説明

分岐路内位置演算装置、分岐路内位置演算方法、および、分岐路内位置演算プログラム

【課題】分岐路内の自車位置を高精度で求め、分岐路内の自車の制御に有効な情報を出力すること。
【解決手段】コンピュータが、自車位置を検出し、分岐路情報で示される所定分岐路の付近に検出した自車位置が存在するとき、所定分岐路の分岐開始点を検出し、自車位置が所定分岐路の分岐元となる本線から所定分岐路へと進入したことを検出し、所定分岐路へと進入した自車位置について、分岐開始点からの走行距離に基づいて分岐路内位置を演算し、分岐路内位置から分岐路情報で示される制御点の位置までの残距離を演算し、分岐路内位置および残距離を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐路内位置演算装置、分岐路内位置演算方法、および、分岐路内位置演算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステムは、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)や自律的な手法により検出される自車位置を、その付近の地図情報とともに表示する。表示される自車位置が、実際の自車位置と近いほど、自車位置の精度は高くなる。高精度な自車位置を出力することで、乗員は、実際の自車位置における適切な自車の制御(減速や操舵など)を把握でき、快適性が向上する。
【0003】
自車が走行する道路には、本線から派生的に分岐する分岐路がある。例えば、特許文献1には、カメラで白線を認識して分岐路の位置を検出し、検出した位置に基づいて道路上の自車位置を検出し、地図情報のノード上にマップマッチングする分岐認識装置が開示されている。
【特許文献1】特開平11−232467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術は、分岐路内の自車位置を高精度で求め、分岐路内の自車の制御に有効な情報を適切に乗員に報知していることは、困難であった。その主な要因として、(1)分岐路の道路特性、および、(2)地図情報が挙げられる。
【0005】
(1)分岐路の道路特性について、説明する。分岐路では、自車は、本線から分岐路への車線変更について、分岐路の始点である分岐開始点からすぐに行ってもよいし、分岐路の終点である分岐終了点の近くになってから行ってもよい。本線と分岐路とは隣り合っているので、GPSなどで求めた自車位置がどちらの車線を走行しているのかは、自車位置の測定精度が相当高くない(1m精度など)と判別が困難である。
【0006】
(2)地図情報について、説明する。分岐路は、本線から派生して徐々に形成される付属的な道路のため、本線のように1本の道路として、地図情報のノードおよびリンクに登録されていないことが多い。そのとき、地図情報として存在しない分岐路へのマップマッチングは行われず、分岐路内の自車位置が乗員に報知されない。
【0007】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、分岐路内の自車位置を高精度で求め、分岐路内の自車の制御に有効な情報を出力することを、主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、本線から派生する分岐路に自車が進入したとき、自車の分岐路内位置を演算する分岐路内位置演算装置であって、分岐路の始点を示す分岐開始点、分岐路内で自車の制御を要する制御点、および、分岐路の終点を示す分岐終了点を含む分岐路情報を分岐路ごとに定義する地図情報を取得する地図情報取得部と、自車位置を検出する自車位置検出部と、分岐路情報で示される所定分岐路の付近に前記検出した自車位置が存在するとき、前記所定分岐路の前記分岐開始点を検出する分岐点検出部と、前記自車位置が前記所定分岐路の分岐元となる本線から前記所定分岐路へと進入したことを検出する分岐路進入検出部と、前記所定分岐路へと進入した前記自車位置について、前記分岐開始点からの走行距離に基づいて前記分岐路内位置を演算し、前記分岐路内位置から分岐路情報で示される前記制御点の位置までの残距離を演算する分岐路内位置演算部と、前記分岐路内位置および前記残距離を出力する分岐路内位置出力部と、を有することを特徴とする。その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分岐路内の自車位置を高精度で求め、分岐路内の自車の制御に有効な情報を出力することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るナビゲーションの概要を示す説明図である。
