説明

半導体装置およびその作製方法

【課題】不揮発性であって、作製工程が簡単であり、追記が可能な記憶回路およびアンテナを有する半導体装置及びその作製方法の提供を課題とし、さらに不本意な無線チップの情報の書き換え防止や、無線チップ自体の偽造防止を図り、無線チップのセキュリティの確保を課題とする。
【解決手段】無線通信信号により情報確認が可能なICタグであり、且つ、ICタグのメモリ(書き換え不可能なメモリ)の情報確認が光学読み取り装置でも可能とすることを特徴とする。本発明のICタグのメモリには情報確認が光学読み取り装置で可能な識別面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品、商品、或いは人物の識別や管理を行うためのアンテナ及びメモリーを有する集積回路、代表的には無線ICタグに関する。例えば、無線ICタグとその関連商品に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を識別するものとしてバーコードがある。このバーコードは、フレキソ印刷(ゴム製の凸版やフレキシブルな合成樹脂製の凸版を用いた印刷)、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷法により、直接物品に印刷したり、或いは一旦ラベルに印刷した後に物品に貼着している。バーコードを用いれば、バーコードリーダーとも呼ばれる光学読み取り機でバーコードのデータ(価格や商品名)を読み取り、そのデータをもとに販売量や、在庫、物流を管理することができる。しかしながら、バーコードは、情報面、機能面において、桁数が少ない、セキュリティがない等の問題がある。
【0003】
また、近年では、バーコードに代えて、無線によるデータの送受信が可能な半導体装置、代表的には、無線チップ(IDタグ、ICタグ、ICチップ、RF(Radio Frequency)タグ、無線タグ、電子タグ、RFID(Radio Frequency Identification)ともよばれる)と呼ばれるものを物品に実装し、各種の情報を記録して物品の管理や物流の合理化或いは商品情報の管理を行うことが試みられている。しかしながら、無線チップの情報を把握するには、アンテナを有するリーダライタで交信する必要があり、リーダライタが無い場合は情報を知ることができず、不便な面がある。また、無線チップ管理者に無断で無線チップの情報が書き換えられる恐れや、無線チップ自体が偽造される恐れもあり、セキュリティがない問題がある。また、何らかの事情によってICタグが破損した場合は、情報自体が失われるか、読み取りできなくなるという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体基板上に集積回路とアンテナを設けることにより、無線によるデータの送受信が可能な半導体装置の開発が進められている。従来の無線チップは、メモリを有しておらず、無線チップが存在するかどうかの有無の識別しかできなかった。
【0005】
半導体基板上に集積する回路として、データを記憶する記憶回路(単にメモリともよぶ)を設けると、より高機能で、付加価値が高い半導体装置を提供することができる。
【0006】
本発明は、不揮発性であって、作製工程が簡単であり、追記が可能な記憶回路およびアンテナを有する半導体装置及びその作製方法の提供を課題とし、さらに不本意な無線チップの情報の書き換え防止や、無線チップ自体の偽造防止を図り、無線チップのセキュリティの確保を課題とする。
【0007】
また、店などで商品に無線チップを使用する場合には、無線チップとは別に、視覚で確認できる表示札やラベルを添付することになるが、無線チップと表示札やラベルは別々に添付されるものなので、無線チップが壊れたり、一方がはがれたり、他のものと付け替えられたりすると、相互の情報が不一致となりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、無線通信信号により情報確認が可能なICタグであり、且つ、ICタグのメモリ(書き換え不可能なメモリ)の情報確認が光学読み取り装置でも可能とすることを特徴とする。本発明のICタグのメモリには情報確認が光学読み取り装置で可能な識別面を有している。
【0009】
従来の半導体基板を用いたメモリは電気信号で読み取るタイプであり、光学読み取り装置では読み取ることはなかった。既に知られているメモリとしては、DRAM、SRAM、FeRAM、マスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリなどが挙げられる。このうち、DRAM、SRAMは揮発性の記憶回路であり、電源をオフするとデータが消去されてしまうため、電源をオンにする度にデータを書き込む必要がある。FeRAMは不揮発性の記憶回路であるが、強誘電体層を含む容量素子を用いているため、作製工程が増加してしまう。また、マスクROMは、簡単な構造であるが、製造工程でデータを書き込む必要があり、追記することはできない。また、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリは、不揮発性の記憶回路ではあるが、2つのゲート電極を含む素子を用いているため、作製工程が増加してしまうといった問題があった。
【0010】
本発明は、半導体基板を用いず、TFTを用いてメモリなどの様々な回路を形成することを特徴としている。TFTを用いることによって、半導体基板を用いた場合に比べて製造コストを大幅に削減することができる。また、半導体基板を用いた場合に比べて、ICタグの基材上にTFTを形成することができるため、密着性がよい。半導体基板を用いた場合、ICタグの基材とアンテナとICチップとを接続および接着することが困難であった。加えて、半導体基板を用いたICタグは、外力により曲げられた時にそれぞれの接続部分および接着部分が破壊しやすい欠点があった。TFTを用いれば、外力による曲げにも強く、さらに半導体基板よりもICタグ全体を薄くすることができる。
【0011】
本発明のICタグは、アンテナと、情報確認が光学読み取り装置でも可能なメモリと、アンテナとメモリとを接続する導電回路とを有している。アンテナはメモリへの情報データの書き込み記録や、記録した情報データをメモリから読み取る動作電力を供給するための誘導起電力を発生させる。
【0012】
本発明により、異なる確認手段、例えば無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で情報を照合し、一致することを確認することで読み取りエラーをなくすことができる。また、光学読み取り装置を使用しなくともメモリの識別面の書き込み情報の有無を視認でも可能とすれば、情報書き込み済みのICタグと、情報書き込みがなされていないICタグとを簡単に視認で確認ができる。
【0013】
また、メモリの識別面に文字や数字や記号やバーコードなどを表示できるようにしてもよい。なお、メモリの識別面はディスプレイではなく、情報を書き込むことによってメモリの識別面の一部の光学的特性を変化させ、照射された光の反射光により模様のようなパターンとして表示するものである。従って、光学読み取り装置としてCCDなどの撮像手段を用いれば、CCDでパターン画像を取り込み、その画像を解析することによってメモリの情報識別および情報の読み取りを行うこともできる。
【0014】
ICタグは、情報端末機(パーソナルコンピュータなど)に接続した書き込み記録や読み取りができる手段(リーダライター)のヘッド部に接触または所定間隔を保持して対峙させ、リーダライタ側のアンテナから発振する情報に基づく所定周波数の電波により、ICタグ側のアンテナに誘導起電力を発生させ、該アンテナに接続された回路により書き込み信号または読み取り信号を発生させる。そして、誘導起電力による書き込み信号によりメモリにデータが記録され、誘導起電力による読み取り信号によりメモリに記録されている情報が読み取られる。
【0015】
リーダライタによって、書き込みと読み取りの両方が可能であってもよいが、本発明においては、情報の改ざんや不正使用を防止するため、メモリのビット線とワード線との間の材料層を不可逆的に相変化する有機材料または無機材料とし、メモリへの書き込みは1回とする。本発明のメモリ(記憶素子)の材料層に用いる有機材料または無機材料は、書き込み時に相変化して電気抵抗率及び光学的特性が変化する。光学的特性の変化は、情報の書き込み前後において、メモリ(記憶素子)の2つの電極に挟まれた材料が不透明のアモルファス状態から透明な結晶状態に変化する。
【0016】
メモリ(記憶素子)の2つの電極に挟まれる不可逆的に相変化する材料層として用いることのできる無機材料は、非晶質状態から結晶状態にのみ変化する無機材料、例えば、テルル(Te)、酸化テルル(TeOx)、アンチモン(Sb)、セレン(Se)及びビスマス(Bi)から選択された複数を有する材料が挙げられる。
【0017】
また、メモリ(記憶素子)の2つの電極に挟まれる材料層としては、無機材料と有機材料の混合層、例えば金属酸化物(モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、コバルト酸化物、銅酸化物等)と有機化合物とを含む材料層を用いることもでき、この材料層を2つの電極に挟まれる積層の少なくとも一層としてもよい。
【0018】
なお、ICタグへの情報の書き込みは、ICタグを物品に取り付ける前でもよいし、取り付け後でもよい。
【0019】
メモリに光で情報データの書き込みを行う場合、その波長とは異なる波長の光を識別面を有するメモリに照射して反射光を読み取るセンサを用いて、メモリの情報データの読み取りを行う。
