説明

内燃機関の燃焼制御装置及び方法

【課題】ディーゼルエンジンの空気過剰率、吸気酸素濃度を使って着火遅れを予測し、燃料噴射タイミングを補正することで、負荷変動過渡期における有害排ガスの排出と、不安定燃焼を回避する燃焼制御装置及び方法を提供。
【解決手段】EGR装置と、運転情報に基づきディーゼルエンジン1を制御する制御装置41と、ターボチャージャー7の吸気量を測定するエアフローメータと、回転数センサと、給気マニホールド15内の吸気温度と給気圧力を検知する温度センサ44及び、圧力センサ46と、負荷を検知するアクセル開度センサ35と、を備え、制御装置41は、空気過剰率と吸気酸素濃度を用いて実着火遅れを演算する実着火遅れ演算手段が演算した値と、エンジン回転数、燃料噴射量から基準運転時の着火遅れを算出するマップを有した基準着火遅れ演算手段で演算した値とを比較して、その差に基づいて燃料噴射タイミングの補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGRを搭載した内燃機関の負荷変動時の着火タイミングを適正化して、有害排気ガスの排出と不安定燃焼の回避を図る内燃機関の燃焼制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(以後「ディーゼルエンジン」と称す)から排出される排ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)低減技術としてEGR(Exhaust Gas Recirculation)や、電子制御式インジェクタが普及している。
このような、ディーゼルエンジンでは運転条件[回転数、トルク(負荷)]ごとにEGR率や、燃料噴射タイミングの最適条件を予め決定し、その最適条件を再現するようにエンジン制御装置(以後「制御装置」と称す)によりEGRバルブや電子制御式インジェクタが制御されている。
しかし、運転条件が急変するような過渡状態においては、目標EGR量の変化に対し、実際の変化が量的に追従できず、EGR率と燃料噴射タイミングのアンバランスが生じ、NOx、PM(粒子状物質)、HC(炭化水素)などの排ガス性状の悪化や不安定燃焼が生ずる問題がある。これは排ガス系統における、排ガスの流れによる慣性力、ターボチャージャーの回転慣性力等が作用するため、電子制御式インジェクタの変動動作に追従できないことにある。
【0003】
例えば、低負荷ではEGR率を高めて噴射タイミングの進角を行い、高負荷ではEGR率を減らして噴射タイミングの遅角を行うようにセッティングされたディーゼルエンジンにおいて、高負荷から低負荷に急激に負荷が変化した場合、ターボチャージャーの慣性力やEGRバルブのアクチュエータ等による作動遅れで、空気系に遅れが生じ、実際のEGR率が目標EGR率に一致するまでには時間遅れが生ずる。
一方、燃料噴射タイミングは電子制御のため制御に遅れが生じず、EGR率が十分に増加する前に噴射タイミングだけが進角するような状態となる。
このような状態ではEGR量が少ないために着火遅れが想定よりも短くなり、着火時期が進角して、NOxの増大や騒音の増大が問題となる。
【0004】
これらの問題に対して、特開2007−198332号(特許文献1)が開示されている。
特許文献1によると、図5に開示されているように、圧縮着火式のエンジン010には、燃料を噴射供給するインジェクタ015が備えられている。ECU060は、エンジン運転情報に基づいて目標着火時期を決定し、その目標時期に応じてインジェクタ015による燃料の噴射開始時期や量などを調整している。
またエンジン010には、排ガス酸素濃度を検出する空燃比センサ051が備えられている。これらの構成において、ECU060は、等軸トルク特性として予め定めた等軸トルクとなる着火時期と排ガス酸素濃度との関係に基づき、空燃比センサ051により検出した排ガス酸素濃度に応じて目標着火時期の補正を行うことが開示されている。
これは、燃焼室023に排ガス酸素濃度を検出する空燃比センサ051が備えられた構造であり、着火タイミングを演算する要素である空気過剰率が的確に把握できないと共に、センサを設けることによるコストアップを招く不具合を有している。
