説明

前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置

【課題】車両発進時における過渡トルクステアを抑制することで、ドライバーのステアリング操作に違和感を与えないようにする。
【解決手段】車両発進時に、左右のコイルスプリング46が伸長することでコイル軸回りの回転力が発生すると、摩擦力可変支持手段56は、高フリクションベアリング64,66がコイルスプリング46の上端部に配置したアッパーサポート54に係合して回転を規制することで、前記コイル軸回りの回転力を左右の転舵軸回りのトルクとして伝達しする。この左右の転舵軸回りのトルクは、左右の駆動軸の長さが異なることで左右の前車輪で発生しようとするトルクステアを打ち消す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源に接続する差動装置を車幅方向中心からオフセットして配置した前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば横置きエンジンを搭載した前輪駆動車(FF車)は、エンジンに接続した差動装置を車幅方向中心からオフセットして配置しているので、差動装置と左右の車輪を連結している左右の駆動軸の長さが異なる。長さが異なる左右の駆動軸から左右の車輪に伝達される駆動トルクは左右差が生じるのでトルクステアが発生する。特に、車両の発進直後に大きなトルクステアが発生する。ここで、トルクステアは、ドライバーの意に反してステアリングが取られる現象である。
【0003】
車両の発進時のトルクステアの発生メカニズムは、発進直後から左右の駆動軸のアウター折れ角の差により2次偶力が発生し、それが左右のキングピン軸回りの不均衡トルクが発生する(以下、定常トルクステアと称する)。また、発進直後だけ、長さが異なる左右の駆動軸の捩じり剛性の差によって駆動トルクに左右差が発生し、この駆動トルクの左右差とキングピンオフセットとの積が、キングピン軸回りの不均衡トルクとして発生する(以下、過渡トルクステアと称する)。したがって、車両の発進直後には、過渡トルクステア及び定常トルクステアとを足し合わせた大きなトルクステアが発生し、ドライバーが違和感を感じるのである。
【0004】
ここで、トルクステアを低減する従来の技術として、例えば、サスペンションアームのアームスパンを左右で異ならせ、車両加速時の駆動反力による左右の車輪のステア角度に差を生じさせ、左右のキングピン軸回りに発生するトルクに基づいた左右の車輪のステア角の差を打ち消してトルクステアを低減する技術(例えば特許文献1)や、ナックルアームとタイロッドとの結合点の高さ位置を左右で異ならせ、車両加速時のパワーホップ現象により左右の車輪に異なるトー変化を生じさせ、左右のキングピン軸回りに発生するトルクに基づいた左右の車輪のステア角の差を打ち消してトルクステアを低減する技術(例えば特許文献2)が知られている。
【特許文献1】実公昭61−9766号公報
【特許文献2】実公昭61−23450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2の従来の技術は、車両の加速度に比例してトルクステアを低減するようにしているので、車両発進時のみに発生する過渡トルクステアを抑制することができず、ドライバーのステアリング操作に違和感を与えてしまう。
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、車両発進時における過渡トルクステアを抑制することで、ドライバーのステアリング操作に違和感を与えないようにすることができる前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置は、駆動源に接続した差動装置を車幅方向中心からオフセットして配置した前輪駆動車とし、前記差動装置から異なる長さで車幅方向に延在している左右の駆動軸をそれぞれ左右の前車輪に連結し、これら左右の前車輪とともに転舵軸回りに回動自在な左右の車輪支持部材と車体側部材との間に、左右のコイルスプリングを配置した前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置において、前記左右のコイルスプリングの下端部を、前記左右の車輪支持部材に対して相対回転不能に支持するとともに、前記左右のコイルスプリングの上端部と前記車体側部材との間に、前記左右のコイルスプリングの上端部及び前記車体側部材との支持摩擦力を可変自在として前記上端部を支持する摩擦力可変支持手段を配置し、前記摩擦力可変支持手段は、車両発進時に、前記左右のコイルスプリングが伸長することで発生するコイル軸回りの回転力を、前記支持摩擦力を大きくして前記左右のコイルスプリングの上端部の回転を規制することで前記左右の転舵軸回りのトルクとして伝達し、この左右の転舵軸回りのトルクは、車両発進時に前記左右の駆動軸の長さが異なることで前記左右の前車輪で発生するトルクと逆方向に発生するように、前記左右のコイルスプリングを配置した装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置によると、車両発進時に、左右のコイルスプリングが伸長することで発生するコイル軸回りの回転力を、摩擦力可変支持手段が支持摩擦力を大きくして前記左右のコイルスプリングの上端部の回転を規制することで左右の転舵軸回りのトルクとして伝達し、この左右の転舵軸回りのトルクが、車両発進時に前記左右の駆動軸の長さが異なることで左右の前車輪で発生しようとするトルクステアを打ち消すようにしているので、ドライバーのステアリング操作に違和感を与えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、横置きエンジンを搭載した前輪駆動車を車両後方から示した図、図2は、前輪駆動車を平面視で示した図、図3はストラット式フロントサスペンションの構成を示す図、図4から図7は、本発明に係る第1実施形態の摩擦力可変支持部を示す図、図8から図10は、本発明に係る第2実施形態の摩擦力可変支持部を示す図、さらに、図11は、本発明に係る第3実施形態の摩擦力可変支持部を示す図である。
