光源装置およびスペクトル分析装置
【課題】波長成分内の干渉による分析等への影響を低減できる光源装置およびスペクトル分析装置を提供する。
【解決手段】スペクトル分析装置1は、試料Aに光を照射する光源装置2と、試料Aからの反射光、透過光、または散乱光を検出する検出装置3と、試料Aを載置する試料載置部4とを備えている。光源装置2は、広帯域光源20及び光照射部23を備えている。広帯域光源20は、スーパーコンティニューム光(SC光)といった広帯域光P1を生成する。また、光源装置2は、広帯域光P1の各波長成分における干渉を抑える干渉抑制手段を備える。
【解決手段】スペクトル分析装置1は、試料Aに光を照射する光源装置2と、試料Aからの反射光、透過光、または散乱光を検出する検出装置3と、試料Aを載置する試料載置部4とを備えている。光源装置2は、広帯域光源20及び光照射部23を備えている。広帯域光源20は、スーパーコンティニューム光(SC光)といった広帯域光P1を生成する。また、光源装置2は、広帯域光P1の各波長成分における干渉を抑える干渉抑制手段を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置およびスペクトル分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
広い帯域幅を有する広帯域光は、例えばスペクトル分析等の光源として利用される。スペクトル分析等の光源としては、従来よりランプやLEDが広く用いられてきたが、単位波長・単位面積あたりのパワーが小さく、試料を精度よく分析できない場合があった。これに対し、例えばスーパーコンティニューム光(SC光)のような広帯域光は、集光性が優れているため微量の試料を精度よく分析でき、スペクトル分析等の光源として期待されている。なお、このような広帯域光源としては、例えば特許文献1に記載された光源装置がある。
【特許文献1】国際公開第2006/106669号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
共振器構造により発振された光のような高いコヒーレンシーを有する光が或る対象に照射された場合、干渉が発生し空間的な強度分布が生じてしまうが、レーザ光を基に得られる広帯域光においては、波長が広帯域にわたっていることから、前記のような干渉は殆ど生じないと考えられてきた。しかし、スペクトル分析等において広帯域光の波長成分が分光された状態では、波長成分が限定されるため可干渉性が大きくなる。ランプやLEDの光では、空間的な位相にばらつきがあるのでこのような場合でも干渉は生じにくいが、レーザ光を基に生成されたSC光などの広帯域光では横モードが単一であるため、このような場合に、異なる光路を経由した波長成分同士が干渉し易くなってしまう。従って、スペクトル分析等に広帯域光源を用いた場合、干渉によって測定結果に誤差が生じてしまう。
【0004】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、波長成分内の干渉による分析等への影響を低減できる光源装置およびスペクトル分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明による光源装置は、広帯域光を生成する広帯域光源を備える光源装置であって、広帯域光の各波長成分における干渉を抑える干渉抑制手段を備えることを特徴とする。これにより、広帯域光を用いるスペクトル分析等において、波長成分内での干渉を低減できる。なお、ここでいう広帯域光とは、ピークから3dB低下するまでの波長帯域幅が100GHz以上である光を指す。
【0006】
また、光源装置は、干渉抑制手段が、広帯域光に含まれる各波長成分の可干渉性を小さくする可干渉性低減手段であることを特徴としてもよい。広帯域光に含まれる各波長成分の可干渉性(コヒーレンス長)を小さくすることによって、各波長成分内における干渉を好適に抑えることができる。
【0007】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、複数の広帯域光源と、各広帯域光源から出射される広帯域光を並行して導波する導波手段とを有することを特徴としてもよい。通常、複数の広帯域光源から出射された広帯域光の位相は互いにずれているので、これらの広帯域光を導波手段によって並列的に導波させた後に試料等へ照射すれば、照射される広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0008】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を偏波面に応じて複数の光路に分ける分波手段と、複数の光路を伝搬する光に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、位相変化手段を経た光を合波する合波手段とを有することを特徴としてもよい。これにより、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0009】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を波長に応じて分光する分光手段と、分光された各波長成分に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、位相変化手段を経た光を集光する集光手段とを有することを特徴としてもよい。これにより、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0010】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を拡幅する拡幅手段と、拡幅された広帯域光に含まれる複数の光路を進む光に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、位相変化手段を経た光を集光する集光手段とを有することを特徴としてもよい。これにより、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0011】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が複数の光反射体を有しており、光反射体が、広帯域光源から出射された広帯域光の一部を広帯域光源へ向けて反射する第1の面と、第1の面により反射された光を第1の面へ向けて反射する第2の面とを有することを特徴としてもよい。これにより、第1の面で反射した光と第1の面を透過した光との間で光路差が生じるので、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0012】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を複数のモードで伝搬する光伝送手段を有することを特徴としてもよい。これにより、光伝送手段において各モード間に光路差が生じるので、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0013】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を伝搬する複屈折率媒体と、広帯域光源と複屈折率媒体との間に光結合された1/4波長板とを有することを特徴としてもよい。これにより、直線偏光の広帯域光が円偏光(または楕円偏光)に変換されて複屈折率媒体へ入射され、複屈折率媒体内で各偏光成分間に光路差が生じるので、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0014】
また、光源装置は、干渉抑制手段が、広帯域光に含まれる各波長成分の光路を空間的に限定するための光路限定手段を有することを特徴としてもよい。これにより、広帯域光の各波長成分が実質的に単一の光路を経由することとなり、各波長成分における干渉を好適に抑えることができる。
【0015】
また、光源装置は、光路限定手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を拡幅する拡幅手段と、拡幅手段と光結合され、広帯域光の入射位置によって透過波長または反射波長が異なるフィルタ素子とを有することを特徴としてもよい。或いは、光源装置は、複数の広帯域光源を備え、光路限定手段が、複数の広帯域光源のそれぞれに光結合され、各広帯域光源から出射された広帯域光を波長に応じて分光する複数の分光手段を有し、複数の分光手段が、広帯域光の入射方向と交差する方向に並設されていることを特徴としてもよい。これらのうち少なくとも一方の構成によって、各波長成分の光路を好適に限定できる。
【0016】
また、光源装置は、干渉抑制手段が、広帯域光の光路を変調する光路変調手段、広帯域光の位相を変調する位相変調手段、広帯域光の波長を変調する波長変調手段、広帯域光の偏波面を変調する偏波変調手段、及び広帯域光の強度を変調する強度変調手段のうち少なくとも一つの手段を有することを特徴としてもよい。これにより、スペクトル分析等において観察される波長成分内での位相差や干渉の度合いが時間的に平均化されるので、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。
【0017】
また、本発明によるスペクトル分析装置は、試料に光を照射してスペクトル分析を行うための装置であって、上記したいずれかの光源装置を備えることを特徴とする。このスペクトル装置によれば、上記したいずれかの光源装置を備えることにより、波長成分内での干渉を低減できる。
【0018】
また、本発明によるスペクトル分析装置は、試料に光を照射してスペクトル分析を行うための装置であって、広帯域光を生成する広帯域光源を備える光源装置と、広帯域光の各波長成分における干渉を抑える干渉抑制手段とを備え、干渉抑制手段が、試料へ照射される広帯域光、及び広帯域光の照射により試料から得られる光のうち少なくとも一方の光を部分的に通過させるための開口部を有する部材を含むことを特徴とする。これにより、広帯域光の各波長成分が実質的に単一の光路を経由することとなり、各波長成分における干渉を好適に抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による光源装置並びにスペクトル分析装置によれば、波長成分内の干渉による分析等への影響を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光源装置及びスペクトル分析装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るスペクトル分析装置の基本構成を概略的に示す図である。同図に示すスペクトル分析装置1は、試料Aに広帯域光P1を照射する光源装置2と、試料Aからの反射光P2、散乱光P3、または透過光P4を検出する検出装置3と、試料Aを載置する試料載置部4とを備えている。光源装置2は、広帯域光源20及び光照射部23を備えている。検出装置3は、光取入部31、分光器32、受光器33、及びデータ処理器34を備えている。
【0022】
広帯域光源20は、SC光といった広帯域光P1を生成する。本実施形態の広帯域光源20は、例えば数フェムト秒といった超短パルスレーザ光、或いは連続的なレーザ光を発生するレーザ光源21と、レーザ光源21に光結合された非線形光学媒体(非線形光ファイバ)22とを有する。非線形光学媒体22においては、非線形光学効果によってレーザ光源21からのレーザ光のスペクトル帯域幅が2倍以上に拡張され、広帯域にわたってなだらかなスペクトル形状を有する広帯域光(SC光)P1が生成される。
【0023】
なお、レーザ光源21としては、例えばアクティブ(能動)モード同期型やパッシブ(受動)モード同期型の超短パルス光発生源が好適であり、その場合、リング型共振器によって構成されるとよい。或いは、レーザ光源21は、希土類添加ガラスによる固体レーザによって構成されたパッシブモード同期型の超短パルス光発生源であってもよい。
【0024】
広帯域光源20は、光ガイド24によって光照射部23と光結合されている。光照射部23は試料Aの近傍に配置されており、広帯域光P1は光ガイド24及び光照射部23を介して試料Aに照射される。なお、図1は、光照射部23から試料Aへ広帯域光P1が約45°の角度で照射される場合を示しているが、広帯域光P1の照射角はこれに限られるものではない。また、光照射部23と光取入部31が同一で、光照射部23から試料Aへ広帯域光P1が約90°の角度で照射されてもよい。
【0025】
光取入部31は、試料Aの近傍において、試料Aからの広帯域光P1の反射光P2や散乱光P3が得られる位置、または広帯域光P1の透過光P4が得られる位置(図中の破線部分)に配置されている。光取入部31は、光ガイド35によって分光器32と光結合されており、光取入部31へ入射した反射光P2、散乱光P3、または透過光P4は、光取入部31及び光ガイド35を介して分光器32へ送られる。
【0026】
分光器32は、反射光P2、散乱光P3、または透過光P4を複数の波長成分に分離する。分光器32の出力は受光器33に光結合されており、受光器33は、各波長成分の光強度をそれぞれ電気信号に変換する。なお、分光器32及び受光器33は、スペクトルアナライザ等の装置によって併せて実現されてもよい。受光器33から出力された電気信号は、データ処理器34へ提供される。データ処理器34は、電気信号によるデータをスペクトルとして表示させたり、このスペクトルと光源自体のスペクトルとの差分あるいはこのスペクトルと基準試料のスペクトルとの差分を表示させたりする機能を有する。
【0027】
前述したように、スペクトル分析等において広帯域光の波長成分が分光された状態では波長成分が限定されるため、結果的に可干渉性が大きくなる。レーザ光を基に生成された広帯域光P1は横モードが単一であるため、このような場合に、異なる光路を経由した波長成分同士が干渉し易くなってしまう。これに対し、本実施形態の光源装置2は、広帯域光P1の各波長成分における干渉を抑えるための干渉抑制手段を備えている。以下、干渉抑制手段の様々な形態について説明する。
【0028】
[可干渉性を小さくする方式]
広帯域光P1に含まれる各波長成分の可干渉性を小さくすることによって、各波長成分内における干渉を好適に抑えることができる。以下、このような方式(可干渉性低減手段)についての種々の形態を示す。
【0029】
<複数の光源を用いる方式>
図2は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10aは、二次元状に配列された複数のLD(Fabry-Perot型LD等の帯域幅のあるLD)101を含むダイオードアレイ102と、ダイオードアレイ102から出射される複数本の広帯域光P5を集光するための複数のレンズ103を含むレンズアレイ104と、集光された各広帯域光P5を並行して導波するイメージファイバ105といった導波手段とを有する。通常、複数の広帯域光源(LD101)から出射された広帯域光P5の位相は互いにずれているので、これらの広帯域光P5をイメージファイバ105によって並列的に導波させた後に広帯域光P1として試料Aへ一斉に照射すれば、照射される広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0030】