【0011】
図1(a)は、自車が走行する本線と分岐路を示す説明図である。自車1は、本線2を走行中に分岐路3の手前にさしかかる。自車1は、道路側に設置された通信機7との路車間通信を利用して、分岐路に関する各種情報を取得する。なお、路車間通信としては、DSRC(Dedicated Short Range Communication)や光ビーコン、電波ビーコンなどを利用する方法がある。分岐路に関する各種情報は、以下の通りである。
・通信機7の位置から分岐開始点までの距離
・分岐路3の端点となる分岐点(分岐開始点4および分岐終了点5)の位置。
・分岐路3の分岐開始点4から分岐終了点5までの分岐路長Xbr。
・分岐路3内の制御点6(速度制限やカーブ入口など、自車1の制御を要する地点)の位置および制御点6における制御内容(例えば、40km/h速度制限)。
【0012】
図1(b)は、自車が本線から分岐路へと進入する旨を示す説明図である。自車の走行距離Xrunは、分岐開始点4から自車1の現在位置までの距離である。分岐路長Xbrは、図1(a)の路車間通信を介して取得される。残距離Xは、自車1の現在位置から制御点6までの距離を示す。分岐終了点5と制御点6とがほぼ同じ位置に存在するときには、「Xbr=Xrun+X」が成り立つ。
【0013】
ノード8aは、地図上の座標点であり、道路上に適切な間隔で配置されている。リンク8bは、連続するノード間を接続する線分である。自車1が地点Aに到達すると、自車1のカメラがカメラ撮影範囲1aにおいて撮影した画像をもとに、分岐開始点4が検出される。自車1が本線2から分岐路3へ車線変更したことを検出した後、地点Bにおいて、走行距離Xrunと、分岐路長Xbrとから残距離Xを計算する。この残距離Xを乗員に報知することにより、乗員は進行先に存在する40km/h制限に対して、徐々に減速するなどの適切な制御を実施することができる。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置(分岐路内位置演算装置、分岐路内位置演算方法を実行するコンピュータ)の構成図である。ナビゲーション装置9は、目的地までの経路を乗員に報知するカーナビゲーションシステムとして構成される。ナビゲーション処理は、コンピュータにプログラミングされ、予め定められた周期で繰り返し実行される。ナビゲーション装置9の以下に示す各構成要素は、車内LAN(Local Area Network)などの通信手段によって接続されている。
【0015】
なお、ナビゲーション装置9は、演算処理を行う際に用いられる記憶手段としてのメモリと、前記演算処理を行う演算処理装置とを少なくとも備えるコンピュータとして構成される。なお、メモリは、RAM(Random Access Memory)などにより構成される。演算処理は、CPU(Central Processing Unit)によって構成される演算処理装置が、メモリ上のプログラムを実行することで、実現される。
【0016】
ナビゲーション装置9は、自車およびその周辺に関する情報を検出するために、自車情報検出部11、分岐点検出部12、分岐路進入検出部13、および、制御点検出部14を有する。自車情報検出部11は、自車に関する情報を検出する。分岐点検出部12は、自車の近傍に存在する分岐点(分岐開始点および分岐終了点)の位置情報を検出する。分岐路進入検出部13は、自車が本線から車線変更により分岐路に進入する旨を検出する。制御点検出部14は、自車の近傍に存在する分岐路の制御点を検出する。
【0017】
ナビゲーション装置9は、自車が走行する道路周辺の地図情報を取得するために、地図情報記憶部21、地図情報取得部22、および、分岐路情報補正部23を有する。地図情報記憶部21は、地図情報を記憶する。地図情報取得部22は、自車位置の付近の地図情報を地図情報記憶部21から取得する。分岐路情報補正部23は、地図情報記憶部21に記憶されている地図情報の分岐路情報を、実際に走行して検出した値で補正する。
