説明

化合物半導体膜の形成方法

【課題】 基板が下向きに凸状に反ることによる局所加熱を防止すること。
【解決手段】 本発明は、基板2をサセプタ1の上面に設置して加熱しながらこの基板2上に化合物半導体膜4を堆積させる化合物導体膜の形成方法において、前記サセプタの上面に凹部3を設け、この凹部3は、前記基板2の下方へ凸の反りに対応して基板2の中心が前記サセプタ3に常に非接触で、基板2の外周部が前記サセプタ1に常に接触する深さと広さを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物半導体膜の形成方法に関し、特にMOCVD(有機金属化学気相成長)法やHVPE(ハイドライド気層成長)法、MBE(分子線気相成長法)等などで基板上に化合物半導体膜を堆積させる化合物半導体膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板や絶縁基板などから成る基板上に、GaN、AlGaN、InGaNなどの窒化ガリウム系化合物半導体膜を形成する場合、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やHVPE(ハイドライド気層成長)法、MBE(分子線気相成長法)等などで形成される。
【0003】
例えばMOCVD法で化合物半導体膜を形成する場合、サセプタ上に基板を載置して800〜1000℃に加熱して化合物半導体膜を堆積させる。基板上に堆積させる化合物半導体の格子定数が基板より小さいと、図3に示すように基板11の周縁部がサセプタ10の表面から離間するように反る。基板11が反ると、基板11の中心部はサセプタ10に当接するものの、基板11の周辺部はサセプタ10に当接しないことから、基板11の中心部と周辺部とで基板温度が異なることになる。このように基板11の中心部と周辺部で温度分布に差が発生した状態で化合物半導体膜を堆積させると、化合物半導体の結晶が成長する際の条件が相違するようになり、例えば発光素子を形成する場合は、基板11の中心部に形成される発光素子と基板の周辺部に形成される発光素子とで発光波長や発光強度がばらつくという問題があった。
【0004】
このような問題に対処するために、特許文献1においては、基板をサセプタに設置して加熱しながらこの基板上に化合物半導体膜を堆積させる化合物半導体膜の形成方法において、サセプタに0.001〜0.18mmの段差部を設けて、基板上に化合物半導体膜を堆積させることを提案している。
【特許文献1】特開平11−54437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献のように微小な高さの段差部を設けたとしても、基板が下向きに凸状に反ることによって、基板の中心がサセプタに接触し、その接触部分が局所的に加熱され、加熱ムラが発生する。
【0006】
そこで本発明は、上記の点を考慮し、基板が下向きに凸状に反ることによって基板の中心がサセプタに接触することによる局所加熱を防止すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板をサセプタの上面に設置して加熱しながらこの基板上に化合物半導体膜を堆積させる化合物半導体膜の形成方法において、前記サセプタの上面に凹部を設け、この凹部は、前記基板の下方へ凸の反りに対応して基板の中心が前記サセプタに常に非接触で、基板の外周部が前記サセプタに常に接触する深さと広さを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
基板の加熱ムラを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図1,2を参照して説明する。図1は本発明に係る化合物半導体膜の形成方法に用いられるサセプタ1を示す断面図、図2はサセプタ1による基板2の加熱状態を示すための図である。サセプタ1はカーボン製で、上面の中央に直径がL1で深さがDとされた円形の凹部3を形成している。
【0010】
凹部2の直径L1は、サセプタ1によって基板2を均一に加熱することが出来るように、基板2の直径L2よりも小さく設定している。この例では、凹部2の面積を基板2の面積のほぼ半分の面積とするために、凹部2の直径L1をL2/21/2に設定している。すなわち、基板2と凹部3を同心に配置すると、基板2の面積の半分の領域を凹部3が占有する関係に配置される。
【0011】
このように、基板2を半分に区分けする境界線に前記凹部3の縁が位置するようにしている。そのため、加熱に伴って基板が下向きに凸な状態に湾曲すると、凹部3の縁にてサセプタ1と基板2の接触が図られるが、この接触位置が基板2を2分する位置に重なるので、サセプタ1の熱が基板2に均一に伝わる。その結果、基板2に対してサセプタ1が均一な熱を与える。
【0012】
凹部3の深さDは、通常の加熱によって基板2が下に凸な状態で湾曲しても、常に基板の最下点(基板の中心点)がサセプタと非接触を保つような深さに設定している。したがって、深さDは、基板2の通常の加熱による湾曲長さ(深さ)の2倍程度の深さに設定しておくことが望ましい。
【0013】
基板2は、GaAs、Si、GaP、SiC、ZnS、ZnSe、GaNなどの単結晶半導体基板やサファイア(Al2 3 )などの単結晶絶縁基板が用いられ、この基板2上には、GaAs、AlGaAs、GaAsP、InGaP、GaN、AlGaN、InGaNなどの化合物半導体膜が形成される。
【0014】
これらの化合物半導体膜を例えばMOCVD法で形成する場合は、TMG、TMA、TMI、AsH3 、PH3 、NH3 、などの原料ガスが用いられ、また、導電型を制御するための半導体不純物用ガスとしては、DMZやSiH4 などが用いられる。また、これらの化合物半導体膜を例えばMBE法で形成する場合は、個々の構成元素を蒸発るつぼに入れて加熱して蒸発させ、出てくる蒸気を分子線の形で加熱されている基板に当て単結晶薄膜を成長させる。このようにして形成される化合物半導体膜は、例えば発光ダイオードなどの発光素子や電界効果トランジスタの半導体膜として用いられる。
【0015】
前記サセプタ1の凹部3の大きさは、化合物半導体膜を堆積させる基板2の大きさに応じて設定されるが、化合物半導体膜4を例えば直径100mm、厚さ400μmの円板状の基板に堆積させる場合は、凹部3は直径70.8mm程度で、深さ100μm程度の円状に形成される。
【0016】
前記基板2上に化合物半導体膜4を堆積させる場合は、基板2をサセプタ1の凹部3上に同心にセッティングして、サセプタ1の裏面側からヒータ(不図示)でサセプタ1と基板2を700〜1000℃に加熱して堆積させる。この加熱の間、基板2はサセプタの凹部の縁に常に接しているので、基板2の面積を2等分する部分からサセプタの熱が基板2に加わる。その結果、基板2の加熱が均一に行われる。加熱と堆積の進行によって、基板は下向きに凸な状態に湾曲するが、基板2の湾曲した最下点がサセプタに常に非接触を保つように凹部3の深さが設定されているので、湾曲した基板2の最下点がサセプタに接することによる加熱ムラの発生を抑えることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0017】
化合物半導体基板を均一に加熱しながら成膜する装置に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を説明するためのサセプタの断面図である。
【図2】同実施形態の基板の加熱状態を示す断面図(A)と平面図(B)である。
【図3】従来例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 サセプタ
2 基板
3 凹部
4 化合物半導体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をサセプタの上面に設置して加熱しながらこの基板上に化合物半導体膜を堆積させる化合物半導体膜の形成方法において、前記サセプタの上面に凹部を設け、この凹部は、前記基板の下方へ凸の反りに対応して基板の中心が前記サセプタに常に非接触で、基板の外周部が前記サセプタに常に接触する深さと広さを有することを特徴とする化合物半導体膜の形成方法。
【請求項2】
前記凹部は、前記基板の面積を2等分する境界線に沿って前記基板に接触することを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体膜の形成方法。
【請求項3】
前記境界線は、前記基板と同心の円形としたことを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−214344(P2007−214344A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32367(P2006−32367)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】