説明

光走査装置及び画像形成装置

【課題】光走査装置において、ビームスポット径を小さく保ちつつ深度余裕を拡大し、同時に、環境変化に起因する結像位置の変動を有効に抑制する。
【解決手段】光源、アパーチャ、位相型光学素子、偏向手段および走査レンズを有する光走査装置において、位相型光学素子の1つの光学面を複数の領域:An(n=1,2・・)に分割して光学面を不連続面形状とし、領域:An(n=1,2・・)と形状が異なる構造パターン:Bの位相分布形状BPを設け、複数の領域:Anによる不連続面形状に、環境変動による結像面の位置ずれを補正する機能を持たせ、構造パターン:Bに、光スポットの焦点深度を拡大する機能を持たせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光走査装置及び画像形成装置に関する。この発明の光走査装置はデジタル複写機、レーザプリンタ、レーザファクシミリ、MFP(マルチファンクションプリンタ)等に用いることができ、画像形成装置はこれらの装置として実施できる。
【背景技術】
【0002】
近年、光走査により画像形成を行う「MFP等の画像形成装置」の出力画像の画質に対する要求水準が高くなり、光走査におけるビームスポット径の小径化及び安定化が強く求められている。「ビームスポット径の安定化」は、ビームの深度余裕(許容するビームスポット径以下となる光軸方向のデフォーカス距離)を大きくすることにより達成できるが、深度余裕:dとビームスポット径:W、光走査における使用波長:λとの間には、周知の如く、
d∝w/λ
の関係があり、深度余裕の増大はビームスポット径の増大をもたらすため、ビームスポット径の「小径化と安定化」を両立するのは困難であった。
ビームスポット径を小さく保ちつつ「深度余裕を拡大」する方法として、ベッセルビームを用いる方法が考えられる。ベッセルビームは、特許文献1等により知られているが、サイドローブ光強度が非常に強く、高次のサイドローブ光の強度も強いため、ベッセルビームにより光走査を行う場合、光利用効率の低下が考えられ、昨今要望されている画像形成の高速化の観点からすると問題なしとしない。
【0003】
また、光走査による画像形成には「環境変動の影響」を受けやすいという問題がある。光走査が行われる環境条件である温度や湿度が変化すると、光源として用いられるレーザ光源の波長が変化したり、あるいはレンズの熱変形に伴い光学特性が変化したりして光走査を行うビームの結像面の位置ずれが生じる。環境変動による上記結像面の位置ずれを、回折レンズを用いて低減することが提案されている(特許文献2等)。
【0004】
【特許文献1】特許第3507244号公報
【特許文献2】特開2005−258392
【特許文献3】特開2006−235069
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上述したところに鑑み、光走査装置において、ビームスポット径を小さく保ちつつ深度余裕を拡大し、同時に、環境変化に起因する結像面位置の変動を有効に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の光走査装置は「光源と、この光源からの光束の一部のみを透過するアパーチャと、位相型光学素子と、前記光束を偏向し走査する偏向手段と、この偏向手段により走査された走査ビームを被走査面に結像する走査レンズとを有する光走査装置」である。
【0007】
請求項1記載の光走査装置は以下の如き特徴を有する。
【0008】
即ち、位相型光学素子の1つの光学面を複数の領域:An(n=1,2・・)に分割して光学面を不連続面形状とし、この不連続面形状における不連続部分における領域間の位相差を「使用波長に対して略2πの整数倍となる」ように設定するとともに、前記光学面に領域:An(n=1,2・・)と形状が異なる構造パターン:Bを設け、この構造パターン:Bとその周辺部との位相差が「使用波長に対して2πとは異なる」ように構造パターン:Bの構造を設定する。そして、複数の領域:An(n=1,2・・)による不連続面形状に「環境変動による結像面の位置ずれを補正する機能」を持たせ、構造パターン:Bに「光スポットの焦点深度を拡大する機能」を持たせる。
【0009】
請求項1記載の光走査装置において、位相型光学素子の複数の領域:An(n=1,2・・)による不連続面形状は「使用波長の光束を収束または発散させる機能を持たない」ように設定できる(請求項2)。
【0010】
請求項1または2記載の光走査装置における位相型光学素子の「不連続面形状における複数の領域:An(n=1,2・・)の不連続部分」は、直線状もしくは円形状もしくは楕円形状で、構造パターン:Bは「2次元状パターン」であることができる(請求項3)。この場合、位相型光学素子における構造パターン:Bの2次元状パターンは「主走査方向および副走査方向に線対称性を有し、且つ回転角:90度に対する回転対称性を持たない」ことが好ましい(請求項4)。「回転角:90度に対する回転対称性を持たない」とは、2次元状パターンをパターン面内で90度回転させたときに、回転前のパターン形状と同一にならないことを意味する。
【0011】
請求項4記載の光走査装置における位相型光学素子における構造パターン:Bの2次元状パターンは「楕円リング形状の少なくとも一部を含み、この楕円リング形状の幅が均一でない」ことができる(請求項5)。
【0012】
請求項1〜5の任意の1に記載の光走査装置における位相型光学素子の「複数の領域:An(n=1,2・・)による不連続面形状と構造パターン:Bとを形成された面」と反対側の面は「屈折レンズ面」を形成することができる(請求項6)。
【0013】
請求項1〜6の任意の1に記載の光走査装置において「光源からの光束の一部のみを通過させるアパーチャ」は、その開口部が「4隅を面取りした矩形形状」であることができ(請求項7)、請求項1〜7の任意の1に記載の光走査装置において「光源からの光束の一部のみを通過させるアパーチャ」は、位相型光学素子に極近接して配置されるか、もしくは位相型光学素子と密着もしくは一体化されることができる(請求項8)。この場合「光源をマルチビーム光源とする」ことができる(請求項9)。
【0014】
請求項1〜9に任意の1に記載の光走査装置における位相型光学素子における「複数の領域:An(n=1,2・・)による不連続面形状」は切削により、構造パターン:Bはエッチングにより形成されることが好ましい(請求項10)。
【0015】
この発明の画像形成装置は「光走査による画像書き込みを光導電性の感光体に行って静電潜像を形成する方式の画像形成装置」であって、光走査による画像書き込みを請求項1〜10の任意の1に記載の光走査装置により行うことを特徴とする(請求項11)。
【0016】
請求項11記載の画像形成装置は「複数の光導電性の感光体に異なる色成分の画像書き込みを行い、各感光体に形成される静電潜像を異なる色のトナーで可視化してトナー画像とし、これら色違いのトナー画像を同一の記録媒体上で重ね合わせてカラーもしくは多色の画像を形成する」ように構成することができる。
【0017】
なお、光走査装置による被走査面の光走査は「シングルビーム方式」でも「マルチビーム方式」でもよい。
【0018】
若干、説明を補足する。
先ず、複数の領域:An(n=1,2・・)による不連続面形状に持たせられる「環境変動による結像面の位置ずれを補正する機能」について簡単に説明する。
説明の具体性のために、位相型光学素子が、光源と光偏向手段との間に配置され、光源からの光束がコリメートされて平行光束として位相型光学素子に入射するものとし、位相型光学素子は光透過性であるとする。
