説明

冷却装置

【課題】内燃機関の冷却効果を損なうことなく、冷却能力の余剰を利用して通常走行時等における内燃機関の燃焼室内の温度上昇に起因したノッキングを効率的に防止することができる冷却装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両1に適用され、エンジン冷却部50のエンジン用冷却水通路54から分岐する吸気用冷却水通路66が形成された吸気冷却部60と、吸気冷却部60内の冷却水を循環させる電動ウォータポンプ61と、ラジエータ水温Trを検出するラジエータ出口水温センサ64と、エンジン水温Teを検出するエンジン出口水温センサ65とを備えたエンジン用冷却装置40において、制御部10が、ラジエータ水温Trがラジエータ水温Trthを超えたときに電動ウォータポンプ61を駆動制御する一方、エンジン水温Teがエンジン水温Tethを超えたときに電動ウォータポンプ61の駆動を停止させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、特に、電気機器用の冷却装置と独立して設けられた内燃機関用のハイブリッド車両の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイブリッド車両の冷却装置においては、エンジンを冷却するエンジン用冷却装置とモータ等を冷却するモータ用冷却装置とが独立して設けられ、互いに異なる冷媒循環系統によって構成されている。
【0003】
ここで、上述のエンジン用冷却装置における冷却能力は、ラジエータの放熱能力によって定められており、特に登坂走行や高速走行時の最もエンジン負荷の高い条件においてもエンジンを十分に冷却可能な冷却能力に予め設定されている。
【0004】
また、上述のようなハイブリッド車両のエンジンは、例えば実圧縮比に比べて膨張比を高くして熱効率を高めた、いわゆるアトキンソンサイクル等を採用することにより、特にエンジン負荷の比較的少ない例えば市街地等の通常走行時等においては、燃焼室内の混合気の燃焼や気筒内におけるフリクションによる発熱が減少した状態となっている。したがって、上述のアトキンソンサイクル等を採用するエンジンを搭載するハイブリッド車両に適用されるエンジン用冷却装置にあっては、エンジンの熱効率が高められているため、上述の通常走行時等においてエンジン用冷却装置の使用頻度が減少する。このため、上述のエンジン用冷却装置においては、エンジンを冷却するための冷却装置の冷却能力が、上述の予め設定された冷却能力に比べて余剰となっている。
【0005】
ところで、上述のエンジン用冷却装置によって冷却されるハイブリッド車両のエンジンは、図14に示すように、ハイブリッドシステムを採用しない一般の車両に搭載されるエンジンと比較して、特にエンジン回転数が低回転で、かつエンジントルク(エンジン負荷)が高負荷の領域で使用されるため、燃費の向上を図ることができる。すなわち、図14に示す破線aおよびbは、ハイブリッドシステムを採用しない一般の車両に搭載されるエンジンの動作線を示し、実線f〜fは、燃費等高線を示し、fからfに向かうに従い燃費が良くなることを示している。また、太実線cは、ハイブリッドシステムを採用する車両に搭載されるエンジンの動作線を示している。したがって、ハイブリッド車両のエンジンは、図14に示す太実線cに示すように、特に燃費の良いf領域を中心に動作線が設定されるようになっているため、上述のように燃費の向上を図ることができる。
【0006】
一方で、ハイブリッド車両のエンジンは、上述のように高負荷領域で使用されるため、燃焼室内の温度が高く、ノッキングの発生し易い状態となるおそれがある。
【0007】
他方、ハイブリッドシステムを採用しない一般の車両のエンジンにあっても、エンジンの熱効率を向上させるため高圧縮比を採用したり、エンジンの高出力化を実現するために過給手段により高過給する場合には、特にシリンダヘッドの温度が上昇することにより自然自己着火温度に達し易く、この結果ノッキングが発生し易い状態となることがある。
【0008】
従来、上述のようなシリンダヘッドの温度上昇に起因したノッキングの発生を抑制するため、主ポンプと副ポンプとを有し、主ポンプが、主冷却経路を介して冷媒をシリンダブロックの冷却ジャケットに供給した後、シリンダヘッドの冷却ジャケットに供給するとともに、副ポンプが、シリンダブロックの冷却ジャケットを経由させることなく、副冷却経路を介して冷媒をシリンダヘッドの冷却ジャケットにおける吸気口周辺部に供給するようにしたエンジンの冷却装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
このような特許文献1に記載の従来のエンジンの冷却装置にあっては、シリンダヘッドの温度がノッキングの原因である自然自己着火温度にならないようにシリンダヘッドを高冷却することにより、ノッキングの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平02−256820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述のような従来のハイブリッドシステムを採用しない一般の車両に搭載されるエンジンの冷却装置にあっては、冷却能力の余剰の有無に係わらず、低温始動時または低温時には、シリンダヘッドの冷却ジャケットへの冷媒の供給量を零または極少量とする一方、シリンダヘッドに対する熱負荷が高い時には、シリンダヘッドの冷却ジャケットへの冷媒の供給量を増加させるようになっている。このため、例えば登坂走行や高速走行時のように最もエンジン負荷が掛かる状態となっても、シリンダヘッドに対する熱負荷が高い時には、シリンダヘッドの冷却ジャケットへの冷媒の供給量が増加させられているので、本来最も冷却される必要のあるシリンダブロックの冷却ジャケットへの冷媒の供給量が減少してしまう。この結果、最もエンジン負荷の掛かる状態におけるエンジンの冷却が不十分となる可能性があった。
【0012】
また、ハイブリッド車両のエンジン用冷却装置にあっては、上述の通常走行時等における冷却能力の余剰分が有効に活用されていないという課題があった。
【0013】
本発明は、上述のような従来の課題を解決するためになされたもので、内燃機関の冷却効果を損なうことなく、冷却能力の余剰を利用して通常走行時等における内燃機関の燃焼室内の温度上昇に起因したノッキングの発生を効率的に防止することができる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る冷却装置は、上記目的達成のため、(1)内燃機関および回転電機を含み、前記内燃機関および前記回転電機の少なくとも一方を走行源とするハイブリット車両に適用される冷却装置であって、冷媒と外気との間で熱交換を行う熱交換器と、前記内燃機関を冷却するよう前記熱交換器から排出された前記冷媒を循環させる第1の循環流路が形成された第1の冷却部と、前記第1の循環流路から分岐するとともに、前記熱交換器から排出された前記冷媒を前記内燃機関に供給される吸入空気を冷却するよう循環させる第2の循環流路が形成された第2の冷却部と、前記第2の循環流路上に設けられ、前記冷媒を強制的に循環させる冷媒循環手段と、前記熱交換器から排出された前記冷媒の温度を検出する第1の冷媒温度検出手段と、前記内燃機関を冷却後の前記冷媒の温度を検出する第2の冷媒温度検出手段と、前記第1の冷媒温度検出手段が検出した前記冷媒の温度が、予め定められた第1の閾値を超えたときに前記冷媒を循環させるよう前記冷媒循環手段を制御する一方、前記第2の冷媒温度検出手段が検出した前記冷媒の温度が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えたときに前記冷媒の循環を停止させるよう前記冷媒循環手段を制御する制御手段と、を備えたもので構成される。
【0015】
この構成により、第1の冷媒温度検出手段が検出した冷媒の温度が第1の閾値を超えたときに、制御手段が冷媒を循環させるよう冷媒循環手段を制御するので、例えば内燃機関の暖機完了後の市街地等の通常走行時においては、冷却装置の冷却能力の余剰を利用して内燃機関に吸入される吸入空気を冷却することができる。このため、通常走行時においては、冷却能力の余剰を利用することにより内燃機関の燃焼室内の温度上昇を抑制することができ、燃焼室内の温度上昇に起因したノッキングの発生を防止することができる。
【0016】
一方、第2の冷媒温度検出手段が検出した冷媒の温度が第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えたときには、制御手段が冷媒の循環を停止させるよう冷媒循環手段を制御するので、例えば内燃機関に掛かる負荷が通常走行時に比べて増加する登坂走行時のような場合にあっては、本来必要とされる内燃機関の各気筒の冷却を吸入空気の冷却に優先して行うことができる。
なお、第1の閾値としては、例えば内燃機関の暖機完了後であって、内燃機関の燃焼室内の温度上昇によるノッキングが発生する可能性があるときの冷媒の温度が設定される。また、第2の閾値としては、例えば吸入空気の冷却に優先して内燃機関の各気筒を冷却する必要があるときの冷媒の温度が設定される。
【0017】
本発明に係る冷却装置は、上記(1)に記載の冷却装置において、(2)前記第2の循環流路上に設けられ、前記内燃機関から排出された排気の一部を前記内燃機関の吸気通路に還流させるEGR装置により還流させられる前記排気を前記第2の循環流路を循環する前記冷媒によって冷却するEGR冷却部と、前記EGR装置による前記排気の還流が停止したか否かを判定するEGR停止判定手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の冷媒温度検出手段が検出した前記冷媒の温度が前記第1の閾値を超えたときに、前記冷媒を循環させるよう前記冷媒循環手段を制御する一方、前記EGR停止判定手段により前記EGR装置による前記排気の還流が停止したと判定され、かつ前記EGR装置による前記排気の還流が停止した後、所定時間経過したときに、前記冷媒の循環を停止させるよう前記冷媒循環手段を制御するよう構成される。
【0018】
この構成により、第1の冷媒温度検出手段が検出した冷媒の温度が予め定められた第1の閾値を超えたときに、制御手段が冷媒を循環させるよう冷媒循環手段を制御するので、例えば内燃機関の暖機完了後の市街地等の通常走行時においては、冷却装置の冷却能力の余剰を利用してEGR装置により再循環される排気を冷却することができる。これに加えて、内燃機関に吸入される再循環される排気を含む吸入空気が第2の冷却部によってさらに冷却される。このため、通常走行時においては、冷却能力の余剰を利用することにより内燃機関の燃焼室内の温度上昇を抑制することができ、燃焼室内の温度上昇に起因したノッキングの発生を防止することができる。
【0019】
一方、EGR停止判定手段によりEGR装置による排気の還流が停止したと判定された後においては、制御手段が冷媒の循環を停止させるよう冷媒循環手段を制御するので、例えば内燃機関に掛かる負荷が通常走行時に比べて増加する登坂走行時のような場合にあっては、本来必要とされる内燃機関の冷却を吸入空気の冷却に優先して行うことができる。また、EGR装置による排気の還流が停止した後、所定時間経過したときに、第2の冷却部における冷媒の循環の停止が行われるので、EGR冷却部の過熱を抑制することができる。