【0018】
ナビゲーション装置9は、自車が走行する分岐路内位置を計算するために、自車位置検出部31、分岐路内位置演算部32、および、分岐路内位置出力部33を有する。分岐路内位置出力部33は、制御点情報報知部33aまたは制御指示部33bのうち、少なくとも1つの処理部により構成される。本実施形態では、双方の処理部を備えている。
【0019】
自車位置検出部31は、自車情報検出部11で検出された情報を元に、自車位置を検出する。分岐路内位置演算部32は、分岐路進入検出部13により自車が分岐路に進入したと判定された後、進入した自車の分岐路内位置と、その分岐路内位置からの分岐路の制御点までの残距離Xと、を計算する。
【0020】
分岐路内位置出力部33の制御点情報報知部33aは、分岐路内位置演算部32の演算結果を乗員に報知する。分岐路内位置出力部33の制御指示部33bは、分岐路内位置演算部32の演算結果(制御点までの残距離X)と、制御点における制御内容と、に基づく自車制御信号を、自車の制御系へ出力する。
【0021】
図3は、自車位置検出部31が、地図情報に応じて自車位置の検出する処理を示すフローチャートである。自車位置は走行することで移動し続けるので、このフローチャートは、所定周期で繰り返し実行される。
【0022】
まず、自車情報検出部11は、自車の情報を検出する(S101)。以下、検出する自車の情報および検出するための装置(センサ)を例示する。
・GPS(Global Positioning System:衛星航法システム)のアンテナは、人工衛星からの自車位置を示す信号を受信する。
・カメラは、自車に搭載され、自車の周辺を撮影する。
・ジャイロセンサ(方位センサ)は、自車の進行方向ベクトルを3軸(ヨー軸、ロール軸、ピッチ軸)成分として求める。
・車輪速センサは、自車の前後左右各輪に装着される。車速は、車輪速センサにより得られる値を平均して、求められる。
・加速度センサは、自車に搭載される。車速は、加速度センサにより得られる自車の加速度の値を積分して、求められる。
【0023】
次に、自車位置検出部31は、S101で検出された自車の情報を元に、自車位置を検出する(S102)。以下、自車位置の検出方法を例示する。
・GPSアンテナを介して受信した信号をもとに、自車位置を演算する。
・車輪速センサまたは加速度センサによる車速と、ジャイロセンサによる自車の進行方向ベクトルと、を積分することにより自車位置を演算する。
・前記した2つの自車位置の演算方法を組み合わせる自律航法により、自車位置を演算する。
【0024】
そして、地図情報取得部22は、S102で検出した自車位置の付近の地図情報を、地図情報記憶部21から読み込む(S103)。地図情報と併せて、図1(a)で示した分岐路に関する各種情報も読み込む。なお、地図情報記憶部21は、ノード情報、リンク情報などが格納され、ノード情報には少なくとも分岐路長の情報を含む。この記憶媒体としては、コンピュータが読み取り可能なCD−ROM、DVD−ROM、ハードディスクなどがある。一方、地図情報取得部22は、記憶媒体の代わりに、図1(a)で示した路車間通信などの情報センタからの通信によって、地図情報を入手してもよい。
【0025】
なお、S103で読み込む地図情報は、従来の技術の地図情報に比べて、低コストで作成が可能である。従来の技術では、地図情報上のノードに自車位置をマップマッチングさせるため、その地図情報が高精度地図である必要がある。つまり、実際の道路の分岐点の正確な位置に、地図情報のノードが配置されている必要があった。現状の地図情報から高精度地図への移行には、莫大なコストがかかる。
【0026】
一方、本実施形態では、ノード情報を使わずに、分岐路における走行距離および残距離を求める。よって、地図情報の分岐路を示すリンクに対して分岐路長というパラメータを付加するという、現状の地図情報に若干の編集を行うだけで、分岐路における自車位置推定精度を向上することができる。
【0027】