図3は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10bは、一次元状に配列された複数のLD101を含むダイオードアレイ106と、ダイオードアレイ106から出射される複数本の広帯域光P5を並行して導波するための複数の光導波路107を有するPLC(Planer Lightwave guide)108とを有する。なお、PLC108は、導波手段の他の一例である。PLC108の各光導波路107は、その入射端107a同士の間隔がSLD101の間隔に応じて設定されており、また、出射端107b同士の間隔は、入射端107a同士の間隔よりも狭く形成されている。各光導波路107を導波した各広帯域光P5は、広帯域光P1として試料Aへ一斉に照射される。このような構成によれば、図2に示した可干渉性低減手段10aと同様の作用によって、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0031】
<広帯域光を複数の光路に分け、位相差を与える方式>
図4は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10cは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を偏波面に応じて複数の光路L1,L2に分ける分波手段111と、複数の光路L1,L2を伝搬する光に位相のずれを生じさせるため、光路L1,L2に光路差を設定するミラー112及び113と、光路L1を経た光と光路L2を経た光とを合波する合波手段114とを有する。なお、この構成において、分波手段111及び合波手段114は、例えば偏光ビームスプリッタ(PBS)によって好適に実現される。また、ミラー112及び113は、本実施形態における位相変化手段である。可干渉性低減手段10cがこのような構成を有することにより、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0032】
なお、可干渉性低減手段10cにおいて、広帯域光源20と分波手段111との間に波長板を設け、分波手段111に入射する前の広帯域光P1の偏波状態を調整すれば、可干渉性が更に小さくなり好ましい。また、光路L1と光路L2との差は、広帯域光P1に含まれる各波長成分の可干渉性よりも大きいことが好ましい。
【0033】
図5は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10dは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を波長に応じて分光する分光手段116と、分光された各波長成分に位相のずれを生じさせる位相変化手段117と、位相変化手段117を経た光を集光するレンズ(集光手段)118とを有する。分光手段116としては、例えばアレイ導波路回折格子(AWG)や、位相格子などが好適である。また、位相変化手段117としては、例えばランダム位相板のように入射位置によって光路長が異なる光学部品が好適である。このような構成によれば、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0034】
図6は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10eは、拡散板121及び反射部材122を有する。拡散板121は、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を拡幅するための拡幅手段であり、本実施形態では広帯域光P1を反射部材122へ向けて拡散する。また、反射部材122は、拡幅された広帯域光P1に含まれる複数の光路を進む光に位相のずれを生じさせる位相変化手段、及びこの位相変化手段を経た光を集光する集光手段を兼ねる部材である。すなわち、反射部材122の光反射面122aには、拡大図に示すように広帯域光P1の波長と同等の大きさの凹凸が形成されており、広帯域光P1の入射位置によって光路長が僅かに異なる。また、光反射面122aの全体は凹面鏡となっており、広帯域光P1を集光する。このような構成によって、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0035】
図7は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10fは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を拡幅する拡幅手段125と、発散光を平行光にするコリメータ126と、拡幅された広帯域光P1に含まれる複数の光路を進む光に位相のずれを生じさせる位相変化手段127と、位相変化手段127を経た光を集光するレンズ(集光手段)128とを有する。拡幅手段125としては、例えば拡散板やレンズなどが好適である。また、位相変化手段127としては、例えばランダム位相板、中空ファイバ、または積分球のように入射位置や入射角度によって光路長が異なる光学部品が好適である。このような構成によれば、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0036】
図8は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10gは、広帯域光源20から出射される広帯域光P1の光路に対して直列に配置された複数の結合部130を有する。各結合部130は、広帯域光P1の光路と交差するように配置され、第1の面130a及び第2の面130bを有する膜状の光反射体を含む。光反射体の広帯域光源20側の第1の面130aは、広帯域光P1の一部を広帯域光源20へ向けて反射する。また、第1の面130aとは反対側の第2の面130bは、隣り合う光結合部130の第1の面130aにより反射された光を該第1の面130aへ向けて反射する。この構成によれば、広帯域光P1が各結合部130間で多重反射され、第1の面130aで反射し第2の面130bで再び反射した光と、光反射体を透過した光との間で光路差が生じる(そして、反射の位置および回数に応じて更なる光路差が生じる)ので、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。また、この形態は、複数の結合部130を配置するだけで実現できるので、光ガイド24(図1参照)として光ファイバを用いる場合に特に適用が容易となる。
【0037】
なお、結合部130としては、反射率が比較的高い(例えば−10dBや−5dB)ものを用いることが好ましい。また、広帯域光源20への広帯域光P1の戻りを防止するために、広帯域光源20と一段目の結合部130との間にアイソレータを更に設けることが好ましい。また、結合部130は少なくとも2つ配置すればよく、3つ以上配置する場合には結合部130同士の間隔が互いに異なることが好ましい。
【0038】
図9は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10hは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1のビーム径を拡張するビーム拡張手段(好適には凹レンズ)132と、ビーム拡張手段132を通過した広帯域光P1を複数のモードで伝搬する光伝送手段133とを有する。光伝送手段133としては、例えばコア径の大きいプラスチック光ファイバや導波管などが好適である。このような構成によれば、光伝送手段133内部で各モード間に光路差が生じるので、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。また、広帯域光源20と光伝送手段133との間にビーム拡張手段132を設けることにより、光伝送手段133においてより多くのモードを励振させることができる。
【0039】
図10は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10iは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を複数のモードで伝搬する光伝送媒体(光伝送手段)135を有する。光伝送媒体135としては、例えばマルチモードファイバ(MMF)、高NAファイバ(HNA)、フォトニッククリスタルファイバ(PCF)などが好適である。なお、ここでいうPCFとは、厳密には、誘電率が周期的に異なる構造によって光のバンドギャップ構造を実現し、該バンドギャップ内の波長の光を導波するファイバを指す。このPCFには、ホーリーファイバや中空ファイバも含まれる。このような構成によれば、光伝送媒体135内部で各モード間に光路差が生じるので、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0040】
図11は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10iは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を伝搬する複屈折率媒体138と、広帯域光源20と複屈折率媒体138との間に光結合された1/4波長板137とを有する。複屈折率媒体138は、入射光の偏波面によって屈折率が異なる光伝送媒体であり、例えば偏波保持ファイバ(PMF)が好適である。さらにPMFを使う場合、長手方向の複数個所で横からの応力を加えると、実効的に経路を多くでき好適である。この構成により、直線偏光の広帯域光P1が1/4波長板137で円偏光(または楕円偏光)に変換されて複屈折率媒体138へ入射され、複屈折率媒体138内で各偏光成分間に光路差が生じるので、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0041】
[各波長成分の光路を単一にする方式]
干渉抑制手段は、広帯域光P1に含まれる各波長成分の光路を空間的に限定することにより実現されてもよい。このような方式によって、広帯域光P1の各波長成分が実質的に単一の光路を経由することとなり、各波長成分における干渉を好適に抑えることができる。以下、このような方式(光路限定手段)についての種々の形態を示す。
【0042】
図12は、光路限定手段の一形態を示す図である。同図に示す光路限定手段11aは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1のビーム径を拡幅(拡張)する拡幅手段140と、該拡幅手段140と光結合され、広帯域光P1の入射位置によって透過波長が異なるフィルタ素子(二次元フィルタ)141とを有する。なお、このようなフィルタ素子141としては、平面方向に厚さが異なるエタロンフィルタやフィルタアレイが好適である。ビーム状の広帯域光P1を拡幅手段140により一旦拡幅させてからフィルタ素子141を通過させると、フィルタ素子141の透過波長が二次元的に変化しているので、各波長成分が極めて小径のビームとなって出力される。そして、この広帯域光P1がそのまま試料Aに照射されると、試料Aを透過した波長成分(透過光P4)は図12に示すように小径のスポット状となる。このように、光路限定手段11aによれば、各波長成分の光路が実質的に限定されるので、干渉を好適に抑えることができる。なお、試料Aに満遍なく広帯域光P1を照射するには、フィルタ素子141を移動させるか、或いはフィルタ素子141の透過波長分布を時間的に変化させるとよい。また、図12には透過型のフィルタ素子141を示したが、反射型のフィルタ素子を用いてもよい。この場合、フィルタ素子の反射波長が広帯域光P1の入射位置によって異なるとよい。
【0043】
図13は、光路限定手段の一形態を示す図である。同図に示す光路限定手段11bは、複数の広帯域光源20と、複数の分光手段143とを有する。複数の分光手段143は、広帯域光P1の入射方向と交差する方向に並設されており、複数の広帯域光源20のそれぞれに光結合されている。複数の分光手段143は、各広帯域光源20から出射された広帯域光P1を波長に応じて分光する。複数の分光手段143は、その屈折率の波長依存性が高いことが好ましい。このような分光手段143としては、例えばプリズムが好適である。複数の分光手段143によって分光された広帯域光P1は、試料Aに照射される。
【0044】
複数の広帯域光源を用いて広帯域光を試料Aに照射する場合、各広帯域光源の同一の波長成分が試料の同一位置に照射されて干渉が生じる可能性がある。このような場合、図13に示したようにプリズム等の分光手段143を設けて波長成分毎に照射方向を変化させることによって、各波長成分の光路を限定して同一の波長成分が試料Aの同一位置に照射されることを防ぎ、干渉を効果的に抑えることができる。また、図13に示した構成によれば、試料Aの各位置に照射される光が実質的に広帯域となるので、撮影のための余分な作業を不要にできる。
【0045】
[光路、位相、波長、偏波、または強度に変調を加える方式]
干渉抑制手段は、広帯域光P1の光路、位相、波長、偏波面、及び強度のうち少なくとも一つを変調する手段によって実現されてもよい。このような方式によって、スペクトル分析等において観察される波長成分内での位相差や干渉の度合いが時間的に平均化されるので、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。なお、変調の周期は、受光器33(図1参照)における応答速度以下、もしくはスペクトル分析等におけるサンプリング周期以下であることが好ましい。以下、このような方式についての種々の形態を示す。
【0046】
<光路を変調する方式>
光路を構成する光学媒体または光学部品を、機械的に駆動するアクチュエータを用いて振動させることにより光路を変調する。光路の構成物にアクチュエータを取り付けるのみで構成でき、簡易に実現できる利点がある。
【0047】
図14は、このような光路変調手段の一形態を示す図である。同図に示す光路変調手段12aは、反射部(ミラー)145と、反射部145の光反射面145aに光結合されたハーフミラー146と、反射部145を光反射面145aと直交する方向に振動させるアクチュエータ147とを有する。広帯域光源20から出射された広帯域光P1はハーフミラー146で反射して反射部145へ入射したのち、光反射面145aで反射し、ハーフミラー146を通過して試料Aに照射される。光反射面145aはアクチュエータ147により光路方向に振動するので、広帯域光源20から試料Aまでの光路長が時間的に変調される。すなわち、広帯域光P1の各波長成分内での位相差が時間的に変調されることとなり、この変調周期よりも十分に長い時間をかけて反射光P2等を検出すれば、各波長成分内での位相差が平均化される。従って、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。
