説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】閾値電圧が低く、かつ、ゲート絶縁膜のリーク電流を抑制可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】メタルゲート電極103,203の材料として、Taを含むTa膜18,38を用いる。Ta膜18,38中には多くの窒素が含まれており、その窒素の一部がゲート絶縁膜102,202中に拡散することにより、TiNに比べてフラットバンド電圧Vfbが高くなり、NMOSFET100およびPMOSFET200の閾値電圧Vthを低くすることができる。また、Ta膜18,38中の窒素がHfSiON膜17,37中に拡散することにより、ゲート絶縁膜の絶縁性を高くすることができ、ゲートリーク電流Jgを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルゲート電極を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide)トランジスタを用いた論理回路において、高速動作を実現するためには、NMOSFET(Negative-channel Metal-Oxide-Semiconductor)およびPMOSFET(Positive-channel Metal-Oxide-Semiconductor)の閾値電圧Vthを低くする必要がある。
【0003】
従来、ゲート電極の材料としてPoly−Si(ポリシリコン)等の半導体が用いられてきた。ゲート電極の材料が半導体である場合、NMOSFETについては、ゲート電極のフェルミレベルが、基板であるシリコンの伝導帯端4.05eVに近いほど閾値電圧Vthを低くすることができる。また、PMOSFETについては、ゲート電極のフェルミレベルが価電子帯5.17eVに近いほど閾値電圧Vthを低くすることができる。これは、ゲート電極のフェルミレベルが基板の伝導帯端または価電子帯端に近いほど、チャネルに反転層を形成するのに必要なゲート電圧が低くてすむためである。半導体の場合、例えば不純物濃度を制御することにより、比較的容易にフェルミレベルを調整することができる。
【0004】
近年では、トランジスタの微細化のため、ゲート電極の材料としてPoly−Siではなく金属を用いたメタルゲート電極を有するトランジスタが多く用いられている。ゲート電極の材料が金属である場合、半導体におけるフェルミレベルに相当する実効仕事関数が伝導帯端または価電子帯端に近いほど、閾値電圧Vthを低くすることができる。
【0005】
実効仕事関数は個々の金属に固有の仕事関数に依存するので、NMOSFETには実効仕事関数が4.05eV程度の金属を、PMOSFETには実効仕事関数が5.17eV程度の金属を用いれば、これらMOSFETの閾値電圧を低くできると考えられる。しかしながら、製造コストを抑制するためには、NMOSFETおよびPMOSFETのメタルゲート電極として同一の材料を用いざるを得ないという事情があり、必ずしも最適な金属を選択できるとは限らない。
【0006】
メタルゲート電極の材料としては、熱的に安定であり、加工が容易なTiN(窒化チタン)を用いるのが一般的である(例えば非特許文献1)。しかしながら、TiNの実効仕事関数をシリコンの伝導体端4.05eVおよび価電子帯端5.17eVに調整するのは困難であり、閾値電圧Vthを十分小さくできないという問題がある。
【0007】
また、低消費電力動作を実現するためには、メタルゲート電極の材料がTiNの場合よりも、さらにゲート絶縁膜のリーク電流を抑制する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】"Achieving Conduction Band-Edge Effective Work Function by La2O3 Capping of Hafnium Slicates", Lars-Ake Ragnarsson et al, IEEE Electron Device Letters, Vol. 28, No. 6, June 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、閾値電圧が低く、かつ、ゲート絶縁膜のリーク電流を抑制可能なトランジスタを備えた半導体装置およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、N型トランジスタと、P型トランジスタと、を備え、前記N型トランジスタは、半導体基板上に形成され、高誘電率絶縁膜を含む第1のゲート絶縁膜と、前記第1のゲート絶縁膜上に形成され、Taを含むTa膜を有する第1のゲート電極と、を有し、前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1のゲート電極の実効仕事関数を低減させる材料を含んでおり、前記P型トランジスタは、前記半導体基板上に形成されるSiGe膜と、前記SiGe膜上に形成され、前記高誘電率絶縁膜を含む第2のゲート絶縁膜と、前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、前記第1のゲート電極と同じ材料からなる第2のゲート電極と、を有し、前記第2のゲート絶縁膜は、前記第2のゲート電極の実効仕事関数を増大させる材料を含んでいることを特徴とする半導体装置が提供される。