層109の一部及び、p型コンタクト層110乃至n型コンタクト層102の一部をエッチングする。
【0062】
かかるエッチングに用いられるICPエッチャーの具体例について、図6に示す。図6に示すように、ICPエッチャーは、チャンバー201と、下部電極202と、排気口203と、石英板204と、高周波電源205と、ICPコイル206と、ICP高周波電源207と、ガス導入口208とを具備している。
【0063】
かかるICPエッチャーは、反応性ガスをプラズマ化するためにICP高周波電源207によってICPコイル206に印加する高周波電力(PICP)と、プラズマ化した反応種をエッチング対象部材209に引き込むために高周波電源205に印加する高周波電力(PBias)とによって生じる活性種(ラジカルやイオン等)を利用して、エッチング対象部材209にダメージを与えることによって、エッチングを可能とするものである。
【0064】
具体的には、リッジ構造形成工程では、ICPエッチャーに、エッチング対象部材209(本実施形態では、ステップ102が行われた後の側面発光半導体素子(積層構造))を配置して、第1の高周波電力(PICP及びPBias)を印加する。
【0065】
ここで、主に高周波電源205に印加される高周波電力によって、ICPエッチャーのチャンバー201内の下部電極202上に配置されたエッチング対象部材209(積層構造)上に、DCバイアス電圧(V_DC)が生じる。かかるV_DCによって、p型コンタクト層110乃至n型コンタクト層102に生じるダメージの程度を定義することができる。例えば、V_DC≧20V、好ましくは、V_DC≧40Vで、p型コンタクト層110又はp型クラッド層109にダメージが生じ、所望の効果を得ることができる。
【0066】
本実施形態に係るリッジ構造形成工程では、第1の高周波電力として、PICP=300W、PBias=25Wを印加することによって、GaNからなるp型コンタクト層110をエッチングする。この際に、エッチング対象部材209上に生じるV_DCは、非常に小さく、例えば、10V程度である。
【0067】
また、本実施形態に係るリッジ構造形成工程では、第1の高周波電力として、PICP=300W、PBias=25Wを印加することによって、p型コンタクト層110乃至n型コンタクト層102をエッチングする。
【0068】
ステップS104において、ICPエッチャーを用いて、イオン衝撃を利用して、リッジ構造以外の積層構造の上面(すなわち、p型クラッド層109の上面でp型コンタクト層110がエッチングされている部分)に、ショットキーバリア1091を生成するショットキーバリア生成工程が行われる。
【0069】
具体的には、ショットキーバリア生成工程では、ICPエッチャーに、エッチング対象部材209(本実施形態では、ステップ103が行われた後の側面発光半導体素子(積層構造))を配置して、第1の高周波電力(PICP及びPBias)よりも高電力である第1の高周波電力(PICP及びPBias)を印加する。
【0070】
本実施形態に係るショットキーバリア生成工程では、第2の高周波電力として、PICP=300W、PBias=120Wを印加することによって、p型クラッド層109をエッチングする。この際に、エッチング対象部材209上に生じるV_DCが、50V程度と大きくなるため、ICP高周波電源27の電力で生じたイオンがV_DCで加速されてエッチング対象部材209上に衝突してダメージを与えることができる。
【0071】
ここで、ステップS104及びS105において、エッチング残し厚は、レーザーを利用した干渉計で測定することができる。かかる干渉計は、上面における界面からの反射波と、下面における界面からの反射波との干渉により生じる干渉縞の間隔からエッチング深さを知ることができる。ここで、使用するレーザーの波長をλとすると、λ/n(n=エッチング対象部材の屈折率)が干渉の一周期となる。
【0072】
ステップS105において、n電極114及びp電極113を形成する電極形成工程が行われる。
【0073】
具体的には、第1に、ステップS103で形成されたn型コンタクト層102の露出面を塩酸により洗浄し、かかる露出面に、Al層、Ti層、Au層の順に積層することにより、n電極114を形成する。n電極114は、Ti層の代わりに、Ni層、Pd層を用いることで、Al/Ni/Auの多層金属膜や、Al/Pd/Auの多層金属膜によって形成されていてもよい。
【0074】
また、ショットキーバリア1091上の少なくとも一部とリッジ上とを塩酸により洗浄し、Pd層、Au層の順に積層することにより、p電極113を形成する。p電極113は、Pd層の代わりにNi層を積層し、Ni層、Au層によって形成されてもよい。
【0075】