このとき、平行光束は位相型光学素子を透過すると、領域:Anに応じて複数の光束部分に分かれるが、領域間の位相差が「使用波長に対して略2πの整数倍」であるので、これら分割された光束相互は位相が整合し、透過光束は全体として平面波、即ち平行光束の状態を保っている。
【0019】
光源として一般に用いられる半導体レーザや面発光型レーザ等の発光波長は、温度の上昇に伴い「発光波長が長波長側にずれる」という一般的な性質を有している。一方、光走査装置の走査レンズは、偏向された光ビームを被走査面上に集光させるため、正の屈折力を有するのが一般であるが、レンズの熱変形や屈折率変化による影響は、正レンズでは正のパワーが弱くなるように、また負レンズでは負のパワーが弱くなるように現れるのが一般的である。
【0020】
説明の具体性のために、走査レンズが正レンズで、温度上昇にともなって正のパワーが弱まる場合を考えると、上記のように、使用波長において透過光束が平行光束であるような位相型光学素子の場合、温度上昇により波長が大きくなった場合、領域:Anの個々を透過した光束部分の位相が互いにずれることになる。このとき、領域:Anによる不連続面形状を調整することにより、波長が増大した光束が位相型光学素子を透過した後「収束性の光束」となるようにすることができる。
【0021】
このように「収束性の光束」となった光束が「正のパワーの弱まった走査レンズ」に入射すると、走査レンズにおける正のパワーの減少が「光束の収束性」により軽減される。そして、前記不連続面形状を調整することにより、光束の収束性への変化が「走査レンズにおける正のパワーの減少」を相殺するようにできる。環境変動の影響を受けるレンズが負レンズである場合にも、不連続面形状を調整することにより「走査レンズにおける負のパワーの減少」を相殺するようにできる。
【0022】
このようにして、複数の領域:An(n=1,2・・)による不連続面形状に「環境変動による結像面の位置ずれを補正する機能」を与えることができる。上には、走査レンズのパワー変動の補正を説明したが、一般に、光源から被走査面に至る光路上に配置されるレンズのパワー変動に起因する結像面位置の変動を、前記不連続面形状の調整により補正することができる。
一方、構造パターン:Bは「その周辺部との位相差が使用波長に対して2πとは異なるように構造を設定する」ことにより、後述する例のように「光スポットの焦点深度を拡大する機能」を持たせることが可能となる。
【0023】
前記不連続面形状や構造パターン:Bは、入射ビームに対して2次元的な位相分布を付与する。この位相分布は、例えば「ガラスや樹脂等の透明基板上に、屈折率分布や高さの分布を形成する」ことにより実現できるが、通常は素子の作り易さの面から、高さの分布で実現することが多い。なお、以下では、光ビームに所望の位相分布を与えるために不連続面形状や構造パターンBに与える屈折率分布や高さの分布を「位相型光学素子における位相分布」と呼ぶことにする。
【0024】
発明者は「ビームスポット径を大きくすることなく、深度余裕を拡大できる方法」として以下の方法を見出した。
即ち、この方法は、走査レンズの結像面位置で、ビームスポットのビームプロファイルにおけるサイドローブ光(メインローブ光のすぐ外側のサイドローブ光)のピーク強度を「光走査に問題を与えない程度に増大」させることであり、この発明においては、これを実現するために、位相型光学素子における構造パターン:Bとその周辺部との位相分布を「光走査に問題を与えない程度にサイドローブ光のピーク強度を増大する」ように設計するのである。
【0025】
位相型光学素子による位相調整を行うとき、走査レンズの結像面(設計上の被走査面)でのビームスポットの光強度プロファイル(ビームプロファイル)におけるメインローブ光のピーク強度:PMに対するサイドローブ光のピーク強度:PSの比:PS/PMが、位相調整を行わないときの前記結像面位置での光強度プロファイルにおけるメインローブ光のピーク強度:PM1に対するサイドローブ光のピーク強度:PS1の比:PS1/PSに対し、
(1) PS/PM>PS1/PM1
となるように、位相型光学素子における位相分布を設定するのである。
【0026】
さらに、位相型光学素子による位相調整を行う場合における走査レンズの「結像面以外での光軸上位置」の光強度プロファイルにおけるメインローブ光のピーク強度:PM2に対するサイドローブ光のピーク強度:PS2の比をPS2/PM2とし、位相調整を行わないときの前記位置での光強度プロファイルにおけるメインローブ光のピーク強度:PMAに対するサイドローブ光のピーク強度:PSAの比率をPSA/PMAとするとき、
(2) PS2/PM2<PSA/PMA
が満足されるように、位相型光学素子における位相分布を設定するのがよい。
【0027】
あるいは更に、位相調整を行った場合の「結像面位置での走査レンズの光軸上位置の光強度プロファイル」におけるメインローブ光のピーク強度:PM3に対する「結像面以外の位置での光強度プロファイル」におけるメインローブ光のピーク強度:PM4の比率:PM4/PM3が、位相型光学素子による位相調整を行わないときの「結像面位置での光強度プロファイル」におけるメインローブ光のピーク強度:PM5に対する「結像面以外の位置での光強度プロファイル」におけるメインローブ光のピーク強度:PM6の比率:PM6/PM5に対し、
(3) PM4/PM3> PM6/PM5
となるようにするのが良い。
【0028】
一般に、「結像面位置から外れた位置」におけるビームスポットの光強度プロファイルのピーク強度は、結像面位置におけるピーク強度よりも小さい。上記のように、結像面位置から外れた位置におけるピーク強度の減少量が抑制されると、画像形成装置において、経時的に「感光体の設置位置が変動」した場合にも、感光体を露光する光エネルギの減少量を低減でき、露光エネルギ変動に伴う「書き込みドットの大きさの変動」を小さく抑えることができ出力画像の高画質化に貢献できる。
【0029】
上記条件(1)を満足することは、深度余裕拡大を生じさせる必要条件であり、位相型光学素子における位相分布は、条件(1)を満足するように設定される。
【0030】
サイドローブ光のピーク強度の増大量が大きい程「深度余裕の拡大量は増大」するが、サイドローブ光のピーク強度を増大させすぎると、形成される画像を構成するドットのまわりに「トナーのチリ」が発生したり、地汚れが発生したりする現象を誘発する。また、メインローブ光強度の低下量が大きくなりすぎ光走査の高速化に不利になる恐れもある。
【0031】
従って、サイドローブ光のピーク強度はメインローブ光のピーク強度の13.5%以下、好ましくは10%以下に設定するのが良い。
【発明の効果】
【0032】
以上に説明したように、この発明によれば新規な光走査装置及び画像形成装置を実現できる。この発明の光走査装置は、光走査のビームスポット径を小さく保ちつつ深度余裕を拡大し、同時に、環境変化に起因する結像位置の変動を有効に抑制できるので、環境に左右されること無く安定した光走査を実現できる。従って、この発明の光走査装置を用いる画像形成装置は、環境変動に拘わらず安定した画像形成を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1に光走査装置の光学配置の1例を示す。
図1は、光源1から、被走査面11に至る光路を構成する光学系を、1平面内に仮想的に展開して示している。