【0048】
図15(a)は、光路変調手段の一形態を示す図である。同図に示す光路変調手段12bは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を導波する光伝送媒体(光ファイバ)149、光伝送媒体149の先端に取り付けられた光出射端150、および光出射端150と支持部材151との間に設けられたアクチュエータ152を有する。光出射端150は試料Aの近傍に配置され、光出射端150から出射された広帯域光P1は試料Aに照射される。また、アクチュエータ152は、光出射端150と試料Aとの距離を変調する(すなわち、光出射端150を図の左右方向に振動させる)。このようなアクチュエータ152としては、例えば圧電素子(ピエゾ素子)が好適である。このように、広帯域光P1の光路を構成する部品(光出射端150)を該光路の方向に振動させることにより、広帯域光源20から試料Aまでの光路長が時間的に変調されるので、図14に示した光路変調手段12aと同様の効果が得られる。
【0049】
図15(b)は、光路変調手段の一形態を示す図であり、広帯域光P1の光路と直交する断面を示している。同図に示す光路変調手段12cは、光出射端154、内部カバー155、外部カバー156、磁石157、ベアリング158、及び電磁コイル159を有する。光出射端154は、広帯域光源20と光結合され広帯域光P1を出射する。内部カバー155及び外部カバー156は、光出射端154を二重に覆う、光出射端154と同軸の筒状部材である。磁石157は、内部カバー155の外周面に複数取り付けられている。ベアリング158は、内部カバー155と外部カバー156との間に設けられ、光出射端154及び内部カバー155を回転可能に支持する。電磁コイル159は、磁石157に作用して光出射端154及び内部カバー155に回転振動を与えるアクチュエータであり、外部カバー156における磁石157と対向する位置に設けられる。このように、広帯域光P1の光路を構成する部品(光出射端154)を該光路周りに回転振動させることによっても、広帯域光源20から試料Aまでの光路長が時間的に変調されるので、図14に示した光路変調手段12aと同様の効果が得られる。
【0050】
図16は、光路変調手段の一形態を示す図である。同図に示す光路変調手段12dは、光伝送媒体(光ファイバ)161、光出射端162、拡散レンズ(凹レンズ)163、カバー164、アクチュエータ165、及び弾性部材166を有する。光伝送媒体(光ファイバ)161は、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を導波する。光出射端162は、光伝送媒体161の先端に取り付けられており、試料Aに広帯域光P1を照射する。拡散レンズ163は、光出射端162と試料Aとの間に配置されており、試料Aに向けて広帯域光P1を拡散(拡幅)させる。カバー164は、光出射端162及び拡散レンズ163を覆う部材である。アクチュエータ165は、拡散レンズ163の一方の側面163aとカバー164との間に設けられており、拡散レンズ163を広帯域光P1の光軸と交差する方向(すなわち図の上下方向)に振動させる。なお、このようなアクチュエータ165としては、例えば圧電素子(ピエゾ素子)が好適である。弾性部材166は、拡散レンズ163の他方の側面163bとカバー164との間に設けられている。
【0051】
このように、広帯域光P1の光路を構成する部品(拡散レンズ163)を該光路と交差する方向に振動させることにより、広帯域光源20から試料Aまでの光路長が時間的に変調されるので、図14に示した光路変調手段12aと同様の効果が得られる。また、図16に示した構成によれば、駆動する部品(拡散レンズ163)の大きさ(寸法及び質量)が比較的小さいので、広帯域光P1の光路をより高速に変調することができる。なお、図16に示した構成では拡散レンズ163を振動させているが、広帯域光P1の光路に集光レンズ(凸レンズ)が設けられる場合には、この集光レンズを振動させてもよい。
【0052】
<位相を変調する方式>
図17は、位相変調手段の一形態を示す図である。同図に示す位相変調手段13aは、位相変調器168と、該位相変調器168を駆動する駆動部169とを有する。位相変調器168は、広帯域光P1を導波する光導波路170aを有するニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板170と、ニオブ酸リチウム基板170の表面に設けられた複数の電極171とによって構成されている。複数の電極171によってニオブ酸リチウム基板170に電界が与えられると、ポッケルス効果によってニオブ酸リチウム基板170の光導波路170aの屈折率が変化し、広帯域光P1の光路長が変化する。複数の電極171は駆動部169と電気的に接続されており、各電極171には駆動部169から変調電圧が印加される。
【0053】
このような構成により、広帯域光P1の各波長成分内での位相差が時間的に変調されることとなり、この変調周期よりも十分に長い時間をかけて反射光P2等を検出すれば、各波長成分内での位相差が平均化される。従って、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。
【0054】
なお、図17に示した位相変調器168においては、複数の電極171が、光導波路170aの直上に一本、光導波路170aの両側方にそれぞれ一本ずつ配置されているが、電極の配置はこれに限られるものではない。また、位相変調器168の基板としては、ニオブ酸リチウム以外にも、ポッケルス効果を有する材料であれば他に様々な材料を適用できる。
【0055】
図18(a)は、位相変調手段の一形態を示す図である。同図に示す位相変調手段13bは、周期的な透過域を有するチャープトファイバグレーティング(chirped−FBG)素子173と、該素子173を両側面から挟むように設置された温度調整素子174及び支持部材175を有する。チャープトファイバグレーティング素子173とは、ファイバグレーティング(FBG)素子においてグレーティング周期を徐々に変化させたものである。チャープトファイバグレーティング素子173の一端は広帯域光源20に光結合されており、他端は光学的に終端されている。チャープトファイバグレーティング素子173内で反射した広帯域光P1は、ビームスプリッタ176等を介して光照射部23(図1参照)へ取り出される。また、温度調整素子174は、図示しない駆動部によってその温度が変調される。なお、温度調整素子174の温度は、広帯域光P1の導波方向に沿って変化するようにその分布が制御される。温度調整素子174としては、例えばペルチェ素子やヒータ等が好適である。
【0056】
このような構成により、チャープトファイバグレーティング素子173が膨張・収縮を繰り返し、該素子173における各波長成分の反射位置が変動することとなる。従って、チャープトファイバグレーティング素子173から取り出される広帯域光P1の成分波長が変動し、位相差が変化するので、図17に示した位相変調手段13aと同様の効果が得られる。
【0057】
図18(b)は、位相変調手段の一形態を示す図である。同図に示す位相変調手段13cは、周期的な透過域を有するチャープトファイバグレーティング素子173、該素子173を両側面から挟むように設置された弾性部材177、弾性部材177を側面から支持する支持部材178、及び、弾性部材177とチャープトファイバグレーティング素子173との間に配置されたアクチュエータ179を有する。アクチュエータ179は、図示しない駆動部により駆動され、弾性部材177及びチャープトファイバグレーティング素子173を、広帯域光P1の光軸方向と交差する方向に周期的に歪曲させる。なお、このようなアクチュエータ179としては、例えば圧電素子(ピエゾ素子)が好適である。
【0058】
このような構成により、チャープトファイバグレーティング素子173が周期的に歪み、該素子173の内部応力が変調されるので、該素子173における各波長成分の反射位置が変動することとなる。従って、チャープトファイバグレーティング素子173から取り出される広帯域光P1の成分波長が変動し、位相差が変化するので、図17に示した位相変調手段13aと同様の効果が得られる。
【0059】
図19は、位相変調手段の一形態を示す図である。同図に示す位相変調手段13dは、広帯域光P1を導波する光ファイバ181と、光ファイバ181を隙間をあけて覆うカバー182と、カバー182内部において光ファイバ181を支持・固定する固定部材183〜185と、光ファイバ181に対して長手方向に応力を与える応力印加部186とを有する。光ファイバ181の一端は広帯域光源20に光結合されており、他端は光照射部23に光結合されている。光ファイバ181は被覆材181aによって被覆されており、カバー182に覆われた一部のみ該被覆材181aが除去されてファイバ本体が露出している。固定部材183及び185は、カバー182の両端付近にそれぞれ配置されており、光ファイバ181の被覆材181aに覆われた部位を固定する。また、固定部材184は、固定部材183及び185の間に配置されており、光ファイバ181の被覆材181aから露出した部位を固定する。
【0060】
応力印加部186は、カバー182に固定されており中央部の開口に光ファイバ181が挿通された環状のカバー側固定部材186aと、カバー側固定部材186aと対向配置され光ファイバ181に固定されたファイバ側固定部材186bと、カバー側固定部材186a及びファイバ側固定部材186bの間に配置されたアクチュエータ186cとを含む。アクチュエータ186cは、図示しない駆動部により駆動され、ファイバ側固定部材186bに固定された光ファイバ181の部分を、カバー側固定部材186aに対して相対的に広帯域光P1の光軸方向に振動させる。これにより、光ファイバ181が長手方向に周期的に歪み、光ファイバ181の内部応力が変調されるので、光ファイバ181における屈折率が変調され、広帯域光P1の各波長成分内での位相差が時間的に変調されることとなる。
【0061】
図20は、位相変調手段の一形態を示す図であり、図20(a)は側面断面図、図20(b)は広帯域光P1の入射方向から見た正面図である。同図に示す位相変調手段13eは、開口188aを有する環状の支持部材188と、ばね等の支点189を介して支持部材188に取り付けられた枠材190と、枠材190の枠内に固定された周期性フィルタ191と、支持部材188及び枠材190の間であって支点189から離れた位置に設けられたアクチュエータ192とを有する。周期性フィルタ191は、透過波長に周期性を有するフィルタ素子であり、例えばエタロンフィルタが好適である。また、アクチュエータ192は、図示しない駆動部により周期的に駆動され、枠材190を支持部材188に対して離接方向に振動させる。これにより、周期性フィルタ191は、図20(a)に示すように支点189を支点として振動する。その結果、周期性フィルタ191に対する広帯域光P1の入射角が変調されることとなる。
【0062】
図20(c)は、位相変調手段13eを通過する前(グラフG1)及び通過した後(グラフG2)の、広帯域光P1のスペクトルの一例を示すグラフである。位相変調手段13eの周期性フィルタ191において、広帯域光P1は周期的な波長成分のみ透過し、そのスペクトルはグラフG2のようになる。この周期的な波長成分は、周期性フィルタ191に対する広帯域光P1の入射角によって定まる。本形態では、アクチュエータ192によって周期性フィルタ191への広帯域光P1の入射角が変調されるので、広帯域光P1のスペクトルに含まれる各ピーク波形の中心波長が上下に変動する。すなわち、この位相変調手段13eによれば、広帯域光P1の成分波長が変動し、位相差が変化するので、図17に示した位相変調手段13aと同様の効果が得られる。
【0063】
なお、図17〜図20に示した構成以外にも、例えばポッケルス効果、光カー効果、または音響光学効果を有する素子を用いて広帯域光P1を変調することにより、位相変調手段を好適に実現できる。
【0064】
<偏波を変調する方式>
図21は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14aは、複屈折率を有する素子194を有する。このような素子194としては、例えば1/4波長板が好適である。この場合、図に示すように、直線偏波の広帯域光P1が円偏波または楕円偏波となって出力される。また、素子194は、図示しない駆動手段(アクチュエータ)によって、広帯域光P1の光軸を中心とした回転方向に振動する。これにより、素子194を透過する広帯域光P1の偏波面が変調される。従って、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、この変調周期よりも十分に長い時間をかけて反射光P2等を検出すれば、各波長成分内での干渉が平均化される。従って、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。
【0065】
図22は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14bは、液晶素子196を有する。液晶素子196に電圧を印加すると、内部の液晶組織の配列が変化し、透過光の偏波状態が変化する。従って、図に示すように、液晶素子196の両端に可変電圧源197を接続し、液晶素子196への印加電圧を変調することによって、液晶素子196を透過する広帯域光P1の偏波面が変調される。これにより、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、図21に示した偏波変調手段14aと同様の効果が得られる。
【0066】
図23は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14cは、誘電体198を有する。この誘電体198は広帯域光P1に対して透明な磁性材料(たとえばガーネット)からなり、その磁界は広帯域光P1の光軸方向と直交している。広帯域光P1が誘電体198を通過すると、ファラデー効果により、磁場の強さと通過長とに応じた角度だけ広帯域光P1の偏波面が回転する。また、誘電体198は、図示しない駆動手段(アクチュエータ)によって、広帯域光P1の光軸を中心とした回転方向に振動する。これにより、誘電体198を透過する広帯域光P1の偏波面が変調され、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、図21に示した偏波変調手段14aと同様の効果が得られる。
【0067】
