説明

内燃機関の制御装置

【課題】EGR運転領域の拡大によって燃費性能を向上させると共に、EGR運転中のエンジントルクを確保できる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】気筒毎に2つの吸気弁を備えたエンジンにおいて、一方の吸気弁をピストン上昇中に開弁させる一方、他方の吸気弁をピストン上死点以降に開弁させることで、燃焼室内の燃焼ガスが前記一方の吸気弁の上流側に吹き返すようにする。そして、前記一方の吸気弁上流側の吸気ポート内に導入された燃焼ガスが燃焼室内に導入される期間を、吹き返しガス量Wmと吸入空気の流速ASとから推定し、燃焼ガスが燃焼室内に導入された後の新気導入が開始されてから、燃料噴射弁の噴射を開始させることで、燃焼ガスに燃料が混じることを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、詳しくは、吸気通路内に燃料を噴射する燃料噴射弁の噴射開始時期を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼室内を内部EGRガス層と可燃混合気層とに分け、前記可燃混合気層に着火して燃焼させるEGR成層燃焼を実現する内燃機関として、ピストンが上昇する排気行程時に、第1吸気弁を介して上流側の第1吸気ポートにEGRガスを導入し、ピストンが上死点から下降する吸気行程時に、第1吸気ポート内に導入したEGRガスを、前記第1吸気弁を介して燃焼室に導入すると共に、第2吸気弁を介して上流側の第2吸気ポート内の新気を燃焼室内に導入してEGR成層燃焼を行わせる内燃機関があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−255866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2つの吸気弁の一方から内部EGRガスをシリンダ内に導入し、他方から新気をシリンダ内に導入するようにすると、EGR運転領域を高出力側に拡大しようとしても、片側の吸気弁から導入される新気分のエンジントルクしか発生させることができないため、エンジントルクを確保しつつEGR運転領域を高出力側に拡大させることが困難であった。
【0005】
そこで、本願発明は、EGR運転領域の拡大によって燃費性能を向上させると共に、EGR運転中のエンジントルクを確保できる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本願発明は、吸気通路内に燃料を噴射する燃料噴射弁を備えた内燃機関において、吸気通路内に導入される燃焼ガス量が多いほど燃料噴射弁による噴射開始時期をより遅い時期に設定し、かつ、吸気通路内を流れる吸入空気の流速が遅いほど前記噴射開始時期をより遅い時期に設定するようにした。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によると、EGRガスに続けてシリンダ内に導入される新気の導入時期に合わせて、燃料噴射弁の噴射開始時期を設定できるので、新気に噴射燃料を混合でき、エンジントルクを向上させることができると共に、EGR効果によって燃費向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明の実施形態におけるエンジンの構成図である。
【図2】本願発明の実施形態におけるエンジンの燃焼室周辺の構造を示す上面図である。
【図3】本願発明の実施形態における可変動弁機構(カム切替機構)の特性を示す線図である。
【図4】本願発明の実施形態における可変動弁機構(リフト及び作動角可変機構)の特性を示す線図である。
【図5】本願発明の実施形態における噴射開始時期の演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】本願発明の実施形態における第1吸気弁の通過ガス量と噴射時期との相関を示すタイムチャートである。
【図7】本願発明の実施形態におけるエンジンの燃焼室周辺の構造を示す上面図である。
【図8】本願発明の実施形態における外部EGRを行うエンジンの燃焼室周辺の構造を示す上面図である。
【図9】本願発明の実施形態における外部EGRを行うエンジンでの噴射開始時期の演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】本願発明の実施形態における外部EGRを行うエンジンでの第1吸気弁の通過ガス量と噴射時期との相関を示すタイムチャートである。
【図11】本願発明の実施形態における外部EGRを行うエンジンでの第1吸気弁の通過ガス量と分割噴射の時期との相関を示すタイムチャートである。
【図12】本願発明の実施形態における吸気弁の開弁期間と燃料噴射の分割回数との相関を示す線図である。
【図13】本願発明の実施形態における外部EGRを行うエンジンでの第1吸気弁の通過ガス量と分割噴射の時期との相関を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明に係る内燃機関の制御装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る制御装置を適用する車両用エンジン(内燃機関)のシステム構成を示す図である。
