説明

半導体装置のコントラスト画像処理方法、処理装置、及び、処理プログラム

【課題】半導体装置の電位コントラスト像から配線のコントラストを簡便かつ正確に認識し、抽出することのできる半導体装置のコントラスト画像処理方法、処理装置、処理プログラムを提供する。
【解決手段】解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像をコントラスト像に合わせて自動的に減色する減色処理と、減色されたコントラスト像に含まれる画素をあらかじめ設定したコントラスト閾値を基準に分類し、複数のコントラストに分別された配線パターンを抽出する配線コントラスト抽出処理と、配線パターンの輪郭部分に含まれるノイズを輪郭部分のシフトにより除去するシフト処理と、を含み、解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像に含まれる配線パターンを所定のコントラストに区分して抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置のコントラスト画像処理方法、処理装置、及び、処理プログラムに関する。特に、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope 以下、「SEM」と呼ぶ。)やFIB(Focused Ion Beam)装置などから得られるコントラスト像において、半導体装置の各配線のコントラストを判定する画像処理方法、画像処理装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化、高性能化が進むにつれて半導体装置の不良解析は困難になって来ている。これに対して、半導体装置の不良解析を少しでも容易にするため、様々な半導体装置の不良解析技術が開発されて来ている。その半導体装置の不良解析の方法の1つに、電子ビーム欠陥解析装置を用いて、電位コントラスト法により、欠陥部を識別する方法がある。
【0003】
この方法は、まず、研磨等により半導体装置の観測対象となる導電層(配線あるいはビア)の表面を露出させる。次に、半導体装置の表面を所望の帯電電位に帯電させる。そして露出した導電層に電子ビームを照射し、半導体装置から放出される2次電子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観測し、電位コントラスト像を得る。ここで得られる電位コントラスト像は、観測対象の導電層の下層にオープン欠陥あるいはショート欠陥があった場合に、正常な半導体装置と比較して、異なるコントラストが得られる。
【0004】
しかし、電子ビーム欠陥解析装置を用いて、電位コントラスト法により、不良の半導体装置の電位コントラスト像と、良品の半導体装置の電位コントラスト像とを取得し、それぞれを比較し、不一致箇所を検出する方法では、良品の半導体装置の存在が前提であり、全ての半導体装置が設計どおりに製造されなかったために良品がない場合や、何らかの要因による動作不良が存在するために比較基準となる半導体装置が得られない場合は、故障箇所を特定することができない。そのような場合には、設計データから擬似良品画像を生成し、解析対象の2次電子像と比較する方法も提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、電子線を導電性基板に照射し、発生する2次電子・反射電子・透過電子のいずれかを検出し、その信号から形成された画像を比較して欠陥を自動検出するX線マスク等の自動検査システムが記載されている。ダイから導出された画像同士を比較するダイ・ダイ検査と、ダイから導出された画像と、当該ダイのCADデータを入力した画像シミュレータで生成された画像(擬似良品画像)とを比較するダイ・データベース検査が提案されている。
【0006】
特許文献2には、電子顕微鏡の試料台上に置かれた被検査半導体ウエハの主面上の検査対象となる検査領域に対して、電子線を照射して発生した2次電子および反射電子をそれぞれ2次電子検出器および反射電子検出器により検出し、検出信号変換回路、画像描画回路、比較演算回路および欠陥判定処理回路により欠陥または異物の検出および判別を行なうことが記載されている。
【0007】
また、特許文献1のように、設計データから擬似良品画像を生成し、解析対象の2次電子像と比較する方法では、半導体装置の微細化が進んでいることもあって、一般にSEM等の解析装置で観察される2次電子像は、その解析装置の分解能の影響、設計データとの形状の相違、縮尺の相違などのために、擬似良品画像との比較が難しい。そのため、特許文献3、特許文献4には、半導体装置の2次電子像から、擬似良品画像を生成する方法が開示されている。
【0008】
特許文献3では、半導体装置に荷電粒子ビームを照射して得られる2次電子像を、電位別の領域に区分けし、設計データを用いて各領域の電位濃度分布を計算する。電位濃度分布に従って、2次電子像の各領域を着色して擬似良品2次電子像を生成する。擬似良品2次電子像と、解析対象の2次電子像とを表示する。特許文献3では、電位コントラスト像を電位別の領域に区分けした後に、設計データを用いて、各領域の電位濃度分布(コントラスト画像における明度又はコントラストに相当)を計算する。
【0009】
特許文献4では、半導体装置に荷電粒子ビームを照射して得られる2次電子像を、電位別の領域に区分けし、各領域の濃度を平滑化する平滑化処理を行って、擬似良品2次電子像を生成する。擬似良品2次電子像と、解析対象の2次電子像とを表示する。
【0010】
図18に特許文献4に記載されている解析装置のブロック図を示す。SEM像入力手段10は、半導体装置に荷電粒子ビームを照射して得られる2次電子をSEM装置から入力する。電位別区分け手段12は、設計データ記憶手段16に格納された半導体装置の設計データを基準にしてSEM像入力手段10が入力した2次電子像を電位別の領域に区分けする。さらに、領域平滑化手段14により電位別の領域毎の濃度を平滑化する。具体的には、特許文献4の段落[0014]に記されているように、P+拡散、N+拡散、Poly−Siなど、配線の接続先の種類により、電位コントラストが変化する。
【0011】
また、非特許文献1は、半導体装置の不良解析に直接関連するものではないが、コンピュータを用いた画像処理ではよく知られた物体の輪郭を抽出する方法であるキャニー(Canny)エッジ検出が記載されている。このキャニーエッジ検出によれば、エッジ抽出のエラー発生率が低い、エッジ部の位置精度が高い、1つのエッジ領域に対して1つのエッジが抽出される、などの特徴があると、一般的には言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−258703号公報
【特許文献2】特開2006−286685号公報
【特許文献3】特開2009−231490号公報
【特許文献4】特開2009−252414号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J. Canny, "A Computational Approach to Edge Detection," IEEE Trans. On Pattern Analysis and Machine Intelligence, 8(6), 679頁〜698頁, 1986年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以下の分析は本発明により与えられる。電子ビーム欠陥装置を用いて、電位コントラスト法により、不良の半導体装置の電位コントラスト像と、良品の半導体装置の電位コントラスト像とを取得し、それぞれを比較し、不一致箇所を検出する方法では、良品の半導体装置の存在が前提であり、全ての半導体装置が設計どおりに製造されなかったために良品がない場合や、何らかの要因による動作不良が存在するために比較基準となる半導体装置が得られない場合は、故障箇所を特定することができない。
【0015】
そのような場合、特許文献1、3および4によれば、擬似良品像を生成することはできるが、解析対象である電位コントラスト像から、配線ごとの明度を識別することはできない。例えば、特許文献3および4に記されている電位別区分け手段と領域平滑化手段を解析対象である電位コントラスト像に適用したとしても、微細化が進んだ半導体装置において、2次電子像などの電位コントラスト像は、配線の境界が不明瞭であり、なおかつ明度が一定ではない(図3参照)ため、電位別の領域の区分けが容易ではなく、また、配線の接続先によって変化する明度についても、その判定が容易ではない。
【0016】