また、排ガス酸素濃度だけでは空気過剰率が正確に演算できないので、ディーゼルエンジンに適用した場合正確な着火遅れを求めることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−198332号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、ディーゼルエンジンの急激な負荷変動に伴って変化する空気過剰率、吸気酸素濃度を使って着火遅れを予測し、その結果に基づいて燃料噴射タイミングを補正することで、ディーゼルエンジンの負荷変動過渡期における有害排ガスの排出と、不安定燃焼を回避するディーゼルエンジンの燃焼制御装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる目的を達成するもので、第1の発明は内燃機関の燃焼制御装置において、
前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射する電子制御式燃料噴射装置と、
前記内燃機関の排ガスの一部を燃焼室に還流させ排ガスのNOxを減少させるEGR装置と、
前記内燃機関の運転情報に基づき前記内燃機関を制御する制御装置と
前記内燃機関の吸気系に介装され、ターボチャージャーのコンプレッサに吸気される空気量を測定するエアフローメータと、
前記内燃機関の回転数を検知する回転数センサと、
前記内燃機関の給気マニホールド内の給気温度を検知する温度センサと、
前記給気マニホールド内の給気圧力を検知する圧力センサと、
前記内燃機関の負荷を検知するアクセル開度センサと、を備え、
前記制御装置は、空気過剰率と吸気酸素濃度を用いて実着火遅れを演算する実着火遅れ演算手段が演算した値と、
前記内燃機関のエンジン回転数、燃料噴射量から定常状態での基準運転時の着火遅れを算出するマップを有した基準着火遅れ演算手段で演算した値とを比較して、その差に基づいて燃料噴射タイミングの補正を行う噴射タイミング補正量演算手段を有することを特徴とする。
【0008】
このような構成により、EGRの変動に伴って変化する空気過剰率、吸気酸素濃度を使って着火遅れを予測し、その結果に基づいて燃料噴射タイミングを補正することにより、内燃機関負荷の過渡変化時におけるEGRの変化に着火タイミングが適正化され、有害排気ガスの排出と不安定燃焼を回避できる。
【0009】
また、本願発明において好ましくは、前記実着火遅れ演算手段は、前記実着火遅れτを前記空気過剰率λと、前記吸気酸素濃度[O]と、筒内温度Tの関数として以下の式によって演算されるとよい。
τ=A・exp(B/T)
A=a・λ+b・λ+c
但し、a=a・[O]+aτ;着火遅れ
b=b・ [O]+b λ;空気過剰率
c=c・ [O]+c[O];吸気酸素濃度
T;温度(筒内着火タイミング時)
【0010】
このような構成により、着火遅れτを空気過剰率λおよび吸気酸素濃度[O]の関数として計算式にて求めるようにしたので、あらためてセンサを設ける必要がなく、コストの抑制が可能となる。
【0011】
また、本願発明において給気温度の変動が大きくないエンジンの場合は、着火遅れτの演算式で用いる温度T(筒内着火タイミング時温度)を一定値とすることも出来る。
【0012】
温度T(筒内着火タイミング時)を一定値とすることで、(B/T)が定数となり、演算が簡素化される。
【0013】
また、第2の発明は、内燃機関の燃料噴射タイミングを補正する内燃機関の燃料制御方法において、
内燃機関の稼働状況に基づいてマップより燃料噴射タイミングを演算するステップと、
定常運転時のエンジン回転数と、燃料噴射量に基づいてマップにより内燃機関の基準着火遅れを演算するステップと、
前記内燃機関の稼働状況により生ずる実着火遅れを、空気過剰率、吸気酸素濃度、及び筒内温度に基づいて演算するステップと、
前記基準着火遅れと前記実着火遅れとの差に基づいて前記燃料噴射タイミングの補正量を演算するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
このような構成により、内燃機関負荷の過渡変化時におけるEGRの変化に着火タイミングが適正化され、有害排気ガスの排出と不安定燃焼を回避できる。
【0015】
また、本願発明において好ましくは、前記着火遅れを演算するステップは前記空気過剰率λと、前記吸気酸素濃度[O]と、吸気マニホールド内の給気温度[Tin]に基づいて筒内着火タイミング温度を推定し、これらに基づいて演算されることを特徴とする。
【0016】
