説明

動的な温度制御を有する基板支持体

【課題】基板のプラズマ処理において、動的な温度制御能力を有する基板支持体を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置に用いられる基板支持体40であって、金属熱伝達部材48と、基板支持表面を有した上に位置する静電チャック50と、を備え、前記熱伝達部材48は、当該熱伝達部材48に加熱及び冷却の少なくとも一方を行うために、それを通して液体が循環される少なくとも1つの流路を有する。前記熱伝達部材は、小さい熱質量を有し、プラズマ処理の間に、前記基板温度を急激に変化させるように、前記液体によって所望の温度に急激に加熱及び/又は冷却することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
プラズマ処理装置は、例えば、半導体材料、誘電体材料及び金属材料のプラズマ・エッチング、物理気相成長、 化学気相成長(“CVD”)、物理気相成長(“PVD”)、イオン注入及びレジスト剥離のために使用される。
【0002】
半導体材料処理で使用されるプラズマ処理装置の1つのタイプは、反応チャンバを含む。処理基板は、基板支持体上で反応チャンバ内に支持される。基板は、典型的には、基板ホルダによって基板支持体上に固定される。処理ガスは、ガス分配システムによって反応チャンバ内に導入される。電界は、基板を処理する処理ガスからプラズマを生成するように形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の概要
基板支持体が提供される。基板支持体は、基板を処理している間に基板がその上に支持される支持体の表面で、動的な温度制御を提供することができる。基板支持体は、例えば、プラズマ処理装置の反応室をプラズマエッチングするのに役に立つ。
【0004】
基板支持体の好適な実施形態は、セラミック部材、セラミック部材の上に位置する金属熱伝達部材及び熱伝達部材の上に位置する静電チャックを備える。熱伝達部材は、小さい熱質量(low thermal mass)を有する。熱伝達部材は、少なくとも1つの流路を含み、それを通して熱伝達部材を加熱する及び/又は冷却するために、液体が循環することができる。静電チャックは、静電気的に基板をクランプすることができる支持体の表面を有する。基板支持体は、好適には、1つ以上の流路と温度制御された流れの伝達がある液体源を備える。基板支持体はまた、好適には、支持体の表面と基板との間に熱伝達ガスを供給するために動作可能な熱伝達ガス源を備える。随意的なコントローラは、液体の制御パラメータ及び基板支持体に供給される熱伝達ガスを制御するように、液体源及び熱伝達ガス源の制御動作を制御することができる。
【0005】
熱伝達部材は、好適には、1つ以上の流路に供給される液体によって急速に加熱及び/又は冷却されうる。従って、基板支持体は、基板支持体上で基板の動的な熱制御を提供することができる。
【0006】
プラズマ処理装置内で基板を処理する方法の好適な実施形態は、プラズマ処理装置の反応チャンバ内の静電チャックの支持表面の上に基板を支持する工程と、基板の温度を制御するために静電チャックの下に位置する金属熱伝達部材内の少なくとも1つの通路を通して液体を循環させる工程と、を含む。熱伝達部材は、小さい熱質量(low thermal mass)を有する。
【0007】
基板(例えば、半導体ウェハ、フラットパネルディスプレイ基板、誘電体材料等)のプラズマ処理の間、処理基板から作製されたデバイスが十分な電気特性を持つように、出来るだけ均一に、材料がエッチングによって基板から取り除かれるか、又は材料が基板上に成膜されることが好ましい。しかしながら、基板上に形成されたフィーチャ(feature)のサイズが減少する一方で、基板サイズが増大するにつれて、この目標を達成するのが益々困難となっている。
【0008】
プラズマ処理装置内の基板のプラズマ処理の均一性を向上させるために、エッチングが行われ、その上に(例えば、CVD又はPVD技術によって)材料が成膜され、及び/又はフォトレジストが剥離される、基板の露出した表面における温度を制御することが好ましい。プラズマ・エッチングでは、基板温度の変動及び/又は基板の露出した表面での化学反応の速度における変動によって、エッチング選択性及び異方性における変動に加えて、基板のエッチング速度の変動を引き起こしうる。例えば、ウェハの温度がある温度よりも上昇すると、ウェハダメージ(例えば、フォトレジストダメージ)が生じ、温度に依存する化学反応が変化しうる。材料成膜処理では、基板上に成膜される材料の構成と特性に加えて、成膜中の基板温度の変化によって、成膜速度が大きく変化しうる。