また、輪郭抽出の方法としては、非特許文献1記載のキャニーエッジ検出を用いることも考えられる。しかし、2次電子像などの電位コントラスト像は、配線の境界が不明瞭であるために、検出されたエッジはノイズを含み、不連続であり、輪郭検出可能な理想的な図形にはなっていない(図17参照。不連続箇所を白抜き矢印で示す)。配線内部の弱いエッジも検出されてしまうために、配線だけを検出するのが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の側面による半導体装置のコントラスト画像処理方法は、解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像を当該コントラスト像のコントラストに合わせて自動的に減色する減色処理と、前記減色されたコントラスト像に含まれる画素をあらかじめ設定したコントラスト閾値を基準に分類し、複数のコントラストに分別された配線パターンを抽出する配線コントラスト抽出処理と、前記配線パターンの輪郭部分に含まれるノイズを前記輪郭部分のシフトにより除去するシフト処理と、を含み、解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像に含まれる配線パターンを所定のコントラストに区分して抽出する。
【0018】
本発明の第2の側面による半導体装置のコントラスト画像処理装置は、解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像を入力し、入力したコントラスト像のコントラスト分布に基づいて自動的に減色し、減色したコントラスト像を出力する減色部と、前記減色したコントラスト像を入力し、前記減色したコントラスト像に含まれる画素をあらかじめ設定されたコントラスト閾値を基準に分類し、複数のコントラストに分別された配線パターン像を抽出する配線コントラスト抽出部と、前記配線コントラスト抽出部が抽出した配線パターン像を入力し、前記配線パターン像に含まれる配線の輪郭部分のノイズを前記輪郭部分のシフトにより除去するシフト部と、前記シフト部により前記輪郭部分のノイズが除去された配線パターン像を画像データとして出力する画像データ出力部と、を備える。
【0019】
本発明の第3の側面による半導体装置のコントラスト画像処理プログラムは、解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像を入力し、入力したコントラスト像のコントラスト分布に基づいて自動的に減色し、減色したコントラスト像を出力する減色処理と、前記減色したコントラスト像を入力し、前記減色したコントラスト像に含まれる画素をあらかじめ設定されたコントラスト閾値を基準に分類し、複数のコントラストに分別された配線パターン像を抽出する配線コントラスト抽出処理と、前記配線コントラスト抽出処理により抽出した配線パターン像を入力し、前記配線パターン像に含まれる配線の輪郭部分のノイズを前記輪郭部分のシフトにより除去するシフト処理と、前記シフト処理により前記輪郭部分のノイズが除去された配線パターン像を画像データとして出力する画像データ出力処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像を画像処理することにより、半導体装置上の配線とそのコントラストを簡便かつ正確に認識し、抽出することができる。そのため、不良半導体装置のコントラスト像から不良箇所を絞り込む場合に、良品画像あるいは設計データから得られる擬似良品画像などと、不良品画像との画像比較を、簡便かつ正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1による半導体装置のコントラスト画像処理方法の概略を示すフローチャートである。
【図2】不良解析対象となる半導体装置の構造の一例を示す断面図である。
【図3】解析装置から得られる半導体装置のコントラスト像の一例である。
【図4】図3に示すコントラスト像をノイズ除去処理(図1のステップS2)した後のコントラスト像である。
【図5】減色処理(図1のステップS3)前のコントラスト像の明度ヒストグラムである。
【図6】減色処理(図1のステップS3)後のコントラスト像の明度ヒストグラムである。
【図7】図4に示すコントラスト像を減色処理(図1のステップS3)した後のコントラスト像である。
【図8】図1における配線コントラスト抽出処理(ステップS4)の詳細フローチャートの一例である。
【図9】図7に示すコントラスト像を配線コントラスト抽出処理(図1のステップS4)した後のコントラスト像である。
【図10】図1における配線コントラスト抽出処理(ステップS4)のより一般的な詳細フローチャートの例である。
【図11】図9に示すコントラスト像をシフト処理(図1のステップS7)した後のコントラスト像である。
【図12】実施形態2による半導体装置のコントラスト画像処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図13】実施形態2における設定画面の一例である。
【図14】実施形態2における設定画面の別な例である。
【図15】実施形態2における設定画面のさらに別な例である。
【図16】実施形態3による半導体装置のコントラスト画像処理プログラムの実行に用いることのできるコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図17】図3に示す半導体装置のコントラスト像を従来のキャニーエッジ検出の方法により配線の輪郭を抽出した場合の画像である。
【図18】特許文献4に記載の従来の半導体装置の解析装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の各実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明の説明において、配線又は配線パターンとは、半導体装置を解析装置により解析した場合にコントラスト像が得られる半導体装置の導体パターンを広く含むものとする。すなわち、配線パターンには、金属配線の他、コンタクト、ビア、電極などの導体パターンが含まれるものとする。
【0023】
[実施形態1:半導体装置のコントラスト画像処理方法の実施形態]
(実施形態1の概要)
図1は、実施形態1の半導体装置のコントラスト画像処理方法の概略を示すフローチャートである。最初に、図1のフローチャートに沿って、実施形態1の概略について説明しておく。ステップS1では、図2に示すように解析対象となる半導体装置50の導電層(配線)の表面が露出するように半導体装置50の表面を研磨し、半導体装置50の表面を所望の帯電電位に帯電させる。そして露出した導電層に電子ビームを照射し、半導体装置から放出される2次電子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観測し、得られた電位コントラスト像を入力する。図3にこの解析装置から得られた電位コントラスト像の一例を示す。
【0024】
図1のステップS2では、解析装置から得られた電位コントラスト像に含まれるノイズをあらかじめ除去するノイズ除去処理を行う。図4に図3の電位コントラスト像からノイズ除去処理によるノイズ除去を行い、ノイズを除去したコントラスト像を示す。なお、電位コントラスト像に目立つノイズが見当たらない場合は、このノイズ除去処理を省略してもよいが、ノイズが含まれる場合は、ノイズ除去処理をこの段階で行っておくことが望ましい。
【0025】
次に、ステップS3では、コントラスト像の明度を減色する減色処理を行う。例えば、図4に示す256段階の明度のコントラスト像を図7に示す4〜16段階程度の明度に減色する。ここで減色を行うのは、減色処理(ステップS3)に続く配線コントラスト抽出処理(ステップS4)において、コントラスト毎の配線パターンの抽出を容易にするためである。図5に減色処理前の明度ヒストグラム、図6に減色処理後の明度ヒストグラムを示す。
【0026】
ステップS4では、あらかじめ設定したコントラスト閾値を基準にコントラスト像を2値化してコントラスト毎の配線パターンを抽出する。所望の配線パターンが抽出されなかった場合は、コントラスト閾値を変えて所望の配線パターンが抽出されるまで繰り返してもよい(ステップS5、S6)。図7のコントラスト像から図8に示す配線コントラスト抽出処理により、明、中間、暗の3段階の配線パターンを抽出したコントラスト像の一例を図9に示す。また、図10にN(Nは2以上の整数)段階のコントラストの配線パターンを抽出する処理を示す。
【0027】
なお、ステップS3の減色処理において、コントラスト像を減色することで、ステップS4の配線コントラスト抽出処理において、閾値の設定の選択が少なくなり、コントラスト(明度)を判定するための閾値を設定することが容易となる。減色されたコントラスト像に対して、明度(コントラスト)を2値化しながら図形抽出を繰り返すことで、微細なエッジを検出することなく、配線を認識することができる。
【0028】