さらに、自車位置検出部31は、S103で読み込まれた地図情報上に、S102で検出された自車位置をマッチングする(S104)。例えば、地図上にメッシュを作成し、自車位置(緯度、経度)と地図上のメッシュ格子点の位置を比較して、自車位置の最も近傍にあるメッシュ格子点に自車位置をマッチングする。
【0028】
そして、自車位置検出部31は、S104でマッチングした自車位置に関する情報を更新する(S105)。自車位置に関する情報は、例えば、地図上の自車の位置(緯度、経度、高度など)、自車位置付近の分岐路の有無、分岐路長などを含む。
【0029】
図4は、本発明のナビゲーションシステムの全体処理を示すフローチャートである。このフローチャートでは、自車の分岐路内位置と、その分岐路内位置からの分岐路の制御点までの残距離と、を計算する。これにより、乗員に対して制御に関する適切な情報を与えることができる。
【0030】
まず、分岐路内位置演算部32は、図3のS105で更新された自車位置に関する情報を参照して、自車位置から所定の範囲内に分岐路が存在するか否かを判定する(S201)。分岐路が存在するとき(S201,Yes)はS202へ進み、分岐路が存在しないとき(S201,No)はS201を繰りかえす。
【0031】
ここで、S201における所定の範囲内とは、地図情報(分岐ノード)および自車位置推定の誤差を考慮して決定する値であり、例えば、地図情報の誤差が30m、自車位置推定誤差が30m、分岐路長の最大値を200mとすれば、これらすべての合計に余裕分をプラスして300mを判定の閾値に設定する。また、範囲の設定方法としては、分岐ノードを中心に半径300mを判定範囲にする方法や、分岐ノードからリンクをたどっていって300mを超えた地点までを判定範囲にする方法がある。
【0032】
次に、分岐点検出部12は、S201で存在する分岐路の分岐開始点を検出したか否かを判定する(S202)。分岐開始点を検出したとき(S202,Yes)はS203へ進む。一方、分岐開始点を検出していないとき(S202,No)はS202を繰りかえす。以下が、分岐開始点の検出方法の一例である。
【0033】
図5(a)は、自車のカメラで撮影した画像に対して、分岐開始点の特徴情報を画像認識により抽出することで、分岐開始点を検出する方法を示す説明図である。
【0034】
【表1】

【0035】
撮影画像には、道路上にペイントされている区画線が撮影されている。道路法および道路交通法から引用されている「道路標識、区画線および道路標示に関する命令」によると、例えば、表1に示す区画線が定義されている。
【0036】
図5(a)には、以下の区画線が撮影されている。分岐点検出部12は、「道路標識、区画線および道路標示に関する命令」(第6条において引用する別表第4)で定義されている特定の白線パターン(形状、方向など)と、区画線の種別との対応情報をもとに、以下に示す各区画線を認識する。
・区画線「車道中央線」101は、自車1からみた右側に存在する実線の白線として認識される。
・本線を2つの車線に区切る区画線「車線境界線」102aは、区画線「車道中央線」101より左側に存在する点線の白線として認識される。
・本線と分岐路とを区切る区画線「車線境界線」102bは、区画線「車道中央線」101より左側に存在する点線の白線として認識され、区画線「車線境界線」102aよりも点線間隔が短い。
・区画線「車道幅員の変更」105は、区画線「車線境界線」102bに対して所定角度で交点111にて交わる実線の白線として認識される。区画線「車道幅員の変更」105は、区画線「車道中央線」101より左側に存在する。また、区画線「車線境界線」102bと区画線「車道幅員の変更」105とは、所定角度で交わるため、進行方向に進むに従って、両区画線の間隔が広がる。
【0037】
S202を実現するための別の一例として、分岐開始点の近傍に配置した通信機からの路車間通信により、分岐開始点を検出してもよい。この方法は、カメラの撮影画像を用いる手法に比べ、雨、霧、渋滞などで視界が悪いときや、道路に白線が存在しない場合においても、分岐開始点を検出できる。
【0038】
