説明

光学品質のダイヤモンド材料

【課題】光デバイス若しくは素子中に、又は光デバイス若しくは素子として、使用するのに適したCVD単結晶ダイヤモンド材料を提供する。
【解決手段】低く均一な複屈折性、均一で高い屈折率、歪みの関数としての低い誘起複屈折性又は屈折率変動、低く均一な光吸収、低く均一な光散乱、高い光(レーザ)損傷閾値、高い熱伝導率、高度な平行度及び平坦度を有しながら高度の表面研磨を示す加工性、機械的強度、磨耗抵抗性、化学的不活性等の特性の少なくとも1つを示すCVD単結晶ダイヤモンド材料であって、前記CVD単結晶ダイヤモンド材料の製造方法は実質上結晶欠陥のない基板を提供するステップと、原料ガスを提供するステップと、原料ガスを解離して、分子状窒素として計算して300ppb〜5ppmの窒素を含む合成雰囲気を作るステップと、実質上結晶欠陥のない前記表面上にホモエピタキシャルダイヤモンドを成長させるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学的気相成長(CVD)ダイヤモンド材料、その製造、及びこの材料から得られる光デバイス及び素子に関する。
【背景技術】
【0002】
その独特の要求事項の結果、それに使用する材料に高度の要求を行う多くの光デバイスがある。例えば、高強度のビームが乱されることなく、ある形の隔離を与えるために必要とされる窓を通過する必要がある、レーザ窓、及び光反射器、回折格子、及びエタロンなどの他のデバイスが含まれる。
【0003】
特定の用途に応じて、適切な材料の選択又は製造に役割を果たす重要な特性には、低く均一な複屈折性、均一で高い屈折率、歪みの関数としての低い誘起複屈折性又は屈折率変動、低く均一な光吸収、低く均一な光散乱、高い光(レーザ)損傷閾値、(光素子内の温度変動を最小にする)高い熱伝導率、高度な平行度及び平坦度を有しながら高度の表面研磨を示す加工性、機械的強度、磨耗抵抗性、化学的不活性、及び用途において信頼性のある材料パラメーターの再現性が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの材料はこれらの要求事項の1つ又は複数を満足するが、多くの用途は1つ以上を必要とし、選択された材料はたいてい妥協であり、最終的な性能を制限する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、CVD単結晶ダイヤモンド材料は、室温(公称20℃)で測定するとき、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは少なくとも4つの以下の特性を示す。
1)透過した波面(例えば、ZYGO GPI位相ずれ633nmFizeau式レーザ干渉計で測定されたとき)が、少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さを有し、適切な平坦度に加工されたダイヤモンドの透過中に、少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4.0mm×4.0mmの特定の面積にわたって測定され、予測される幾何形状的な波面とは、干渉縞2未満、好ましくは干渉縞1未満、さらに好ましくは干渉縞0.5未満、さらにより好ましくは干渉縞0.2未満(1干渉縞は測定波長633nmの1/2に等しい、光路長の差である)異なる、高い光学的均一性。
2)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さを有するサンプルを、少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって測定し、エタロンの形のサンプルに入射するレーザビームの周波数を197〜192THzの周波数範囲にわたって走査することによって1.55μmに近い波長で測定して、サンプルのエタロンの透過率を周波数の関数として記録し、自由スペクトル領域(後に定義される式1)の式を適用するとき、精度が+/−0.002以内、好ましくは+/−0.001以内、さらに好ましくは+/−0.0005以内で2.3964の値を有する有効屈折率。当業者であれば、2.3694の値はその天然存在量割合の炭素同位元素を含むダイヤモンドに基づくものであり、2.3694の値はダイヤモンドの同位元素組成物が変化すれば変化することを理解するであろう。
3)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さを有するサンプルを少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって測定し、Deltascan又は類似の解像度を有する類似の装置で照射範囲545〜615nm、好ましくは589.6nmを用いて測定して、位相ずれの正弦の絶対値|sinδ|がある限界値を超えないような、低歪みを示す低い光複屈折性。詳細には、これらの限界は、サンプルの分析される面積の少なくとも98%、さらに好ましくは少なくとも99%、さらにより好ましくは100%について、位相ずれの正弦の絶対値|sinδ|が一次に留まる(δがπ/2を超えない)こと、及び、|sinδ|が0.9を超えないこと、好ましくは0.6を超えないこと、さらに好ましくは0.4を超えないこと、さらにより好ましくは0.3を超えないこと、さらにより好ましくは0.2を超えないことである。
4)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さを有するエタロンの形に適切に調製したダイヤモンド板が、1.55μmに近い波長及び公称直径1.2mmのレーザビームを用いて、少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって測定し、板上の異なる位置で測定するとき、5×10−3cm−1未満、好ましくは2×10−3cm−1未満、さらに好ましくは5×10−4cm−1未満、さらにより好ましくは2×10−4cm−1未満変化する自由スペクトル領域(FSR)を示すような、光学特性の組合せ。
5)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さを有するファブリペロー(Fabry−Perot)固体エタロンの形に適切に調製したダイヤモンド板が、1.55μmに近い波長及び公称直径1.2mmのレーザビームを用いて、少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって、光学的に調製した表面にコーティングを塗工しないで板上の異なる位置で測定するとき、1.5を超え、好ましくは1.6を超え、さらに好ましくは1.7を超え、さらにより好ましくは1.8を超え、最も好ましくは1.9を超えるコントラスト比を示すような、光学特性の組合せ。コントラスト比は、1.55μmに近い入射レーザ波長で透過が最小値になるエタロン透過の値に対する、1.55μmに近い入射レーザ波長で透過が最大値になるエタロン透過の値の比で定義され、透過の値は、エタロンに入射するレーザ出力に対するエタロンを透過するレーザビームの光出力の比で定義される。
6)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さを有するエタロンの形に適切に調製したダイヤモンド板が、1.55μmに近い波長及び公称直径1.2mmのレーザビームを用いて、少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって測定して、3dBを超えない、好ましくは1dBを超えない、さらに好ましくは0.5dBを超えない、さらにより好ましくは0.3dBを超えない挿入損失を示すような、光学特性の組合せ。
7)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、さらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さのサンプルが、波長10.6μmで20℃近くで測定して、0.04cm−1未満、好ましくは0.03cm−1未満、さらに好ましくは0.027cm−1未満、さらにより好ましくは0.025cm−1未満の吸光係数を有するような、低く均一な光吸収。
8)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さのサンプルが、0.09cm−1未満、好ましくは0.05cm−1未満、さらに好ましくは0.02cm−1未満、さらにより好ましくは0.01cm−1未満の1.06μmにおける吸光係数を有するような、低く均一な光吸収。
9)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さのサンプルについて、少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって測定して、波長0.63μmでの前方散乱が、透過したビームから0.3°〜45°の立体角にわたって積分して、0.2%未満、好ましくは0.1%未満、さらに好ましくは0.05%未満、さらにより好ましくは0.03%未満であるような、低く均一な光散乱。
10)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、さらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さのサンプルについて、少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって測定して、波長10.6μmでの前方散乱が、透過したビームから1.1°〜45°の立体角にわたって積分して、0.004%未満、好ましくは0.002%未満、さらに好ましくは0.001%未満、さらにより好ましくは0.00053%未満であるような、低く均一な光散乱。
11)50〜100nsの一次パルススパイクを有し、100μm1/eの光点サイズに正規化されたガウスビームプロファイルを用いて、波長10.6μmで、損傷を与える最低の入射ピークエネルギー密度と損傷を与えない最大の入射ピークエネルギー密度の平均が120Jcm−2よりも大きく、好ましくは220Jcm−2よりも大きく、さらに好ましくは320Jcm−2よりも大きく、さらにより好ましくは420Jcm−2よりも大きいような、高いレーザ損傷閾値。
12)10〜50ns及びさらに好ましくは20〜40nsの一次パルススパイクを有し、100μm1/eの光点サイズに正規化されたガウスビームプロファイルを用いて、波長10.6μmで、損傷を与える最低の入射ピークエネルギー密度と損傷を与えない最大の入射ピークエネルギー密度の平均が35Jcm−2よりも大きく、好ましくは50Jcm−2よりも大きく、さらに好ましくは80Jcm−2よりも大きく、さらにより好ましくは120Jcm−2よりも大きく、さらにより好ましくは150Jcm−2よりも大きいような、高いレーザ損傷閾値。
13)その天然存在量の炭素同位元素からなる材料について、20℃で測定するとき、値が1500Wm−1−1より大きく、好ましくは1800Wm−1−1より大きく、さらに好ましくは2100Wm−1−1より大きく、さらにより好ましくは2300Wm−1−1より大きく、さらにより好ましくは2500Wm−1−1より大きい、高い熱伝導性。当業者であれば、これは炭素同位元素をその天然存在量含むダイヤモンドに基づくものであり、数値はダイヤモンドの同位元素組成物が変化すれば変化することを理解するであろう。
14)少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4.0mm×4.0mmの特定の面積にわたって、2nm未満、好ましくは1nm未満、さらに好ましくは0.6nm未満のR(プロファイルの平均線からの絶対偏差の算術平均)を有する高度の表面研磨を示す加工性。
15)少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4.0mm×4.0mmの特定の面積にわたる平行度が、1アーク分よりも良く、好ましくは±30アーク秒よりも良く、さらに好ましくは±15アーク秒よりも良く、さらにより好ましくは±5アーク秒よりも良い平行度を有する高い平行度を示す加工性。
16)少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4.0mm×4.0mmの特定の面積にわたって、633nmの放射を用いて測定された平坦度が、10干渉縞よりも良く、好ましくは1干渉縞よりも良く、さらに好ましくは0.3干渉縞よりも良い高い平坦度を示す加工性。
17)5.0mm×3.0mm×0.17〜0.35mm(長さ×幅×厚さ)の個々のサンプル寸法で、単一方持ち梁技術を用いて行った測定から得られる、少なくとも8個、好ましくは少なくとも10個、さらに好ましくは少なくとも15個のバッチ規模で試験したサンプルの、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%だけが、少なくとも2.5GPa、好ましくは少なくとも3.0GPa、さらに好ましくは少なくとも3.5GPaの強度値で破壊する機械的設計強度。
18)対象とする容積の屈折率の変化であって、前記容積が少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さの層を含み、1個又は複数の板に作製されることを特徴とし、少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって、エタロンの形でサンプルに入射するレーザビームの周波数を197〜192THzの周波数範囲にわたって走査することによって1.55μm近くの波長で測定し、サンプルのエタロンの透過率を周波数の関数として記録し、自由スペクトル領域(後に定義される式1)の式を適用するとき、屈折率の標準偏差が0.002未満、好ましくは0.001未満、さらに好ましくは0.0005未満である、屈折率の変化。
19)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さのサンプルにおいて、少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって、エタロンの形でサンプルに入射するレーザビームの周波数を197〜192THzの周波数範囲にわたって走査することによって1.55μm近くの波長で測定して、サンプルのエタロンの透過率を周波数の関数として記録し、自由スペクトル領域(後に定義される式1)の式を適用するとき、精度が±0.001、好ましくは±0.0005以内で2.39695の値を有する有効屈折率。当業者であれば、2.39695の値はその天然存在量割合の炭素同位元素を含むダイヤモンドに基づくものであり、2.39695の値はダイヤモンドの同位元素組成物が変化すれば変化することを理解するであろう。