【0009】
図1に示すように、車体前部に搭載した横置きエンジン2はクランク軸が車幅方向に延在しており、エンジン2の左側に変速機4を介して差動装置6が接続している。なお、エンジン2及び変速機4が、本発明の駆動源に相当する。
差動装置6の左側には左駆動軸8が連結し、この左駆動軸8に、等速継手9aを介して左前車輪10Lが連結している。差動装置6の右側には車幅方向に延在する中間軸14を介して右駆動軸16が連結し、この右駆動軸16に等速継手9bを介して右前車輪10Rが連結している。
【0010】
次に、図3は、左前車輪10Lを支持するストラット式フロントサスペンションを示す図である。なお、右前車輪10Rを支持するストラット式フロントサスペンションは、図3に対して車幅方向の配置位置が逆であるが同一構成なので説明は割愛する。
このサスペンションは、左前車輪10Lの左駆動軸8を挿通支持する円筒部20dを形成した車輪支持部材20を備えており、この車輪支持部材20の下端部20aにボールジョイント22介してロアリンク24が連結し、上端部20bに設けた連結部26を介してアッパリンク28及びストラット30が連結され、中央部後方側に突出延長する支持部20cにタイロッド32が連結している。このタイロッド32は、図2で示すステアリング装置33に連結されている。
【0011】
ロアリンク24は、車幅方向に延長して配設され、内方端が二股に分岐されて夫々の端部が弾性体ブッシュ25を介して車体側部材50に連結されている。アッパリンク28は、一本のI型リンクで構成され、一端の車幅方向の内側端が車体側部材50に連結されている。連結部26は、車輪支持部材20の上端部20bに、下端のボールジョイント22の中心を通るキングピン軸LKの延長線に軸線を一致させて設けている。
【0012】
ストラット30は、車両上下方向に延在するショックアブソーバ44とその回りに同軸に配設されたコイルスプリング46とで構成されている。
ショックアブソーバ44を構成するシリンダチューブ44aの下端は、取付ブラケット48を介して連結部26に連結しているとともに、シリンダチューブ44aから上方に突出するピストンロッド44bの上端部は、車体側部材50に固定した後述する摩擦力可変支持部56に連結されている。
【0013】
コイルスプリング46は、下端部から見ると反時計回りに螺旋状に延在している左巻きのコイルスプリングを使用しており、その下端部がシリンダチューブ44aの外周に溶接により固定したロアシート52に支持され、その上端部がアッパーサポート54に支持されているとともに、アッパーサポート54は、摩擦力可変支持部56に支持されている。ここで、コイルスプリング46の上下端部は、ロアシート52及びアッパーサポート54との接触部分の摩擦力を高めて互いに相対回転しない構造としている。
【0014】
ここで、コイルスプリング46は、圧縮或いは伸長する際にコイル軸回りのトルクを発生する。そして、本実施形態ように左巻きに設定したコイルスプリング46は、伸長する際には下端部から見ると反時計回りのトルクを発生し、圧縮する際には下端部から見ると時計回りのトルクを発生する。そして、コイルスプリング46の上端部を支持しているアッパーサポート54は、コイルスプリング46の圧縮或いは伸長とともに回転する。
【0015】
摩擦力可変支持部56は、車体側部材50との係合摩擦力を可変としてアッパーサポート54を支持する部材である。
図4に示すように、ピストンロッド44bの上端には、円板形状の係止板44cが取付けられている。アッパーサポート54は、コイルスプリング46の上端部を支持するスプリング支持部54aの内径部に、円筒部54bを介して円板形状のフランジ部54cを一体化した形状としている。
【0016】
そして、車体側部材50に固定した摩擦力可変支持部56のケース56a内に、ピストンロッド44bの上端側及びアッパーサポート54の円筒部54bを遊挿して係止板44c及びフランジ部54cを上下に平行に配置している。係止板44cは、インシュレータ58を介して摩擦力可変支持部56の内壁上部に連結している。
フランジ部54cの外周側上面には、環状の第1樹脂ベアリング60が配置されており、この第1樹脂ベアリング60は、環状の皿ばね62を介してケース56aの内壁上部に当接している。フランジ部54cの内周側上面には、係止板44cの下面に近接して環状の第2樹脂ベアリング64が配置されている。また、ケース56aの内壁下部には、フランジ部54cの下面に近接して環状の第3樹脂ベアリング66が配置されている。
【0017】
第1〜第3樹脂ベアリング60,64,66は、2枚の環状板材の間に環状の樹脂板材を介在したベアリングであり、回転時に所定の摩擦力が発生するようになっている。摩擦力の大きさは、第2樹脂ベアリング64の摩擦力f2が一番大きく、次いで、第3樹脂ベアリング66の摩擦力f3が大きく、第1樹脂ベアリング60の摩擦力f1が一番小さく設定されている(f2>f3>f1)。
【0018】