【0020】
また、無線通信信号のみを用いれば、まとめて情報を読み取り、情報端末機に記録することもできる。また、情報の改ざんや不正使用を防止するのであれば、物品の流通において少なくとも2回、具体的にはICタグへの情報の書き込みを行った直後と、最後にICタグから情報を読み取る時だけ照合すればよい。
【0021】
本明細書で開示する発明の構成は、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを有するメモリと、前記メモリを制御する回路と、アンテナとを有し、 前記メモリセルアレイは、第1の方向に延在するビット線と、前記第1の方向と垂直な第2の方向に延在するワード線とを有し、前記ビット線と前記ワード線との間に不可逆的に相変化する材料層を有し、前記ビット線と前記ワード線の一方または両方は透光性を有し、前記メモリは、記録された情報を光学読み取り手段により読み取る識別面を有することを特徴とする半導体装置である。
【0022】
また、上記構成に加えて、前記メモリに記憶されたデータを無線信号により読み取られた第1のデータと前記メモリの識別面から光学読み取り手段により得られた第2のデータとを照合する照合手段を有することを特徴としている。照合手段により読み取りエラーを低減できる。
【0023】
また、光学読み取り手段と無線信号による読み取り手段とに限定されず、他の発明の構成は、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを有するメモリと、前記メモリを制御する回路と、アンテナとを有し、前記メモリセルアレイは、第1の方向に延在するビット線と、前記第1の方向と垂直な第2の方向に延在するワード線とを有し、前記ビット線と前記ワード線との間に不可逆的に相変化する材料層を有し、前記ビット線と前記ワード線の一方または両方は透光性を有し、前記メモリは、記録された同一の情報を複数の異なる読み取り手段により読み取られることを特徴とする半導体装置である。
【0024】
また、上記各構成において、前記材料層は、光の照射により第1の状態から第2の状態にのみ相変化し、前記ビット線と前記ワード線との間の電気抵抗が変化することを特徴としている。このような特徴を有する構造とすることで、メモリへの書き込みは1回として、情報の改ざんや不正使用を防止する。
【0025】
また、上記各構成において、前記材料層は、光の照射により第1の状態から第2の状態にのみ相変化し、前記識別面で相変化が読み取れることを特徴としている。このような特徴を有する構造とすることで、情報書き込み済みかどうかを簡単に識別することができる。
【0026】
また、上記各構成において、前記メモリを制御する回路は、薄膜トランジスタを有していることを特徴としている。このような特徴を有する構造とすることで、曲げに強い半導体装置とすることができる。また、ペンタセンなどの有機材料を用いた薄膜トランジスタを用いてもよい。
【0027】
また、上記各構成において、前記半導体装置は、前記アンテナと接続する回路を有し、該回路は薄膜トランジスタを有していることを特徴としている。このような特徴を有する構造とすることで、前記メモリを制御する回路と前記アンテナと接続する回路とを同一工程で作製することができる。
【0028】
また、上記各構成において、前記メモリを制御する回路と、前記アンテナと接続する回路は、同一基材上に形成されていることを特徴としている。このような特徴を有する構造とすることで、大面積基板を用いて大量生産を行い、1個あたりの単価を下げることができる。
【0029】
また、上記各構成において、前記半導体装置は、基材と封止材とで密封されており、識別面を識別するため、前記基材と前記封止材の一方または両方は透光性を有していることを特徴としている。また、前記半導体装置は、透光性を有する積層フィルムで密封包装されていてもよい。
また、上記格構成において、前記半導体装置は、基材と封止材とで狭持されており、前記基材及び前記封止材は、樹脂を含むことを特徴としている。

【発明の効果】
【0030】
本発明により、光学的作用と電気的作用の両方によるデータの書き込みと、光学読み取り装置と電気信号読み取り装置の両方によるデータの読み取りとを可能とする記憶回路を備えた半導体装置を実現できる。
【0031】
また、本発明により、ICタグの偽造防止、セキュリティの向上を図ることができる。本発明の半導体装置が含む記憶回路は、光学的作用又は電気的作用によりデータの書き込みを行うものであり、不揮発性であって、データの追記のみが可能である。従って、書き換えによる偽造を防止することができ、且つ、新たなデータを追加して書き込むことができる。つまり、本発明は、書き換え不可の記憶回路を有する半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0033】
(実施の形態1)
非接触でデータを送受信する機能を有する本発明の半導体装置の一例を図1(A)および図1(B)に示す。なお、図1(A)は、本発明の半導体装置の上面図を指しており、図1(B)は図1(A)に対応する側面図の模式図である。
【0034】
図1(A)に示す本発明の半導体装置は、同一基材101上に複数の回路(記憶部とデータ送受信部)が集積された構成を有している。記憶部とデータ送受信部は隣り合うように配置され、ノイズの重畳や、回路間における相互作用を低減している。記憶部は、識別面を有するメモリセルアレイ103aと、デコーダ回路104、105と、セレクタ回路106と、読み取り及び書き込み回路107とを少なくとも有している。また、データ送受信部は、アンテナ102と、該アンテナに接続する集積回路108とを少なくとも有している。アンテナ102は印刷法によって形成してもよいし、フォトリソ法を用いて集積回路の配線と同一工程で作成してもよい。
【0035】
また、デコーダ回路104、105と、セレクタ回路106と、読み取り及び書き込み回路107と、アンテナに接続する集積回路108は、TFTで構成されており、同一工程で同一基材上に作製することができる。
【0036】
また、図1(A)に示す半導体装置の上面図は、データを書き込む前のものであり、識別面を有するメモリセルアレイ103aは、識別面全体が一様となっている。
【0037】
続いて、データの書き込みを行う際の動作について図1(C)および図1(D)を用いて説明する。図1(A)に示す半導体装置に光を照射してメモリセルアレイに書き込むと、図1(C)に示すように照射された部分が変化して、ある模様パターン109の識別面を有するメモリセルアレイ103bとなる。
【0038】
光学的作用によりデータを書き込む際の側面図を図1(D)に示す。図1(D)に示すように、メモリに光を照射する書き込み手段(ライター)110と、該書き込み手段110を制御する制御手段111とによって、メモリセルアレイに対して光を選択的に照射し、ある模様パターン109の識別面を得る。
【0039】
メモリセルアレイは、記憶素子を有するメモリセルがマトリクス状に設けられたものであり、その記憶素子は、ビット線を構成する第1の導電層と、ワード線を構成する第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層の間に設けられた有機化合物層を有する。TFTと記憶素子とが両方1つの領域に設けられ、マトリクス状に配置されている場合においては、メモリセルとは記憶素子とTFTとを含めたものを指す。また、記憶素子のみが1つの領域に設けられてマトリクス状に配置されている場合においては、メモリセルとは記憶素子のみを指す。
【0040】
レーザー光などの光を透光性を有する第2の導電層を通過させて有機化合物層に照射すると、レーザ光の照射により、有機化合物層が相変化もしくは破壊されて、結果的に記憶素子の光学特性または電気抵抗が変化する。例えば、レーザ光を照射していない記憶素子を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む際は、記憶素子にレーザ光を照射して光学特性を変える、もしくは電気抵抗を変えればよい。
【0041】
例えば、有機化合物層の材料やレーザ光の強度を調整することにより、アモルファス状態で不透明であった有機化合物層は、レーザー光の照射により結晶化して透光性を有する材料に変化させることができる。また、レーザ光を照射して、有機化合物層を絶縁化することによりデータの書き込みを行ってもよい。
【0042】
また、有機化合物層として、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸発生剤)をドープした共役高分子を用いた場合、レーザ光を照射すると、照射された部分の導電率が増加し、未照射の部分は導電しない。この場合も、選択された有機化合物層にレーザ光を照射することにより、記憶素子の抵抗値が変化することを利用してデータの書き込みを行う。例えば、レーザ光を照射していない記憶素子を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む際は、選択された記憶素子にレーザ光を照射して導電率を増加させる。
【0043】
また、光を照射する書き込み手段110に代えて、電気信号による書き込み手段112を用いてもよい。この場合、電気信号による書き込み手段112と、電気信号による書き込み手段112を制御する制御手段113により、アンテナ102に対して電気信号を送受信させ、ある模様パターンの識別面を得る。この模様パターンの存在が人間の目で識別できれば、メモリに書き込みがされているかどうかを判別することができる。また、模様パターンをバーコードのように光学式に読み取りやすく符号化したものとしてもよい。