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、N型トランジスタと、P型トランジスタと、を備え、前記N型トランジスタは、半導体基板上に形成され、高誘電率絶縁膜を含む第1のゲート絶縁膜と、前記第1のゲート絶縁膜上に形成され、Taを含むTa膜を有する第1のゲート電極と、を有し、前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1のゲート電極の実効仕事関数を低減させる材料を含んでおり、前記P型トランジスタは、前記半導体基板上に形成されるSiGe膜と、前記SiGe膜上に形成され、前記高誘電率絶縁膜を含む第2のゲート絶縁膜と、前記第2のゲート絶縁膜上に形成される第2のゲート電極と、を有し、前記第2のゲート電極は、前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、前記Taを含むTaからなる第1の導電膜と、前記第1の導電膜上に形成され、前記第2のゲート電極の実効仕事関数を増大させる材料からなる第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上に形成され、前記第1の導電膜と同じ材料からなる第3の導電膜と、前記第3の導電膜上に形成され、前記第1のゲート電極の実効仕事関数を低減させる材料からなる第4の絶縁膜と、前記第4の絶縁膜上に形成され、前記第1の導電膜と同じ材料からなる第5の導電膜と、を有することを特徴とする半導体装置が提供される。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、半導体基板内に、N型トランジスタの形成箇所に対応づけてP型拡散層を形成するとともに、P型トランジスタの形成箇所に対応づけてN型拡散層を形成する工程と、前記N型拡散層上にSiGe膜を形成する工程と、前記P型拡散層および前記SiGe膜上に、第1の絶縁膜を形成する工程と、前記P型拡散層上に形成された前記第1の絶縁膜上に、第2の絶縁膜を形成するとともに、前記N型拡散層上に形成された前記第1の絶縁膜上に、第3の絶縁膜を形成する工程と、前記第2および第3の絶縁膜上に高誘電率絶縁体である第4の絶縁膜を形成するか、または、前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との間および前記第1の絶縁膜と前記第3の絶縁膜との間に前記第4の絶縁膜を形成する工程と、前記第4の絶縁膜上、または、前記第2および第3の絶縁膜上に、Taを含むTaからなる第5の導電膜を形成する工程と、前記第1乃至第4の絶縁膜の一部を除去して前記N型トランジスタおよび前記P型トランジスタのゲート絶縁膜を形成するとともに、前記第5の導電膜の一部を除去して前記N型トランジスタおよび前記P型トランジスタのゲート電極を形成する工程と、を備え、前記N型トランジスタのゲート絶縁膜に含まれる前記第2の絶縁膜は、前記N型トランジスタのゲート電極の実効仕事関数を低減させる材料を含んでおり、前記P型トランジスタのゲート絶縁膜に含まれる前記第3の絶縁膜は、前記P型トランジスタのゲート電極の実効仕事関数を増大させる材料を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、半導体基板内に、N型トランジスタの形成箇所に対応づけてP型拡散層を形成するとともに、P型トランジスタの形成箇所に対応づけてN型拡散層を形成する工程と、前記N型拡散層上にSiGe膜を形成する工程と、前記P型拡散層および前記SiGe膜上に、第1の絶縁膜を形成する工程と、前記第1の絶縁膜上に高誘電率絶縁体である第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第2の絶縁膜上にTaを含むTaからなる第3の導電膜を形成する工程と、前記第3の導電膜上に第4の絶縁膜を形成する工程と、前記第4の絶縁膜上にTaを含むTaからなる第5の導電膜を形成する工程と、前記P型拡散層上に形成された前記第3の導電膜、前記第4の絶縁膜および前記第5の導電膜を除去する工程と、前記P型拡散層上に形成された前記第2の絶縁膜および前記N型拡散層上に形成された前記第5の導電膜上に、第6の絶縁膜を形成する工程と、前記第6の絶縁膜上にTaを含むTaからなる第7の導電膜を形成する工程と、前記P型拡散層上に形成された前記第1の絶縁膜、前記第2の絶縁膜および前記第6の絶縁膜の一部を除去して前記N型トランジスタのゲート絶縁膜を形成するとともに、前記第7の導電膜の一部を除去して前記N型トランジスタのゲート電極を形成する工程と、前記N型拡散層上に形成された前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜の一部を除去して前記P型トランジスタのゲート絶縁膜を形成するとともに、前記第3の導電膜、第4の絶縁膜、第5の導電膜および前記第6の絶縁膜および前記第7の導電膜の一部を除去して前記P型トランジスタのゲート電極を形成する工程と、を備え、前記N型トランジスタのゲート絶縁膜に含まれる前記第6の絶縁膜は、前記N型トランジスタのゲート電極の実効仕事関数を低減させる材料を含んでおり、前記P型トランジスタのゲート電極に含まれる前記第4の絶縁膜は、前記P型トランジスタのゲート電極の実効仕事関数を増大させる材料を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トランジスタの閾値電圧を低くでき、かつ、ゲート絶縁膜のリーク電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置500の断面図。
【図2】POly−Si/Ta/HfSiON/SiON/Si積層構造のMOSキャパシタにおけるTaの組成比とフラットバンド電圧Vfbとの関係を示すグラフ。
【図3】POly−Si/Ta/HfSiON/SiON/Si積層構造のMOSキャパシタにおけるTaの組成比とゲート絶縁膜のリーク電流Jgとの関係を示すグラフ。
【図4】POly−Si/Ta/HfSiON/SiON/Si積層構造のMOSキャパシタにおけるTaの組成比と蓄積容量換算ゲート絶縁膜厚Taccとの関係を示すグラフ。
【図5】図1の半導体装置500の製造工程の手順を示す工程図。
【図6】図1の半導体装置500の製造工程断面図。
【図7】図6に続く製造工程断面図。
【図8】図7に続く製造工程断面図。
【図9】図8に続く製造工程断面図。
【図10】図9に続く製造工程断面図。
【図11】図10に続く製造工程断面図。
【図12】図1の第1の変形例である半導体装置の製造工程断面図。