図1に示すように、光源1から放射された光ビームはカップリングレンズ3により平行光束化され、光学部材12を通過し、シリンドリカルレンズ5により副走査方向(図面に直交する方向)に集束傾向を与えられ、偏向手段であるポリゴンミラー7の偏向反射面近傍に「主走査方向に長い線像」として結像する。ポリゴンミラー7は、この実施の形態例においては偏向反射面を4面もつものである。
【0034】
ポリゴンミラー7の偏向反射面により反射された光ビームは「走査レンズ」を構成するレンズ8、10の作用により被走査面11上にビームスポットとして集光する。レンズ8、10はガラスまたは樹脂で形成することができる。
ポリゴンミラー7が等速回転すると、偏向反射面により反射された光ビームは等角速度的に偏向し、ビームスポットは被走査面11を光走査する。
光学部材12は「アパーチャと位相型光学素子とを極近接させたもの」であり、アパーチャにより光ビームの周辺光束領域を遮光してビーム整形するとともに、位相型光学素子による波面の位相調整を行って深度余裕を拡大し、環境変動の影響を補正する。
【0035】
レンズ8、10により構成される走査レンズは機能的には所謂「fθレンズ」であり、等角速度的に偏向する光ビームのビームスポットの被走査面11上での変位を等速化する機能を有している。
レンズ8、10による走査レンズはまた、ポリゴンミラー7の偏向反射面位置と被走査面11の位置とを「副走査方向に関して共役な関係」としており、副走査方向に関しては前記「主走査方向に長い線像」が走査レンズの物点となるので、ポリゴンミラー7の「面倒れ」が補正されるようになっている。なお、説明中の例では、走査レンズを構成する2枚のレンズ8、10は共に樹脂製である。
【0036】
図1における被走査面11は実体としては「光導電性の感光体の感光面」である。
図1に示した光学配置を持つ光走査装置は、光学部材12における位相型光学素子の部分を除けば、従来から広く知られた構成のものである。図1の構成の光走査装置は、図2に示すように組合せることにより「タンデム式の光走査装置」を構成することができる。 図2は、タンデム式の光走査装置の光学系部分を、副走査方向、即ち、偏向手段であるポリゴンミラー7の回転軸方向から見た状態を示している。図示の簡単のため、ポリゴンミラー7から光走査位置である各被走査面に至る光路上における光路屈曲用のミラーの図示を省略し、光路が平面上にあるように描いた。
【0037】
この光走査装置では、4つの被走査面11Y、11M、11C、11Kをそれぞれ光ビームで光走査する。4つの被走査面11Y、11M、11C、11Kの実体は「光導電性の感光体ドラムの感光面」であり、これら4個の感光体ドラムに形成される静電潜像をマゼンタ、イエロー、シアン、黒のトナーで個別に可視化し、得られる4色のトナー画像を重ね合わせてカラー画像を形成する。従って、以下において被走査面と、その実体をなす感光体ドラムには共通の符号を付する。
【0038】
図2において、符号1Y、1M、1C、1Kは「光源」を示す。光源1Y、1Mは、図面に直交する方向である副走査方向に重なりあうように配置されている。光源1Mの発光源は「マゼンタ画像に対応する画像信号」により強度変調され、光源1Yの発光源は「イエロー画像に対応する画像信号」により強度変調される。
【0039】
同様に、光源1C、1Kも副走査方向に重なりあうように配置され、光源1Cの発光源は「シアン画像に対応する画像信号」により強度変調され、光源1Kの発光源は「黒画像に対応する画像信号」により強度変調される。
【0040】
光源1Y、1Mの個々から放射された光束は、カップリングレンズ3Y、3M(副走査方向に重ねて配置され、各光源からの光束を入射される。)により平行光束化され、光学部材12Y、12M(副走査方向に重なりあうように配置され、各光ビームの周辺光束領域の遮光(ビーム整形)と、深度余裕拡大のための位相調整を行う。)を通過したのち、副走査方向に配列されたシリンダレンズ5Y、5M(副走査方向に重なり合うように配置されている。)により、それぞれ副走査方向へ集光されてポリゴンミラー7に入射する。
【0041】
シリンダレンズ5Y、5Mによる複数の「主走査方向に長い線像」はポリゴンミラー7の偏向反射面近傍に結像し、偏向される光ビームは、それぞれレンズ8Y、8M、10Y、10Mを透過し、これらレンズの作用により被走査面11Y、11Mにビームスポットを形成し、これら被走査面を光走査する。
【0042】
同様に、マルチビーム光源1C、1Kから放射された光束は、カップリングレンズ3C、3Kにより平行光束化され、光学部材12C、12Kを通過したのち、副走査方向に配列されたシリンダレンズ5C、5Kによりそれぞれ、副走査方向へ集光され、ポリゴンミラー7に入射して偏向され、それぞれレンズ8C、8K、10C、10Kを透過し、これらレンズの作用により被走査面11C、11Kにビームスポットを形成し、これら被走査面を光走査する。レンズ8Yとレンズ10Y、レンズ8Mとレンズ10M、レンズ8Cとレンズ10C、レンズ8Kとレンズ10Kはそれぞれ走査レンズを構成する。
【0043】
図3は、図2に示す光走査装置を用いた画像形成装置の構成を示す図である。図3において符号20で示す部分が、図2に即して説明した「光走査装置」の部分である。
ポリゴンミラー7は偏向反射面を4面有し、図3に示すように「2段構成」となっており、上段で偏向される光束のうち一方は、光路折り曲げミラーmM1、mM2、mM3により屈曲された光路により感光体ドラム11Mに導光され、他方の光ビームは、光路折り曲げミラーmC1、mC2、mC3により屈曲された光路により感光体ドラム11Cに導光される。
【0044】
また、ポリゴンミラー7の下段側で偏向される光束のうち一方は、光路折り曲げミラーmYにより屈曲された光路により感光体ドラム11Yに導光され、他方の光ビームは、光路折り曲げミラーmKにより屈曲された光路により感光体ドラム11Kに導光される。
【0045】
従って、前記4個の光源1Y、1M、1C、1Kからの光束により、4個の感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kが光走査される。感光体ドラム11Y〜11Kは何れも時計回りに等速回転され、帯電手段をなす帯電ローラTY、TM、TC、TKにより均一帯電され、それぞれ対応する光走査を受けてイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色画像を書込まれ対応する静電潜像(ネガ潜像)を形成される。
【0046】
これら静電潜像はそれぞれ現像装置GY、GM、GC、GKにより反転現像され、感光体ドラム11Y、11M、11C、11K上にそれぞれイエロートナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、黒トナー画像が形成される。
【0047】
これら各色トナー画像は、図示されない「転写シート」上に転写される。即ち、転写シートは搬送ベルト17により搬送され、転写器15Yにより感光体ドラム11Y上からイエロートナー画像を転写され、転写器15M、15C、15Kによりそれぞれ、感光体ドラム11M、11C、11Kから、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、黒トナー画像を順次に転写される。
【0048】
このようにして転写シート上においてイエロートナー画像〜黒トナー画像が重ね合わせられてカラー画像を合成的に構成する。このカラー画像が定着装置19により転写シート上に定着される。なお、各感光体ドラム上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト上において重ね合わせてカラー画像となし、このカラー画像を転写シート上に転写・定着しても良い。