【0009】
基板支持体と基板支持体上に支持される基板との間の熱伝達を向上させるために、基板支持体は、裏面ガス冷却システムを含むことができる。しかしながら、熱伝達ガスの熱伝達能力は、基板支持体の表面条件に依存する。表面条件が処理の間に変化するにつれて、基板から熱を取り除く熱伝達ガスの能力も変化しうる。
【0010】
基板支持体は、処理の間に熱を取り除く液体冷却システムを含むことができる。このようなシステムでは、基板支持体の金属本体(「冷却板」)内の1つ以上の流路を通って液体が流れるか又は金属本体を冷却し、それによって基板支持体上の基板の温度を変化させる。本体が加熱又は冷却されうる速度は、本体の熱容量(heat capacity)又は‘‘熱質量(thermal mass)’’Cに関係する。本体の熱質量は、本体の材料の比熱容量(specific heat capacity)c、及び本体の質量mの積に等しい(すなわち、C=c・m)。従って、本体の熱質量は、その質量を変化させることによって変化することができ、これは本体の体積を変化させることによって実現することができる。また、本体の温度をΔTだけ変化させるために、本体を加熱することによって本体に与えられる必要がある熱量q又は本体を冷却することによって本体により放出される必要がある熱量qは、q=c・m・ΔTで与えられる。その結果、本体の熱質量が増加するにつれて、本体の温度をΔTだけ変化させるために、本体に与えられる必要がある熱量又は本体から取り除く必要がある熱量も増大する。
【0011】
大きい熱質量(例えば、11/4インチ以上の厚さを有する金属冷却板)を持つ冷却板を含む基板支持体、そしてまた大きい液体容量を有する液体供給部は、プラズマ処理の間、固定された温度に基板支持体を維持するために、液体を冷却板内の流路に供給することができる。しかしながら、基板支持体の温度を素早く変化させる液体によって、多量の熱が基板支持体に加えられるか又は基板支持体から取り除かれなければならないので、そのような基板支持体が動的な温度制御能力を有しないことが分かった。その結果、そのような大きな熱質量を有する基板支持体は、基板支持体上に支持される基板の応答性の良い温度制御を提供しない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
熱伝達部材を所望の温度に急速に加熱する及び/又は冷却することが可能な、小さな熱質量を持つ熱伝達部材を使用することによって、動的な温度制御能力を有する基板支持体を提供することができることが分かった。
【0013】
好適な実施形態では、基板支持体は、液体を供給して必要な温度に熱伝達部材を加熱する及び/又は冷却するために動作可能な液体源を備える。熱伝達部材は、少なくとも1つの流路を含み、それを通して熱伝達部材に又は熱伝達部材からの熱伝達の速度を向上させる液体源から液体が循環される。液体源は、好適には、少量の液体を加熱及び/又は冷却することができる。温度制御された液体が熱伝達部材に供給され、素早い応答能力を与えることができる。基板支持体の表面の動的な温度制御は、小さい熱質量を有する熱伝達部材及び素早い応答能力を有する液体源の組み合わせによって、向上させることができる。液体源はまた、好適には、その温度及び/又は流量などの選択された液体のパラメータを制御することができる。
【0014】
好適な実施形態では、基板支持体は、熱伝達ガスを基板支持体の上面と基板との間に供給するために動作可能である熱伝達ガス源を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、基板支持体を使用することができる実施形態の例示的なプラズマ反応室を示す図である。
【図2】図2は、基板支持体の好適な実施形態の横断面図である。
【図3】図3は、基板支持体のセラミック部材の上に位置する低熱質量伝達部材(low thermal mass heat transfer member)を示す平面図である。
【図4】図4は、2分割構造(two-piece construction)を有する熱伝達部材の実施形態を示す図である。
【図5】図5は、流路を示す熱伝達部材のベースの実施形態の平面図である。
【図6】図6は、他の好適な実施形態に係る基板支持体の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適な実施形態に係る基板支持体がその内部で使用可能である例示的なプラズマ反応室は図1に示される。プラズマ反応室は、誘導結合プラズマ反応室である。また、プラズマ処理の間に基板の温度制御が必要な他のタイプのプラズマ反応室内で基板支持体が使用されうる。例えば、基板支持体は、他の誘導結合プラズマ反応室構造、電子サイクロトロン共鳴(“ECR”)、マグネトロン及び容量結合プラズマ反応室内で使用されうる。