20)少なくとも0.4mm、好ましくは少なくとも0.8mm、さらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さのサンプルについて、少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって測定して、本明細書に記載された方法で測定した1.064μmでの前方散乱が、透過したビームから3.5°〜87.5°の立体角にわたって積分して、0.4%未満、好ましくは0.2%未満、さらに好ましくは0.1%未満、さらにより好ましくは0.05%未満であるような、低く均一な光散乱。
21)575nmの光ルミネッセンス(PL)線及び637nmのPL線のいずれか、又は好ましくは両方のラマン正規化強度が、40未満、好ましくは10未満、さらに好ましくは3未満、さらにより好ましくは1未満であるような、514nmでの光励起下で低いルミネッセンス。
22)少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、及びさらに好ましくは少なくとも1.2mmの特定の厚さを有するサンプルを少なくとも1.3mm×1.3mm、好ましくは少なくとも2.5mm×2.5mm、さらに好ましくは少なくとも4mm×4mmの特定の面積にわたって測定し、Deltascan又は類似の解像度を有する類似の装置で照射範囲545〜615nm、及び好ましくは589.6nmを用いて測定して、遅軸と速軸に平行な偏光の屈折率間の差を同じ厚さのサンプルで平均化した平均値Δn[average]の最大値がある限界値を超えないような、低歪みを示す低い光複屈折性。詳細には、これらの限界は、サンプルの分析される面積の少なくとも98%、さらに好ましくは少なくとも99%、及びさらにより好ましくは100%について、複屈折性が一次に留まり(δがπ/2を超えない)、及びΔn[average]が1.5×10−4を超えず、好ましくは5×10−5を超えず、さらに好ましくは2×10−5を超えず、さらに好ましくは1×10−5を超えないことである。
【0006】
ダイヤモンド材料は、機械的な層又は光学的な層又は研磨したジェムストーンに形成することが好ましく、光学的な層に形成することがより好ましく、そして、以下の寸法の1種以上が好ましく、2種以上がさらに好ましく、3種以上がさらにより好ましい。
a)横方向寸法は1mm、好ましくは2mm、さらに好ましくは5mm、さらにより好ましくは8mmである。
b)第2の直交横方向寸法は1mm、好ましくは2mm、さらに好ましくは5mm、さらにより好ましくは8mmである。
c)厚さは0.1mm、好ましくは0.3mm、さらに好ましくは0.5mm、さらにより好ましくは0.8mmである。
【0007】
本発明は、光デバイス若しくは素子に使用するため、又は光デバイス若しくは素子としての上述の単結晶CVDダイヤモンド材料に関する。それらのデバイス又は素子は、光学窓、レーザ窓、光反射器、光屈折器、及び格子、及びエタロンを含む広範囲の光用途に使用するのに適しているが、これらに制限されるものではない。ビームスプリッター又はエタロンなど、1個又は複数の表面での反射が要求される用途では、ダイヤモンドはこれらの表面にコーティングしないで使用することができる。さらに、本材料は研磨したジェムストーンとして有利であり、その形は、研磨の前にはより厚い層、典型的には2.5mm、さらに典型的には3.5mm又はそれ以上の層として最初につくってもよい。この用途に特に適した特性は、光学特性の均一性、低散乱及び吸収、及び加工の容易さと加工した表面の品質を含み、特に組み合わせて、より輝いた石を提供する。
【0008】
本発明のダイヤモンド材料は、特定の用途のために調整することができ、すべての場合に上述の特性のすべてを与えられることはないであろうが、多くの用途において、実質的に上述の特性の1組又は特別な組合せを示すことは本ダイヤモンド材料の能力であり、その使用を特に有益にする。例えば、エタロンとして使用するには、材料は光学的な均一性、低吸収、高い熱伝導率、及び平坦で平行に加工される能力が必要とされるであろうが、レーザ損傷閾値及び機械的な強度は重要性が低い。逆に、観察又は光学的アクセス窓としての用途では、散乱、吸収、及び像品質に影響する特性なので、強度が重要となるであろう。
【0009】
本発明のCVDダイヤモンド材料を含む、又はそれから構成される光デバイスは、それに取り付けられた、又は組み込まれた、熱源若しくは温度若しくは他の測定装置、又はその両方を有することができる。熱源は光デバイスの温度を変化させる能力、したがってあらゆる温度に依存する特性を提供し、温度センサーはこれを監視し、場合によってはフィードバック制御を提供する手段を提供する。その高い熱伝導率によって、投入された熱が非常に迅速に均一に分配されるので、この技術はダイヤモンドに特に適切である。本発明のこの形の具体的な実施形態は、ヒーター素子を形成するためにホウ素などのドーパントを使用してドープした層又はトラックを組み込むこと、また、温度測定のためにさらにドープした構造を組み込むことであろう。それらのドープした構造はイオン注入又は他の表面加工技術によって製造することができよう。
【0010】
材料は成長の後、必要とする適切な形状と表面加工の後に有益な特性を示すことができ、又はアニーリングによって加工して特定の特性をさらに向上させることができる。
【0011】
用途において、材料はさらに処理することができ、それらの処理は、搭載、メタライゼーション(格子用など)、コーティング(反射防止コーティングなど)、特定の表面形態への表面エッチング(回折光学系のためなど)等を含む。
【0012】
本発明の他の態様によれば、光学用途に適したCVDダイヤモンド材料の製造方法は、結晶欠陥の発生を制御するために、制御された低レベルの窒素の存在下で、結晶欠陥密度の低い基板上にCVD法によって単結晶ダイヤモンドを成長させることを含む。
【0013】
本方法に使用される窒素のレベルは、有害な吸収及び結晶品質の劣化を防止し低減させるように十分低くしながら、欠陥を発生させる局部的な歪みを防止又は低減するのに十分であるように選択される。
【0014】
ここで、添付する図面を参照しながら、例示によって本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】その第1面に入射したビームの典型的な反射及び透過パターンを示す固体エタロンの側面図である。
【図2】固体エタロンの典型的な透過特性を示すグラフである。
【図3】Gries−Tournoisエタロンの典型的な反射特性を示すグラフである。
【図4】小さなダイヤモンドサンプルにおいて1.06μmでの光散乱を測定する装置を示す図である。
【図5】図4の装置から得られた一次元寸法データの二次元データへの変換を示す図である。
【図6】実施例4に述べたダイヤモンドサンプルについて行ったFSR測定をサンプル厚さの逆数の関数として示すグラフである。
【図7】実施例5に述べた試験を行った本発明のエタロン板のコントラスト比を示すグラフである。
【図8】実施例7に述べた試験を行った本発明のエタロン板の表面平坦度値を示すグラフである。
【図9】実施例15に述べた測定のFSRデータを示しており、データは11個のCVD単結晶板の各々について、板のFSR測定値の標準偏差、及び平均からの任意の測定値の最大偏差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のCVDダイヤモンド材料は、制御された低レベルの窒素の存在下で、CVD法によって製造される。使用される窒素のレベルは、結晶欠陥の発生を制御し、したがって本発明の重要な特性を有するダイヤモンド材料を得るために重要である。高いレベルの窒素で成長させた材料は有害な吸収を示すことが見出された。また、高レベルの窒素は材料の結晶品質を劣化させ得る。逆に、実質上窒素のない条件、又は300ppb未満の窒素の条件下で成長させた材料は、欠陥を発生させる比較的高い局部的歪みを有し、ダイヤモンドの高い光特性の性能の多くに直接又は間接的に影響を与える。この正確な機構は良く判っていないが、以下の観察が行われた。以下では、用語「転位」(dislocation)は、孤立した転位(isolated dislocation)、及び転位を一つにまとめた転位束(dislocation bundle)の両方を包含することを意図している。
大きな容積全体に、転位及び他の結晶欠陥がまったくない材料を作製することはできない。特性が異なればそのような結晶欠陥に対する感度は変化する。例えば、平均屈折率は比較的鈍いが、この局部的な変動は非常に敏感である。CVDダイヤモンドの工学的光特性は、要求される精度のレベルが高く、転位に極めて敏感であると思われる。
【0017】
本発明の方法は主として{100}基板面上への成長に適しており、一般的な方法によって他の特定の基板配向上に光学級のダイヤモンドを成長させることができるものの、特に記載ない限りこれを仮定する。
【0018】
成長工程のガス混合物中に十分窒素が存在しないと、基板材料中に予め存在していたか、又は基板/成長界面で発生する転位の周囲で、{100}成長面上にピットが形成する。これらのピット又は他の理由により、転位は成長の間にゆっくり数を増す。ある程度、この工程は指数関数的であり、転位の複数化(dislocation multiplication)の速度は、存在する局部的な転位密度及び配置に依存する。
【0019】
少量の窒素が存在すると、相対的なファセット成長速度は変化し、これらのピットを除去することができる。これらのピットが存在しないこと又は他の理由により、転位の複数化を低減し又は完全に除去することができる。
【0020】
また、これらのピットは、材料への他の欠陥及び不純物の包含の原因にもなり得る。
【0021】
工程の重要な部分を形成するであろう他の効果が注目された。窒素のない典型的な工程条件で、基板表面を横切って動く<110>面の段差の進行と共にエピタキシャル成長が起きる。これらの段差の存在は一般にNomarski技術又は他の高感度技術を使用して最も良く確認されるが、これらの段差は典型的には標準的な光学顕微鏡の下で見ることができる。正しい条件下で、本発明の非常に低い濃度レベル内で窒素が増加することは、これらの表面段差のモルフォロジーに影響を与えない。存在するこれらの段差では、ダイヤモンドへのNの取り込みは一般に低い。
【0022】
窒素レベルが増加すると、表面成長機構は変化する。ダイヤモンドの表面段差はより不規則になり、少なくとも顕微鏡規模ではより全体的に<100>配向の周囲に集中し、段差はより大きくより粗くなる。これらの段差は容易に顕微鏡によって見られ、しばしば肉眼で見ることができる。これらの段差の存在下で、窒素の組み込みは実質上増加し、一般に顕微鏡規模で不均一である。この変化が起きる窒素の濃度は、温度及び圧力を含んで成長条件の敏感な関数であるが、本明細書で述べる工程に対しては(Nを用いるとき、全ガス濃度の)約1.8ppmが典型的である。この限界を超えるわずかな偏移では、本発明の方法の利益のいくつか、特に例えば機械的強度又は表面加工はまだ実現可能であるが、光吸収などの特性は、多量に窒素が組み込まれることによって不利な影響を受け、これは<100>段差が存在すれば容易に起きる。
【0023】
したがって、工程ガス中のNの濃度の下限は、ピット発生及び欠陥発生歪みを制御するための必要性によって設定され、工程ガス中の窒素の濃度の上限は有害な吸収及び他のタイプの欠陥発生の開始によって設定され、表面段差成長機構の変化がこれらの役割を果たす。しかし、これらの限界は工程に依存し、実際のNガス源、また必要な特定の材料特性を含み、使用する工程条件によって変化することができ、実施例で最善に例示される。しかし、典型的には、本発明の方法において、気相中の窒素レベルの上限(ppmのN、つまり同じ全Nを提供するために使用される等量の実際の窒素源)は5ppmであり、好ましくは2ppm、さらに好ましくは1.5ppm、さらにより好ましくは1ppmである。気相中の窒素レベルの下限(ppmのN、つまり同じ全窒素を提供するために使用される等量の実際の窒素源)は300ppbより多く、好ましくは500ppbより多く、さらに好ましくは700ppbより多く、さらにより好ましくは800ppbより多い。
【0024】
また、固体中の典型的な窒素濃度と気相中の窒素濃度の間の関係は、詳細な成長条件の敏感な関数であるが、材料は固体中の典型的な窒素濃度によっても特徴付けることができる。電子常磁性共鳴(EPR)で測定した典型的な単一置換窒素濃度は、3×1015原子/cmを超え、さらに典型的には1×1016原子/cmを超え、さらにより典型的には5×1016原子/cmを超える。さらに、単一置換窒素のこの濃度は、典型的には5×1017原子/cm未満であり、さらに典型的には2×1017原子/cm未満である。
【0025】
上の条件を用いて、典型的には層の形で有利な光学特性を有する本発明の単結晶CVDダイヤモンド材料を製造することが可能であった。
【0026】
本発明のダイヤモンド光学層の製造には、単結晶CVDダイヤモンドの層の成長が実質上結晶欠陥のないダイヤモンド表面上で行われることが重要である。この意味で、欠陥は、主として転位又は微小亀裂を意味するだけでなく、二重境界、本質的にドーパントN原子に係わらない点欠陥、低い角度の境界及び結晶格子に展延する他の分裂も含む。基板は低複屈折のla型天然ダイヤモンド、Ib型若しくはIIa型高圧/高温合成ダイヤモンド又はCVD合成単結晶ダイヤモンドであることが好ましい。
【0027】
実質上欠陥のある基板上の成長品質は、層が厚く成長すると急速に劣化し、欠陥構造は複数になり、全体的な結晶劣化、双晶化、再核形成を起す。この種の欠陥は本発明の用途には特に有害であって、多くの重要な特性に局部的な変化を生じさせる。
【0028】
欠陥密度は、欠陥を露出するように最適化したプラズマ又は化学的エッチング(暴露プラズマエッチングと呼ばれる)、例えば以下に述べる種類の簡略プラズマエッチングを用いた後の光学的な評価によって最も容易に特徴付けられる。2種類の欠陥を露出することができる。
1)基板材料品質に固有の欠陥。選択された天然ダイヤモンドでは、これらの欠陥の密度は、50/mm程に低く、さらに典型的な値は10/mmであり、他では10/mm又はそれ以上であり得る。