次に、差動装置6を車幅方向中央からオフセットして配置したことによる車両の発進時のトルクステアの発生メカニズムについて説明する。
図1に示すように、差動装置6を車幅方向の左側にオフセットして配置したことから、車両の発進直後に、過渡トルクステア及び定常トルクステアとを足し合わせた大きなトルクステアを発生しようとする。すなわち、発進時から定常的に、左駆動軸8及び右駆動軸16の折れ角θL,θRの差による2次偶力が発生することで定常トルクステアが発生する。また、発進直後のみに、長さが異なっている左駆動軸8の捩じり剛性が、中間軸14及び右駆動軸16の捩じり剛性より高くなり、左前車輪10Lに伝えられる駆動トルクが右前車輪10Rに伝えられる駆動トルクより大きくなって過渡トルクステアが発生する。
このため、発進直後には、図2に示すように、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTLが、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTRより大きくなり、ステアリングを右に回転させようとするトルクステアが発生しようとする。
【0019】
次に、車両の発進時、一定速度走行、減速走行に伴う摩擦力可変支持部56の動作について、図4から図7を参照しながら説明する。
車両の一定速度の走行時には、図4に示すように、左右のコイルスプリング46は小さなストロークで伸長、圧縮を繰り返す。摩擦力可変支持部56の第1樹脂ベアリング60は、皿ばね62を介してアッパーサポート54のフランジ部54cを支持し、第2樹脂ベアリング64は係止板44cから離間し、第3樹脂ベアリング66もフランジ部54cから離間した状態となる。これにより、摩擦力可変支持部56は、小さな摩擦力f1を発生する第1樹脂ベアリング60を介してアッパーサポート54を支持している。
【0020】
小さなストロークで伸長、圧縮を繰り返す左右のコイルスプリング46は、コイル軸回りのトルクを発生するが、摩擦力f1を小さく設定した第1樹脂ベアリング60がアッパーサポート54を回転自在に支持しているので、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクは左右の車輪支持部材20側に伝達されない。
【0021】
また、車両の発進直後は、図5に示すように、車両前部のリフトアップとともに左右のコイルスプリング46が大きなストロークで伸長する。ショックアブソーバ44は、車両前部のリフトアップを抑制する減衰力が発生するので、ピストンロッド44bに取り付けた係止板44cが車体側部材50に対して相対的に下方に移動する。係止板44cが下方に移動すると、第2樹脂ベアリング64が係止板44cの下面に当接し、第3樹脂ベアリング66がアッパーサポート54のフランジ部54cの下面に当接した状態となる。また、皿ばね62は第1樹脂ベアリング60に上方から荷重を加える。このように、車両の発進直後には、摩擦力可変支持部56は、第1樹脂ベアリング60、第2樹脂ベアリング64及び第3樹脂ベアリング66を介してアッパーサポート54を支持している。
【0022】
そして、車両の発進直後に大きなストロークで伸長した左右のコイルスプリング46は、上端部から見て反時計回りのコイル軸回りのトルクを発生する。摩擦力可変支持部56は、第1樹脂ベアリング60、第2樹脂ベアリング64及び第3樹脂ベアリング66の各々の摩擦力を合わせた大きな支持摩擦力(f1+f2+f3)でアッパーサポート54のフランジ部54cの回転を規制しているので、フランジ部54cの回転が規制されている状態では、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTS、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTSとして左右の車輪支持部材20に伝達される。
【0023】
このように、大きなストロークで伸長する左右のコイルスプリング46が発生したコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTS、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTSとして左右の車輪支持部材20に伝達されると、図2に示すように、トルクステアの要因となっている左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTLを打ち消す方向に作用するので、発進直後に発生しようとする大きなトルクステア、すなわち、過渡トルクステア及び定常トルクステアとを合わせた大きなトルクステアが抑制される。
【0024】
また、発進直後から所定時間経過(例えば1、2秒後)し、ショックアブソーバ44の減衰力は低下したが車両前部がリフトアップしているときには、図6に示すように、係止板44cの下面から第2樹脂ベアリング64が離間し、第3樹脂ベアリング66がアッパーサポート54のフランジ部54cの下面に当接した状態となる。このときには、摩擦力可変支持部56は、第1樹脂ベアリング60及び第3樹脂ベアリング66を介してアッパーサポート54を支持している。
【0025】
摩擦力可変支持部56は、第1樹脂ベアリング60及び第3樹脂ベアリング66の各々の摩擦力を合わせた比較的大きな支持摩擦力(f1+f3)でアッパーサポート54のフランジ部54cの回転を規制しているので、フランジ部54cの回転が規制されている状態では、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTS'(TS>TS')、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTS'(TS>TS')として左右の車輪支持部材20に伝達される。