S202を実現するための別の一例として、カメラにより取得した画像やレーダ(レーザ光やミリ波などを用いた測距用センサ)により検出した測定結果を用いて、自車の走行する左側の壁やガードレールなどの形状(変曲点など)を判定して分岐開始点を検出してもよい。具体的には、本線に比べて分岐路は左側に切れ込んでいくため、この特性を左側の壁やガードレールなどの形状から判定して分岐開始点を検出する。
【0039】
以下、S203〜S212は、分岐路の分岐開始点から分岐終了点までを走行しているときの処理を示す。分岐路内位置演算部32は、分岐開始点を起点とした自車の走行距離Xrunを計測する(S203)。ここで、走行距離Xrunの演算方法としては、図3のS101で検出された車速の情報を制御周期毎に積分していく方法が一般的である。
【0040】
さらに、分岐路進入検出部13は、自車が本線から車線変更により分岐路に進入したか否かを判定する(S204)。分岐路に進入したときには(S204,Yes)S205へ進み、分岐路に進入していないときには(S204,No)S211へ進む。以下が、分岐路の進入判定方法の一例である。
・本線と分岐路との境界に位置する白線(点線の車線境界線)をカメラで認識して、その白線跨ぎを検出した場合に分岐路へ進入したと判断する。
・自車に搭載された操舵角センサやヨーレートセンサの値をS101で検出し、その値の変化から分岐路へ進入したと判断する。
・自車に作用する横加速度の値をS101で検出し、その値の変化から分岐路へ進入したことを判断する。
【0041】
そして、分岐路内位置演算部32は、自車の分岐路内位置と、その分岐路内位置からの分岐路の制御点までの残距離Xと、を計算する(S205)。自車の分岐路内位置は、図1(b)で示したように、分岐開始点から走行距離Xrunだけ進んだ位置である。残距離Xは、自車の分岐路内位置から分岐路の制御点の位置までの距離である。
【0042】
さらに、分岐路内位置出力部33は、分岐路内位置演算部32の演算結果を出力する(S206)。分岐路内位置出力部33は、制御点情報報知部33aと、制御指示部33bとにより構成される。
【0043】
まず、制御点情報報知部33aは、液晶パネルなどの表示装置やスピーカなどの音声を出力する装置から構成される。制御点情報報知部33aは、S205で演算された残距離に関する各種情報を、乗員に分かり易く音声や画面で報知することで、乗員に対して安心感を向上できる。
【0044】
図5(b)は、制御点情報報知部33aによる乗員への情報の報知画面を示す画面図である。自車1は、本線2から分岐路3に進入した後に、制御点6(40km/h制限)に向かっている。画面の左側には、分岐路内位置から制御点までの残距離Xを示す棒グラフが、表示されている。この棒グラフは、残距離が少なくなる、つまり、自車1が制御点6に近づくにしたがって、値が小さくなる。なお、棒グラフの代わりに、残距離Xの数字を直接表示してもよい。
【0045】
一方、制御指示部33bは、分岐路内位置演算部32の演算結果(制御点までの残距離X)と、制御点における制御内容と、に基づく自車制御信号を、自車の制御系へ出力する。制御指示部33bは、例えば、道路形状に応じて適切な速度制御を行う自車速度制御コントローラとして実現される。これにより、S206で残距離Xが高精度で計算されているため、適切な減速タイミングにて自車の速度制御が可能となり、乗員に対する違和感を軽減できる。自車速度制御コントローラは、例えば、以下の(A)または(B)が挙げられる。
(A)運転者が設定した設定速度を維持するように駆動力を制御するCC(Cruise Control:速度制御)
(B)CCに加えて自車前方の先行車と自車との車間距離を適切に維持するACC(Adaptive Cruise Control:車間距離適応型速度制御)
【0046】
図6は、制御指示部33bが残距離Xの情報を用いて自車を減速させる際の目標速度の遷移の様子を示したグラフである。
【0047】
図6(a)は、自車が本線を80km/hで走行中に、すぐに車線変更を行い、地点Aに到達した場合を示す。残距離Xは、地点Aから地点Cまでの距離であり、現在の速度80km/hから制限速度の40km/hまで自車を減速させるためには充分な余裕がある。そのため、地点Aから地点Cまでなめらかに減速することができ、乗員に過度の減速感を与えなくて済む。
【0048】