2)転位構造、及び研磨線に沿ってチャター跡を形成する微小亀裂を含んで、研磨による欠陥。これらの密度は、サンプルごとに大きく変動し、研磨状態の悪い領域又はサンプルにおいて典型的な値は約10/mmから10/mm以上までの範囲に及ぶことがある。
【0029】
好ましい低密度の欠陥は、欠陥に関する表面エッチング形態の密度が、上述のように、5×10/mm以下、さらに好ましくは10/mm以下のものである。
【0030】
したがって、CVD成長を行う基板表面及びその下部の欠陥レベルは、基板の注意深い調製によって最小にすることができる。ここで調製に含まれるのは、基板としての調製が完了したときに最終的に基板表面を形成するであろう面で、各段階が材料内の欠陥密度に影響を及ぼすことのできる、鉱山採収からの材料(天然ダイヤモンドの場合)又は合成(合成材料の場合)に加えられる任意の工程である。具体的な加工ステップは、機械的鋸引き、ラッピング及び研磨(この用途では特に低欠陥密度に最適化された)などの従来のダイヤモンド工程、及びレーザ加工、反応性イオンエッチング、イオンビーム研磨、又はイオン注入及びリフトオフ技術、化学的/機械的研磨など従来のものではない技術、及び液体化学加工及びプラズマ加工技術の両方を含むことができる。さらに、触針式形状測定器で測定した表面のRは、好ましくは長さ0.08mm以上を測定して、いかなるプラズマエッチング前の典型的な値も数ナノメートルを超えないこと、すなわち10ナノメートル未満であるように最小にすべきである。Rは平坦部からの表面形状の二乗平均平方根偏差である(表面高さのガウス分布についてはR=1.25R。定義は例えば「トライボロジー:工業材料の摩擦と磨耗(Tribology:Friction and Wear of Engineering Materials)」、IM Hutchings、(1992)、Publ.Edward Arnold、ISBN0−340−56184を参照されたい。)
【0031】
基板の表面損傷を最小化する具体的な一方法は、ホモエピタキシャルダイヤモンド成長を行う表面を原位置で(in situ)プラズマエッチングすることを含む。原理的にこのエッチングは原位置でも成長工程の直前である必要もないが、それがさらに他の物理的損傷又は化学的汚染を受ける危険性を防止するので、それが原位置であることによって最大の利益が得られる。また、原位置でのエッチングは成長工程がプラズマに基づく場合一般に最も便利である。プラズマエッチングは、堆積又はダイヤモンド成長に類似した条件を用いることができるが、いかなる炭素含有ガス源も存在せず、エッチング速度の良好な制御を与える一般的にわずかに低い温度の条件である。例えば、
(i)任意選択的に少量のArと共に少量の必要なOを有する主として水素を使用する酸素エッチング。典型的な酸素エッチング条件は、圧力50〜450×10Paで、酸素含有量1〜4パーセントのエッチングガス、アルゴン含有量0〜30パーセントを含み、残部は水素であり、すべてのパーセントは容積パーセントであり、基板温度は600〜1100℃(さらに典型的には800℃)、典型的な期間は3〜60分間である。
(ii)(i)に類似しているが、酸素が存在しない水素エッチング。
(iii)ただ単に、アルゴン、水素、及び酸素を使用することのできる方法に基づくものではなく、例えば、ハロゲン、他の不活性ガス又は窒素を用いるエッチングのための代替方法。
の1条件又は複数条件からなることができる。
【0032】
典型的にはエッチングは酸素エッチング、続いて水素エッチングからなり、次いで炭素源ガスの導入によって直接合成に向かう。エッチング時間/温度は、加工で残る表面損傷を除去し、あらゆる汚染物を除去することができるが、高度に粗化された表面を形成せず、そして、表面と交差し、したがって深いピットを招く転位などの展延する欠陥に沿って広くエッチングすることがないように、選択される。エッチングが過激になると、プラズマによって材料がチャンバーから気相又は基板表面へ移動されないように、チャンバー設計及びその構成要素の材料選択を行うことが、この段階で特に重要である。酸素エッチングに続く水素エッチングは、激しく結晶欠陥を攻撃する酸素エッチングによって生じた角度を丸め、後続の成長のためにより平滑で良好な表面を提供する結晶欠陥にはあまり特有ではない。
【0033】
CVDダイヤモンド成長を行うダイヤモンド基板の主要面は{100}面であることが好ましい。加工上の制約のため、実際のサンプルの面配向は、再現性に悪い影響を与えるので望ましくないが、この理想的な配向から5°まで、ある場合には10°まで異なることができる。
【0034】
また、CVD成長を行う環境の不純物含有量を適切に制御することも本発明の方法において重要である。さらに具体的には、ダイヤモンド成長は、意図的に加えた窒素以外に実質上汚染物を含まない雰囲気の下で行わなければならない。この窒素の追加は、10億分の300部(全ガス容積中の分子分率として)未満の誤差又は気相の目標値の10%のいずれか大きい方、好ましくは10億分の200部(全ガス容積中の分子分率として)未満の誤差又は気相の目標値の6%のいずれか大きい方、さらに好ましくは10億分の100部(全ガス容積中の分子分率として)未満の誤差又は気相の目標値の3%、さらにより好ましくは10億分の50部(全ガス容積中の分子分率として)未満の誤差又は気相の目標値の2%のいずれか大きい方で正確に制御しなければならない。気相中の絶対的及び相対的な窒素濃度300ppb〜5ppmの測定は、例えば、WO01/96634に記載のガスクロマトグラフィーによって達成することのできるものなど、複雑な監視装置を必要とする。
【0035】
ガス源は当技術分野に知られた任意のものとすることができ、分解してラジカル又は他の化学種を生成する炭素含有材料を含む。また、一般にガス混合物は、原子の形の水素又はハロゲンを提供するのに適したガス、及び例えばN又はNHであってもよい窒素源も含む。
【0036】
ガス源の分解は反応器中でマイクロウェーブエネルギーを用いて行うことが好ましく、その例は当技術分野で知られている。しかし、反応器からのいかなる不純物の移動も最小にすべきである。マイクロウェーブ装置は、プラズマがダイヤモンド成長を行わせる基板表面及びその搭載台以外の表面から離して置かれるように使用することができる。好ましい搭載台材料の例はモリブデン、タングステン、ケイ素、炭化ケイ素を含む。好ましい反応器チャンバーの材料の例は、ステンレススチール、アルミニウム、銅、金、白金を含む。
【0037】
高いマイクロウェーブ出力(基板直径25〜300mmで典型的には3〜60kW)と高いガス圧力(50〜500×10Pa、好ましくは100〜450×10Pa)から得られる高いプラズマ出力密度を使用されるべきである。
【0038】
また、ダイヤモンドの特定の特性はアニーリングによって高めることもでき、最も広い範囲の改善された特性を得るには、アニーリング技術と本発明のダイヤモンドを組み合わせることに特に利点がある。アニーリングは、本明細書に詳細に述べたこれらの特性か、又は用途におけるこれらの特性を補完する特性のいずれかの、任意のダイヤモンド特性に有益な修正を行う、高温を制御して用いるあらゆる工程を意味する。熱処理は成長したままのCVDダイヤモンドの性質及び製造されるための所望の変化によって変わる。アニーリングに最も敏感なダイヤモンドの特性には、光散乱及び(低い)ルミネッセンスが含まれるが、複屈折及び機械的設計強度などの他の特性も改善することができる。アニーリング工程はダイヤモンド中の局部的な歪み箇所、並びに非ダイヤモンド構造の修正領域をさらに低減するものと思われる。アニーリングは大気圧力近く又は高圧とすることができ、典型的には1200℃以上の温度及びさらに典型的には1700℃以上で行う。より高い温度からの有益性が期待されるが、現在の実験的な能力の限界から2500℃〜2800℃の範囲のアニーリング温度の上限が設定される。さらに、ダイヤモンド及びグラファイトの安定領域の両方におけるCVDダイヤモンドのアニーリングは、共出願の国際出願PCT/IB03/03783号明細書に記述されているように、ダイヤモンドの吸収中心が低減し、光透過率を高めることを示したが、これは利点であり得る。
【0039】
さらに重要な要素は、ダイヤモンド、特に本発明のダイヤモンドのアニーリングが、ある条件下のダイヤモンドから観察されるルミネッセンスを低減することである。特に、ダイヤモンドが光学窓として使用される場合、窓を出入口として用いる照射を窓から発するルミネッセンスが遮蔽することがある。例えば、圧縮試験中のサンプルへの光学的出入りを提供するアンビル材料としてダイヤモンドを使用する場合、アンビルからのルミネッセンスは、圧縮下での材料の光学特性を調べる可能性の厳しい制限であり得る。特定の非制限的な実施例は575nm〜637nm中心のルミネッセンスである。出発ガス中さもなければ工程中に存在する大きな窒素濃度で成長したCVD合成ダイヤモンドは、窒素空孔の中心(nitrogen−vacancy centres)からのルミネッセンスを示すであろう。中性及び負に荷電した窒素空孔の中心は、それぞれ575nmと637nmにゼロ−フォノン線を有する。これらの中心の両方からのルミネッセンスは514nmのアルゴンイオンレーザ又は他の比較的短い波長の放射源で励起され、そして、強ければ、それらの単結晶CVDダイヤモンドをアンビル用途に使用する上で大きな欠点になるであろう。窒素空位ルミネッセンスの強度は、窒素空孔の中心を分解するアニーリング処理、例えば、より高いアニーリング温度のための高圧高温アニーリングを用いて1800℃近傍又はそれ以上の温度でアニーリングすることによって、大きく低減することができる。一例として、1800℃及び75kバールで24時間の高圧高温アニーリングは575nmと637nmのルミネッセンスを大きく低減することができることが見出された。
【0040】
低レベルの光吸収は熱量測定手段によって最も良好に測定される。前に10.6μmでの光吸収の熱量測定が、多結晶CVDダイヤモンド層について報告された(SE Coeら、ダイヤモンド及び関連材料(Diamond and Related Materials)、Vol.9、(2000)、1726〜1729、及びCSJ Picklesら、ダイヤモンド及び関連材料(Diamond and Related Materials)、Vol.9、(2000)、916〜920)。典型的には、高い品質の光学級の多結晶ダイヤモンドにおける10.6μmでの吸収値は、吸収係数α=0.03cm−1〜0.07cm−1の範囲であり、典型的な値は約0.048cm−1である。また、低吸収用に選択された天然ダイヤモンドの測定値は約0.036cm−1を与えることが報告されている。単結晶天然ダイヤモンド及び多結晶CVDダイヤモンドで見られる同様の下限はこの領域の2個のフォノン吸収のテイル(tail)に帰属されるものであり、したがって基本的な限界であると考えられる。
【0041】
したがって、本発明のダイヤモンドが、0.0262cm−1というより低い吸収係数を有することは驚くべきことであり、低吸収用に選択された天然ダイヤモンドでさえ、10.6μmで残る大きな外因的な吸収であって、以前には認識されなかった該吸収があることを示す。
【0042】
1.064μmでのダイヤモンドの熱量測定は10.6μmでのそれよりもあまり報告されていないが、光学級の多結晶ダイヤモンドの典型的な値は、吸収係数α=0.119cm−1である。対照的に、本発明の方法によって製造されたダイヤモンドはα=0.0071cm−1の値を達成した。このような低い吸収係数は、このダイヤモンドを高出力レーザ用途等に特に適したものにする。これは材料中の低い歪みからの低いビーム歪みも考慮されたときの特別の場合である。
【0043】
これらの独特の材料特性によって性能が可能になる、本発明のCVDダイヤモンド材料から生まれる用途には、
・光学窓−例えば、非常に高い像品質が要求される。窓が圧力を受ける場合の用途において、材料の一定した機械的強度によって設計が容易になる。
・レーザ窓−高強度のビームが乱されずに窓を通過して、ある程度の分離を提供する。例えば局部的な吸収及び熱的に誘起される歪みによってビームが劣化せず、又は窓が恒久的に損傷を受けるのに十分なエネルギーを吸収しないように、レーザビームが窓と相互作用しないことは特に重要である。
・光学反射器−表面が極めて平坦であり、又は非常に正確に規定された表面形状を有し、安定であることが必要である。
・光学屈折器及びレンズ−光透過要素の1個又は両方の面が少なくとも部分的に意図的には平面又は平行ではないが、高い精度で製造しなければならない。
・回折光素子−例えば、ダイヤモンド中又はその上の構造を用いて回折による光ビームの修正を行う。
・エタロン。
・時計ガラス又はジェムストーンなどとしての装飾的な用途。
・高圧高温実験用のアンビル−この用途ではダイヤモンドはアニールされることが好ましい。
が含まれるがこれらに制限されない。
【0044】
便宜上、及び一例として、本発明のダイヤモンド材料のエタロンへの用途を詳細に説明するが、当業者であれば、上述した用途などの他の用途における本発明のCVDダイヤモンド材料の光学特性の一般的な重要性を理解するであろう。
【0045】
2個の反射面の間が高度な平坦度と平行度を有するように作製された、2つの部分的に反射する2面を備える光学装置はファブリペロー(Fabry−Perot)エタロンと呼ばれる。典型的には、エタロンは2個の非常に平坦な部分的に反射するミラーを、それらの反射面が平行であり、例えば空気又は制御されたガス状媒体の空隙、又は真空によって分離されるように配列することによって作ることができる。代わりに、エタロンは、添付図面の図1に概要を描いたように、2個の非常に平行な表面10、12を光学的に透明な固体材料の板14上に研磨することによって作ることができ、固体エタロンと呼ばれる。
【0046】
エタロンの第1の面に入射するビームは部分的に透過し、表面の反射率に応じて反射する。透過したビームはエタロンを横断し、続いて第2の表面で部分的に透過し部分的に反射して第1の表面に戻り、再び部分的な透過と反射を行う。結果として、エタロンから出る、透過及び反射した平行ビームの間に干渉が起きる。エタロンからの典型的な透過特性は図2にグラフで示される。
【0047】
エタロンの厚さは、自由スペクトル領域FSRとして知られる、続くエタロンの特性の最大値/最小値の分離を制御し、通常入射光については、周波数に関して下式で与えられる。
【数1】