【0017】
図1に示されるプラズマ反応室は、静電チャック34を有する基板支持体12を含む反応チャンバ10を備える。静電チャック34は、基板13を静電気的にクランプするほかに基板にRFバイアスを与える。例えば、基板13は、半導体ウェハであってもよい。フォーカスリング14は、基板13の上方のプラズマを増加させる。エネルギ源は、反応チャンバ10の上部に配置され、処理ガスにエネルギを与えて、反応チャンバ内にプラズマを生成する。エネルギ源は、例えば、RF源19によってパワーが与えられるアンテナ18であってもよい。反応チャンバ10は、所望の圧力にチャンバの内部を維持するための真空ポンプ装置を含む。
【0018】
誘電体窓20は、アンテナ18と処理チャンバ10の内部との間に配置される。ガス分配板22は、ウィンドウ20の下にあって、それを通して処理ガスがガス供給部23から反応チャンバ10まで供給される開口部を含む。
【0019】
動作中は、基板13は、基板ホルダ12の露出した上面に配置され、静電チャック34によって静電気的にクランプされる。熱伝達ガスは、好適には、基板13とその上面との間の熱伝達を向上させるために、基板ホルダ12の上面と基板13との間に導入される。処理ガスは、反応チャンバ10に供給される。プラズマは、反応チャンバ10内でRFパワーをアンテナ18に供給することによって生成される。
【0020】
図2は、基板支持体40の好適な実施形態を示す図である。例えば、反応チャンバ10内で基板支持体40を使用することができる。基板支持体40は、下部カバー42、カバー42上のベース44、ベース44の上に配置され、内部空間56を囲むセラミック部材46、セラミック部材46の上に位置する低熱質量伝達部材(low-mass heat transfer member)48、及び、熱伝達部材48の上に位置する静電チャック50を備える。RF電源49は、RFバイアスを提供するために、導電体51を通して電気的に熱伝達部材48に接続される。エッジリング52は、セラミック部材46の上に配置されて、熱伝達部材48及び静電チャック50を取り囲む。エッジリング52は、石英(quartz)やSiCなどで作られうる。基板70は、静電チャック50の上に支持された状態で示される。
【0021】
基板支持体40は、熱伝達部材48内に提供される1つ以上の流路と流れの伝達がある入口58と出口60を含む。入口58及びと出口60は、供給ライン102と戻りライン104をそれぞれ通って液体源100と流れの伝達がある。液体は、液体源100から供給ライン102を介して、熱伝達部材48の流路内に入口58を介して循環し、この流路を通って液体源100に出口60及び戻りライン104を介して戻る。液体源100の動作は、好適には、液体源100と流れの伝達があるコントローラ200によって制御される。
【0022】
ベース44は、アルミニウム、アルミ合金などの金属で作られる。ベース44は電気的に接地される。
【0023】
図2に示される実施形態では、セラミック部材46は、ベース44に固定される。例えば、ベース44にセラミック部材46を固定するボルト、ねじなどの接合留め具(mating fastener)を受けるために、金属挿入物などをセラミック部材46に挿入することができる。セラミック部材46は適当な材料で作られ、また、セラミック部材46の下部表面62の上に作用する圧力(典型的には大気圧)を相殺するのに十分な剛性を持つように構成される。セラミック部材46は、好適には、プラズマ処理の間のゆがみ(deflection)に耐えるのに十分に高い係数(例えば、少なくとも15Mpsi)を有する。セラミック部材46のゆがみを最小化することによって、プラズマ処理の間、セラミック部材46並びにその上に位置する熱伝達部材48及び静電チャック50の寸法安定性(dimensional stability)が維持される。例えば、セラミック部材46は、最も薄い部分で約1〜4mmの厚さを持つことができる。処理の間、ベース44は、熱伝達部材48よりも更に高いか又は更に低い温度のいずれかであってもよい。セラミック部材46は、好適には、ベース44から熱的に絶縁するのに十分に低い熱伝導率を有する。さらに、セラミック部材46は、接地(ground)からRF駆動される熱伝達部材48に対しRF絶縁(RFisolation)を提供する。セラミック部材46は、アルミナ(A1203)などの他の適当な材料で作ることができる。
【0024】