【0044】
また、光を照射する書き込み手段110に加えて、電気信号による書き込み手段112の両方を用いて同一のデータをメモリに書き込みを行って書き込みエラーを防止してもよい。
【0045】
また、図1(C)では分かりやすいように模様パターンの識別面を示したが、人間の目で識別できる必要はなく、ある波長の光を用いた光読み取り装置を用いて識別できる模様パターンとしてもよい。
【0046】
続いて、データの読み取りを行う際の動作について図1(E)および図1(F)を用いて説明する。
【0047】
データの読み取りは、第1の導電層と第2の導電層の間に電圧を印加して、記憶素子の抵抗値を読み取る電気信号読み取り装置115と、光を照射して模様パターンを読み取る光学読み取り装置114の両方により行う。同時に情報の読み取りを行ってもよいし、個別に情報の読み取りを行ってもよい。光学読み取り装置114としてはイメージスキャナやCCDカメラなどの撮像装置を用いることができる。電気信号読み取り装置115としては、アンテナを有するリードライターを用いることができる。
【0048】
光学的作用や電気的作用の印加によりメモリにデータの書き込みを行った場合、光学的作用や電気的作用を加えていない透光率と、光学的作用や電気的作用を加えた記憶素子の透光率は異なる値となる。このような光学特性の相違による模様を光学的に読み取ることにより、データの読み取りを行う。
【0049】
可視光での視認でメモリの模様が確認できるのであれば、メモリにデータが書き込まれているかどうかの確認ができる。従来のメモリは、光学読み取り装置や人間の目でデータの確認はできなかった。
【0050】
また、光学的作用や電気的作用の印加によりメモリにデータの書き込みを行った場合、光学的作用や電気的作用を加えていない記憶素子の抵抗値と、光学的作用や電気的作用を加えた記憶素子の抵抗値は異なる値となる。このような抵抗値の相違を電気的に読み取ることにより、データの読み取りを行う。
【0051】
方式の異なる2つの読み取り装置で得られたデータは照合手段116によって照合が行われ、その照合結果は、情報端末117に送られ、確認が可能となる。本発明により読み取りエラーを低減できる。なお、情報端末117と照合手段116との接続は、配線コードで接続されていてもよいし、通信によってデータのやりとりを行ってもよい。
【0052】
また、書き込み装置(ライター)と、読み取り装置(リーダー)とがあるが、両者を1個の装置にまとめて、いわゆるリードライターの構成にしたものを用いてもよい。
【0053】
また、メモリの模様の一部を人間の目で文字や数字が判別できるものとすれば、無線チップとは別に、視覚で確認できる表示札やラベルを添付する必要がなくなる。
【0054】
また、本発明において、メモリとアンテナは同一基板上に形成されており、一方がはがれたり、他のものと付け替えられたりする恐れはない。さらに、電気的に接続しているため、切り離すことも困難である。また、メモリは有機化合物を用いており、偽造するため分解して構造を知ろうとしても有機化合物は酸素などの大気に触れると変質しやすく、メモリに使用している有機化合物を特定するのは困難なため、偽造防止を図ることができる。
【0055】
(実施の形態2)
本発明の半導体装置は、複数の回路が集積された構成を有し、複数の薄膜トランジスタを含む層と、複数の記憶素子を含む層が順に積層された構成を有する。また、複数の記憶素子を含む層の周囲の位置と重なる箇所に、アンテナとして機能する導電層が設けられた封止フィルムで記憶素子を封止した構成を有する。
【0056】
図2(A)に上面図の一例を示す。記憶部は、識別面を有するメモリセルアレイ203と、デコーダ回路204、205と、セレクタ回路206と、読み取り及び書き込み回路207とを少なくとも有している。また、データ送受信部は、アンテナに接続する集積回路208とを少なくとも有している。これらの回路は、同一基材上に形成しているが、アンテナ202は、封止フィルムに設けてあり、導電性微粒子で集積回路208と接続している。
【0057】
また、本発明の半導体装置の断面構造の一例について図2(B)を用いて説明する。また、図2(A)または図2(B)に対応する等価回路図を図3に示す。
【0058】
同一基材上には、マトリクス状にTFTが配置された記憶部が設けられている。また、記憶部周辺に設けられる集積回路もTFTなどの半導体素子で構成され、図2(B)では代表的に用いられることの多いCMOS回路(nチャネル型TFT211aとpチャネル型TFT211bとを相補的に組み合わせた回路)を示している。CMOS回路とは、少なくとも一つのnチャネル型TFTと一つのpチャネル型TFTとを有する回路(インバータ回路、NAND回路、AND回路、NOR回路、OR回路、シフトレジスタ回路、サンプリング回路、D/Aコンバータ回路、A/Dコンバータ回路、ラッチ回路、バッファ回路など)を指している。また、配線212cによって他の回路と接続を行っている。
【0059】
各TFT210a、210b、211a、211bは第1の層間絶縁膜214を有している。また、各TFTを覆うように第2の絶縁層215が設けられ、該第2の絶縁層上に複数の記憶素子が設けられている。図2(B)ではデータが書き込まれていない記憶素子とデータが書き込まれている記憶素子の2つを図示している。
【0060】
記憶部にマトリクス状に配置されている記憶素子221は、ビット線Bx(1≦x≦m)を構成する第1の導電層212aと、ワード線Wy(1≦y≦n)を構成する第2の導電層214aと、第1の導電層212aと第2の導電層214aの間に設けられた有機化合物層213aを有する。隣接する有機化合物層213aの間には、隔壁216が設けられる。また、第1の導電層212aと第2の導電層214aはストライプ状に、互いに交差するように設けられている。
【0061】
また、データの書き込みを光学的作用により行った記憶素子も図2(B)に示している。データの書き込みを光学的作用により行う場合、第1の導電層212aと第2の導電層214aのうち、一方又は両方は透光性を有することが必要である。透光性を有する導電層は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明な導電性材料を用いて形成するか、又は、透明な導電性材料でなくても、光を透過する厚さで形成する。
【0062】
データの書き込みを光学的作用により行った場合、データが書き込まれた記憶素子の有機化合物層213bの光学的特性は、データの書き込み前の有機化合物層213aと異なっており、メモリセルアレイ203の識別面に模様となって現れる。
【0063】
また、ビット線を構成する第1の導電層212bと、ワード線を構成する第2の導電層214bとの電極間で電気的に短絡させた状態を記憶素子へのデータの書き込みとしてもよい。一対の電極間で電気的に短絡させる場合には、先にpチャネル型TFT210bが電気的に短絡してしまわないようにマルチゲート構造とすることが好ましい。
【0064】
また、記憶素子や回路は、信頼性を向上させるため、保護膜で覆ってもよい。
【0065】
また、記憶素子や回路は、接着層217によって封止板218で封止されている。封止板218には予めアンテナ202が印刷されており、基材201上に設けられた配線と導通するように接続されている。また、アンテナ202の位置は、該アンテナと接続する集積回路208と一部重なってもよい。
【0066】
また、データの書き込みや読み取りを光学的作用により行う場合、少なくともデータの書き込みや読み取りを行う側に設けられている部材の材料は透光性とする。例えば、封止板側から光学的作用によりデータの書き込みや読み取りを行う場合、封止板の材料、接着層217の材料、第2の導電層214a、214bの材料は透光性を有する材料を用いる。また、基材側から光学的作用によりデータの書き込みや読み取りを行う場合、基材の材料、第1の層間絶縁層の材料、第2の層間絶縁層の材料、第1の導電層の材料は透光性を有する材料を用いる。
【0067】
上記構成を有する半導体装置において、記憶素子221は、一対の導電層(第1の導電層と第2の導電層)間に有機化合物層が挟まれた単純な構造を有することを特徴とする。上記特徴により、作製が簡単であるために安価な半導体装置及びその作製方法を提供することができる。また、高集積化が容易なため、大容量の記憶回路を有する半導体装置及びその作製方法を提供することができる。
【0068】
なお、記憶素子の構成によっては、複数の記憶素子を含む層に対して、レーザ光を用いた光学的作用によりデータの書き込みを行う場合がある。そのような場合、複数の記憶素子を含む層と、基板上の導電層とが重ならないようにする。
【0069】
また、本発明の半導体装置は、単結晶半導体層をチャネル部とした複数の電界効果トランジスタを含む層上に、複数の記憶素子を含む層を積層した構成を有することを特徴とし、上記特徴により、小型な半導体装置を提供することができる。
【0070】
また、本発明の半導体装置が含む記憶回路は、光学的作用又は電気的作用によりデータの書き込みを行うものであり、不揮発性であって、データの追記が可能であることを特徴とする。上記特徴により、書き換えによる偽造を防止することができ、新たなデータを追加して書き込むことができる。従って、高機能化と高付加価値化を実現した半導体装置及びその作製方法を提供することができる。
【0071】
また、ここではトップゲート型TFTを例として説明したが、TFT構造に関係なく本発明を適用することが可能であり、例えばボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや順スタガ型TFTに適用することが可能である。