尚、図1に示すエンジン101は、直列型多気筒内燃機関であるが、V型や水平対向型などの内燃機関であってもよい。
【0010】
エンジン101の各気筒に空気を導入するための吸気管(吸気通路)102には、エンジン101の吸入空気流量QAを検出する吸入空気量センサ103を設けてある。吸入空気量センサ103として、例えば、吸気の質量流量を検出する熱線式流量計などを用いることができる。
エンジン101の吸入空気流量QAは、吸入空気量センサ103下流側の吸気管102に配置した電子制御スロットル119によって調整される。
【0011】
図2に示すように、各燃焼室104には2つの吸気口115a,115bが開口し、各吸気口115a,115bに至る2つの吸気ポート113a,113bが気筒毎に設けられ、かつ、各吸気口115a,115bを開閉する2つの吸気弁105a,105bを設けてある。更に、第1吸気ポート113a内に燃料を噴射する第1燃料噴射弁106aと、第2吸気ポート113b内に燃料を噴射する第1燃料噴射弁106aとを設けてある。
尚、第1吸気弁105a上流側の第1吸気ポート113aと第2吸気弁105b上流側の第2吸気ポート113bとが合流して吸気管102に接続される。
【0012】
燃料噴射弁106a,106bから噴射された燃料は、吸気行程で吸気弁105a,105bが開くことで燃焼室104内に導入され、点火プラグ107による火花点火によって着火燃焼し、該燃焼による圧力がピストン108をクランクシャフト109に向けて押し下げることで、クランクシャフト109を回転駆動する。
また、図2に示すように、各燃焼室104には2つの排気口117a,117bが開口し、各排気口117a,117bを開閉する2つの排気弁110a,110bを備え、この排気弁110a,110bが排気行程で開くことで、燃焼ガス(排ガス)が排気管(排気通路)111に排出される。
排気管111には、排気の浄化を行うために、三元触媒等を備えた触媒コンバータ112を設置してある。
【0013】
吸気弁105a,105bは、クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト(図示省略)の回転に伴って開動作し、排気弁110a,110bは、クランクシャフト109によって回転駆動される排気カムシャフト(図示省略)の回転に伴って開動作する。
また、排気弁110a,110bは、一定のバルブタイミング(開特性)で開動作するが、吸気弁105a,105bのバルブタイミング(開時期IVO及び閉時期IVC)は、可変動弁機構114a,114bによって可変とされる。
【0014】
第1可変動弁機構114aは、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフトの回転位相を変化させることで、吸気弁105a,105bのバルブ作動角の中心位相を連続的に変化させる公知の機構である。
一方、第2可変動弁機構114bは、第1吸気弁105aのバルブタイミング(開特性)を変化させることなく、第2吸気弁105bのバルブタイミング(開特性)を独立して可変とする機構であり、この第2可変動弁機構114bによって第2吸気弁105bのバルブタイミング(開特性)を、第1吸気弁105aと同じタイミングから異なるタイミングにまで変化させることができるようになっている。
【0015】
第2可変動弁機構114bとしては、例えば、特開2008−255866号公報に開示される、制御軸の角度を変化させることで、吸気弁の最大バルブリフト量をバルブ作動角と共に連続的に可変とするリフト及び作動角可変機構や、同じく特開2008−255866号公報に開示される、吸気弁の駆動に用いるカムを、大作動角カムと小作動角カムとのいずれか一方に切り替えるカム切替機構などを用いることができる。
ここで、第2可変動弁機構114bとしてカム切替機構を用いる場合、図3に示すように、大作動角カムの選択時には、第1吸気弁105a及び第2吸気弁105bのバルブリフト量(最大バルブリフト量)及びバルブ作動角が略同等になり、小作動角カムの選択時には、第2吸気弁105bのバルブリフト量及びバルブ作動角が第1吸気弁105aのバルブリフト量及びバルブ作動角よりも小さくなるように設定してある。
【0016】
また、第2可変動弁機構114bとして、リフト及び作動角可変機構を用いる場合には、図4に示すように、第2吸気弁105bのバルブリフト量(最大バルブリフト量)及びバルブ作動角の可変範囲には、第1吸気弁105bのバルブリフト量及びバルブ作動角と同じバルブリフト量及びバルブ作動角と、前記小作動角カムの選択時のバルブリフト量及びバルブ作動角とを少なくとも含むように設定する。
このように、第2可変動弁機構114bは、第2吸気弁105bの開弁特性を、第1吸気弁105aと同じ特性と、第1吸気弁105aよりもバルブリフト量及びバルブ作動角が小さい特性とのいずれかに切り替えられる機構である。
【0017】
点火プラグ107それぞれには、点火プラグ107に対して点火エネルギを供給する点火モジュール116が直付けされている。点火モジュール116は、点火コイル及び当該点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタを備えている。