図24は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14dは、非磁性誘電体201と、この誘電体201の対向する側面に配置された電磁コイル202,203とを有する。電磁コイル202,203に電流を供給すると、誘電体201の内部に磁界が形成され、誘電体201を透過する光の偏波状態がファラデー効果によって変化する。本形態では、駆動部204が電磁コイル202,203に電気的に接続されており、この駆動部204が電磁コイル202,203への供給電流を変調する。従って、誘電体201を透過する広帯域光P1の偏波面が変調されることとなる。これにより、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、図21に示した偏波変調手段14aと同様の効果が得られる。
【0068】
図25は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14eは、広帯域光P1を反射する光反射面206aが形成された磁性体206を有する。そして、磁性体206の光反射面206aでの磁場の方向によって、広帯域光P1が反射する際の偏波面の回転角が変化する(磁気カー効果)。また、磁性体206は、図示しない駆動手段(アクチュエータ)によって、光反射面206aの法線方向を中心として回転振動する。これにより、磁性体206において反射する広帯域光P1の偏波面が変調され、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、図21に示した偏波変調手段14aと同様の効果が得られる。
【0069】
図26は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14fは、光弾性素子208を有する。光弾性素子208は、広帯域光P1の光軸方向に対して垂直な方向に応力が加えられることにより偏波面を回転させる作用を有する素子である。本形態の光弾性素子208は、図示しない駆動手段(アクチュエータ)によって、周期的に圧縮を繰り返すような力が印加される。これにより、光弾性素子208を透過する広帯域光P1の偏波面が変調され、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、図21に示した偏波変調手段14aと同様の効果が得られる。
【0070】
<強度を変調する方式>
広帯域光P1を生成するための光源として強度変動が少ない光を用いる場合、放射のタイミングが異なる光同士で干渉が生じることがある。従って、広帯域光P1に対して比較的強い強度変調を行うことにより、干渉の発生を抑制することができる。
【0071】
図27は、強度変調手段の一形態を示す図である。同図に示す強度変調手段15aは、強度変調器210と、該強度変調器210を駆動する駆動部211とを有する。強度変調器210は、広帯域光P1を導波する光導波路212aを有するニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板212と、ニオブ酸リチウム基板212の表面に設けられた複数の電極213a,213b,及び213cとによって構成されている。光導波路212aは、平行に設けられた二本の光導波路212b,212cを含む。これら光導波路212b,212cの一端は、ニオブ酸リチウム基板212上で結合されて広帯域光源20に光結合されている。また、光導波路212b,212cの他端は、ニオブ酸リチウム基板212上で結合されて光照射部23(図1参照)に光結合されている。電極213aは光導波路212bの外側面に沿って配置され、電極213bは光導波路212bの外側面に沿って配置され、電極213cは光導波路212b,212cの内側面に沿って配置されている。
【0072】
電極213a〜213cによって光導波路212b,212cに対照的な電界が与えられると、光導波路212bと光導波路212cとの間で干渉が生じ、広帯域光P1の強度が変化する。複数の電極213a〜213cは駆動部211と電気的に接続されており、各電極213a〜213cには駆動部211から変調電圧が印加される。
【0073】
このような構成により、広帯域光P1の強度が時間的に変調されることとなり、放射のタイミングが異なる光同士での干渉が低減される。従って、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。なお、図27に示した強度変調器210においては、電極の配置は本形態に限られるものではなく、他に様々な配置を適用できる。
【0074】
以上に述べた干渉抑制手段は、全て光源装置2が備えるものとして説明したが、スペクトル分析装置1の他の箇所(特に、試料Aを載置する試料載置部4の周辺)においても実現することができる。既述の各手段を光源装置2とは別に設置する構成の他、例えば以下に説明する構成がある。
【0075】
[各波長成分の光路を単一にする方式(その2)]
図28(a)は、スペクトル分析装置1が備える干渉抑制手段の一形態を示す図である。同図に示す干渉抑制手段16aは、試料Aの裏側に設けられたスリット板216を含む。スリット板216は、広帯域光P1が試料Aの表面側から照射されて試料Aから得られる光(本形態では透過光)を部分的に通過させる開口部(スリット)216aを有する。この構成により、開口部216aを通過した光のみが透過光P4として検出される。このような構成によれば、広帯域光P1の各波長成分が実質的に単一の光路を経由して検出されることとなるので、各波長成分における干渉を好適に抑えることができる。
【0076】
このようなスリット板は、図28(b)に示すように、試料Aの表面側に設けられてもよい。この場合、スリット板216の開口部216aは、試料Aの表面側から照射される広帯域光P1と、試料Aから得られる反射光または散乱光とを部分的に通過させる。このような構成であっても、図28(a)に示した干渉抑制手段16aと同様の効果が得られる。
【0077】
なお、図28(a)及び図28(b)に示した構成において、スリット板216は、広帯域光P1に対する反射率が極めて低い材質からなることが好ましい。また、開口部216aの幅は、通過光の回折が強く生じない程度に、通過光の波長より十分広いことが好ましい。また、スリット板216に代えて、ピンホールを有する板を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本実施形態に係るスペクトル分析装置の基本構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図3】図3は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図4】図4は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図5】図5は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図6】図6は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図7】図7は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図8】図8は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図9】図9は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図10】図10は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図11】図11は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図12】図12は、光路限定手段の一形態を示す図である。
【図13】図13は、光路限定手段の一形態を示す図である。
【図14】図14は、このような光路変調手段の一形態を示す図である。
【図15】図15(a)(b)は、光路変調手段の一形態を示す図である。
【図16】図16は、光路変調手段の一形態を示す図である。
【図17】図17は、位相変調手段の一形態を示す図である。
【図18】図18(a)(b)は、位相変調手段の一形態を示す図である。
【図19】図19は、位相変調手段の一形態を示す図である。
【図20】図20は、位相変調手段の一形態を示す図であり、図20(a)は側面断面図、図20(b)は広帯域光の入射方向から見た正面図である。図20(c)は、位相変調手段を通過する前及び通過した後の、広帯域光のスペクトルの一例を示すグラフである。
【図21】図21は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図22】図22は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図23】図23は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図24】図24は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図25】図25は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図26】図26は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図27】図27は、強度変調手段の一形態を示す図である。
【図28】図28(a)(b)は、スペクトル分析装置が備える干渉抑制手段の一形態を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…スペクトル分析装置、2…光源装置、3…検出装置、4…試料載置部、10a〜10i…可干渉性低減手段、11a,11b…光路限定手段、12a〜12d…光路変調手段、13a〜13e…位相変調手段、14a〜14f…偏波変調手段、15a…強度変調手段、16a…干渉抑制手段、20…広帯域光源、21…レーザ光源、22…非線形光学媒体、23…光照射部、24,35…光ガイド、31…光取入部、32…分光器、33…受光器、34…データ処理器、A…試料、P1…広帯域光、P2…反射光、P3…散乱光、P4…透過光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置およびスペクトル分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
広い帯域幅を有する広帯域光は、例えばスペクトル分析等の光源として利用される。スペクトル分析等の光源としては、従来よりランプやLEDが広く用いられてきたが、単位波長・単位面積あたりのパワーが小さく、試料を精度よく分析できない場合があった。これに対し、例えばスーパーコンティニューム光(SC光)のような広帯域光は、集光性が優れているため微量の試料を精度よく分析でき、スペクトル分析等の光源として期待されている。なお、このような広帯域光源としては、例えば特許文献1に記載された光源装置がある。
【特許文献1】国際公開第2006/106669号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
共振器構造により発振された光のような高いコヒーレンシーを有する光が或る対象に照射された場合、干渉が発生し空間的な強度分布が生じてしまうが、レーザ光を基に得られる広帯域光においては、波長が広帯域にわたっていることから、前記のような干渉は殆ど生じないと考えられてきた。しかし、スペクトル分析等において広帯域光の波長成分が分光された状態では、波長成分が限定されるため可干渉性が大きくなる。ランプやLEDの光では、空間的な位相にばらつきがあるのでこのような場合でも干渉は生じにくいが、レーザ光を基に生成されたSC光などの広帯域光では横モードが単一であるため、このような場合に、異なる光路を経由した波長成分同士が干渉し易くなってしまう。従って、スペクトル分析等に広帯域光源を用いた場合、干渉によって測定結果に誤差が生じてしまう。
【0004】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、波長成分内の干渉による分析等への影響を低減できる光源装置およびスペクトル分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明による光源装置は、広帯域光を生成する広帯域光源を備える光源装置であって、広帯域光の各波長成分における干渉を抑える干渉抑制手段を備えることを特徴とする。これにより、広帯域光を用いるスペクトル分析等において、波長成分内での干渉を低減できる。なお、ここでいう広帯域光とは、ピークから3dB低下するまでの波長帯域幅が100GHz以上である光を指す。
【0006】
また、光源装置は、干渉抑制手段が、広帯域光に含まれる各波長成分の可干渉性を小さくする可干渉性低減手段であることを特徴としてもよい。広帯域光に含まれる各波長成分の可干渉性(コヒーレンス長)を小さくすることによって、各波長成分内における干渉を好適に抑えることができる。
【0007】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、複数の広帯域光源と、各広帯域光源から出射される広帯域光を並行して導波する導波手段とを有することを特徴としてもよい。通常、複数の広帯域光源から出射された広帯域光の位相は互いにずれているので、これらの広帯域光を導波手段によって並列的に導波させた後に試料等へ照射すれば、照射される広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0008】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を偏波面に応じて複数の光路に分ける分波手段と、複数の光路を伝搬する光に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、位相変化手段を経た光を合波する合波手段とを有することを特徴としてもよい。これにより、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0009】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を波長に応じて分光する分光手段と、分光された各波長成分に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、位相変化手段を経た光を集光する集光手段とを有することを特徴としてもよい。これにより、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0010】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を拡幅する拡幅手段と、拡幅された広帯域光に含まれる複数の光路を進む光に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、位相変化手段を経た光を集光する集光手段とを有することを特徴としてもよい。これにより、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0011】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が複数の光反射体を有しており、光反射体が、広帯域光源から出射された広帯域光の一部を広帯域光源へ向けて反射する第1の面と、第1の面により反射された光を第1の面へ向けて反射する第2の面とを有することを特徴としてもよい。これにより、第1の面で反射した光と第1の面を透過した光との間で光路差が生じるので、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0012】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を複数のモードで伝搬する光伝送手段を有することを特徴としてもよい。これにより、光伝送手段において各モード間に光路差が生じるので、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0013】