【0049】
図3において、ポリゴンミラー7の右側に偏向される光ビームが入射するレンズ8Y、8Mは、図においては分離して描いてあるが、これらは互いに2段に重ねて一体化してもよい。図3において、ポリゴンミラー7の左側に偏向される光ビームが入射するレンズ8C、8Kについても同様である。
【0050】
上に説明した実施の形態では、図1に即して説明したように、光学部材12は「アパーチャと位相型光学素子とを極近接して配置したもの」である。
後述のように、アパーチャは、ビームスポット径の変動を有効に抑制するために用いられてビーム整形を行うが、アパーチャを設けると、アパーチャでの回折の影響で、ビームスポットのビームプロファイルが「メインローブ光の周りにサイドローブ光を伴ったプロファイル」となる。
一方、位相型光学素子を用いると「位相型光学素子においても回折が生じる」ため、光ビームの結像面におけるビームスポットのビームプロファイルは「アパーチャによる回折と位相型光学素子における回折が複合したものとして形成」される。従って、位相型光学素子の位相分布を変化させることにより、ビームスポットのビームプロファイルを変化させることができ、このことを利用して「ビームスポット径の増大を抑えつつ、深度余裕の狭小化を軽減もしくは防止する」ことができる。
【0051】
図4(a)〜(d)に、位相型光学素子の構造パターン:Bの具体例を4例示す。
【0052】
図4の例において位相型光学素子における構造パターン:B(色の濃い部分)の位相分布は、図4(a)に例示するように「高さ:hの分布」であり、高さ:hは、使用波長:λに対して「2π(rad)以外の位相」になるように設定される。図示の例の如く「0、hの2段階の高さ」のみを用いる分布のときは「π(rad)近傍」になるように高さ:hを設定するのがよい。
高さ:h、使用波長:λ、材料の屈折率:nに対し、位相:θ(rad)は
θ=2π(n−1)h/λ
で表される。
【0053】
図4の例では、2段階の高さ分布による位相分布を示したが、多段階や連続値とすることにより設計の余裕度が広がる利点がある。また、結像面でのビームプロファイルは「主走査・副走査方向のそれぞれに対して対称な形状」が好ましいため、位相型光学素子における構造パターン:Bの位相分布は、図4(a)〜(d)に示すように「素子の中心を通り、主走査・副走査のそれぞれの方向に対して「線対称な高さ分布」にするのがよい。
【0054】
図4の(a)、(b)に示す構造パターン:Bはピクセル構造で「2次元的に自由な位相分布」を設定した例であり、(a)は「主走査方向と副走査方向とが異なる対称性」を有するもの、(b)は「主走査方向と副走査方向とが同じ対象性」を有するものである。
【0055】
図4の(c)は楕円状リング構造、(d)は「楕円形状(もしくは円形状)の一部を組合せた構造」であり、何れも位相型光学素子における構造パターン:Bの位相分布に適する。勿論、構造パターン:Bのパターンは図4のものに限定されるものではない。
【0056】
図1〜図3に示した光走査装置に用いる場合、走査レンズは主走査方向と副走査方向で倍率が異なるため、図4の(a)、(c)、(d)のように「90度回転に対する対称性を持たないパターン」が良い。位相型光学素子における構造パターン:Bの位相分布のパターンとしては、図4(a)の例のように、2次元的に自由なパターンで、主走査方向と副走査方向のそれぞれに対して線対称な高さ分布を設定し、且つ、90度回転に対する対称性を持たないように設定するのが好適である。
【0057】
以下に「位相型光学素子における構造パターン:Bによる位相調整」による深度余裕の拡大を説明する。
前記事項を満たすように位相型光学素子の構造パターン:Bを設計したときのシミュレーション結果を以下で示す。以下、深度余裕を拡大できる位相型光学素子を「深度拡大素子」とも呼ぶ。
【0058】
シミュレーションに用いた光学系は図5に示す如くである。
図5において、符号121はアパーチャ、符号122は位相型光学素子、符号Lはレンズ、符号ISは結像面を示している。
入射ビームは「均一強度の平面波」とし、アパーチャ121で所望のビーム断面形状に整形し、アパーチャ121に密接(距離:0)して設けられた位相型光学素子122により所望の位相分布を光ビームに付与し、焦点距離:fの理想レンズ(無収差レンズ)により結像面IS位置に結像させる。アパーチャ121および位相型光学素子122は、レンズLの前側焦点位置に設置されている。シミュレーションの各種パラメータは以下のとおりである。
【0059】
アパーチャ:直径:930μmの円形状
レンズ焦点距離:f=50mm
使用波長:632.8nm
入射ビームは「均一強度の平面波」としているが、光走査装置に光源として用いられる半導体レーザ等の強度分布はガウス分布である。しかし、以下の説明は、入射ビームがガウスビームであるときにも成り立つ。これは、構造パターン:Bによる深度余裕の拡大が「位相分布のみを制御して、結像面上におけるビームプロファイルをコントロールしている」ことによる。
【0060】
上記のアパーチャ121、位相型光学素子122、レンズLは、例えば、図1の光学配置において、光学部材12と、シリンドリカルレンズ5、走査レンズ8、10を簡単化したモデルであり、実際の光走査装置における光学系構成とは異なるが、実際の光走査装置においても、以下に示すのと定性的に同等の効果が得られる。
【0061】
「深度拡大素子を設けないとき」
まず、図5のモデルにおいて深度拡大素子122を設けないときの「結像面位置におけるビームプロファイル」のシミュレーション結果を図6(a)に示す。ピーク強度を1に規格化している。このときのサイドローブ光のピーク強度は0.016(ピーク強度の1.6%)である。
【0062】
図6(b)は「ビームスポット径(単位:μm)を縦軸、デフォーカス(レンズの結像位置からのずれ、単位:mm)を横軸とする深度曲線」であり、ビームスポット径はピーク強度に対して「1/e」となる強度の部分の大きさである。深度余裕として「ビームスポット径の増大量を最小ビームスポット径の105%まで許容する」ものとすれば、図6の場合の深度余裕は8.9mmとなる。
【0063】
「深度拡大素子を設けたとき」
以下、5種類の深度拡大素子(5種類の構造パターン:B)を用いたときのシミュレーション結果を図7〜図11に示す。図7〜図11に共通して、(a)は「深度拡大素子における構造パターン:Bの位相分布」を示し、(b)は「結像面位置におけるビームプロファイル」、(c)はビームスポット径を縦軸、デフォーカスを横軸とする「深度曲線」を示す。「ビームプロファイル」は全て「ピーク強度を1に規格化」している。
【0064】
図7〜図11における(a)において構造パターン:Bは「色の濃い部分」であり、構造パターン:Bに対して地の部分となる「薄色部分」と構造パターン:Bとの位相差を「π(薄色部分:0、濃い色の部分:π)」に設定している。
【0065】
図7〜図11の(a)に示す「深度拡大素子」を順次、深度拡大素子1〜5と呼ぶ。図7〜図11の(a)に示す深度拡大素子は何れも、構造パターン:Bの位相分布が「中空の円形状」で、それぞれ図示の外径・内径を有し、円形状の位相分布の中心を「アパーチャの中心」に一致させている。
【0066】
図7〜図11の(b)に示すように、深度拡大素子1〜5を用いても高次サイドローブ光のピークが低く(図7〜図11の(b)のグラフの外側においても強い強度の高次光は発生していない。)、高い強度のメインローブ光が得られている。また、深度拡大素子を用いない場合のビームプロファイルを示す図6(a)との対比から明らかなように、深度拡大素子1〜5が用いられることにより、ビームプロファイルに於けるメインローブ光に隣接するサイドローブ光のピーク値が増大している。