エンジン制御装置(エンジンコントロールユニット)201は、CPU,ROM,RAMなどを含むコンピュータを備え、各種のセンサやスイッチからの信号を入力し、予め記憶されたプログラムに従って演算処理を行うことで、燃料噴射弁106、可変動弁機構114a,114b、点火モジュール116などの各種デバイスの操作量を演算して出力する装置であり、本願発明に係る制御装置としての機能を後述するように備えている。
【0018】
また、エンジン制御装置201は、吸入空気量センサ103の出力信号を入力する他、クランクシャフト109の回転角信号POSを出力するクランク角センサ203、アクセルペダル207の踏込み量(アクセル開度ACC)を検出するアクセル開度センサ206、吸気カムシャフトの回転角信号CAMを出力するカム角センサ204、エンジン101の冷却水の温度(機関温度)TWを検出する水温センサ208、触媒コンバータ112上流側の排気管111に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比AFを検出する空燃比センサ209、電子制御スロットル119の開度TVOを検出するスロットルセンサ210、電子制御スロットル119と吸気弁105a,105bとの間の吸気管(吸気通路)102内の圧力である吸気負圧(ブースト)PBを検出する吸気圧センサ121などからの信号を入力し、更に、エンジン101の運転及び停止のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IGNスイッチ)205の信号を入力する。
ここで、エンジン制御装置201は、クランク角センサ203が出力する回転角信号POSに基づいてエンジン回転速度NEを算出する。
【0019】
次に、エンジン制御装置201による可変動弁機構114a,114bの制御を、概略的に説明する。
例えばエンジン101の低負荷低回転域など、燃費性能が要求される運転領域では、第1可変動弁機構114aによって吸気カムシャフトの回転位相を進角させると共に、第2可変動弁機構114aによって第2吸気弁105bのバルブ作動角を第1吸気弁105aよりも小さくすることで、第1吸気弁105aの開時期IVOを上死点TDC前に設定し、第2吸気弁105bの開時期IVOを略上死点TDC以降に設定し、第1吸気弁105aの閉時期IVC及び第2吸気弁105bの閉時期IVCを下死点BDC以降の略同じ時期に設定する。
尚、排気弁110a,110bの閉時期EVCは、上死点TDC付近に設定してある。
【0020】
これにより、第1吸気弁105aは、ピストン上昇中の排気行程(上死点TDC前)で開くことになり、第1吸気弁105aがピストン上昇中に開くと、燃焼室104内の燃焼ガス(燃焼後の排ガス)は、第1吸気弁105a上流の第1吸気ポート113aに吹き返すことになる。
そして、第1吸気弁105aの開状態で、ピストンが上死点TDCに達するまでに、第1吸気ポート113aに吹き返した燃焼ガス(内部EGRガス)は、ピストンが上死点TDCから下降に転じて吸気行程に切り替わることで燃焼室104内に再度吸入され、内部EGRガスの吸入に続けて新気が第1吸気弁105aを介して燃焼室104内に吸入されることになる(燃焼ガス導入手段)。
【0021】
一方、第2吸気弁105bは、ピストン上昇中の排気行程(上死点TDC前)では開弁せず、ピストンが上死点TDCに達した以降の吸気行程で開くので、第2吸気弁105bの上流側の第2吸気ポート113bに対する燃焼ガスの吹き返し(内部EGR)は発生せず、第2吸気弁105bを介しては、新気が燃焼室104内に吸入される。
そして、第1吸気弁105aを介した燃焼室104内への内部EGRガス及び新気の吸入動作に並行して、第2吸気弁105bを介して新気が燃焼室104内に吸入されるので、燃焼室104内におけるスワール(横向きの吸気渦流)の形成が抑制される。
【0022】
これにより、第1吸気弁105aを介した吸入動作の初期に燃焼室104内に吸入された内部EGRガスが、新気と混じることが抑制され、燃焼室104内で新気層と内部EGRガス層とに成層化してEGR成層燃焼を行わせることができ、大量内部EGRと新気に対する燃料の混合とによって、燃焼室104全体としては空燃比を大きくリーン化させて燃費の向上を図ることができる。
但し、内部EGRガス中に燃料が混じると、成層度が低下し、内部EGR量の増大を図ることができなくなる。
【0023】
そこで、エンジン制御装置201は、内部EGRガス中に燃料が混じることを抑制するために、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始タイミングを、第1吸気ポート113aに吹き返したガスが、第1吸気弁105aを介して燃焼室104に吸入された後であって、第1燃料噴射弁106aからの燃料が新気中に噴射されることになるタイミングに設定する。
即ち、ピストンが下降に転じた直後の吸気行程初期には、内部EGRガスが第1吸気弁105aを介して燃焼室104に吸入されるから、このときに第1燃料噴射弁106aによる燃料噴射を行わせると、内部EGRガス中に燃料を噴射することになり、内部EGRガスに燃料が混ざって成層度が低下する。
【0024】
このため、第1吸気弁105aを介して内部EGRが吸入された後の新気の吸入状態で、第1燃料噴射弁106aによる燃料噴射が行われるように、第1燃料噴射弁106aによる燃料噴射を開始させる。
