説明

内燃機関の冷却装置

【課題】過給機およびEGR装置を備えた内燃機関においてノッキング抑制を行うことができる内燃機関の冷却装置を提供する。
【解決手段】内燃機関10は、ターボチャージャ60およびEGR装置、低水温冷却EGRクーラ32、高水温冷却EGRクーラ40を備える。インポート冷却水通路30を備え、インポート冷却水通路30に冷媒を供給する。冷却水通路22とインポート冷却水通路30との接続部には、切替バルブ24が備えられている。ECU70は、EGR装置によるEGR領域の外部の領域であって所定の高負荷域において内燃機関10が運転される場合に、インポート冷却水通路30内の冷媒の流通を開始するように、切替バルブ24を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2003−176741号公報に開示されているように、中負荷状態または高負荷状態のとき、排気還流装置の冷却を実施する内燃機関が知られている。この従来技術にかかる内燃機関は、過給機および排気還流((Exhaust Gas Recirculation、以下「EGR」とも称す)を行う装置(以下、「EGR装置」とも称す)を備えている。上記従来の技術にかかる内燃機関は、NOxの発生および粒子状物質の発生を低減する観点から、上記の特定の負荷状態のときに排気還流装置の冷却を実施することにより、機関本体のシリンダに吸入される吸気温度の低下による燃焼温度の上昇抑制という効果を享受している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−176741号公報
【特許文献2】特開2010−151066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低水温冷却水によって冷却した排気ガスを還流する外部EGR機構によれば、低温に冷却した排気ガスを吸気通路に還流することで、吸気温度を下げることができる。その結果、ノッキングを抑制することができる。過給機を有する内燃機関においても、過給が行われない領域や過給圧が低い領域においては吸気圧が背圧よりも低く、所望量のEGRを吸気通路に導入することができるため、このような冷却したEGR導入によるノッキング抑制効果を享受することができる。しかしながら、その一方で、過給を行うことにより、EGRガスの導入量が所望量よりも低下したりEGRガスが導入できなくなってしたりするほどに、吸気圧が増大する領域(つまり背圧と吸気圧の差圧が小さくなる領域)がある。このようにEGRガスの導入量が低下したりEGRガスが導入できなくなってしたりするといったEGRの導入が妨げられる事態が発生すると、冷却したEGRの導入によって確保していたノッキング抑制効果が、低下してしまう。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、過給機およびEGR装置を備えた内燃機関においてノッキング抑制を行うことができる内燃機関の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、過給機およびEGR装置を備えた内燃機関を冷却する冷却装置であって、
前記EGR装置で還流するEGRガスを冷却するように当該EGR装置に備えられた第1冷媒通路と、
前記内燃機関の吸気ポートを冷却するように前記内燃機関に設けられた第2冷媒通路と、
前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路とに冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記EGR装置によるEGR領域の外部の領域であって所定の高負荷域において前記内燃機関が運転される場合に、前記第2冷媒通路内の冷媒の流通を開始するように又は前記第2冷媒通路内の冷媒の流量を増加するように、前記第2冷媒通路への冷媒の供給を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記EGR装置は、
前記内燃機関のエンジン冷却水を流通させるエンジン冷却水通路と連通し、前記エンジン冷却水通路内を流れる第1の温度の冷媒によってEGRガスを冷却する第1EGRクーラと、
前記第1冷媒通路と接続し、前記第1冷媒通路内を流れ前記第1の温度よりも低温の第2の温度の冷媒によってEGRガスを冷却する第2EGRクーラと、
を含み、
前記第2冷媒通路は、前記第1冷媒通路と接続する接続部を備え、
前記接続部に備えられ、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路とに対する冷媒の流れを変更可能なバルブをさらに備え、
前記制御手段は、前記バルブの開閉状態を切り換えることにより前記第2冷媒通路への冷媒の供給を制御するバルブ制御手段を含むことを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記第2冷媒通路は、前記バルブを起点として前記第2EGRクーラをバイパスするように前記第1冷媒通路と接続することを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明は、第1乃至3の発明のいずれか1つにおいて、