また、光源装置は、可干渉性低減手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を伝搬する複屈折率媒体と、広帯域光源と複屈折率媒体との間に光結合された1/4波長板とを有することを特徴としてもよい。これにより、直線偏光の広帯域光が円偏光(または楕円偏光)に変換されて複屈折率媒体へ入射され、複屈折率媒体内で各偏光成分間に光路差が生じるので、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0014】
また、光源装置は、干渉抑制手段が、広帯域光に含まれる各波長成分の光路を空間的に限定するための光路限定手段を有することを特徴としてもよい。これにより、広帯域光の各波長成分が実質的に単一の光路を経由することとなり、各波長成分における干渉を好適に抑えることができる。
【0015】
また、光源装置は、光路限定手段が、広帯域光源から出射された広帯域光を拡幅する拡幅手段と、拡幅手段と光結合され、広帯域光の入射位置によって透過波長または反射波長が異なるフィルタ素子とを有することを特徴としてもよい。或いは、光源装置は、複数の広帯域光源を備え、光路限定手段が、複数の広帯域光源のそれぞれに光結合され、各広帯域光源から出射された広帯域光を波長に応じて分光する複数の分光手段を有し、複数の分光手段が、広帯域光の入射方向と交差する方向に並設されていることを特徴としてもよい。これらのうち少なくとも一方の構成によって、各波長成分の光路を好適に限定できる。
【0016】
また、光源装置は、干渉抑制手段が、広帯域光の光路を変調する光路変調手段、広帯域光の位相を変調する位相変調手段、広帯域光の波長を変調する波長変調手段、広帯域光の偏波面を変調する偏波変調手段、及び広帯域光の強度を変調する強度変調手段のうち少なくとも一つの手段を有することを特徴としてもよい。これにより、スペクトル分析等において観察される波長成分内での位相差や干渉の度合いが時間的に平均化されるので、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。
【0017】
また、本発明によるスペクトル分析装置は、試料に光を照射してスペクトル分析を行うための装置であって、上記したいずれかの光源装置を備えることを特徴とする。このスペクトル装置によれば、上記したいずれかの光源装置を備えることにより、波長成分内での干渉を低減できる。
【0018】
また、本発明によるスペクトル分析装置は、試料に光を照射してスペクトル分析を行うための装置であって、広帯域光を生成する広帯域光源を備える光源装置と、広帯域光の各波長成分における干渉を抑える干渉抑制手段とを備え、干渉抑制手段が、試料へ照射される広帯域光、及び広帯域光の照射により試料から得られる光のうち少なくとも一方の光を部分的に通過させるための開口部を有する部材を含むことを特徴とする。これにより、広帯域光の各波長成分が実質的に単一の光路を経由することとなり、各波長成分における干渉を好適に抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による光源装置並びにスペクトル分析装置によれば、波長成分内の干渉による分析等への影響を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光源装置及びスペクトル分析装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るスペクトル分析装置の基本構成を概略的に示す図である。同図に示すスペクトル分析装置1は、試料Aに広帯域光P1を照射する光源装置2と、試料Aからの反射光P2、散乱光P3、または透過光P4を検出する検出装置3と、試料Aを載置する試料載置部4とを備えている。光源装置2は、広帯域光源20及び光照射部23を備えている。検出装置3は、光取入部31、分光器32、受光器33、及びデータ処理器34を備えている。
【0022】
広帯域光源20は、SC光といった広帯域光P1を生成する。本実施形態の広帯域光源20は、例えば数フェムト秒といった超短パルスレーザ光、或いは連続的なレーザ光を発生するレーザ光源21と、レーザ光源21に光結合された非線形光学媒体(非線形光ファイバ)22とを有する。非線形光学媒体22においては、非線形光学効果によってレーザ光源21からのレーザ光のスペクトル帯域幅が2倍以上に拡張され、広帯域にわたってなだらかなスペクトル形状を有する広帯域光(SC光)P1が生成される。
【0023】
なお、レーザ光源21としては、例えばアクティブ(能動)モード同期型やパッシブ(受動)モード同期型の超短パルス光発生源が好適であり、その場合、リング型共振器によって構成されるとよい。或いは、レーザ光源21は、希土類添加ガラスによる固体レーザによって構成されたパッシブモード同期型の超短パルス光発生源であってもよい。
【0024】
広帯域光源20は、光ガイド24によって光照射部23と光結合されている。光照射部23は試料Aの近傍に配置されており、広帯域光P1は光ガイド24及び光照射部23を介して試料Aに照射される。なお、図1は、光照射部23から試料Aへ広帯域光P1が約45°の角度で照射される場合を示しているが、広帯域光P1の照射角はこれに限られるものではない。また、光照射部23と光取入部31が同一で、光照射部23から試料Aへ広帯域光P1が約90°の角度で照射されてもよい。
【0025】
光取入部31は、試料Aの近傍において、試料Aからの広帯域光P1の反射光P2や散乱光P3が得られる位置、または広帯域光P1の透過光P4が得られる位置(図中の破線部分)に配置されている。光取入部31は、光ガイド35によって分光器32と光結合されており、光取入部31へ入射した反射光P2、散乱光P3、または透過光P4は、光取入部31及び光ガイド35を介して分光器32へ送られる。
【0026】
分光器32は、反射光P2、散乱光P3、または透過光P4を複数の波長成分に分離する。分光器32の出力は受光器33に光結合されており、受光器33は、各波長成分の光強度をそれぞれ電気信号に変換する。なお、分光器32及び受光器33は、スペクトルアナライザ等の装置によって併せて実現されてもよい。受光器33から出力された電気信号は、データ処理器34へ提供される。データ処理器34は、電気信号によるデータをスペクトルとして表示させたり、このスペクトルと光源自体のスペクトルとの差分あるいはこのスペクトルと基準試料のスペクトルとの差分を表示させたりする機能を有する。
【0027】
前述したように、スペクトル分析等において広帯域光の波長成分が分光された状態では波長成分が限定されるため、結果的に可干渉性が大きくなる。レーザ光を基に生成された広帯域光P1は横モードが単一であるため、このような場合に、異なる光路を経由した波長成分同士が干渉し易くなってしまう。これに対し、本実施形態の光源装置2は、広帯域光P1の各波長成分における干渉を抑えるための干渉抑制手段を備えている。以下、干渉抑制手段の様々な形態について説明する。
【0028】
[可干渉性を小さくする方式]
広帯域光P1に含まれる各波長成分の可干渉性を小さくすることによって、各波長成分内における干渉を好適に抑えることができる。以下、このような方式(可干渉性低減手段)についての種々の形態を示す。
【0029】
<複数の光源を用いる方式>
図2は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10aは、二次元状に配列された複数のLD(Fabry-Perot型LD等の帯域幅のあるLD)101を含むダイオードアレイ102と、ダイオードアレイ102から出射される複数本の広帯域光P5を集光するための複数のレンズ103を含むレンズアレイ104と、集光された各広帯域光P5を並行して導波するイメージファイバ105といった導波手段とを有する。通常、複数の広帯域光源(LD101)から出射された広帯域光P5の位相は互いにずれているので、これらの広帯域光P5をイメージファイバ105によって並列的に導波させた後に広帯域光P1として試料Aへ一斉に照射すれば、照射される広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0030】
図3は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10bは、一次元状に配列された複数のLD101を含むダイオードアレイ106と、ダイオードアレイ106から出射される複数本の広帯域光P5を並行して導波するための複数の光導波路107を有するPLC(Planer Lightwave guide)108とを有する。なお、PLC108は、導波手段の他の一例である。PLC108の各光導波路107は、その入射端107a同士の間隔がSLD101の間隔に応じて設定されており、また、出射端107b同士の間隔は、入射端107a同士の間隔よりも狭く形成されている。各光導波路107を導波した各広帯域光P5は、広帯域光P1として試料Aへ一斉に照射される。このような構成によれば、図2に示した可干渉性低減手段10aと同様の作用によって、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0031】
<広帯域光を複数の光路に分け、位相差を与える方式>
図4は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10cは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を偏波面に応じて複数の光路L1,L2に分ける分波手段111と、複数の光路L1,L2を伝搬する光に位相のずれを生じさせるため、光路L1,L2に光路差を設定するミラー112及び113と、光路L1を経た光と光路L2を経た光とを合波する合波手段114とを有する。なお、この構成において、分波手段111及び合波手段114は、例えば偏光ビームスプリッタ(PBS)によって好適に実現される。また、ミラー112及び113は、本実施形態における位相変化手段である。可干渉性低減手段10cがこのような構成を有することにより、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0032】
なお、可干渉性低減手段10cにおいて、広帯域光源20と分波手段111との間に波長板を設け、分波手段111に入射する前の広帯域光P1の偏波状態を調整すれば、可干渉性が更に小さくなり好ましい。また、光路L1と光路L2との差は、広帯域光P1に含まれる各波長成分の可干渉性よりも大きいことが好ましい。
【0033】
図5は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10dは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を波長に応じて分光する分光手段116と、分光された各波長成分に位相のずれを生じさせる位相変化手段117と、位相変化手段117を経た光を集光するレンズ(集光手段)118とを有する。分光手段116としては、例えばアレイ導波路回折格子(AWG)や、位相格子などが好適である。また、位相変化手段117としては、例えばランダム位相板のように入射位置によって光路長が異なる光学部品が好適である。このような構成によれば、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0034】
図6は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10eは、拡散板121及び反射部材122を有する。拡散板121は、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を拡幅するための拡幅手段であり、本実施形態では広帯域光P1を反射部材122へ向けて拡散する。また、反射部材122は、拡幅された広帯域光P1に含まれる複数の光路を進む光に位相のずれを生じさせる位相変化手段、及びこの位相変化手段を経た光を集光する集光手段を兼ねる部材である。すなわち、反射部材122の光反射面122aには、拡大図に示すように広帯域光P1の波長と同等の大きさの凹凸が形成されており、広帯域光P1の入射位置によって光路長が僅かに異なる。また、光反射面122aの全体は凹面鏡となっており、広帯域光P1を集光する。このような構成によって、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0035】
図7は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10fは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を拡幅する拡幅手段125と、発散光を平行光にするコリメータ126と、拡幅された広帯域光P1に含まれる複数の光路を進む光に位相のずれを生じさせる位相変化手段127と、位相変化手段127を経た光を集光するレンズ(集光手段)128とを有する。拡幅手段125としては、例えば拡散板やレンズなどが好適である。また、位相変化手段127としては、例えばランダム位相板、中空ファイバ、または積分球のように入射位置や入射角度によって光路長が異なる光学部品が好適である。このような構成によれば、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0036】
図8は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10gは、広帯域光源20から出射される広帯域光P1の光路に対して直列に配置された複数の結合部130を有する。各結合部130は、広帯域光P1の光路と交差するように配置され、第1の面130a及び第2の面130bを有する膜状の光反射体を含む。光反射体の広帯域光源20側の第1の面130aは、広帯域光P1の一部を広帯域光源20へ向けて反射する。また、第1の面130aとは反対側の第2の面130bは、隣り合う光結合部130の第1の面130aにより反射された光を該第1の面130aへ向けて反射する。この構成によれば、広帯域光P1が各結合部130間で多重反射され、第1の面130aで反射し第2の面130bで再び反射した光と、光反射体を透過した光との間で光路差が生じる(そして、反射の位置および回数に応じて更なる光路差が生じる)ので、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。また、この形態は、複数の結合部130を配置するだけで実現できるので、光ガイド24(図1参照)として光ファイバを用いる場合に特に適用が容易となる。