式中、cは真空中の光の速さであり、dはエタロンの厚さであり、nはエタロン材料の屈折率である。
【0048】
透過曲線の形状(例えば、ピークの鋭さ及び/又は最小値の深さ)はエタロン表面の反射率によってさらに影響を受ける。反射率の異なる値は、当技術分野で知られているように、エタロン表面に部分的に反射するオプティカルコーティングを塗工することによって得ることができる。代わりに、エタロン表面にオプティカルコーティングを行わず、エタロンのコーティングしない表面のフレネル反射を使用することを選択できる。
【0049】
エタロン透過曲線が鋭いピークを示すとき、これは、連続するピーク間におけるピーク半値全幅の(周波数)間隔の比として定義されるフィネスFで特徴付けられる。反射率の値が高く、エタロン中又は反射する表面での吸収又は散乱による損失、及び反射する表面の平坦度と平行度からの偏差が非常に小さいと、それらは無視することができ、フィネスは
【数2】


で与えられ、式中、Rはエタロン表面の反射率である。
【0050】
代りに、透過ピークがあまり鋭くないとき、エタロン透過曲線はコントラスト比Cで規定することができる。これは最大及び最小の透過値の比で与えられる。
【数3】


式中、T(T)は透過曲線の1個のピーク(谷)に等しい周波数でのエタロンの透過である。
【0051】
平坦度又は平行度からの偏差、屈折率変化及び吸収又は散乱損失が無視できるエタロンでは、Cは、
【数4】


で与えられる。
【0052】
エタロン性能を特徴付ける他の有用なパラメーターは、デシベル(dB)で表される挿入損失Lであり、ピークでのエタロンの透過によって求められる。
【数5】


式中、l及びlは、透過曲線の1個のピークに等しい周波数で透過し入射した強度である。このように定義されるので、挿入損失は0(損失0)と無限大(全然透過しない)の間で変化し得る。損失が無く、非常に平坦かつ平行な表面を有する理想的なエタロンでは挿入損失は0であろう。
【0053】
平坦度又は平行度からの偏差、屈折率変化又は損失が無視できないとき、近似式(2)及び(4)はもはや有効ではなく、挿入損失(5)は増加し、コントラスト比は一般により低くなるであろう。
【0054】
ファブリペローエタロンの変形はGires−Tournoisエタロンであり、本質的にファブリペローエタロンであって、背面の反射率が100%の反射に使用される。それらのエタロンの反射率は入射光の波長に依存せず常に100%であるが、反射光の相は入射光の周波数の周期的な関数であり、周期は式に定義したように、Gires−TournoisエタロンのFSRのそれに等しい。これは図3に示されており、δは、
【数6】


で定義され、式中、fは周波数である。
【0055】
したがって、自由スペクトル領域、挿入損失、コントラスト比及び/又はフィネスで表される、エタロンの性能に影響を与える重要な材料特性は、
R−表面反射率(コーティングせず、又はコーティングのときの固有のもの)。
α−エタロン材料の塊又は表面での吸収損失。
αSC−エタロン材料の塊又は表面での散乱損失。
n−エタロン材料の屈折率及びその変動(複屈折を含む、すなわち材料中の偏光と伝播方向の屈折率の依存性)。
d−反射表面の平坦度及び平行度。
である。
【0056】
ダイヤモンドはエタロンとして使用するとき、他の材料に比べて多くの利点を有する。
a)高い屈折率。これはより小型/薄いエタロンであると解釈される。
b)フレネル反射率は、ある用途においてオプティカルコーティングを不要にするほど十分高い。
c)屈折率の低い温度係数及び低い熱膨張係数。これは、ダイヤモンドエタロンが温度変化に対してある種の他の材料よりも感度が低いことを意味する。
d)高い熱伝導率。これは、環境中の温度変化又は光ビームによる吸収に起因する透過曲線の変化が最小であることを意味する(しかし熱伝導率がさらに高くなると、この理由で有益である)。
e)他の材料に比べて高いダイヤモンドの強度と剛性、並びに高い硬度。高い硬度は、スクラッチに対して強く痛みにくく(コーティングしない場合)、また、搭載に起因する応力の影響も最小にする。
【0057】
しかし、エタロン材料としてのダイヤモンドの使用は非常に制約を受けた。制約は、適切な特性、特にダイヤモンドの品質に敏感な特性で、適切なサイズの材料の入手可能性であった。例えば、最も豊富な天然ダイヤモンドはIa型である。Ia型の天然ダイヤモンドは、一般にサイズ及びジェムストーンとしての使用によって決定される価格に制約を受ける。市販の用途で入手可能な材料は、ほとんどわずかに黄色に着色(吸収)され、含有物(歪み、スクラッチ)を含み、また、水素を含み、これはさらに可視光及び赤外領域のスペクトル吸収を起こし得る。天然石の中の屈折率の変化は1%ほどの大きさになり得る。意図された用途の機能はコストのかかる各個別の材料選別によってのみ確保され、典型的には多くの加工を経た後でのみ行うことができる。
【0058】
本発明のCVDダイヤモンド材料は、ファブリペローエタロン又はGires−Tournoisエタロンなどのエタロン材料として、他のダイヤモンド及び他の材料よりも優れた材料を提供する。
【0059】
述べたように、本発明のCVD単結晶ダイヤモンド材料は1つ又は複数の重要な特性を有する。これらの特性及びそれらを測定し又は求めるために使用される技術のいくつかをここで説明する。
【0060】
光学特性及び測定技術
光学均一性
光学均一性はZYRO GPI位相ずれ633nmレーザFizeau式干渉計を用いて測定される。サンプルは典型的には平坦に研磨した表面を有する0.8及び1.25mmの厚さと、5mm×5mmまでの横寸法の光学板として調製した。測定は反射率4%の平坦なビームスプリッターを用い、このビームスプリッターからの反射されたビームを、反射率10%の平坦ミラーの中間反射でダイヤモンド板を二重に通過した後の透過ビームと結合させることによって行われた。ビームスプリッター及び反射ミラーは干渉計品質であり、平坦度はその直径100mmにわたって約30nmよりも良好である。得られる干渉パターンは電荷結合デバイス(CCD)カメラで記録し、デジタルで保存した。次いで干渉縞をZygo GPI干渉計の標準ソフトウェアとして供給される透過波面測定アプリケーションモジュールで解析した。次いで、完全に平坦な波面からの偏差を記録した。これらの偏差は、表面が平坦でない効果とダイヤモンド材料の光学的不均一性の組合せである。表面を十分高い平坦度に研磨する(30nmよりも良好に)ことによって、不均一性の効果は0.05干渉縞よりも良好に求めることができよう。より低い精度の測定には、比例的により低い平坦度のレベルが許される。
【0061】
有効屈折率
最初に0.5μmよりも良好な解像度を有するデジタルマイクロメーターでエタロンの形状に加工した光学板の厚さを測定し、次いで、必要な精度の有効屈折率を得ることができるように、エタロンに垂直に入射する光を用いて、エタロンの197THz〜192THzの範囲の周波数にわたる自由スペクトル領域を測定することによって有効屈折率を測定した。次いで前に定義した式(1)から有効屈折率を見出した。この方法によって見出した有効屈折率は、例えばSnellの法則(2個の光学媒体間の界面での光の屈折)を単純に適用することによって見出した屈折率とはわずかに異なり、ここで得られる値は一般により高い。この相違は、ダイヤモンドに存在する不可避的な分散のため、及び、ここで屈折率のために使用する方法が測定に使用される周波数の範囲から得られる平均の形であることから生じる。
【0062】
自由スペクトル領域(FSR)
エタロンの形に適切に加工した板(例えば、横寸法1.5mm×1.5mm、厚さ1.25mmであり、Zygo−New View干渉計のソフトウェアに含まれる平坦度アプリケーションを用い、Zygo−New View干渉計で測定してピークから谷の表面平坦度は40nmより良好であり、研磨した表面の平行度は10アーク秒よりも良好であり、表面粗さRは1nmよりも良好である)についてFSRを測定した。これらの板を、ダイヤモンドエタロンの面の軸に互いに垂直な2つの軸に沿って平行移動及び回転可能な光学台に搭載した。次いでエタロンを、その波長が1.52〜1.62μmの間で連続的に変化することのできるレーザダイオードからの平行ビームに関して垂直及び中心にする位置に配置した。エタロンを通過した光の周波数の関数としての出力はコンピュータにデジタルの形で記録し保存した。透過スペクトル中の連続的なピーク間の周波数の差から、自由スペクトル領域を直接求めた。
【0063】
コントラスト比及び挿入損失
Zygo−New View干渉計のソフトウェアに含まれる平坦度アプリケーションを用い、Zygo−New View干渉計で測定してピークから谷の表面平坦度が40nmより良好であり、研磨した表面の平行度が10アーク秒よりも良好であり、表面粗さRが1nmよりも良好な、個々のエタロンを切断できる形に適切に加工した板(例えば、横寸法4.0mm×4.0mm、厚さ1.25mm)についてコントラスト比と挿入損失を測定した。これらの板を、ダイヤモンドエタロンの面の軸に互いに垂直な2つの軸に沿って平行移動及び回転可能な光学台に搭載した。次いでその板を、その波長が1.52〜1.62μmの間で連続的に変化することのできるレーザダイオードからの平行ビームに関して垂直及び中心にする位置に配置した。板を通過した光の周波数の関数としての出力はコンピュータにデジタルの形で記録し保存した。各エタロンのコントラスト比は約197200GHzの周波数で測定された最大値と最小値の透過比を計算することによって求めた。
【0064】
複屈折
歪みのないダイヤモンドなどの等方性媒体では、屈折率は光の偏光方向に依存しない。ダイヤモンドサンプルが成長中の歪み又は局部的な欠陥によって、又は外部から加えられた圧力のいずれかによって不均一に歪められると、屈折率は異方性になる。偏光方向による屈折率の変化は、楕円体の概形を有する光屈折率楕円体と呼ばれる表面によって表すことができる。任意の2個の楕円軸間の差は、第3軸に沿って向かう光の線形複屈折である。これは歪みを受けない材料の屈折率、歪み、及び光弾性係数を含む関数で表すことができる。
【0065】
Deltascan(Oxford Cryosystems)は、与えられる波長で屈折率がどのように観察方向に垂直な面の偏光方向に依存するかについての情報を与える。Deltascanの動作に関する説明はA.M.Glazerら、Proc.R.Soc.Lond.A(1996)452、2751〜2765により与えられる。
【0066】
一対の面偏光フィルターの異なる相対配向のある範囲で捕捉された一連の像から、Deltascanは、観察方向に垂直な面内で屈折率が最大になる偏光方向である「遅軸」の方向を求める。これは|sinδ|も測定し、δは式、
δ=(2π/λ)ΔnL
で与えられる位相ずれである。
式中、λは光の波長であり、Lは試験片の厚さであり、Δnは遅軸と速軸に平行に偏光された光の屈折率間の差である。ΔnLは「光遅延」として知られる。
【0067】
したがって、L=0.6mm及びλ=589.6nmのときの一次の遅延は、sinδ=1、ΔnL=λ/4のとき、Δn=2.45×10−4と推定され、sinδ=0.5、ΔnL=λ/12のとき、Δn=0.819×10−4と推定される。
【0068】
Deltascanは色彩コード化像を生成し、a)「遅軸」、b)sinδ、c)動作波長の吸光度の空間変動を示す。
【0069】
サンプルを既知の厚さの光学板として調製し、少なくとも1.3mm×1.3mmの面積、好ましくは2.5mm×2.5mmの面積、さらに好ましくは4mm×4mmの面積にわたって解析する。各々1mm×0.75mmの面積を包含するDeltascan像又は「フレーム」の組を各サンプルについて波長589.6nmで記録する。各フレーム内で、Deltascanは個々に640×480ピクセルの解析を行い、サンプルが非常に細かなスケールで解析されることを確実にする。次いで、Deltascanの|sinδ|像のアレイ(array)をsinδの挙動について解析する。最も簡単な解析は、解析面積全体にわたって各1mm×0.75mmフレーム中のsinδの最大値を識別し、これらの値を全体の解析面積の最大値に特徴付けるために用いることである。1mm×0.75mmフレームのアレイが解析している面積に正確に一致しない場合、フレームをその全体の面積を包含する総数が最小になるように配置し、中心に置いて、縁のフレームをできる限り対称に用いるようにする。それから、解析している面積の境界の外側にあるフレームのデータ部分は、そのフレームの解析から除く。代りに、解析した面積の材料のそれぞれ98%、又は99%について最大値が得られるように、解析したサンプル面積内のデータ中2%又は1%を除いた後、残る最大値用に各1mm×0.75mmフレームを解析することができる。これは、用途がいくつかの孤立したより高い複屈折を許容する場合に関係してくるであろう。しかし、この明細書に与えるすべての実施例において、すべてのデータ点(100%)が解析に含まれた。
【0070】
sinδの挙動は、ここでは最小厚さの用途によって有用な厚みの板に制限された、特定の材料板の特性である。材料のより基本的な特性は、このsinδ情報を、遅軸と速軸に平行に偏光した光の屈折率間の差、Δn[average]のサンプルの厚さ以上まで平均化した値に戻すことによって得ることができる。
【0071】
光吸収
光吸収は、必要な波長のレーザビームがサンプルを通過することから生じるサンプルの温度上昇を測定するために、試験中のサンプルに取り付けた熱電対を備えるレーザ熱量計で測定される。それらの技術は当技術分野で良く知られている。詳細には、ここで使用される方法は国際標準ISO11551:1997(E)に従い、1.064μmと10.6μmを用いた。
【0072】
光散乱
光散乱の測定の方法は、良く知られている(例えば、DC Harris、「赤外窓及びドーム材料(Infrared Window and Dome Materials)」、SPIE、Washington、USA 1992を参照されたい)。しかし、小さなサイズ(例えば横方向4×4mm)及びこの方法で可能になった品質のダイヤモンド片では、正確に散乱を測定するには新しい技術の開発が必要であることがわかった。
【0073】
新しい技術は主として1.06μmでの測定用に開発されたが、633nmなど他の波長が可能である。本方法のための実験の装置設定の概要図は図4に示される。
【0074】
1.06μmのNd−YAGレーザ20はサンプル22を照射し、散乱したビーム24は、画定されたアパーチャー26を通して、高度に直線性のある広いダイナミックレンジの検出器28で検出される。サンプル22及び検出器28は、各々の動きが可能なように別々のゴニオメーター台上に搭載される。全体の装置は雰囲気の塵による散乱を最小にするためにクラス100の「クリーンテント」(示されていない)中にあり、クリーンテント自体は結果に影響するストレイライト(stray light)を避けるため暗室内にある。
【0075】
検出器28は、ビームが通過する近傍領域で動きを1°のステップにする以外、−85°から+85°まで5°のステップで円弧30上を動かす。測定は水平又は垂直のいずれかに偏光された入射ビームで行う。検出器の立体角は0.741mSrである。ダイヤモンドサンプル22用のゴニオメーター台はそれを入射ビームに関して正確に配列し、実験中に固定することを可能にする。図4の概要図は尺度がなく、サンプルと検出器の間の距離は400mmである。散乱しないビームは参照番号32で示される。
【0076】
検出器からのデータは一連の離散的ステップで集められ、したがって検出器の制限された立体角で測定された角度の関数としての散乱ヒストグラムを表す。このデータは本質的に半球からのストリップを包含する一次元のアレイから、半球の周りのバンドを包含する二次元データへ変換される。これは図5に示されており、34は測定されるときの散乱ビームであり、36は、さらに完全に以下に述べるように、この角度での全強度の散乱を与える変換されたデータである。
【0077】
集められたデータは、角度θ(「FSP(θ)」)単位の立体角当たりの散乱出力の割合として定義される。
【数7】