好適な実施形態では、セラミック部材46の上部は、周辺フランジ64によって取り囲まれた、中央が凹んだ表面63を有する。凹んだ表面63は、セラミック部材46が作られた後に、フライス削り(milling)などの機械加工処理によって形成することができる。また、凹んだ表面63は、例えば、モールド(molding)又はキャスティング(casting)によって、セラミック部材46を形成するために使用される処理によって形成することができる。熱伝達部材48は、凹んだ表面63、好適にはフランジ64と同一平面上に配置される。
【0025】
熱伝達部材48は、好適には、セラミック部材46の凹んだ表面63に接着して結合される。セラミック部材46と熱伝達部材48との間に与えられる接着剤は、好適には、セラミック部材46から熱伝達部材48を熱的に絶縁する低い熱伝導率を有する。接着剤はまた、好適には、半導体基板のプラズマ処理の間に、セラミック部材46と熱伝達部材48との間に生じる熱ストレスを緩和する(accommodate)のに十分な弾性を有する。接着剤は、好適には、ゼネラル・エレクトリック社からRTV 133とRTV 167として入手可能な室温硬化接着剤(room temperature-curing adhesive)などのエラストマー材料である。
【0026】
熱伝達部材48は、熱伝達部材48の周辺エッジがフランジ64から横方向に間隔が空くように、凹んだ表面63の幅よりも小さな幅を持つことが好ましい。例えば、凹んだ表面63は円形であり、また、熱伝達部材48は円形かつ凹んだ表面よりも小さい直径を持つすることができる(図3)。静電チャック50は、フランジ64及び熱伝達部材48の上に搭載される。例えば、300mmウェハを処理する場合には、静電チャック50は、静電チャック50がフランジ64に接触するように、例えば、約298mmなどの凹んだ表面63及びウェハの直径にほぼ等しい直径を持つことができる。熱伝達部材48は、約298mm未満の直径を持つことができるので、フランジ64から間隔が空いている。
【0027】
図4では、熱伝達部材48は、好適には、ベース72及び上に位置するカバー74を含む。熱伝達部材48は、銅、銅の合金、アルミニウム、アルミ合金などの十分な熱伝達特性を持つ金属で作られうる。ベース72及びカバー74は、好適には、ろう付けなどによって接合され、その間に流体シールを提供する。
【0028】
ベース72は、好適には、約1/4インチ以下、より好適には約1/8インチ以下の厚さを有する。カバー74は、好適には、約1/16インチ以下の厚さを有する。ベース72及びカバー74は、好適には、約1/4インチ、より好適には約1/8インチの最大結合厚さ(maximum combined thickness)を有する。
【0029】
ベース72は、1つ以上の流路が形成される上部表面73を含む。図5は、円形の流路76を含むベース72の好適な実施形態を示す図である。液体は、入口58と供給ライン102を介して流路76に導入され、この液体は出口60と戻りライン104を介して液体源100に戻される。流路は、熱伝達部材48の温度制御を提供するために、ベース72の中に他の構成を持つことができる。例えば、流路は、らせん、ジグザグなどの他のパターンを代わりに持つことができる。
【0030】
ベース72の流路は、例えば、半円形、円形、長方形、正方形、他の多角形などを含んだ、様々な横断面形状を持つことができる。流路の横断断面積は、流路を通る液体の所望の体積流量(volumetric flow rate)及び液体の熱伝達能力に基づいて、所望の体積の流路を提供するように選択されうる。好適な実施形態では、流路は、約1/32〜約3/32インチの幅、及び約1/32〜約1/16インチの深さを持つ。
【0031】
任意の適当な処理によって、ベース72内の流路が形成されうる。例えば、流路は、ベース72が機械加工処理などによって形成された後に、上部表面73内に形成されうる。また、流路は、例えば、キャスティング、型打ち、スタンピング又は他の処理などによって、本体を製造している間に形成されうる。
【0032】
液体は、水(例えば、脱イオン水)、エチレングリコール、シリコン油(silicon oil)、水/エチレングリコール混合物などであってもよい。液体の冷却性能は、液体流量及び/又は流路に導入される液体の温度を変化させて、異なる液体及び/又は異なる液体混合物を使用することによって、制御することができる。液体の温度は、好適には、液体源100によって調整することができる。
【0033】