これによって、内部EGRガス中に燃料が混じることを抑制でき、以って、燃焼室104内における新気(混合気)と内部EGRガスとの成層度が向上するので、第1吸気弁105aの開時期IVOをより進角させて内部EGR量の増大を図ることができ、内部EGR量を増大させることで燃費性能を改善できる。
【0025】
ここで、上死点TDCから第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期までの遅れ期間は、予め固定値として設定しておくことができるが、第1吸気ポート113aに吹き返したガス量(内部EGRガス量)が多いほど、吹き返しガスが燃焼室104内に吸入されるのに要する時間が長くなり、かつ、吸入空気の流速が遅いほど、吹き返しガスが燃焼室104内に吸入されるのに要する時間が長くなる。
このため、吹き返しガス量(内部EGR量、吸気通路に導入された燃焼ガスの量)が最も多く、かつ、吸気行程における吸入空気の流速が最も遅い場合であっても、内部EGRガス中に燃料が混じらないように、上死点TDCから第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期までの遅れ期間を設定すると、吹き返しガス量が少ないとき及び/又は吸入空気の流速が速いときには、過剰に噴射開始タイミングが遅れ、燃料の気化時間が短くなり、また、燃焼混合気の均質度合いが低下し、燃焼安定性が低下してしまう。
【0026】
そこで、上死点TDCから第1燃料噴射弁106aの噴射開始時期までの遅れ期間を、吹き返しガス量及び吸入空気の流速に応じて可変に設定することが好ましく、前記遅れ期間の設定処理を、図5のフローチャートに従って説明する。
尚、第2燃料噴射弁106bが配置される第2吸気ポート113bへの燃焼ガスの吹き返しは、発生しないか又は無視できる程度に少ないので、内部EGRに燃料が混じることを抑制するための噴射開始時期の設定は不要であり、第2吸気弁105bを介して燃焼室104内に導入される新気に対して均一に燃料を混合できる最適時期に設定すればよく、第1燃料噴射弁106aの噴射開始時期よりも早い時期(例えば、吸気TDC)に燃料噴射を開始させることができる。
【0027】
図5のフローチャートは、EGR成層燃焼時、換言すれば、第1吸気ポート113aに燃焼ガスを導入する運転領域において、エンジン制御装置201が一定時間毎に実行する、第1燃料噴射弁106aの噴射開始遅れ時間(噴射開始時期)の設定ルーチンを示す。
まず、ステップS1(ガス量検出手段)では、第1吸気ポート113aに対する吹き返しEGRガス量Wm(cc)の演算を行う。前記吹き返しEGRガス量Wmとは、内部EGRガス量であり、また、第1吸気ポート113aに導入される燃焼ガスの量である。
【0028】
吹き返しEGRガス量Wmの演算は、例えば特開2004−044548号公報に開示される推定手段を用いて行うことができる。
具体的には、第1吸気弁105aのバルブ作動角内におけるバルブリフト量と、第1吸気弁105bの開時期IVOとに基づき、バルブオーバーラップ時の第1吸気弁105aのバルブ開口面積AWmを演算し、このバルブ開口面積AWmに基づいてバルブオーバーラップ時の基本吹き返し量Wm0を算出する。
【0029】
ここで、バルブ開口面積AWmが大きいほど、換言すれば、第1吸気弁105aの開時期IVOが進角しバルブオーバーラップ量が大きくなるほど、また、吸気弁105aのバルブリフト量が大きいほど、基本吹き返し量Wm0をより大きな値として算出する。
そして、この基本吹き返し量Wm0に対して、そのときの吸気負圧PBやエンジン回転速度NEに応じた補正を施して、吹き返しEGRガス量Wmを算出する。
前記吸気負圧PBに応じた補正では、第1吸気弁105aの上流側圧力である吸気圧が高いほど(負圧が小さいほど)、吹き返しEGRガス量Wmをより小さく補正する。また、機関回転速度Neが高いほど吹き返しEGRガス量Wmをより小さく補正する。
【0030】
尚、簡易的には、第1吸気弁105bの開時期IVO(バルブタイミング)が進角するほど、換言すれば、第1吸気弁105bと排気弁110a,110bとのバルブオーバーラップ期間が拡大するほど、吹き返しEGRガス量Wmがより多くなるものとして、吹き返しEGRガス量(内部EGRガス量)Wmを推定させることができる。
【0031】
次のステップS2(流速検出手段)では、吸気行程において第1吸気ポート113aを流れる吸入空気の流速ASを検出する。
吸入空気の流速ASは、吸気圧センサ121が検出した吸気負圧PBや、スロットル開度TVOとエンジン回転速度NEとの組み合わせや、吸入空気量センサ103の出力などから推定することができ、具体的には、高流量側(高負荷側)ほど吸入空気の流速が速いものと推定できる。
【0032】
ステップS3では、ステップS1で検出した吹き返しEGRガス量(内部EGRガス量)Wmと、ステップS2で検出した第1吸気ポート113aを流れる吸入空気の流速ASとから、内部EGRの吸入期間TSを算出する。
内部EGRの吸入期間TSとは、第1吸気ポート113aに吹き返したEGRガス(内部EGRガス)が、吸気行程になった後に(吸気TDC後に)燃焼室104内に吸引されるのに要する時間であり、この吸入期間TSの経過後に新気が燃焼室104に吸引されることになる。
【0033】