【0020】
本発明に係る冷却装置は、上記目的達成のため、(3)内燃機関および回転電機を含み、前記内燃機関および前記回転電機の少なくとも一方を走行源とするハイブリット車両に適用される冷却装置であって、冷媒と外気との間で熱交換を行う熱交換器と、前記内燃機関を冷却するよう前記熱交換器から排出された前記冷媒を循環させる第1の循環流路が形成された第1の冷却部と、前記第1の循環流路から分岐するとともに、前記内燃機関から排出された排気の一部を前記内燃機関の吸気通路に還流させるEGR装置により還流させられる前記排気を冷却するよう前記冷媒を循環させる第3の循環流路が形成された第3の冷却部と、前記第3の循環流路上に設けられ、前記冷媒を強制的に循環させる冷媒循環手段と、前記内燃機関を冷却後の前記冷媒の温度を検出する第2の冷媒温度検出手段と、前記EGR装置による前記排気の還流が停止したか否かを判定するEGR停止判定手段と、前記第2の冷媒温度検出手段が検出した前記冷媒の温度が予め定められた第3の閾値を超えたときに、前記冷媒を循環させるよう冷媒循環手段を制御する一方、前記EGR停止判定手段により前記EGR装置による前記排気の還流が停止したと判定され、かつ前記EGR装置による前記排気の還流が停止した後、所定時間経過したときに、前記冷媒の循環を停止させるよう前記冷媒循環手段を制御する制御手段と、を備えたもので構成される。
【0021】
この構成により、第2の冷媒温度検出手段が検出した冷媒の温度が予め定められた第3の閾値を超えたときに、制御手段が冷媒を循環させるよう冷媒循環手段を制御するので、例えば内燃機関の暖機完了後の市街地等の通常走行時においては、冷却装置の冷却能力の余剰を利用してEGR装置により再循環される排気を冷却することができる。これにより、再循環される排気を含む内燃機関に吸入される吸入空気が冷却される。このため、通常走行時においては、冷却能力の余剰を利用することにより内燃機関の燃焼室内の温度上昇を抑制することができ、燃焼室内の温度上昇に起因したノッキングの発生を防止することができる。
【0022】
一方、EGR停止判定手段によりEGR装置による排気の還流が停止したと判定された後においては、制御手段が冷媒の循環を停止させるようEGR冷媒循環手段を制御するので、例えば内燃機関に掛かる負荷が通常走行時に比べて増加する登坂走行時のような場合にあっては、本来必要とされる内燃機関の冷却を吸入空気の冷却に優先して行うことができる。また、EGR装置による排気の還流が停止した後、所定時間経過したときに、第3の冷却部における冷媒の循環の停止が行われるので、第3の冷却部の過熱を抑制することができる。
なお、第3の閾値としては、例えば内燃機関から排出される排気の一部を内燃機関の吸気通路に還流させても内燃機関が安定した燃焼を行うことができるまで暖機されたときの冷媒の温度に設定される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、内燃機関の冷却効果を損なうことなく、冷却能力の余剰を利用して通常走行時等における内燃機関の燃焼室内の温度上昇に起因したノッキングの発生を効率的に防止することができる冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るエンジン用冷却装置が適用されるハイブリッド車両の概略を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るエンジン用冷却装置の概略を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るエンジン用冷却装置における吸気水冷スペーサの構成を説明する斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るエンジン用冷却装置における吸気水冷スペーサの構成を説明するエンジンの部分断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るエンジン用冷却装置における吸気水冷スペーサの構成を説明する図であり、(a)は、吸気水冷スペーサの正面図、(b)は、吸気水冷スペーサの拡大側面図である。
【図6】Aモードでの水温暖機性を示すグラフである。
【図7】Bモードでの水温暖機性を示すグラフである。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るエンジン用冷却装置において実行される吸気冷却制御を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るエンジン用冷却装置におけるEGR装置の概略を示す概略構成図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るエンジン用冷却装置の概略を示す概略構成図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るエンジン用冷却装置において実行される吸気冷却制御を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係るエンジン用冷却装置の概略を示す概略構成図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係るエンジン用冷却装置において実行されるEGR冷却制御を示すフローチャートである。
【図14】ハイブリッドシステムを採用する車両に適用されるエンジン動作線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るエンジン用冷却装置40が適用されるハイブリッド車両1について、説明する。
【0027】
図1に示すように、ハイブリッド車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、回転電機としてのモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2と、動力分割装置4と、デファレンシャルギア5と、ギア6およびギア7と、バッテリBと、昇圧ユニット8と、インバータ9と、制御部10と、前輪12R、12Lと、後輪13R、13Lと、電気機器用ラジエータ15、エンジン用ラジエータ16を含む冷却装置20と、を含んで構成されている。
【0028】
エンジン2は、図示しない複数の気筒を有しており、実圧縮比に比べて膨張比を高くして熱効率を高めた、いわゆるアトキンソンサイクルが採用されている。また、エンジン2は、図示しないシリンダヘッドおよびシリンダブロックを備えており、これらシリンダヘッドおよびシリンダブロック内には、図示しないウォータジャケットが形成されており、後述する冷却水が循環されるようになっている。
【0029】
モータジェネレータMG1は、動力分割装置4を介してエンジン2と連結され、主としてエンジン2によって駆動されることにより発電機として機能するとともに、エンジン2の始動時にはスタータモータとして機能するようになっている。また、モータジェネレータMG1で発電された電力は、インバータ9および昇圧ユニット8を介してバッテリBに蓄えられたり、モータジェネレータMG2の駆動に利用されるようになっている。
【0030】
モータジェネレータMG2は、そのモータ回転軸が動力分割装置4に連結され、エンジン2を補助してデファレンシャルギア5を介して前輪12R、12Lを駆動するようになっている。また、モータジェネレータMG2は、ハイブリッド車両1の制動時には、前輪12R、12Lの回転エネルギを電気エネルギに変換することにより、発電機として機能して回生発電するようになっている。得られた電気エネルギは、インバータ9および昇圧ユニット8を介してバッテリBに蓄えられるようになっている。
【0031】
動力分割装置4は、遊星歯車装置で構成されており、エンジン2とモータジェネレータMG2との間に配置されている。この動力分割装置4は、エンジン2とモータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2との間で動力の分割を行うようになっている。したがって、動力分割装置4は、エンジン2を最も効率の良い領域で動作させつつ、モータジェネレータMG1の発電量を制御してモータジェネレータMG2を駆動させることにより車速の制御を行い、全体としてエネルギ効率の良いハイブリッド車両1を実現させるようになっている。
【0032】
また、動力分割装置4を介して伝達される走行源としてのエンジン2やモータジェネレータMG2の動力は、ギア6およびギア7を介してデファレンシャルギア5に伝達され、このデファレンシャルギア5から前輪12R、12Lに伝達されるようになっている。
【0033】
バッテリBは、例えばニッケル水素またはリチウムイオンなどの二次電池から構成され、直流電源として機能するようになっている。また、バッテリBは、直流電力を昇圧ユニット8に供給するとともに、昇圧ユニット8から供給される直流電力によって充電されるようになっている。さらに、バッテリBは、直列に接続された複数の電池ユニットB0〜Bnを含んで構成されており、高電圧が確保されるようになっている。
【0034】
昇圧ユニット8は、バッテリBとインバータ9とに接続され、バッテリBから受ける直流電圧を昇圧し、昇圧された直流電圧をインバータ9に供給するようになっている。また、昇圧ユニット8は、インバータ9から供給される直流電圧をバッテリBの充電に適切な電圧に変換してバッテリBに供給するようになっている。これによりバッテリBが充電される。
また、昇圧ユニット8とバッテリBとの間には、システムメインリレー8a、8bが設けられており、車両の非運転時には高電圧の供給が遮断されるようになっている。
【0035】
インバータ9は、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2と昇圧ユニット8とに接続され、交流電力と直流電力との変換を行うようになっている。例えば、エンジン2の始動時には昇圧ユニット8から供給される直流電圧を交流電圧に変換して、モータジェネレータMG1を駆動制御するようになっている。一方、エンジン2の始動後にあっては、インバータ9は、モータジェネレータMG1が発電した交流電力を直流電力に変換して昇圧ユニット8に供給するようになっている。
また、インバータ9は、モータジェネレータMG2を駆動制御するようになっている。
【0036】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUは、RAMの一時記憶機能を利用するとともにROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。この信号処理により、制御部10は、運転者の指示およびハイブリッド車両1に設けられた各種センサからの出力に応じて、エンジン2、インバータ9、昇圧ユニット8、システムメインリレー8a、8bおよび冷却装置20の制御を行うようになっている。したがって、この制御部10は、ハイブリッド車両1を構成するとともに、冷却装置20をも構成している。
【0037】