【図13】図1の第2の変形例である半導体装置の製造工程断面図。
【図14】図1の第2の変形例である半導体装置の製造工程断面図。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置500aの断面図。
【図16】図15の半導体装置500aの製造工程の手順を示す工程図。
【図17】図1の半導体装置500aの製造工程断面図。
【図18】図17に続く図1の半導体装置500aの製造工程断面図。
【図19】図18の変形例である製造工程断面図。
【図20】図18に続く図1の半導体装置500aの製造工程断面図。
【図21】図20に続く図1の半導体装置500aの製造工程断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る半導体装置およびその製造方法の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置500の断面図である。半導体装置500は、シリコン基板1上に、NMOSFET100と、PMOSFET200と、これらを電気的に分離する素子分離領域300とを備えている。
【0018】
NMOSFET100は、P型拡散層11と、N型拡散層12と、N型エクステンション拡散層13と、SiON膜(シリコン酸窒化膜)15と、La(ランタン酸化膜)膜16と、HfSiON膜(ハフニウムシリコン窒化膜)17と、Ta膜18と、シリコン膜19と、シリサイド膜20と、オフセットスペーサ21と、サイドウォールスペーサ22,23とを有する。
【0019】
SiON膜15の直下のP型拡散層11の表面部分にはチャネルが形成され、このチャネルを挟んで一端側にはソース領域が、他端側にはドレイン領域が形成される。以下では、ソース領域とドレイン領域をまとめて、ソース/ドレイン領域と表記する。ソース/ドレイン領域は、N型拡散層12およびN型エクステンション拡散層13で形成される。チャネル領域の上には、SiON膜15、La(ランタン酸化膜)膜16およびHfSiON膜17を積層した構造のゲート絶縁膜102が形成されている。ここで、HfSiON膜17は高誘電率(High−k)絶縁膜である。ゲート絶縁膜102の上には、Ta膜18、シリコン膜19およびシリサイド20を積層した構造のメタルゲート電極103が形成されている。
【0020】
一方、PMOSFET101は、N型拡散層31と、P型拡散層32と、P型エクステンション拡散層33と、エピタキシャルSiGe膜(シリコンゲルマニウム膜)34と、SiON膜35と、Al膜(アルミニウム酸化膜)36と、HfSiON膜37と、Ta膜38と、シリコン膜39と、シリサイド膜40と、オフセットスペーサ41と、サイドウォールスペーサ42,43とを有する。
【0021】
SiON膜35の直下のN型拡散層31の表面部分にはチャネルが形成され、このチャネルの両端には、P型拡散層32およびP型エクステンション拡散層33からなるソース/ドレイン領域201が形成されている。チャネル領域の上には、SiON膜35、Al膜およびHfSiON膜37を積層した構造のゲート絶縁膜202が形成されている。ゲート絶縁膜202の上には、Ta膜38、シリコン膜39およびシリサイド40を積層した構造のメタルゲート電極203が形成されている。
【0022】
このように、NMOSFET100およびPMOSFET200のメタルゲート電極103,203の材料は共通している。また、後述するように、Ta膜18,38はいずれもTaを含む。
【0023】
ところで、仕事関数は金属によって一意に定まる物理定数であるが、以下の説明において「実効仕事関数」(Effective Work Function、以下EWF)は、半導体のフェルミレベルに相当する値であり、金属に固有の仕事関数と、金属に接する絶縁膜の材料等とによって定まる値である。このEWFがシリコンの伝導帯端4.05eVおよび価電子帯端5.17eVに近いほど、閾値電圧Vthを低くでき、トランジスタの高速動作が可能となる。
【0024】
図1に示すように、NMOSFET100のゲート絶縁膜102は、SiON膜15とHfSiON膜17との間に介挿されるLa膜16を有する。この構造により、MOSFET100のメタルゲート電極103のEWFが0.5eV程度低くなる。これは、シリコンおよびランタンの電気陰性度の差に起因してダイポールが形成されるためと考えられる。
【0025】
また、PMOSFET200のゲート絶縁膜202は、SiON膜35とHfSiON膜37との間に介挿されるAl膜36を有する。さらに、PMOSFET200のチャネル部にはエピタキシャルSiGe膜34が形成されている。これらの構造によりPMOSFET200のメタルゲート電極203のEWFが0.5eV程度高くなる。SiGe膜34を形成することによりEWFが高くなるのは、シリコン基板1上に形成されたSiGe膜34の圧縮歪みによりシリコンの価電子帯端が低くなり、その結果、シリコンの価電子帯端に対するメタルゲート電極203のEWFが相対的に高くなるためと考えられる。
【0026】
このように、EWFを調整する理由は、閾値電圧Vthを低くすることができるためである。より詳しくは、製造プロセス簡略化のためにはメタルゲート電極103,203の材料を共通にするのが望ましいが、調整前のEWFがシリコンの伝導帯端および価電子帯端の中央付近になるようなメタルゲート電極を予め形成しておいて、上記の調整によりNMOSFET100のEWFを低くし、かつPMOSFET200のEWFを高くすることで、EWFを伝導帯端および価電子帯端に近くすることができ、結果として、閾値電圧Vthを低くすることができる。
【0027】