このような構成により、空気過剰率と、吸気酸素濃度及び、筒内温度(着火タイミング時)夫々の演算値によって着火遅れを演算予測するので精度の高い着火遅れの演算ができる。
【発明の効果】
【0017】
このような構成により、EGRの変動に伴って変化する空気過剰率、吸気酸素濃度を使って着火遅れを予測し、その結果に基づいて燃料噴射タイミングを補正することにより、内燃機関負荷の過渡変化時におけるEGRの変化に追従して着火タイミングが適正化され、有害排気ガスの排出と不安定燃焼を回避することができる効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る概略構成図を示す。
【図2】本発明の実施形態に係る制御ブロック図を示す。
【図3】本発明の実施形態に係る吸気過剰率と着火遅れの関係図を示す。
【図4】本発明の実施形態に係る噴射タイミング補正制御のフロー図を示す。
【図5】従来技術による概略構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図に沿って詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0020】
図1は本発明実施形態のディーゼルエンジン燃焼制御装置を実施するための概略構成図を示し、ディーゼルエンジン1のエンジン本体21の排気マニホールド39に取付けられ、該排気マニホールド39に接続した排気系下流側の排気管23には、ディーゼルエンジン1の排ガスで駆動される排気タービン3を備えたターボチャージャー7が配置されている。ターボチャージャー7には排気タービン3と同軸に配置され、排気タービン3の駆動力によって吸気を加圧するコンプレッサ5が配設されている。
【0021】
また、ディーゼルエンジン1のエンジン本体21吸気マニホールド15に取付けられ、吸気マニホールド15に接続した吸気系上流側の給気管9には、吸気流量をコントロールする吸気スロットルバルブ13と、さらにその上流側にはターボチャージャー7のコンプレッサ5で加圧され、上昇した吸気を冷やすエアクーラ11が介装されている。さらに、エアクーラ11の吸気系上流側には既述のコンプレッサ5、コンプレッサ5の吸気入口にはエアクリーナ(図示省略)からの吸気流量を計測するエアフローメータ48が設けられている。
【0022】
また、吸気マニホールド15の吸気スロットルバルブ13の下流側近傍と、排気マニホールド39とを連結するEGRガス通路25が配設され、EGRガス通路25の中間部には、排気マニホールド39側にEGRガスを冷却するEGRクーラ27、EGRガス通路25のEGRクーラ27の下流側(吸気マニホールド15側)にはEGRガスの流量をコントロールするEGRバルブ29が配設されEGR装置を構成している。
【0023】
ディーゼルエンジン1の運転を制御する制御装置(ECU)41には燃焼室22に配設したインジェクタ(図示省略)から燃料を噴射させる燃料噴射制御装置19と、エアフローメータ48からの信号をA/D変換するエアフローメータA/D変換器49と、吸気マニホールド15に配設され、吸気マニホールド15内の吸気温度を検知する温度センサ44及びその吸気圧力を検知する圧力センサ46夫々からの信号をA/D変換する吸気温度A/D変換器45及び圧力A/D変換器47と、EGRバルブ29のEGR流量をコントロールするEGR制御装置33と、吸気流量を制御するスロットルバルブ制御装置31と、エンジン回転数を検知する回転数センサ42の信号を処理するパルスカウンタ43と、エンジンの負荷をアクセル開度で検知するアクセル開度センサ(負荷センサ)35と、これらの情報に基づいて燃料噴射制御装置19、EGR制御装置33及びスロットルバルブ制御装置31を制御する制御ユニット(CPU)50とを備えている。
【0024】
図2は制御ユニット(CPU)50の制御ブロックを示すもので、回転数センサ42の検知値と、アクセル開度センサ35(アクセル開度により燃料噴射量を検知)の検知値に基づいて予め実験値により作成された噴射タイミングマップ51から現状の噴射タイミングを演算する。
さらに、基準着火遅れ演算手段は、回転数センサ42の検知値と、アクセル開度センサ35の検知値に基づいて予め実験値により作成された基準着火遅れマップ52から基準着火遅れを演算するものである。
【0025】
