説明

光変調器

【課題】光変調部において厚さ10μm以下の薄板を採用して速度整合を図った光変調器において、光変調器と外側の光ファイバとの間の結合損失および光変調器内部での結合損失を抑制することである。
【解決手段】光変調器10Aは、支持基板1、電気光学材料からなる変調用基板3、この変調用基板3の一方の主面側3aに設けられている光導波路4、変調用基板3の他方の主面3b側に設けられており、光導波路を伝搬する光を変調するための電圧を印加する電極、および変調用基板3の一方の主面3aを支持基板1へと接着する接着層2を備える。変調用基板3が、少なくとも光導波路4を伝搬する光の変調を行うための厚さ10μm以下の変調部7と、変調部7よりも厚い光ファイバ結合部6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進行波型光変調器等の光変調器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、例えば特許文献1、2に示すような薄板型変調器を開示してきた。薄板LN光変調器においては、駆動電圧Vπの低減と同時に高速動作をするためには、LN基板厚を薄くする必要がある。
【0003】
このために基板厚は10μm以下とする必要があるが、10μm以下に薄板化すると、光の閉じ込めが強くなり、深さ方向の光スポットサイズは、拡散源のTiの厚みや幅に依存せずに基板厚に比例して小さくなる。通常、光通信用光ファイバは波長1.55μm帯では光スポットサイズは10μmとなる。したがって、Ti拡散などによって形成される光導波路のスポットサイズと光ファイバのスポットサイズはミスマッチとなり、光結合損失が増大してしまう欠点があった。例えばLN基板厚を5μm程度まで薄くすると、光ファイバとの結合による過剰損失は-2.5dB程度となってしまう。
【0004】
非特許文献1では、PLC光回路とLN導波路デバイスを接続している。また、特許文献3では、PLC光回路とLN導波路デバイスとを接続することが記載されており、この際、二つの基板間で光導波路のモードフィールド径が異なるために、その間にモードフィールド径を調整するためのテーパー部を設けることが記載されている。
【0005】
また、特許文献4においても、支持基板上に光導波路基板を接着する素子において、高周波相互作用部の厚さを小さくし、入射部または出射部の厚さを大きくすることが記載されている。この場合にも、高周波相互作用部の底面側には凹みを生じさせ、凹みを接着剤で充填する。
【0006】
なお、本出願人は、特許文献5において、高周波相互作用部を含む光変調用基板と、光ファイバーに接続される厚い受動基板とを別体とし、両者を接着することによって、一体の光変調器を形成することを開示した。
【0007】
また、本出願人は、特許文献6において、光ファイバとスポットサイズを近似させたTi拡散導波路を形成したスポットサイズ変換用LNチップをLN光変調器チップと光ファイバの間に設け、光結合の過剰損失を-0.8〜-1.2dBに低減させた構造を開示した。
【0008】
また、特許文献7では、変調器駆動部から光入力部もしくは光出力部にかけて凹型研磨加工によりテーパ型凹形状とすることにより、光ファイバとの結合端部の基板厚を厚くし、スポットサイズを大きくし、双方のスポットサイズ不一致を解消でき、結合による過剰損失を低減できることを明らかにした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-235714
【特許文献2】特願2006-537853
【特許文献3】特開2005-173162
【特許文献4】特許第3762320号
【特許文献5】WO 2008/099950 A1
【特許文献6】特願2008-064101
【特許文献7】特願2009-64070