ステップS7では、配線輪郭部のノイズについてステップS4で抽出した配線パターンの外形を縮小する方向や太らせる方向にシフトすることにより輪郭部のノイズを除去するシフト処理を行う。シフト処理では、配線コントラスト抽出処理(ステップS4)で得られた配線の輪郭を数画素だけシフトさせることで、配線境界での明度(コントラスト)差によるノイズを除去する。シフト処理後の配線パターン像(コントラスト像)を図11に示す。シフト処理により配線パターンの視認性を向上させることができる。
【0029】
ステップS8では、ステップS1〜ステップS7の処理で得られたコントラスト像を出力する。また、ステップS1〜S7の処理途中のコントラスト像や処理パラメータ、各配線の輪郭座標とその明度、を出力し、データとして保存したり、画面に表示させてもよい。
【0030】
なお、上記ステップS1〜S8の処理対象となる半導体装置のコントラスト像について、半導体装置の不良解析の分野においては、コントラスト像は、明度で表示するのが一般的である。従って、減色処理(ステップS3)、配線コントラスト抽出処理(ステップS4)では、明度を基準に減色し、明度を基準に配線パターンを抽出するものとして説明するが、電位コントラストを明度に以外に色彩などによって分別し表示するものであっても良い。
【0031】
(ステップS1:半導体装置のコントラスト像入力の詳細)
次に、図1の各ステップについて、ステップ毎により詳細に説明する。まず、ステップS1の半導体装置のコントラスト像入力処理について説明する。図2は、不良解析対象となる半導体装置の構造の一例を示す断面図である。半導体装置50は、半導体基板の表面に配線層が形成されている。配線層の一部は、研磨により除去され、導電層(配線)が表面に露出している。研磨により除去されなかった配線は半導体基板の表面に形成されたインスタンス(もしくはセル、トランジスタ)と呼ばれる機能回路に接続されている。
【0032】
観測面を半導体装置50の表面から観察すると、図2の配線の一部(導電層)が露出している。なお、観測面より上層にあった配線(図2において破線で示す配線)は、研磨によって除去されている。この状態で半導体装置50を所望の帯電電圧に帯電させ、荷電粒子を照射する。
【0033】
例えば、SEM(走査電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)装置を用いた場合、半導体装置に一定の帯電電位を与えた状態で、電子線を半導体装置に入射し、半導体装置から放出される2次電子を検出することで、半導体装置の表面(すなわち観測面)を観察する。すると、半導体装置の表面の電位によってコントラストが異なる像を得ることができる。
【0034】
観測面の導電層は、導電層に繋がる終点(インスタンス)の種類及び、電子の供給の有無などによって帯電状況が変わる。その結果、観測面の導電層に異なるコントラストが得られる。例えば図3に示すように、高解像度のSEMやFIBでは、P+拡散層、N+拡散層、Poly−Siなど、配線の接続先により、3種類、もしくはそれ以上の種類の電位コントラストが現れる。
【0035】
半導体装置(デバイス)の帯電条件は、観測面を正に帯電させる方法(Positive Voltage Contrast:以下、PVCと略して記載)と負に帯電させる方法(Negative Voltage Contrast:以下、NVCと略して記載)がある。PVC条件で観測面を正に帯電させると、配線の終点(インスタンス)がPMOSトランジスタのP+拡散層である場合、シリコン基板からの電子移動は順バイアスになるため、電子が供給されて帯電が進まず、明コントラストが得られる。高抵抗欠陥などにより非導通となれば、電子の供給が減り、帯電が進むため、暗コントラストとなる。
【0036】
また、配線の終点がN+拡散層の場合、観測面の正の帯電に対してP型シリコン基板とN+拡散層が逆バイアスとなるため、キャリアが移動しにくく、P+拡散層より帯電が進むのでより暗コントラストとなる。さらに、配線の終点がゲート電極の場合、N拡散よりさらに帯電しやすいので、N拡散よりさらに暗コントラストになる。
【0037】
このようにして得られた半導体装置の電位コントラスト像を図3に示す。図3に示す解析装置から得られる電位コントラスト像は、256段階の明度の画像が得られている。
【0038】
(ステップS2:ノイズ除去処理の詳細)
図1のステップS2では、電位コントラスト像(図3)に含まれるノイズを除去する処理を行う。半導体装置の不良解析の分野では、これまでノイズ除去処理は一般的には行われていなかったが、本実施形態において、元になるコントラスト像にノイズがある場合には、ノイズ除去処理をこの段階で行う。電位コントラスト像からノイズを除去するアルゴリズムについては、他の分野の画像処理で用いられているノイズ除去のアルゴリズムを用いることもできる。半導体装置の電位コントランス像からノイズを除去する処理として有効な処理をいくつか説明する。
【0039】
半導体装置の電位コントラスト像からノイズを除去する処理として、コントラスト像の画素間の距離によって重みを変えて、また明度の変化の大きい箇所の重みを小さくすることで、輪郭を保持しながら平滑化することができるバイラテラルフィルタの処理を用いることができる。バイラテラルフィルタの処理を複数回繰り返すことが有効である。
【0040】
複数回繰り返すことで、画素値の近いものどうしが、同じ画素値を持つようにまとめられるため、配線の境界が不明瞭であり、なおかつ明度が一定ではないコントラスト像に対して、輪郭すなわち配線の境界を保持しながら、明度を平滑化してノイズを除去することができる。
【0041】
また、半導体装置の電位コントラスト像からノイズを除去する処理として、コントラスト像の各画素に対して、対象画素とその周囲の画素を明度の順にならべて明度の中央値を求め、対象画素の明度を前記中央値に置換するメディアンフィルタを用いることもできる。メディアンフィルタは、配線の境界が不明瞭であり、なおかつ明度が一定ではないコントラスト像に対して、輪郭を保持しながら、明度が極端な画素を取り除くことができる。メディアンフィルタは、スパイク状、ゴマ塩状などの細かなノイズの除去に有効である。
【0042】
さらに、半導体装置の電位コントラスト像からノイズを除去する処理として、コントラスト像の各画素に対して、対象画素とその周囲の画素のそれぞれの明度から、明度の最小値を求めて、対象画素とその周囲の画素を最小値の明度の画素に置換する収縮処理を施した後に、対象画素とその周囲の画素のそれぞれの明度から、明度の最大値を求めて、対象画素とその周囲の画素を前記最大値に置換する膨張処理を施す収縮・膨張処理を適用することができる。
【0043】
この収縮・膨張処理は、配線の境界が不明瞭であり、なおかつ明度が一定ではないコントラスト像に対して、小さなゴミやひび割れといったノイズを除去することができる。
【0044】
さらに、ノイズを除去する処理に、上記バイラテラルフィルタ、メディアンフィルタ、収縮・膨張処理を組み合わせて実施してもよい。必要なノイズフィルタ処理を必要な回数実施することによりノイズを除去することができる。図3の電位コントラスト像に対して、膨張・収縮処理を2回、バイラテラルフィルタ処理を5回施して得たコントラスト像を図4に示す。
【0045】
(ステップS3:減色処理の詳細)
次に、ステップS3の減色処理を行う。減色処理では、後に続くステップS4の配線コントラスト抽出処理でコントラスト閾値の設定を作業者が容易にできるようにコントラストの段階の数をあらかじめ減らしておく。この減色処理では、減色した後の色の数は設定しておく必要があるが、コントラスト閾値については、設定しておく必要はない。画像に含まれる画素のコントラストに合わせて、あらかじめ設定した色の数に合わせて減色した後の色(コントラスト)が自動的に設定されるようなアルゴリズムを用いる。一例として、データ・クラスタリング法によって、コントラスト像の各画素の明度(コントラスト)を、外的基準(閾値の設定)なしに自動的に分類し、減色前のコントラスト像に合わせた色(コントラスト)に減色することができる。
【0046】
例えば、減色処理として、あらかじめ減色後の色数(クラスタ数)を与える。各クラスタに基準値をランダムに与える。次に、コントラスト像の各画素の明度を最も近い基準値に割り当てる。各クラスタに割り当てられた画素について、明度の平均値を算出し、その平均値を新たな基準値とする。基準値の算出と画素の割り当てを収束するまで繰り返すことで、コントラスト像の各画素の明度を自動的に分類する。
【0047】
図5に示すヒストグラムを有する256段階の明度のコントラスト像に対して減色処理を施すことにより、図6に示すヒストグラムを有する8段階の明度のコントラスト像に自動的に減色することができる。8段階の明度は自動的に設定される。図4に示す減色前の256色(256段階の明度)のコントラスト像を8色(8段階の明度)に減色したコントラスト像を図7に示す。