図6(b)は、自車が本線を80km/hで走行中に、しばらくしてから車線変更を行い、地点Bに到達した場合を示す。残距離Xは、地点Bから地点Cまでの距離であり、現在の速度80km/hから制限速度の40km/hまで自車を減速させるためにはあまり余裕がない。そのため、地点Bから地点Cまで急に減速することで、制限速度を遵守する。このように、残距離Xに応じて減速度および減速タイミングの適正化を図ることができる。
【0049】
制御点検出部14は、S206で乗員に報知した、自車の近傍に存在する分岐路の制御点を検出する(S211)。なお、地図情報記憶部21から取得した分岐路の情報に、分岐路の制御点が含まれていないときには、S211の処理は省略する。
【0050】
図7(a)は、自車のカメラで撮影した画像に対して、制御点(カーブ入口)の特徴情報を画像認識により抽出することで、制御点を検出する方法を示す説明図である。
【0051】
区画線「車線境界線」102bは、図5(a)で示した特徴を有する。
区画線106は、白線が縞模様で描かれている、いわゆるゼブラゾーンである。区画線106は、例えば、区画線「路上障害物の接近」または区画線「導流帯」である。区画線106は、区画線「車線境界線」102bの延長上に存在する。
区画線「車道外側線」103は、図5(a)で示した区画線「車道幅員の変更」105の延長上に存在する。
道路中心線121は、区画線「車道外側線」103と、区画線「車線境界線」102bまたは区画線106との中点から構成される線である。
【0052】
領域122は、道路中心線121の計算に使用した各区画線の形状変化に伴って、道路中心線121の曲率が変化する地点である。制御点(カーブ入口)は、領域122の位置とみなされる。なお、道路中心線121上に3点以上のポイントを設定し、これらのポイントから道路中心線121の曲率半径を演算し、曲率半径がある所定値以下になるポイントをカーブ入口とする。ここで、カーブ入口と定義する曲率半径の値は、分岐路先のカーブの曲率半径に依存し、例えば、カーブの曲率半径が100mの場合ではカーブ入口の曲率半径は150mとする。ただし、人間が感じるカーブ入口の曲率半径は個人差があるため、個人に合わせて学習する方法もある。このようにして求めたカーブ入口までの距離Dを画像上から演算し、分岐路長を演算する。
【0053】
図7(b)は、自車のカメラで撮影した画像に対して、制御点(道路標識)の特徴情報を画像認識により抽出することで、制御点を検出する方法を示す説明図である。区画線102b,103,106は、図7(a)で説明したとおりである。
【0054】
制御点検出部14は、あらかじめ記憶している道路標識ごとの特定のパターン(形状や色、標識内の文字など)をキーに、撮影画像内を検索(パターンマッチング)することにより、制御点6を示す制限速度標識(40km/h制限)を抽出する。分岐路長は、制限速度標識間での距離Dである。
【0055】
分岐点検出部12は、分岐終了点を検出したか否かを判定する(S212)。まず、分岐終了点を検出したとき(S212,Yes)はS213へ進む。一方、分岐終了点を検出せず(S212,No)、かつ、分岐路に進入していない(S204,No)ときには、S204へ戻る。さらに、分岐終了点を検出せず(S212,No)、かつ、分岐路に進入した(S204,Yes)ときには、S212を繰りかえす。
【0056】
ここで、S212の判定方法を具体的に説明する。図7(c)は、自車のカメラで撮影した画像に対して、分岐終了点の特徴情報を画像認識により抽出することで、分岐終了点を検出する方法を示す説明図である。区画線102b,103,106は、図7(a)で説明したとおりである。
【0057】
分岐点検出部12は、区画線102bを示す点線から、区画線106を示す実線へと変化する領域131を認識することで、その領域131を分岐終了点として検出する。なお、領域131は、進行するに従って徐々に広がる白線の幅を認識することで、検出してもよい。
【0058】
以上、カメラの撮影画像を用いて、分岐路の制御点(S211)および分岐終了点(S212)の検出方法を説明した。カメラの撮影画像の代替手段として、検出対象の近傍に配置した通信機からの路車間通信により、検出処理を実現してもよい。
【0059】