図2を参照すると、静電チャック50は、誘電体材料内に挟まれた導電性の電極(又は、二極動作(bipolaroperation)用の1組の電極)を含む。電極は、基板70をクランプするために設けられる。RFバイアスは、静電チャック50を通して基板70に容量結合される。熱伝達部材48は、好適には、カップリングの均一性を向上させる平たんな上面を有する。誘電体材料は、アルミナなどの適当なセラミック材料であってもよい。導電性の電極は、タングステンなどで作られうる。静電チャック50は、例えば、約1mmの厚さを持つことができる。静電チャック50は、その周辺エッジがセラミック材料46のフランジ64に接触するような幅を有する。従って、熱伝達部材48には直接的なRF経路が存在せず、アーク放電を防止している。誘電体材料は、基板70を支持するために静電チャックの露出表面を形成する。露出した表面は、好適には、ウェハの形状で基板70の形状に適合する円形である。
【0034】
図6に示される他の好適な実施形態では、セラミック部材146は、熱伝達部材48がその上に配置される平らな表面147(すなわち、凹んでいない表面)を有する。静電チャック50は、熱伝達部材48の上に位置する。ウェハ70は、静電チャック50の上に配置された状態で示されている。内側リング80は、表面147の上に配置され、熱伝達部材48、静電チャック50及びウェハ70を取り囲む。エッジリング52は、内側リング80を取り囲む。内側リング80は、好適には、セラミック部材146(例えば、アルミナ)と同じ材料で作られる。熱伝達部材48は、空間82によって内側リング80と横方向に間隔が空いている。静電チャック50は、内側リング80に接触する。
【0035】
静電チャック50は、好適には、エラストマー材料などの適当な接着物質で熱伝達部材48に結合される。接着剤は、好適には、その熱伝導率を向上させて、静電チャック50とその下に位置する熱伝達部材48との間に十分な熱伝達を提供するために、金属フィラー(metallic filler)などの材料を含む。例えば、接着剤は、その伝導率を向上させるために、少なくとも1つの金属又は金属合金の粒子(particles)を含むことができる。
【0036】
上述したように、大きな金属冷却板(典型的には、アルミニウムで作られる)は、1 1/4インチ以上の厚さと対応する大きな熱質量を持つことができる。一方、熱伝達部材48は、好適には、その容積をこのような大きな冷却板の体積の約5-10%に等しい体積を持つ。熱伝達部材48の大きく低減された容積によって、所定量だけその温度の変化させるために、熱伝達部材48から除去されるか又は加えられる必要がある熱量は、このような大きな冷却板と比較して大幅に低減される。熱伝達部材48は、好適には、約0.25℃/秒から約2℃/秒の速度で、加熱及び/又は冷却することができる。これと比較して、大きい熱質量を持つ大きな冷却板は、約1℃/分以下と同じ程度の温度変化速度(temperature change rate)を提供する。熱伝達部材48は、好適には、プラズマ処理の間、約-20〜約80℃の範囲で温度を制御することができる。
【0037】
さらに、熱伝達部材48の小さい熱質量によって、熱伝達部材48を必要な温度に加熱及び/又は冷却するために、熱伝達部材48に供給される必要がある液体の体積流量は、大きな熱質量を持つ大きな冷却板を加熱及び/又は冷却するのに必要とされる液体流量に比べて大幅に低減される。
【0038】
基板支持体40の好適な実施形態は、液体源100、熱伝達ガス源150(図6)及びコントローラ200を含む。上述のように、液体源100(図2)は、液体を熱伝達部材48内の流路に供給する。液体源100は、選択された温度及び/又は流量で液体を流路に供給するために、熱電冷却装置(thermoelectricchiller)(例えば、ペルチェクーラー)、熱交換器などを備えることができる。液体源100は、適当なポンプ装置を備えることができる。冷却装置などは、好適には、液体源100から液体が流れる距離を低減するために、熱伝達部材48の近傍に配置され、それによって液体源の応答時間を低減することに加えて、加熱又は冷却される必要がある液体経路内の液体容積を低減する。
【0039】
熱伝達ガス源は、熱伝達ガスを熱伝達ガス通路に供給する。熱伝達ガスは、熱伝達ガス通路を通して、静電チャック50の露出した表面に流れる。そこでは、熱伝達ガスが、露出した表面に形成された開口部及び/又はチャンネル(不図示)を通して、基板70の露出した表面と裏面との間のインタフェース85に分配される(図6)。基板支持体の露出した表面を冷却させる領域を提供する適当な熱伝達ガス供給システムは、本願と同じ出願人による米国特許第5,609,720号に開示され、その全体は本願に参照により組み込まれる。熱伝達ガスは、プラズマ処理の間、基板から離れた熱を十分に伝達する熱伝達能力を有する任意のガスであってもよい。例えば、熱伝達ガスは、ヘリウムなどであってもよい。