式中、Pm,θは角度θで測定された検出器の出力であり、Pは入射ビーム出力であり、Ωは検出器の立体角である。
【0078】
角度θで散乱した光は円周2πRsinθ、高さRΔθ、従って面積A=2πRsinθRΔθの帯の中に入る。
【0079】
帯の立体角ΔΩは、
【数8】


で与えられる。
【0080】
これから、求めている値の全散乱出力TSPは、
【数9】


で与えられる。
【0081】
しかし、データは連続的ではなく、離散的であるので、TSPは積分よりも加算によって計算しなければならない。
【数10】


式中、vp及びhpは垂直及び水平偏光データでありΔθはデータ間隔のラジアンである。データ間隔は、小さい角度で1°であり、散乱したビームから5°以上の角度では5°であることに、注意すべきである。
【0082】
レーザ損傷閾値
レーザ損傷閾値は、レーザのパルスを試験中のサンプルに当て、損傷を起す最低の入射ピークエネルギーと損傷を起さない最高の入射ピークエネルギーの平均として、損傷点を特性付けることによって測定される。
【0083】
10.6μmの波長で、典型的には全パルスエネルギーの1/3を含む50〜100ns程度のプライマリースパイク(primary spike)、及びはるかに低い、2μs程度のピーク出力緩和パルスを有するCOレーザを用いた。得られたデータは100μm 1/eの光点サイズに正規化した。この試験は、電子なだれイオン化が、損傷を起す従来モデルの時間域で動作し、したがってピーク出力密度(つまり、ピーク電界)に依存するので、緩和パルスは無視することができる。
【0084】
1.06μmで、継続時間10〜50ns、さらに好ましくは20〜40nsの単一スパイクを有するNd:YAGレーザを使用し、データは再び100μm 1/eの光点サイズに正規化した。
【0085】
熱伝導率
熱伝導率はレーザ照射技術(例えば、DJ Twitchenら、ダイヤモンド及び関連材料(Diamond and Related Materials)、10(2001)、p731、及びCJH Wortら、ダイヤモンド及び関連材料(Diamond and Related Materials)、3(1994)p1158を参照されたい。)によって測定される。
【0086】
表面粗さ
表面粗さはZygo New View 5000走査型白色光干渉計を用いて測定した。干渉計はMichelson又はMireau式の干渉計対物レンズを備えた顕微鏡を用いる。この装置で、1〜50倍の倍率が可能である。ダイヤモンド板の全領域にわたる測定により、表面粗さは、十分細かく研磨すれば、板の領域にわたって10%未満で変化することが判った。したがって、本測定において、粗さは約0.36mm×0.27mmの代表的な面積の測定から求めた。
【0087】
表面平行度
表面平行度はZygo GPI 位相ずれ633nmレーザFizeau式干渉計を用い、透過波面の測定と同一の測定設定で測定した。ビーム通路にダイヤモンドエタロンを有する透過波面干渉縞パターンを、ビーム通路中にエタロンなしで測定したパターンと比較することによって、連続的な干渉縞の方向及びその間の距離を計算し、これからエタロンの2個の研磨表面間の平行度を求めた。これらの2個の干渉縞パターンは、光の一部をエタロンに通すことによって、同時に測定したが、他のある位置で光を10%反射率の平坦なミラーに直接入射させ、再びダイヤモンドエタロンを通さないで検出器に向けて戻るように反射させた。同時測定は2つの測定を交互に行うよりも高い精度が可能であった。
【0088】
表面平坦度
表面平坦度はZygo GPI 位相ずれ633nmレーザFizeau式干渉計を用いて測定した。この干渉計で、633nmレーザ源からの光は10%の反射率の干渉計品質のビームスプリッターから部分的に反射され、ビームスプリッターによって透過された光は本発明の材料から製造されたダイヤモンド光学素子の研磨した表面によって部分的に反射される。2個の反射したビームは結合され、得られる干渉縞パターンをCCDカメラ検出器で記録し、デジタルデータとしてコンピュータに保存した。続いて、パターンはZygo GPI干渉計のソフトウェアに標準的なアプリケーションとして含まれる平坦度アプリケーションで解析した。
【0089】
機械的強度
本発明の材料の有用性は、実際の破壊試験から得られる単結晶ダイヤモンドの強度報告データが無いことから明らかである。現在報告するデータは、圧痕試験及びこの手法に固有の近似と推定に基づいている。逆に本発明の方法によって適切な破壊試験を行うのに十分な量の材料の入手が可能になる。
【0090】
さらに、破壊強度試験は破壊試験である。天然ダイヤモンドの各片は唯一のものであるので、その強度が知られると、それはもはや実際の用途には使用できない。したがって、破壊試験はある種の近似特性に対する強度の広がり、及び用途に使用される最低の強度の予測値を特徴付けるためにしか用いることができない。対照的に、本発明の合成ダイヤモンドは十分特徴付けられ、特定の素子の破壊強度を等価のサンプルの破壊統計に基づいて妥当に予測することができるような一貫した材料である。本明細書に使用される、ダイヤモンドの設計強度は、以下の手順を用いて試験される材料の等価サンプルの少なくとも70%、好ましくは80%、さらに好ましくは少なくとも90%で示される。
【0091】
強度は5.0mm×3.0mm×0.18〜0.35mm(長さl×幅b×厚さd)のサンプルサイズで、単一片持ち梁技術(single cantilever beam technique)を用いて測定した。サンプルは、長軸が<110>方向(厚さが<100>に沿い、長さと幅が<110>に沿う)に沿うように{100}配向の板から切断した。試験手順は、露出した長さが4mm(すなわちクランプの内側1mm)に梁を取り付け、クランプから3.5mmの距離に力を加えた。強度σは式、
σ=(6Ws)/(bd
で与えられる。
式中、Wは破壊負荷であり、sは負荷線とクランピング線の間の距離である。
【0092】
試験サンプルはホモエピタキシャルCVDダイヤモンド板から切り出し、砥石サイズ約0.1μmまで段階的に細かくスカイフ(scaife)盤研磨することによって注意深く調製した。表面仕上げが悪いと材料の測定強度を制約し、高い表面仕上げを行ったこの材料の能力はその全体的な強度に貢献することができる。
【0093】
ルミネッセンス
ダイヤモンドサンプルの定量的ルミネッセンス特性は、適当なルミネッセンス線又はバンドの積分強度を、同じ条件下のダイヤモンドのラマン(Raman)散乱の収蔵データの積分強度に対して正規化することによって得ることができる。測定は77Kで、300mWの514nmアルゴンイオンレーザビームで行い、スペクトルは、ホログラフ格子(1800グルーブ/mm)及びHamamatsuR928光電子増倍管を備えるSpex1404分光計を用いて記録した。データは、スペクトル出力の知られた標準的ランプを用いて得られる分光計システムのスペクトル応答機能が可能なように修正される。
【0094】
以下の非制限的な実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0095】
本発明の単結晶CVDダイヤモンドの合成に適した基板は以下のように調製することができる。
i)歪みと欠陥のない基板を識別するために、顕微鏡検査と複屈折像に基づいて原材料(Ia型天然石及びIb HPHT型石)の選別を最適に行った。
ii)加工によって生じた欠陥のレベルを求める露出プラズマエッチング方法を用いてレーザ鋸引き、ラッピング、研磨を行い、基板欠陥を最小にする。
iii)最適化の後、基板は定常的に製造することが可能であり、露出エッチングの後に測定可能な欠陥密度は主として材料品質に依存し、5×10/mm以下、一般に10/mm以下であった。次いで、この方法によって調製した基板は後続の合成に使用される。
【0096】
高温/高圧合成の1b型ダイヤモンドを高圧プレス中で成長させ、基板として基板欠陥を最小にする上述の方法を用いて、すべて{100}面の5mm×5mm平方×厚さ500μmの研磨した板を形成した。この段階で、表面粗さRは1nm未満であった。基板は高温ダイヤモンド蝋付けを用いてタングステン基板に取り付けた。これを反応器中に導入し、エッチングと成長サイクルを上述のように開始した。さらに詳細には、
1)2.45GHz反応器に、使用点の精製器を予め設けて、流入ガス流中の意図しない汚染物質を80ppb以下に低減した。
2)263×10Pa及び基板温度730℃で、15/75/600sccm(秒あたり標準立方センチメートル)のO/Ar/Hを用いて、原位置での酸素プラズマエッチングを行った。
3)これは、ガス流からOを除いた水素エッチング中に、中断することなく、移した。
4)これは、炭素源(この場合CH)及びドーパントガスを添加して成長工程に移した。この例では、CHを36sccmで流し、制御を簡単にするためにH中100ppmのNに較正した供給源から提供される1ppmのNを工程ガス中に存在させた。基板の温度はこの段階で800℃であった。
5)成長期間が完了すると、基板を反応器から取り外し、CVDダイヤモンド層を基板から取り外した。
【0097】
上で成長させたCVDダイヤモンドは、CVDダイヤモンド層のサイズ及び必要なエタロンのサイズに応じて、少なくとも1個、好ましくは数個のダイヤモンドエタロンを製造するのに十分大きくすることができ、少なくとも1個及び好ましくは複数の加工用CVDダイヤモンド板を調製するのに十分厚くすることができる。
【0098】
基板から取り外した後、上述のように成長させたダイヤモンド層を多数の(必要であれば)ダイヤモンド板に鋸引きし、続いて、当技術分野で知られた研磨技術を用いて、各ダイヤモンド板を望ましい厚さ1.25mm(必要な自由スペクトル領域及び意図した動作波長によって定義される望ましいダイヤモンドエタロンの厚さである)よりもわずかに大きな厚さまで研磨した。
【0099】
次いで、注意深く調製された鋳鉄ダイヤモンド研磨盤上で板の片面をよく研磨した。使用したタング(tang)は非常に剛性があり、スカイフ盤面に平行に動く参照面に対してダイヤモンドを保持した。
【0100】
次いでダイヤモンド板をひっくり返し、同じスカイフ盤上で、この段階では最終エタロンに必要な厚さにするように注意して、他の面を望ましい平坦度と平行度に研磨した。平行度は、当業者には良く知られたFizeauの原理に基づく市販のZygo GPI干渉計を用いて測定した。厚さは最初にマイクロメーターで測定し、最終段階の確認として自由スペクトル領域(FSR)の測定を用いた。最終の厚さは、材料の品質が非常に均一であるので、線形の除去速度を測定し、次いで必要な予測時間研磨することによって得た。イオンビームエッチング、プラズマエッチング、又は反応性イオンエッチングを含んで、エッチング又は材料除去の他の方法を用いた。
【0101】
次いで板をレーザによって個々のユニットに切断した。次いで、用途によっては常に必要ではないが、側面を研磨した。
【0102】
得られたダイヤモンドエタロンは1.5mm平方、厚さ1.251mmで以下の公差にした。
厚さ:±0.25μm
平行度:±5アーク秒
表面R:0.5nm
FSRは1.6678±2×10−4cm−1であった。
【0103】
上記の合成工程からの他のダイヤモンド板を、達成可能な表面Rをさらに特徴付けるために使用した。両方の表面を上述のようにして注意深く研磨し、次いで表面RをZygo New View 5000走査型白色光干渉計を用いて測定した。測定はサンプルの両面で行い、各測定は面積1mm×1mmで9面であり、各面の中央に3mm×3mmの格子を形成し、次いで9個の測定値から統計的な平均を計算した。測定したA面のRは0.53nm±0.04nmであり、B面は0.54nm±0.05nmであった。
【実施例2】
【0104】
1組の6mm×6mm×0.4mmのホモエピタキシャルCVDダイヤモンド板を実施例1に述べた方法に従って合成した。これらの板から、横寸法3mm×5mm、厚さ0.17〜0.22mmの矩形の試験サンプルを切り出し、切断片に成長セクター境界がないことを確認した。
【0105】
サンプルの組を0.1μmまでの範囲のダイヤモンド粉を使用してスカイフ盤上で研磨した。可能な限り、すべての副表面の損傷が確実にサンプルから除去されるように注意した。最微細のグリットでの最終研磨段階は、これが最終表面の欠陥サイズ分布を制御するので重要である。頂部表面及び底部表面を研磨した後、サンプルの縁を同じ標準で調製した。研磨が完了した後、表面をNomarski干渉コントラストで検査し、表面粗さを確認するために「マイクロマッピング」を行った。倍率200倍のNomarski顕微鏡は表面に可視欠陥のないことを明らかにした。R値で定義される表面粗さを非接触式光学表面粗さ測定装置(「Micromap」)を用いて求めた。2回の200μm長さの走査を垂直方向に行い、得られたR値を平均して0.25nm未満のR平均値を得た。これは、宝石業界で天然ダイヤモンドを研磨するのに使用されるのと同じ技術を用いて研磨したダイヤモンドの1nm〜5nmの典型的なR値と対照的である。
【0106】
最終研磨の前にいくつかのサンプルの表面にイオンビームエッチングの追加の段階を加えた。さらに任意選択的な技術は最終研磨の前にサンプルを化学的に薄くすることである。
【0107】
板の強度は単一片持ち梁曲げによって測定した。厚さ約0.2mmの9個のサンプルの組の個々の強度値は、GPaで、1.50、1.63、2.50、3.26、3.30、4.15、4.29、4.83、5.12であった。このデータと他のデータの組を解析すると、2個の最も低い値が他の7個とは異なる母集団から来ており、恐らく、サンプルの調製がこの場合測定強度へのいかなる影響も避けるほど十分注意深くなかったことが示される。これらの2個の疑わしいデータ点を含んでも、サンプルの77%は少なくとも2.5GPaの破壊強度を有し、データは強度が実際に3GPaを超えることを示す。
【0108】
業界に公の等価データがない(すべての天然ダイヤモンドの知られた強度測定は、適切なサンプルの入手に制約があるので、圧痕試験であり、これは間接的で信頼性の低い方法である)ので、比較のために5個のIIa型天然ダイヤモンド板のバッチの強度も測定した。これらの板を、ダイヤモンドを弱くすることもある含有物及び他の欠陥がないように50倍の光学顕微鏡で検査して注意深く選択し、同じ技術で調製し試験した。厚さ約0.18mmの5個のサンプルの組の個々の強度値は、GPaで、1.98、2.08、2.23、2.61、2.94であり、明らかに材料固有の特性によって制限された。同様に、高温高圧工程で合成したlb型単結晶ダイヤモンドを注意深く選択し、同じ技術を用いて加工し、試験した。厚さ約0.35mmの14個のサンプルの組の個々の強度値は、GPaで、0.94、1.11、1.16、1.3、1.35、1.38、1.46、1.50、1.54、1.6、1.65、1.72、1.73、1.98、2.17であった。
【0109】
本発明のCVDダイヤモンドの強度母集団は、天然又はHPHTダイヤモンドのいずれとも明らかに異なり、より高い。
【0110】
高強度のダイヤモンドの特別な用途は赤外分光計のガス分析用光学窓である。直径7mmの特別な窓は5mmの透明な開口と外周囲1mmの蝋付けされた平坦な面を有し、200気圧の圧力差に安全係数4で耐えなければならない。
【0111】
破壊強度は厚さtに関して、