【0037】
なお、結合部130としては、反射率が比較的高い(例えば−10dBや−5dB)ものを用いることが好ましい。また、広帯域光源20への広帯域光P1の戻りを防止するために、広帯域光源20と一段目の結合部130との間にアイソレータを更に設けることが好ましい。また、結合部130は少なくとも2つ配置すればよく、3つ以上配置する場合には結合部130同士の間隔が互いに異なることが好ましい。
【0038】
図9は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10hは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1のビーム径を拡張するビーム拡張手段(好適には凹レンズ)132と、ビーム拡張手段132を通過した広帯域光P1を複数のモードで伝搬する光伝送手段133とを有する。光伝送手段133としては、例えばコア径の大きいプラスチック光ファイバや導波管などが好適である。このような構成によれば、光伝送手段133内部で各モード間に光路差が生じるので、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。また、広帯域光源20と光伝送手段133との間にビーム拡張手段132を設けることにより、光伝送手段133においてより多くのモードを励振させることができる。
【0039】
図10は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10iは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を複数のモードで伝搬する光伝送媒体(光伝送手段)135を有する。光伝送媒体135としては、例えばマルチモードファイバ(MMF)、高NAファイバ(HNA)、フォトニッククリスタルファイバ(PCF)などが好適である。なお、ここでいうPCFとは、厳密には、誘電率が周期的に異なる構造によって光のバンドギャップ構造を実現し、該バンドギャップ内の波長の光を導波するファイバを指す。このPCFには、ホーリーファイバや中空ファイバも含まれる。このような構成によれば、光伝送媒体135内部で各モード間に光路差が生じるので、広帯域光P1の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0040】
図11は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。同図に示す可干渉性低減手段10iは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を伝搬する複屈折率媒体138と、広帯域光源20と複屈折率媒体138との間に光結合された1/4波長板137とを有する。複屈折率媒体138は、入射光の偏波面によって屈折率が異なる光伝送媒体であり、例えば偏波保持ファイバ(PMF)が好適である。さらにPMFを使う場合、長手方向の複数個所で横からの応力を加えると、実効的に経路を多くでき好適である。この構成により、直線偏光の広帯域光P1が1/4波長板137で円偏光(または楕円偏光)に変換されて複屈折率媒体138へ入射され、複屈折率媒体138内で各偏光成分間に光路差が生じるので、広帯域光の各波長成分が複数の位相成分を含むこととなり、各波長成分の可干渉性が好適に小さくなる。
【0041】
[各波長成分の光路を単一にする方式]
干渉抑制手段は、広帯域光P1に含まれる各波長成分の光路を空間的に限定することにより実現されてもよい。このような方式によって、広帯域光P1の各波長成分が実質的に単一の光路を経由することとなり、各波長成分における干渉を好適に抑えることができる。以下、このような方式(光路限定手段)についての種々の形態を示す。
【0042】
図12は、光路限定手段の一形態を示す図である。同図に示す光路限定手段11aは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1のビーム径を拡幅(拡張)する拡幅手段140と、該拡幅手段140と光結合され、広帯域光P1の入射位置によって透過波長が異なるフィルタ素子(二次元フィルタ)141とを有する。なお、このようなフィルタ素子141としては、平面方向に厚さが異なるエタロンフィルタやフィルタアレイが好適である。ビーム状の広帯域光P1を拡幅手段140により一旦拡幅させてからフィルタ素子141を通過させると、フィルタ素子141の透過波長が二次元的に変化しているので、各波長成分が極めて小径のビームとなって出力される。そして、この広帯域光P1がそのまま試料Aに照射されると、試料Aを透過した波長成分(透過光P4)は図12に示すように小径のスポット状となる。このように、光路限定手段11aによれば、各波長成分の光路が実質的に限定されるので、干渉を好適に抑えることができる。なお、試料Aに満遍なく広帯域光P1を照射するには、フィルタ素子141を移動させるか、或いはフィルタ素子141の透過波長分布を時間的に変化させるとよい。また、図12には透過型のフィルタ素子141を示したが、反射型のフィルタ素子を用いてもよい。この場合、フィルタ素子の反射波長が広帯域光P1の入射位置によって異なるとよい。
【0043】
図13は、光路限定手段の一形態を示す図である。同図に示す光路限定手段11bは、複数の広帯域光源20と、複数の分光手段143とを有する。複数の分光手段143は、広帯域光P1の入射方向と交差する方向に並設されており、複数の広帯域光源20のそれぞれに光結合されている。複数の分光手段143は、各広帯域光源20から出射された広帯域光P1を波長に応じて分光する。複数の分光手段143は、その屈折率の波長依存性が高いことが好ましい。このような分光手段143としては、例えばプリズムが好適である。複数の分光手段143によって分光された広帯域光P1は、試料Aに照射される。
【0044】
複数の広帯域光源を用いて広帯域光を試料Aに照射する場合、各広帯域光源の同一の波長成分が試料の同一位置に照射されて干渉が生じる可能性がある。このような場合、図13に示したようにプリズム等の分光手段143を設けて波長成分毎に照射方向を変化させることによって、各波長成分の光路を限定して同一の波長成分が試料Aの同一位置に照射されることを防ぎ、干渉を効果的に抑えることができる。また、図13に示した構成によれば、試料Aの各位置に照射される光が実質的に広帯域となるので、撮影のための余分な作業を不要にできる。
【0045】
[光路、位相、波長、偏波、または強度に変調を加える方式]
干渉抑制手段は、広帯域光P1の光路、位相、波長、偏波面、及び強度のうち少なくとも一つを変調する手段によって実現されてもよい。このような方式によって、スペクトル分析等において観察される波長成分内での位相差や干渉の度合いが時間的に平均化されるので、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。なお、変調の周期は、受光器33(図1参照)における応答速度以下、もしくはスペクトル分析等におけるサンプリング周期以下であることが好ましい。以下、このような方式についての種々の形態を示す。
【0046】
<光路を変調する方式>
光路を構成する光学媒体または光学部品を、機械的に駆動するアクチュエータを用いて振動させることにより光路を変調する。光路の構成物にアクチュエータを取り付けるのみで構成でき、簡易に実現できる利点がある。
【0047】
図14は、このような光路変調手段の一形態を示す図である。同図に示す光路変調手段12aは、反射部(ミラー)145と、反射部145の光反射面145aに光結合されたハーフミラー146と、反射部145を光反射面145aと直交する方向に振動させるアクチュエータ147とを有する。広帯域光源20から出射された広帯域光P1はハーフミラー146で反射して反射部145へ入射したのち、光反射面145aで反射し、ハーフミラー146を通過して試料Aに照射される。光反射面145aはアクチュエータ147により光路方向に振動するので、広帯域光源20から試料Aまでの光路長が時間的に変調される。すなわち、広帯域光P1の各波長成分内での位相差が時間的に変調されることとなり、この変調周期よりも十分に長い時間をかけて反射光P2等を検出すれば、各波長成分内での位相差が平均化される。従って、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。
【0048】
図15(a)は、光路変調手段の一形態を示す図である。同図に示す光路変調手段12bは、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を導波する光伝送媒体(光ファイバ)149、光伝送媒体149の先端に取り付けられた光出射端150、および光出射端150と支持部材151との間に設けられたアクチュエータ152を有する。光出射端150は試料Aの近傍に配置され、光出射端150から出射された広帯域光P1は試料Aに照射される。また、アクチュエータ152は、光出射端150と試料Aとの距離を変調する(すなわち、光出射端150を図の左右方向に振動させる)。このようなアクチュエータ152としては、例えば圧電素子(ピエゾ素子)が好適である。このように、広帯域光P1の光路を構成する部品(光出射端150)を該光路の方向に振動させることにより、広帯域光源20から試料Aまでの光路長が時間的に変調されるので、図14に示した光路変調手段12aと同様の効果が得られる。
【0049】
図15(b)は、光路変調手段の一形態を示す図であり、広帯域光P1の光路と直交する断面を示している。同図に示す光路変調手段12cは、光出射端154、内部カバー155、外部カバー156、磁石157、ベアリング158、及び電磁コイル159を有する。光出射端154は、広帯域光源20と光結合され広帯域光P1を出射する。内部カバー155及び外部カバー156は、光出射端154を二重に覆う、光出射端154と同軸の筒状部材である。磁石157は、内部カバー155の外周面に複数取り付けられている。ベアリング158は、内部カバー155と外部カバー156との間に設けられ、光出射端154及び内部カバー155を回転可能に支持する。電磁コイル159は、磁石157に作用して光出射端154及び内部カバー155に回転振動を与えるアクチュエータであり、外部カバー156における磁石157と対向する位置に設けられる。このように、広帯域光P1の光路を構成する部品(光出射端154)を該光路周りに回転振動させることによっても、広帯域光源20から試料Aまでの光路長が時間的に変調されるので、図14に示した光路変調手段12aと同様の効果が得られる。
【0050】
図16は、光路変調手段の一形態を示す図である。同図に示す光路変調手段12dは、光伝送媒体(光ファイバ)161、光出射端162、拡散レンズ(凹レンズ)163、カバー164、アクチュエータ165、及び弾性部材166を有する。光伝送媒体(光ファイバ)161は、広帯域光源20から出射された広帯域光P1を導波する。光出射端162は、光伝送媒体161の先端に取り付けられており、試料Aに広帯域光P1を照射する。拡散レンズ163は、光出射端162と試料Aとの間に配置されており、試料Aに向けて広帯域光P1を拡散(拡幅)させる。カバー164は、光出射端162及び拡散レンズ163を覆う部材である。アクチュエータ165は、拡散レンズ163の一方の側面163aとカバー164との間に設けられており、拡散レンズ163を広帯域光P1の光軸と交差する方向(すなわち図の上下方向)に振動させる。なお、このようなアクチュエータ165としては、例えば圧電素子(ピエゾ素子)が好適である。弾性部材166は、拡散レンズ163の他方の側面163bとカバー164との間に設けられている。
【0051】
このように、広帯域光P1の光路を構成する部品(拡散レンズ163)を該光路と交差する方向に振動させることにより、広帯域光源20から試料Aまでの光路長が時間的に変調されるので、図14に示した光路変調手段12aと同様の効果が得られる。また、図16に示した構成によれば、駆動する部品(拡散レンズ163)の大きさ(寸法及び質量)が比較的小さいので、広帯域光P1の光路をより高速に変調することができる。なお、図16に示した構成では拡散レンズ163を振動させているが、広帯域光P1の光路に集光レンズ(凸レンズ)が設けられる場合には、この集光レンズを振動させてもよい。
【0052】
<位相を変調する方式>
図17は、位相変調手段の一形態を示す図である。同図に示す位相変調手段13aは、位相変調器168と、該位相変調器168を駆動する駆動部169とを有する。位相変調器168は、広帯域光P1を導波する光導波路170aを有するニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板170と、ニオブ酸リチウム基板170の表面に設けられた複数の電極171とによって構成されている。複数の電極171によってニオブ酸リチウム基板170に電界が与えられると、ポッケルス効果によってニオブ酸リチウム基板170の光導波路170aの屈折率が変化し、広帯域光P1の光路長が変化する。複数の電極171は駆動部169と電気的に接続されており、各電極171には駆動部169から変調電圧が印加される。
【0053】
このような構成により、広帯域光P1の各波長成分内での位相差が時間的に変調されることとなり、この変調周期よりも十分に長い時間をかけて反射光P2等を検出すれば、各波長成分内での位相差が平均化される。従って、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。
【0054】
なお、図17に示した位相変調器168においては、複数の電極171が、光導波路170aの直上に一本、光導波路170aの両側方にそれぞれ一本ずつ配置されているが、電極の配置はこれに限られるものではない。また、位相変調器168の基板としては、ニオブ酸リチウム以外にも、ポッケルス効果を有する材料であれば他に様々な材料を適用できる。
【0055】