【0048】
半導体装置の観察面の状態(平坦さ、結晶性など)、あるいは解析装置で観測する際の条件の変化によって、解析するごとに、コントラスト像全体の明度やコントラストが変化する。コントラスト像の全体の明度やコントラストを作業者が視認しづらい場合でも、各画素の明度を外的基準なしに自動的に分類することで、減色後の色数を指定するだけで、容易かつ的確に減色することができる。
【0049】
(ステップS4:配線コントラスト抽出処理の詳細)
次に、ステップS4の配線コントラスト抽出処理について説明する。発明者の検討結果によれば、高解像度のSEMやFIBでは、P+拡散層、N+拡散層、Poly−Siなど、配線の接続先により、3種類の電位コントラストが現れ、配線の明度(コントラスト)を3種類に区分するとうまく不良解析ができる場合が多い。そのため、この実施形態の配線コントラスト抽出処理では、明、中間、暗の3つの閾値を与えて、配線パターンを抽出しても良い。その場合は、図8に示すフローチャートに従って、明、中間、暗の3通りのコントラストの配線パターンを抽出することができる。
【0050】
図8のフローチャートに基づいて、配線コントラスト抽出処理の詳細について説明する。あらかじめ、明、中間、暗の3通りのコントラスト閾値は設定されているものとする。まず、ステップS11では、減色処理で減色されたコントラスト像を入力する。次にステップS12では、画像を明閾値で2値化し、続くステップS13で明度が高い図形の輪郭を抽出することで、明コントラスト図形を抽出する。このステップS13により最も明度の高い配線パターンが抽出される。次に、ステップS14ですでに抽出された明コントラスト図形を黒色に変換する。明コントラスト図形を黒色に変換するのは、すでに抽出した明コントラスト図形を除外して中間コントラスト図形を抽出するためである。
【0051】
ステップS15では、画像を中間閾値で2値化する。ステップS16では、2値化された画像から明度が高い図形の輪郭を抽出することで、中間コントラスト図形を抽出する。次に、ステップS17では、明コントラスト図形と中間コントラスト図形を黒色に変換する。すでに抽出した明コントラスト図形と中間コントラスト図形を除外して暗コントラスト図形を抽出するためである。
【0052】
ステップS18では、画像を暗閾値で2値化する。ステップS19では、暗閾値で2値化された画像のうち、明度が高い図形の輪郭を抽出することで、暗コントラスト図形を抽出する。そして、明/中間/暗の3種類のコントラストの図形を、それぞれ明/中間/暗の3種類のコントラストの配線とする。
【0053】
このように、減色されたコントラスト像に対して、明、中間、暗の3つの閾値を設定することで、簡便に明、中間、暗の3コントラストの配線を抽出することができる。図7に示す減色処理が施されたコントラスト像に対して、図8の処理フローチャートに従い3種類のコントラストの配線パターンを抽出すると図9に示す3種類のコントラストに区別された配線パターンが抽出できる。
【0054】
発明者の知見によれば、半導体装置の電位コントラスト像は3段階のコントラストに区分して配線パターンを抽出するとよい結果が得られるが、配線コントラスト抽出処理におけるコントラストの抽出は、3段階のコントラスト以外にも適用することができる。また、明暗が逆転したコントラスト像や色彩を用いてコントラストを表したコントラスト像に対しても適用することができる。
【0055】
図10に、配線パターンをN段階のコントラストに分別する場合の一般的な配線コントラスト抽出処理の処理フローチャートを示す。基本的には、図8に示す明、中間、暗の3段階のコントラストの配線パターンを抽出する処理フローと同一である。まず、処理を開始する前にN段階のコントラスト閾値をあらかじめ設定しておく。N段階のNの値は、減色処理された色の数より小さく、かつ、2以上の整数である。ステップS21では、減色処理(図1のステップS3)されたコントラスト像を入力する。ステップS22では、N段階の閾値のうち、最も極端な第1の閾値を基準にコントラスト像を2値化する。ステップS23では、最も極端なコントラストの配線パターンを第1のコントラストの配線として抽出する。ステップS24からステップS28までは、K=2からK=Nに至るまで、Kの値を1ずつ増加させて繰り返すことにより、第2から第Nのコントラストの配線パターンを抽出する。ステップS25では、すでに抽出したコントラストの配線パターンをコントラスト像から除外する。ステップS26では、第Kの閾値を基準にコントラスト像を2値化する。ステップS27では、第Kのコントラストの配線パターンを抽出する。このステップS25からステップS27までの処理をK=Nに至るまで繰り返すことで、N種類のコントラストに分別された配線パターンが抽出できる。ステップS29では、N種類のコントラストに分別された配線パターン画像データを出力する。
【0056】
半導体装置の観察面の状態(平坦さ、結晶性など)、あるいは解析装置で観測する際の条件の変化によって、解析するごとに、コントラスト像全体の明度やコントラストが変化するが、上記処理によれば、コントラスト像ごとに、全体の明度やコントラストが変化していても、配線コントラスト抽出処理の閾値さえ適切に設定すれば、同じ画像処理結果が得られる。これは、外的基準無しに減色しており、また、輪郭を保持しながらノイズを除去し、また、2値化と黒色変換を繰り返して配線とその明度を認識するためである。
【0057】
(ステップS7:シフト処理の詳細)
配線コントラスト抽出処理により各配線のコントラストを抽出した画像(図9)に対して、配線の輪郭を数画素だけシフトさせることで、配線境界での明度差によるノイズを除去する。このシフト処理により配線パターンの輪郭部に生じるノイズを除去することができる。シフト処理した結果の画像を図11に示す。シフト処理した画面に出力して表示すれば、配線の明度を作業者が容易に把握することができる。
【0058】
たとえば、まず、各コントラストのパターン毎に外形を縮小する方向にシフトさせる。この処理により配線パターンの輪郭部に存在するノイズは消滅する。さらに必要に応じて、外形を縮小させた配線パターンの外形を拡大する方向にシフトさせて元の外形に戻す。このような処理によって、輪郭部に存在するノイズを消去することができる。
【0059】
(比較例:キャニーエッジ検出)
ここで、比較のため、図3に示す半導体装置の電位コントラスト像から従来の技術として説明したキャニーエッジ検出の方法によりエッジを検出した画像を図17に示す。従来のキャニーエッジ検出の対象とする一般的な画像データと比較すると半導体装置と2次電子像などの電位コントラスト像は、配線の境界が不明瞭であるため、検出されたエッジはノイズを含み、不連続であるため、理想的な図形には、なっていない。例えば、白抜き矢印で示すように、キャニーエッジ検出で配線パターンを検出しようとした場合には、不連続な箇所があるため、配線パターンの輪郭は検出できない。従って、配線パターンのコントラストも抽出することができない。
【0060】
一方、実施形態1の方法によれば、配線コントラスト抽出処理(ステップS4)において、コントラスト閾値を適切に設定することにより、特に輪郭を意識して検出しなくとも、自動的にコントラスト毎の配線パターンを抽出することができる。例えば、配線パターンにノイズが含まれる場合には、あらかじめノイズ除去処理(ステップS2)でノイズを除去しておくことにより、配線パターンのコントラストが的確に抽出できる。さらに、輪郭部分のノイズについては、配線コントラスト抽出の後にシフト処理(ステップS7)を実行することにより除去することができる。さらに、減色処理(ステップS3)により自動的に減色処理を行っているので、配線コントラスト抽出処理で、コントラスト閾値の設定、変更が容易にできる。
【0061】
[実施形態2:半導体装置のコントラスト画像処理装置の実施形態]
(コントラスト画像処理装置の全体構成)
次に、実施形態2の半導体装置のコントラスト画像処理装置について説明する。図12は、実施形態2による半導体装置のコントラスト画像処理装置1の全体ブロック図である。実施形態2のコントラスト画像処理装置1は、実施形態1のコントラスト画像処理方法の実施に好適な装置である。実施形態2のコントラスト画像処理装置1を用いることにより多数の装置やプログラムを組み合わせて煩雑な画像処理を行わなくとも実施形態1のコントラスト画像処理方法を容易に実施することができる。
【0062】