の関係があり、式中、rは透明な開口(アパーチャー)、Pは圧力、σは破壊強度、及びkは束縛係数(constraint factor)であり、ダイヤモンドでは縁を束縛しないで3.1であり、縁を完全に束縛して1.1である(ダイヤモンドのポアッソン比が0.1の値であると仮定する)。束縛の程度を求めるのは困難なので、我々は縁が束縛されない最悪の場合を採用する。
【0112】
この用途に天然ダイヤモンド窓(設計強度2.0MPa)が使用されれば、厚さは0.54mmが必要であろう。本発明の強い単結晶CVDダイヤモンド(設計強度3.0MPa)では、厚さは0.44mmまで低減できよう。材料の厚さの低減は窓のコストを低減するであろう。
【実施例3】
【0113】
3つのホモエピタキシャルCVDダイヤモンド板の組を実施例1に述べた方法に従って合成した。これらは、厚さ0.60〜0.64mm及び横寸法6mm×6mmまでの光学板として調製した。各々1mm×0.75mmの面積を包含するDeltascan像の組を各サンプルについて波長589.6nmで記録した。
【0114】
各Deltascanのsinδ像をデータの100%を用いて解析して|sinδ|の最大値を求めた。これらの最大値は以下の|sinδ|マップに示されている。
【0115】
各1mm×0.75mmフレーム中の|sinδ|の最大値を示す、サンプルE4.1のDeltascanマップを下に示す。
【0116】

【0117】
上のデータ解析は以下の通りである。
面積2.0mm×2.25mmにわたる|sinδ|の最大値は0.3である。
面積3.0mm×4.0mmにわたる|sinδ|の最大値は0.6である。
面積5.25mm×4.0mmにわたる|sinδ|の最大値は0.9である。
【0118】
各1mm×0.75mmフレーム中の|sinδ|の最大値を示す、サンプルE4.2のDeltascanマップを下に示す。
【0119】

【0120】
上のデータ解析は以下の通りである。
面積2.0mm×3.75mmにわたる|sinδ|の最大値は0.3である。
面積3.0mm×3.75mmにわたる|sinδ|の最大値は0.4である。
面積4.0mm×4.5mmにわたる|sinδ|の最大値は0.7である。
【0121】
各1mm×0.75mmフレーム中の|sinδ|の最大値を示す、サンプルE4.3のDeltascanマップを下に示す。
【0122】

【0123】
上のデータ解析は以下の通りである。
面積3.0mm×2.25mmにわたる|sinδ|の最大値は0.2である。
面積3.75mm×3.0mmにわたる|sinδ|の最大値は0.6である。
面積4.0mm×4.5mmにわたる|sinδ|の最大値は0.9である。
【実施例4】
【0124】
8つのホモエピタキシャルCVDダイヤモンド層の組を実施例1に述べた方法に従って合成した。CVDダイヤモンド層は6.5mmまでの横寸法と3.2mmまでの厚さを有していた。これらのCVDダイヤモンド層から計48個の板を、横寸法が典型的には4.0mm×4.0mm、厚さが約1.25mmのエタロン板として調製した。各板の厚さをマイクロメーターで±0.25μmよりも良好な精度で測定した。
【0125】
垂直入射光のC帯域の開始及び最終位置に最も近い、エタロン透過ピークのピーク位置の周波数を測定することによって、C帯域(197200〜192200GHz)の各板の平均FSRを求めた。1mm直径のビームを用いた。これらのピーク位置は±0.5GHzよりも良い精度で求めることができよう。有効なFSRは、2個の極端なピーク間の周波数間隔を透過スペクトルの周期数で除することによって計算される。(このエタロンの厚さと周波数帯域では典型的には100周期)。したがって、FSRを求める誤差は±10MHzよりも良い。
【0126】
図6は各板のサンプル厚さの逆数の関数として、測定されたFSRを示している。データの最小二乗直線の傾斜から式(1)を用いて有効屈折率を計算し、平均有効屈折率の値、
eff,av=2.39695
を得た。
標準偏差は、
σ=0.00045
であった。
【0127】
平均からの最大偏差は、
Δnmax=±0.00092
であった。
【0128】
したがって、最大の相対測定偏差は、
【数11】


であることが判る。
【0129】
この測定偏差は、厚さd及びFSRの測定誤差、及び材料の不均一さによるサンプル間の屈折率の変動Δninhomによるものである。
【数12】

【0130】
誤差分析は、厚さdとFSRの測定誤差によるnの最大相対誤差が、
【数13】


であることを示す。
【0131】
最大の相対偏差Δnmax/neff,avは、主として厚さ(Δd)とFSR(ΔFSR)の測定誤差によって定まる。
【0132】
したがって、屈折率の値の変動Δninhom/nの上限は少なくとも±4×10−4よりも良い。
【実施例5】
【0133】
8組のホモエピタキシャルCVDダイヤモンド層を実施例1に述べた方法に従って合成した。CVDダイヤモンド層は6.5mmまでの横寸法と3.2mmまでの厚さを有していた。これらのCVDダイヤモンド層から計48の板を、横寸法が典型的には4.0mm×4.0mm、厚さが約1.25mmのエタロン板として調製した。
【0134】
各エタロン板のコントラスト比を前に述べたようにして求めた。結果を図7にプロットする。実線は理想的なエタロンの理論的な最大値を示し、表面反射率は屈折率、
【数14】