ここで、内部EGRの吸入期間TSは、吹き返しEGRガス量(内部EGRガス量)Wmが多いほど長く、かつ、吸入空気の流速ASが遅いほど長い時間として算出される。
即ち、吸入空気の流速ASが同じであれば、吹き返しEGRガス量(内部EGRガス量)Wmが多いほど、第1吸気ポート113a内の内部EGRガスが燃焼室104内に吸引されるのに要する時間が長くなり、また、吹き返しEGRガス量(内部EGRガス量)Wmが同じであれば、吸入空気の流速ASが遅いほど、第1吸気ポート113a内の内部EGRガスが燃焼室104内に吸引されるのに要する時間が長くなる。
【0034】
従って、係る特性に基づき、そのときの吹き返しEGRガス量(内部EGRガス量)Wm及び吸入空気の流速ASから、内部EGRの吸入期間TS、換言すれば、吸気上死点TDCから内部EGRガスの燃焼室104内への吸引が略完了するまでの時間を推定する。
ステップS4(噴射開始時期設定手段)では、ステップS3で算出した内部EGRの吸入期間TSに基づき、第1燃料噴射弁106aの噴射開始時期を設定する。
【0035】
ここで、内部EGRの吸入期間TSが長いほど、吸気上死点TDCからより遅れた時期を、第1燃料噴射弁106aの噴射開始時期に設定する。
即ち、第1吸気弁105a(吸気弁#1)を通過して燃焼室104内に導入されるガスは、図6に示すように、吸気上死点TDC直後は内部EGRガスであり、第1吸気ポート113aに吹き返したEGRガス(内部EGRガス)が燃焼室104内に導入されてから続けて新気が第1吸気弁105aを通過して燃焼室104内に導入されることになる。
【0036】
そして、第1燃料噴射弁106aから噴射した燃料が内部EGRガスに混じって成層度が低下することを抑制し、第1燃料噴射弁106aから噴射した燃料を新気と混合させたいので、吹き返しEGRガス量(内部EGRガス量)の吸入期間TSが略経過してから第1燃料噴射弁106aによる燃料噴射を開始させる。
尚、第1燃料噴射弁106aの噴射開始時期は、第1吸気ポート113a内の内部EGRガスの燃焼室104への吸引が略完了する時期を含む設定範囲内に設定され、前記設定範囲は、内部EGRガスへの燃料の混合を抑制して成層度を維持でき、かつ、燃焼室104内に吸引された空気に対して燃料を均一に混合させることができる範囲として設定し、前記ステップS4における内部EGRの吸入期間TSから噴射開始時期を設定する特性を予め設定してある。
【0037】
このようにして、第1燃料噴射弁106aの噴射開始時期を設定すれば、第1吸気弁105aを介し、内部EGRガスに続けて新気を燃焼室104内に導入させても、内部EGRガスに燃料が混じることを抑制し、かつ、新気に燃料を混ぜることができる。
従って、第2吸気弁105bを介して燃焼室104に新気が導入されると共に、第1吸気弁105aを介しても新気を燃焼室104に導入させて、高いエンジントルクを発生させることができ、また、内部EGRガスに燃料が混じらないので、EGR成層燃焼における成層度を確保して、内部EGR量の拡大を図れ、燃費性能を改善でき、更に、新気に均一に燃料を混合させて高い燃焼安定性を実現できる。
【0038】
また、吹き返しEGRガス量(内部EGRガス量)Wmが多いほど内部EGRの吸入期間TSが長くなり、かつ、吸入空気の流速ASが遅いほど内部EGRの吸入期間TSが長くなることに対応して、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期を可変に設定するので、吹き返しEGRガス量(内部EGRガス量)Wm及び/又は吸入空気の流速が異なっても、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期が早過ぎて内部EGRガスに燃料が混ざってしまうことを抑制でき、かつ、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期が過剰に遅くなって新気における空燃比のばらつきが発生したりすることを抑制できる。
【0039】
尚、簡易には、ステップS3において、ステップS1で検出した吹き返しEGRガス量(内部EGRガス量)Wmと、ステップS2で検出した第1吸気ポート113aを流れる吸入空気の流速ASとから、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期を設定させるようにして、内部EGRの吸入期間TSの算出を省略することができる。
また、図7に示すように、燃料噴射弁106として、第1吸気ポート113a(第1吸気弁105a)に向けて燃料を噴射すると共に、第2吸気ポート113b(第2吸気弁105b)に向けても燃料を噴射する2方向噴射弁を1つ備える場合には、ステップS4で設定した噴射開始時期で燃料噴射を開始させるようにすればよく、上記の2方向噴射弁を各気筒に1つ備えるエンジン101にも、上記の噴射開始時期の設定処理を適用できる。
また、第1燃料噴射弁106aによる燃料噴射量と、第2燃料噴射弁106bによる燃料噴射量との比率を、各吸気弁105a,105bを介して燃焼室104に導入される新気の比率に合わせることで、混合気における空燃比ばらつきを抑制できる。
【0040】