【0067】
また、深度拡大素子1〜5を用いることにより、図7〜図11の(c)に示す「深度曲線」から明らかなように、デフォーカスに対するビームスポット径の変化が小さくなり、深度余裕が増大している。
【0068】
「深度拡大機能のない構造パターンの位相型光学素子を用いた場合」
図12に示す構造パターンは深度拡大素子1〜5と同様、位相分布が「中空の円形状で位相差:π」であり、図示の外径・内径を有し、円形状の位相分布の中心を「アパーチャの中心」に一致させている。
しかし、この場合に得られるビームプロファイルは図12(b)に示すように、メインローブ光に隣接するサイドローブ光のピーク値が小さく、同図(c)からも明らかなように、深度拡大を行う機能を持たない。
【0069】
図13に、上に説明した各場合のサイドローブ光のピーク強度、深度余裕、ビームスポット径を一覧表として示す。
【0070】
「ビームプロファイル」は、全てピーク強度を1に規格化しており、深度余裕は「最小ビームスポット径の105%までビームスポット径の増大が許容される」ものとして算出した。図13において「深度拡大素子なし」は図6に示した場合であり、「本発明でない深度拡大素子」は、図12に示した「深度拡大機能のない構造パターンの位相型光学素子」である。
【0071】
「サイドローブ光のピーク強度を増大させるような位相型光学素子(深度拡大素子1〜5)を設けることにより、深度余裕が拡大し、サイドローブ光のピーク強度が強いものの方が、深度余裕の拡大率が大きい」ことが理解される。
【0072】
「深度拡大機能のない構造パターンの位相型光学素子」を用いた場合には、図13から、逆に深度余裕が減少しているのがわかる。
【0073】
上記のように、構造パターン:Bを持つ深度拡大素子用いると、レンズ焦点位置近傍でのビームスポット径の深度余裕が拡大するため、リレー光学系等のレンズの追加等を招くことがなく、レイアウト上、非常に有利である。更に「高い光利用効率」を実現できる。
【0074】
図14には、「深度拡大素子を用いない」ときと深度拡大素子1〜5を用いたときのそれぞれについて、横軸にデフォーカス(mm)、縦軸にサイドローブ光のピーク強度(メインローブ光のピーク強度を1に規格化したとき)を取って両者の関係を示す。図12の構造パターンを用いたときには、焦点位置以外におけるビームプロファイルの劣化が激しく、サイドローブ光とメインローブ光が重なりあい、サイドローブ光のピーク強度とメインローブ光を区別できないため図示されていない。
【0075】
図14を参照すると、焦点位置(結像面位置、デフォーカス:0mm)においては、深度拡大素子を用いないときのサイドローブ光のピーク強度が最も小さいが、デフォーカス:5〜6mmよりも大きなデフォーカス領域では、深度拡大素子を用いた方がサイドローブ光のピーク強度が小さくなっている。
【0076】
上には構造パターン:Bの位相分布として「中空の円形状(リング状)」のものを示したが、これに限定されるものではなく、前述のように「メインローブ光のすぐ外側のサイドローブ光のピーク強度を増大させる」ように設計された位相分布を持つ構造パターン:Bを用いることができ、例えば、図4のような位相分布の設定が可能である。
【0077】
上には、図5に示す簡単な光学系で説明したが、上記のことは、実際の光走査装置に適用可能である。このことを以下で説明する。
一般の光走査装置において、カップリングレンズを透過した光束は略平行光となってアパーチャに入射する。アパーチャを透過した光束は、シリンドリカルレンズと走査レンズとを透過して被走査面に到達する。上記シリンドリカルレンズと走査レンズとは、擬似的に1枚のレンズと見なせる。ただし、主走査方向と副走査方向のパワーは異なり、一般に副走査方向のパワーが強い。従って、擬似的に1枚と見なしたレンズはアナモフィックレンズである。
【0078】
また、アパーチャの開口部は一般に主走査方向の幅の広い形状(長方形形状もしくは楕円形状が多い)である。従って、図5に示したシミュレーション用のレンズをアナモフィックレンズと考えれば、一般の光走査装置に対応する。なお、焦点距離は光走査装置によって異なるが、上記の深度拡大は、焦点距離に依存しない。
【0079】
以上は、構造パターン:Bによる「焦点深度拡大機能」の説明である。以下には、複数の領域:An(n=1,2・・)による不連続面形状による「環境変動による結像面の位置ずれ補正」の機能を説明する。
【0080】
「環境変動による結像面の位置ずれ補正」を行う機能を持ったレンズとして、回折レンズが知られている。図15は、従来から知られた回折レンズの構造の例(上の図は光軸方向から見た図、下の各図は断面図)を示している。
【0081】
図15(a)は、通常のレンズの形状を輪帯群に分割し、各輪帯の高さが「h」になるように折り返した構造である。
図15(b)は、(a)の輪帯の斜面部を円錐面で近似した形状(鋸波状断面)のものである。
【0082】
図15(c)は、(a)の輪帯を「階段状の断面を持つ形状で近似したもの」である。
【0083】
これらの例における個々の輪帯部分が、複数の領域:An(n=1,2・・)の個々の領域であり、輪帯群は全体として「不連続面形状」をなしている。そして、この不連続面形状が「環境変動による結像面の位置ずれを補正する機能」を有するように設定されるのである。
【0084】
図15(a)〜(c)における不連続面形状は「使用波長(設計波長)」においてパワーを有し、入射したビームを集光(もしくは発散)させる。
図16に示す例は「使用波長においてパワーを持たない回折レンズ」である。複数の領域:Anを構成する各輪帯は、光軸に対して垂直な平面となっている。
【0085】
図15、図16に示す高さ「h」は、使用波長に対して「2πの整数倍」の位相差となるように設定される。
【0086】
光走査装置内の温度が上昇した場合を考えると、光源として半導体レーザが用いられている場合、光源の発光波長は一般に長波長側にずれるが、回折レンズのパワーは波長に比例して大きくなる。
温度上昇時には、屈折作用を持つレンズ(特に樹脂製レンズ)は膨張し、レンズ面の曲率が減少しレンズパワーは弱くなる。従って1つの光学系内に、回折レンズと屈折レンズの両方を設けると、温度変化時におけるパワー変化を、回折レンズと屈折レンズで相殺でき、温度変化によるパワー変化を抑制できる。即ち、回折レンズにおける回折面のパワー変化は「温度変化によるレンズの膨張・収縮によるパワー変化の方向」と逆であり、温度変化時の結像面位置の変化を抑制できる。
【0087】
図17に、回折レンズのレンズ面の不連続面形状(複数の領域:Anによる不連続面形状)を3種示す。(a)では複数の領域は「同心円状」に分割された輪帯群、(b)では複数の領域は「同心楕円状」に分割された輪帯群であり、(c)では複数の領域は直線状の分割ラインで分割された短冊状の領域群である。(b)、(c)の不連続面形状によれば「アナモフィックな回折パワー」を実現できる。
【0088】
光走査装置では一般に、主走査方向と副走査方向で光学系の倍率が異なるため、回折レンズによる、温度変化時の結像面位置の変化量が、主走査方向と副走査方向とで異なるように設定するのが好ましい。このためには、図17(b)に示すような楕円状の輪帯を持つ回折レンズ面を1面用いるか、もしくは、図17(a)に示すような同心円状の輪帯を持つ回折レンズ面と、図17(c)に示すような直線状の分割ラインで分割された回折レンズ面を組合せて用いるのが良い。
【0089】