図12を用いて実施形態2の半導体装置のコントラスト画像処理装置の全体構成について説明する。画像処理部2は、SEM等の解析装置から得た半導体装置の電位コントラスト像21を入力し、画像処理を施して、抽出された配線パターンのコントラスト像や中間段階のコントラスト像、座標等のパラメータを出力データ22として出力する。設定部7は、画像処理部2の画像処理に必要なパラメータの設定や変更を作業者に入力させることができる。表示部8は、画像処理部2への画像入力データとなる電位コントラスト像21、画像処理部2で処理中の画像データ、出力データ22、作業者に設定部7への設定を入力させる設定画面等を表示する。表示部8に上記各表示のうち、どの画面を表示させるかは、設定部7への設定により作業者が選択できる。
【0063】
また、画像処理部2は、ノイズ除去部3と、減色部4と、配線コントラスト抽出部5と、シフト部6と、画像データ出力部9を備える。画像処理部2のノイズ除去部3、減色部4、配線コントラスト抽出部5、シフト部6は、それぞれ実施形態1の図1の処理フローチャートにおけるノイズ除去処理(ステップS2)、減色処理(ステップS3)、配線コントラスト抽出処理(ステップS4)、シフト処理(ステップS7)を実行する。画像データ出力部9は、入力された電位コントラスト像21又は、ノイズ除去部3、減色部4、配線コントラスト抽出部5、シフト部6が処理前、処理中、処理完了後の画像データを出力データ22として出力する。
【0064】
(コントラスト画像処理装置の設定画面)
次に、設定部7が画像処理のパラメータを設定する設定画面について説明する。図13に、設定部7の設定画面の一例を示す。図13の画面は、表示部8に表示され、作業者が画面から各種の設定を行うことにより、画像処理のパラメータを選択できる。図13において、上段の「減色数」、「明度の閾値」は、解析対象とする半導体装置のコントラスト像のコントラストに応じて日常の作業者が設定することができる。また、下段の「オプション」は、半導体装置の不良解析や電位コントラスト像の画像処理やコントラスト画像処理装置1の特性を熟知したエキスパートが設定するようにしてもよい。画面で設定できるパラメータのうち、「減色数」は、ラジオボタンにより、減色部4が実施形態1の減色処理(ステップS3)を実行する際に、何色に減色するか減色後の色数(コントラストの段階数)を「4色」、「8色」、「12色」、「16色」の中から選択できるように構成されている。ここでは、「8色」が選択されている。
【0065】
「明度の閾値」は、配線コントラスト抽出部5がステップS4の配線コントラスト抽出処理を実行する際に、各コントラストのコントラスト閾値を設定する画面である。配線コントラスト抽出処理(ステップS4)を実行する際に何段階のコントラストに分別するかは、「オプション」の「明度数」により設定される。ここでは、「オプション」の「明度数」で「3」が選択されているので、「暗」、「中間」、「明」の3つのスライドバーが表示されている。すなわち、「明度の閾値」で表示されるスライドバーの数は、「オプション」の「明度数」で設定された数に依存する。また、「明度の閾値」のバーの上段に表示されている「1」〜「8」の数字は、「減色数」で設定した減色後の色の数である。ここでは、「減色数」で「8」が設定されているのでスライドバー上段の数字には「1」〜「8」が表示されている。
【0066】
「暗」、「中間」、「明」の3つのスライドバーは、それぞれ「減色数」で設定した「8色」の8つの数字の選択枝の中から、選択できるようになっている。なお、3つのスライドバーのうち、「明」のスライドバーは、必ず「中間」のスライドバーより大きい数字を選択し、「暗」のスライドバーは、「中間」のスライドバーより小さい数字に選択するように設定される。
【0067】
「オプション」の「明度数」はすでに説明したように配線コントラスト抽出処理において、分別するコントラスト(明度)の数を設定する。
【0068】
「ノイズ除去」は、ノイズ除去部3がノイズ除去処理(ステップS2)を実行する際の、ノイズフィルタのパラメータを設定する。ここでは、ノイズフィルタとして適用可能なフィルタとして「バイラテラル」、「メディアン」、「収縮・膨張」の3種類のフィルタからラジオボタンによりノイズフィルタとして適用するフィルタが選択できるようになっている。ここでは、「バイラテラル」が選択されている。また、ノイズフィルタのパラータとして、「サイズ」、「輝度分散」、「距離分散」、フィルタの適用「回数」等が選択できる。
【0069】
「シフト量」は、シフト部6がシフト処理(ステップS7)を実行する際に配線パターンの輪郭をシフトする画素数を設定する。
【0070】
図13のような設定画面を設けることにより、例えば、判定する明度の数、ノイズ除去方法、輪郭シフト量は、予め標準値を設定しておくことで、作業者は、減色数と明度の閾値を変更するだけで、画像処理を完了させることができる。明度の閾値は、減色された明度に対して設定するため、設定可能な組み合わせが限られるため、設定が簡便となる。
【0071】
図14に別な設定画面の例を示す。図13の設定画面とほぼ同一な部分については、重複する説明を省略し、図13の設定画面と異なる部分についてのみ説明する。図14では、減色数がオプションになっており、日常の作業者は、電位コントラスト像のコントラストに合わせて、「明度の閾値」のみを設定すれば、半導体装置のコントラスト画像処理が実行できるようになっている。
【0072】
また、「オプション」の設定である「ノイズ除去」のパラメータ設定において、チェックボックスに複数のフィルタが重複して選択できるようになっている。ラジオボタンによりノイズフィルタ及びノイズフィルタのパラメータを設定して「Add」ボタンをクリックすると左側のウィンドウにフィルタ名が追加される。また、左側のウィンドウに表示されているフィルタを選択するとそのパラメータが右側の表示欄に表示される。さらに、左側のウィンドウに表示されているフィルタを選択して「Clear」ボタンをクリックするとそのノイズフィルタはクリアされる。また、左側のウィンドにおいて、フィルタ名を上下にドラッグすることによりフィルタの適用順番を変えられるようにしてもよい。その他は、図13の設定画面と同じである。
【0073】
図15は、さらに別な「明度の閾値」の設定画面である。「明度の閾値」の設定画面は、半導体装置の電位コントラスト像のコントラストに依存し、作業者にとって、最も設定の変更、調整が必要になるパラメータである。図15の設定画面では、減色処理(ステップS3)で得られた減色コントラスト像のヒストグラムに基づいて、「明度の閾値」が設定可能な画面となっている。
【0074】
なお、上記図13〜図15は、好適な設定画面の一例であり、必要に応じて各画像処理のパラメータを設定部7によりデフォルト設定から設定・変更が可能であり、作業者が作業しやすい設定画面であれば、図13〜図15以外の設定画面であってもよいことは言うまでもない。
【0075】
以上、説明したように、半導体装置のコントラスト画像処理装置1では、SEM等の解析装置で得られる半導体装置のコントラスト像、画像処理中および画像処理結果の画像を表示部8に表示する。また、処理結果として得られる配線の輪郭座標とその明度を表示部8に表示する。また、画像処理前、処理中、処理後のいずれかの画像と、設計データのレイアウトと重ね合わせて表示部8に表示するようにしてもよい。また、ノイズ除去処理(ステップS2)で使用するパラメータ、減色処理(ステップS3)で指定する減色数、配線コントラスト抽出処理(ステップS4)で使用する閾値、シフト処理(ステップS7)で使用する画素のシフト数、等の画像処理のパラメータを設定する画面を持つ。また、画像処理結果の画像および各パラメータ、配線の輪郭座標とその明度を出力データ22(図12)として保存することもできる。
【0076】
これにより、画像処理結果を確認しながら、画像処理のパラメータを適宜変更することができる。また、画像内の輪郭の座標を取り出すことで、設計データなどと座標を照合することができる。
【0077】
なお、上記半導体装置のコントラスト画像処理装置1の各部は、画像処理専用プロセッサ等の専用のハードウェアにより構成されていてもよいし、汎用的なEWSやパーソナルコンピュータ等のプロセットと画像処理プログラムにより構成されていてもよい。また、コントラスト画像処理装置1は、遠隔地にいる作業者とインターネットやイントラネットにより接続されていて、作業者は遠隔地の端末から設定部7にデータ入力し、コントラスト画像処理装置1は遠隔地にいる作業者の端末に画像データを送信し、端末に画像データを表示させてもよい。その場合、遠隔地の端末は、設定入力と画像表示ができる端末であれば、汎用の端末でよく、端末側では特に専用のハードウェアやソフトウェアは不要である。
【0078】
[実施形態3:半導体装置のコントラスト画像処理プログラムの実施形態]
実施形態3は、EWSやパーソナルコンピュータ等の汎用的なプロセッサを実施形態2のコントラスト画像処理装置として機能させるコンピュータプログラムの実施形態である。実施形態2のコントラスト画像処理装置は、すでに実施形態2で説明したように実施形態1の半導体装置のコントラスト画像処理方法を実行できるので、実施形態3のプログラムを用いれば、EWS、パーソナルコンピュータ等の汎用的なコンピュータに実施形態1の半導体装置のコントラスト画像処理方法を実行させることができる。