前記所定の高負荷域は、前記内燃機関のノッキングが発生する負荷域であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、EGR領域外部かつ所定高負荷域において内燃機関が運転される場合に、吸気ポートの冷却を行うことができる。これにより、冷却したEGRの導入が阻害される事態に対処するように、吸気ポートの冷却を行い、吸気温度を下げることができる。その結果、ノッキング抑制を確保することができる。
【0011】
第2の発明によれば、2段の冷却を行う機構を備えたEGRクーラにおいて、冷却水を吸気ポートの冷却に分担させることができる。
【0012】
第3の発明によれば、第2EGRクーラに冷媒を供給する第1冷媒通路から、冷媒の一部または全部を、第2EGRクーラをバイパスして第2冷媒通路へと流すことにより、吸気ポートの冷却を行うことができる。
【0013】
第4の発明によれば、ノッキング抑制の観点から必要な場合に確実に吸気ポートの冷却措置をとることができるとともに、その必要が無い場合には吸気ポートの冷却を控えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置の動作について説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置においてECUが実行するルーチンのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置の動作について説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置においてECUが実行するルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置の構成を示す図である。図1には、実施の形態1にかかる冷却装置とともに、内燃機関10のシステム構成の一部も記載されている。内燃機関10は車両等の移動体に好適である。本実施形態にかかる内燃機関10は、一例として、4つの気筒(一列に並ぶ#1気筒〜#4気筒)を有する直列4気筒型エンジンである。また、下記に述べるように、内燃機関10は、ターボチャージャ60を有する過給内燃機関であるとともに、冷却したEGRガスを吸気通路に導入できるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置を有する内燃機関である。
【0016】
図示しないが、内燃機関10は、筒内に空気を取り込むための吸気通路と、筒内から排出される排気ガスが流れる排気通路とを備えている。
内燃機関10の吸気通路の入口近傍には、吸気通路に吸入される空気の流量に応じた信号を出力するエアフローメータ(図示せず)が設けられている。エアフローメータの下流には、ターボチャージャ60のコンプレッサが配置されている。ターボチャージャ60は、コンプレッサと一体的に連結され、排気ガスの排気エネルギによって作動するタービンを備えている。また、コンプレッサは、タービンに入力される排気ガスの排気エネルギによって回転駆動されるようになっている。
コンプレッサの下流側の吸気通路には、水冷インタークーラ20が配置されている。水冷インタークーラ20は、コンプレッサにより圧縮された空気を冷却するための水冷式のインタークーラである。更に、水冷インタークーラ20の下流には、吸気通路を流れる空気量を調整するための電子制御式のスロットルバルブ(図示せず)が配置されている。
【0017】
内燃機関10の排気通路には、EGR通路(図示せず)の一端が接続されている。このEGR通路の他端は、スロットルバルブの下流側において吸気通路(のサージタンク)に接続されている。EGR通路の途中には、低水温冷却EGRクーラ32および高水温冷却EGRクーラ40が設けられている。これらのEGRクーラよりも下流側のEGR通路には、EGR通路の開閉を担うEGR弁(図示せず)が設けられている。EGR弁は、駆動源としてステッピングモータ(図示せず)を有している。このような構成によれば、EGR通路を介して、排気通路を流れる排気ガスの一部を吸気通路に還流させる制御、いわゆる外部EGR(Exhaust Gas Recirculation)制御を行うことができる。
【0018】
実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置は、低温冷却水路(冷却水通路22、冷却水通路25、冷却水通路26、冷却水通路28)が形成されている。この低温冷却水路には、水冷インタークーラ20を冷却した後の冷却水(低温冷却水)が流通する。この低温冷却水が流れる系統内における冷却水の流通方向は、図1において各冷却水通路に沿って記す矢印のとおりである。
実施の形態1にかかるこの低温冷却水が流れる系統は、エンジン冷却水とは別系統に設けられたものである。この低温冷却水は、エンジン冷却水よりも低温の状態でターボチャージャ60に供給されるように設定されている。低温冷却水は、低温冷却水用水ポンプ(図示せず)によって、低温冷却水路と、水冷インタークーラ20と、低温冷却水を冷却するためのサブラジエータ34との間を循環するように構成されている。