分岐路情報補正部23は、地図情報記憶部21に記憶されている地図情報の分岐路情報を、実際に走行して検出した値で補正する(S213)。検出した値は、S202で検出した分岐開始点と、S211で検出した分岐路の制御点と、S212で検出した分岐終了点と、が挙げられる。これにより、地図情報記憶部21に記憶されている地図情報を、常に最新の情報に保つことができる。
【0060】
S213の補正処理で分岐路情報を上書きするために、分岐路情報補正部23は、S202で検出した分岐開始点と、S212で検出した分岐終了点と、の距離を分岐路長とし、S211で検出した分岐路の制御点を分岐路の対応する位置に配置した分岐路情報を新たに作成する。
【0061】
もし、分岐終了点と分岐路の制御点とが同一位置に存在し、かつ、分岐路の制御点が分岐路内に1つだけ存在するときには、分岐路情報補正部23は、式「Xst=Xrun+D」(Dは、分岐内位置から制御点までの距離)により分岐路長Xstを算出する。
【0062】
なお、計算した分岐路長Xstと、地図情報記憶部21に記憶されている分岐路長と、の差が所定値以上(例えば、100m以上)の場合には、補正を行わないようにしてもよい。これにより、分岐点検出部12または道路情報変化点検出部4において誤検出を行っているときに、その誤検出の影響を抑制できる。また、補正する場合には、変化量(補正量)に制限を設けて補正することで少しずつ適正な値へと補正することができる。
【0063】
以上、本発明のナビゲーションシステムの全体処理を説明した。なお、カメラで撮影した画像から道路標識および道路標示の特徴情報をもとに区画線などを認識する動作について、画像認識の特徴情報は、各国の道路法令により決定される。図示した説明は、日本の道路を想定して説明したが、これはあくまで一例である。米国の道路を走行するときには、米国の道路の特徴情報(右側通行など)をもとに、区画線などを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に関するナビゲーションの概要を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に関するナビゲーション装置を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に関する地図情報に応じて自車位置の検出する処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に関するナビゲーションシステムの全体処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に関する分岐開始点の検出方法、および、分岐開始点から制御点までの乗員への報知方法を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に関する制御点までに自車を減速させる際の目標速度を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に関するカメラで撮影した画像から道路標示を検出する処理を示す撮影図である。
【符号の説明】
【0065】
9 ナビゲーション装置(分岐路内位置演算装置)
11 自車情報検出部
12 分岐点検出部
13 分岐路進入検出部
14 制御点検出部
21 地図情報記憶部
22 地図情報取得部
23 分岐路情報補正部
31 自車位置検出部
32 分岐路内位置演算部
33 分岐路内位置出力部
33a 制御点情報報知部
33b 制御指示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線から派生する分岐路に自車が進入したとき、自車の分岐路内位置を演算する分岐路内位置演算装置であって、
分岐路の始点を示す分岐開始点、分岐路内で自車の制御を要する制御点、および、分岐路の終点を示す分岐終了点を含む分岐路情報を分岐路ごとに定義する地図情報を取得する地図情報取得部と、
自車位置を検出する自車位置検出部と、
分岐路情報で示される所定分岐路の付近に前記検出した自車位置が存在するとき、前記所定分岐路の前記分岐開始点を検出する分岐点検出部と、