また、制御部10には、上述の各種センサとして、例えばアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサや車速センサが接続され、この制御部10は、アクセルペダルポジションセンサから入力されるアクセル開度Accと車速センサからの入力信号に基づき検出される車速Vとに基づいて要求トルクを計算し、この要求トルクに応じた動力が出力されるようエンジン2とモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2とを制御するようになっている。
【0038】
また、制御部10には、図示しない点火装置や燃料噴射装置が接続されており、これら点火装置や燃料噴射装置の状態を把握することにより、エンジン2が始動されているか、あるいはエンジン2が停止されているかを判定するようになっている。この他、制御部10は、例えばエンジン回転数に基づいてエンジン2が始動されているか、あるいはエンジン2が停止されているかを判定するようにしても良い。
また、制御部10は、エンジン2内のウォータジャケットを通過した冷却水の温度に応じて、後述するエンジン2の暖機を実行するようになっている。
【0039】
冷却装置20は、電気機器用ラジエータ15を含む電気機器用冷却装置30と、エンジン用ラジエータ16を含むエンジン用冷却装置40とから構成されている。
【0040】
電気機器用冷却装置30は、エンジン用冷却装置40とは別個独立に設けられ、電気機器用ラジエータ15および図示しない電気機器用ウォータポンプや電気機器用ウォータポンプを駆動する電動モータ等から構成されている。このように構成された電気機器用冷却装置30は、電気機器用ラジエータ15と、電気機器としてのインバータ9、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2との間で、電気機器用ウォータポンプにより冷却水通路30aを介して冷媒としての冷却水が循環されるようになっている。すなわち、電気機器用冷却装置30は、冷却水通路30aを循環する冷却水がインバータ9、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2が発生する熱を奪い、電気機器用ラジエータ15で外気へ放熱させることにより、上述のインバータ9、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2がそれぞれ冷却されるようになっている。
【0041】
電気機器用冷却装置30は、上述のインバータ9、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2の他に、電気機器として、例えば昇圧ユニット8、制御部10やバッテリBを冷却するようにしても良い。
【0042】
エンジン用冷却装置40は、電気機器用冷却装置30とは別個独立に設けられ、エンジン用ラジエータ16および後述するエンジン用ウォータポンプ等から構成されている。このように構成されたエンジン用冷却装置40は、エンジン用ラジエータ16とエンジン2との間で、エンジン用ウォータポンプにより冷却水通路40aを介してエンジン用ラジエータ16から排出された冷媒としての冷却水が循環されるようになっている。すなわち、エンジン用冷却装置40は、冷却水通路40aを循環する冷却水がエンジン2が発生する熱を奪い、エンジン用ラジエータ16で外気へ放熱させることにより、上述のエンジン2が冷却されるようになっている。したがって、本実施の形態に係るエンジン用冷却装置40は、本発明に係る冷却装置を構成している。
【0043】
次に、図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るエンジン用冷却装置40について、詳細に説明する。
図2に示すように、エンジン用冷却装置40は、エンジン冷却部50と、吸気冷却部60と、エンジン冷却部50と吸気冷却部60とで共用されるエンジン用ラジエータ16と、ラジエータ出口水温センサ64と、エンジン出口水温センサ65と、制御部10と、を含んで構成されている。本実施の形態に係るエンジン用冷却装置40のエンジン冷却部50は、本発明に係る冷却装置における第1の冷却部を構成し、吸気冷却部60は、第2の冷却部を構成し、エンジン用ラジエータ16は、熱交換器を構成し、ラジエータ出口水温センサ64は、第1の冷媒温度検出手段を構成し、エンジン出口水温センサ65は、第2の冷媒温度検出手段を構成し、制御部10は、制御手段を構成している。
【0044】
エンジン冷却部50は、サーモスタット51と、エンジン用ウォータポンプ52と、ヒータコア53と、を含んで構成されており、サーモスタット51、エンジン用ウォータポンプ52およびヒータコア53とエンジン用ラジエータ16との間で、冷却水通路40a(図1参照)の一部を構成する後述のエンジン用冷却水通路54、バイパス通路56およびヒータコア用冷却水通路58を介して、冷却水が循環されるようになっている。
ここで、エンジン用冷却水通路54は、エンジン用ラジエータ16のラジエータ出口部16aからサーモスタット51に流動する冷却水が流通される流路54aと、サーモスタット51からエンジン用ウォータポンプ52を介してエンジン2を構成する図示しないシリンダブロックやシリンダヘッド内に形成されたウォータジャケット内を通ってエンジン出口部2aに流動する冷却水が流通する流路54bと、エンジン出口部2aからエンジン用ラジエータ16のラジエータ入口部16bに流動する冷却水が流通する流路54cとから構成されている。また、バイパス通路56は、エンジン出口部2aの流路54cから分岐してエンジン2内を流動してきた冷却水をサーモスタット51に流通させるようになっている。また、ヒータコア用冷却水通路58は、エンジン出口部2aからヒータコア53に流動する冷却水が流通する流路58aと、ヒータコア53からサーモスタット51に流動する冷却水が流通する流路58bとから構成されている。本実施の形態に係るエンジン用冷却装置40のエンジン用冷却水通路54は、本発明に係る冷却装置の第1の循環流路を構成している。
【0045】
サーモスタット51は、エンジン用ラジエータ16とエンジン用ウォータポンプ52との間のエンジン用冷却水通路54に設けられ、内部に冷却水の温度に応じて開閉する弁体が設けられている。そして、サーモスタット51は、冷却水の温度が所定値以下のとき、すなわちエンジン2の暖機時には、弁体が閉弁されて流路54aと流路54bとの連通を遮断するとともに、バイパス通路56と流路54bとを連通させるようになっている。したがって、エンジン2の暖機時は、エンジン用冷却水通路54を循環していた冷却水がエンジン用ラジエータ16を循環することなくバイパス通路56を介して、再度エンジン2に向けて循環されるようになっている。このため、エンジン2内の冷却水の温度を速やかに上昇させることができ、エンジン2の暖機を促進することができる。
【0046】
一方、サーモスタット51は、冷却水の温度が所定値を超えたとき、すなわちエンジン2の暖機完了後は、弁体が開弁されて流路54aと流路54bとを連通させるようになっている。このため冷却水の温度が適正な値まで上昇した場合には、バイパス通路56内を循環していた冷却水がエンジン用冷却水通路54を介してエンジン用ラジエータ16を循環するようになり、エンジン2内を循環することにより高温となった冷却水の熱がエンジン用ラジエータ16から外気中に放熱されるようになっている。
したがって、エンジン冷却部50は、エンジン用冷却水通路54を介して循環される冷却水がエンジン2を構成する図示しないシリンダブロックやシリンダヘッド内に形成されたウォータジャケット内を流通する際に、エンジン2で発生する熱を奪い、エンジン用ラジエータ16において外気との間で熱交換を行うことにより、エンジン2の冷却を行うようになっている。
【0047】
ここで、サーモスタット51は、冷却水の温度に応じて機械的に開弁または閉弁可能な構成としたが、これに限らず、例えば制御部と電気的に接続された制御弁を内部に有し、制御部からの信号に応じて開弁または閉弁可能な構成としてもよい。
【0048】
エンジン用ウォータポンプ52は、例えば駆動ベルトを介してエンジン2の図示しないクランクシャフトに連結され、エンジン2のクランクシャフトの回転に応じて駆動するようになっている。エンジン用ウォータポンプ52は、エンジン2とは別の駆動源、例えば電動モータ等によって駆動されるようにしても良い。
【0049】
ヒータコア53は、エンジン出口部2aの流路54cとサーモスタット51との間のヒータコア用冷却水通路58上に設けられ、エンジン出口部2aのエンジン用冷却水通路54から分岐して設けられた流路58aを介して、エンジン2内で高温となった冷却水が導入されるようになっている。ヒータコア53に導入された高温の冷却水は、ハイブリッド車両1の室内の暖房に用いられるようになっている。
【0050】
吸気冷却部60は、上述のエンジン冷却部50と独立して設けられ、電動ウォータポンプ61と、吸気水冷スペーサ62と、を含んで構成されている。そして、吸気冷却部60は、電動ウォータポンプ61および吸気水冷スペーサ62とエンジン用ラジエータ16との間で冷却水通路40a(図1参照)の一部を構成する吸気用冷却水通路66を介して、冷却水が循環されるようになっている。すなわち、吸気冷却部60は、吸気用冷却水通路66を介して循環される冷却水が吸気水冷スペーサ62内を流通する際に、エンジン2の燃焼室内に導入される吸入空気の冷却を行うようになっている。
ここで、吸気用冷却水通路66は、エンジン用冷却水通路54の流路54aから分岐するとともに、ラジエータ出口部16aから電動ウォータポンプ61に流動する冷却水が流通する流路66aと、電動ウォータポンプ61から吸気水冷スペーサ62に流動する冷却水が流通する流路66bと、吸気水冷スペーサ62からラジエータ入口部16bに流動する冷却水が流通する流路66cとから構成されている。本実施の形態に係るエンジン用冷却装置40の吸気用冷却水通路66は、本発明に係る冷却装置の第2の循環流路を構成している。
【0051】
電動ウォータポンプ61は、ラジエータ出口部16aと吸気水冷スペーサ62との間の吸気用冷却水通路66に設けられ、駆動モータ61aを有している。そして、電動ウォータポンプ61は、駆動モータ61aの駆動が制御部10によって制御されることにより、冷却水の循環、および循環の停止のいずれかを行うようになっている。したがって、本実施の形態に係るエンジン用冷却装置40の電動ウォータポンプ61は、本発明に係る冷媒循環手段を構成している。
【0052】
吸気水冷スペーサ62は、電動ウォータポンプ61とラジエータ入口部16bとの間の吸気用冷却水通路66に設けられ、電動ウォータポンプ61によってエンジン用ラジエータ16から流路66aおよび流路66bを介して冷却水が流通されるようになっている。したがって、吸気水冷スペーサ62は、後述する吸気ポート内を通ってエンジン2に導入される吸入空気を流通される冷却水によって冷却するようになっている。
【0053】
具体的には、図3および図4に示すように、吸気水冷スペーサ62は、吸気ポート2bが形成されたエンジン2のシリンダヘッド2cとインテークマニホールド71との間に、複数のボルト72および複数のナット73によって装着されるようになっている。
【0054】