【0019】
実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置は、切替バルブ24を備えている。切替バルブ24は、冷却水通路22における水冷インタークーラ20の下流であって低水温冷却EGRクーラ32の上流の部位に配置されている。切替バルブ24は、インポート冷却水通路30に接続している。インポート冷却水通路30は、内燃機関10の吸気ポート(インポート)を冷却するように、シリンダヘッドの吸気ポート付近に形成された冷却水路である。
切替バルブ24は、冷却水通路22からの冷却水の流れの方向を、低水温冷却EGRクーラ32側へと流れる方向と、インポート冷却水通路30側へと流れる方向との間で切り換えることができる。なお、切替バルブ24には、低水温冷却EGRクーラ32側とインポート冷却水通路30との間で択一的に流通方向を切り換えることができるバルブを用いたり、或いは、択一的な切替のみならず低水温冷却EGRクーラ32側とインポート冷却水通路30との間で所望の割合で冷却水を配分できるバルブ(ここでは、複数のバルブを組み合わせたバルブ機構も含めて、単に「バルブ」と称している)を用いたりすることができる。
【0020】
実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置は、図1に模式的に示すように、高温冷却水路(冷却水通路42、冷却水通路44、冷却水通路48)を備えている。この高温冷却水路には、通常のエンジン冷却水(高温冷却水)が流通している。この高温冷却水が流れる系統内における冷却水の流通方向は、図1において各冷却水通路に沿って記す矢印のとおりである。
高温冷却水は、高温冷却水路を含む内燃機関の所定の冷却部位のための冷却水路と、高温冷却水を冷却するためのメインラジエータ52との間を、循環する。この循環は、高温冷却水用のポンプ46の駆動によって行われる。冷却水通路44における、メインラジエータ52とポンプ46との間には、サーモスタット50が設けられている。冷却水通路48は、冷却水通路44におけるポンプ46とサーモスタット50との間の部分と、冷却水通路42との間を接続している。
【0021】
上述したように、実施の形態1にかかるEGR装置は、「EGRクーラの2段冷却機構」を備えている。すなわち、実施の形態1にかかるEGRクーラは、「エンジン冷却水による高水温冷却EGRクーラ40」および「水冷インタークーラ20の冷却水による低水温冷却EGRクーラ32」によって2段階の冷却機構を構成している。そして、実施の形態1にかかる構成によれば、切替バルブ24の存在によって、その2段階のEGRクーラのうち低水温冷却EGRクーラ32の冷却水を、必要に応じてインポート冷却水通路30へと流すことができる。
【0022】
図1に示すシステムは、ECU(Electronic Control Unit)70を備えている。ECU70の入力部には、上述したエアフローメータに加え、エンジン回転数を検知するためのクランク角センサ、および、排気通路を流れる排気ガスの温度を検知するための排気温度センサ等の内燃機関10の運転状態を検出するための各種センサが接続されている。
また、ECU70の出力部には、上述したスロットルバルブ、EGR弁およびポンプ、に加え、内燃機関に燃料を供給するための燃料噴射弁、および、混合気に点火するための点火プラグ等の内燃機関の運転状態を制御するための各種アクチュエータが接続されている。ECU70は、上述した各種センサの出力に基づき、所定のプログラムに従って各種アクチュエータを作動させることにより、内燃機関の運転状態を制御するものである。
ECU70は、上記の各種センサからの出力信号に基づいて、内燃機関10の機関回転数および負荷を計算することができる。また、ECU70の出力部は、切替バルブ24に接続している。切替バルブ24は、ECU70からの制御信号に応じて、冷却水通路の連通状態を上述したように切り換えることができる。
【0023】
[実施の形態1の動作]
図2は、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置の動作について説明するための図である。図2は、実施の形態1にかかる内燃機関10におけるEGR領域とノック領域との関係とを示す図である。図2は、実施の形態1にかかる内燃機関10について、機関負荷と機関回転数との特性を示す平面上において、負荷のWOT(Wide open throttle)ライン、ノックライン、およびEGR領域(ハッチングを付した区域)を示している。
【0024】
実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置では、内燃機関10が図2の点Aに示すようにEGR領域内で運転されている場合には、ECU70が、切替バルブ24を「冷却水通路22から低水温冷却EGRクーラ32、冷却水通路25を経由して冷却水が流れるように」制御する。これにより、高水温冷却EGRクーラ40および低水温冷却EGRクーラ32の双方の冷却能力を、EGRの冷却のために利用することができる。冷却されたEGRが吸気通路に還流されることで、吸気温度を下げることができる。