仮に、NMOSFET100とPMOSFET200のメタルゲート電極103,203の材料が一般的に用いられているTiNであるとすると、TiNをHfSiON膜上に形成した場合のEWFは4.4eVである。NMOSFET100のゲート電極102に上記のLa膜16を介挿する構造にすると、EWFが0.5eV低くなるので、メタルゲート電極103のEWFは4.4−0.5=3.9eVとなる。この値はシリコンの伝導帯端4.05eVより低い。同様に、PMOSFET200のメタルゲート電極203のEWFは4.4+0.5=4.9eVとなる。この値もシリコンの価電子帯端5.17eVより低い。このように、メタルゲート電極103,203の材料としてTiNを用いると、EWFをシリコンの伝導帯端と価電子帯端に近づけることができない。
【0028】
したがって、トランジスタの閾値電圧Vthを低くするためには、メタルゲート電極103,203の材料としてTiNを用いた場合よりもEWFが高くなるような材料を選択する必要がある。そこで、本実施形態では、NMOSFET100およびPMOSFET200のメタルゲート電極103,203の材料として、Taを含むTa膜18,38を用いることを特徴とする。
【0029】
図2は、POly−Si/Ta/HfSiON/SiON/Si積層構造のMOSキャパシタにおけるTaの組成比とフラットバンド電圧Vfbとの関係を示すグラフである。比較のために、Taの代わりにTiを用いた場合のフラットバンド電圧Vfbもプロットしている。同図の横軸は組成比n/mまたはy/xであり、縦軸はフラットバンド電圧Vfbである。組成比n/mおよびy/xはRBS(Rutherford Back Scattering:ラザフォード後方散乱)法により特定した値である。フラットバンド電圧VfbはEWFと正の相関関係にあり、EWFを高くするには、フラットバンド電圧Vfbを高くすればよい。
【0030】
Taの代表的な安定相として、TaN(y/x=0.5),Ta(y/x=1.25),Ta(y/x=1.67)が存在する。図2のTa(y/x=0.66)およびTa(y/x=1.12)は、主にTaNおよびTaから形成されており、Ta(y/x=1.48)は、主にTaおよびTaから形成されていると考えられる。より一般的には、Taは、0.5≦y/x≦1.25の場合、主にTaNおよびTaから形成されており、1.25≦y/x≦1.67の場合、主にTaおよびTaから形成されている。
【0031】
Tiと異なり、Taの場合、TaおよびTaのように窒素の組成比がタンタルより多い安定相が存在する。そのため、メタルゲート電極103,203に多くの窒素を含むことができる。より具体的には、Taを含むようにTa膜18,38を形成することにより、窒素の組成比を1.25以上とすることができる。Ta膜18,38の窒素の組成が多いと、この窒素のうちの一部が下層のゲート絶縁膜であるHfSiON膜17,37に拡散してゲート絶縁膜中に負の電荷が生成され、その結果、フラットバンド電圧Vfbが高くなると考えられる。
【0032】
実際、図2に示すように、TiおよびTa(y/x=0.66および1.12)と比べ、Ta(y/x=1.48)ではメタルゲート電極のフラットバンド電圧Vfbが高くなっている。よって、メタルゲート電極のEWFを高くすることができ、結果としてメタル電極103,203のEWFをシリコンの伝導帯端と価電子帯端に近づけることができ、トランジスタの閾値電圧Vthを低くすることができる。
【0033】
図3は、POly−Si/Ta/HfSiON/SiON/Si積層構造のMOSキャパシタにおけるTaの組成比とゲート絶縁膜のリーク電流Jgとの関係を示すグラフである。比較のために、Taの代わりにTiを用いた場合のリーク電流Jgもプロットしている。同図の横軸は図2と同様であり、縦軸はリーク電流Jgである。メタルゲート電極の材料がTiである場合に比べ、Taをメタルゲート電極とした場合、リーク電流Jgを9割以上減少させることができる。
【0034】
Ta膜18,38中の一部のタンタルが下層のHfSiON膜17,37中に混入したり、タンタルとHfSiON膜17,37とが界面反応を生じたりすると、タンタルと酸素原子間の結合が形成され、HfSiON膜17,37中にHfTaSiONが形成される。その結果、ゲート絶縁膜の物理膜厚が増加し、リーク電流Jgが減少したと考えられる。
【0035】
図4は、POly−Si/Ta/HfSiON/SiON/Si積層構造のMOSキャパシタにおけるTaの組成比と蓄積容量換算ゲート絶縁膜厚Taccとの関係を示すグラフである。比較のために、Taの代わりにTiを用いた場合の蓄積容量換算ゲート絶縁膜厚Taccもプロットしている。同図の横軸は図2と同様であり、縦軸は蓄積容量換算ゲート絶縁膜厚Taccである。蓄積容量換算ゲート絶縁膜厚Taccは蓄積容量から見積もられるゲート絶縁膜の膜厚であり、微細化のためには小さいことが望ましい。
【0036】
メタルゲート電極の材料として、Tiを用いた場合と比べ、Taを用いた場合、特に窒素の組成比が小さいy/x=0.66の場合に、蓄積容量換算ゲート酸化膜厚Taccが増加してしまう。これは、窒素の組成比が少ない場合、Taは熱的に不安定であり、タンタルが下層のHfSiON膜と界面反応を生じるためである。窒素の組成比を多くすることで、蓄積容量換算ゲート酸化膜厚Taccの増加を抑制できる。
【0037】
このように、窒素の組成比が大きいTaを用いると、過剰にタンタルがHfSiON膜17,37に混入等することがないため、蓄積容量換算ゲート酸化膜厚Taccの増加を抑制しつつ、リーク電流Jgを減少させることができる。
【0038】
以上のように、メタルゲート電極の材料として、TiNでなくTaを用いることにより、フラットバンド電圧Vfbが高くなり、トランジスタの閾値電圧Vthを低くすることができる(図2)。また、フラットバンド電圧Vfbをより高くし(図2)、かつ蓄積容量換算ゲート酸化膜厚Taccの増加を抑制しつつ(図4)、リーク電流Jgを減少させる(図3)ためには、Taにおける窒素の組成比が高い方が望ましい。
【0039】
そのため、本実施形態では、Taを含むTa膜18,38をメタルゲート電極103,203の材料として用いる。
【0040】
次に、第1の実施形態に係る半導体装置500の製造方法を説明する。図5は、図1の半導体装置500の製造工程の手順を示す工程図であり、図6〜図11は、図1の半導体装置の各製造工程を示す断面図である。