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「Highly Functional Hybrid Modules Using Low Loss Direct Attachment Technique with Plannar Lightwave Circuit and LiNbO3 Devices 」T. Yamada et al. 「ISMOT-2005」pp. 107-110, 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、スポットサイズ変換用チップと光変調器チップとを接合するときには、光導波路同士の光調芯を行う必要があり、かつ、各光導波路の端面に反射防止膜を形成する必要がある。更に、変調器チップ内部での光多重反射によって、変調動作の安定性を確保することが難しくなることがわかってきた。
本発明の課題は、光変調部において厚さ10μm以下の薄板を採用して速度整合を図った光変調器において、光変調器と外側の光ファイバとの間の結合損失および光変調器内部での結合損失を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
支持基板、
電気光学材料からなる変調用基板、
この変調用基板の一方の主面側に設けられている光導波路、
変調用基板の他方の主面側に設けられており、光導波路を伝搬する光を変調するための電圧を印加する電極、および
変調用基板の一方の主面を支持基板へと接着する接着層を備えており、
変調用基板が、少なくとも光導波路を伝搬する光の変調を行うための厚さ10μm以下の変調部と、変調部よりも厚い光ファイバ結合部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
薄板の光変調部では、Y分岐部での損失や消光比、さらにそれぞれの波長依存性を低減するために光導波路条件を決める必要があり、基板厚10μm以下の場合、例えばTi幅×厚みは3500オングストローム・μm以下となることがわかった(例.基板厚6μmのとき、Ti厚800オングストローム、幅2μm)。一方、基板の厚さが大きいと、光ファイバとの結合損失を低減するために、Ti厚750〜1200オングストローム、幅5〜8μmとすることが好ましい。このため、光ファイバ結合部と光変調部との間では結合損失が大きくなる。
【0014】
この点、本発明によれば、光ファイバ結合部では、速度整合を満足させる必要のある光変調部とは異なり、光導波路の設けられた変調用基板の厚さを大きくすることができるので、光スポットサイズの基板厚に対する依存性がなく、比較的大きなスポットサイズを得ることができる。その上、本発明では、変調用基板中に光変調部と光ファイバ結合部とを形成するので、光変調部と光ファイバ結合部との境界での結合損失が小さく、また反射防止膜を境界に形成する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る光変調器10Aの要部を模式的に示す平面図であり、(b)は、光変調器10Aの要部を示す正面図である。
【図2】(a)は、本発明の他の実施形態に係る光変調器10Bの要部を模式的に示す平面図であり、(b)は、光変調器10Bの要部を示す正面図である。
【図3】(a)は、本発明の更に他の実施形態に係る光変調器10Cの要部を模式的に示す平面図であり、(b)は、光変調器10Cの要部を示す正面図である。
【図4】(a)は、本発明の更に他の実施形態に係る光変調器10Dの要部を模式的に示す平面図であり、(b)は、光変調器10Dの要部を示す正面図である。
【図5】(a)は、対照例に係る光変調器20の要部を模式的に示す平面図であり、(b)は、光変調器20の要部を示す正面図である。
【図6】本発明を適用可能な非対称2電極型の光変調器30Aを模式的に示す平面図である。
【図7】本発明を適用可能な対称電極型の光変調器30Bを模式的に示す平面図である。
【図8】本発明を適用可能な対称電極型の光変調器30Cを模式的に示す平面図である。
【図9】本発明を適用可能な対称電極型の光位相変調器30Dを模式的に示す平面図である。
【図10】本発明を適用可能な集積型の光変調器30Eを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
光変調部では、光導波路に高周波電圧が印加され、光が変調される。高周波電圧とは、1GHz以上の周波数の電圧を意味する。
【0017】
変調電極は、いわゆるCPW型光変調器には限定されず、種々の形態の光変調器に対して適用できる。本発明は、例えば、いわゆるACPS型の光変調器やACPW(非対称CPW)電極型光変調器、独立変調型の光変調器に対して、適用可能である。