【0072】
また、本発明は図2(B)のTFT構造に限定されず、必要があればチャネル形成領域とドレイン領域(またはソース領域)との間にLDD領域を有する低濃度ドレイン(LDD:Lightly Doped Drain)構造としてもよい。この構造はチャネル形成領域と、高濃度に不純物元素を添加して形成するソース領域またはドレイン領域との間に低濃度に不純物元素を添加した領域を設けたものであり、この領域をLDD領域と呼んでいる。さらにゲート絶縁膜を介してLDD領域をゲート電極と重ねて配置させた、いわゆるGOLD(Gate−drain Overlapped LDD)構造としてもよい。
【0073】
また、本実施の形態は実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0074】
(実施の形態3)
本発明の半導体装置のブロック図を図4に示す。
【0075】
図4中の点線で囲まれた本発明の半導体装置20は、非接触でデータを交信する機能を有し、電源回路11、クロック発生回路12、データ復調/変調回路13、他の回路を制御する制御回路14、インターフェイス回路15、記憶回路16、データバス17、アンテナ(アンテナコイル)18を有する。
【0076】
電源回路11は、アンテナ18から入力された交流信号を基に、半導体装置20の内部の各回路に供給する各種電源を生成する回路である。クロック発生回路12は、アンテナ18から入力された交流信号を基に、半導体装置20の内部の各回路に供給する各種クロック信号を生成する回路である。データ復調/変調回路13は、電気的リードライタ19aと交信するデータを復調/変調する機能を有する。制御回路14は、記憶回路16を制御する機能を有する。アンテナ18は、電磁界或いは電波の送受信を行う機能を有する。電気的リードライタ19aは、半導体装置との交信、制御及びそのデータに関する処理を制御する。なお、半導体装置は上記構成に制約されず、例えば、電源電圧のリミッタ回路や暗号処理専用ハードウエアといった他の要素を追加した構成であってもよい。
【0077】
記憶回路16は、一対の導電層間に有機化合物層が挟まれた記憶素子を有することを特徴とする。有機化合物層が挟まれた記憶素子は、光学的リードライタ19bによってもデータを読み取ることができる。
【0078】
また、光学的リードライタ19bによって得られたデータと、電気的リードライタ19aとで得られたデータとを照合手段21により照合することで書き込みエラーや読み取りエラーを防止することができる。
【0079】
また、光学的リードライタ19bによって記憶回路にデータを書き込むこともでき、電気的リードライタ19aで記憶回路にデータを書き込むこともできる。
【0080】
なお、記憶回路16は、一対の導電層間に有機化合物層が挟まれた記憶素子のみを有していてもよいし、他の構成の記憶回路を有していてもよい。他の構成の記憶回路とは、例えば、マスクROM(Read Only Memory)、PROM(Programmable Read Only Memory)、EPROM(Electrically Programmable Read Only Memory)、またはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)から選択される1つ又は複数に相当する。
【0081】
また、図4では、電気的リードライタ19aと、光学的リードライタ19bとを用いた例を示したが、特に限定されず、異なる確認手段であればよい。また、3つ以上の異なる確認手段を用いてもよい。
【0082】
また、本実施の形態は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
【0083】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行うこととする。
【実施例1】
【0084】
図6を用いて、本発明の半導体装置の構成とその動作について説明する。本発明の半導体装置は、記憶部とアンテナ部とを有する。記憶部は、メモリセルがマトリクス状に設けられたメモリセルアレイ522と、デコーダ回路523、524と、セレクタ回路525と、読み取り書き込み回路526とを有する。メモリセルは、記憶素子530を有する。非接触でデータを送受信するアンテナ部は、アンテナ502とアンテナに接続する集積回路520とを有する。
【0085】
次に、メモリセルアレイ522を実際に作成したときの上面構造と断面構造について説明する(図5(A)、図5(C)参照)。
【0086】
記憶素子530は、ビット線Bx(1≦x≦m)を構成する第1の導電層527と、ワード線Wy(1≦y≦n)を構成する第2の導電層528と、第1の導電層527と第2の導電層528の間に設けられた有機化合物層529を有する(図5(A)参照)。第1の導電層527と、有機化合物層529と、第2の導電層528の積層体が記憶素子530に相当する。隣接する有機化合物層529の間には、絶縁層533が設けられる。また、複数の記憶素子530上に、絶縁層534が設けられる。ビット線Bxを構成する第1の導電層527は、第1の方向に延在して設けられ、ワード線Wyを構成する第2の導電層528は、第1の方向と垂直な第2の方向に延在して設けられる。つまり、第1の導電層527と第2の導電層528はストライプ状に、互いに交差するように設けられる。
【0087】
なお、本実施例においては、記憶素子530に対するデータの書き込みを光学的作用により行う。従って、第1の導電層527と第2の導電層528のうち、一方又は両方は透光性を有することが必要である。透光性を有する導電層は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明な導電性材料を用いて形成するか、又は、透明な導電性材料でなくても、光を透過する厚さで形成する。
【0088】
記憶素子に用いる有機化合物層529は、例えば、4、4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:α−NPD)や4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:TPD)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)や4,4’−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物やフタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物等の正孔輸送性の高い物質を用いることができる。
【0089】
また、記憶素子に用いる有機化合物層529の他の材料として、電子輸送性が高い有機化合物材料を用いることができ、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる材料や、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等の化合物等を用いることができる。
【0090】
また、記憶素子に用いる有機化合物層529の他の材料として、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、ペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)等が挙げられる。また、上記有機化合物材料を分散してなる層を形成する場合に母体となる材料としては、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)などの金属錯体等を用いることができる。また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等を用いることができる。
【0091】
また、記憶素子に用いる有機化合物層529の他の材料として、ポリスチレンスルホン酸(略称:PSS)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(略称:PEDOT)や、ポリアニリン(略称:PAni)、ポリビニルカルバゾール(略称:PVK)などを用いることもできる。
【0092】
また、記憶素子に用いる有機化合物層529には、光学的作用により、電気抵抗が変化する材料を用いることができる。例えば、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸発生剤)をドープした共役高分子を用いることができる。共役高分子として、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンエチニレン類等を用いることができる。また、光酸発生剤としては、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、o−ニトロベンジルトシレート、アリールスルホン酸p−ニトロベンジルエステル、スルホニルアセトフェノン類、Fe−アレン錯体PF6塩等を用いることができる。
【0093】
次に、上記構成を有する記憶回路にデータの書き込みを行う際の動作について説明する。データの書き込みは、光学的作用により行う。透光性を有する導電層側(ここでは第2の導電層528とする)から、レーザ照射装置532により、有機化合物層529にレーザ光を照射することにより、データの書き込みを行う。
【0094】