前記自車位置が前記所定分岐路の分岐元となる本線から前記所定分岐路へと進入したことを検出する分岐路進入検出部と、
前記所定分岐路へと進入した前記自車位置について、前記分岐開始点からの走行距離に基づいて前記分岐路内位置を演算し、前記分岐路内位置から分岐路情報で示される前記制御点の位置までの残距離を演算する分岐路内位置演算部と、
前記分岐路内位置および前記残距離を出力する分岐路内位置出力部と、を有することを特徴とする
分岐路内位置演算装置。
【請求項2】
前記地図情報取得部は、前記取得する地図情報の前記制御点として、制限速度が変化する制限速度変化地点、および、道路曲率が所定の値以上になるカーブ入口地点のうち、少なくとも1つの地点を取得することを特徴とする
請求項1に記載の分岐路内位置演算装置。
【請求項3】
前記分岐路内位置演算部は、前記自車に搭載された速度センサまたは加速度センサにより取得した自車速度に基づいて計算された前記分岐開始点からの走行距離をもとに、前記分岐路内位置を演算することを特徴とする
請求項1に記載の分岐路内位置演算装置。
【請求項4】
前記分岐路内位置出力部は、進行先の前記制御点の情報と、その制御点までの前記残距離の情報と、を対応づけて画面または音声で自車の乗員に報知することを特徴とする
請求項1に記載の分岐路内位置演算装置。
【請求項5】
前記分岐路内位置出力部は、進行先の前記制御点の情報と、その制御点までの前記残距離の情報と、をもとに、自車の制御信号を作成し、自車の制御系へ出力することを特徴とする
請求項1に記載の分岐路内位置演算装置。
【請求項6】
前記分岐点検出部は、さらに、前記所定分岐路の前記分岐開始点を検出した後、前記自車位置の近傍に存在する前記所定分岐路の前記分岐終了点を検出し、
前記分岐路内位置演算装置は、さらに、前記自車位置の近傍に存在する前記制御点を検出する制御点検出部と、前記自車位置の近傍で検出された前記分岐開始点、前記制御点、および、前記分岐終了点を、前記地図情報取得部が取得した地図情報に対して補正する分岐路情報補正部と、を有することを特徴とする
請求項1に記載の分岐路内位置演算装置。
【請求項7】
前記分岐点検出部、および、前記制御点検出部のうち、少なくとも1つの検出部は、道路側に設置された通信機との路車間通信により、検出対象の位置を取得することを特徴とする
請求項6に記載の分岐路内位置演算装置。
【請求項8】
前記分岐点検出部、および、前記制御点検出部のうち、少なくとも1つの検出部は、自車に設置されたカメラの撮影画像から、あらかじめ道路法令により規定された道路標識または道路標示の特徴情報をパターンマッチングすることにより、検出対象の位置を取得することを特徴とする
請求項6に記載の分岐路内位置演算装置。
【請求項9】
本線から派生する分岐路に自車が進入したとき、自車の分岐路内位置を演算する分岐路内位置演算方法であって、
コンピュータが、
分岐路の始点を示す分岐開始点、分岐路内で自車の制御を要する制御点、および、分岐路の終点を示す分岐終了点を含む分岐路情報を分岐路ごとに定義する地図情報を取得し、
自車位置検出部を介して、自車位置を検出し、
分岐路情報で示される所定分岐路の付近に検出した前記自車位置が存在するとき、地図情報取得部を介して、前記所定分岐路の前記分岐開始点を検出し、
前記自車位置が前記所定分岐路の分岐元となる本線から前記所定分岐路へと進入したことを検出し、
前記所定分岐路へと進入した前記自車位置について、前記分岐開始点からの走行距離に基づいて前記分岐路内位置を演算し、前記分岐路内位置から分岐路情報で示される前記制御点の位置までの残距離を演算し、
前記分岐路内位置および前記残距離を出力することを特徴とする
分岐路内位置演算方法。
【請求項10】
請求項9に記載の分岐路内位置演算方法を、コンピュータに実行させるための
分岐路内位置演算プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−75933(P2009−75933A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245373(P2007−245373)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】