次に、エアフローメータ48の検知値(空気流量)と、温度センサ44の検知値と、圧力センサ46の検知値と、エンジン回転数及びアクセル開度センサ35から求めた燃料噴射量に基づいて空気過剰率と、吸気酸素濃度とを演算する。
本実施形態の場合は、空気過剰率と、吸気酸素濃度は次の算式によって求める。
吸気酸素濃度O2In、及び空気過剰率λ




Tcyl=Tin・εk-1 ・・・・・・(4)

Gegr=Gcyl―Ga ・・・・・・(5)


但し、
2In:吸気酸素濃度演算結果 λ:空気過剰率演算結果
Gcyl:シリンダ吸入ガス量 ηv:体積効率
Pin:インレットマニホールド内圧力 Po:標準大気圧
Tin:インレットマニホールド内温度 To:標準大気温度(0℃)
Vcyl:総排気量 Ne:回転数
Gegr:EGRガス流量 Ga:吸入空気流量
Gegra:EGRガス中の空気流量 Gf:燃料流量
Lth:理論空気量 k:比熱比:定数
ρ air:空気密度(0℃ 標準大気) Tcyl:着火時の筒内温度
ρ in:吸入ガス密度(0℃ 標準大気) ε:圧縮比
λ(n―1):1ステップ前の空気過剰率演算結果
として求めることができる。
上述の「着火時の筒内温度:Tcyl」は吸気マニホールド内の吸気温度から圧縮比及び、空気密度等の条件から筒内温度演算部55(図2参照)において演算される。
【0026】
図2に示すように、これらの空気過剰率演算部53、吸気酸素濃度演算部54及び、筒内温度演算部55からの演算結果に基づいて、実着火遅れ演算部56にて実着火遅れを演算する。
【0027】
本実施形態の場合、実着火遅れτ実着火遅れ演算部56にて演算する演算方法は以下による。
τ=A・exp(B/T) ・・・・・・(7)
A=a・λ+b・λ+c ・・・・・・(8)
但し、a=a・[O]+a τ;着火遅れ
b=b・[O]+b λ;空気過剰率
c=c・[O]+c[O];吸気酸素濃度
T;温度(筒内着火タイミング温度)
尚、温度T(筒内着火タイミング温度)は、運転条件ごとに予めマップ状に設定しておく方法、吸気温度の計測値を用いて演算する方法、又は吸気温度の計測値に基づいて、運転条件ごとに予め設定したマップを補正する方法または、運転条件にかかわらず一定値として演算することができる。
尚、筒内温度(筒内着火タイミング温度)を一定にすると、筒内温度演算部55が不要となり、演算が速くなると共に、制御ユニット(CPU)50のが簡素化され、コスト低減が可能となる。
【0028】
また、図3は縦軸に着火遅れτと、横軸に空気過剰率λ(酸素過剰率、吸気酸素濃度)との関係を酸素濃度別に実験値より求めたものである。
酸素濃度=21%,18%及び15%において実施されており、酸素濃度が高いと着火遅れが小さく表れている。
この特性結果に基づいて、式(8)のAのa,b,cの条件を決め、式(7)によって実着火遅れτを演算する。
【0029】
次に、噴射タイミング補正量演算部57は、実着火遅れ演算部で演算された実着火遅れ値と基準着火遅れマップで算出された基準着火遅れ値とを比較して、噴射タイミングの補正量を決定する噴射タイミング補正量演算手段である。制御部58にて噴射タイミングマップ51で算出した噴射タイミングに、噴射タイミング補正量演算部にて演算した噴射タイミングの補正量をプラスして、燃料噴射制御装置19に出力して、インジェクタより燃料噴射が実施される。
【0030】
図4は噴射タイミング制御のフローを示し、エンジン1の運転状況が変化すると、ステップS1において噴射タイミング制御がスタートする。ステップS2に進み、回転数センサ42からエンジン回転数、アクセル開度センサ41からアクセル開度(燃料噴射量を検知)、エアフローメータ48から空気流量、温度センサ44から吸気温度を読み込む。これらは筒内温度、吸気過剰率、吸気酸素濃度、着火遅れ等を演算するための処置である。
ステップ3に進み、エンジン回転数と燃料噴射量から噴射タイミングをマップより演算する。ステップ4に進み、エンジン回転数と燃料噴射量から基準着火遅れをマップより演算する。ステップ5に進み、空気過剰率、吸気酸素濃度、筒内温度から実着火遅れを演算する。
ステップ6に進み、ステップ4の基準着火遅れ値と、実着火遅れ値より噴射タイミング補正量を演算する。ステップ7に進み、噴射タイミング補正量に基づいた補正後の噴射タイミングの指令を燃料噴射制御装置19に出力する。ステップ8に進み制御処理を終了する。
【0031】