この左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTS'、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTS'が左右の車輪支持部材20に伝達されると、発進直後から所定時間経過した時の定常トルクステアが抑制される。
【0026】
また、車両の減速走行時には、図7に示すように、車両前部のリフトダウンとともに左右のコイルスプリング46が大きなストロークで圧縮する。ショックアブソーバ44は、車両前部のリフトダウンを抑制する減衰力が発生するので、ピストンロッド44bに取り付けた係止板44cが車体側部材50に対して相対的に上方に移動し、車体側部材50とともに摩擦力可変支持部56が下方に移動する。これにより、皿ばね62は押し潰れた状態となりながら第1樹脂ベアリング60に上方から車体荷重が加わり、第2樹脂ベアリング64は係止板44cから離間し、第3樹脂ベアリング66もフランジ部54cから離間した状態となる。つまり、車両の減速走行時には、摩擦力可変支持部56は、第1樹脂ベアリング60を介してアッパーサポート54を支持している。
【0027】
そして、大きなストロークで圧縮する左右のコイルスプリング46は、コイル軸回りのトルクを発生するが、第1樹脂ベアリング60がアッパーサポート54を回転させながら支持することで、コイルスプリング46のコイル軸回りのトルクは、左右の車輪支持部材20側にほとんど伝達されない。
したがって、本実施形態では、車両の発進時に左右のコイルスプリング46が伸長してコイル軸回りのトルクが発生するときに、摩擦力可変支持部56が大きな支持摩擦力でアッパーサポート54の回転を規制し、アッパーサポート54の回転が規制されている状態では、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルク、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクとして左右の車輪支持部材20に伝達され、ステアリングを左右の一方に回転させようとするトルクステアの要因となる左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクを打ち消す方向に作用するので、車両の発進時に発生しようとするトルクステアを抑制して保舵力の変動を防止することができ、ドライバーのステアリング操作に違和感を与えることがない。
【0028】
また、車両の一定速度の走行時、或いは車両の減速走行時には、摩擦可変支持部56は、アッパーサポート54が車体側部材50に対して回転自在となるように小さな支持摩擦力で支持するので、左右のコイルスプリング46で発生するコイル軸回りのトルクが、左右前車輪10L,10Rのキングピン軸LK回りのトルクとしてほとんど伝達されず、一定速度の走行時の走行安定性、減速走行時の走行安定性に影響を与えることがない。
【0029】
また。摩擦可変支持部56は、摩擦力の小さい第1樹脂ベアリング60と、この第1樹脂ベアリング60と比較して摩擦力が大きい第2樹脂ベアリング64及び第3樹脂ベアリング66とを備えており、車両の発進時には、第1樹脂ベアリング60、第2樹脂ベアリング64及び第3樹脂ベアリング66が発生する支持摩擦力でアッパーサポート54を支持することで、左右のコイルスプリング46で発生するコイル軸回りのトルクを、トルクステアの要因となるトルクを打ち消す方向に確実に伝達することができるとともに、車両の一定速度の走行時、或いは車両の減速走行時には、第1樹脂ベアリング60が発生する小さな支持摩擦力でアッパーサポート54を回転自在に支持するので、左右のコイルスプリング46で発生するコイル軸回りのトルクが、左右の車輪支持部材20側に伝達されるのを防止することができる。
【0030】
また、第2樹脂ベアリング64(摩擦力f2)は、第3樹脂ベアリング66(摩擦力f3)より摩擦力の大きなベアリングとしており(f2>f3)、車両の発進直後には、第1樹脂ベアリング60、第2樹脂ベアリング64及び第3樹脂ベアリング66による大きな支持摩擦力でアッパーサポート54を支持することで、発進直後に発生しようとする過渡トルクステア及び定常トルクステアとを合わせた大きなトルクステアを確実に抑制することができるとともに、発進直後から所定時間経過(例えば1、2秒後)すると、第1樹脂ベアリング60及び第3樹脂ベアリング66により、発進直後よりは小さな支持摩擦力(比較的大きな支持摩擦力)でアッパーサポート54を支持することで、発進直後から所定時間経過したときに発生しようとする定常トルクステアを確実に抑制することができる。
また、第1〜第3樹脂ベアリング60,64、66は薄肉のベアリングなので、摩擦可変支持部56の小型化を図ることができるとともに、サスペンション上部の狭い空間にレイアウト自由度を高めながら摩擦可変支持部56を配置することができる。
【0031】
次に、図8から図10を参照して、第2実施形態の摩擦力可変支持部70について説明する。なお、図1から図7で示した構成と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、アッパーサポート54は、スプリング支持部54aの内径部に筒状部54dを一体に形成しており、この筒状部54dを、摩擦力可変支持部70のケース70a内に配置している。