【0041】
まず、シリコン基板1の中に微細な溝を複数形成し、この溝の中に絶縁膜を埋め込んだSTI(Shallow Trench Isolation)構造の素子分離領域300を形成する。次に、シリコン基板1にP型拡散層11およびN型拡散層31を形成する。さらに、P型拡散層11およびN型拡散層上31に犠牲酸化膜51を形成する(ステップS1)。以上により、図6に示す断面構造が得られる。
【0042】
続いて、レジスト(不図示)をマスクとし、NHF水溶液又は希フッ酸を用いて、N型拡散層31上の犠牲酸化膜51を除去する。これによりN型拡散層31が露出するので、N型拡散層31の表面にSiGe膜52を選択的にエピタキシャル成長させる(ステップS2)。次に、同様にして、P型拡散層11上の犠牲酸化膜51を除去し、P型拡散層11上およびSiGe膜52上に、例えば膜厚1nmのケミカルSiO膜を形成する。さらに、酸素雰囲気での熱処理後、窒素プラズマ雰囲気中で処理した後に再度熱処理を行い、SiO膜をSiON膜53に改質する(ステップS3)。以上により、図7に示す断面構造が得られる。
【0043】
さらに、ALD(Atomic Layer Deposition)法またはPVD(Physical Vapor Deposition)法により、例えば膜厚1nmのAl膜を全面に形成する。次に、レジスト(不図示)をマスクとし、P型拡散層11上のAl膜をエッチング除去する。これにより、N型拡散層31側にのみAl膜54が形成される(ステップS4、図8)。
【0044】
続いて、PVD法により、例えば膜厚1nmのLa膜を全面に形成する。次に、レジスト(不図示)をマスクとして、N型拡散層31上のLa膜をエッチング除去する。これにより、P型拡散層31側にのみLa膜55が形成される(ステップS5、図8)。
【0045】
その後、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、例えば膜厚2nmのHfSiO膜(ハフニウムシリコン酸化膜)を全面に形成する。さらに、窒素プラズマ雰囲気中で処理した後、熱処理を行うことで、HfSiO膜をHigh−K絶縁膜であるHfSiON膜56に改質する(ステップS6)。以上により、図8に示す断面構造が得られる。
【0046】
続いて、反応性スパッタ法により、例えば膜厚10nmのTa膜57を形成する(ステップS7)。このとき、N/Ta流量比が小さいと、TaNが主に形成されてしまい、Taが形成されない。そのため、N/Ta流量比を多くして、Taを含むTa膜57が形成されるようにする。以上により、図9に示す断面構造が得られる。
【0047】
このように、窒素を多く含むTa膜57を形成することで、後述する熱処理工程で窒素の一部がゲート絶縁膜102,202となるHfSiON膜56中に拡散する。これにより、メタルゲート電極103,203のフラットバンド電圧Vfbが高くなり、結果として、NMOSFET100およびPMOSFET200の閾値電圧Vthを低くすることができる。
【0048】
続いて、Ta膜57上にシリコン膜58を形成し(ステップS8)、図10に示す断面構造が得られる。
【0049】
さらに、ハードマスク(不図示)を用いて、RIE(Reactive Ion Etching)法により、シリコン膜58、Ta膜57、HfSiON膜56、La膜55(P型拡散層11側)およびAl膜54(N型拡散層31側)をエッチングする。これにより、NMOSFET100のゲート酸化膜102であるSiON膜15およびHfSiON膜17と、これらの間に介挿されるLa膜16と、メタルゲート電極103であるTa膜18およびシリコン膜19とが形成される。また、PMOSFET200のゲート酸化膜202であるSiON膜35およびHfSiON膜37と、これらの間に介挿されるAl膜36と、メタルゲート電極203であるTa膜38およびシリコン膜39とが形成される(ステップS9)。以上により、図11に示す断面構造が得られる。
【0050】
このように、NMOSFET100およびPMOSFET200のメタルゲート電極103,203の材料は同一であるので、製造プロセスを簡略化できる。
【0051】
その後、ALD法またはCVD法により、SiN膜を堆積し、オフセットスペーサ21,41を形成する。続いて、CVD法またはRIE法により、SiO膜からなるサイドウォールスペーサ(不図示)を形成する(ステップS10)。
【0052】
さらに、レジスト(不図示)をマスクとし、N型拡散層31にB(ホウ素)を注入し、P型拡散層11にP(リン)またはAs(ヒ素)を注入する。その後、熱処理を行うことにより、N型拡散層31中にP型拡散層32が形成され、P型拡散層11中にN型拡散層12が形成される。続いて、サイドウォールスペーサを除去した後、レジスト(不図示)をマスクとし、N型拡散層31にBを注入し、P型拡散層11にPまたはAsを注入する。その後、熱処理を行うことにより、P型エクステンション拡散層33およびN型エクステンション拡散層13が形成される(ステップS11)。
【0053】
N型拡散層12およびN型エクステンション拡散層13はNMOSFET100のソース/ドレイン電極101となる。P型拡散層32およびP型エクステンション拡散層33はPMOSFET200のソース/ドレイン電極201となる。
【0054】
この熱処理により、Ta膜18,38中の一部の窒素がHfSiON膜17,37に拡散し、MOSFET100,200の閾値電圧Vthを低くすることができる。さらに、Ta膜18,38中の一部のタンタルがHfSiON膜17,37に混入したり、界面反応を生じたりする。その結果、ゲート絶縁膜102,202にタンタルが含まれることとなり、このタンタルとHfSiON膜17,37膜中の酸素原子との結合が生じる。
【0055】
続いて、CVD法およびRIE法により、SiO膜からなるサイドウォールスペーサ22,42とSiN膜からなるサイドウォールスペーサ23,43を形成する。そして、ソース/ドレイン電極101,201およびメタルゲート電極103,203のシリコン膜表面に自己整合的にシリサイド膜21,41を形成する。以上により、図1に示す断面構造の半導体装置500が得られる。