【0025】
一方、実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置では、内燃機関10が図2の点Bに示すように「EGR領域外でかつノッキングが発生するほどに高負荷の領域」で運転されている場合には、ECU70が、切替バルブ24を「冷却水通路22からインポート冷却水通路30、冷却水通路25を経由して冷却水が流れるように」制御する。これにより、点Aにおいて低水温冷却EGRクーラ32に流れていた冷却水を、インポート冷却水通路30へと流し、吸気ポートを冷却することができる。この吸気ポートの冷却により、吸気温度を下げることができる。
【0026】
低水温冷却水を利用する外部EGR機構の場合には、EGRガスを低温に冷却することができ、EGR領域においてこの冷却されたEGRガスを吸気通路に導入することによって吸気温度を下げることができる。これにより、ノッキング抑制効果を得ることができる。しかしながら、高負荷になると差圧(背圧と吸気圧の差)が小さくなることにより、外部EGRの導入が難しくなってしまう。より詳しく述べると、過給されることによって、NA(自然吸気)エンジンと比較して吸気圧が高くなるために、差圧が小さくなり、外部EGRを導入できない領域が大きくなる。これに加えて、過給エンジンの場合、ノッキング領域が大きいという事情もある。EGRが導入され難くなる結果、冷却したEGRの導入によって確保されていたノッキング抑制効果が低下してしまうおそれがあるため、これに対処することが好ましい。
そこで、実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置は、このような問題に対処するために、EGR領域よりも外側の領域でノッキングが発生するほどに高負荷な領域(図2の点Bなど)で運転されている場合には、切替バルブ24を、「冷却水通路22からインポート冷却水通路30、冷却水通路25を経由して冷却水が流れるように」制御することができる。これにより、冷却したEGRの導入が阻害される事態に対処するように、吸気ポートの冷却を行い、吸気温度を下げることができる。その結果、ノッキング抑制を確保することができる。
また、実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置によれば、2段の冷却を行う機構を備えたEGRクーラ(低水温冷却EGRクーラ32および高水温冷却EGRクーラ40)において、切替バルブ24の切替制御によって、冷却水の一部を吸気ポートの冷却に分担させることにより吸気温度を下げることができる。
【0027】
[実施の形態1の具体的処理]
以下、図3を用いて、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置で実行される具体的処理を説明する。図3は、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置においてECU70が実行するルーチンのフローチャートである。ECU70は、内燃機関10の運転中に、このルーチンを所定の周期で繰り返し実行する。
【0028】
図3に示すルーチンでは、先ず、ECU70が、内燃機関10がEGR領域で運転されているかどうかを判定する処理を実行する(ステップS100)。このステップでは、ECU70が、先ず内燃機関10に取り付けられた各種センサの出力信号に基づいてECU70が現在の内燃機関10の運転領域(負荷、機関回転数)を特定する。次いで、ECU70は、その特定した運転領域が、予めマップ等により記憶しておいた所定のEGR領域内に属するか否かを判定する処理を実行する。
この判定により現在の運転領域がEGR領域内にある場合には、ステップS100の条件が成立(Yes)し、今回のルーチンが終了する。EGR領域内において運転できるため、冷却したEGRの導入が可能であり、その冷却したEGRの導入によってノッキング抑制が可能だからである。
【0029】
ステップS100の条件が不成立(No)であった場合には、次に、ECU70が、内燃機関10がノック領域で運転されているかどうかを判定する処理を実行する(ステップS102)。このステップでは、ECU70が、ステップS100で特定された、現在の内燃機関10の運転領域が、所定のノック領域(実施の形態1の場合には、図2のノックラインより高負荷の領域)にあるか否かを判定する処理を実行する。ノック領域も、マップ等として予めECU70に記憶しておけばよい。
この判定により現在の運転領域がノック領域内に無い場合には、ステップS102の条件が不成立(No)となり、今回のルーチンが終了する。
【0030】
ステップS102の条件が成立(Yes)した場合には、ECU70は、低水温冷却EGRクーラ32への冷却水の流れが遮断されるように、切替バルブ24における低水温冷却EGRクーラ32側の経路を閉じるための制御処理を実行する(ステップS104)。
次いで、ECU70は、インポート冷却水通路30への冷却水の流れが開始されるように、切替バルブ24におけるインポート冷却水通路30への経路を開放するための制御処理を実行する(ステップS106)。
【0031】