【0040】
コントローラ200は、好適には、流路に供給される液体のパラメータを選択的に変化させる液体源の動作を制御し、熱伝達ガス通路に供給される熱伝達ガスのパラメータを選択的に変化させるために熱伝達ガス源150の動作を制御する。コントローラ200は、好適には、液体源100の動作を制御して、液体源によって流路に供給される液体の温度及び/又は流量を制御することができ、熱伝達ガス源150の動作を制御して、露出した表面における必要な温度を実現するためにインタフェース部に供給される熱伝達ガスの流量及び/又は圧力を制御することができる。
【0041】
コントローラ200は、好適には、基板支持体40の1つ以上の選択された位置及び/又は基板上で(例えば、裏面で)温度を測定するために基板支持体40内に配置される1つ以上の温度センサ(不図示)から入力信号を受け取る。温度センサは、例えば、静電チャック50の露出した表面に最も近い位置で温度を測定するために配置することができる。温度センサは、好適には、熱伝達ガス源150の動作の制御に加えて、液体源100の動作のフィードバック制御を可能にするために、リアルタイムの温度測定を提供する。コントローラ200は、液体源100及び熱伝達ガス源150の動作をマニュアルで操作可能であるか又は自動的に制御するようにプログラムされうる。
【0042】
基板支持体40は、その中でプラズマ・エッチング、物理気相成長、化学気相成長(CVD)、イオン注入及び/又はレジスト剥離を含む様々なプラズマ処理動作が実行されるプラズマ処理装置内で使用されうる。プラズマ処理動作は、半導体材料、誘電体材料及び金属材料を含む様々な基板材料に対して実行されうる。
【0043】
基板支持体40は、様々な真空半導体処理の役に立つ、動的で近接した温度制御(dynamic、close temperature control)を提供することができる。例えば、これらの特性は、ゲート及びシャロートレンチ素子分離(“STI”)エッチング処理における正確でステップが変わりやすい温度制御に役に立つ。また、例えば、基板支持体40の温度は、エッチングの間、基板内に傾斜した側壁(tapering sidewalls)を形成するために、傾斜して変化され(ramped)てもよい(例えば、線形的に)。急速に基板温度を変化させる能力は、誘電体材料のエッチング処理などの様々な処理で役に立つ。そこでは、熱が基板から素早く取り除かれない場合には、使用される高電力密度によって急激なウェハ過剰温度状態(rapid wafer over-temperature conditions)を生じさせうる。
【0044】
本発明は、その特定の実施形態を参照して詳細に説明したが、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱しない限り、様々な変形及び修正がなされ、均等物が用いられうることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置の反応室内で用いられる基板支持体であって、
セラミック部材と、
前記セラミック部材の上に位置する金属熱伝達部材であって、最大約1/4インチの厚さを有し、かつ、当該熱伝達部材に加熱及び冷却の少なくとも一方を行うためにそれを通して液体が循環可能な少なくとも1つの流路を含む金属熱伝達部材と、
前記熱伝達部材の上に位置する静電チャックであって、プラズマ処理装置の反応室内で基板を支持するための支持表面を有する静電チャックと、
を備えることを特徴とする基板支持体。
【請求項2】
前記熱伝達部材は、最大約1/8インチの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の基板支持体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの流路は、約1/32から約3/32インチまでの幅と、約1/32から約1/16インチまでの深さとを有することを特徴とする請求項1に記載の基板支持体。
【請求項4】
前記少なくとも1つの流路と流体の伝達がある温度制御された液体源を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の基板支持体。
【請求項5】
前記温度制御された液体源は、前記液体の温度を選択された温度に変化させるように動作可能なペルチェクーラーを含むことを特徴とする請求項4に記載の基板支持体。
【請求項6】
前記支持表面と前記基板との間に熱伝達ガスを供給するように動作可能な熱伝達ガス源と、
(i)前記少なくとも1つの流路を通して循環される前記液体の体積流量及び温度の少なくとも一方、並びに、(ii)前記支持表面と前記基板との間に供給される前記熱伝達ガスの流速及び圧力の少なくとも一方、のうち少なくとも一方を制御するように動作可能なコントローラと、