【0018】
図1〜図4は、それぞれ、本発明の各実施形態に係る光変調器を模式的に示すものである。図5(a)は、対照例の光変調器20を模式的に示す平面図であり、図5(b)は、光変調器20の正面図である。
【0019】
図5の光変調器20においては、支持基板1上に接着層2を介して変調用基板3の一方の主面3aを接着している。変調用基板7の一方の主面3a側には光導波路4、8が形成されており、他方の主面3b側には、図示しない変調用電極が形成されている。変調用電極は、図5で図示された領域よりも左側に存在する。
【0020】
前述したように、基板3の厚みが小さい場合、従来の厚板構造と比較し、光変調部7のY分岐直線光導波路4用の金属膜の線幅が小さく、また金属膜の厚さが小さい条件で、シングルモード条件を満足する。一方、光ファイバ結合部6では、光導波路8の端面18で外部の光ファイバに結合するので、光導波路8のスポットサイズは光ファイバの大きさに近づける必要がある。しかし、光ファイバ結合部でも基板厚さは小さく深さ方向のスポットサイズは光ファイバよりも小さくなる。深さ方向の光スポットサイズを大きくする方法は、基板3の厚みが小さい場合には、光導波路を形成するための金属膜の線幅を大きくしたり、厚さを大きくすることでは制御できない。このため、光導波路9と外部光ファイバとの間で光スポットサイズのミスマッチが生じ易く、結合損失をもたらす。
【0021】
光変調部7と光ファイバ結合部6とを別体の基板とし、光ファイバ結合部6を基板3の厚みを厚くすることで外部光ファイバとの結合損失を小さくすることも考えられる。しかし、この場合には、別体の光変調部と光ファイバ結合部との境界面における結合損失が大きく、かつ両者の光導波路の端面に反射防止膜を形成する必要がある。
【0022】
図1(a)は、本発明例に係る光変調器10Aを模式的に示す平面図であり、図1(b)は、光変調器10Aの正面図である。
【0023】
図1の光変調器においては、支持基板1上に接着層2を介して、厚さ10μm以下の薄板3の一方の主面3aを接着している。薄板3の一方の主面3a側には光導波路4、8が形成されており、他方の主面3b側には、図示しない変調用電極が形成されている。変調用電極は、図1で図示された領域よりも左側に存在する。
【0024】
光変調部7では光導波路4用の金属膜の線幅はシングルモード条件を得るために決定される。一方、光ファイバ結合部6では、光導波路8の端面18で外部の光ファイバに結合するので、光導波路8のスポットサイズは光ファイバに近づける必要がある。このため、光導波路4、8では線幅の最適値は異なる。本例では、光フイァバ結合部6において、薄板3の他方の主面3b側が基板5に接合されており、一体化しており、これによって一体の変調用基板11Aを形成している。
【0025】
この結果、光ファイバ結合部6内では、光モードフィールド径が基板厚さによって制約を受けないように調整することができる。これによって、光ファイバ結合部6内の光導波路と外部光ファイバとの結合損失を小さくすることができる。しかも、光変調部と光ファイバ結合部とは一体の薄板3内に形成されて連続しているので、この境界における光結合損失は小さくすることができ、かつ反射防止膜も必要ない。
【0026】
本例では、更に、光導波路4と光導波路8との境界に、スポットサイズが徐々に変化するテーパ部9を設けることによって、この境界における結合損失を更に低減できる。
【0027】
図2(a)は、本発明例に係る光変調器10Bを模式的に示す平面図であり、図2(b)は、光変調器10Bの正面図である。
【0028】
図2の光変調器10Bは、図1の光変調器10Aとほぼ同様の構成のものである。ただし、図2においては、光変調部7のうちファイバ結合部6側の末端において、光導波路12およびテーパ部9を設けた。前述のように、光導波路4ではシングルモード条件を満足する必要があるが、テーパ部を設けずに基板5を接合すると、カットオフモードとなり光が放射する場合があり、テーパ部を設けて線幅を大きくすることにより光の閉じ込めを強くしカットオフを防止する。ここで、光変調部側にある光導波路12の金属膜の線幅は光導波路8の金属膜の線幅と同じにし、光導波路12と4との間に、徐々に線幅が変化するテーパ部9を設けた。11Bは変調用基板である。