図18(a)は、位相変調手段の一形態を示す図である。同図に示す位相変調手段13bは、周期的な透過域を有するチャープトファイバグレーティング(chirped−FBG)素子173と、該素子173を両側面から挟むように設置された温度調整素子174及び支持部材175を有する。チャープトファイバグレーティング素子173とは、ファイバグレーティング(FBG)素子においてグレーティング周期を徐々に変化させたものである。チャープトファイバグレーティング素子173の一端は広帯域光源20に光結合されており、他端は光学的に終端されている。チャープトファイバグレーティング素子173内で反射した広帯域光P1は、ビームスプリッタ176等を介して光照射部23(図1参照)へ取り出される。また、温度調整素子174は、図示しない駆動部によってその温度が変調される。なお、温度調整素子174の温度は、広帯域光P1の導波方向に沿って変化するようにその分布が制御される。温度調整素子174としては、例えばペルチェ素子やヒータ等が好適である。
【0056】
このような構成により、チャープトファイバグレーティング素子173が膨張・収縮を繰り返し、該素子173における各波長成分の反射位置が変動することとなる。従って、チャープトファイバグレーティング素子173から取り出される広帯域光P1の成分波長が変動し、位相差が変化するので、図17に示した位相変調手段13aと同様の効果が得られる。
【0057】
図18(b)は、位相変調手段の一形態を示す図である。同図に示す位相変調手段13cは、周期的な透過域を有するチャープトファイバグレーティング素子173、該素子173を両側面から挟むように設置された弾性部材177、弾性部材177を側面から支持する支持部材178、及び、弾性部材177とチャープトファイバグレーティング素子173との間に配置されたアクチュエータ179を有する。アクチュエータ179は、図示しない駆動部により駆動され、弾性部材177及びチャープトファイバグレーティング素子173を、広帯域光P1の光軸方向と交差する方向に周期的に歪曲させる。なお、このようなアクチュエータ179としては、例えば圧電素子(ピエゾ素子)が好適である。
【0058】
このような構成により、チャープトファイバグレーティング素子173が周期的に歪み、該素子173の内部応力が変調されるので、該素子173における各波長成分の反射位置が変動することとなる。従って、チャープトファイバグレーティング素子173から取り出される広帯域光P1の成分波長が変動し、位相差が変化するので、図17に示した位相変調手段13aと同様の効果が得られる。
【0059】
図19は、位相変調手段の一形態を示す図である。同図に示す位相変調手段13dは、広帯域光P1を導波する光ファイバ181と、光ファイバ181を隙間をあけて覆うカバー182と、カバー182内部において光ファイバ181を支持・固定する固定部材183〜185と、光ファイバ181に対して長手方向に応力を与える応力印加部186とを有する。光ファイバ181の一端は広帯域光源20に光結合されており、他端は光照射部23に光結合されている。光ファイバ181は被覆材181aによって被覆されており、カバー182に覆われた一部のみ該被覆材181aが除去されてファイバ本体が露出している。固定部材183及び185は、カバー182の両端付近にそれぞれ配置されており、光ファイバ181の被覆材181aに覆われた部位を固定する。また、固定部材184は、固定部材183及び185の間に配置されており、光ファイバ181の被覆材181aから露出した部位を固定する。
【0060】
応力印加部186は、カバー182に固定されており中央部の開口に光ファイバ181が挿通された環状のカバー側固定部材186aと、カバー側固定部材186aと対向配置され光ファイバ181に固定されたファイバ側固定部材186bと、カバー側固定部材186a及びファイバ側固定部材186bの間に配置されたアクチュエータ186cとを含む。アクチュエータ186cは、図示しない駆動部により駆動され、ファイバ側固定部材186bに固定された光ファイバ181の部分を、カバー側固定部材186aに対して相対的に広帯域光P1の光軸方向に振動させる。これにより、光ファイバ181が長手方向に周期的に歪み、光ファイバ181の内部応力が変調されるので、光ファイバ181における屈折率が変調され、広帯域光P1の各波長成分内での位相差が時間的に変調されることとなる。
【0061】
図20は、位相変調手段の一形態を示す図であり、図20(a)は側面断面図、図20(b)は広帯域光P1の入射方向から見た正面図である。同図に示す位相変調手段13eは、開口188aを有する環状の支持部材188と、ばね等の支点189を介して支持部材188に取り付けられた枠材190と、枠材190の枠内に固定された周期性フィルタ191と、支持部材188及び枠材190の間であって支点189から離れた位置に設けられたアクチュエータ192とを有する。周期性フィルタ191は、透過波長に周期性を有するフィルタ素子であり、例えばエタロンフィルタが好適である。また、アクチュエータ192は、図示しない駆動部により周期的に駆動され、枠材190を支持部材188に対して離接方向に振動させる。これにより、周期性フィルタ191は、図20(a)に示すように支点189を支点として振動する。その結果、周期性フィルタ191に対する広帯域光P1の入射角が変調されることとなる。
【0062】
図20(c)は、位相変調手段13eを通過する前(グラフG1)及び通過した後(グラフG2)の、広帯域光P1のスペクトルの一例を示すグラフである。位相変調手段13eの周期性フィルタ191において、広帯域光P1は周期的な波長成分のみ透過し、そのスペクトルはグラフG2のようになる。この周期的な波長成分は、周期性フィルタ191に対する広帯域光P1の入射角によって定まる。本形態では、アクチュエータ192によって周期性フィルタ191への広帯域光P1の入射角が変調されるので、広帯域光P1のスペクトルに含まれる各ピーク波形の中心波長が上下に変動する。すなわち、この位相変調手段13eによれば、広帯域光P1の成分波長が変動し、位相差が変化するので、図17に示した位相変調手段13aと同様の効果が得られる。
【0063】
なお、図17〜図20に示した構成以外にも、例えばポッケルス効果、光カー効果、または音響光学効果を有する素子を用いて広帯域光P1を変調することにより、位相変調手段を好適に実現できる。
【0064】
<偏波を変調する方式>
図21は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14aは、複屈折率を有する素子194を有する。このような素子194としては、例えば1/4波長板が好適である。この場合、図に示すように、直線偏波の広帯域光P1が円偏波または楕円偏波となって出力される。また、素子194は、図示しない駆動手段(アクチュエータ)によって、広帯域光P1の光軸を中心とした回転方向に振動する。これにより、素子194を透過する広帯域光P1の偏波面が変調される。従って、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、この変調周期よりも十分に長い時間をかけて反射光P2等を検出すれば、各波長成分内での干渉が平均化される。従って、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。
【0065】
図22は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14bは、液晶素子196を有する。液晶素子196に電圧を印加すると、内部の液晶組織の配列が変化し、透過光の偏波状態が変化する。従って、図に示すように、液晶素子196の両端に可変電圧源197を接続し、液晶素子196への印加電圧を変調することによって、液晶素子196を透過する広帯域光P1の偏波面が変調される。これにより、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、図21に示した偏波変調手段14aと同様の効果が得られる。
【0066】
図23は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14cは、誘電体198を有する。この誘電体198は広帯域光P1に対して透明な磁性材料(たとえばガーネット)からなり、その磁界は広帯域光P1の光軸方向と直交している。広帯域光P1が誘電体198を通過すると、ファラデー効果により、磁場の強さと通過長とに応じた角度だけ広帯域光P1の偏波面が回転する。また、誘電体198は、図示しない駆動手段(アクチュエータ)によって、広帯域光P1の光軸を中心とした回転方向に振動する。これにより、誘電体198を透過する広帯域光P1の偏波面が変調され、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、図21に示した偏波変調手段14aと同様の効果が得られる。
【0067】
図24は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14dは、非磁性誘電体201と、この誘電体201の対向する側面に配置された電磁コイル202,203とを有する。電磁コイル202,203に電流を供給すると、誘電体201の内部に磁界が形成され、誘電体201を透過する光の偏波状態がファラデー効果によって変化する。本形態では、駆動部204が電磁コイル202,203に電気的に接続されており、この駆動部204が電磁コイル202,203への供給電流を変調する。従って、誘電体201を透過する広帯域光P1の偏波面が変調されることとなる。これにより、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、図21に示した偏波変調手段14aと同様の効果が得られる。
【0068】
図25は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14eは、広帯域光P1を反射する光反射面206aが形成された磁性体206を有する。そして、磁性体206の光反射面206aでの磁場の方向によって、広帯域光P1が反射する際の偏波面の回転角が変化する(磁気カー効果)。また、磁性体206は、図示しない駆動手段(アクチュエータ)によって、光反射面206aの法線方向を中心として回転振動する。これにより、磁性体206において反射する広帯域光P1の偏波面が変調され、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、図21に示した偏波変調手段14aと同様の効果が得られる。
【0069】
図26は、偏波変調手段の一形態を示す図である。同図に示す偏波変調手段14fは、光弾性素子208を有する。光弾性素子208は、広帯域光P1の光軸方向に対して垂直な方向に応力が加えられることにより偏波面を回転させる作用を有する素子である。本形態の光弾性素子208は、図示しない駆動手段(アクチュエータ)によって、周期的に圧縮を繰り返すような力が印加される。これにより、光弾性素子208を透過する広帯域光P1の偏波面が変調され、広帯域光P1の各波長成分内での干渉が周期的に変化するので、図21に示した偏波変調手段14aと同様の効果が得られる。
【0070】
<強度を変調する方式>
広帯域光P1を生成するための光源として強度変動が少ない光を用いる場合、放射のタイミングが異なる光同士で干渉が生じることがある。従って、広帯域光P1に対して比較的強い強度変調を行うことにより、干渉の発生を抑制することができる。
【0071】
図27は、強度変調手段の一形態を示す図である。同図に示す強度変調手段15aは、強度変調器210と、該強度変調器210を駆動する駆動部211とを有する。強度変調器210は、広帯域光P1を導波する光導波路212aを有するニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板212と、ニオブ酸リチウム基板212の表面に設けられた複数の電極213a,213b,及び213cとによって構成されている。光導波路212aは、平行に設けられた二本の光導波路212b,212cを含む。これら光導波路212b,212cの一端は、ニオブ酸リチウム基板212上で結合されて広帯域光源20に光結合されている。また、光導波路212b,212cの他端は、ニオブ酸リチウム基板212上で結合されて光照射部23(図1参照)に光結合されている。電極213aは光導波路212bの外側面に沿って配置され、電極213bは光導波路212bの外側面に沿って配置され、電極213cは光導波路212b,212cの内側面に沿って配置されている。
【0072】
電極213a〜213cによって光導波路212b,212cに対照的な電界が与えられると、光導波路212bと光導波路212cとの間で干渉が生じ、広帯域光P1の強度が変化する。複数の電極213a〜213cは駆動部211と電気的に接続されており、各電極213a〜213cには駆動部211から変調電圧が印加される。
【0073】
このような構成により、広帯域光P1の強度が時間的に変調されることとなり、放射のタイミングが異なる光同士での干渉が低減される。従って、波長成分内における干渉によるスペクトル分析等への影響を好適に抑えることができる。なお、図27に示した強度変調器210においては、電極の配置は本形態に限られるものではなく、他に様々な配置を適用できる。
【0074】
以上に述べた干渉抑制手段は、全て光源装置2が備えるものとして説明したが、スペクトル分析装置1の他の箇所(特に、試料Aを載置する試料載置部4の周辺)においても実現することができる。既述の各手段を光源装置2とは別に設置する構成の他、例えば以下に説明する構成がある。
【0075】
[各波長成分の光路を単一にする方式(その2)]
図28(a)は、スペクトル分析装置1が備える干渉抑制手段の一形態を示す図である。同図に示す干渉抑制手段16aは、試料Aの裏側に設けられたスリット板216を含む。スリット板216は、広帯域光P1が試料Aの表面側から照射されて試料Aから得られる光(本形態では透過光)を部分的に通過させる開口部(スリット)216aを有する。この構成により、開口部216aを通過した光のみが透過光P4として検出される。このような構成によれば、広帯域光P1の各波長成分が実質的に単一の光路を経由して検出されることとなるので、各波長成分における干渉を好適に抑えることができる。
【0076】
このようなスリット板は、図28(b)に示すように、試料Aの表面側に設けられてもよい。この場合、スリット板216の開口部216aは、試料Aの表面側から照射される広帯域光P1と、試料Aから得られる反射光または散乱光とを部分的に通過させる。このような構成であっても、図28(a)に示した干渉抑制手段16aと同様の効果が得られる。
【0077】