【0079】
図16は、実施形態3による半導体装置のコントラスト画像処理プログラムの実行に用いることのできるコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。図16を参照して実施形態3による半導体装置のコントラスト画像処理プログラムの実行に用いることのできるコンピュータ30のハードウェア構成について説明する。
【0080】
記憶部34は、メモリやハードディスク装置等により構成され、コントラスト画像処理プログラム36やSEMなどの解析装置から得た画像処理前のコントラスト像や画像処理途中の画像、処理が終了しコントラスト毎の配線パターンを抽出した画像等のコントラスト画像35を格納する。また、記憶部34は、コントラスト画像35やコントラスト画像処理プログラム36の他、設定画面で設定した各処理のパラメータや、配線パターンの輪郭座標やコントラスト、半導体装置のレイアウトパターン等の設計データについても記憶することができるようにしてもよい。
【0081】
コントラスト画像35を格納する記憶部34の領域は、解析装置から入力したコントラスト像(図1のステップS1で入力した図12の電位コントラスト像21に相当)、ノイズ除去処理(図1のステップS2)によりノイズを除去したコントラスト像、減色処理(ステップS3)により減色したコントラスト像、配線コントラスト抽出処理(ステップS4)により抽出した配線パターン像(コントラスト像)、シフト処理(ステップS7)により輪郭部のノイズを除去した配線パターン像(コントラスト像)をそれぞれ、別な領域に格納し、コントラスト画像処理が終了するまで保存することが望ましい。また、上記各画像データを含むコントラスト画像処理で使用するデータは、すべてハードディスク、CD、DVD、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶手段に保存することができるようにすることが望ましい。後からコントラスト画像処理の処理経過を確認したり、途中からコントラスト画像処理をやり直したりできるようにするためである。
【0082】
入力部32は、キーボードやマウス等の入力装置を備え、設定画面において作業者が設定した各処理のパラメータを入力する。出力部33は、コントラスト像35の他、処理結果として得られる配線の輪郭座標とそのコントラスト、コントラスト像と重ねて表示する
レイアウトの設計データを表示データとして出力する。また、コントラスト像35や処理結果として得られる配線の輪郭座標のそのコントラストのデータは、DVD、CD等の外部記憶装置等に出力データとして出力させることができる。また、CPU31は、記憶部34に格納されたコントラスト画像処理プログラム36を実行し、コントラスト画像処理を実行する。なお、CPU31、入力部32、出力部33、記憶部34は、バス37により相互に接続されている。なお、コントラスト画像処理プログラム36は、CD、DVD、ブルーレイディスク、フラッシュメモリなどの記憶媒体を介してコンピュータ30の記憶部34にインストールすることができる。また、バス37がインターネット、イントラネット等の回線に接続されていれば、オンラインでコントラスト画像処理プログラム36をコンピュータ30にインストールすることもできる。
【0083】
以上説明したように実施形態3の半導体装置のコントラスト画像処理プログラム36は、コンピュータ30の記憶部34にコントラスト画像処理プログラム36をインストールすることにより、コンピュータ30を実施形態2の半導体装置のコントラスト画像処理装置1として機能させることができる。また、コントラスト画像処理プログラムをコンピュータ30に実行させることにより、コンピュータ30により図1に示す実施形態1の半導体装置のコントラスト画像処理方法を実行させることができる。
【0084】
なお、以上説明した実施形態1乃至3の説明において、コントラスト像は、SEM、FIBで観察される電位コントラスト像に限ったものではない。LSIに対して、電気信号、赤外線、可視光、紫外線、レーザー、X線、電子、イオン、超音波、振動などを入力し、電気信号、赤外線、可視光、紫外線、レーザー、X線、電子、イオン、超音波、振動などを検出した画像であれば良い。
【0085】
また、解析対象とする半導体装置50は、ウエハ状態から個々のチップとして切り出されたものに限らず、ウエハ状態のものでも良い。
【0086】
以上説明した本発明の実施形態1乃至3をまとめると以下の通りである。なお、以下のまとめにおいて、引用する図面及び図面の符号は実施形態の一例として示すものであり、それにより本発明の範囲を制限するものではない。
【0087】
本発明の一実施形態による半導体装置のコントラスト画像処理方法は、一例を図1に示すように、(例えばSEM等の)解析装置から得られた半導体装置50のコントラスト像(一例を図3に示す)を当該コントラスト像のコントラストに合わせて自動的に減色する減色処理(ステップS3)と、減色されたコントラスト像に含まれる画素をあらかじめ設定したコントラスト閾値(一例を上げれば、図13の「明度の閾値」のスライドスイッチで設定した「暗」、「中間」、「明」の閾値)を基準に分類し、複数のコントラストに分別された配線パターンを抽出する配線コントラスト抽出処理(ステップS4)と、配線パターンの輪郭部分に含まれるノイズを輪郭部分のシフトにより除去するシフト処理(ステップS7)と、を含み、解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像(図3)に含まれる配線パターンを所定のコントラストに区分して抽出する(処理結果の一例を図11に示す)。
【0088】
好ましくは、配線コントラスト抽出処理(ステップS4)は、一例を図10に示すように、(1)あらかじめ設定した第1のコントラスト閾値を基準に減色されたコントラスト像を2値化して第1のコントラストの配線パターンを抽出するステップ(S12)と、(2)コントラスト閾値の数をN(Nは2以上の整数)としたときに、減色されたコントラスト像からすでに抽出した配線パターンを除外した後のコントラスト像に対してN個のコントラスト閾値のうち第Kのコントラスト閾値を基準に2値化して第Kのコントラストの配線パターンを抽出する処理をK=2からK=Nに至るまで、Kの値を1ずつ増加させて繰り返すステップ(S14〜S18)と、を備え、N種類のコントラストに分別された配線パターンを抽出する。例えば、あらかじめ設定したNのコントラスト閾値について、最も極端な閾値から順にN種類のコントラストに分別させた配線パターンを抽出することができる。
【0089】
さらに、所望のコントラスト毎の配線パターンが得られなかった場合には、配線コントラスト抽出処理において、閾値を変えてコントラスト毎の配線パターンの抽出をやり直してもよい。すなわち、図1の処理フローチャートにおいて、ステップS4以降の処理で処理した結果を作業者が判断して所望のコントラスト毎の配線パターンが得られなかった場合は、図13等の「明度の閾値」を設定するスライドスイッチを作業者が操作して閾値を変えて配線コントラスト抽出処理(図1のステップS4)をやり直すことができる。また、必要により、(図1に示す各ステップの処理のうち)任意の処理の任意の段階(たとえば、複数回ノイズフィルタを適用する場合の1回ごとの処理の段階や配線コントラスト抽出処理において、一つの閾値毎に配線パターンの抽出を進める段階)の処理画像を表示し、(作業者が)確認しつつ、画像処理を進めるものであってもよい。
【0090】
また、減色処理(図1のステップS3)は、データ・クラスタリング法を用いて外的基準なしに減色することが好ましい。すなわち、減色処理では、減色した後の色の数については、あらかじめ決めておく必要があるが、閾値についてあらかじめ設定する必要はない。コントラスト像のコントラストに合わせて自動的に設定した色の数に合わせて減色することが望ましい。データ・クラスタリング法によれば、外的基準なしに、コントラスト像の設定した色の数に減色される。減色された後の各色の色(コントラスト)はコントラスト像のコントラスト分布に合わせて自動的に設定される。
【0091】
減色処理の前に、コントラスト像に含まれるノイズをあらかじめ除去するノイズ除去処理(ステップS2)をさらに含むことが好ましい。もし、コントラスト像にノイズが含まれている場合には、あらかじめノイズを除去しておくことが好ましい。
【0092】
ノイズ除去処理は、複数のノイズフィルタの中から選択したノイズフィルタを用いてノイズ除去を行うことが好ましい。コントラスト像の含まれるノイズによってノイズを除去するために最適なフィルタは異なるからである。