なお、光走査装置では一般に、副走査方向の倍率が高く、主走査方向の倍率は比較的小さいので、温度変化時の結像面位置変化については特に副走査方向の変化が問題になる。
【0090】
従って、図17(a)に示すような同心円状の輪帯を持つ回折レンズ面1面か、図17(c)に示すような回折レンズ面1面でも効果はある。
【0091】
上には、温度変化にともない回折面のパワーを変化させる原理を説明したが、これは回折面で球面波(発散、もしくは収束)を発生させていることに相当する。これを応用すると、温度変化時に任意の波面を発生させることができ、例えば温度変化時に発生する様々な収差を打ち消すような波面を発生させることもできる。これは、領域:Anの分割の仕方や、領域:Anの幅や大きさを変えることで実現できる。
【0092】
上には、構造パターン:Bによる「深度余裕を拡大する機能」と、複数の領域:Anによる不連続面形状による「環境変動の影響の補正機能」を個別的に説明した。これらの2つの機能は、独立した光学現象を利用するものであるので、これらを組合せることにより、2つの機能を同時に機能させることができる。
【0093】
即ち、この発明においては請求項1記載のように、同一の位相型光学素子の「1つの光学面」を、複数の領域:An(n=1,2・・)に分割して光学面を不連続面形状とし、この不連続面形状における不連続部分における領域間の位相差を、使用波長に対して略2πの整数倍となるように設定するとともに、前記光学面に領域:An(n=1,2・・)と形状が異なる構造パターン:Bを設け、この構造パターン:Bとその周辺部との位相差が、使用波長に対して2πとは異なるように構造パターン:Bの構造を設定し、複数の領域:Anによる不連続面形状に「環境変動による結像面の位置ずれを補正する機能」を持たせ、構造パターン:Bに「光スポットの焦点深度を拡大する機能(深度余裕を拡大する機能)」を持たせるのである。
【0094】
図18に、位相型光学素子の同一の光学面に「回折レンズ構造(不連続面形状)と深度拡大構造(構造パターン:B)を集積化」した例を2例示す。回折レンズ構造と深度拡大構造を同一面に集積することは、回折レンズ構造を基準にして「深度拡大構造の部分を高くするかもしくは低くする」ことで実現できる。
【0095】
図18(a)、(b)において、斜線でハッチを施したパターン(符号BPで示す。)が深度拡大構造に対応する構造パターン:Bの部分であり、その高さを、回折レンズ構造の領域面An(n=1、2、・・)に対して「hだけ低く」している。
【0096】
図に示す「h」と「h」とは異ならせる必要があり、hは「使用波長に対して位相差:πを与える大きさ」であることが好ましく、このような位相差により深度拡大効果を効率よく発生させることができる。図18(a)、(b)において、回折レンズ構造(領域:Anの個々に対応する輪帯)はどちらも「楕円形状」としている。
【0097】
図18(a)は、深度拡大構造である構造パターン:Bを「2次元状の自由なパターンBP」とした場合、図18(b)は、深度拡大構造である構造パターン:Bを「幅が均一でない楕円リング状パターンBP」で構成した場合である。前述の如く、深度拡大構造は「主走査方向および副走査方向において線対称性を有し、且つ90゜回転対称性を持たない構造パターン:B」とするのが良い。
【0098】
勿論、回折レンズ構造(不連続面形状)や深度拡大構造(構造パターン:B)は図18の例に限定されるものではなく、回折レンズ構造は、図17に示した同心円状や同心楕円状、あるいは直線状とすることもでき、深度拡大構造は、図4に示したような様々な構造や、上に図7〜図11に即して説明した中空円形状(リング状)とすることもできる。
【0099】
深度拡大構造(不連続面形状)は、図4(a)や図18(a)の例のように「2次元状の任意のパターン」とするのが性能上最も好ましいが、型の作成が難しくなり、また、微細構造が多く存在するため型の耐久性が低下する恐れがある。製造上の安定性を考慮すると、深度拡大構造としては、図4の(c)、(d)や図18の(b)に示すような「楕円リング形状、あるいは楕円リング形状を一部に含むパターン」にするのが良い。
【0100】
また、楕円リング形状を用いて、深度拡大機能を効果的に発生させるには、楕円リング形状の幅を一定とせず、副走査方向の幅よりも主走査方向の幅の方を太くする(例えば、図18(b)のようなパターン)のがよい。
【0101】
この発明の光走査装置は、請求項1に記載されたように「光源からの光束の一部のみを通過させるアパーチャ」を構成要件としている。
【0102】
光走査装置における光源としては、端面発光レーザや面発光レーザ等の半導体レーザが一般的に用いられているが、これらは個体間に「発散角のばらつき」があるため、そのまま光走査装置の光源として用いると、光走査装置間で「感光体上のビームスポット径」に大きなばらつきが発生してしまう。アパーチャの機能は「走査レンズへ入射するビームの幅を一定にし、半導体レーザに個体間での発散角ばらつきに拘わらず、結像面位置(感光体表面)におけるビームスポット径の変化を安定化する」ことにある。
【0103】
光走査装置では一般に、副走査方向において「面倒れ補正」を行うために、主走査方向と副走査方向とで倍率を異ならせており、感光体上におけるビームスポット径も主走査方向と副走査方向とで異なる。走査レンズは、主走査方向と副走査方向で面形状が異なるアナモフィック光学系となり、アパーチャは一般的には「主走査方向に長い形状」となる。
【0104】
請求項1記載のように、深度拡大機能を持つ構造パターン:Bと不連続面形状(回折レンズ面形状)を組合せて用いることにより、深度余裕の拡大と環境変化時の像面位置ずれ抑制効果を同時に得ることができ、感光体上でのビームスポット径を安定化できる。
【0105】
前述の如く、不連続面形状による「環境変動による結像面位置変動を補正する機能」と、構造パターン:Bによる深度余裕拡大機能とは独立した光学原理を利用するものであるから、これらを光学系内に別個に設けることも可能であり、例えば「位相型光学素子の一方の面に回折レンズ面(複数の領域:Anによる不連続面)、他方の面を構造パターン:Bを有する面」としてもよい。
しかしこの場合、回折レンズ面と構造パターン:Bとを高精度に位置合わせする必要が生じ、素子製造上の難易度が増大して素子のコストが高くなるか、あるいはコストの低減を優先して位置合わせの制度を犠牲にすると素子品質の劣化につながる。また、位相型光学素子を「金型を用いて樹脂により作製」することを考えると、複雑な面形状の金型は作製が難しく、寿命も短いため、成形面を多くするのは品質劣化を招きやすく、好ましくない。
【0106】
さらに、位相型光学素子には「通常の屈折面」も付与した方が、部品点数削減による低コスト化および光利用効率向上を実現できるが、前述の不連続面と構造パターン:Bを有する面とを片面ずつに振り分けた光学素子に屈折面の機能も付与しようとすると、不連続面形状もしくは構造パターン:Bを有する面の一方に、さらに屈折面を集積化する必要があり、素子製造の難易度がさらに増大してしまう。
【0107】
従って、請求項1に記載のように、位相型光学素子の1つの光学面に複数の領域:Anによる不連続面と構造パターン:Bとを設けるのが好ましく、このようにすることで、部品点数を最小限に抑えることができ、低コスト化および高い光利用効率を実現できるほか、回折面の数を減らすことができて素子作製の難易度を低減でき、金型を用いて素子を作製する場合は金型の寿命も増大させることができ製造上の品質を安定化できる。
【0108】