【0029】
このように、光変調部とファイバ結合部との境界において光導波路のスポットサイズが変わらないようにし、光変調部7内にスポットサイズの変化部9を移動させることで、結合損失を一層低減できる。
【0030】
図3(a)は、本発明例に係る光変調器10Cを模式的に示す平面図であり、図3(b)は、光変調器10Cの正面図である。
【0031】
図3の光変調器10Cは、図2の光変調器10Bとほぼ同様の構成ものである。ただし、図3においては、接合基板15が、厚さ一定の平板部15aと、厚さが0へと向かって徐々に減少するテーパ部15cとを備えている。この結果、ファイバ結合部6のうち、外部ファイバとの結合部側には厚さ一定の平板部15aが存在するようにし、変調部7側の末端にはテーパ部15cが位置するようにする。11Cは変調用基板である。
【0032】
光変調器10cの光導波路12と厚さ一定の平板部15aでは、深さ方向のスポットサイズが異なりこれに起因する結合損失が発生する。前述のように、深さ方向の金属膜の厚さや線幅が変化してもほとんど変化しない。このように、ファイバ結合部内の変調器側末端において、接合基板15に、厚さの減少するテーパ部15cを設けることによって、スポットサイズは徐々に減少するようになる。これによって、光導波路8と4との結合損失を一層低減できる。
【0033】
図4(a)は、本発明例に係る光変調器10Dを模式的に示す平面図であり、図4(b)は、光変調器10Dの正面図である。
【0034】
図4の光変調器10Dは、図2の光変調器10Bとほぼ同様の構成のものである。ただし、図4においては、ファイバ結合部6内において、末端側の光導波路8と変調部側の光導波路8Aとの間に、光スポットサイズが徐々に小さくなるテーパ部9Aを設けた。これと共に、光変調部7のファイバ結合部側の末端にも、変調部側の光導波路4と結合部側の光導波路8Aとの間に、光スポットサイズが徐々に小さくなるテーパ部9を設けた。
【0035】
変調用基板11A〜11Dの厚さは、特性インピーダンス整合と光波とマイクロ波との速度整合という観点から10μm以下とするが、8μm以下が好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。
【0036】
支持基板の厚さは特に限定されないが、部品の取り扱いという観点からは、100μm以上が好ましく、500μm以上が更に好ましい。
【0037】
接着層の厚さは特に限定されないが、光波とマイクロ波との速度整合という観点からは、10μm以上であることが好ましい。また、接合部での線膨張係数差に伴う応力緩和という観点からは、1000μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
【0038】
変調用基板の厚さを、光変調部7において小さくし、結合部6において大きくする方法は、特に限定されず、以下の形態が挙げられる。
【0039】
(1) 厚さ10μm以下の薄板3に対して、別体の接合基板5、15の接合面5b、15bを接合する。5a、15aは外側面である。このとき、薄板3と接合基板5、15とは直接接合し、それらの間に接着層が残らないようにすることが好ましい。こうした接合方法としては。Arイオンビームを用いた常温接合、プラズマ照射による(プラズマアシスト)接合、高温アニールが例示できる。
【0040】
(2) 厚い基板を準備し、変調部のみを研削、研磨加工することによって、薄板部3を形成し、厚さの大きい光ファイバ結合部を残す。
【0041】
光ファイバ結合部における変調用基板の厚さは、光ファイバとの結合損失低減という観点からは、8μm以上が好ましく、9μm以上が更に好ましい。一方、光変調部における光導波路との結合損失を低減するという観点からは、特には制限されないが、光ファイバ結合部における変調用基板の厚さを15μm以下とし、更には13μm以下とすることにより従来の厚板構造よりも結合損失を低減できる。
【0042】