また、図5(a)、(b)に示すように、吸気水冷スペーサ62には、インテークマニホールド71の複数の吸気通路71a(図4参照)に対応して、吸入空気を流通させる複数の吸気通路62aが形成されている。また、吸気水冷スペーサ62の内部には、吸気水冷スペーサ62の内部が中空状となるような冷却水流路62bが形成されており、冷却水流路62bは、冷却水入口62cおよび冷却水出口62dを介して、吸気用冷却水通路66の流路66bおよび流路66c(図2参照)のそれぞれと連通している。したがって、吸気用冷却水通路66を循環する冷却水が冷却水流路62bを介して吸気水冷スペーサ62内を流通し、エンジン2に導入される吸入空気を冷却するようになっている。そして、吸入空気を冷却した後の冷却水の熱は、流路66cを介してエンジン用ラジエータ16に導入されて、エンジン用ラジエータ16から外気中に放熱されるようになっている。
【0055】
図2に示すように、ラジエータ出口水温センサ64は、ラジエータ出口部16aの近傍に設けられ、エンジン用ラジエータ16から吸気用冷却水通路66の流路66aおよび流路66bを介して電動ウォータポンプ61および吸気水冷スペーサ62に流通する冷却水、すなわちエンジン用ラジエータ16で外気中に放熱された後、ラジエータ出口部16aから排出される冷却水の温度(以下、単にラジエータ水温Trという)を検出するようになっている。また、ラジエータ出口水温センサ64は、検出したラジエータ水温Trに応じた信号を制御部10に出力するようになっている。
【0056】
エンジン出口水温センサ65は、図示を省略しているがエンジン出口部2aの流路54cに設けられ、エンジン2のウォータジャケットを流通した後の冷却水、すなわちエンジン2の熱を奪った後の冷却水の水温(以下、単にエンジン水温Teという)を検出するようになっている。また、エンジン出口水温センサ65は、検出したエンジン水温Teに応じた信号を制御部10に出力するようになっている。本実施の形態においては、エンジン出口水温センサ65は、エンジン出口部2aの流路54cに設けられている構成としたが、これに限らず、例えばエンジン出口部2aの流路54bに設けるようにしても良い。
【0057】
制御部10には、電動ウォータポンプ61を駆動する駆動モータ61a、ラジエータ出口水温センサ64およびエンジン出口水温センサ65が接続され、ラジエータ出口水温センサ64およびエンジン出口水温センサ65の各センサからラジエータ水温Trおよびエンジン水温Teに応じた信号が入力されることにより、ラジエータ水温Trおよびエンジン水温Teが検出されるようになっている。また、制御部10には、図示しない排気浄化装置の温度センサが接続され、この温度センサから触媒温度に応じた信号が入力されるようになっている。
【0058】
制御部10は、エンジン出口水温センサ65により検出されたエンジン水温Teに基づき、エンジン2の暖機、特に吸気ポート2bの暖機が必要か否かを判定するようになっている。例えば、エンジン2の吸気ポート2bの推定壁温(℃)が所定温度(℃)に達しているか否かを、上述のエンジン水温Te(℃)によって判定するようになっている。そして、制御部10は、エンジン水温Teによって推定されるエンジン2の吸気ポート2bの推定壁温が所定温度に達していないと判定した場合、エンジン2の暖機を実行するようになっている。ここで、上述のエンジン2の暖機は、例えば燃焼温度を高めるべく、燃料噴射装置による燃料噴射量を増加させる等の制御を実行することにより行われる。
【0059】
また、制御部10は、エンジン水温Teに基づき、エンジン2の暖機、特に吸気ポート2bの暖機が完了したか否かを判定するようになっている。すなわち、制御部10は、エンジン2の吸気ポート2bの推定壁温が所定温度に達しているか否かを、上述のエンジン水温Teによって判定し、エンジン水温Teによって推定されるエンジン2の吸気ポート2bの推定壁温が所定温度に達したと判定した場合には、エンジン2の暖機が完了したものと判定するようになっている。
【0060】
また、制御部10は、上述のエンジン2の暖機が完了したか否かを判定するとともに、図示しない排気浄化装置の触媒の暖機が必要か否か、および触媒の暖機が完了したか否かを判定するようになっている。例えば、制御部10は、触媒の温度が予め実験的に求められて記憶された活性温度以上であるか、またはエンジン2の始動後、触媒温度が活性温度に達していると推定できる所定時間を経過したか否かによって、触媒の暖機が必要か否か、および触媒の暖機が完了したか否かを判定するようになっている。この他、例えば、エンジン水温Teに基づき、触媒の暖機が必要か否か、および触媒の暖機が完了したか否かを判定するようにしても良い。
【0061】
上述の触媒の暖機は、例えばエンジン2の始動後に、エンジン2に対して、点火時期を通常の点火時期より遅角する制御、いわゆる点火遅角制御を実行することにより行われる。すなわち、点火時期を遅角させることにより、燃焼時期を遅らせ、排気行程中にも燃焼させて、排気浄化装置内の触媒の温度上昇を促進させることができる。触媒の暖機は、上述の点火遅角制御に限らず、例えば、燃料噴射装置による燃料噴射量を増加させて燃焼温度を高めて排気浄化装置内の触媒の温度上昇を促進させるようにしても良い。
【0062】
また、制御部10は、ラジエータ出口水温センサ64により検出されたラジエータ水温Tr(℃)が予め実験的に求められて記憶されたラジエータ水温Trth(℃)を超えたか否かを判定するようになっている。上述のラジエータ水温Trthは、エンジン2の暖機が完了し、エンジン2の温度上昇に伴いノッキングが発生し得る状態と判定できるラジエータ水温、例えば、80℃に設定される。
【0063】
また、制御部10は、ラジエータ水温Trが上述のラジエータ水温Trthを超えたと判定した場合には、駆動モータ61aを制御することにより電動ウォータポンプ61を駆動させて、吸気冷却部60内において冷却水を循環させるようになっている。
【0064】
また、制御部10は、エンジン出口水温センサ65により検出されたエンジン水温Te(℃)が予め実験的に求められて記憶されたエンジン水温Teth(℃)以上となったか否かを判定するようになっている。上述のエンジン水温Tethは、前述のラジエータ水温Trthよりも高い値であって、例えば登坂走行時等のように走行状態によりエンジン2の冷却を優先させる必要のあるエンジン水温、例えば、100℃に設定される。
【0065】
また、制御部10は、エンジン水温Teが上述のエンジン水温Teth以上となったと判定した場合には、駆動モータ61aの駆動を停止するよう制御して電動ウォータポンプ61を停止させることにより、吸気冷却部60内における冷却水の循環を停止するようになっている。
【0066】
ここで、上述のラジエータ水温Trthの80℃およびエンジン水温Tethの100℃は、例示であって、ハイブリッド車両1やエンジン2の仕様に応じて、適宜最適なラジエータ水温Trthおよびエンジン水温Tethが設定される。
【0067】
本実施の形態に係るエンジン用冷却装置40における上述のラジエータ水温Trthは、本発明に係る冷却装置における第1の閾値に対応しており、上述のエンジン水温Tethは、本発明に係る冷却装置における第2の閾値に対応している。
【0068】
制御部10は、上述の構成に限らず、例えばエンジン2に関する制御を行うエンジン制御部と、これとは別個に設けられ、冷却装置20に関する制御を行う冷却制御部とから構成されるものであっても良く、この場合エンジン制御部と冷却制御部とは双方向通信可能に接続されるものである。
【0069】
次に、図6〜図8を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るエンジン用冷却装置40の動作について、説明する。
このエンジン用冷却装置40は、前述のようにエンジン冷却部50および吸気冷却部60を有しており、エンジン用ラジエータ16の冷却能力に余剰がある場合に、吸気冷却部60が動作するようになっている。
【0070】
先ず、図6および図7を参照して、本実施の形態に係るエンジン用冷却装置40における冷却能力の余剰について、説明する。
ここで、図6は、車速V(km/h)、エンジン水温Te(℃)およびエンジン回転数Ne(rpm)を縦軸とし、時間(sec)を横軸とするAモードでの暖機完了までのエンジン水温の推移の特性を表す水温暖機性を示すグラフである。このAモードは、車両が実際に市街地を走行する際の走行状態を想定した車両の走行モードである。また、図6に示される一点鎖線Gおよび二点鎖線Dは、それぞれハイブリッドシステムを採用しない従来のガソリン車およびディーゼル車のAモードにおける各エンジン水温(℃)を示している。また、太破線TeAおよび太実線TeAは、いずれもハイブリッドシステムを採用したハイブリッド車両のAモードにおける時間(sec)と各エンジン水温(℃)との関係を示しており、特に太実線TeAは、本実施の形態に係るハイブリッド車両1のAモードにおける時間(sec)とエンジン水温Te(℃)との関係を示している。
また、細破線VhAは、本実施の形態に係るハイブリッド車両1のAモードにおける時間(sec)と車速(km/h)との関係を示し、細実線HeAは、本実施の形態に係るハイブリッド車両1のAモードにおける時間(sec)とエンジン回転数Ne(rpm)との関係を示している。
【0071】
また、図7は、車速(km/h)、エンジン水温(℃)およびエンジン回転数Ne(rpm)を縦軸とし、時間(sec)を横軸とするBモードでの暖機完了後のエンジン水温の推移を表す水温暖機性を示すグラフである。このBモードは、車両が実際に市街地を走行する際の走行状態を想定した車両の走行モードである。
ここで、図7に示される太実線TeBは、本実施の形態に係るハイブリッド車両1のBモードにおける時間(sec)とエンジン水温Te(℃)との関係を示している。また、破線VhBは、本実施の形態に係るハイブリッド車両1のBモードにおける時間(sec)と車速(km/h)との関係を示し、細実線HeBは、本実施の形態に係るハイブリッド車両1のBモードにおける時間(sec)とエンジン回転数Ne(rpm)との関係を示している。
【0072】
図6に示すように、本実施の形態に係るハイブリッド車両1を含むハイブリッド車両にあっては、エンジンの暖機が完了しサーモスタットが開弁されてラジエータによる冷却能力を利用してエンジンを冷却し始めるエンジン水温、例えば、82℃までエンジン水温が上昇するまでの時間が、一般的なガソリン車およびディーゼル車に比べて長くなっている。これは、ハイブリッド車両においては、本実施の形態に係るハイブリッド車両1に搭載されるエンジン2のように、アトキンソンサイクルを採用することによりエンジンにおける熱効率が高められているためである。
【0073】
また、図7に示すように、本実施の形態に係るハイブリッド車両1に搭載されるエンジン2の暖機完了後のエンジン水温Teは、85℃程度であって、ガソリン車等の一般車両の暖機完了後のエンジン水温、例えば90〜95℃と比べて、低いエンジン水温となっている。このように、ハイブリッド車両1は、一般車両に比べてエンジン2が冷却水によって効率良く冷却されることを示している。
上述の各モードにおけるエンジン水温Teは、車両やエンジンの仕様に応じて適宜設定される。
【0074】