これらのステップS100乃至S106の一連の処理によれば、過給機(ターボチャージャ60)およびEGR装置を備えた内燃機関10において、実施の形態1にかかる動作の欄で説明したごとくノッキング抑制を行うことができる。すなわち、ステップS100およびS102の判定結果に応じてステップS104へと処理が進む場合には、「EGR領域外であってかつノック領域」において内燃機関10が運転されている。実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置によれば、この場合には、ECU70が、ステップS104およびS106の処理により、「冷却水通路22→インポート冷却水通路30→冷却水通路25という経路」を冷却水が流れるように、切替バルブ24を制御することができる。その後、今回のルーチンが終了する。
【0032】
以上説明した実施の形態1にかかる処理によれば、冷却したEGRの導入が阻害される事態に対処するように、吸気ポートの冷却を行い、吸気温度を下げることができる。その結果、ノッキング抑制を確保することができる。また、上述した実施の形態1にかかる処理によれば、「EGR領域外」であって「ノックラインより高負荷域」で内燃機関10が運転されているか否かを正確に判定したうえで、切替バルブ24の制御を行うことができる。このため、ノッキング抑制の観点から必要な場合に確実に吸気ポートの冷却措置をとることができるとともに、その必要が無い場合には吸気ポートの冷却を控えることができる。
【0033】
なお、上述した実施の形態1においては、ターボチャージャ60が、前記第1の発明における「過給機」に、内燃機関10に取り付けられた図示しない外部EGR装置が、前記第1の発明における「EGR装置」に、それぞれ相当している。また、上述した実施の形態1においては、冷却水通路22、25、26、28が、前記第1の発明における「第1冷媒通路」に、インポート冷却水通路30が、前記第1の発明における「第2冷媒通路」に、それぞれ相当している。また、上述した実施の形態1においては、水冷インタークーラ20、サブラジエータ34、低温冷却水用水ポンプ(図示せず)が、前記第1の発明における「冷媒供給手段」に、相当している。また、上述した実施の形態1においては、ECU70が図3のルーチンのステップS100乃至S106の処理を実行することで切替バルブ24が制御されることにより、前記第1の発明における「制御手段」が実現されている。
【0034】
また、上述した実施の形態1においては、高水温冷却EGRクーラ40が、前記第2の発明における「第1EGRクーラ」に、冷却水通路42、44および48が、前記第2の発明における「エンジン冷却水通路」に、低水温冷却EGRクーラ32が、前記第2の発明における「第2EGRクーラ」に、切替バルブ24が、前記第2の発明における「バルブ」に、それぞれ相当している。
【0035】
なお、実施の形態1では、インポート冷却水通路30を、低水温冷却EGRクーラ32をバイパスするように冷却水通路22、25接続させる構成とした。言い換えれば、インポート冷却水通路30を、低水温冷却EGRクーラ32にかかる冷却水通路の系の途中から分岐させて、低水温冷却EGRクーラ32の冷却に用いる冷却水を用いて吸気ポートを冷却できるような構成とした。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。インポート冷却水通路30を、低水温冷却EGRクーラ32にかかる冷却系と別系統の冷却系としても良い。
なお、変形例の一つとして、択一的な切替バルブでなく流量配分調整が可能なバルブを切替バルブ24に用いている場合で、ステップS104やS106の処理を迎える時点で、既にインポート冷却水通路30に冷却水の流れがあるとき(冷却水の配分をしているとき)が考えられる。このような変形例の場合には、ECU70が、ステップS106において、インポート冷却水通路30内の冷却水の流量の増大(流れの強化)をするように、インポート冷却水通路30側のバルブ開度を大きくする制御を行っても良い。
なお、実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置は、低水温冷却EGRクーラ32および高水温冷却EGRクーラ40を有するものであり、すなわち「EGRクーラの2段冷却機構」を備えている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。1つのEGRクーラのみを備える内燃機関の冷却装置に対して本発明を適用してもよく、具体的には、その1つのEGRクーラにかかる冷却水通路に対してインポート冷却水通路30、切替バルブ24を設けて上記の実施の形態1にかかる具体的制御を実行させてもよい。
【0036】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置の構成を示す図である。実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置は、切替バルブ140およびエキポート冷却水通路142を備えている点を除き、図1に示した実施の形態1の構成と同じハードウェア構成を備える。重複説明を避けるため、以下、ハードウェア構成については説明を適宜省略ないしは簡略する。