光導波路は、変調用基板の一方の主面に直接形成されたリッジ型の光導波路であってよく、変調用基板の一方の主面の上に他の層を介して形成されたリッジ型の光導波路であってよく、また変調用基板に内拡散法やイオン交換法によって形成された光導波路、例えばチタン拡散光導波路、プロトン交換光導波路であってよい。具体的には、光導波路が、基板表面から突出するリッジ型光導波路であってよい。リッジ型の光導波路は、レーザー加工、機械加工によって形成可能である。あるいは、高屈折率膜を基板上に形成し、この高屈折率膜を機械加工やレーザーアブレーション加工することによって、リッジ型の三次元光導波路を形成できる。高屈折率膜は、例えば化学的気相成長法、物理的気相成長法、有機金属化学的気相成長法、スパッタリング法、液相エピタキシャル法によって形成できる。
【0043】
上記の各例では、電極は変調用基板の表面に設けられているが、変調用基板の表面に直接形成されていてよく、低誘電率層ないしバッファ層の上に形成されていてよい。低誘電率層は、酸化シリコン、弗化マグネシウム、窒化珪素、及びアルミナなどの公知の材料を使用することができる。ここで言う低誘電率層とは、基板本体を構成する材質の誘電率よりも低い誘電率を有する材料からなる層を言う。
【0044】
変調用基板を構成する材料は、強誘電性の電気光学材料、好ましくは単結晶からなる。こうした結晶は、光の変調が可能であれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、ニオブ酸カリウムリチウム、KTP、GaAs及び水晶などを例示することができる。
【0045】
基板5、15を薄板3に対して直接接合する場合には、両者の材質は同種とする。
【0046】
支持基板の材質は、上記した強誘電性の電気光学材料に加えて、更に石英ガラス等のガラスであってもよい。
【0047】
変調用基板と支持基体とを接着する接着剤は、変調用基板よりも低誘電率である材料からなる。その具体例は、前記の条件を満足する限り特に限定されないが、エポキシ系接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化性接着剤、アロンセラミックスC(商品名、東亜合成社製)(熱膨張係数13×10−6/K)を例示できる。
【0048】
本発明は、変調のタイプに関わらず、種々の振幅変調器、位相変調器に対して適用できる。
【0049】
例えば、図6に示す非対照2電極型変調器30Aでは、高周波印加部において、光導波路4が4aと4bとに分岐している。各分岐部4a、4bを伝搬する光に対して、それぞれ、信号電極23A、23Bと接地電極22、22A、22Bとから高周波電圧を印加する。これと共に、本例ではDCバイアス電極24を設けている。この変調器30Aの入射側末端および出射側末端の各ファイバ結合部6に対して本発明を適用し、それぞれ接合基板5(15)を設ける。
【0050】
例えば、図7に示す対称電極型変調器30Bでは、高周波印加部において、光導波路4が4aと4bとに分岐している。各分岐部4a、4bを伝搬する光に対して、それぞれ、信号電極23と接地電極22A、22Bとから高周波電圧を印加する。この変調器30Bの入射側末端および出射側末端の各ファイバ結合部6に対して本発明を適用し、それぞれ接合基板5(15)を設ける。
【0051】
図8に示す対称電極型変調器30Cでは、高周波印加部において、光導波路4が分岐している。各分岐部を伝搬する光に対して、それぞれ、信号電極23と接地電極22A、22Bとから高周波電圧を印加する。また、これと共に、本例ではDCバイアス電極24を設けている。この変調器30Cの入射側末端および出射側末端の各ファイバ結合部6に対して本発明を適用し、それぞれ接合基板5(15)を設ける。
【0052】
図9に示す対称電極型変調器30Dでは、高周波印加部において、光導波路4が分岐していない。高周波印加部においては、信号電極23と接地電極22Bとから、伝搬光に対して高周波電圧を印加し、伝搬光の位相を変調する。22Aは接地電極である。この変調器30Dの入射側末端および出射側末端の各ファイバ結合部6に対して本発明を適用し、それぞれ接合基板5(15)を設ける。
【0053】