一方、本実施の形態に係るハイブリッド車両1のエンジン用ラジエータ16(図1参照)の冷却能力は、例えば登坂走行時や超高速走行時等におけるエンジン2の冷却を十分に確保できる冷却能力に予め設定されるようになっている。ここでいう冷却能力は、放熱性能を表し、放熱量kWで示される。また、エンジン用ラジエータ16の冷却能力は、車両やエンジンの仕様に応じて適宜最適な冷却能力に設定されるが、例えば車速35km/hでは20kW程度、車速180km/hでは50kW程度に設定される。しかしながら、市街地走行等のような通常走行時においては、図7に示されるように時間の経過に対してエンジン水温Teが比較的低い状態が維持されるため、エンジン2の冷却に必要となるエンジン用ラジエータ16の冷却能力は、上述の予め設定された冷却能力に比べて非常に小さい冷却能力で足りる。例えば、このような通常走行時におけるエンジン用ラジエータ16からの放熱量は、数kW程度である。
したがって、上述の通常走行時においては、エンジン用ラジエータ16を含むエンジン用冷却装置40(図2参照)の冷却能力が余剰となっている。
【0075】
他方、ハイブリッドシステムを採用する一般的なハイブリッド車両のエンジンは、図14に示すようにエンジントルク(N・m)の高い高負荷領域で使用されるため、燃焼室内の温度が高くなり、ノッキングの発生し易い状態となるおそれがある。
【0076】
そこで、本実施の形態においては、上述の通りエンジン用冷却装置40において、エンジン冷却部50と独立の冷却系統で構成された吸気冷却部60を設けて、余剰となった冷却能力を吸気冷却部60で利用することにより、上述のハイブリッド車両1の通常走行時におけるノッキングの発生を好適に防止することができる。
【0077】
以下、上述の冷却能力の余剰を利用して通常走行時におけるノッキングの発生を防止するために、ハイブリッド車両1の制御部10(図1参照)およびエンジン用冷却装置40において実行される吸気冷却制御について、説明する。
【0078】
図8に示すフローチャートは、制御部10のROMに格納された吸気冷却制御の処理プログラムの実行内容を示すもので、この処理プログラムは、制御内容を実行する単一または複数のプログラムを含んで構成されている。吸気冷却制御の処理プログラムは、所定の時間間隔で制御部10のCPUによって実行される。
【0079】
図8に示すように、制御部10は、点火装置や燃料噴射装置の状態を把握することにより、エンジン2が始動されたか否かを判定する(ステップS101)。
制御部10によりエンジン2が始動されたと判定されると(ステップS101でYES)、制御部10は、暖機が必要か否かを判定する(ステップS102)。具体的には、制御部10は、吸気ポート2bの暖機などのエンジン2の暖機が必要か否かをエンジン水温Teに基づき判定するとともに、排気浄化装置の触媒の暖機が必要か否かを触媒温度に基づき判定する。制御部10は、エンジン2の暖機および触媒の暖機が必要であると判定した場合には(ステップS102でYES)、エンジン2の暖機および触媒の暖機を実行する(ステップS103)。一方、制御部10は、エンジン2が始動されていないと判定した場合には(ステップS101でNO)、再度ステップS101の処理を繰り返す。
【0080】
次いで、制御部10は、ステップS103で実行されたエンジン2の暖機および触媒の暖機が完了したか否かを判定する(ステップS104)。具体的には、制御部10は、エンジン2の吸気ポート2bを囲むシリンダヘッド2cのエンジン水温Teから推定される推定壁温が所定温度に達しているか否かを、上述のエンジン水温Teによって判定することにより、エンジン2の暖機が完了したか否かを判定する。また、制御部10は、触媒温度が予め実験的に求められて記憶された触媒の活性温度以上であるか、またはエンジン2の始動後、触媒温度が活性温度に達していると推定できる所定時間を経過したか否かによって、触媒の暖機が完了したか否かを判定する。
【0081】
制御部10は、エンジン2の暖機および触媒の暖機が完了したと判定した場合には(ステップS104でYES)、ステップS105に処理を移行する。制御部10は、エンジン2の暖機および触媒の暖機が完了していないと判定した場合には(ステップS104でNO)、エンジン2の暖機および触媒の暖機が完了したと判定されるまでステップS104の処理を繰り返す。
【0082】
一方、制御部10は、ステップS102において、エンジン2の暖機および触媒の暖機が必要でないと判定した場合には(ステップS102でNO)、上述のステップS103およびステップS104の処理を実行することなくステップS105に処理を移行する。
次いで、制御部10は、ラジエータ出口水温センサ64とともにラジエータ水温Trを検出する(ステップS105)。
【0083】
次に、制御部10は、ラジエータ出口水温センサ64により検出されたラジエータ水温Trがラジエータ水温Trthを超えたか否かを判定する(ステップS106)。制御部10は、ラジエータ出口水温センサ64により検出されたラジエータ水温Trがラジエータ水温Trthを超えていないと判定した場合には(ステップS106でNO)、ステップS106に続くステップS107〜ステップS110の処理を実行することなくステップS111に処理を移行する。
【0084】
一方、制御部10は、ラジエータ出口水温センサ64により検出されたラジエータ水温Trがラジエータ水温Trthを超えたと判定した場合には(ステップS106でYES)、駆動モータ61aを制御することにより電動ウォータポンプ61を駆動させる(ステップS107)。したがって、吸気冷却部60内において冷却水が循環させられる。
次いで、制御部10は、エンジン出口水温センサ65とともにエンジン水温Teを検出する(ステップS108)。
【0085】
次に、制御部10は、エンジン出口水温センサ65により検出されたエンジン水温Teがエンジン水温Teth以上となったか否かを判定する(ステップS109)。制御部10は、エンジン水温Teが上述のエンジン水温Tethより低いと判定した場合には(ステップS109でNO)、ステップS108に戻り、エンジン水温Teが上述のエンジン水温Teth以上となったと判定するまでステップS108およびステップS109の処理を繰り返す。
【0086】
一方、制御部10は、エンジン水温Teが上述のエンジン水温Teth以上となったと判定した場合には(ステップS109でYES)、駆動モータ61aの駆動を停止するよう制御して電動ウォータポンプ61を停止させることにより、吸気冷却部60内における冷却水の循環を停止する(ステップS110)。
【0087】
次いで、制御部10は、点火装置や燃料噴射装置の状態を把握することにより、エンジン2が停止されたか否かを判定する(ステップS111)。制御部10は、エンジン2が停止していないと判定した場合には(ステップS111でNO)、ステップS105に戻り、再度ステップS105〜ステップS111の処理を実行する。
一方、制御部10は、エンジン2が停止したと判定した場合には(ステップS111でYES)、本処理を終了する。
【0088】
本実施の形態に係るエンジン用冷却装置40は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0089】
ラジエータ出口水温センサ64および制御部10が検出したラジエータ水温Trがラジエータ水温Trthを超えたときに、制御部10が吸気冷却部60内で冷却水を循環させるよう電動ウォータポンプ61を制御するので、例えばエンジン2の暖機完了後の市街地等の通常走行時においては、エンジン用冷却装置40の冷却能力の余剰を利用してエンジン2に吸入される吸入空気を冷却することができる。
【0090】
このため、通常走行時においては、冷却能力の余剰を利用することによりエンジン2の各気筒の充分な冷却を維持しつつ、エンジン2の燃焼室内の温度上昇を抑制することができ、燃焼室内の温度上昇に起因したノッキングの発生を防止することができる。
【0091】
一方、エンジン出口水温センサ65および制御部10が検出したエンジン水温Teがラジエータ水温Trthよりも大きいエンジン水温Teth以上となったときには、制御部10が吸気冷却部60内での冷却水の循環を停止させるよう電動ウォータポンプ61を制御するので、例えばエンジン2に掛かる負荷が通常走行時に比べて増加する登坂走行時のような場合にあっては、本来必要とされるエンジン2の各気筒の冷却を吸入空気の冷却に優先して行うことができる。
【0092】
本実施の形態に係るエンジン用冷却装置40が適用されるハイブリッド車両1の駆動形式は、本実施の形態の駆動形式に限られるものではなく、例えば内燃機関が発電用として用いられ、その発電された電力を用いて電動機を駆動することにより車輪を駆動させるいわゆるシリーズ形式の駆動形式や、内燃機関と電動機とにより車輪を駆動させるいわゆるパラレル形式の駆動形式などその他のハイブリッド駆動形式であっても良い。
【0093】
(第2の実施の形態)
次に、図1および図9〜図11を参照して本発明の第2の実施の形態に係るエンジン用冷却装置140が適用されるハイブリッド車両100について、説明する。
【0094】
本発明の第2の実施の形態に係るハイブリッド車両100のエンジン用冷却装置140においては、本発明の第1の実施の形態に係るハイブリッド車両1のエンジン用冷却装置40に後述するEGR装置130およびEGRクーラ135をさらに備えた点で異なっているが、他の構成は同様に構成されている。したがって、同一の構成については、図1から図8に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0095】
図1に示すように、ハイブリッド車両100は、内燃機関としてのエンジン102と、回転電機としてのモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2と、動力分割装置4と、デファレンシャルギア5と、ギア6およびギア7と、バッテリBと、昇圧ユニット8と、インバータ9と、制御部110と、前輪12R、12Lと、後輪13R、13Lと、電気機器用ラジエータ15、エンジン用ラジエータ16を含む冷却装置120と、を含んで構成されている。
【0096】
エンジン102は、第1の実施の形態におけるエンジン2の構成に加えて、排気ガス還流装置、いわゆるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置130を含んで構成されている。
【0097】
図9に示すように、EGR装置130は、エンジン102の燃焼室102dから排気通路103を介して排出される排気の一部をエンジン102の吸気通路104に還流させるようになっている。また、EGR装置130は、EGR管131と、EGRバルブ132と、制御部110と、を含んで構成されている。したがって、本実施の形態に係るEGR装置130は、本発明に係る冷却装置におけるEGR装置を構成し、制御部110は、EGR停止判定手段を構成している。
【0098】
EGR管131には、その内部にEGR通路131aが形成され、このEGR通路131aは、排気通路103と吸気通路104とを連通するようになっており、エンジン102から排出される排気の一部をエンジン102の吸気通路104、すなわち吸気側に再循環させる機能を有している。
【0099】
EGRバルブ132は、EGR通路131a上に設けられ、制御部110からの信号に応じて無段階に開閉されることにより、EGR通路131aを還流する排気の流量が調整されるようになっている。
【0100】