ところで、上記実施形態は、燃焼ガスが燃焼室104から第1吸気ポート113a内に吹き返す内部EGRを行わせることで、第1吸気ポート113aに対して燃焼ガスを導入させるようにしたが、図8に示すように、第1燃料噴射弁106a下流側の第1吸気ポート113aと排気管111とを連通させる排気還流通路122(燃焼ガス導入手段)と、該排気還流通路122に介装され排気還流量(外部EGRガス量)を制御する排気還流弁(電磁バルブ)123とを備え、排気管111から燃焼ガスを第1吸気ポート113aに還流(導入)させる外部EGRを行うエンジン101においても、外部EGRガス量と吸入空気の流速ASとから、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期を設定することにより、上記実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0041】
尚、上記の外部EGRを行うエンジン101の場合、吸気弁105a,105bの開時期IVOの設定によって吹き返しガス(内部EGR)を第1吸気ポート113aに導入する必要はないので、吸気弁105a,105bのバルブタイミングを同じに揃えることができる。
図9のフローチャートは、図8に示した構造によって外部EGRを行うエンジン101において、エンジン制御装置201が実施する第1燃料噴射弁106aの噴射開始時期の設定処理を示す。
【0042】
図9のフローチャートに示すルーチンは、エンジン制御装置201によって一定時間毎に実施され、まず、ステップS21(ガス量検出手段)では、排気還流通路122を介して第1吸気ポート113a内に導入される外部EGR量Wm1(第1吸気ポート113a内に導入される燃焼ガス量)を算出する。
前記外部EGR量Wm1の算出は、排気管111内の圧力と、吸気管102内の圧力PBとの差圧に基づいて行われる。即ち、外部EGRは、前記差圧に基づき排気管111内の燃焼ガスを吸気管102内に還流させるものであり、差圧が大きいほど、換言すれば、排気管111内の圧力よりも吸気管102内の圧力PBが低いほど、還流される燃焼ガスの量が増えることになる。
【0043】
そこで、ステップS21では、排気管111内の圧力と、吸気管102内の圧力PBとの差圧が大きいほど、外部EGR量Wm1が多いと推定する。
ここで、吸気管102内の圧力PBは、吸気圧センサ121の出力から検出できる他、吸気圧センサ121を備えないエンジン101では、スロットル開度TVOとエンジン回転速度NEとから推定できる。
【0044】
また、排気管111内の圧力は、スロットル開度TVOとエンジン回転速度NEとに基づき推定できる他、圧力センサで検出させることができる。
また、吸気管102内の圧力及び排気管111内の圧力は、共にスロットル開度TVOとエンジン回転速度NEとに基づき推定できるから、スロットル開度TVOとエンジン回転速度NEとから差圧を推定することができる。
【0045】
尚、排気還流弁(電磁バルブ)123が開又は閉に制御される場合は、上記のように、開状態での排気還流弁(電磁バルブ)123の前後差圧から、外部EGR量Wm1を推定できるが、排気還流弁(電磁バルブ)123の開度を変化させて、外部EGR量Wm1を調整する場合には、排気還流弁(電磁バルブ)123の開度と前記差圧とから、外部EGR量Wm1を推定できる。
また、吸気弁105a,105bのバルブタイミングが可変動弁機構114a,114bによって可変とされる場合、バルブタイミング(開時期IVO)が進角され、バルブオーバーラップ期間が拡大すると、内部EGR量が増えるので、バルブタイミングが進角されるほど、外部EGR量Wm1を増大補正し、内部EGR量の含むガス量として外部EGR量Wm1を算出させてもよい。
【0046】
また、外部EGR量Wm1をバルブタイミング(バルブオーバーラップ期間)に応じて補正する代わりに、バルブタイミングの進角に伴う内部EGR量の増大に応じて、後述する吸入期間TS1を増大補正したり、噴射開始時期をより遅い時期に補正したりすることができる。
【0047】
次のステップS22(流速検出手段)では、前記ステップS2と同様にして、吸気行程において第1吸気ポート113aを流れる吸入空気の流速ASを検出する。
そして、ステップS23では、ステップS21で検出した外部EGR量Wm1と、ステップS22で検出した第1吸気ポート113aを流れる吸入空気の流速ASとから、外部EGRの吸入期間TS1を算出する。
【0048】
外部EGRによって第1吸気ポート113a内に燃焼ガスを導入する場合、吸気上死点TDCから吸気下死点BDCに向けて徐々に第1吸気ポート113a内の圧力は上昇し、排気管111内の圧力と吸気管102内の圧力PBとの差圧は徐々に小さくなる。
このため、図10に示すように、第1吸気弁105aを介して燃焼室104内に導入されるガスは、吸気行程の当初は外部EGRがその殆ど占めるが、その後は、外部EGRが占める割合が徐々に小さくなり、相対的に新気が占める割合が高くなる。
ここで、外部EGRの吸入期間TS1としては、例えば、吸気上死点TDCから、燃焼室104内に導入されるガスのうち外部EGRが占める割合が減少に転じるまでの期間として算出させる。そして、外部EGRの吸入期間TS1を、外部EGR量Wm1が多いほど長く、かつ、吸入空気の流速ASが遅いほど長い期間として算出する。
【0049】
ステップS24(噴射開始時期設定手段)では、ステップS23で算出した外部EGRの吸入期間TS1に基づき、第1燃料噴射弁106aの噴射開始時期を設定する。