図10に示す対称電極型変調器30Eでは、高周波印加部において、光導波路4が分岐しており、かつ、一方の光導波路4が4aと4bとに分岐している。各分岐部4a、4bを伝搬する光に対して、それぞれ、信号電極23Aと接地電極22、22Aとから高周波電圧を印加する。また、これと共に、もう一方の光導波路4を伝搬する光に対して、信号電極23Bと接地電極22Bから電圧を印加する。この変調器30Eの一方の末端の各ファイバ結合部6に対して本発明を適用し、接合基板5(15)を設ける。
【実施例】
【0054】
〔比較例1〕
図5および図7に示すような光変調器を作製した。
具体的には、ニオブ酸リチウム単結晶のX板からなるウエハに、チタン拡散導波路(光導波路基板)4、8を形成した。光導波路4および8において、Ti厚を800オングストロームとした。そして、光導波路8においては、Ti線幅を6μmとし、その長さを2mmとした。光導波路4においてはTi線幅を2μmとし、その分岐部までの長さを5mmとした。光導波路4と8との間では、Ti線幅をテーパ状に減少させた。チタンは約1000℃で熱拡散した。
【0055】
次に、光導波路4、8側を貼り合わせ面にして、低誘電率接着剤3を介して、同じニオブ酸リチウム単結晶のX板からなる支持基板1(1mm厚)に対して接着固定した。その後、光導波路基板の裏面を横型研磨、ラップおよびポリッシング(CMP)にて6μmまで薄板研磨加工を実施し、薄板3を形成した。その後、薄板上に電極を形成し、光導波路デバイスを製造した(図7)。
Ti線幅パラメーターは以下のとおりである(図5参照)。
W1:2ミクロン
W2:6ミクロン
L1:5mm
L2:2mm
【0056】
偏波保持光ファイバーを光導波路の入射側端面、シングルモード光ファイバーを出射側端面に光学結合した。光導波路と光ファイバとの結合損失を測定したところ、スポットサイズの不一致による光結合の過剰損失が−1.6dBであった。
【0057】
(実施例1)
図1および図7に示すような形態の光変調器を作製した。
具体的には、まず比較例1と同様にして、図5および図7に示すような形態のチップが設けられたウエハを得た。次いで、ウエハの光ファイバ結合部6に、図1に示すように、ニオブ酸リチウムのX板からなるブロック5を、Arイオン照射によって真空中にて常温接合した。ブロック5の厚さは500μmであり、チップ末端からの長さは2mmである。最後に切断及び端面研磨加工(端面に角度6°)を実施して、光変調器チップとした。
Ti線幅パラメーターは以下のとおりである(図1参照)。
W1:2ミクロン
W2:6ミクロン
L1:5mm
L2:2mm
【0058】
偏波保持光ファイバを光導波路の入射側端面、シングルモード光ファイバーを出射側端面に光学結合した。光挿入損失を測定した結果、光導波路と光ファイバとの結合損失を測定したところ、0.5dB(片側端)であった。消光比は23dBと良好な特性を得た。
【0059】
〔実施例2〕
図2および図7に示すような形態の光変調器を作製した。
具体的には、まず比較例1と同様にして、図5および図7に示すような形態のチップが設けられたウエハを得た。次いで、ウエハの光ファイバ結合部6に、図2に示すように、ニオブ酸リチウムのX板からなるブロック5を、Arイオン照射によって真空中にて常温接合した。ブロック5の厚さは500μmであり、チップ末端からの長さは0.5mmである。最後に切断及び端面研磨加工(端面に角度6°)を実施して、光変調器チップとした。
Ti線幅パラメーターは以下のとおりである。
W1:2ミクロン
W2:6ミクロン
L1:5mm
L2:2mm
Ltp:0.5mm
L3:0.5mm
【0060】
偏波保持光ファイバーを光導波路の入射側端面、シングルモード光ファイバーを出射側端面に光学結合した。直接接合部と光導波路と光ファイバとの結合損失を測定したところ、0.4dB(片側端)となった。本例では、Tiパターンにテーパ部9を設けることによって、直接接合部での双方のモードミスマッチによる損失を、実施例1に比べてさらに低減できた。消光比は23dBと良好な特性を得た。
【0061】
〔実施例3〕
図3および図7に示すような形態の光変調器を作製した。
具体的には、まず比較例1と同様にして、図5および図7に示すような形態のチップが設けられたウエハを得た。次いで、ウエハの光ファイバ結合部6に、図3に示すように、ニオブ酸リチウムのX板からなるブロック5を、Arイオン照射によって真空中にて常温接合した。ブロック5の厚さは500μmであり、チップ末端からの長さは0.5mmである。最後に切断及び端面研磨加工(端面に角度6°)を実施して、光変調器チップとした。