また、スプリング支持部54aの上面とケース70aの下面との間に環状の第1樹脂ベアリング60を介在し、筒状部54dの上面に、係止板44cの下面に近接させて環状の第2樹脂ベアリング64が配置されている。
【0032】
第1樹脂ベアリング60及び第2樹脂ベアリング64は、第1実施形態と同様に、第2樹脂ベアリング64の摩擦力f2が大きく、第1樹脂ベアリング60の摩擦力f1が小さく設定されている(f2>f1)。
また、コイルスプリング46も、左巻きに設定したコイルスプリングであり、伸長する際には下端部は反時計回りのトルクを発生し、圧縮する際には下端部は時計回りのトルクを発生する。
【0033】
次に、車両の発進時、一定速度走行、減速走行に伴う本実施形態の摩擦力可変支持部70の動作について、図8から図10を参照しながら説明する。
車両の一定速度の走行時には、図8に示すように、左右のコイルスプリング46は小さなストロークで伸長、圧縮を繰り返す。摩擦力可変支持部70の第1樹脂ベアリング60は、アッパーサポート54のスプリング支持部54aを支持し、第2樹脂ベアリング64は係止板44cから離間した状態となる。これにより、摩擦力可変支持部70は、小さな摩擦力を発生する第1樹脂ベアリング60を介してアッパーサポート54を支持している。
【0034】
小さなストロークで伸長、圧縮を繰り返す左右のコイルスプリング46は、コイル軸回りのトルクを発生するが、第1樹脂ベアリング60が小さな支持摩擦力でアッパーサポート54のスプリング支持部54aを回転自在に支持しているので、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクは左右の車輪支持部材20側にほとんど伝達されない。
【0035】
また、車両の発進直後は、図9に示すように、車両前部のリフトアップとともに左右のコイルスプリング46が大きなストロークで伸長する。ショックアブソーバ44は、車両前部のリフトアップを抑制する減衰力が発生するので、ピストンロッド44bに取り付けた係止板44cが車体側部材50に対して相対的に下方に移動する。係止板44cが下方に移動すると、第2樹脂ベアリング64が係止板44cの下面に当接した状態となる。このように、車両の発進直後には、摩擦力可変支持部70は、第1樹脂ベアリング60及び第2樹脂ベアリング64を介してアッパーサポート54を支持している。
【0036】
そして、車両の発進直後に大きなストロークで伸長した左右のコイルスプリング46は、上端部から見て反時計回りのコイル軸回りのトルクを発生する。摩擦力可変支持部56は、第1樹脂ベアリング60及び第2樹脂ベアリング64の各々の摩擦力を合わせた大きな支持摩擦力(f1+f2)でアッパーサポート54の回転を規制しているので、アッパーサポート54の回転が規制されている状態では、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTS″、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTS″として左右の車輪支持部材20に伝達される。
【0037】
このように、大きなストロークで伸長する左右のコイルスプリング46が発生したコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTS″、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTS″として左右の車輪支持部材20に伝達されると、図2に示すように、トルクステアの要因となっている左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTLを打ち消す方向に作用するので、発進直後に発生しようとする大きなトルクステア、特に、過渡トルクステアが抑制される。
【0038】
また、車両の減速走行時には、図10に示すように、車両前部のリフトダウンとともに左右のコイルスプリング46が大きなストロークで圧縮する。ショックアブソーバ44は、車両前部のリフトダウンを抑制する減衰力が発生するので、ピストンロッド44bに取り付けた係止板44cが車体側部材50に対して相対的に上方に移動し、車体側部材50とともに摩擦力可変支持部70が下方に移動する。これにより、第1樹脂ベアリング60に上方から車体荷重が加わり、第2樹脂ベアリング64は係止板44cから離間した状態となる。つまり、車両の減速走行時には、摩擦力可変支持部70は、第1樹脂ベアリング60を介してアッパーサポート54を支持している。
【0039】
そして、大きなストロークで圧縮する左右のコイルスプリング46は、コイル軸回りのトルクを発生するが、第1樹脂ベアリング60が小さな支持摩擦力でアッパーサポート54を回転させながら支持することで、コイルスプリング46のコイル軸回りのトルクは、左右の車輪支持部材20側にほとんど伝達されない。
【0040】
したがって、本実施形態は、車両の発進時に左右のコイルスプリング46が伸長してコイル軸回りのトルクが発生する場合には、摩擦力可変支持部70が大きな支持摩擦力でアッパーサポート54の回転を規制し、アッパーサポート54の回転が規制されている状態では、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルク、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクとして左右の車輪支持部材20に伝達され、ステアリングを左右の一方に回転させようとするトルクステアの要因となる左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクを打ち消す方向に作用するので、車両の発進時に発生しようとするトルクステアを抑制して保舵力の変動を防止することができ、ドライバーのステアリング操作に違和感を与えることがない。