【0093】
ノイズ除去処理は、それぞれパラメータについて任意に設定可能なバイラテラルフィルタ、メディアンフィルタ、収縮・膨張フィルタを含む複数のフィルタの中から任意の数のフィルタを任意の順番に任意の回数選択してノイズ除去を行うことが好ましい。複合的なノイズについても除去することができる。
【0094】
図12に一例を示すように、一実施形態による半導体装置のコントラスト画像処理装置1は、(SEM等の)解析装置から得られた半導体装置50のコントラスト像を入力し、入力したコントラスト像のコントラスト分布に基づいて自動的に減色し、減色したコントラスト像を出力する減色部4と、減色したコントラスト像を入力し、減色したコントラスト像に含まれる画素をあらかじめ設定されたコントラスト閾値を基準に分類し、複数のコントラストに分別された配線パターン像を抽出する配線コントラスト抽出部5と、配線コントラスト抽出部5が抽出した配線パターン像を入力し、前記配線パターン像に含まれる配線の輪郭部分のノイズを前記輪郭部分のシフトにより除去するシフト部6と、シフト部6により輪郭部分のノイズが除去された配線パターン像を画像データとして出力する画像データ出力部9と、を備える。
【0095】
また、配線コントラスト抽出部5は、コントラスト閾値の数をN(Nは2以上の整数)としたときに、最初に第1のコントラスト閾値を基準に減色されたコントラスト像を2値化して第1のコントラストの配線パターンを抽出する処理を実行し、第1のコントラストの配線パターンの抽出に引き続いて、減色されたコントラスト像からすでに抽出した配線パターンを除外した後のコントラスト像に対してN個の閾値のうち第Kのコントラスト閾値を基準に2値化して第Kのコントラストの配線パターンを抽出する処理をK=2からK=Nに至るまで、Kの値を1ずつ増加して繰り返して実行し、N種類のコントラストに分別された配線パターン像を抽出するものであってもよい。上記構成によれば、配線コントラスト抽出部5は、分別しようとする配線パターンの分類の数Nが2以上の任意の整数である場合に適用することができる。
【0096】
配線コントラスト抽出部5が使用するコントラスト閾値の設定を含む設定画面(例えば、図13〜図15等)を表示させて、コントラスト閾値を含む画像処理のパラメータの変更を作業者に入力させることができる設定部7をさらに含み、画像データ出力部9は、入力した半導体装置のコントラスト像21からシフト部6が輪郭部分のノイズが除去された配線パターン像を得るまで任意の段階の処理途中の画像データを表示データとして出力し、作業者が確認できるように構成されている。設定部7からの設定により、作業者が任意の段階の処理画像を表示することができれば、任意の処理からパラメータ等を変更して処理をやり直すことができる。特に配線コントラスト抽出部5の配線コントラスト抽出処理では、処理対象となるコントラスト像のコントラスト等により、閾値を変更させる必要が多い。従って画像を確認しながら、閾値を変更させることもできるものであってもよい。
【0097】
減色部4は、データ・クラスタリング法を用いて外的基準なしに減色することが好ましい。減色部4の減色処理は、配線コントラスト抽出処理の前処理であるので、外的基準なしに分類されるデータ・クラスタリング法を用いることにより、作業者は、減色処理に関しては、閾値の設定に煩わされることがなく、コントラスト像のコントラストに合わせて自動的に減色後の色(コントラスト、明度)が設定され、分類される。
【0098】
入力した半導体装置のコントラスト像に含まれるノイズを除去するノイズ除去部3をさらに備え、減色部4は、ノイズ除去部3によりノイズが除去されたコントラスト像を入力することが好ましい。コントラスト像にノイズが含まれる場合は、あらかじめノイズを除去しておくことが望ましい。
【0099】
ノイズ除去部3は、複数種類のノイズフィルタを備え、複数種類のノイズフィルタから選択したノイズフィルタを用いてノイズ除去を行うことができるように構成されていることが好ましい。例えば、設定部7により図13又は図14のような設定画面を表示させてノイズフィルタを選択できるようにしてもよい。
【0100】
入力した半導体装置のコントラスト像21に含まれるノイズを除去するノイズ除去部3をさらに備え、ノイズ除去部3は、バイラテラルフィルタ、メディアンフィルタ、収縮・膨張フィルタを含む複数種類のノイズフィルタを備え、設定部7は、複数種類のノイズフィルタの中から任意の種類のノイズフィルタに任意のパラメータを設定して任意の順番に任意の回数選択してノイズ除去を行うことができるように構成され、減色部4は、ノイズ除去部3によりノイズが除去されたコントラスト像を入力するようにすることが好ましい。設定部7は、図14のような設定画面を表示させて、複数種類のノイズフィルタの中から任意の種類のノイズフィルタを任意のパラメータを設定して任意の順番に任意の回数選択してノイズ除去を行うことができるようにしてもよい。
【0101】
また、本発明の一実施形態の半導体装置のコントラスト画像処理プログラムは、図16のような構成のコンピュータに、解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像を入力し、入力したコントラスト像のコントラスト分布に基づいて自動的に減色し、減色したコントラスト像を出力する減色処理と、減色したコントラスト像を入力し、減色したコントラスト像に含まれる画素をあらかじめ設定されたコントラスト閾値を基準に分類し、複数のコントラストに分別された配線パターン像を抽出する配線コントラスト抽出処理と、配線コントラスト抽出処理により抽出した配線パターン像を入力し、配線パターン像に含まれる配線の輪郭部分のノイズを輪郭部分のシフトにより除去するシフト処理と、シフト処理により輪郭部分のノイズが除去された配線パターン像を画像データとして出力する画像データ出力処理と、を実行させることができる。すなわち、図16のような汎用的な構成のコンピュータ30にコントラスト画像処理プログラム36をインストールすることにより、コンピュータ30を図12に示す半導体装置のコントラスト画像処理装置1として機能させ、コンピュータ30に図1に示す半導体装置のコントラスト画像処理方法を実行させることができる。
【0102】
なお、本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0103】
1:半導体装置のコントラスト画像処理装置
2:画像処理部
3:ノイズ除去部
4:減色部
5:配線コントラスト抽出部
6:シフト部
7:設定部
8:表示部
9:画像データ出力部
21:電位コントラスト像
22:出力データ
30:コンピュータ
31:CPU
32:入力部
33:出力部
34:記憶部
35:コントラスト画像
36:画像処理プログラム
37:バス
50:半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像を当該コントラスト像のコントラストに合わせて自動的に減色する減色処理と、
前記減色されたコントラスト像に含まれる画素をあらかじめ設定したコントラスト閾値を基準に分類し、複数のコントラストに分別された配線パターンを抽出する配線コントラスト抽出処理と、
前記配線パターンの輪郭部分に含まれるノイズを前記輪郭部分のシフトにより除去するシフト処理と、
を含み、解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像に含まれる配線パターンを所定のコントラストに区分して抽出する半導体装置のコントラスト画像処理方法。
【請求項2】
前記配線コントラスト抽出処理は、
(1)あらかじめ設定した第1のコントラスト閾値を基準に前記減色されたコントラスト像を2値化して第1のコントラストの配線パターンを抽出するステップと、
(2)前記コントラスト閾値の数をN(Nは2以上の整数)としたときに、前記減色されたコントラスト像からすでに抽出した配線パターンを除外した後のコントラスト像に対して前記N個のコントラスト閾値のうち第Kのコントラスト閾値を基準に2値化して第Kのコントラストの配線パターンを抽出する処理をK=2からK=Nに至るまで、Kの値を1ずつ増加させて繰り返すステップと、
を備え、N種類のコントラストに分別された配線パターンを抽出することを特徴とする請求項1記載の半導体装置のコントラスト画像処理方法。
【請求項3】
所望のコントラスト毎の配線パターンが得られなかった場合には、前記配線コントラスト抽出処理において、閾値を変えてコントラスト毎の配線パターンの抽出をやり直すことを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置のコントラスト画像処理方法。
【請求項4】