なお、図28(a)及び図28(b)に示した構成において、スリット板216は、広帯域光P1に対する反射率が極めて低い材質からなることが好ましい。また、開口部216aの幅は、通過光の回折が強く生じない程度に、通過光の波長より十分広いことが好ましい。また、スリット板216に代えて、ピンホールを有する板を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本実施形態に係るスペクトル分析装置の基本構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図3】図3は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図4】図4は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図5】図5は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図6】図6は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図7】図7は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図8】図8は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図9】図9は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図10】図10は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図11】図11は、可干渉性低減手段の一形態を示す図である。
【図12】図12は、光路限定手段の一形態を示す図である。
【図13】図13は、光路限定手段の一形態を示す図である。
【図14】図14は、このような光路変調手段の一形態を示す図である。
【図15】図15(a)(b)は、光路変調手段の一形態を示す図である。
【図16】図16は、光路変調手段の一形態を示す図である。
【図17】図17は、位相変調手段の一形態を示す図である。
【図18】図18(a)(b)は、位相変調手段の一形態を示す図である。
【図19】図19は、位相変調手段の一形態を示す図である。
【図20】図20は、位相変調手段の一形態を示す図であり、図20(a)は側面断面図、図20(b)は広帯域光の入射方向から見た正面図である。図20(c)は、位相変調手段を通過する前及び通過した後の、広帯域光のスペクトルの一例を示すグラフである。
【図21】図21は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図22】図22は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図23】図23は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図24】図24は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図25】図25は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図26】図26は、偏波変調手段の一形態を示す図である。
【図27】図27は、強度変調手段の一形態を示す図である。
【図28】図28(a)(b)は、スペクトル分析装置が備える干渉抑制手段の一形態を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…スペクトル分析装置、2…光源装置、3…検出装置、4…試料載置部、10a〜10i…可干渉性低減手段、11a,11b…光路限定手段、12a〜12d…光路変調手段、13a〜13e…位相変調手段、14a〜14f…偏波変調手段、15a…強度変調手段、16a…干渉抑制手段、20…広帯域光源、21…レーザ光源、22…非線形光学媒体、23…光照射部、24,35…光ガイド、31…光取入部、32…分光器、33…受光器、34…データ処理器、A…試料、P1…広帯域光、P2…反射光、P3…散乱光、P4…透過光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域光を生成する広帯域光源を備える光源装置であって、
前記広帯域光の各波長成分における干渉を抑える干渉抑制手段を備えることを特徴とする、光源装置。
【請求項2】
前記干渉抑制手段が、前記広帯域光に含まれる各波長成分の可干渉性を小さくする可干渉性低減手段であることを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記可干渉性低減手段が、
複数の前記広帯域光源と、
各広帯域光源から出射される前記広帯域光を並行して導波する導波手段と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記可干渉性低減手段が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を偏波面に応じて複数の光路に分ける分波手段と、
前記複数の光路を伝搬する光に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、
前記位相変化手段を経た光を合波する合波手段と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項5】
前記可干渉性低減手段が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を波長に応じて分光する分光手段と、
分光された各波長成分に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、
前記位相変化手段を経た光を集光する集光手段と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項6】
前記可干渉性低減手段が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を拡幅する拡幅手段と、
拡幅された前記広帯域光に含まれる複数の光路を進む光に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、
前記位相変化手段を経た光を集光する集光手段と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項7】
前記可干渉性低減手段が複数の光反射体を有しており、
前記光反射体が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光の一部を前記広帯域光源へ向けて反射する第1の面と、
前記第1の面により反射された光を前記第1の面へ向けて反射する第2の面と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項8】
前記可干渉性低減手段が、前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を複数のモードで伝搬する光伝送手段を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項9】
前記可干渉性低減手段が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を伝搬する複屈折率媒体と、
前記広帯域光源と前記複屈折率媒体との間に光結合された1/4波長板と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項10】
前記干渉抑制手段が、前記広帯域光に含まれる各波長成分の光路を空間的に限定するための光路限定手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項11】
前記光路限定手段が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を拡幅する拡幅手段と、
前記拡幅手段と光結合され、前記広帯域光の入射位置によって透過波長または反射波長が異なるフィルタ素子と
を有することを特徴とする、請求項10に記載の光源装置。
【請求項12】
複数の前記広帯域光源を備え、
前記光路限定手段が、
前記複数の広帯域光源のそれぞれに光結合され、各広帯域光源から出射された前記広帯域光を波長に応じて分光する複数の分光手段を有し、
前記複数の分光手段が、前記広帯域光の入射方向と交差する方向に並設されていることを特徴とする、請求項10に記載の光源装置。
【請求項13】
前記干渉抑制手段が、前記広帯域光の光路を変調する光路変調手段、前記広帯域光の位相を変調する位相変調手段、前記広帯域光の波長を変調する波長変調手段、前記広帯域光の偏波面を変調する偏波変調手段、及び前記広帯域光の強度を変調する強度変調手段のうち少なくとも一つの手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項14】
試料に光を照射してスペクトル分析を行うための装置であって、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の光源装置を備えることを特徴とする、スペクトル分析装置。
【請求項15】
試料に光を照射してスペクトル分析を行うための装置であって、
広帯域光を生成する広帯域光源を備える光源装置と、
前記広帯域光の各波長成分における干渉を抑える干渉抑制手段と
を備え、
前記干渉抑制手段が、前記試料へ照射される前記広帯域光、及び前記広帯域光の照射により前記試料から得られる光のうち少なくとも一方の光を部分的に通過させるための開口部を有する部材を含むことを特徴とする、スペクトル分析装置。
【請求項1】
広帯域光を生成する広帯域光源を備える光源装置であって、
前記広帯域光の各波長成分における干渉を抑える干渉抑制手段を備えることを特徴とする、光源装置。
【請求項2】
前記干渉抑制手段が、前記広帯域光に含まれる各波長成分の可干渉性を小さくする可干渉性低減手段であることを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記可干渉性低減手段が、
複数の前記広帯域光源と、
各広帯域光源から出射される前記広帯域光を並行して導波する導波手段と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記可干渉性低減手段が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を偏波面に応じて複数の光路に分ける分波手段と、
前記複数の光路を伝搬する光に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、
前記位相変化手段を経た光を合波する合波手段と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項5】
前記可干渉性低減手段が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を波長に応じて分光する分光手段と、
分光された各波長成分に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、
前記位相変化手段を経た光を集光する集光手段と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項6】
前記可干渉性低減手段が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を拡幅する拡幅手段と、
拡幅された前記広帯域光に含まれる複数の光路を進む光に位相のずれを生じさせる位相変化手段と、
前記位相変化手段を経た光を集光する集光手段と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項7】
前記可干渉性低減手段が複数の光反射体を有しており、
前記光反射体が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光の一部を前記広帯域光源へ向けて反射する第1の面と、
前記第1の面により反射された光を前記第1の面へ向けて反射する第2の面と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項8】
前記可干渉性低減手段が、前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を複数のモードで伝搬する光伝送手段を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項9】
前記可干渉性低減手段が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を伝搬する複屈折率媒体と、
前記広帯域光源と前記複屈折率媒体との間に光結合された1/4波長板と
を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項10】
前記干渉抑制手段が、前記広帯域光に含まれる各波長成分の光路を空間的に限定するための光路限定手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項11】
前記光路限定手段が、
前記広帯域光源から出射された前記広帯域光を拡幅する拡幅手段と、
前記拡幅手段と光結合され、前記広帯域光の入射位置によって透過波長または反射波長が異なるフィルタ素子と
を有することを特徴とする、請求項10に記載の光源装置。
【請求項12】
複数の前記広帯域光源を備え、
前記光路限定手段が、
前記複数の広帯域光源のそれぞれに光結合され、各広帯域光源から出射された前記広帯域光を波長に応じて分光する複数の分光手段を有し、
前記複数の分光手段が、前記広帯域光の入射方向と交差する方向に並設されていることを特徴とする、請求項10に記載の光源装置。
【請求項13】
前記干渉抑制手段が、前記広帯域光の光路を変調する光路変調手段、前記広帯域光の位相を変調する位相変調手段、前記広帯域光の波長を変調する波長変調手段、前記広帯域光の偏波面を変調する偏波変調手段、及び前記広帯域光の強度を変調する強度変調手段のうち少なくとも一つの手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項14】
試料に光を照射してスペクトル分析を行うための装置であって、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の光源装置を備えることを特徴とする、スペクトル分析装置。
【請求項15】
試料に光を照射してスペクトル分析を行うための装置であって、
広帯域光を生成する広帯域光源を備える光源装置と、
前記広帯域光の各波長成分における干渉を抑える干渉抑制手段と
を備え、
前記干渉抑制手段が、前記試料へ照射される前記広帯域光、及び前記広帯域光の照射により前記試料から得られる光のうち少なくとも一方の光を部分的に通過させるための開口部を有する部材を含むことを特徴とする、スペクトル分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2008−180650(P2008−180650A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15373(P2007−15373)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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