【0037】
実施の形態1にかかる内燃機関の冷却装置は、エキポート冷却水通路142を備えている。エキポート冷却水通路142は、内燃機関10の排気ポート(エキポート)を冷却するように、シリンダヘッドの排気ポート付近に形成された冷却水路である。エキポート冷却水通路142の一端は、インポート冷却水通路30に接続している。エキポート冷却水通路142の他端は、冷却水通路25における低水温冷却EGRクーラ32の下流部分に接続している。エキポート冷却水通路142の他端が冷却水通路25に接続する接続部分は、インポート冷却水通路30が冷却水通路25に接続する部分よりも、低水温冷却EGRクーラ32に近い位置である。
エキポート冷却水通路142とインポート冷却水通路30とが接続する接続部分には、切替バルブ140が設けられている。切替バルブ140は、実施の形態1にかかる切替バルブ24と同様に、冷却水の流れの方向を切り換えることのできる切替バルブである。切替バルブ140はECU70に接続しており、ECU70の制御信号に応じて、切替バルブ140が、インポート冷却水通路30を流れてきた冷却水をエキポート冷却水通路142に流すことができる。これによりエキポート冷却水通路142に低温冷却水を流すことができ、排気ポートを冷却することができる。
【0038】
図5は、本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置の動作について説明するための図である。図5は、実施の形態1にかかる内燃機関10におけるEGR領域とλ=1領域との間の関係を示す図である。図5には、図1と同様にWOTラインおよびEGR領域が示されているとともに、λ=1ラインも示されている。
【0039】
実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置では、内燃機関10が図5の点Aに示すようにEGR領域内で運転されている場合には、ECU70が、切替バルブ24を「冷却水通路22から低水温冷却EGRクーラ32、冷却水通路25を経由して冷却水が流れるように」制御するとともに、切替バルブ140を「インポート冷却水通路30とエキポート冷却水通路142との間の接続を遮断するように」制御する。これにより、実施の形態2においても実施の形態1と同様に、高水温冷却EGRクーラ40および低水温冷却EGRクーラ32の双方の冷却能力を、EGRの冷却のために利用することができる。冷却されたEGRが吸気通路に還流されることで、吸気温度を下げることができる。
【0040】
一方、実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置では、内燃機関10が図5の点Cに示すように「EGR領域外でかつλ=1境界付近」で運転されている場合には、ECU70が、切替バルブ24を「冷却水通路22からインポート冷却水通路30へと冷却水が流れるように」制御するとともに、切替バルブ140を「インポート冷却水通路30からエキポート冷却水通路142を経由して冷却水が流れるように」制御する。これにより、点Aにおいて低水温冷却EGRクーラ32に流れていた冷却水を、インポート冷却水通路30へと流し、吸気ポートを冷却することができるとともに、その冷却水を更にエキポート冷却水通路142へと流し、排気ポートを冷却することもできる。このような制御を行うことで、実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置によれば、吸気ポートの冷却により吸気温度を下げることができるとともに、EGR領域でなくかつλ=1境界付近においては排気ポートも冷却することによりλ=1領域を拡大することもできる。
【0041】
以下、図6を用いて、本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置で実行される具体的処理を説明する。図6は、本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の冷却装置においてECU70が実行するルーチンのフローチャートである。ECU70は、内燃機関10の運転中に、このルーチンを所定の周期で繰り返し実行する。
【0042】
図6に示すルーチンでは、先ず、図3に示した実施の形態1にかかるルーチンと同様に、ステップS100、S102、S104、およびS106の処理が実行される。これにより、「EGR領域外であってかつノック領域」において内燃機関10が運転されている場合には、冷却水通路22→インポート冷却水通路30→冷却水通路25という経路を冷却水が流れるように、切替バルブ24を制御することができる。
【0043】
ステップS106の処理が実行された後、次いで、実施の形態2にかかる具体的処理では、ECU70が、λ<1領域で内燃機関10が運転されているか否かを判定する処理を実行する(ステップS200)。例えば、図5においてλ=1ラインよりも高負荷、高回転数域にプロットされた点Cは、このステップS200における判定結果が肯定(Yes)となる点である。ステップS200の判定結果が肯定(Yes)である場合には、「EGR領域よりも負荷が高く、かつλ<1領域での運転」が行われているという判断を下すことができる。このステップの条件が不成立(No)である場合は、そのような運転領域での運転には該当しないため、今回のルーチンが終了する。