光学素子の1つの面に不連続面形状と構造パターン:Bを設けるとき、不連続面形状の輪帯構造と、構造パターン:Bの構造が「相似な関係」となるようにすると、金型の作製は容易となるが、輪帯形状は「主走査方向と副走査方向の倍率」によって決まるのに対し、構造パターン:Bの位相分布の形状はアパーチャの形状に大きく影響を受けるため「両者の構造を相似の関係にする」のは難しい。結像面位置変化の抑制と深度余裕の拡大を両立させるためには、不連続面形状と構造パターン:Bの形状を異ならせるのがよい。
【0109】
位相型光学素子は「光源と偏向手段の間」に設けるのがよく、例えば、カップリングレンズとシリンドリカルレンズの間に設けることができる。パワーのある不連続面形状を用いれば、カップリングレンズやシリンドリカルレンズの代用とすることが可能となる。
【0110】
位相型光学素子の不連続面・構造パターン:Bを設けた面の反対側の面に屈折レンズ面を設けることにより屈折レンズ面を「カップリングレンズやシリンドリカルレンズ」の代わりに用いることができ部品点数を削減できる。
【0111】
カップリングレンズの代わりに用いるときは、屈折レンズ面を回転対称非球面とするのが良く、不連続面形状は同心円状の輪帯で形成するのが良い。シリンドリカルレンズに、図17(c)に示したような直線状の分割ラインで分割された不連続面を設けることにより、光走査装置内の温度が変化しても主走査方向と副走査方向の像面位置変化を抑制できる。
【0112】
シリンドリカルレンズの代わりに用いるときは、屈折レンズ面を「副走査方向にのみ曲率を持つ球面もしくは非球面」とするのが良く、不連続面形状は、図17(c)に示したような直線状の分割ラインで分割された形状とするのが良い。さらに、カップリングレンズに同心円状の輪帯による不連続面形状を設けてもよい。また、シリンドリカルレンズの不連続面形状を同心楕円状の輪帯で形成すると、カップリングレンズには不連続面形状がなくても同等の機能を実現できる。
【0113】
この発明の光走査装置は前述したように「シングルビーム走査方式」とすることも「マルチビーム走査方式」とすることもできるが、マルチビーム走査方式とする場合に、光源をマルチビーム光源とするときは、カップリングレンズの位置では複数ビーム間での「素子への入射位置の差」は小さいが、シリンドリカルレンズの位置では複数ビーム間において「入射位置の差」が経時変化も含めて大きくなる傾向にある。従って、位相型光学素子は、シリンドリカルレンズの代用とするよりも「カップリングレンズの代用とする」方が複数ビーム間で「性能(像面位置変動の抑制効果、深度余裕拡大効果)の差」が出にくいためより好ましい。
【0114】
不連続面形状と構造パターン:Bとを同じ光学面に設けた位相型光学素子の製造方法として、不連続面形状は「バイトを用いた切削加工」で作製し、構造パターン:Bはドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチングにより作製するのがよい。このような方法により、まず型を作製し、その後、インプリントや射出成型等により、位相型光学素子を樹脂により作製するのが良い。具体的には、例えば、以下のようにするのが良い。
【0115】
(1)バイトもしくは型を回転(同心円回転もしくは楕円回転)させ、不連続面形状をなす輪帯構造を切削加工する。
(2)レジストを塗布する。
(3)電子ビームや光ビームにより構造パターン:Bの位相分布形状を描画するか、もしくはマスクを用いて構造パターン:Bの位相分布形状を露光し、現像する。
(4)(必要に応じて)クロム等のエッチングレートの遅い材料を蒸着してリフトオフする。
(5)ドライエッチングを行う。
【0116】
全てを切削加工で行おうとすると、構造パターン:Bが不連続面形状の複数に輪帯にまたがるため、加工が非常に難しい。
また、パワーがない不連続面形状の段数(領域:Anの数)は数10段と非常に多く、エッチングにより作製しようとすると、マスク露光や電子・光ビーム露光の際の位置あわせ誤差の影響が出やすく、高い回折効率を得るのが難しくなる。パワーがある不連続面形状の場合も、高い回折効率を得ようとすると8〜16段の構造が必要であり、構造パターン:Bと合わせて4〜5枚のマスクが必要となり、位置合わせ誤差の影響により「高い回折効率を得る」のは困難となる。
【0117】
従って、切削加工とエッチングを併用することで高精度に型を作製することができ、波面収差の発生を小さく抑え、且つ高い回折効率を有する位相型光学素子を作製することができる。このように型を用いて樹脂またはガラスで位相型光学素子を作製することにより位相型光学素子を低コストで実現できる。
【0118】
上記のように、不連続面形状の加工を切削加工で行うときは、パワーを持たないタイプの方が加工し易く、高精度な加工を実現でき、高精度且つ高回折効率で安定した位相型光学素子の作製が可能となる。なお、上記の切削加工の代わりに、研削加工とすることもできる。
【0119】
さらに、構造パターン:Bを加工する際「高さ方向に平坦でない面」を加工しようとすると加工面に「うねり」が発生して、ビームスポット径を増大させる虞がある。従って、全てを平坦な面を加工することで(加工する領域中に段差はあってもよい)、高精度な加工を実現でき波面収差の発生を小さく抑えることができる。
【0120】
この発明では深度余裕の拡大を「走査レンズの結像面位置近傍において、サイドローブ光のピーク強度を増大」させることにより行っている。
サイドローブ光はノイズ光でもあるため、その「発生させ方」を適切に設計しなければ出力画像に悪影響を及ぼす可能性がある。「矩形状の開口部」を持つアパーチャを設けた場合のサイドローブ光は、主走査方向と副走査方向に局在して発生し、出力画像に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0121】
この点を考慮すると、アパーチャにおける開口部の形状は、図19に示すように「矩形形状に対して4隅を面取りした形状」、即ち、光束断面における4隅を遮光する開口形状にするのがよい。このような開口形状とすることにより「サイドローブ光が、主走査方向と副走査方向に局在する」ことを避け、メインローブ光の周りを取り囲むように発生させることができ、出力画像への悪影響を回避できる。
【0122】
図19(a)は「4隅が直線形状で面取り」された開口径状、図19(b)は「4隅が楕円弧で面取り」された開口径状、図19(c)は「楕円状の開口径状」を示し、これらは何れも請求項7の発明の実施の形態例である。また、面取りする4隅の面積の総和は、矩形開口の面積の10%以上であることが望ましい。
【0123】
位相型光学素子とアパーチャとを離して設置すると、設置時のばらつきや経時変化により、構造パターン:Bとアパーチャ開口部の中心位置ずれが発生し、感光体上のビームプロファイルを劣化させ、ビームスポット径を増大させる恐れがある。これを避けるには、位相型光学素子とアパーチャ部材は「密着もしくは極近接」させるか、または一体化するのがよい。最も好ましいのは「位相型光学素子とアパーチャを一体化する」ことであり、位相型光学素子の不連続面形状・構造パターン:Bが形成された面もしくは反対側の面の周辺に遮光領域を形成するのがよい。
【0124】
さらに、光源をマルチビーム光源とするとき、例えば、カップリングレンズを位相型光学素子とした場合、位相型光学素子の後に離間させてアパーチャ部材を設置すると、構造パターン:Bとアパーチャ開口部の中心位置ずれが発生しやすくなる。
【0125】