ここで、外部EGRの吸入期間TS1が長いほど、吸気上死点TDCからより遅れた時期を、第1燃料噴射弁106aの噴射開始時期に設定する。
【0050】
このようにして、第1燃料噴射弁106aの噴射開始時期を設定すれば、第1吸気弁105aを介し、外部EGRガスに続けて新気を燃焼室104内に導入させても、外部EGRガスの燃焼室104への導入量が減り始めてから第1燃料噴射弁106aによる燃料噴射を開始させるので、外部EGRガスに燃料が混じることを抑制し、新気に燃料を混ぜることができる。
従って、第2吸気弁105bを介して燃焼室104に新気が導入されると共に、第1吸気弁105aを介しても新気を燃焼室104に導入させて、高いエンジントルクを発生させることができ、また、外部EGRガスに燃料が混じらないので、EGR成層燃焼における成層度を確保して、外部EGR量の拡大を図れ、燃費性能を改善でき、更に、新気に均一に燃料を混合させて高い燃焼安定性を実現できる。
【0051】
また、外部EGRガス量Wm1が多いほど外部EGRの吸入期間TS1が長くなり、かつ、吸入空気の流速ASが遅いほど外部EGRの吸入期間TS1が長くなることに対応して、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期を可変に設定するので、外部EGRガス量Wm1及び/又は吸入空気の流速ASが異なっても、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期が早過ぎて外部EGRガスに燃料が混ざってしまうことを抑制でき、かつ、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期が過剰に遅くなって新気における空燃比のばらつきが発生したりすることを抑制できる。
【0052】
尚、簡易には、ステップS23において、ステップS21で検出した外部EGRガス量Wm1と、ステップS22で検出した第1吸気ポート113aを流れる吸入空気の流速ASとから、第1燃料噴射弁106aによる噴射開始時期を設定させるようにして、外部EGRの吸入期間TS1の算出を省略することができる。
また、燃料噴射弁106として、第1吸気ポート113a(第1吸気弁105a)に向けて燃料を噴射すると共に、第2吸気ポート113b(第2吸気弁105b)に向けても燃料を噴射する2方向噴射弁を1つ備える場合には、ステップS24で設定した噴射開始時期で燃料噴射を開始させるようにすればよく、上記の2方向噴射弁を各気筒に1つ備えかつ外部EGRが行われるエンジン101にも、上記の噴射開始時期の設定処理を適用できる。
【0053】
ところで、外部EGRを行う場合、図10に示したように、外部EGR量は吸気行程中に徐々に低下し、新気が導入されるようになってからも新気と共に外部EGRガスが、第1吸気弁105aを通過することになる。
従って、第1燃料噴射弁106aから噴射される燃料噴霧の貫徹力が強いと、噴射開始時期を新気の吸引開始後に設定しても、排気還流通路122を介して第1吸気ポート113a内に導入された外部EGRガスにまで燃料噴霧が到達し、燃料が外部EGRに混じる可能性が高まってしまう。
【0054】
そこで、外部EGRを行うエンジン101においては、排気還流通路122が合流する箇所よりも手前の第1吸気ポート113a内に存在している新気に対し、第1燃料噴射弁106aが噴射した燃料が混じるように、換言すれば、第1燃料噴射弁106aの燃料噴霧が、排気還流通路122が合流する箇所の下流側まで到達することを抑制できるように、第1燃料噴射弁106aの燃料噴霧の貫徹力を弱くすることが好ましい。
貫徹力を弱くする手段としては、第1燃料噴射弁106aから噴射される燃料噴霧の粒径を小さくする手段の他、図11に示すように、第1燃料噴射弁106aからの燃料噴射を複数回に分割して行わせることで、1回当たりの噴射時間を短くする手段(分割噴射制御手段)を用いることができる。
【0055】
第1燃料噴射弁106aによる噴射を複数回に分けて行い、1回当たりの噴射時間を短くすれば、燃料噴霧の貫徹力が弱まり、排気還流通路122の合流点以降まで燃料噴霧が到達することを抑制でき、排気還流通路122の合流点よりも手前の新気に燃料を混ぜることができ、以って、外部EGRガスに燃料が混じることを抑制できる。
ここで、燃料噴射の分割回数を多くして、1回当たりの噴射時間をより短くすれば、燃料噴霧の貫徹力が弱くなるが、燃料噴射の分割回数を多くするほど、噴射終了時点から次の噴射を開始するまでの間隔時間の総和が長くなり、同じ燃料噴射量に対して最終的に燃料噴射を終えるまでの時間が長くなる。
【0056】
従って、吸気弁105aの開弁時間、換言すれば、燃料噴射の可能時間の長短に応じて分割回数を設定することが好ましい。例えば、図12に示すように、吸気弁105aの開弁時間が長いほど、分割回数を多く設定し、設定した分割回数で、燃料噴射パルス幅TIを除算して、1回当たりの噴射パルス幅を決定し、初回の噴射開始時期を、前述の外部EGRガス量Wm1及び吸入空気の流速ASに応じて決定した噴射開始時期として、初回の噴射が終了した一定時間後に2回目の噴射を開始させ、最終的には、設定した分割回数だけ噴射を繰り返すようにする。
吸気弁105aの開弁時間は、吸気弁105aの作動角とそのときのエンジン回転速度NEから求めることができる。
【0057】