【0056】
その後、層間絶縁膜の形成、コンタクトホールの開口および導電材料の埋め込み、配線の形成等を行い、半導体集積回路が形成される。
【0057】
このように、第1の実施形態では、メタルゲート電極103,203の材料に、Taを含むTa膜18,38を用いる。Ta膜18,38中には多くの窒素が含まれており、その窒素の一部がゲート絶縁膜102,202中に拡散することにより、TiNに比べてフラットバンド電圧Vfbが高くなり、NMOSFET100およびPMOSFET200の閾値電圧Vthを低くすることができる。また、Ta膜18,38中の窒素がHfSiON膜17,37中に拡散することにより、ゲート絶縁膜102,202の絶縁性を高くすることができ、ゲートリーク電流Jgを抑制できる。
【0058】
図12〜図14は、図1の第1〜第3の変形例である半導体装置の製造工程断面図であり、図9に対応する。図9では、NMOSFET100では、チャネル側からSiON膜53/La膜55/HfSiON膜56の順に形成し、PMOSFET200では、SiON膜53/Al膜54/HfSiON膜56の順に形成し、これらの上にメタルゲート電極となるTa膜57を形成する。
【0059】
これに対し、図12に示す第1の変形例では、NMOSFET100では、チャネル側からSiON膜53/HfSiON膜56a/La膜55aの順に形成し、PMOSFET200では、SiON膜53/HfSiON膜56a/Al膜54aの順に形成し、これらの上にTa膜57を形成する。
【0060】
また、図13に示す第2の変形例では、NMOSFET100では、チャネル側からSiON膜53/HfSiON膜56b/La膜55bの順に形成し、PMOSFET200では、SiON膜53/Al膜54b/HfSiON膜56bの順に形成し、これらの上にTa膜57を形成する。
【0061】
また、図14に示す第3の変形例では、NMOSFET100では、チャネル側からSiON膜53/La膜55c/HfSiON膜56c/の順に形成し、PMOSFET200では、SiON膜53/HfSiON膜56c/Al膜54cの順に形成し、これらの上にTa膜57を形成する。
【0062】
図12〜図14に示すように、NMOSFET100におけるLa膜、および、PMOSFET200におけるAl膜を介挿する位置は、SiON膜とHfSiON膜との間でもよいし、HfSiON膜とTa膜との間でもよい。これらの場合も、図1のNMOSFET100およびPMOSFET200と同様に、閾値電圧Vthを低くすることができ、かつ、ゲートリーク電流Jgを抑制できる。図12〜図14に示す半導体装置を製造する場合、図5のステップS4〜S6の順序を適宜入れ替える等をすればよい。
【0063】
また、本実施形態では、N型およびP型拡散層12,32を形成した後に、サイドウォールスペーサを除去し、N型およびP型エクステンション拡散層13,33を形成したが、オフセットスペーサ21,41を形成した直後にN型およびP型エクステンション拡散層13,33を形成し、その後サイドウォールスペーサを形成し、N型およびP型拡散層12,32を形成してもよい。
【0064】
(第2の実施形態)
以下に説明する第2の実施形態は、PMOSFETのメタルゲート電極がAl膜のみならず、La膜を含むものである。
【0065】
図15は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置500aの断面図である。図15では、図1と共通する構成部分には同一の符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0066】
図15のNMOSFET100aおよびPMOSFET200aは、ゲート絶縁膜102a,202aおよびメタルゲート電極103a,203aの構造が図1と異なっている。NMOSFET100aのゲート絶縁膜102aは、SiON膜15、HfSiON膜24およびLa膜25を積層した構造であり、メタルゲート電極103aは、Ta膜26、シリコン膜27およびシリサイド膜20を積層した構造である。
【0067】
また、PMOSFET200aのゲート絶縁膜202aは、SiON膜35およびHfSiON膜44を積層した構造であり、メタルゲート電極203aは、Ta膜45、Al膜46、Ta膜47、La膜48、Ta膜49、シリコン膜50およびシリサイド膜40を積層した構造である。
【0068】
本実施形態では、Ta膜26,45,47,49はいずれもTaを含む。そのため、材料や組成が異なる別個の膜をそれぞれ形成するより、製造プロセスが簡略化されるとともに、Ta膜26,45,47,49中の窒素が確実にゲート絶縁膜102a,202a中に拡散することになり、MOSFETの閾値電圧Vthを低くすることができる。
【0069】
ところで、第1の実施形態で説明したように、図1のNMOSFET100において、La膜16はメタルゲート電極103のEWFを0.5eV程度低くするために介挿されるが、La膜16上にAl膜の残渣があると、その残渣の量に応じてEWFがばらついてしまう。同様に、PMOSFET200において、Al膜46はメタルゲート電極203のEWFを0.5eV程度高くするために介挿されが、Al膜上にLa膜の残渣があると、その残渣の量に応じてEWFがばらついてしまう。また、La膜の一部がAl膜に拡散しても、その拡散量に応じてEWFがばらついてしまう。このように、EWFがばらつくと、MOSFETの閾値電圧Vthがばらつく原因になる。
【0070】
そこで、本実施形態では、以下のような工程で半導体装置500aを作製し、不要な残渣を防止することができる。
【0071】
図16は、図15の半導体装置500aの製造工程の手順を示す工程図であり、図17〜図20は、図15の半導体装置500aの各製造工程を示す断面図である。
【0072】