レーザ光の照射は、全てのメモリセル521に対して行ってもよいし、選択的に行ってもよい。例えば、形成したばかりの有機化合物層529が非晶質状態の場合、非晶質状態のままにするときはレーザ光を照射せず、結晶状態に変化させるときはレーザ光を照射するとよい(図5(B)2参照)。つまり、レーザ光を選択的に照射することで、データの書き込みを行ってもよい。このように、レーザ光を選択的に照射する場合は、パルス発振のレーザ照射装置を用いて行うとよい。
【0095】
より詳しくは、選択された記憶素子530が含む有機化合物層529にレーザ光を照射して有機化合物層529を破壊、或いは結晶化させる。有機化合物層529が破壊、或いは結晶化すると、有機化合物層の光学的特性が変化する。また、結晶化された有機化合物層の場合は、導電率が向上し、他の記憶素子と比較すると電気抵抗値が大幅に小さくなる。また、破壊された有機化合物層の場合は、絶縁化し、他の記憶素子と比較すると電気抵抗値が大幅に大きくなる。このように、レーザ光の照射により、記憶素子530の光学的特性や電気抵抗値が変化することを利用してデータの書き込みを行う。例えば、レーザ光を照射していない記憶素子を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む際は、記憶素子にレーザ光を照射して光学的特性や電気抵抗値を変化させる。
【0096】
また、有機化合物層529として、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸発生剤)をドープした共役高分子を用いた場合、レーザ光を照射すると、照射された部分の導電率が増加し、未照射の部分は導電しない。この場合も、選択された有機化合物層529にレーザ光を照射することにより、記憶素子530の抵抗値が変化することを利用してデータの書き込みを行う。例えば、レーザ光を照射していない記憶素子を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む際は、選択された記憶素子にレーザ光を照射して導電率を増加させる。
【0097】
また、上記構成とは異なる構成として、第1の導電層527と有機化合物層529の間に、整流性を有する素子を設けてもよい(図5(C)参照)。整流性を有する素子とは、ゲート電極とドレイン電極を接続したトランジスタ、又はダイオードである。ここでは、半導体層544、545を含むPN接合ダイオードを設けた場合を示す。半導体層544、545のうち、一方はN型半導体であり、他方はP型半導体である。このように、整流性があるダイオードを設けることにより、1つの方向にしか電流が流れないために、誤差が減少し、読み出しマージンが向上する。なお、ダイオードを設ける場合、PN接合を有するダイオードではなく、PIN接合を有するダイオードやアバランシェダイオード等の、他の構成のダイオードを用いてもよい。
【0098】
続いて、電気的にデータの読み取りを行う際の動作について図6(A)および図6(B)を用いて説明する。ここでは、読み取り書き込み回路526は、抵抗素子546とセンスアンプ547を含む構成とする。但し、読み取り書き込み回路526の構成は上記構成に制約されず、どのような構成を有していてもよい。
【0099】
データの読み取りは、第1の導電層527と第2の導電層528の間に電圧を印加して、記憶素子530の抵抗値を読み取ることにより行う。例えば、上述したように、有機化合物層529にレーザ光を照射することによりデータの書き込みを行った場合、光学作用を加えていない記憶素子の抵抗値と、光学的作用を加えた記憶素子の抵抗値の相違を電気的に読み取ることにより、データの読み取りを行う。
【0100】
また、有機化合物層529に、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸発生剤)をドープした共役高分子を用いた場合も同様であり、光学的作用を加えていない記憶素子の電気抵抗値と、光学的作用を加えた記憶素子の電気抵抗値の相違を電気的に読み取ることにより、データの読み取りを行う。
【0101】
例えば、メモリセルアレイ522が含む複数の記憶素子530から、x列目y行目に配置された記憶素子530のデータの読み取りを行う場合、まず、デコーダ回路523、524、セレクタ回路525により、x列目のビット線Bxと、y行目のワード線Wyを選択する。そうすると、記憶素子530と、抵抗素子546とは、直列に接続された状態となる。ここで、記憶素子530を抵抗素子と見なすと、直列に接続された2つの抵抗素子の両端に電圧が印加されると、ノードαの電位は、記憶素子530の抵抗値に従って、抵抗分割された電位となる。ノードαの電位は、センスアンプ547に供給され、当該センスアンプ547において、「0」と「1」のどちらの情報を有しているかを判別され、その後、センスアンプ547において判別された「0」と「1」の情報を含む信号は、外部に供給される。
【0102】
上記の方法によると、記憶素子530の情報は、抵抗値の相違と抵抗分割を利用して、電圧値で読み取っている。しかしながら、電流値を比較する方法でもよい。これは、例えば、電気的作用を加えていない記憶素子530と、電気的作用を加えた記憶素子530の抵抗値の相違に起因した電流値の相違を利用するものである。このように電流値の相違を電気的に読み取ることにより、データの読み取りを行ってもよい。
【0103】
また、上記構成とは異なる構成として、第1の導電層527と有機化合物層529の間に、整流性を有する素子を設けてもよい。整流性を有する素子とは、ゲート電極とドレイン電極を接続したトランジスタ、又はダイオードである。整流性があるダイオードを設けることにより、1つの方向にしか電流が流れないために、誤差が減少し、読み取りマージンが向上する。なお、ダイオードを設ける場合、PN接合を有するダイオードではなく、PIN接合を有するダイオードやアバランシェダイオード等の、他の構成のダイオードを用いてもよい。
【0104】
また、光学的にデータの読み取りを行う際の動作について説明する。実施の形態1にも記述したように、本実施例の記憶素子はマトリクス状に配置され、一方または両方の電極が透光性を有しており、有機化合物層529を確認できる識別面を有している。データの書き込みによって有機化合物層529の光学的特性が変化するため、データが書き込まれた記憶素子とデータが書き込まれていない記憶素子とにより識別面にパターンが形成される。このパターンを光学的読み取り装置によってパターンデータを取り込んで解析することによって、データの読み取りを行う。
【0105】
このように、本実施例の半導体装置は、光学的な読み取り装置と電気的な読み取り装置との両方でデータの読み取りが可能であり、それらを照合させることで読み取りエラーを低減することができる。
【0106】
また、本実施例の半導体装置は、光学的な書き込み装置と電気的な書き込み装置との両方でデータの書き込みが可能であり、書き込みエラーを低減することができる。
【0107】
加えて、本発明の半導体装置が含む記憶回路は、一対の導電層間に有機化合物層が挟まれた単純な構造の記憶素子を有することを特徴とし、上記特徴により、作製が簡単であるために安価な半導体装置及びその作製方法を提供することができる。また、高集積化が容易なため、大容量の記憶回路を有する半導体装置及びその作製方法を提供することができる。
【0108】
また、本発明の半導体装置が含む記憶回路は、光学的作用又は電気的作用によりデータの書き込みを行うものであり、不揮発性であって、データの追記が可能であることを特徴とする。上記特徴により、書き換えによる偽造を防止してセキュリティを確保しつつ、新たなデータを追加して書き込むことができる。従って、高機能化と高付加価値化を実現した半導体装置及びその作製方法を提供することができる。
【0109】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、または実施の形態3と自由に組み合わせることができる。
【実施例2】
【0110】
本実施例では、光学的作用により、記憶回路にデータの書き込みを行う際に用いるレーザ照射装置について図7を参照して説明する。
【0111】
レーザ照射装置1001は、レーザ光を照射する際の各種制御を実行するコンピュータ1002と、レーザ光を出力するレーザ発振器1003と、電源1004と、レーザ光を減衰させるための光学系1005と、レーザ光の強度を変調するための音響光学変調器1006と、レーザ光の断面を縮小するためのレンズや光路を変更するためのミラー等で構成される光学系1007と、X軸ステージ及びY軸ステージを有する移動機構1009と、コンピュータ1002から出力される制御データを変換するD/A変換部1010と、D/A変換部から出力されるアナログ電圧に応じて、音響光学変調器1006を制御するドライバ1011と、移動機構1009を駆動するための信号を出力するドライバ1012と、被照射物上にレーザ光の焦点を合わせるためのオートフォーカス機構1013とを有する(図7参照)。レーザ発振器1003には、紫外光、可視光、又は赤外光を発振することが可能なレーザ発振器を用いることができ、具体的には、KrF、ArF、、XeCl、Xe等のエキシマレーザ発振器、He、He−Cd、Ar、He−Ne、HF等の気体レーザ発振器、YAG、GdVO、YVO、YLF、YAlOなどの結晶にCr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti又はTmをドープした結晶を使った固体レーザ発振器、GaN、GaAs、GaAlAs、InGaAsP等の半導体レーザ発振器を用いることができる。
【0112】