【0041】
また、車両の一定速度の走行時、或いは車両の減速走行時には、摩擦可変支持部70は、アッパーサポート54が車体側部材50に対して回転自在となるように小さな支持摩擦力で支持するので、左右のコイルスプリング46で発生するコイル軸回りのトルクが、左右前車輪10L,10Rのキングピン軸LK回りのトルクとして伝達されず、一定速度の走行時の走行安定性、減速走行時の走行安定性に影響を与えることがない。
【0042】
また。摩擦可変支持部70は、摩擦力の小さい第1樹脂ベアリング60と、この第1樹脂ベアリング60より摩擦力が大きい第2樹脂ベアリング64とを備えており、車両の発進時には、第1樹脂ベアリング60及び第2樹脂ベアリング64が発生する支持摩擦力でアッパーサポート54を支持することで、左右のコイルスプリング46で発生するコイル軸回りのトルクを、トルクステアの要因となるトルクを打ち消す方向に確実に伝達することができるとともに、車両の一定速度の走行時、或いは車両の減速走行時には、第1樹脂ベアリング60が発生する小さな係合摩擦力でアッパーサポート54を回転自在に支持するので、左右のコイルスプリング46で発生するコイル軸回りのトルクが、左右の車輪支持部材20側に伝達されるのを防止することができる。
また、第1及び第2樹脂ベアリング60,64は薄肉のベアリングなので、摩擦可変支持部70の小型化を図ることができるとともに、サスペンション上部の狭い空間にレイアウト自由度を高めながら摩擦可変支持部70を配置することができる。
【0043】
次に、図11を参照して、第3実施形態の摩擦力可変支持部80について説明する。なお、本実施形態も、図1から図7で示した構成と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態は、スプリング支持部54aの上面とケース82の下面との間に介在した環状の電気粘性流体(以下、ER流体と称する)封入ベアリング84と、ER流体封入ベアリング84とケース82とに所定の強さの電圧を印加する電圧供給部86と、車両に搭載した加速度センサ88の入力情報に基づいて電圧供給部86を制御する電圧コントローラ90とを備えている。
【0044】
ER流体封入ベアリング84は、上下に配置した2つの環状板材84a,84bの間にER流体を封入したベアリングであり、電圧供給部86からケース82を介して一方の環状板材84aに、同時に他方の環状板材84bに所定の強さの電圧が印加されるとER流体の粘性が変更され、環状板材84a,84bが相対回転する際の回転摩擦力が変化するようになっている。
【0045】
電圧コントローラ90は、マイクロコンピュータ、必要なインタフェース回路、A/D変換器、及びD/A変換器等を含んで構成されており、加速度センサ88からの入力情報に基づき、車両の発進時、車両の一定速度走行、車両の減速走行の状態を判断し、それらの走行状態に応じて電圧供給部86に電圧制御の信号を出力する。
なお、本実施形態のコイルスプリング46も、左巻きに設定したコイルスプリングであり、伸長する際には下端部に反時計回りのトルクを発生し、圧縮する際には下端部に時計回りのトルクを発生する。
【0046】
次に、本実施形態の摩擦力可変支持部80の動作について説明する。
車両の一定速度の走行時には、電圧コントローラ90は電圧供給部86に対する電圧制御を行わない。
小さなストロークで伸長、圧縮を繰り返す左右のコイルスプリング46は、コイル軸回りのトルクを発生するが、電圧供給部86から電圧が印加されないER流体封入ベアリング84はER流体の粘性が低くなって環状板材84a,84bの相対回転時の回転摩擦力を小さくし、アッパーサポート54のスプリング支持部54aを小さな支持摩擦力で回転自在に支持している。これにより、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクは左右の車輪支持部材20側にほとんど伝達されない。
【0047】
また、車両の発進直後には、加速度センサ88からの入力情報に基づいて所定の加速度勾配を演算した電圧コントローラ90は、所定の強い電圧が印加されるように電圧供給部86を制御する。電圧供給部86から強い電圧が印加されたER流体封入ベアリング84は、ER流体の粘性が高くなり、環状板材84a,84bの相対回転時の回転摩擦力が大きくなる。
【0048】
そして、車両の発進直後に大きなストロークで伸長した左右のコイルスプリング46は、上端部から見て反時計回りのコイル軸回りのトルクを発生する。ER流体封入ベアリング84はER流体の粘性が高くなり、大きな支持摩擦力でアッパーサポート54の回転を規制しているので、アッパーサポート54の回転が規制されている状態では、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTS、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTSとして左右の車輪支持部材20に伝達される。
【0049】