によって求められる。(ここで、有効屈折率は使用すべき正しい値ではなく、考えている周波数での実際の屈折率n=2.3856の値を使用すべきであり、これは屈折率の分散を記述するSellmeier式から求めることができる。この値は有効屈折率の測定値と一致する。)コントラスト比の理論値は、
th=1.967
である。
【0135】
平均測定コントラスト比は、
meas,av=1.89
であり、標準偏差は、
σ=±0.04
である。
【0136】
エタロン材料特性(容積中の不均一性)及びエタロン調製(表面の不完全な平行度、平坦度、粗さ)におけるいかなる不完全さもコントラスト比を低下させる。コントラスト比の一定して高い値は、材料特性の均一性及びエタロン調製の正確さを示す。
【実施例6】
【0137】
8つのホモエピタキシャルCVDダイヤモンド層を実施例1に述べた方法に従って合成した。CVDダイヤモンド層は6.5mmまでの横寸法と3.2mmまでの厚さを有していた。これらのCVDダイヤモンド層から計48の板を、横寸法が典型的には4.0mm×4.0mm、厚さが約1.25mmのエタロン板として調製した。
【0138】
9つのエタロン板の平行度を、Zygo GPI位相ずれ633nmレーザFizeau式干渉計を用いて、Zygo GPI干渉計のソフトウェアに含まれる角度アプリケーションを用いて測定した。
【0139】
平行度は、非摂動ビームの波面に関して、エタロン通過ビーム波面に対する最小二乗面の角度から計算することができる。これはエタロンの前面及び後面の間のくさび角度を画定する。
【0140】
平均くさび角度αは2.3と13.8アーク秒の間で変化し、平均値は、
αav=9.2アーク秒
であり、標準偏差は、
α=3.5アーク秒
である。
【実施例7】
【0141】
8つのホモエピタキシャルCVDダイヤモンド層の組を実施例1に述べた方法に従って合成した。CVDダイヤモンド層は6.5mmまでの横寸法と3.2mmまでの厚さを有していた。これらのCVDダイヤモンド層から計48の板を、横寸法が典型的には4.0mm×4.0mm、厚さが約1.25mmのエタロン板として調製した。
【0142】
48のエタロン板の各々の1個の面の平坦度を、Zygo GPI位相ずれ633nmレーザFizeau式干渉計を用いて、Zygo GPI干渉計のソフトウェアに含まれる平坦度アプリケーションを用いて測定した。
【0143】
このアプリケーションでは、平坦度は面を測定データに当てはめた後の山谷の最大差として定義される。図8は測定された表面平坦度の値を示す。
【0144】
平均表面平坦度は、
F=51.1nm又は0.16干渉縞
であり、標準偏差は、
σ=18.2nm又は0.058干渉縞
である。
【実施例8】
【0145】
8組のホモエピタキシャルCVDダイヤモンド層を実施例1に述べた方法に従って合成した。CVDダイヤモンド層は6.5mmまでの横寸法と3.2mmまでの厚さを有していた。これらのCVDダイヤモンド層から計48の板を、横寸法が典型的には4.0mm×4.0mm、厚さが約1.2510±0.00025mmのエタロン板として調製した。
【0146】
これらの板の15の表面粗さを、倍率20倍のMireau式の干渉対物レンズ及びZygo MetroProソフトウェアパッケージを用いて、Zygo New View 5000走査型白色光干渉計で測定した。ズームは1倍に設定した。カメラの解像度は、20Hzの再生速度で640×460ピクセルであった。視野は0.36×0.27mm、及び横方向解像度は0.56ミクロンであった。ソフトウェアのバンドパスフィルターをカットオフ空間周波数12.5及び400ライン/mmで用いた。表面形状を最小二乗し、全体的な表面位置、角度向き、及び形状に関するピストン(piston)、傾き、倍率及び非点収差を除いた。このように画定された参照表面からの残る偏差をバンドパスフィルターで取り除き、偏差の二乗平均値を計算した。このようにして求めた粗さは板の間で0.5と1.5nmの間で変化し、平均値は0.92nm及び標準偏差は0.11nmであることが判った。個々の板は4.0mm×4.0mmの表面積全体から無作為に選択した異なる5つの位置で測定するとき、0.05nmよりもはるかに小さい標準偏差を示した。
【実施例9】
【0147】
サンプル5個の組を測定した。その中で4個が単結晶CVDサンプルであり、1個がIIa型天然ダイヤモンドサンプルであった。サンプルの詳細を以下の表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
サンプルは、すべてその主要面ができるだけ[001]に近く、典型的には1.5°以内にあるように光学研磨で注意深く調製した。
【0150】
測定の前に、すべてのサンプルを熱濃硫酸と硝酸カリウムの強い酸化性混合物中で洗浄してあらゆる表面の汚染物の痕跡を除去した。洗浄の後、外因的な表面散乱効果を招き得るいかなる物も表面を再び汚染しないように最大の注意を払った。
【0151】
1.064μmでの散乱出力の総計(TSP)を測定し、前に述べた方法に従って計算した。その値を表2に示す。
【0152】
【表2】

【0153】
このデータは、意図的にNを加えずに成長させた材料は、少量の窒素を加えて成長させた材料よりも実質上高い散乱を有することを示す。これは、歪みのレベル(複屈折によって明らかにされた)がより高いという観察と一致する。比較すれば、工程中に異なる窒素レベル及び異なる工程圧力で成長させた3種類のサンプルには、わずかに変動はあるものの、比較的ほとんど差がないことが示されている。窒素なしで成長させたCVDと天然のIIa型石の両方の高い散乱値は、ここで明らかにした方法によって合成したCVDダイヤモンドの特別な有益性を示し、天然IIa型ダイヤモンドは歪みと転位を含むことが知られているので、散乱は類似の機構によるものと考えられる。
【実施例10】
【0154】
ホモエピタキシャルCVDダイヤモンド層を実施例1に述べた方法に従って合成した。次いで、それを6つの研磨した{100}面及び4.00mm×3.65mm×1.31mmの寸法を有する光学板E10.1として調製した。
【0155】
各々1mm×0.75mmを包含するDeltascan像の組を、各々サンプルの面に垂直な3つの互いに直交する観察方向について、波長589.6nmで記録した。各Deltascanのsinδ像を、フレーム内で得られたデータの100%を用いて、sinδの最大値について前に述べたようにして解析した。
【0156】
板の4.00mm寸法に平行な観察方向で記録したsinδマップについてのsinδの最大値は、0.1であった。同様に、板の3.65mm寸法に平行な観察方向で記録したsinδマップについてのsinδの最大値は、0.1であった。次いで、Δn[average]の最大値(遅軸と速軸に平行な偏光の屈折率間の差の平均値)をこれらの2つの観察配向の各々について計算し、約3×10−6であることが見出された。
【0157】
2つの最大寸法に垂直で1.31mm寸法に平行な観察方向で得た値を以下のsinδマップに示す。観察方向はCVDダイヤモンド層の成長方向に一致し、したがって、材料の転位の主な方向に平行である。
【0158】
1mm×0.75mmの各フレーム中の|sinδ|の最大値を示す、サンプルE10.1の板の1.31mm寸法に平行な観察方向でのDeltascanマップを以下に示す。
【0159】

【0160】
この観察方向における各フレームの対応するΔn[average]の最大値は対応するsinδ値とサンプル厚さに基づいて計算することができ、値を以下に示す。

【0161】
より要求の高い光学用途のいくつかでは、より高い歪みを有する、不規則に散乱する点の存在は、たとえ、一点でも、制約になり得る。サンプルを横断して測定した各データピクセルを用いるこのデータは、本発明の方法を用いて成長させた材料が、一様にサンプルを横断しても及び局部的にも、歪みに起因する複屈折が極めて低いレベルを達成できることを示す。
【実施例11】
【0162】
実施例1の方法に従って成長させた単結晶CVDダイヤモンドを、成長したままとアニーリングしたときの範囲で定量的なルミネッセンス測定を行った。各々の場合において、測定は、サンプルをその上に成長させた元の{100}合成Ib基板を除去した後に行った。成長条件は、ルミネッセンス像によって判断すると、均一なルミネッセンス特性を有する主として<100>成長セクターダイヤモンド材料の形成に有利であった。測定を行う前に、ルミネッセンス特性が異なる、サンプルの縁部での少量の追加の成長セクターをすべて除去した。
【0163】
ルミネッセンス測定は、前に述べた方法を用いて77Kで行い、やはり前に述べたように1332ダイヤモンドラマン線に関して正規化した。得られた結果は以下の表3に示す。
【表3】

【0164】
575nm及び637nmのPL強度の上限レベルの絶対値は成長工程の窒素濃度によって部分的に定まるが、ここで示したようなアニーリングによって有利に低減することができる。
【実施例12】
【0165】
8組のホモエピタキシャルCVDダイヤモンド層を実施例1に述べた方法に従って合成した。これらの組から計48の板を、横寸法が典型的には3.5×3.5mm、厚さが約1.255±0.005mmのエタロン板として調製した。
【0166】
4種類の異なる組から作製した6つのエタロン板の光学的均一性を、Zygo GPI位相ずれ633nmレーザFizeau式干渉計を用いて測定した。走査面積は典型的には3.2×3.2mmであった。
【0167】
有効な光学的均一性は、ロングスケールの形状による変動を取り除いた後、エタロンを透過したビームと乱されないビームの波面差の山谷の最大変化(PV)で定義される。波面の差から傾斜を除去するためのZygo GPI干渉計ソフトウェアの選択は、サンプルの前面と後面の非平行性を取り除くが、倍率及び非点収差ソフトウェア選択は表面の湾曲の累積的影響を取り除く。このようにして、測定面積の屈折率の有効な最大変化は、関係式、
【数15】


で定義することができる。
【0168】
下記の表4には、測定されたPV値の傾斜だけを取り除いた場合とすべての形状因子を取り除いた場合についてまとめてある。最初の場合に比べて第2の場合におけるPV値がより低いことは、屈折率の(大規模の)変動のいくらかがこのようにして取り除かれていることは無視できないが、板表面の平坦度の無さに起因するある種のスケールの形状の効果がまだ存在することを示している。
【0169】
このようにして求めた、板の有効な光学的不均一性Δnは、約8×10−5未満であり、約4×10−5よりも大きい。
【0170】
異なる成長の組からの板の間の変動は約1×10−5である。
【0171】
【表4】

【実施例13】
【0172】
2組のホモエピタキシャルCVDダイヤモンド板を実施例1に述べた方法に従って合成した。これらの組から、横寸法が典型的には1.5×1.5mm及び厚さ約1.250mmのコーティングしない50のエタロンを調製した。C帯域の最初と終わり、すなわち約192200GHz及び197200GHzで、エタロンの前面に中心を配置した直径1.2mmのピンホールを用いて、各エタロンの透過スペクトルの最大透過光強度lを測定することによって、6つのエタロンの挿入損失を求めた。
【0173】
別の測定で、同じ周波数でエタロンなしに、しかしピンホールを配置して透過光強度Iを測定した。
【0174】
透過光強度の相対的な差は挿入損失の項で定義され、式5に従って計算し、表5に示してある。
【0175】
実際のエタロンの挿入損失は、いくつかの因子の組み合わせのため、0dBの挿入損失を有する理想的なエタロンのそれに比べて低下されるが、最も重要なそれらの因子は、塊への入射光の吸収、不完全な表面仕上げ(表面粗さ)による表面散乱、及び外側面の平行度の無さである。これらのエタロンでは、測定された挿入損失が平行度の無さ及び表面散乱によって大部分説明できることを、別のコントラスト比の測定から推論することができる。
【0176】
【表5】

【実施例14】
【0177】
一連の単結晶ダイヤモンドサンプルを実施例1の一般的な方法に従って調製した。この方法の変形は下の表6に示す。合成の後、これらのサンプルは注意深い表面研磨によって光学板として調製され、得られた寸法になる。比較のため、光学研磨を行った光学級の多結晶ダイヤモンドも後続の測定に含めた。
【0178】
【表6】

【0179】
吸収の測定は前に報告したように行った。結果を下の表7に示す。
【表7】

【実施例15】
【0180】
3組のホモエピタキシャルCVDダイヤモンド層を実施例1に述べた方法に従って調製した。CVDダイヤモンド層は、6.5mmまでの横寸法と3.2mmまでの厚さを有した。これらのCVDダイヤモンド層から、厚さが1.250mm〜1.258mmの範囲で変動する計11のエタロン板を調製した。各板のいくつかの位置の厚さをマイクロメーターで±0.5μmよりも良い精度で測定した。各板は、この精度の範囲内で厚さの変動は見出せなかった。板の横寸法を表8に示す。
【0181】
【表8】

【0182】
各エタロン板上のいくつかの位置(4〜9の位置、平均6.7)で、垂直な入射光のCバンド域の開始と最終位置に最も近いエタロン透過ピークのピーク位置の周波数を測定することによって、Cバンド域(197200〜192200GHz)のFSRを求めた。各測定位置から次に最も近い測定位置までの距離は少なくとも1.6mmであった。エタロン板に固定したピンホールのアレイを有する金属板によって画定される、1mm直径のビームを使用した。ビーム中の板をマイクロメーターの手段で動かすことによって、各位置を別々に照射することができよう。各エタロンの有効なFSRは2つの異常ピーク間の周波数の間隔を透過スペクトルの周期数で除することによって計算した(このエタロン厚さ及び周波数帯域では典型的には100周期)。
【0183】
1個の板のすべての位置の平均FSR、並びに標準偏差σFSR及び最大誤差ΔFSRmaxを各板について計算した。
【0184】
この最大誤差は、
【数16】