図20はこの様子を示す。屈折面と不連続面形状・構造パターン:B(図中の「回折構造面」)を有するカップリングレンズCPを透過した複数の光束は平行光束化されるとともに相互に角度を持って伝搬する。光束相互がなす角は光束間で異なる。ある角度を持ってアパーチャAPに入射するビームは、ビームから見て「位相型光学素子の不連続面形状の中心とアパーチャの中心」を全てのビームについて一致させることはできず、アパーチャAPが位相型光学素子から離れれば離れるほど中心ずれは大きくなる。従って、光源をマルチビーム光源とするときは、位相型光学素子とアパーチャAPを密着もしくは極近接させるかもしくは一体化するのがよいのである。
【0126】
なお、マルチビーム光源としては、例えば、端面発光レーザが1次元状に配列されたレーザダイオードアレイや、面発光レーザが2次元的に配列された面発光レーザアレイを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】光走査装置の光学配置の1例を説明するための図である。
【図2】タンデム式の光走査装置の光学配置の1例を説明するための図である。
【図3】画像形成装置の1例を説明するための図である。
【図4】位相型光学素子の構造パターン:Bの具体例を4例示す図である。
【図5】深度余裕の拡大のシミュレーションに用いた光学系を説明するための図である。
【図6】位相型光学素子による位相調整を行わないときのビームプロファイルと深度曲線を示す図である。
【図7】構造パターン:Bの1例を説明するための図である。
【図8】構造パターン:Bの1例を説明するための図である。
【図9】構造パターン:Bの1例を説明するための図である。
【図10】構造パターン:Bの1例を説明するための図である。
【図11】構造パターン:Bの1例を説明するための図である。
【図12】深度余裕を拡大する機能を持たない位相形状の1例を示す図である。
【図13】サイドローブ光のピーク強度、深度余裕、ビームスポット径の表である。
【図14】深度拡大素子を用いないときと深度拡大素子1〜5を用いたときのそれぞれについて、デフォーカスとサイドローブ光のピーク強度の関係を示す図である。
【図15】従来から知られた回折レンズの構造の1例を示す図である。
【図16】基準波長においてパワーを持たない回折レンズの例を示す図である。
【図17】回折レンズのレンズ面の不連続面形状を3種示す図である。
【図18】位相型光学素子の同一の光学面に不連続面形状と構造パターン:Bを集積化した例を2例示す図である。
【図19】アパーチャの開口形状の例を示す図である。
【図20】請求項8記載の発明の特徴部分を説明するための図である。
【符号の説明】
【0128】
1 光源
3 カップリングレンズ
12 光学素子(アパーチャと位相型光学素子)
5 シリンドリカルレンズ
7 偏向手段
8、10 走査レンズを構成するレンズ
11 被走査面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、この光源からの光束の一部のみを通過させるアパーチャと、位相型光学素子と、前記光束を偏向し走査する偏向手段と、この偏向手段により走査された走査ビームを被走査面に結像する走査レンズとを有する光走査装置において、
位相型光学素子の1つの光学面を複数の領域:An(n=1,2・・)に分割して光学面を不連続面形状とし、この不連続面形状における不連続部分における領域間の位相差を、使用波長に対して略2πの整数倍となるように設定するとともに、前記光学面に前記領域:An(n=1,2・・)と形状が異なる構造パターン:Bを設け、この構造パターン:Bとその周辺部との位相差が、使用波長に対して2πとは異なるように前記構造パターン:Bの構造を設定し、
前記複数の領域:An(n=1,2・・)による不連続面形状に、環境変動による結像面の位置ずれを補正する機能を持たせ、前記構造パターン:Bに、光スポットの焦点深度を拡大する機能を持たせたことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1記載の光走査装置において、
位相型光学素子の複数の領域:An(n=1,2・・)による不連続面形状が、使用波長の光束を収束または発散させる機能を持たないことを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の光走査装置において、
位相型光学素子の不連続面形状における複数の領域:An(n=1,2・・)の不連続部分が直線状もしくは円形状もしくは楕円形状状であり、構造パターン:Bは2次元状パターンであることを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項3記載の光走査装置において、
位相型光学素子における構造パターン:Bの2次元状パターンが、主走査方向および副走査方向に線対称性を有し、且つ回転角:90度に対する回転対称性を持たないことを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項4記載の光走査装置において、
構造パターン:Bの2次元状パターンが、楕円リング形状の少なくとも一部を含み、この楕円リング形状の幅が均一でないことを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1〜5の任意の1に記載の光走査装置において、
位相型光学素子の、複数の領域:An(n=1,2・・)による不連続面形状と構造パターン:Bとを形成された面と反対側の面に、屈折レンズ面が形成されたことを特徴とする光走査装置。
【請求項7】
請求項1〜6の任意の1に記載の光走査装置において、
光源からの光束の一部のみを通過させるアパーチャの開口部が、4隅を面取りした矩形形状であることを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
請求項1〜7の任意の1に記載の光走査装置において、
光源からの光束の一部のみを通過させるアパーチャが、位相型光学素子に極近接して配置されるか、もしくは前記位相型光学素子と密着もしくは一体化されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
請求項8記載の光走査装置において、
光源がマルチビーム光源であることを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
請求項1〜9に任意の1に記載の光走査装置において、
位相型光学素子の複数の領域:An(n=1,2・・・)による不連続面形状が切削により形成され、構造パターン:Bはエッチングにより形成されることを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
光走査による画像書き込みを光導電性の感光体に行って静電潜像を形成する方式の画像形成装置において、
光走査による画像書き込みを請求項1〜10の任意の1に記載の光走査装置により行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項11記載の画像形成装置において、
複数の光導電性の感光体に異なる色成分の画像書き込みを行い、各感光体に形成される静電潜像を異なる色のトナーで可視化してトナー画像とし、これら色違いのトナー画像を同一の記録媒体上で重ね合わせてカラーもしくは多色の画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−168923(P2009−168923A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4468(P2008−4468)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】