【0044】
ステップS200の条件成立(Yes)が認められた場合(つまり、「内燃機関10がλ<1領域で運転されている」との判定結果が得られた場合)には、ECU70は、インポート冷却水通路30とエキポート冷却水通路142との間の接続(つまりそれらの連通の成立)を行うように、切替バルブ140を開くための制御処理を実行する(ステップS202)。これにより、インポート冷却水通路30とともにエキポート冷却水通路142へも冷却水を流すことができる。このような一連の処理の結果、EGR領域でなくかつλ=1境界付近において、排気ポートを冷却することによりλ=1領域を拡大することができる。その後、今回のルーチンが終了する。
【0045】
なお、実施の形態2において、エキポート冷却水通路142をEGRクーラ(高水温冷却EGRクーラ40および低水温冷却EGRクーラ32)の冷却系と別の独立の系統として設けたり、エキポート冷却水通路142をインポート冷却水通路30と別の独立の系統として設けたりしても良い。また、実施の形態1にかかる吸気ポート冷却用の構成(インポート冷却水通路30、切替バルブ24その他の構成)および制御と、実施の形態2にかかる排気ポート冷却構成(エキポート冷却水通路142、切替バルブ140その他の構成)および制御とを、別々に(実施の形態2を単独で)実施してもよい。
また、切替バルブ24について実施の形態1で述べた変形例のように、切替バルブ140を、択一的な切替バルブに限らず所望の割合でインポート冷却水通路30内の冷却水の一部をエキポート冷却水通路142に導入できるような流量配分変更可能なバルブ(バルブ機構)としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 内燃機関
20 水冷インタークーラ
22 冷却水通路
24 切替バルブ
25 冷却水通路
26 冷却水通路
28 冷却水通路
30 インポート冷却水通路
32 低水温冷却EGRクーラ
34 サブラジエータ
40 高水温冷却EGRクーラ
42 冷却水通路
44 冷却水通路
46 ポンプ
48 冷却水通路
50 サーモスタット
52 メインラジエータ
60 ターボチャージャ
140 切替バルブ
142 エキポート冷却水通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機およびEGR装置を備えた内燃機関を冷却する冷却装置であって、
前記EGR装置で還流するEGRガスを冷却するように当該EGR装置に備えられた第1冷媒通路と、
前記内燃機関の吸気ポートを冷却するように前記内燃機関に設けられた第2冷媒通路と、
前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路とに冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記EGR装置によるEGR領域の外部の領域であって所定の高負荷域において前記内燃機関が運転される場合に、前記第2冷媒通路内の冷媒の流通を開始するように又は前記第2冷媒通路内の冷媒の流量を増加するように、前記第2冷媒通路への冷媒の供給を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項2】
前記EGR装置は、
前記内燃機関のエンジン冷却水を流通させるエンジン冷却水通路と連通し、前記エンジン冷却水通路内を流れる第1の温度の冷媒によってEGRガスを冷却する第1EGRクーラと、
前記第1冷媒通路と接続し前記第1冷媒通路内を流れ前記第1の温度よりも低温の第2の温度の冷媒によってEGRガスを冷却する第2EGRクーラと、
を含み、
前記第2冷媒通路は、前記第1冷媒通路と接続する接続部を備え、
前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との間で冷媒の流入の方向を変更可能なバルブをさらに備え、
前記制御手段は、前記バルブの開閉状態を切り換えることにより前記第2冷媒通路への冷媒の供給を制御するバルブ制御手段を含む ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の冷却装置。
【請求項3】
前記第2冷媒通路は、前記バルブを起点として前記第2EGRクーラをバイパスするように前記第1冷媒通路と接続することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の冷却装置。
【請求項4】
前記所定の高負荷域は、前記内燃機関のノッキングが発生する負荷域であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−189063(P2012−189063A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55687(P2011−55687)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】