次に、上記構成を有するレーザ照射装置1001の動作について説明する。まず、基板1014が移動機構1009に装着されると、コンピュータ1002は図外のカメラによって、レーザ光を照射する記憶素子の位置を検出する。次いで、コンピュータ1002は、検出した位置データに基づいて、移動機構1009を移動させるための移動データを生成する。続いて、コンピュータ1002が、ドライバ1011を介して音響光学変調器1006の出力光量を制御することにより、レーザ発振器1003から出力されたレーザ光は、光学系1005によって減衰された後、音響光学変調器1006によって所定の光量になるように光量が制御される。一方、音響光学変調器1006から出力されたレーザ光は、光学系1007で光路及びビームスポット形状を変化させ、レンズで集光した後、基板1014上に該レーザ光を照射する。このとき、コンピュータ1002が生成した移動データに従い、移動機構1009をX方向及びY方向に移動制御する。この結果、所定の場所にレーザ光が照射され、レーザ光の光エネルギー密度が熱エネルギーに変換され、基板1014上に設けられた記憶素子に選択的にレーザ光が照射される。なお、上記の記載によると、移動機構1009を移動させてレーザ光の照射を行う例を示しているが、光学系1007を調整することによってレーザ光をX方向およびY方向に移動させてもよい。
【0113】
上記のようなレーザ照射装置を用いて、レーザ光を照射することによりデータの書き込みを行う本発明は、データの書き込みを簡単に行うことができる。従って、大量のデータの書き込みを短時間で行うことができる。
【0114】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、または実施例1と自由に組み合わせることができる。
【実施例3】
【0115】
本実施例では、基板上に記憶素子を作製し、その記憶素子に電気的作用によりデータの書き込みを行ったときの光学的特性の変化を調べた実験の結果について説明する。
【0116】
記憶素子は、基板上に、第1の導電層、金属酸化物と有機化合物とを含む層、有機化合物層、第2の導電層の順に積層した素子である。
【0117】
金属酸化物としては、正孔輸送性物質に対し電子受容性を示す物質か、または電子輸送輸送性物質に対し電子供与性を示す物質かのいずれかを用いることが好ましい。このような金属酸化物の具体例として、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、コバルト酸化物、銅酸化物等の他、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、マグネシウム酸化物、ナトリウム酸化物等、アルカリ金属酸化物若しくはアルカリ土類金属酸化物等が挙げられる。正孔輸送性物質及び電子輸送性物質の中から選ばれる物質であることが好ましい。
【0118】
また、金属酸化物と有機化合物とを含む層において、有機化合物としては、正孔輸送性物質または電子輸送性物質のいずれかを用いることが好ましい。ここで、正孔輸送性物質とは、電子よりも正孔の輸送性が高い物質である。また、電子輸送性物質とは、正孔よりも電子の輸送性が高い物質である。金属酸化物と有機化合物とを含む層において、金属酸化物が正孔輸送性物質に対し電子受容性を示す物質であるとき、有機化合物は正孔輸送性物質であることが好ましい。また、金属酸化物と有機化合物とを含む層において、金属酸化物が電子輸送性物質に対し電子供与性を示す物質であるとき、有機化合物は電子輸送性物質であることが好ましい。
【0119】
本実施例では、第1の導電層は酸化珪素及びインジウム錫酸化物を含む透明導電膜を用い、金属酸化物と有機化合物とを含む層は、MoOxと4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)とをモル比1:1とした層とする。金属酸化物と有機化合物とを含む層は80nmの膜厚で形成した。この金属酸化物と有機化合物とを含む層上に設けられる有機化合物層は、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)とする。また、有機化合物層は50nmの膜厚で形成した。また、第2の導電層はアルミニウムにより形成した。
【0120】
上記記憶素子をマトリクス状に複数配置してメモリセルアレイを形成し、デコーダ回路と、セレクタ回路と、読み出しおよび書き込み回路とで記憶回路を構成する。デコーダ回路、セレクタ回路により、1つの記憶素子を選択する。そして、選択された記憶素子に所定の電圧を印加して、大電流を流し、記憶素子の一対の導電層間を短絡させる。短絡した記憶素子は、電圧が印加されていない記憶素子と比較すると電気抵抗値が大幅に小さくなる。このように、電気的作用を加えることにより、記憶素子の電気抵抗値が変化することを利用してデータの書き込みを行う。例えば、電気的作用を加えていない記憶素子を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む場合、選択された記憶素子に電圧を印加して大電流を流すことによって、短絡させる。
【0121】
また、記憶素子の第1の導電層と第2の導電層とに所定の電圧を印加し、絶縁破壊して、一対の導電層を短絡させると記憶素子は光学的にも変化する。短絡後の記憶素子を一部拡大した写真図を図8に示す。図8に示すように記憶素子は部分的に変色しており、変色した部分は短絡した部分である。
【0122】
また、所定の電圧を印加する前後での記憶素子の状態の違いを調べるため、測定した反射スペクトルを図9に示す。図9に示すように、電圧を印加して変色した変色部中心は、電圧印加前に比べて反射率が半分以下に低減している。また、電圧を印加して変色した変色部周辺も電圧印加前に比べて反射率が低減している。
【0123】
このように、変色していない記憶素子を「0」のデータと識別し、変色した記憶素子を「1」のデータと識別することもできる。識別手段としては、イメージスキャナやCCDカメラなどの光学読み取り装置を用いればよい。また、記憶素子への書き込み処理が行われたかどうかを判断するだけなら、目視でも確認が可能である。
【0124】
なお、本実施例では、記憶素子に所定の電圧を印加して短絡させることによりデータを書き込む例を示したが、特に限定されず、例えば、記憶素子にレーザ光を照射して、一対の導電層間に挟まれた有機化合物層を絶縁破壊させることによりデータを書き込む形態としてもよい。
【0125】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施例1、または実施例2と自由に組み合わせることができる。
【実施例4】
【0126】
本実施例では、基板上に記憶素子を作製し、その記憶素子に電気的作用によりデータの書き込みを行ったときの電流電圧特性を調べた実験の結果について説明する。記憶素子は、基板上に、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、第2の導電層の順に積層した素子であり、第1の導電層は酸化珪素とインジウム錫酸化物の化合物(ITSOと略称されることがある)、第1の有機化合物層は4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(TPDと略称されることがある)、第2の有機化合物層は、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(α−NPDと略称されることがある)、第2の導電層はアルミニウム、により形成した。また、第1の有機化合物層は10nm、第2の有機化合物層は50nmの膜厚で形成した。
【0127】
まず、電気的作用によりデータの書き込みを行う前と、電気的作用によりデータを書き込んだ後の、記憶素子の電流電圧特性の測定結果について、図10を用いて説明する。図10は、横軸が電圧値、縦軸が電流値、プロット261は電気的作用によりデータを書き込み前の記憶素子の電流電圧特性、プロット262は電気的作用によりデータを書き込んだ後の記憶素子の電流電圧特性を示す。図10から、データの書き込み前と、データの書き込み後とで、記憶素子の電流電圧特性には大きな変化がみられる。例えば、印加電圧1Vでは、データ書き込み前の電流値は4.8×10−5mAであるのに対し、データ書き込み後の電流値は1.1×10mAであり、データの書き込み前と、データの書き込み後では、電流値に7桁の変化が生じている。このように、データの書き込み前と、データの書き込み後では、記憶素子の抵抗値に変化が生じており、この記憶素子の抵抗値の変化を、電圧値又は電流値により読み取れば、記憶回路として機能させることができる。
【0128】
なお、上記のような記憶素子を記憶回路として用いる場合、データの読み出し動作の度に、記憶素子には所定の電圧値(短絡しない程度の電圧値)が印加され、その抵抗値の読み取りが行われる。従って、上記の記憶素子の電流電圧特性には、読み出し動作を繰り返し行っても、つまり、所定の電圧値を繰り返し印加しても、変化しないような特性が必要となる。そこで、データの読み出し動作を行った後の記憶素子の電流電圧特性の測定結果について、図11を用いて説明する。なお、この実験では、データの読み出し動作を1回行う度に、記憶素子の電流電圧特性を測定した。データの読み出し動作は合計5回行ったので、記憶素子の電流電圧特性の測定は計5回行った。また、この電流電圧特性の測定は、電気的作用によりデータの書き込みが行われて抵抗値が変化した記憶素子と、抵抗値が変化していない記憶素子の、2つの記憶素子に対して行った。
【0129】