前記任意の処理の任意の段階の処理画像を表示し、確認しつつ、画像処理を進めることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の半導体装置のコントラスト画像処理方法。
【請求項5】
前記減色処理は、データ・クラスタリング法を用いて外的基準なしに減色することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の半導体装置のコントラスト画像処理方法。
【請求項6】
前記減色処理の前に、コントラスト像に含まれるノイズをあらかじめ除去するノイズ除去処理をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の半導体装置のコントラスト画像処理方法。
【請求項7】
前記ノイズ除去処理は、複数のノイズフィルタの中から選択したノイズフィルタを用いてノイズ除去を行うことを特徴とする請求項6記載の半導体装置のコントラスト画像処理方法。
【請求項8】
前記ノイズ除去処理は、それぞれパラメータについて任意に設定可能なバイラテラルフィルタ、メディアンフィルタ、収縮・膨張フィルタを含む複数のフィルタの中から任意の数のフィルタを任意の順番に任意の回数選択してノイズ除去を行うことを特徴とする請求項6又は7記載の半導体装置のコントラスト画像処理方法。
【請求項9】
解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像を入力し、入力したコントラスト像のコントラスト分布に基づいて自動的に減色し、減色したコントラスト像を出力する減色部と、
前記減色したコントラスト像を入力し、前記減色したコントラスト像に含まれる画素をあらかじめ設定されたコントラスト閾値を基準に分類し、複数のコントラストに分別された配線パターン像を抽出する配線コントラスト抽出部と、
前記配線コントラスト抽出部が抽出した配線パターン像を入力し、前記配線パターン像に含まれる配線の輪郭部分のノイズを前記輪郭部分のシフトにより除去するシフト部と、
前記シフト部により前記輪郭部分のノイズが除去された配線パターン像を画像データとして出力する画像データ出力部と、
を備えることを特徴とする半導体装置のコントラスト画像処理装置。
【請求項10】
前記配線コントラスト抽出部は、
前記コントラスト閾値の数をN(Nは2以上の整数)としたときに、
最初に第1のコントラスト閾値を基準に前記減色されたコントラスト像を2値化して第1のコントラストの配線パターンを抽出する処理を実行し、
前記第1のコントラストの配線パターンの抽出に引き続いて、前記減色されたコントラスト像からすでに抽出した配線パターンを除外した後のコントラスト像に対して前記N個の閾値のうち第Kのコントラスト閾値を基準に2値化して第Kのコントラストの配線パターンを抽出する処理をK=2からK=Nに至るまで、Kの値を1ずつ増加して繰り返して実行し、N種類のコントラストに分別された配線パターン像を抽出することを特徴とする請求項9記載の半導体装置のコントラスト画像処理装置。
【請求項11】
前記配線コントラスト抽出部が使用する前記コントラスト閾値の設定を含む設定画面を表示させて、前記コントラスト閾値を含む画像処理のパラメータの変更を作業者に入力させることができる設定部をさらに含み、
前記画像データ出力部は、
前記入力した半導体装置のコントラスト像から前記シフト部が輪郭部分のノイズが除去された配線パターン像を得るまで任意の段階の処理途中の画像データを表示データとして出力し、前記作業者が確認できるように構成されていることを特徴とする請求項9又は10記載の半導体装置のコントラスト画像処理装置。
【請求項12】
前記減色部は、データ・クラスタリング法を用いて外的基準なしに減色することを特徴とする請求項9乃至11いずれか1項記載の半導体装置のコントラスト画像処理装置。
【請求項13】
前記入力した半導体装置のコントラスト像に含まれるノイズを除去するノイズ除去部をさらに備え、前記減色部は、前記ノイズ除去部によりノイズが除去されたコントラスト像を入力することを特徴とする請求項9乃至12いずれか1項記載の半導体装置のコントラスト画像処理装置。
【請求項14】
前記ノイズ除去部は、複数種類のノイズフィルタを備え、前記複数種類のノイズフィルタから選択したノイズフィルタを用いてノイズ除去を行うことができるように構成されていることを特徴とする請求項13記載の半導体装置のコントラスト画像処理装置。
【請求項15】
前記入力した半導体装置のコントラスト像に含まれるノイズを除去するノイズ除去部をさらに備え、
前記ノイズ除去部は、バイラテラルフィルタ、メディアンフィルタ、収縮・膨張フィルタを含む複数種類のノイズフィルタを備え、
前記設定部は、前記複数種類のノイズフィルタの中から任意の種類のノイズフィルタを任意のパラメータを設定して任意の順番に任意の回数選択してノイズ除去を行うことができるように構成され、
前記減色部は、前記ノイズ除去部によりノイズが除去されたコントラスト像を入力することを特徴とする請求項11記載の半導体装置のコントラスト画像処理装置。
【請求項16】
解析装置から得られた半導体装置のコントラスト像を入力し、入力したコントラスト像のコントラスト分布に基づいて自動的に減色し、減色したコントラスト像を出力する減色処理と、
前記減色したコントラスト像を入力し、前記減色したコントラスト像に含まれる画素をあらかじめ設定されたコントラスト閾値を基準に分類し、複数のコントラストに分別された配線パターン像を抽出する配線コントラスト抽出処理と、
前記配線コントラスト抽出処理により抽出した配線パターン像を入力し、前記配線パターン像に含まれる配線の輪郭部分のノイズを前記輪郭部分のシフトにより除去するシフト処理と、
前記シフト処理により前記輪郭部分のノイズが除去された配線パターン像を画像データとして出力する画像データ出力処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする半導体装置のコントラスト画像処理プログラム。
【請求項17】
前記配線コントラスト抽出処理は、
前記コントラスト閾値の数をN(Nは2以上の整数)としたときに、
最初に第1のコントラスト閾値を基準に前記減色されたコントラスト像を2値化して第1のコントラストの配線パターンを抽出する処理を実行し、
前記第1のコントラストの配線パターンの抽出に引き続いて、前記減色されたコントラスト像からすでに抽出した配線パターンを除外した後のコントラスト像に対して前記N個の閾値のうち第Kのコントラスト閾値を基準に2値化して第Kのコントラストの配線パターンを抽出する処理をK=2からK=Nに至るまで、Kの値を1ずつ増加して繰り返して実行して、N種類のコントラストに分別された配線パターン像を抽出することを特徴とする請求項16記載の半導体装置のコントラスト画像処理プログラム。
【請求項18】
前記配線コントラスト抽出処理で使用するコントラスト閾値の設定を含む設定画面を表示して前記コントラスト閾値を含む画像処理のパラメータの変更を作業者が入力することができる設定処理をさらに含み、
前記画像データ出力処理は、
前記入力した半導体装置のコントラスト像から前記シフト部が輪郭部分のノイズが除去された配線パターン像を得るまで任意の段階の処理途中の画像データを表示データとして出力し、前記作業者が確認できるようにする処理を含むことを特徴とする請求項16又は17記載の半導体装置のコントラスト画像処理プログラム。
【請求項19】
前記入力した半導体装置のコントラスト像に含まれるノイズを除去するノイズ除去処理をさらに含み、前記減色処理は、前記ノイズ除去処理によりノイズが除去されたコントラスト像を入力することを特徴とする請求項16乃至18いずれか1項記載の半導体装置のコントラスト画像処理プログラム。
【請求項20】
前記入力した半導体装置のコントラスト像に含まれるノイズを除去するノイズ除去処理をさらに含み、
前記ノイズ除去処理は、バイラテラルフィルタ、メディアンフィルタ、収縮・膨張フィルタを含む複数種類のノイズフィルタの中から任意の種類のノイズフィルタを任意のパラメータで任意の順番に任意の回数選択してノイズ除去を行うことができるように構成され、
前記設定処理は、ノイズフィルタの種類、順番、適用回数、フィルタのパラメータを設定する画面を表示し、入力されたデータに基づいて、前記ノイズ除去処理を行い、
前記減色処理は、前記ノイズ除去処理によりノイズが除去されたコントラスト像を入力することを特徴とする請求項18記載の半導体装置のコントラスト画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−68162(P2012−68162A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214228(P2010−214228)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】