ステップS1〜S3までは図5に示す第1の実施形態と同様であり、図7と同様の断面構造が得られる。その後、MOCVD法により、HfSiO膜を全面に形成する。さらに、窒素プラズマ雰囲気中で処理した後、熱処理を行うことで、HfSiO膜をHfSiON膜61に改質する(ステップS21)。さらに、PVD法によりTa膜62を、ALD法またはPVD法によりAl膜63を、PVD法によりTa膜64を、順に全面に形成する(ステップS22)。以上により、図17に示す断面構造が得られる。
【0073】
次に、レジスト(不図示)をマスクとして、P型拡散層11上のTa膜64/Al膜63/Ta膜62積層構造をエッチング除去し(ステップS23)、N型拡散層31上にのみTa膜67/Al膜66/Ta65膜積層構造が形成される。以上により、図18に示す断面構造が得られる。
【0074】
なお、図19に示すように、Al膜66の代わりに、PVD法でAl膜66aを形成してもよい。これにより、積層構造をすべてPVD法により形成することもできる。
【0075】
続いて、PVD法によりLa膜68およびTa膜69を全面に形成する(ステップS24)。これにより、図20に示す断面構造が得られる。
【0076】
ここで、図17に示すように、P型拡散層11上のHfSiON膜61上に直接Al膜63が形成されることはない。そのため、図18または図19において、P型拡散層11上のHfSiON膜61上にAl膜63の残渣がない状態で、HfSiON膜61上にLa膜68を形成できる。
【0077】
また、N型拡散層31上のAl膜66の上にTa膜67が形成されているので、N型拡散層31上に形成されたLa膜68がAl膜66に拡散してEWFがばらつくことはない。よって、N型拡散層31上のLa膜68を選択除去する必要がなく、製造プロセスを簡略化できる。
【0078】
その後、Ta膜69上にシリコン膜を形成し(ステップS8)、形成された各層をパターニングしてゲート絶縁膜102a,202a、メタルゲート電極103a,203aを形成する(ステップS9)。以上により、図21に示す断面構造が得られる。
【0079】
その後、図4に示す第1の実施形態と同様の工程を経て、図15に示す半導体装置500aが得られる。
【0080】
本実施形態では、Al膜46(またはAl膜)は、ゲート絶縁膜202aでなく、ゲート電極203aに含まれる。この場合でも、熱工程によりゲート絶縁膜202aであるHfSiON膜44とSiON膜35との界面にAlが拡散する。これによりPMOSトランジスタ200aの閾値電圧Vthを低くすることができる。
【0081】
このように、第2の実施形態では、NMOSFET100aを作製する際、HfSiON膜61上にTa膜62を形成し、その上にPMOSFET200a用のAl膜63を形成する。そのため、Alの残渣がない状態でLa膜68を形成できる。よって、メタルゲート電極103aのEWFがばらつかず、NMOSFET100aの閾値電圧Vthを一定に保ちつつ低くすることができる。
【0082】
一方、PMOSFET200aを作製する際、Al膜66上にTa膜67を形成し、その上にNMOSFET100a用のLa膜68を形成する。よって、La膜68がAl膜66に拡散することはなく、メタルゲート電極203aのEWFがばらつかず、PMOSFET200aの閾値電圧Vthを一定に保ちつつ低くすることができる。また、La膜68を除去する必要がないので、製造プロセスを簡略化でき、製造コストを抑制できる。
【0083】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 シリコン基板
11,32 P型拡散層
12,31 N型拡散層
15,35,53 SiON膜
16,25,48,55,68 La
17,24,37,44,56,61 HfSiON膜
18,26,38,45,47,49,57,62,64,65,67,69 Ta
34,53 SiGe層
36,46,54,63,66 Al
100,100a NMOSFET
102,102a,202,202a ゲート絶縁膜
103,103a,203,203a ゲート電極
200,200a PMOSFET
500,500a 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N型トランジスタと、P型トランジスタと、を備え、
前記N型トランジスタは、
半導体基板上に形成され、高誘電率絶縁膜を含む第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜上に形成され、Taを含むTa膜を有する第1のゲート電極と、を有し、
前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1のゲート電極の実効仕事関数を低減させる材料を含んでおり、
前記P型トランジスタは、
前記半導体基板上に形成されるSiGe膜と、
前記SiGe膜上に形成され、前記高誘電率絶縁膜を含む第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、前記第1のゲート電極と同じ材料からなる第2のゲート電極と、を有し、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記第2のゲート電極の実効仕事関数を増大させる材料を含んでいることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
N型トランジスタと、P型トランジスタと、を備え、
前記N型トランジスタは、
半導体基板上に形成され、高誘電率絶縁膜を含む第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜上に形成され、Taを含むTa膜を有する第1のゲート電極と、を有し、
前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1のゲート電極の実効仕事関数を低減させる材料を含んでおり、
前記P型トランジスタは、
前記半導体基板上に形成されるSiGe膜と、