また、第1吸気弁105aを通過して燃焼室104内に吸引される外部EGRガスの量は吸気行程中に徐々に低下するから、吸気行程の後半ほど(吸気下死点BDCに近づくほど)、燃料噴霧の貫徹力が強くなっても、外部EGRに対して燃料が混じることを抑制でき、また、分割各回の噴射パルス幅(1回当たりの噴射量)をなるべく大きくすれば、新気吸入中に燃料噴射していない期間が減って、新気に対して燃料を均一に混合させることができる。
そこで、分割噴射においては、各回の噴射パルス幅を均一にするのではなく、図13に示すように、噴射回数の増加に対して噴射パルス幅(燃料噴射量)を増大変化させることが好ましい。ここで、噴射回数が増える毎に、前回よりも噴射パルス幅を増大させても良いし、例えば、2回目以降の噴射における噴射パルス幅を同じに設定し、係る2回目以降の噴射における噴射パルス幅を、1回目の噴射における噴射パルス幅よりも長くすることができる。
【0058】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3のいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気通路として、気筒毎に第1吸気弁を備えた第1吸気ポートと第2吸気弁を備えた第2吸気ポートとを備え、
前記燃料噴射弁として、前記第1吸気ポート内に燃料を噴射する第1燃料噴射弁と、前記第2吸気ポート内に燃料を噴射する第2燃料噴射弁とを備え、
前記燃焼ガス導入手段が、前記第1吸気弁をピストン上昇中に開弁させる一方、前記第2吸気弁をピストン上死点以降に開弁させることで、燃焼室内の燃焼ガスを前記第1吸気ポート内に導入させ、
前記噴射開始時期設定手段は、前記第1吸気ポート内に導入された燃焼ガスが前記第1吸気弁を介して燃焼室内に導入された後の新気導入開始時期に応じて、前記第1燃料噴射弁の噴射開始時期を設定する内燃機関の制御装置。
【0059】
係る構成では、第1吸気ポートから、燃焼ガス(内部EGRガス)の導入に続けて新気を燃焼室内に導入するので、第1吸気ポートと第2吸気ポートとから並行してガスを燃焼室内に導入することができ、燃焼室内におけるスワールの形成を抑制でき、EGR成層燃焼を可能にでき、かつ、内部EGRガスに燃料が混じることを抑制して成層度を向上させることができるので、EGR量の増量によって燃費性能を改善できる。
【0060】
(ロ)請求項3記載の内燃機関の制御装置において、
前記分割噴射制御手段は、噴射回数の増加に対して1回当たりの燃料噴射量を増大させる内燃機関の制御装置。
係る構成では、噴射開始当初の新気比率が小さいときは、噴射量の抑制によって燃料噴霧の貫徹力を弱め、外部EGRに対して燃料が混じることを抑制し、新気比率の増大に応じて噴射量(噴射パルス幅)を増大させて、新気に対する燃料の混合性を改善して、高い燃焼性を実現できる。
【符号の説明】
【0061】
101…エンジン(内燃機関)、105a,105b…吸気弁、106a,106b…燃料噴射弁、107…点火プラグ、109…クランクシャフト、110a,110b…排気弁、113a,113b…吸気ポート、114a,114b…可変動弁機構、115…点火モジュール、201…エンジン制御装置、203…クランク角センサ、204…カム角センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路内に燃料を噴射する燃料噴射弁を備えた内燃機関の制御装置であって、
前記吸気通路内に燃焼ガスを導入する燃焼ガス導入手段と、
前記燃焼ガス導入手段によって前記吸気通路内に導入される燃焼ガス量を検出するガス量検出手段と、
前記吸気通路内を流れる吸入空気の流速を検出する流速検出手段と、
前記吸気通路内に導入される燃焼ガス量が多いほど前記燃料噴射弁による噴射開始時期をより遅い時期に設定し、かつ、前記吸入空気の流速が遅いほど前記噴射開始時期をより遅い時期に設定する噴射開始時期設定手段と、
を含む内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記燃焼ガス導入手段が、吸気バルブと排気バルブとのバルブオーバーラップ期間を可変に制御して、前記吸気通路内に導入される燃焼ガス量を制御し、
前記ガス量検出手段が、前記バルブオーバーラップ期間が増加するほど前記吸気通路内に導入される燃焼ガス量をより多く検出することで、前記噴射開始時期設定手段が、前記バルブオーバーラップ期間が増加するほど前記噴射開始時期をより遅い時期に設定する請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記燃焼ガス導入手段が、前記燃料噴射弁下流側の吸気通路内に排気通路から燃焼ガスを還流させる外部EGR手段であって、
前記噴射開始時期設定手段が設定した噴射開始時期での噴射を初回として、前記燃料噴射弁による噴射を複数回に分割して行わせる分割噴射制御手段を設けた請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−60863(P2013−60863A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199323(P2011−199323)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】