図7に、n電極114及びp電極113を形成した後の側面発光半導体素子の断面図を示す。
【0076】
第2に、基板100及びn型バッファ層101を研削し、n型コンタクト層102の裏面を研磨する。
【0077】
第3に、側面発光半導体素子の幅にへき開することにより、図1に示す側面発光半導体素子を得る。かかるへき開は、半導体レーザー素子を得るための鏡面を形成するわけではなく、側面発光型のLEDのためのへき開であるため、高い精度を必要とせず、多少失敗しても十分である。
【0078】
(本発明の実施形態に係る側面発光半導体素子の作用・効果)
本実施形態に係る側面発光半導体素子によれば、p型クラッド層109及びMQW活性層106を含む積層構造の上部に形成されるストライプ状のリッジと、p型クラッド層109が露出するリッジ以外の積層構造の上面に形成されるショットキーバリア1091とを備えるため、該リッジにおいて、p電極113とオーミック接触すべき部分の絶縁膜のみを取り除く必要が無くなり、歩留まりが向上する。
【0079】
また、バンドギャップエネルギーの高いAlxGa1-xN(0≦x<0.5)に対して、Mgの濃度が、5×1019cm-3以下にドープされたp型クラッド層109を備えることにより、p型クラッド層109の正孔(ホール)濃度は、小さくなる。つまり、正孔が、ショットキーバリア1091からp型クラッド層109へ流れにくくなるため、ショットキーバリア1091とp型クラッド層109との間の抵抗は、高くなる。
【0080】
これにより、かかる側面発光半導体素子は、リッジにのみ正孔を流れやすくするため、該リッジで容易に電流狭窄効果、電流閉じ込め効果、光閉じ込め効果を実現し、活性層の狭い領域から光を放出することができる。
【0081】
従って、簡素な構造で、歩留まりがよく、局所的な領域から光を放出する側面発光半導体素子を得ることができる。
【0082】
また、リッジの上部は、Mgの濃度が、1×1019cm-3以上にドープされたGaNからなるp型コンタクト層110であることにより、リッジの上部の電子濃度が高くなり、リッジの電流狭窄効果を更に向上することができる。
【0083】
また、ショットキーバリア1091上の少なくとも一部とリッジ上とに、Pd又はNiからなるp電極113を備えることにより、p型クラッド層109層及びp型コンタクト層110に対して、オーミック特性を取り易い電極を得ることができるため、リッジの上部に更に、正孔を流れやすくなるため、該リッジの電流狭窄効果を更に向上することができる。
【0084】
また、本実施形態にかかる製造方法によれば、Mgの濃度が、5×1019cm-3以下にドープされたAlGaNからなるp型クラッド層109及びMQW活性層106を含む積層構造の上部にリッジを形成し、p型クラッド層109が露出するリッジ以外の積層構造の上面に、イオン衝撃を利用するドライエッチングによる適度なダメージが与えられることにより、正孔が流れにくくなるn型反転層(すなわち、ショットキーバリア1091)が形成される。
【0085】
ショットキーバリア1091とp型クラッド層109との間の抵抗が高くなり、リッジにのみ正孔を流れやすくするため、該リッジで容易に電流狭窄効果を得ることができる。
【0086】
従って、歩留りがよく、局所的な領域から光を放出する側面発光半導体素子を製造することができる。
【0087】
本実施形態に係る側面発光型のLEDは、例えば、ヘッドマウント型のディスプレイ装置に用いられることが可能である。ヘッドマウント型のディスプレイ装置は、ゴーグル又はヘルメットのような形状をしたディスプレイ装置である。ヘッドマウント型のディスプレイ装置は、頭部に装着されると、左右の目の前にディスプレイ装置の表示部を1つずつ配置する。
【0088】
かかるヘッドマウント型のディスプレイ装置において、赤色に発光する半導体発光素子、緑色に発光する半導体発光素子、及び、青色に発光する半導体発光素子が、狭いスペクトラムを有する光源として配置される。ヘッドマウント型のディスプレイ装置は、光ファイバを介して、半導体発光素子から放出される光を人間の網膜に伝送し、該網膜上で画像を形成する。
【0089】
かかるヘッドマウント型のディスプレイ装置では、光ファイバと半導体発光素子とのカップリング効率を高くする必要がある。本実施形態に係る側面発光型のLEDによれば、局所的な領域から光を放出することができるため、光ファイバとのカップリング効率を向上することができる。
【0090】
また、かかる側面発光型のLEDは、複雑な構造を有さず、歩留りもよいため、安価な半導体発光素子として提供される。
【0091】