を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の基板支持体。
【請求項7】
前記熱伝達部材は、少なくとも1つの流路を含むベースと、前記ベースの上に位置するカバーと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の基板支持体。
【請求項8】
前記セラミック部材は、凹んだ表面と周辺フランジとを含み、
前記セラミック部材は、前記凹んだ表面で約1から4mmの厚さを有し、
前記熱伝達部材は、前記凹んだ表面の上に配置され、かつ、前記フランジから横方向に間隔が空けられ、
前記静電チャックは、前記フランジに接触することを特徴とする請求項1に記載の基板支持体。
【請求項9】
前記セラミック部材の上に位置し、かつ、前記熱伝達部材及び前記静電チャックを取り囲むセラミックリングを更に備え、
前記熱伝達部材は、前記セラミックリングから横方向に間隔が空けられ、
前記静電チャックは、前記セラミックリングと接触することを特徴とする請求項1に記載の基板支持体。
【請求項10】
前記熱伝達部材に電気的に接続されたRF電源を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の基板支持体。
【請求項11】
前記セラミック部材と前記熱伝達部材との間のエラストマー接続部と、
前記熱伝達部材と前記静電チャックとの間のエラストマー接続部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の基板支持体。
【請求項12】
請求項1に記載の前記基板支持体を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項13】
プラズマ処理装置内の基板を熱的に制御する方法であって、
プラズマ処理装置の反応室内で請求項1に記載の前記基板支持体の前記支持表面の上に基板を配置する工程と、
前記反応室内に処理ガスを導入する工程と、
前記反応室内の前記処理ガスからプラズマを生成する工程と、
前記基板を処理する工程と、
前記基板の処理の間に、前記熱伝達部材の温度を選択された温度に制御するために前記少なくとも1つの流路を通して液体を循環させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記基板の処理の間に、前記熱伝達部材の温度を第1の温度に制御するために前記少なくとも1つの流路を通して第1の温度を有する液体を循環させる工程と、
前記基板の処理の間に、前記熱伝達部材の温度を第2の温度に制御するために前記少なくとも1つの流路を通して第2の温度を有する液体を循環させる工程と、
を含み、
前記熱伝達部材の温度は、(i)前記第1の温度から前記第2の温度に傾斜して変化されるか、又は、(ii)前記第1の温度から前記第2の温度に階段状に変化されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プラズマ処理装置内で用いられる基板支持体であって、
温度制御された液体源と、
セラミック部材と、
前記セラミック部材の上に位置する金属熱伝達部材であって、前記液体源と流体の伝達があり、かつ、約0.25から2℃/秒の速度で前記熱伝達部材に加熱及び冷却の少なくとも一方を行うためにそれを通して液体が循環可能な少なくとも1つの流路を含む金属熱伝達部材と、
前記熱伝達部材の上に位置する静電チャックであって、プラズマ処理装置の反応室内で基板を支持するための支持表面を有する静電チャックと、
を備えることを特徴とする基板支持体。
【請求項16】
前記熱伝達部材は、最大約1/8インチの厚さを有することを特徴とする請求項15に記載の基板支持体。
【請求項17】
前記支持表面と前記基板との間に熱伝達ガスを供給するように動作可能な熱伝達ガス源と、
前記液体源及び前記熱伝達ガス源の動作を制御するように動作可能なコントローラと、
を更に備えることを特徴とする請求項15に記載の基板支持体。
【請求項18】
前記熱伝達部材は、少なくとも1つの流路を含むベースと、前記ベースの上に位置するカバーと、を備えることを特徴とする請求項15に記載の基板支持体。
【請求項19】
前記セラミック部材は、凹んだ表面と周辺フランジとを含み、
前記熱伝達部材は、前記凹んだ表面の上に配置され、かつ、前記フランジから横方向に間隔が空けられ、
前記静電チャックは、前記フランジに接触することを特徴とする請求項15に記載の基板支持体。
【請求項20】