で定義され、式中、指数iは板上の異なる位置を表す。
【0185】
これらの板のFSRは約1.66cm−1であった。図9は異なるエタロン板のFSRの標準偏差及び最大誤差を示す。平均標準偏差はσFSR,av=1.37×10−4cm−1である。見出された最大誤差は3.5×10−4cm−1であり、最小誤差は6.7×10−5cm−1程度と低い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温(公称20℃)で測定するとき、
i)透過した波面が、少なくとも0.5mmの特定の厚さを有し、適切な平坦度に加工されたダイヤモンドの透過中に、少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって測定され、予測される幾何形状的な波面とは2干渉縞未満(1干渉縞は測定波長633nmの1/2に等しい光路長の差である)の差で異なる、高い光学的均一性、
ii)少なくとも0.5mmの特定の厚さを有するサンプルを少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって本明細書に述べる方法で測定して、分析されるサンプル面積の少なくとも98%に対して、位相ずれの正弦の絶対値|sinδ|が一次に留まり(δがπ/2を超えない)、|sinδ|が0.9を超えないような、低歪みを示す低い光複屈折性、
iii)少なくとも0.5mmの特定の厚さを有するサンプルを少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって本明細書に述べる方法で測定して、分析されるサンプル面積の100%に対して、サンプルが一次に留まり(δがπ/2を超えない)、遅軸と速軸に平行な偏光の屈折率間の差をサンプル厚さにわたって平均化した平均値であるΔn[average]の最大値が1.5×10−4を超えないような、低歪みを示す低い光複屈折性、
iv)少なくとも0.5mmの特定の厚さを有するサンプルを、少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって本明細書に述べる方法で測定して、+/−0.002以内の精度で2.3964の値を有する有効屈折率、
v)前記ダイヤモンド材料を少なくとも0.5mmの特定の厚さを有するエタロンの形のダイヤモンド板として調製し、1.55μmに近い波長及び公称直径1.2mmのレーザビームを用いて、少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって測定するとき、前記材料が、板上の異なる位置で測定するとき、5×10−3cm−1未満変化する自由スペクトル領域(FSR)を示すような、光学特性の組合せ、
vi)前記ダイヤモンド材料を少なくとも0.5mmの特定の厚さを有するファブリペロー(Fabry−Perot)固体エタロンの形のダイヤモンド板として調製し、1.55μmに近い波長及び公称直径1.2mmのレーザビームを用いて少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって測定するとき、光学的に調製した表面にコーティングを施さずに、前記材料が、板上の異なる位置で測定するとき、1.5を超えるコントラスト比を示すような、光学特性の組合せ、
vii)前記ダイヤモンド材料を少なくとも0.5mmの特定の厚さを有するエタロンの形のダイヤモンド板として調製し、1.55μmに近い波長及び公称直径1.2mmのレーザビームを用いて、少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって測定するとき、前記材料が3dBを超えない挿入損失を示すような、光学特性の組合せ、
viii)本明細書に述べた方法で少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって測定して、少なくとも0.5mmの特定の厚さの層を含む対象容積全体にわたる、0.002未満の屈折率の変化
の特性の少なくとも1つを示すCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項2】
前記透過波面が、前記予測される幾何形状的な波面から、0.5干渉縞未満の差で異なる請求項1に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項3】
前記透過波面が、前記予測される幾何形状的な波面から、0.2干渉縞未満の差で異なる請求項2に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項4】
前記分析面積の少なくとも98%に対して、位相ずれの正弦の絶対値、|sinδ|が一次に留まり、0.4を超えない請求項1から3までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項5】
前記分析面積の100%に対して位相ずれの正弦の絶対値、|sinδ|が一次に留まり、Δn[average]が5×10−5を超えない請求項1から4までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項6】
精度+/−0.001以内で2.3964の有効屈折率の値を有する請求項1から5までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項7】
精度+/−0.0005以内で2.39695の有効屈折率の値を有する請求項6に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項8】
自由スペクトル領域(FSR)が、材料上の異なる位置で測定するとき、2×10−3cm−1未満で変化する請求項1から7までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項9】
前記自由スペクトル領域(FSR)が、5×10−4cm−1未満で変化する請求項8に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項10】
前記特定の厚さと前記特定の面積にわたって画定される容積にわたる屈折率の変化が、本明細書に述べる方法で測定して0.001未満である請求項1から9までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項11】
前記屈折率の変化が0.0005未満である請求項10に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項12】
ファブリペロー固体エタロンの形のダイヤモンド板として調製し、特定の厚さと面積の板上の異なる位置で測定するとき、コントラスト比が1.7を超える請求項1から11までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項13】
前記コントラスト比が1.8を超える請求項12に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項14】
ファブリペロー固体エタロンの形のダイヤモンド板として調製し、1.55μmに近い波長及び公称直径1.2mmのレーザビームを用いて、特定の厚さと面積の板上の異なる位置で測定するとき、1dBを超えない挿入損失を示す請求項1から13までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項15】
前記挿入損失が0.5dBを超えない請求項14に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項16】
室温(公称20℃)で測定するとき、
i)少なくとも0.4mmの特定の厚さのサンプルについて、少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって本明細書に述べる方法で測定して、波長1.064μmでの前方散乱が、透過したビームから3.5°〜87.5°の立体角にわたって積分して、0.4%未満であるような低く均一な光散乱、
ii)少なくとも0.5mmの特定の厚さのサンプルが、波長1.06μmで0.09cm−1未満の吸光係数を有するような低く均一な光散乱、
iii)少なくとも0.5mmの特定の厚さのサンプルが、波長10.6μmで0.04cm−1未満の吸光係数を有するような低く均一な光散乱
の特性の少なくとも1つを示すCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項17】
波長1.064μmで前記特定の厚さ及び面積のサンプルで測定し、前記透過ビームから3.5°〜87.5°の立体角にわたって積分した前方散乱が0.2%未満である請求項16に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項18】
1.064μmでの前方散乱が0.1%未満である請求項17に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項19】
前記1.06μmでの吸光係数が0.05cm−1未満である請求項16から18までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項20】
前記1.06μmでの吸光係数が0.02cm−1未満である請求項19に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項21】
前記10.6μmでの吸光係数が0.03cm−1未満である請求項16から20までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項22】
前記10.6μmでの吸光係数が0.027cm−1未満である請求項21に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項23】
室温(公称20℃)で測定するとき、
i)少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって測定して、2nm未満のR(プロファイルを通る平均線からの絶対偏差の算術平均)を有する高度の表面研磨を示す加工性、
ii)633nmの放射線を用いて測定され、少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって測定された平坦度が、10干渉縞よりも良好な高い平坦度を示す加工性、
iii)少なくとも1.3mm×1.3mmの特定の面積にわたって測定された平行度が、1アーク分よりも良好な高い平行度を示す加工性
の特性の少なくとも1つを示すCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項24】
1nm未満のRを有する表面研磨を示すように加工することのできる請求項23に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項25】
0.6nm未満のRを有する表面研磨を示すように加工することのできる請求項24に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項26】
1干渉縞よりも良好な平坦度を示すように加工することのできる請求項23から25までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項27】
0.3干渉縞よりも良好な平坦度を示すように加工することのできる請求項26に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項28】
+/−30アーク秒よりも良好な平行度を示すように加工することのできる請求項23から27までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項29】
+/−15アーク秒よりも良好な平行度を示すように加工することのできる請求項28に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項30】
少なくとも2つの前記所定の特性を示す請求項1から29までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項31】
少なくとも3つの前記所定の特性を示す請求項1から15までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項32】
少なくとも4つの前記所定の特性を示す請求項31に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項33】
前記所定の特性の3つすべてを示す請求項16から22までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項34】
前記所定の特性の3つすべてを示す請求項23から29までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項35】
各前記特性を満足するサンプルの前記特定の面積が、少なくとも2.5×2.5mmである請求項1から34までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項36】
所定である場合の各前記特性を満足するサンプルの特定の面積が、少なくとも4×4mmである請求項35に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項37】
所定である場合の各前記特性を満足するサンプルの特定の厚さが、少なくとも0.8mmである請求項1から36までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項38】
所定である場合の各前記特性を満足するサンプルの特定の厚さが、少なくとも1.2mmである請求項37に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項39】
本明細書に述べる方法で測定して、少なくとも8個のバッチ規模の試験サンプルの少なくとも70%が、少なくとも2.5GPaの強度値でようやく破断するような機械的設計強度を示すCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項40】
少なくとも8個のバッチ規模の試験サンプルの少なくとも70%が、少なくとも3.0GPaの強度値でようやく破断するような請求項39に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項41】
575nm及び637nmのピークのラマン(Raman)正規化ルミネッセンス強度が40未満である請求項1から40までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項42】
575nm及び637nmのピークのラマン正規化ルミネッセンス強度が10未満である請求項41に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項43】
575nm及び637nmのピークのラマン正規化ルミネッセンス強度が3未満である請求項42に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項44】
20℃で測定した熱伝導率が1800Wm−1−1よりも大きい請求項1から43までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項45】
20℃で測定した前記熱伝導率が2300Wm−1−1よりも大きい請求項44に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項46】
対向する主要面を有する板の形で、主要面の垂線から30°を超える前記板の平均転位方向で使用するために調製される請求項1から45までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項47】
その調製の一部としてアニーリングされた請求項1から46までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項48】
その調製の後にアニーリングされた請求項1から47までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項49】
機械的層又は光学層又は研磨したジェムストーンの形態とする請求項1から48までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項50】
研磨したジェムストーンの形態とする請求項49に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項51】
a)1mmの横寸法、
b)1mmの第2の直交横寸法、
c)0.1mmの厚さ
の寸法の少なくとも1つを超える請求項1から50までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項52】
横寸法が5mmを超える請求項51に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項53】
前記厚さ寸法が0.8mmを超える請求項51又は52に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項54】
aからcの前記寸法の少なくとも2つを超える請求項51から53までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項55】
aからcの前記寸法の3つのすべてを超える請求項54に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項56】
光デバイス若しくは素子に使用するための、又は光デバイス若しくは素子として使用するための請求項1から55までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項57】
EPRによって測定して、5×1017原子/cm未満のNを単一置換の形で含む請求項1から56までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項58】
EPRによって測定して、2×1017原子/cm未満のNを単一置換の形で含む請求項57に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項59】
EPRによって測定して、3×1015原子/cmより多くのNを単一置換の形で含む請求項1から58までのいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項60】
EPRによって測定して、1×1016原子/cmより多くのNを単一置換の形で含む請求項59に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項61】
EPRによって測定して、5×1016原子/cmより多くのNを単一置換の形で含む請求項60に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項62】
実質上結晶欠陥のない基板を提供するステップと、原料ガスを提供するステップと、原料ガスを解離して、分子状窒素として計算して300ppb〜5ppmの窒素を含む合成雰囲気を作るステップと、実質上結晶欠陥のない前記表面上にホモエピタキシャルダイヤモンドを成長させるステップとを含む光学用途に適したCVDダイヤモンド材料を製造する方法。
【請求項63】
前記合成雰囲気が、分子状窒素として計算して500ppbを超える窒素を含む請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記合成雰囲気が、分子状窒素として計算して800ppbを超える窒素を含む請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記合成雰囲気が、分子状窒素として計算して2ppm以下の窒素を含む請求項62から64までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記合成雰囲気が、分子状窒素として計算して1.5ppm以下の窒素を含む請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記窒素のレベルが、局部歪み発生欠陥を防止又は低減するのに十分であり、同時に有害な吸収及び結晶品質劣化を防止又は低減するのに十分低く選択される請求項62に記載の方法。
【請求項68】
前記欠陥の密度は、欠陥に関わる表面エッチングの形状が5×10/mm未満となるようなものである請求項62から67までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記欠陥の密度が、欠陥に関わる表面エッチングの形状が10/mm未満となるようなものである請求項68に記載の方法。
【請求項70】
CVDダイヤモンドを成長させる前記ダイヤモンド基板の表面が{100}面である請求項62から69までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記窒素のレベルが、(全ガス容積の分子分率として)300ppb未満の誤差、又は気相中の目標値の10%未満の誤差のいずれか大きい方に制御される請求項62から70までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記窒素のレベルが、(全ガス容積の分子分率として)100ppb未満の誤差、又は前記気相中の前記目標値の3%未満の誤差のいずれか大きい方に制御される請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記窒素のレベルが、(全ガス容積の分子分率として)50ppb未満の誤差、又は前記気相中の前記目標値の2%未満の誤差のいずれか大きい方に制御される請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記製造されたCVD単結晶ダイヤモンド材料の特性を、前記ダイヤモンド材料をアニーリングすることによってさらに向上させる請求項62から73までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
請求項62から74までのいずれか一項に記載の方法によって製造されるCVD単結晶ダイヤモンド材料。
【請求項76】
請求項1から61、及び請求項75のいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド材料から製造されるエタロン。
【請求項77】
ファブリペロー(Fabry−Perot)エタロン又はGires−Tournoisエタロンである請求項76に記載のエタロン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−144107(P2011−144107A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−30324(P2011−30324)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【分割の表示】特願2004−553030(P2004−553030)の分割
【原出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(503458043)エレメント シックス リミテッド (45)
【Fターム(参考)】