前記SiGe膜上に形成され、前記高誘電率絶縁膜を含む第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成される第2のゲート電極と、を有し、
前記第2のゲート電極は、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、前記Taを含むTaからなる第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上に形成され、前記第2のゲート電極の実効仕事関数を増大させる材料からなる第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上に形成され、前記第1の導電膜と同じ材料からなる第3の導電膜と、
前記第3の導電膜上に形成され、前記第1のゲート電極の実効仕事関数を低減させる材料からなる第4の絶縁膜と、
前記第4の絶縁膜上に形成され、前記第1の導電膜と同じ材料からなる第5の導電膜と、を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記第1および第2のゲート絶縁膜中にはタンタルが含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記高誘電率絶縁体は、HfSiONであり、
前記第1のゲート絶縁膜の実効仕事関数を低減させる材料はLaであり、
前記第2のゲート絶縁膜の実効仕事関数を増大させる材料はAlまたはAlであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板内に、N型トランジスタの形成箇所に対応づけてP型拡散層を形成するとともに、P型トランジスタの形成箇所に対応づけてN型拡散層を形成する工程と、
前記N型拡散層上にSiGe膜を形成する工程と、
前記P型拡散層および前記SiGe膜上に、第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記P型拡散層上に形成された前記第1の絶縁膜上に、第2の絶縁膜を形成するとともに、前記N型拡散層上に形成された前記第1の絶縁膜上に、第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2および第3の絶縁膜上に高誘電率絶縁体である第4の絶縁膜を形成するか、または、前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との間および前記第1の絶縁膜と前記第3の絶縁膜との間に前記第4の絶縁膜を形成する工程と、
前記第4の絶縁膜上、または、前記第2および第3の絶縁膜上に、Taを含むTaからなる第5の導電膜を形成する工程と、
前記第1乃至第4の絶縁膜の一部を除去して前記N型トランジスタおよび前記P型トランジスタのゲート絶縁膜を形成するとともに、前記第5の導電膜の一部を除去して前記N型トランジスタおよび前記P型トランジスタのゲート電極を形成する工程と、を備え、
前記N型トランジスタのゲート絶縁膜に含まれる前記第2の絶縁膜は、前記N型トランジスタのゲート電極の実効仕事関数を低減させる材料を含んでおり、
前記P型トランジスタのゲート絶縁膜に含まれる前記第3の絶縁膜は、前記P型トランジスタのゲート電極の実効仕事関数を増大させる材料を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
半導体基板内に、N型トランジスタの形成箇所に対応づけてP型拡散層を形成するとともに、P型トランジスタの形成箇所に対応づけてN型拡散層を形成する工程と、
前記N型拡散層上にSiGe膜を形成する工程と、
前記P型拡散層および前記SiGe膜上に、第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜上に高誘電率絶縁体である第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜上にTaを含むTaからなる第3の導電膜を形成する工程と、
前記第3の導電膜上に第4の絶縁膜を形成する工程と、
前記第4の絶縁膜上にTaを含むTaからなる第5の導電膜を形成する工程と、
前記P型拡散層上に形成された前記第3の導電膜、前記第4の絶縁膜および前記第5の導電膜を除去する工程と、
前記P型拡散層上に形成された前記第2の絶縁膜および前記N型拡散層上に形成された前記第5の導電膜上に、第6の絶縁膜を形成する工程と、
前記第6の絶縁膜上にTaを含むTaからなる第7の導電膜を形成する工程と、
前記P型拡散層上に形成された前記第1の絶縁膜、前記第2の絶縁膜および前記第6の絶縁膜の一部を除去して前記N型トランジスタのゲート絶縁膜を形成するとともに、前記第7の導電膜の一部を除去して前記N型トランジスタのゲート電極を形成する工程と、
前記N型拡散層上に形成された前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜の一部を除去して前記P型トランジスタのゲート絶縁膜を形成するとともに、前記第3の導電膜、第4の絶縁膜、第5の導電膜および前記第6の絶縁膜および前記第7の導電膜の一部を除去して前記P型トランジスタのゲート電極を形成する工程と、を備え、
前記N型トランジスタのゲート絶縁膜に含まれる前記第6の絶縁膜は、前記N型トランジスタのゲート電極の実効仕事関数を低減させる材料を含んでおり、
前記P型トランジスタのゲート電極に含まれる前記第4の絶縁膜は、前記P型トランジスタのゲート電極の実効仕事関数を増大させる材料を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−187478(P2011−187478A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47930(P2010−47930)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】