また、EGR装置130のEGR管131には、後述するEGRクーラ135が設けられている。本実施の形態に係るEGRクーラ135は、本発明に係る冷却装置におけるEGR冷却部を構成している。
【0101】
制御部110は、運転者の指示およびハイブリッド車両100に設けられた各種センサからの出力に応じて、エンジン102、インバータ9、昇圧ユニット8、システムメインリレー8a、8b、冷却装置120およびEGR装置130の制御を行うようになっている。したがって、この制御部110は、ハイブリッド車両100を構成するとともに、冷却装置120およびEGR装置130をも構成している。
【0102】
制御部110は、エンジン102の気筒内に吸入される全吸入空気量(g/rev、gは質量、revはクランク角360度、すなわちクランクシャフトの1回転を表している。)のうちEGR装置130により再循環された排気(以下、EGRガスという)の占める割合であるEGR率(%)を算出するとともに、エンジン102の運転状態、例えば要求トルク(N・m)や車速V(km/h)に応じて目標となる目標EGR率(%)を設定するようになっている。ここで、このEGR率は、気筒に吸入される吸入空気をGcyl、EGRガス量をGegrとすれば、EGR率=Gegr/Gcylで算出される。
【0103】
また、制御部110は、上述の目標EGR率に対応する開度(deg)だけ開弁するようEGRバルブ132を制御するようになっている。
【0104】
また、制御部110は、エンジン水温Teが予め実験的に求められて記憶されたエンジン水温Tethを超えたか否かを判定するようになっている。ここで、制御部110は、エンジン水温Teがエンジン水温Tethを超えていないときには、排気を吸気側に再循環させると燃焼状態が悪化することから、目標EGR率は「0」に設定され、排気の一部をエンジン102の吸気通路104に還流させないようになっている。一方、制御部110は、エンジン水温Teがエンジン水温Tethを超えたと判定した場合には、排気を吸気側に再循環させても燃焼状態が悪化しないものと判定して、EGR装置130による排気の還流が可能であると判定するようになっている。また、制御部110は、EGR装置130による排気の還流が開始された後、エンジン水温Teがエンジン水温Teth以下となったと判定した場合には、EGR装置130による排気の還流が停止したものと判定するようになっている。
【0105】
上述のエンジン水温Tethは、エンジン102から排出される排気の一部をエンジン102の吸気側に再循環させてもエンジン102が安定した燃焼を行うことができるまで暖機されたときのエンジン水温、例えば、70℃に設定される。
【0106】
上述のように構成されたEGR装置130は、エンジン102から排出される排気の一部を吸気通路104に再循環させることにより、ポンピングロスの発生を抑制して燃費の向上を図っている。さらに、このような排気の再循環によって、新しい混合気と混ぜて酸素割合を減ずることにより、燃焼温度を下げて窒素酸化物(NOx)の発生を抑制している。
【0107】
冷却装置120は、図1に示すように、電気機器用ラジエータ15を含む電気機器用冷却装置30と、エンジン用ラジエータ16およびEGRクーラ135を含むエンジン用冷却装置140とから構成されている。
【0108】
エンジン用冷却装置140は、電気機器用冷却装置30とは別個独立に設けられ、エンジン用ラジエータ16およびEGRクーラ135、エンジン用ウォータポンプ52等から構成されている。このように構成されたエンジン用冷却装置140は、エンジン用ラジエータ16とエンジン102との間で、エンジン用ウォータポンプ52により冷却水通路140aの一部を構成するエンジン用冷却水通路54、バイパス通路56およびヒータコア用冷却水通路58を介して、エンジン用ラジエータ16から排出された冷却水が循環されるようになっている。すなわち、エンジン用冷却装置140は、冷却水通路140aを循環する冷却水がエンジン102が発生する熱を奪い、エンジン用ラジエータ16で外気へ放熱させることにより、上述のエンジン102が冷却されるようになっている。本実施の形態に係るエンジン用冷却装置140は、本発明に係る冷却装置を構成している。
【0109】
次に、図10を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るエンジン用冷却装置140について、詳細に説明する。
図10に示すように、エンジン用冷却装置140は、エンジン冷却部50と、吸気冷却部160と、エンジン冷却部50と吸気冷却部160とで共用されるエンジン用ラジエータ16と、ラジエータ出口水温センサ64と、エンジン出口水温センサ65と、制御部110と、を含んで構成されている。本実施の形態に係るエンジン用冷却装置140の吸気冷却部160は、本発明に係る冷却装置における第2の冷却部を構成し、制御部110は、制御手段を構成している。
【0110】
吸気冷却部160は、上述のエンジン冷却部50と独立して設けられ、電動ウォータポンプ61と、吸気水冷スペーサ62と、EGRクーラ135と、を含んで構成されている。そして、吸気冷却部160は、電動ウォータポンプ61、吸気水冷スペーサ62およびEGRクーラ135とエンジン用ラジエータ16との間で冷却水通路140a(図1参照)の一部を構成する吸気用冷却水通路166を介して、冷却水が循環されるようになっている。すなわち、吸気冷却部160は、吸気用冷却水通路166を介して循環される冷却水が吸気水冷スペーサ62内を流通する際に、エンジン2の燃焼室102d内に導入される吸入空気の冷却を行うとともに、EGR装置130により再循環される排気を冷却するようになっている。
ここで、吸気用冷却水通路166は、エンジン用冷却水通路54aから分岐するとともに、ラジエータ出口部16aから電動ウォータポンプ61に流動する冷却水が流通する流路166aと、電動ウォータポンプ61から吸気水冷スペーサ62に流動する冷却水が流通する流路166bと、吸気水冷スペーサ62からEGRクーラ135に流動する冷却水が流通する流路166cと、EGRクーラ135からラジエータ入口部16bに流動する冷却水が流通する流路166dとから構成されている。本実施の形態に係るエンジン用冷却装置140の吸気用冷却水通路166は、本発明に係る第2の循環流路を構成している。
【0111】
EGRクーラ135は、吸気水冷スペーサ62とラジエータ入口部16bとの間の吸気用冷却水通路166に設けられ、エンジン用ラジエータ16から電動ウォータポンプ61および吸気水冷スペーサ62を介して冷却水が流通されるようになっている。これにより、EGRクーラ135は、流通される冷却水によって吸気通路104に向けてEGR通路131aを還流する排気を冷却するようになっている。EGRクーラ135は、排気を冷却することにより、流通する気体の体積が減少して、より密度の高い排気を吸気通路104に還流させることができる。
【0112】
また、制御部110は、第1の実施の形態と同様に、ラジエータ水温Trがラジエータ水温Trthを超えたと判定した場合には、駆動モータ61aを制御することにより電動ウォータポンプ61を駆動させて、吸気冷却部160内において冷却水を循環させるようになっている。
また、制御部110は、EGR装置130による排気の還流が停止した後、所定時間tが経過したか否かを判定するようになっている。
【0113】
また、制御部110は、EGR装置130による排気の還流が停止したものと判定され、かつEGR装置130による排気の還流が停止した後、所定時間tが経過したときに駆動モータ61aの駆動を停止するよう制御して電動ウォータポンプ61を停止させることにより、吸気冷却部160内における冷却水の循環を停止するようになっている。上述の所定時間tは、例えばEGRクーラ135およびEGRバルブ132の冷却を行うために十分な時間に設定されている。
本実施の形態に係るエンジン用冷却装置140における上述の所定時間tは、本発明に係る冷却装置における所定時間を構成している。
【0114】
次に、図11を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るエンジン用冷却装置140において実行される吸気冷却制御について、説明する。
【0115】
図11に示すフローチャートは、制御部110のROMに格納された吸気冷却制御の処理プログラムの実行内容を示すもので、この処理プログラムは、制御内容を実行する単一または複数のプログラムを含んで構成されている。吸気冷却制御の処理プログラムは、所定の時間間隔で制御部110のCPUによって実行される。
【0116】
図11に示すように、制御部110は、点火装置や燃料噴射装置の状態を把握することにより、エンジン102が始動されたか否かを判定する(ステップS201)。
【0117】
制御部110によりエンジン102が始動されたと判定されると(ステップS201でYES)、制御部110は、暖機が必要か否かを判定する(ステップS202)。具体的には、制御部110は、吸気ポート102bの暖機などのエンジン102の暖機が必要か否かをエンジン水温Teに基づき判定するとともに、排気浄化装置の触媒の暖機が必要か否かを触媒温度に基づき判定する。制御部110は、エンジン102の暖機および触媒の暖機が必要であると判定した場合には(ステップS202でYES)、エンジン102の暖機および触媒の暖機を実行する(ステップS203)。一方、制御部110は、エンジン102が始動されていないと判定した場合には(ステップS201でNO)、再度ステップS201の処理を繰り返す。
【0118】
次いで、制御部110は、ステップS203で実行されたエンジン102の暖機および触媒の暖機が完了したか否かを判定する(ステップS204)。具体的には、制御部110は、エンジン102の吸気ポート102b(図4参照)を囲むシリンダヘッド102dのエンジン水温Teから推定される推定壁温が所定温度に達しているか否かを、上述のエンジン水温Teによって判定することにより、エンジン102の暖機が完了したか否かを判定する。また、制御部110は、触媒温度が触媒の活性温度以上であるか、またはエンジン102の始動後、触媒温度が活性温度に達していると推定できる所定時間を経過したか否かによって、触媒の暖機が完了したか否かを判定する。
【0119】
制御部110は、エンジン102の暖機および触媒の暖機が完了したと判定した場合には(ステップS204でYES)、ステップS205に処理を移行する。制御部110は、エンジン102の暖機および触媒の暖機が完了していないと判定した場合には(ステップS204でNO)、エンジン102の暖機および触媒の暖機が完了したと判定されるまでステップS204の処理を繰り返す。
【0120】
一方、制御部110は、ステップS202において、エンジン102の暖機および触媒の暖機が必要でないと判定した場合には(ステップS202でNO)、上述のステップS203およびステップS204の処理を実行することなくステップS205に処理を移行する。
【0121】
次に、制御部110は、EGR装置130による排気の再循環が可能か否かを判定する(ステップS205)。具体的には、制御部110は、エンジン水温Teがエンジン水温Tethを超えたか否かを判定することにより、EGR装置130による排気の再循環が可能か否かを判定する。制御部110は、EGR装置130による排気の再循環が可能でないと判定した場合には(ステップS205でNO)、排気の再循環が可能と判定されるまでステップS205の処理を繰り返し実行する。