図11は、横軸が電圧値、縦軸が電流値、プロット271は電気的作用によりデータの書き込みが行われて抵抗値が変化した記憶素子の電流電圧特性、プロット272は抵抗値が変化していない記憶素子の電流電圧特性を示す。プロット271から分かるように、抵抗値が変化していない記憶素子の電流電圧特性は、電圧値が1V以上のときに特に良好な再現性を示す。同様に、プロット272から分かるように、抵抗値が変化した記憶素子の電流電圧特性も、電圧値が1V以上のときに特に良好な再現性を示す。上記の結果から、データの読み出し動作を複数回繰り返し行っても、その電流電圧特性は大きく変化せず、再現性は良好である。上記の記憶素子を記憶回路として用いることができる。
【0130】
また、データを書き込んだ後の記憶素子は、データを書き込む前に比べて、部分的に有機化合物層の膜厚が変化している。この膜厚の変化を光学的読み取り装置で読み取ることができる。
【0131】
ここで、有機化合物層を単層とした記憶素子のデータ書き込み前後での膜厚の変化を調べた実験結果を以下に示す。
【0132】
記憶素子は、下地絶縁膜が140nmの膜厚で設けられた基板上に、第1の導電層(下部電極)、有機化合物層、第2の導電層(上部電極)の順に積層した素子である。第1の導電層は、酸化珪素とインジウム錫酸化物の化合物を用い、有機化合物層は4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(TPD)を用い、第2の導電層はアルミニウムを用いて形成した。下部電極は105nmの膜厚とし、上部電極は270nmの膜厚とした。また、有機化合物層(TPD)は50nmの膜厚で形成した。記憶素子のサイズは2mm×2mmとした。
【0133】
そして、有機化合物層を単層とした記憶素子へ電圧を印加してデータ書き込みを行ったところ、記憶素子の表面に凹凸が形成された。TPDはもともと50nmであったが、データ書き込み後は厚い箇所で90nm、薄い箇所で15nmに変化した。厚い箇所の断面TEM写真を図12に示し、薄い箇所の断面TEM写真を図13に示す。このように、データを書き込んだ後の記憶素子は、データを書き込む前に比べて、部分的に有機化合物層の膜厚が変化している。
【0134】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施例1、実施例2、または実施例3と自由に組み合わせることができる。
【実施例5】
【0135】
本実施例では、基板上に記憶素子部を作製し、その記憶素子部に電気的作用によりショートさせてデータの書き込みを行った結果について説明する。
【0136】
記憶素子部は、基板上に第1の導電層、有機化合物層(有機化合物材料と無機化合物材料との混合層と、有機化合物材料からなる層との積層)、第2の導電層の順に積層した素子である(以下、素子構造1と記す)。なお、第1の導電層は、酸化珪素とインジウム錫酸化物の化合物を用いた。有機化合物層は、有機化合物材料と無機化合物材料との混合層と、有機化合物材料からなる層との積層構造を用いた。有機化合物材料と無機化合物材料との混合層は、α−NPDとMoOとを共蒸着により成膜した。有機化合物材料からなる層は、TPDを用いた。第2の導電層は、アルミニウムを用いた。
【0137】
また、上記構成を有する記憶素子部と比較するため、基板上に第1の導電層、有機化合物材料からなる層、第2の導電層の順に積層した素子を形成した(以下、素子構造2と記す)。第1の導電層としては酸化珪素とインジウム錫酸化物の化合物を用い、有機化合物材料からなる層としてはTPDを用い、第2の導電層としてはアルミニウムを用いて形成した。つまり、上記構成から有機化合物材料と無機化合物材料との混合層を除いた構成となっている。
【0138】
次に、電気的作用により記憶素子部をショートさせてデータ書き込みを行う前と、電気的作用により記憶素子部をショートさせてデータ書き込みを行った後の、素子構造1と素子構造2のそれぞれの電流電圧特性の測定結果を図14に示す。なお、図14において、横軸は電圧値(V)、縦軸は電流密度(mA/cm)を示している。また、図14において、プロット281aは電気的作用を加えることより記憶素子部をショートさせる前の素子構造1の電流電圧特性、プロット281bは電気的作用を加えることにより記憶素子部をショートさせた後の素子構造1の電流電圧特性を示す。また、プロット282aは電気的作用を加えることより記憶素子部をショートさせる前の素子構造2の電流電圧特性、プロット282bは電気的作用を加えることにより記憶素子部をショートさせた後の素子構造2の電流電圧特性を示す。
【0139】
図14から、記憶素子部をショートさせる前と、ショートさせた後とで、素子構造1および素子構造2の電流電圧特性には大きな変化がみられる。例えば、印過電圧1Vでは、記憶素子部をショートさせる前の素子構造1、素子構造2の電流密度はそれぞれ1.6×10−4mA/cm、2.4×10−4mA/cmであるのに対し、記憶素子部をショートさせた後の素子構造1、素子構造2の電流密度はそれぞれ2.5×10mA/cm、4.3×10mA/cmであり、記憶素子部をショートさせる前とショートさせた後では、電流値に6桁の変化が生じている。つまり、記憶素子部をショートさせた後には素子構造1および素子構造2の抵抗値がショートさせる前の抵抗値に比べ大幅に減少している。
【0140】
このように、記憶素子部をショートさせる前と、記憶素子部をショートした後では、記憶素子部の抵抗値に変化が生じており、この素子構造1または素子構造2の抵抗値の変化を、電圧値又は電流値により読み取ることによって、記憶回路として機能させることができる。
【0141】
また、図14より、素子構造1と素子構造2に電気的作用を加えることにより記憶素子部をショートさせる際の電圧はそれぞれ、9.6V、18.2Vであり、素子構造1の方が低い電圧で記憶素子部をショートさせることが可能であった。つまり、有機化合物層として、有機化合物材料からなる層に無機化合物材料と有機化合物材料との混合層を積層させて設けることにより、記憶素子をショートさせてデータを書き込む際の駆動電圧を低くすることが可能となる。その結果、有機化合物層に有機化合物材料からなる層に加えて、有機化合物材料と無機化合物材料との混合層を設けることによって、記憶素子部の厚膜化と低消費電力化を同時に達成することができる。
【0142】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施例1、実施例2、実施例3、または実施例4と自由に組み合わせることができる。
【実施例6】
【0143】
本発明の半導体装置の用途は広範にわたるが、例えば、本発明の半導体装置20の一形態である無線タグは、紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類、包装用容器類、書籍類、記録媒体、身の回り品、乗物類、食品類、衣類、保健用品類、生活用品類、薬品類及び電子機器等に設けて使用することができる。
【0144】
紙幣、硬貨とは、市場に流通する金銭であり、特定の地域で貨幣と同じように通用するもの(金券)、記念コイン等を含む。有価証券類とは、小切手、証券、約束手形等を指す(図15(A)参照)。図15(A)にその一例を示すように、小切手2001に識別面2003を有する無線タグ2002が固定されている。無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で情報を照合し、一致することを確認する認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。
【0145】
また、証書類とは、運転免許証、住民票等を指す(図15(B)参照)。図15(B)にその一例を示すように、運転免許証2011に識別面2013を有する無線タグ2012が固定されている。無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で情報を照合し、一致することを確認する認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。
【0146】
また、無記名債券類とは、切手、物品引替券、各種ギフト券等を指す(図15(C)参照)。図15(C)にその一例を示すように、物品引替券2021に識別面2023を有する無線タグ2022が固定されている。無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で情報を照合し、一致することを確認する認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。
【0147】
また、包装用容器類とは、お弁当等の包装紙、ペットボトル、段ボール箱等を指す(図15(D)参照)。図15(D)にその一例を示すように、お弁当等の包装ラベル2031に識別面2033を有する無線タグ2032が固定されている。識別面2033はデータの書き込みによって視認による値段確認も可能としている。また、無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で情報を照合し、一致することを確認することができ、読み取りエラーを防止することができる。
【0148】
また、書籍類とは、書物、本等を指す(図15(E)参照)。図15(E)にその一例を示すように、本2041に識別面2043を有する無線タグ2042が固定されている。無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で情報を照合し、一致することを確認することができ、読み取りエラーを防止することができる。
【0149】