Ti線幅パラメーターは以下のとおりである。
W1:2ミクロン
W2:6ミクロン
L1:5mm
L2:2mm
Ltp:0.5mm
L3:0.5mm
θ :45°
【0062】
偏波保持光ファイバを光導波路の入射側端面、シングルモード光ファイバーを出射側端面に光学結合した。光挿入損失を測定した結果、結合損失は測定は0.3dB(片側端)となり、実施例2に比べて更に結合損失を低減できた。これは、ブロック15にテーパ部15cを形成し、ブロックの厚さを徐々に低減させたからである。また、消光比は23dBと良好な特性を得た。
【0063】
(実施例4)
図4および図7に示すような形態の光変調器を作製した。
具体的には、まず比較例1と同様にして、図5および図7に示すような形態のチップが設けられたウエハを得た。次いで、ウエハの光ファイバ結合部6に、図4に示すように、ニオブ酸リチウムのX板からなるブロック5を、Arイオン照射によって真空中にて常温接合した。ブロック5の厚さは500μmであり、チップ末端からの長さは2mmである。最後に切断及び端面研磨加工(端面に角度6°)を実施して、光変調器チップとした。
Ti線幅パラメーターは以下のとおりである。
W1:2ミクロン
W2:6ミクロン
W3:4ミクロン
【0064】
偏波保持光ファイバを光導波路の入射側端面、シングルモード光ファイバーを出射側端面に光学結合した。光挿入損失を測定した。この結果、結合損失の測定値は0.35dBであった(片側端)。また、消光比は23dBと良好な特性を得た。
【符号の説明】
【0065】
1 支持基板 2 接着層 3 薄板 3a 一方の主面 3b 他方の主面 4 光導波路(変調部側) 5、15 接合基板 5a 外側面 5b 結合面 6 光ファイバ結合部 7 光変調部 8 光結合部側の光導波路 9 光導波路のテーパ部 10A、10B、10C、10D、30A、30B、30C、30D、30E 光変調器 11A、11B、11C、11D 変調用基板 15 テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板、
電気光学材料からなる変調用基板、
この変調用基板の一方の主面側に設けられている光導波路、
前記変調用基板の他方の主面側に設けられており、前記光導波路を伝搬する光を変調するための電圧を印加する電極、および
前記変調用基板の前記一方の主面を前記支持基板へと接着する接着層を備えており、
前記変調用基板が、少なくとも前記光導波路を伝搬する光の変調を行うための厚さ10μm以下の変調部と、前記変調部よりも厚い光ファイバ結合部とを備えていることを特徴とする、光変調器。
【請求項2】
前記変調用基板が、厚さ10μm以下の薄板と、この薄板に対して直接接合された接合板とからなり、前記薄板と前記積層板とが前記電気光学材料からなることを特徴とする、請求項1記載の光変調器。
【請求項3】
前記変調部と前記光ファイバ結合部との間に、厚さが徐々に変化するテーパ部が設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の光変調器。
【請求項4】
前記光ファイバ結合部における前記光導波路用の金属膜の線幅が、前記変調部における前記光導波路用の金属膜の線幅よりも大きいことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の光変調器。
【請求項5】
前記光ファイバ結合部における前記光導波路用の金属膜の厚さが、前記変調部における前記光導波路用の金属膜の厚さよりも大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の光変調器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−230741(P2010−230741A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75390(P2009−75390)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】