かかる側面発光型のLEDから放出された光は、自然放出光であり、半導体レーザー素子で増幅を繰り返して放出される光と比べて、網膜への影響を低減できる。従って、かかる側面発光型のLEDは、ヘッドマウントディスプレイ装置に用いられる半導体発光素子として、適している。
【0092】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0093】
例えば、本発明の実施形態では、側面発光型のLEDについて例示したが、本発明
はこれに限らず、側面発光型の半導体レーザー素子にも利用可能である。
【0094】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論であ
る。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態に係る側面発光半導体素子の断面構造を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る側面発光半導体素子の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る側面発光半導体素子の製造方法の積層工程が行われた後の側面発光半導体素子の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る側面発光半導体素子の製造方法のストライプパターン形成工程における側面発光半導体素子の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る側面発光半導体素子の製造方法のリッジ形成工程における側面発光半導体素子の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る側面発光半導体素子の製造方法におけるリッジ形成工程及びショットキーバリア生成工程で用いられるICPエッチャーの断面構造図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る側面発光半導体素子の製造方法の電極形成工程が行われた後の側面発光半導体素子の断面図である。
【図8】従来技術に係る半導体発光素子の断面構造を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
100…基板、101…n型バッファ層、102、502…n型コンタクト層、
103、503…n型クラッド層、104、504…n型光ガイド層、105…n型超格子層、
106、506…MQW活性層、107、507…p型第1光ガイド層、
108、508…p型第2光ガイド層、109、509…p型クラッド層、
1091…ショットキーバリア、110、510…p型コンタクト層、
111…SOG層、112…レジスト、113、513…n電極、114、514…n電極、
201…チャンバー、202…下部電極、203…排気口、204…石英板、
205…高周波電源、206…ICPコイル、207…ICP高周波電源、208…ガス導入口、
209…エッチング対象部材、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mgの濃度が、5×1019cm-3以下にドープされたAlGaN層と、
前記AlGaN層及び活性層を含む積層構造の上部に形成されるストライプ状のリッジと、
前記AlGaN層が露出する前記リッジ以外の前記積層構造の上面に形成されるショットキーバリアとを備えることを特徴とする側面発光半導体素子。
【請求項2】
前記リッジの上部は、Mgの濃度が、1×1019cm-3以上にドープされたGaN層であることを特徴とする請求項1に記載の側面発光半導体素子。
【請求項3】
前記ショットキーバリア上の少なくとも一部と前記リッジ上とに、前記Pd又はNiからなる金属層を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の側面発光半導体素子。
【請求項4】
Mgの濃度が、5×1019cm-3以下にドープされたAlGaN層及び活性層を含む積層構造の上部に、イオン衝撃を利用するドライエッチングによりストライプ状のリッジを形成する工程と、
前記AlGaN層が露出する前記リッジ以外の前記積層構造の上面に、イオン衝撃を利用するドライエッチングによりショットキーバリアを形成する工程とを有することを特徴とする側面発光半導体素子の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−250788(P2007−250788A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71481(P2006−71481)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】