このように、大きなストロークで伸長する左右のコイルスプリング46が発生したコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTS、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTSとして左右の車輪支持部材20に伝達されると、トルクステアの要因となっている左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTLを打ち消す方向に作用するので、発進直後に発生しようとする過渡トルクステアが抑制される。
【0050】
また、発進直後から所定時間経過(例えば1、2秒後)すると、加速度センサ88からの入力情報により所定の加速度を演算した電圧コントローラ90は、発進直後の強い電圧よりやや低い電圧が印加されるように電圧供給部86を制御する。電圧供給部86から前述した電圧が印加されたER流体封入ベアリング84はER流体の粘性が高くなり、環状板材84a,84bの相対回転時の回転摩擦力が大きくなる。
【0051】
これにより、発進直後から所定時間経過したときには、発進直後よりは少し低い力でアッパーサポート54の回転を規制し、アッパーサポート54の回転が規制されている状態では、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTS'、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTS'として左右の車輪支持部材20に伝達される。
【0052】
この左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクTS'、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクTS'が左右の車輪支持部材20に伝達されると、発進直後から所定時間経過した時の定常トルクステアが抑制される。
また、車両の減速走行時には、加速度センサ88からの入力情報に基づいて電圧コントローラ90は電圧供給部86に対する電圧制御を行わない。
【0053】
そして、車両の減速走行時には、車両前部のリフトダウンとともに左右のコイルスプリング46が大きなストロークで圧縮するが、電圧供給部86から電圧が印加されないER流体封入ベアリング84はER流体の粘性が低くなり、環状板材84a,84bの相対回転時の回転摩擦力を小さくし、アッパーサポート54のスプリング支持部54aを小さな支持摩擦力で回転自在に支持しているので、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクは左右の車輪支持部材20側にほとんど伝達されない。
【0054】
したがって、本実施形態は、車両の発進時に左右のコイルスプリング46が伸長してコイル軸回りのトルクが発生する場合には、電圧コントローラ90が、加速度センサ88からの入力情報に基づいて所定の強い電圧が印加されるように電圧供給部86を制御し、電圧供給部86から強い電圧が印加されたER流体封入ベアリング84は、ER流体の粘性が高くなり環状板材84a,84bの相対回転時の回転摩擦力が大きくなることから、大きな支持摩擦力でアッパーサポート54の回転を規制し、アッパーサポート54の回転が規制されている状態では、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクが、左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルク、右前車輪10Rのキングピン軸LK回りのトルクとして左右の車輪支持部材20に伝達され、ステアリングを左右の一方に回転させようとするトルクステアの要因となる左前車輪10Lのキングピン軸LK回りのトルクを打ち消す方向に作用する。これにより、車両の発進時に発生しようとするトルクステアを抑制して保舵力の変動を防止することができ、ドライバーのステアリング操作に違和感を与えることがない。
【0055】
また、車両の一定速度の走行時、或いは車両の減速走行時には、電圧供給部86から電圧が印加されないER流体封入ベアリング84はER流体の粘性が低くなり、環状板材84a,84bの相対回転時の回転摩擦力を小さくすることで、アッパーサポート54のスプリング支持部54aを小さな支持摩擦力で回転自在に支持しているので、左右のコイルスプリング46のコイル軸回りのトルクは左右の車輪支持部材20側にほとんど伝達されず、一定速度の走行時の走行安定性、減速走行時の走行安定性に影響を与えることがない。
【0056】
さらに、ER流体封入ベアリング84は薄肉のベアリングなので、サスペンション上部の狭い空間にレイアウト自由度を高めながら配置することができる。
なお、本発明の前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置が適用される車両は、駆動源と、車幅方向中心からオフセットしては位置した差動装置が搭載された車両であれば、エンジンと変速機を駆動源とするエンジン駆動車に限らず、モータと変速機を駆動源とする電気自動車や、エンジンとモータを駆動源とするハイブリッド車にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】横置きエンジンを搭載した前輪駆動車を車両前方から示した図である。
【図2】前輪駆動車を平面視で示した図である。
【図3】ストラット式フロントサスペンションの構成を示す図である。、図4から図7は、本発明に係る第1実施形態の摩擦力可変支持部を示す図、図8から図10は、本発明に係る第2実施形態の摩擦力可変支持部を示す図、さらに、図11は、本発明に係る第3実施形態の摩擦力可変支持部を示す図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の摩擦力可変支持手段の構造を示す図である。