【0122】
一方、制御部110は、EGR装置130による排気の再循環が可能であると判定した場合には(ステップS205でYES)、ラジエータ出口水温センサ64とともにラジエータ水温Trを検出する(ステップS206)。
【0123】
次いで、制御部110は、ラジエータ出口水温センサ64により検出されたラジエータ水温Trがラジエータ水温Trthを超えたか否かを判定する(ステップS207)。制御部110は、ラジエータ出口水温センサ64により検出されたラジエータ水温Trがラジエータ水温Trthを超えていないと判定した場合には(ステップS207でNO)、ステップS207に続くステップS208〜ステップS211の処理を実行することなくステップS212に処理を移行する。
【0124】
一方、制御部110は、ラジエータ出口水温センサ64により検出されたラジエータ水温Trがラジエータ水温Trthを超えたと判定した場合には(ステップS207でYES)、駆動モータ61aを制御することにより電動ウォータポンプ61を駆動させる(ステップS208)。したがって、吸気冷却部60内において冷却水が循環させられる。
【0125】
次いで、制御部110は、EGR装置130による排気の再循環が停止したか否かを判定する(ステップS209)。具体的には、制御部110は、エンジン水温Teがエンジン水温Teth以下となったか否かを判定することにより、EGR装置130による排気の再循環が停止したか否かを判定する。制御部110は、EGR装置130による排気の再循環が停止していないと判定した場合には(ステップS209でNO)、排気の再循環が停止されたと判定するまでステップS209の処理を繰り返し実行する。
【0126】
一方、制御部110により、EGR装置130による排気の再循環が停止したと判定された場合には(ステップS209でYES)、制御部110は、EGR装置130による排気の還流が停止した後、所定時間tが経過したか否かを判定する(ステップS210)。制御部110は、上述の所定時間tが経過したと判定するまでステップS210の処理を繰り返し実行する。一方、制御部110は、EGR装置110による排気の還流が停止した後、所定時間tが経過したと判定した場合には(ステップS210でYES)、駆動モータ61aの駆動を停止するよう制御して電動ウォータポンプ61を停止させることにより、吸気冷却部160内における冷却水の循環を停止する(ステップS211)。
【0127】
次いで、制御部110は、点火装置や燃料噴射装置の状態を把握することにより、エンジン102が停止されたか否かを判定する(ステップS212)。制御部110は、エンジン102が停止していないと判定した場合には(ステップS212でNO)、ステップS205に戻り、再度ステップS205〜ステップS212の処理を実行する。
一方、制御部110は、エンジン102が停止したと判定した場合には(ステップS212でYES)、本処理を終了する。
【0128】
本実施の形態に係るエンジン用冷却装置140は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0129】
ラジエータ出口水温センサ64および制御部110が検出したラジエータ水温Trがラジエータ水温Trthを超えたときに、制御部110が吸気冷却部160内で冷却水を循環させるよう電動ウォータポンプ61を制御するので、例えばエンジン102の暖機完了後の市街地等の通常走行時においては、エンジン用冷却装置140の冷却能力の余剰を利用してEGR装置130により再循環される排気を冷却することができる。これに加えて、エンジン102に吸入される再循環される排気を含む吸入空気が吸気水冷スペーサ62によってさらに冷却される。このため、通常走行時においては、冷却能力の余剰を利用することによりエンジン102の燃焼室102d内の温度上昇を抑制することができ、燃焼室102d内の温度上昇に起因したノッキングの発生を防止することができる。
【0130】
一方、制御部110によりEGR装置130による排気の還流が停止したと判定された後においては、制御部110が吸気冷却部160内での冷却水の循環を停止させるよう電動ウォータポンプ61を制御するので、例えばエンジン102に掛かる負荷が通常走行時に比べて増加する登坂走行時のような場合にあっては、本来必要とされるエンジン102の各気筒の冷却を吸入空気の冷却に優先して行うことができる。また、EGR装置130による排気の還流が停止した後、所定時間tが経過したときに、上述の吸気冷却部160内での冷却水の循環の停止が行われるので、吸気冷却部160の過熱を抑制することができる。
【0131】
(第3の実施の形態)
図1および図12、図13を参照して本発明の第3の実施の形態に係るエンジン用冷却装置240が適用されるハイブリッド車両200について、説明する。
【0132】
本発明の第3の実施の形態に係るハイブリッド車両200のエンジン用冷却装置240においては、本発明の第1の実施の形態に係るハイブリッド車両1のエンジン用冷却装置40とは吸気水冷スペーサ62に代わってEGR装置135を備えるとともに、ラジエータ出口水温センサ64を備えていない点で異なり、本発明の第2の実施の形態に係るハイブリッド車両100のエンジン用冷却装置140とは吸気水冷スペーサ62およびラジエータ出口水温センサ64を備えていない点で異なっているが、他の構成は同様に構成されている。したがって、同一の構成については、図1から図11に示した第1の実施の形態および第2の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0133】
図1に示すように、ハイブリッド車両200は、内燃機関としてのエンジン102と、回転電機としてのモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2と、動力分割装置4と、デファレンシャルギア5と、ギア6およびギア7と、バッテリBと、昇圧ユニット8と、インバータ9と、制御部210と、前輪12R、12Lと、後輪13R、13Lと、電気機器用ラジエータ15、エンジン用ラジエータ16を含む冷却装置220と、を含んで構成されている。
【0134】
制御部210は、運転者の指示およびハイブリッド車両200に設けられた各種センサからの出力に応じて、エンジン102、インバータ9、昇圧ユニット8、システムメインリレー8a、8b、冷却装置220およびEGR装置130の制御を行うようになっている。したがって、この制御部210は、ハイブリッド車両200を構成するとともに、冷却装置220およびEGR装置130をも構成している。
【0135】
冷却装置220は、電気機器用ラジエータ15を含む電気機器用冷却装置30と、エンジン用ラジエータ16およびEGRクーラ135を含むエンジン用冷却装置240とから構成されている。
【0136】
エンジン用冷却装置240は、電気機器用冷却装置30とは別個独立に設けられ、エンジン用ラジエータ16およびEGRクーラ135、エンジン用ウォータポンプ52等から構成されている。このように構成されたエンジン用冷却装置240は、エンジン用ラジエータ16とエンジン102との間で、エンジン用ウォータポンプ52により冷却水通路240aの一部を構成するエンジン用冷却水通路54、バイパス通路56およびヒータコア用冷却水通路58を介してエンジン用ラジエータ16から排出された冷媒としての冷却水が循環されるようになっている。すなわち、エンジン用冷却装置240は、冷却水通路240aを循環する冷却水がエンジン102が発生する熱を奪い、エンジン用ラジエータ16で外気へ放熱させることにより、上述のエンジン102が冷却されるようになっている。本実施の形態に係るエンジン用冷却装置240は、本発明に係る冷却装置を構成している。
【0137】
次に、図12を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るエンジン用冷却装置240について、詳細に説明する。
図12に示すように、エンジン用冷却装置240は、エンジン冷却部50と、排気冷却部260と、エンジン冷却部50と排気冷却部260とで共用されるエンジン用ラジエータ16と、エンジン出口水温センサ65と、制御部210と、を含んで構成されている。本実施の形態に係るエンジン用冷却装置240の排気冷却部260は、本発明に係る冷却装置における第3の冷却部を構成している。
【0138】
排気冷却部260は、上述のエンジン冷却部50と独立して設けられ、電動ウォータポンプ61と、EGRクーラ135と、を含んで構成されている。そして、排気冷却部260は、電動ウォータポンプ61およびEGRクーラ135とエンジン用ラジエータ16との間で冷却水通路240a(図1参照)の一部を構成するEGR用冷却水通路266を介して、冷却水が循環されるようになっている。すなわち、排気冷却部260は、EGR用冷却水通路266を介して循環される冷却水がEGR装置130により再循環される排気を冷却するようになっている。
ここで、EGR用冷却水通路266は、エンジン用冷却水通路54aから分岐するとともに、ラジエータ出口部16aから電動ウォータポンプ61に流動する冷却水が流通する流路266aと、電動ウォータポンプ61からEGRクーラ135に流動する冷却水が流通する流路266bと、EGRクーラ135からラジエータ入口部16bに流動する冷却水が流通する流路266cとから構成されている。本実施の形態に係るエンジン用冷却装置240のEGR用冷却水通路266は、本発明に係る第3の循環流路を構成している。
【0139】
EGRクーラ135は、電動ウォータポンプ61とラジエータ入口部16bとの間のEGR用冷却水通路266に設けられ、エンジン用ラジエータ16から電動ウォータポンプ61を介して冷却水が流通されるようになっている。これにより、EGRクーラ135は、流通される冷却水によって吸気通路104に向けてEGR通路131aを還流する排気を冷却するようになっている。
【0140】
制御部210は、エンジン水温Teが予め実験的に求められて記憶されたエンジン水温Tethを超えたか否かを判定するようになっている。制御部210は、EGR装置130による排気の還流が可能であると判定した場合、すなわちエンジン水温Teがエンジン水温Tethを超えた判定した場合には、駆動モータ61aを制御することにより電動ウォータポンプ61を駆動させて、排気冷却部260内において冷却水を循環させるようになっている。本実施の形態に係るエンジン用冷却装置240における電動ウォータポンプ61は、本発明に係る冷媒循環手段を構成し、制御部210は、制御手段を構成している。また、本実施の形態に係るエンジン用冷却装置240における上述のエンジン水温Tethは、第3の閾値に対応している。
【0141】
次に、図13を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るエンジン用冷却装置240において実行されるEGR冷却制御について、説明する。
【0142】
図13に示すフローチャートは、制御部210のROMに格納されたEGR冷却制御の処理プログラムの実行内容を示すもので、この処理プログラムは、制御内容を実行する単一または複数のプログラムを含んで構成されている。EGR冷却制御の処理プログラムは、所定の時間間隔で制御部210のCPUによって実行される。