また、記録媒体とは、DVDソフト、ビデオテープ等を指す(図15(F)参照)。図15(F)にその一例を示すように、DVDのケース2051に識別面2053を有する無線タグ2052が固定されている。無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で情報を照合し、一致することを確認することができ、読み取りエラーを防止することができる。
【0150】
また、身の回り品とは、鞄、眼鏡等を指す。乗物類とは、自転車等の車両、船舶等を指す。食品類とは、食料品、飲料等を指す。衣類とは、衣服、履物等を指す。保健用品類とは、医療器具、健康器具等を指す。生活用品類とは、家具、照明器具等を指す。薬品類とは、医薬品、農薬等を指す。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(テレビ受像機、薄型テレビ受像機)、携帯電話等を指す。
【0151】
また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に本発明の半導体装置を設けることにより、検品システム等のシステムの効率化を図ることができる。
【0152】
また、本発明の半導体装置は、一対の導電層間に有機化合物層が挟まれた単純な構造の記憶素子を有するため、安価な半導体装置を用いた電子機器を提供することができる。また、本発明の半導体装置は高集積化が容易なため、大容量の記憶回路を有する半導体装置を用いた電子機器を提供することができる。
【0153】
また、本発明の半導体装置が含む記憶回路は、光学的作用又は電気的作用によりデータの書き込みを行うものであり、無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で読み出すことができる。また、本発明の半導体装置が含む記憶回路は、不揮発性であって、データの追記が可能であることを特徴とする。上記特徴により、書き換えによる偽造を防止することができ、新たなデータを追加して書き込むことができる。従って、高機能化と高付加価値化を実現した半導体装置を用いた電子機器を提供することができる。
【0154】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、または実施例5と自由に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明を物流や商品等の物品および人物等の管理に応用すれば、セキュリティが極めて安全で、効率性の高い識別無線タグシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明の半導体装置の上面図および断面図。
【図2】本発明の半導体装置の上面図および断面図。
【図3】本発明の半導体装置の等価回路図。
【図4】本発明の半導体装置のブロック図。
【図5】本発明の半導体装置の記憶部における上面図および断面図。
【図6】本発明の半導体装置の記憶部における等価回路図。
【図7】レーザ照射装置を説明する図。
【図8】電圧が印加された記憶素子の一部の写真図である。
【図9】電圧印加前後での記憶素子の反射スペクトルを示すグラフである。
【図10】記憶素子の電流電圧特性を示す図。
【図11】記憶素子の電流電圧特性を示す図。
【図12】電圧印加後の記憶素子の断面TEM写真を示す図。
【図13】電圧印加後の記憶素子の断面TEM写真を示す図。
【図14】記憶素子の電流電圧特性を示す図。
【図15】電子機器の一例を示す図。
【符号の説明】
【0157】
11 電源回路
12 クロック発生回路
13 データ復調/変調回路
14 制御回路
15 インターフェイス回路
16 記憶回路
17 データバス
18 アンテナ
19a 電気的リードライタ
19b 光学的リードライタ
20 半導体装置
21 照合手段
101 基材
102 アンテナ
103a メモリセルアレイ(書き込み前)
103b メモリセルアレイ(書き込み後)
104 デコーダ回路
105 デコーダ回路
106 セレクタ回路
107 読み取り及び書き込み回路
108 集積回路
109 模様パターン
110 光を照射する書き込み手段
111 制御手段
112 電気信号による書き込み手段
113 制御手段
114 光学読み取り装置
115 電気信号読み取り装置
116 照合手段
117 情報端末
201 基材
202 アンテナ
203 メモリセルアレイ
204 デコーダ回路
205 デコーダ回路
206 セレクタ回路
207 読み取り及び書き込み回路
208 集積回路
210a pチャネル型TFT
210b pチャネル型TFT
211a nチャネル型TFT
211b pチャネル型TFT
212a 第1の導電層
212b 第1の導電層
212c 配線
213a 有機化合物層
213b 有機化合物層
214 第1の層間絶縁膜
214a 第2の導電層
214b 第2の導電層
215 第2の絶縁層
216 隔壁
217 接着層
218 封止板
221 記憶素子
502 アンテナ
520 集積回路
521 メモリセル
522 メモリセルアレイ
523 デコーダ回路
524 デコーダ回路
525 セレクタ回路
526 読み取り書き込み回路
527 第1の導電層
528 第2の導電層
529 有機化合物層
530 記憶素子
532 レーザ照射装置
533 絶縁層
534 絶縁層
544 半導体層
545 半導体層
546 抵抗素子
547 センスアンプ
1001 レーザ照射装置
1002 コンピュータ
1003 レーザ発振器
1004 電源
1005 光学系
1006 音響光学変調器
1007 光学系
1009 移動機構
1010 変換部
1011 ドライバ
1012 ドライバ
1013 オートフォーカス機構
1014 基板
2001 小切手
2002 無線タグ
2003 識別面
2011 運転免許証
2012 無線タグ
2013 識別面
2021 物品引替券
2022 無線タグ
2023 識別面
2031 包装ラベル
2032 無線タグ
2033 識別面
2041 本
2042 無線タグ
2043 識別面
2051 DVDのケース
2052 無線タグ
2053 識別面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを有するメモリと、前記メモリを制御する回路と、アンテナとを有し、
前記メモリセルアレイは、第1の方向に延在するビット線と、前記第1の方向と垂直な第2の方向に延在するワード線とを有し、
前記ビット線と前記ワード線との間に不可逆的に相変化する材料層を有し、
前記ビット線と前記ワード線の一方または両方は透光性を有し、
前記メモリは、記録された情報を光学読み取り手段により読み取る識別面を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、前記メモリに記憶されたデータを無線信号により読み取られた第1のデータと前記メモリの識別面から光学読み取り手段により得られた第2のデータとを照合する照合手段を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを有するメモリと、前記メモリを制御する回路と、アンテナとを有し、
前記メモリセルアレイは、第1の方向に延在するビット線と、前記第1の方向と垂直な第2の方向に延在するワード線とを有し、
前記ビット線と前記ワード線との間に不可逆的に相変化する材料層を有し、
前記ビット線と前記ワード線の一方または両方は透光性を有し、
前記メモリは、記録された同一の情報を複数の異なる読み取り手段により読み取られることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、前記材料層は、光の照射により第1の状態から第2の状態に相変化し、前記ビット線と前記ワード線との間の電気抵抗が変化することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、前記材料層は、光の照射により第1の状態から第2の状態に相変化し、前記識別面で相変化が読み取れることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、前記メモリを制御する回路は、薄膜トランジスタを有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一において、前記半導体装置は、前記アンテナと電気的に接続する回路を有し、該回路は薄膜トランジスタを有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一において、前記メモリを制御する回路と、前記アンテナと接続する回路は、同一基材上に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一において、前記半導体装置は、基材と封止材とで密封されており、前記基材と前記封止材の一方または両方は透光性を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一において、前記半導体装置は、基材と封止材とで狭持されており、前記基材及び前記封止材は、樹脂を含むことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−186343(P2006−186343A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346794(P2005−346794)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】