前記セラミック部材の上に位置し、かつ、前記熱伝達部材及び前記静電チャックを取り囲むセラミックリングを更に備え、
前記熱伝達部材は、前記セラミックリングから横方向に間隔が空けられ、
前記静電チャックは、前記セラミックリングと接触することを特徴とする請求項15に記載の基板支持体。
【請求項21】
前記熱伝達部材に電気的に接続されたRF電源を更に備えることを特徴とする請求項15に記載の基板支持体。
【請求項22】
前記セラミック部材と前記熱伝達部材との間のエラストマー接続部と、
前記熱伝達部材と前記静電チャックとの間のエラストマー接続部と、
を備えることを特徴とする請求項15に記載の基板支持体。
【請求項23】
請求項15に記載の前記基板支持体を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項24】
プラズマ処理装置内の基板を熱的に制御する方法であって、
プラズマ処理装置の反応室内で請求項15に記載の前記基板支持体の前記支持表面の上に基板を配置する工程と、
前記反応室内に処理ガスを導入する工程と、
前記反応室内の前記処理ガスからプラズマを生成する工程と、
前記基板を処理する工程と、
前記基板の処理の間に、前記熱伝達部材の温度を選択された温度に制御するために前記少なくとも1つの流路を通して前記液体源から液体を循環させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記基板の処理の間に、前記熱伝達部材の温度を第1の温度に制御するために前記少なくとも1つの流路を通して第1の温度を有する液体を循環させる工程と、
前記基板の処理の間に、前記熱伝達部材の温度を第2の温度に制御するために前記少なくとも1つの流路を通して第2の温度を有する液体を循環させる工程と、
を含み、
前記熱伝達部材の温度は、(i)前記第1の温度から前記第2の温度に傾斜して変化されるか、又は、(ii)前記第1の温度から前記第2の温度に階段状に変化されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
プラズマ処理装置内で基板を処理する方法であって、
プラズマ処理装置の反応室内の静電チャックの支持表面の上で基板を支持する工程と、
前記基板をプラズマ処理する工程と、
前記基板の温度を制御するように前記静電チャックの下に位置する金属熱伝達部材を通して延びる少なくとも1つの流路を通して液体を循環させる工程と、
を含み、
前記熱伝達部材は、最大約1/4インチの厚さを有することを特徴とする方法。
【請求項27】
前記熱伝達部材は、最大約1/8インチの厚さを有し、
前記少なくとも1つの流路は、約1/32から約3/32インチまでの幅と、約1/32から約1/16インチまでの深さとを有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記基板をプラズマ処理する工程の間に、前記支持表面と前記基板との間に熱伝達ガスを供給する工程を更に含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記熱伝達部材にRFパワーを加える工程を更に含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記熱伝達部材は、約0.25から2℃/秒の速度で前記液体によって加熱及び冷却の少なくとも1つが行われることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記基板の処理の間に、前記熱伝達部材の温度を第1の温度に制御するために前記少なくとも1つの流路を通して第1の温度を有する液体を循環させる工程と、
前記基板の処理の間に、前記熱伝達部材の温度を第2の温度に制御するために前記少なくとも1つの流路を通して第2の温度を有する液体を循環させる工程と、
を含み、
前記熱伝達部材の温度は、(i)前記第1の温度から前記第2の温度に傾斜して変化されるか、又は、(ii)前記第1の温度から前記第2の温度に階段状に変化されることを特徴とする請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−99825(P2012−99825A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−259478(P2011−259478)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2006−517743(P2006−517743)の分割
【原出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】