【0143】
図13に示すように、制御部210は、点火装置や燃料噴射装置の状態を把握することにより、エンジン102が始動されたか否かを判定する(ステップS301)。
【0144】
制御部210によりエンジン102が始動されたと判定されると(ステップS301でYES)、制御部210は、暖機が必要か否かを判定する(ステップS302)。具体的には、制御部210は、吸気ポート102bの暖機などのエンジン102の暖機が必要か否かをエンジン水温Teに基づき判定するとともに、排気浄化装置の触媒の暖機が必要か否かを触媒温度に基づき判定する。制御部210は、エンジン102の暖機および触媒の暖機が必要であると判定した場合には(ステップS302でYES)、エンジン102の暖機および触媒の暖機を実行する(ステップS303)。一方、制御部210は、エンジン102が始動されていないと判定した場合には(ステップS301でNO)、再度ステップS301の処理を繰り返す。
【0145】
次いで、制御部210は、ステップS303で実行されたエンジン102の暖機および触媒の暖機が完了したか否かを判定する(ステップS304)。具体的には、制御部210は、エンジン102の吸気ポート102bを囲むシリンダヘッド102dのエンジン水温Teから推定される推定壁温が所定温度に達しているか否かを、上述のエンジン水温Teによって判定することにより、エンジン102の暖機が完了したか否かを判定する。また、制御部210は、触媒温度が触媒の活性温度以上であるか、またはエンジン102の始動後、触媒温度が活性温度に達していると推定できる所定時間を経過したか否かによって、触媒の暖機が完了したか否かを判定する。
【0146】
制御部210は、エンジン102の暖機および触媒の暖機が完了したと判定した場合には(ステップS304でYES)、ステップS305に処理を移行する。制御部210は、エンジン102の暖機および触媒の暖機が完了していないと判定した場合には(ステップS304でNO)、エンジン102の暖機および触媒の暖機が完了したと判定されるまでステップS304の処理を繰り返す。
【0147】
一方、制御部210は、ステップS302において、エンジン102の暖機および触媒の暖機が必要でないと判定した場合には(ステップS302でNO)、上述のステップS303およびステップS304の処理を実行することなくステップS305に処理を移行する。
次に、エンジン出口水温センサ65および制御部210は、エンジン水温Teを検出する(ステップS305)。
【0148】
次いで、制御部210は、エンジン水温Teがエンジン水温Tethを超えたか否かを判定する(ステップS306)。換言すれば、制御部210は、EGR装置130による排気の再循環が可能か否かを判定する。制御部210は、EGR装置130による排気の再循環が可能でないと判定した場合(ステップS306でNO)、すなわちエンジン水温Teがエンジン水温Tethを超えていないと判定した場合には、エンジン水温Teがエンジン水温Tethを超えるまでステップS305およびステップS306の処理を繰り返し実行する。一方、制御部210は、EGR装置110による排気の還流が可能であると判定した場合、すなわちエンジン水温Teがエンジン水温Tethを超えた判定した場合には(ステップS306でYES)、駆動モータ61aを制御することにより電動ウォータポンプ61を駆動させる(ステップS307)。したがって、排気冷却部260内において冷却水が循環させられる。
【0149】
次いで、制御部210は、EGR装置130による排気の再循環が停止したか否かを判定する(ステップS308)。具体的には、制御部210は、エンジン水温Teがエンジン水温Teth以下となったか否かを判定することにより、EGR装置130による排気の再循環が停止したか否かを判定する。制御部210は、EGR装置130による排気の再循環が停止していないと判定した場合には(ステップS308でNO)、排気の再循環が停止されたと判定するまでステップS308の処理を繰り返し実行する。
【0150】
一方、制御部210により、EGR装置130による排気の再循環が停止したと判定された場合には(ステップS308でYES)、制御部210は、EGR装置130による排気の還流が停止した後、所定時間tが経過したか否かを判定する(ステップS309)。制御部210は、上述の所定時間tが経過したと判定するまでステップS309の処理を繰り返し実行する。一方、制御部210は、EGR装置130による排気の還流が停止した後、所定時間tが経過したと判定した場合には(ステップS309でYES)、駆動モータ61aの駆動を停止するよう制御して電動ウォータポンプ61を停止させることにより、排気冷却部260内における冷却水の循環を停止する(ステップS310)。
【0151】
次いで、制御部210は、点火装置や燃料噴射装置の状態を把握することにより、エンジン102が停止されたか否かを判定する(ステップS311)。制御部210は、エンジン102が停止していないと判定した場合には(ステップS311でNO)、ステップS305に戻り、再度ステップS305〜ステップS311の処理を実行する。
一方、制御部210は、エンジン102が停止したと判定した場合には(ステップS311でYES)、本処理を終了する。
【0152】
本実施の形態に係るエンジン用冷却装置240は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0153】
エンジン出口水温センサ65および制御部210が検出したエンジン水温Teがエンジン水温Tethを超えたときに、制御部210が排気冷却部260内で冷却水を循環させるよう電動ウォータポンプ61を制御するので、例えばエンジン102の暖機完了後の市街地等の通常走行時においては、エンジン用冷却装置240の冷却能力の余剰を利用してEGR装置130により再循環される排気を冷却することができる。これにより、エンジン102に吸入される再循環される排気を含む吸入空気が冷却される。このため、通常走行時においては、冷却能力の余剰を利用することによりエンジン102の燃焼室102d内の温度上昇を抑制することができ、燃焼室102d内の温度上昇に起因したノッキングの発生を防止することができる。
【0154】
一方、制御部210によりEGR装置130による排気の還流が停止したと判定された後においては、制御部210が排気冷却部260内での冷却水の循環を停止させるよう電動ウォータポンプ61を制御するので、例えばエンジン102に掛かる負荷が通常走行時に比べて増加する登坂走行時のような場合にあっては、本来必要とされるエンジン102の各気筒の冷却を吸入空気の冷却に優先して行うことができる。また、EGR装置130による排気の還流が停止した後、所定時間tが経過したときに、上述の排気冷却部260内での冷却水の循環の停止が行われるので、排気冷却部260の過熱を抑制することができる。
【0155】
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0156】
以上説明したように、本発明に係る冷却装置は、内燃機関の冷却効果を損なうことなく、冷却能力の余剰を利用して通常走行時等における内燃機関の燃焼室内の温度上昇に起因したノッキングを効率的に防止することができるという効果を有し、電動機用の冷却装置と独立して設けられた内燃機関用のハイブリッド車両の冷却装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0157】
1、100、200 ハイブリッド車両
2、102 エンジン(内燃機関)
10、110、210 制御部(第1の冷媒温度検出手段、第2の冷媒温度検出手段、制御手段、EGR停止判定手段)
16 エンジン用ラジエータ(熱交換器)
40、140、240 エンジン用冷却装置(冷却装置)
50 エンジン冷却部(第1の冷却部)
54 エンジン用冷却水通路(第1の循環流路)
60、160 吸気冷却部(第2の冷却部)
61 電動ウォータポンプ(冷媒循環手段)
62 吸気水冷スペーサ
64 ラジエータ出口水温センサ(第1の冷媒温度検出手段)
65 エンジン出口水温センサ(第2の冷媒温度検出手段)
66、166 吸気用冷却水通路(第2の循環流路)
130 EGR装置
135 EGRクーラ(EGR冷却部)
260 排気冷却部(第3の冷却部)
266 EGR用冷却水通路(第3の循環流路)
MG1、MG2 モータジェネレータ(回転電機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関および回転電機を含み、前記内燃機関および前記回転電機の少なくとも一方を走行源とするハイブリット車両に適用される冷却装置であって、
冷媒と外気との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記内燃機関を冷却するよう前記熱交換器から排出された前記冷媒を循環させる第1の循環流路が形成された第1の冷却部と、
前記第1の循環流路から分岐するとともに、前記熱交換器から排出された前記冷媒を前記内燃機関に供給される吸入空気を冷却するよう循環させる第2の循環流路が形成された第2の冷却部と、
前記第2の循環流路上に設けられ、前記冷媒を強制的に循環させる冷媒循環手段と、
前記熱交換器から排出された前記冷媒の温度を検出する第1の冷媒温度検出手段と、
前記内燃機関を冷却後の前記冷媒の温度を検出する第2の冷媒温度検出手段と、
前記第1の冷媒温度検出手段が検出した前記冷媒の温度が、予め定められた第1の閾値を超えたときに前記冷媒を循環させるよう前記冷媒循環手段を制御する一方、前記第2の冷媒温度検出手段が検出した前記冷媒の温度が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えたときに前記冷媒の循環を停止させるよう前記冷媒循環手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記第2の循環流路上に設けられ、前記内燃機関から排出された排気の一部を前記内燃機関の吸気通路に還流させるEGR装置により還流させられる前記排気を前記第2の循環流路を循環する前記冷媒によって冷却するEGR冷却部と、
前記EGR装置による前記排気の還流が停止したか否かを判定するEGR停止判定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1の冷媒温度検出手段が検出した前記冷媒の温度が前記第1の閾値を超えたときに、前記冷媒を循環させるよう前記冷媒循環手段を制御する一方、前記EGR停止判定手段により前記EGR装置による前記排気の還流が停止したと判定され、かつ前記EGR装置による前記排気の還流が停止した後、所定時間経過したときに、前記冷媒の循環を停止させるよう前記冷媒循環手段を制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−264876(P2010−264876A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117849(P2009−117849)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】