本実施形態によれば、空気過剰率と、吸気酸素濃度及び、筒内温度(着火タイミング時)夫々の演算値によって着火遅れを演算予測して、その結果に基づいて燃料噴射タイミングを補正することで、EGRの過渡変化時においても着火タイミングが適正化され、有害排ガスの排出と、不安定燃焼を回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
負荷変動の大きい内燃機関のEGR装置作動時における有害ガス排出の抑制と、安定した燃焼を確保する内燃機関に用いることに適している。
【符号の説明】
【0033】
1 ディーゼルエンジン
3 排気タービン
5 コンプレッサ
7 ターボチャージャー
15 インレットマニホールド
19 燃料噴射制御装置
23 排気管
35 アクセル開度センサ(負荷センサ)
39 排気マニホールド
41 制御装置
42 回転数センサ
44 温度センサ
46 圧力センサ
48 エアフローメータ
50 制御ユニット(CPU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼制御装置において、
前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射する電子制御式燃料噴射装置と、
前記内燃機関の排ガスの一部を燃焼室に還流させ排ガスのNOxを減少させるEGR装置と、
前記内燃機関の運転情報に基づき前記内燃機関を制御する制御装置と
前記内燃機関の吸気系に介装され、ターボチャージャーのコンプレッサに吸気される空気量を測定するエアフローメータと、
前記内燃機関の回転数を検知する回転数センサと、
前記内燃機関の給気マニホールド内の給気温度を検知する温度センサと、
前記給気マニホールド内の給気圧力を検知する圧力センサと、
前記内燃機関の負荷を検知するアクセル開度センサと、を備え、
前記制御装置は、空気過剰率と吸気酸素濃度を用いて実着火遅れを演算する実着火遅れ演算手段が演算した値と、
前記内燃機関のエンジン回転数、燃料噴射量から定常状態での基準運転時の着火遅れを算出するマップを有した基準着火遅れ演算手段で演算した値とを比較して、その差に基づいて燃料噴射タイミングの補正を行う噴射タイミング補正量演算手段を有することを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項2】
前記実着火遅れ演算手段は、前記実着火遅れτを前記空気過剰率λと、前記吸気酸素濃度[O]と、筒内温度Tの関数として以下の式によって演算されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃焼制御装置。
τ=A・exp(B/T)
A=a・λ+b・λ+c
但し、a=a・[O]+a τ;着火遅れ
b=b・ [O]+b λ;空気過剰率
c=c・[O]+c[O];吸気酸素濃度
T;温度(筒内着火タイミング時)
【請求項3】
前記着火遅れτの演算式で用いる温度T(筒内着火タイミング時)を一定値とすることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項4】
内燃機関の燃料噴射タイミングを補正する内燃機関の燃料制御方法において、
内燃機関の稼働状況に基づいてマップより燃料噴射タイミングを演算するステップと、
定常運転時のエンジン回転数と、燃料噴射量に基づいてマップにより内燃機関の基準着火遅れを演算するステップと、
前記内燃機関の稼働状況により生ずる実着火遅れを、空気過剰率、吸気酸素濃度、及び筒内温度に基づいて演算するステップと、
前記基準着火遅れと前記実着火遅れとの差に基づいて前記燃料噴射タイミングの補正量を演算するステップと、を備えたことを特徴とする内燃機関の燃料制御方法。
【請求項5】
前記着火遅れを演算するステップは前記空気過剰率λと、前記吸気酸素濃度[O]と、吸気マニホールド内の給気温度[deg]に基づいて筒内着火タイミング温度を推定し、これらに基づいて演算されることを特徴とする請求項4記載の内燃機関の燃料制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−87743(P2012−87743A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236984(P2010−236984)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】