【図5】車両が発進した直後の第1実施形態の摩擦力可変支持手段の動作を示す図である。
【図6】車両の発進直後から1、2秒後経過したときの第1実施形態の摩擦力可変支持手段の動作を示す図である。
【図7】車両が減速走行しているときの第1実施形態の摩擦力可変支持手段の動作を示す図である。
【図8】本発明に係る第2実施形態の摩擦力可変支持手段の構造を示す図である。
【図9】車両が発進した直後の第2実施形態の摩擦力可変支持手段の動作を示す図である。
【図10】車両が減速走行しているときの第2実施形態の摩擦力可変支持手段の動作を示す図である。
【図11】本発明に係る第3実施形態の摩擦力可変支持手段の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
2 エンジン
4 変速機
6 差動装置
8 左駆動軸
10R 右前車輪
10L 左前車輪
16 右駆動軸
20 車輪支持部材
30 ストラット
44 ショックアブソーバ
44b ピストンロッド
44c 係止板
46 コイルスプリング
50 車体側部材
54 アッパーサポート
54a スプリング支持部
54c フランジ部
56a,70a,82 ケース
56,70,80 摩擦可変支持部(摩擦力可変支持手段)
60 第1樹脂ベアリング(第1のベアリング)
62 第2樹脂ベアリング(第2のベアリング)
64 第3樹脂ベアリング(第2のベアリング)
84a,84b 環状板材
84 ER流体封入ベアリング(電気粘性流体封入ベアリング)
86 電圧供給手段
88 加速度センサ(検知手段)
90 電圧コントローラ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に接続した差動装置を車幅方向中心からオフセットして配置した前輪駆動車とし、前記差動装置から異なる長さで車幅方向に延在している左右の駆動軸をそれぞれ左右の前車輪に連結し、これら左右の前車輪とともに転舵軸回りに回動自在な左右の車輪支持部材と車体側部材との間に、左右のコイルスプリングを配置した前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置において、
前記左右のコイルスプリングの下端部を、前記左右の車輪支持部材に対して相対回転不能に支持するとともに、前記左右のコイルスプリングの上端部と前記車体側部材との間に、前記左右のコイルスプリングの上端部及び前記車体側部材との支持摩擦力を可変自在として前記上端部を支持する摩擦力可変支持手段を配置し、
前記摩擦力可変支持手段は、車両発進時に、前記左右のコイルスプリングが伸長することで発生するコイル軸回りの回転力を、前記支持摩擦力を大きくして前記左右のコイルスプリングの上端部の回転を規制することで前記左右の転舵軸回りのトルクとして伝達し、この左右の転舵軸回りのトルクは、車両発進時に前記左右の駆動軸の長さが異なることで前記左右の前車輪で発生するトルクと逆方向に発生するように、前記左右のコイルスプリングを配置したことを特徴とする前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置。
【請求項2】
前記コイルスプリングの上端部にアッパーサポートを相対回転不能に配置し、前記摩擦力可変支持手段は、前記アッパーサポートを前記車体側部材に回転自在に支持する第1のベアリングと、前記左右のコイルスプリングが伸長したときに前記アッパーサポートと前記車体側部材に挟持されることで前記車体側部材との間に支持摩擦力が発生し、前記左右のコイルスプリングが自由長、或いは圧縮したときには前記アッパーサポート及び前記車体側部材の少なくとも一方から離間する第2のベアリングとを備え、前記第2のベアリングのフリクションは、前記第1のベアリングのフリクションより大きいことを特徴とする請求項1記載の前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置。
【請求項3】
前記第1のベアリング及び前記第2のベアリングは、2枚の環状板材の間に環状の樹脂板材を介在した樹脂ベアリングであることを特徴とする請求項2記載の前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置。
【請求項4】
前記コイルスプリングの上端部にアッパーサポートを相対回転不能に配置し、前記摩擦力可変支持手段は、前記アッパーサポートと前記車体側部材との間に介在され、2枚の環状板材の間に電気粘性流体を封入した電気粘性流体封入ベアリングと、この電気粘性流体封入ベアリングに所定強さの電圧を印加することで前記電気粘性流体の粘性を変更する電圧供給手段と、車両の走行状態を検知する検知手段からの情報に基づいて前記電圧供給手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の前輪駆動車のストラット式フロントサスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−168416(P2006−168416A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360148(P2004−360148)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】