説明

半導体装置の製造方法、電気光学装置、電子機器

【課題】キャリアの移動度が高く、特性ばらつきが少ない半導体装置の製造方法、これを適用した半導体装置を備えた電気光学装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】本適用例の半導体装置の製造方法は、基板上に第1多結晶質シリコン膜としての第1半導体層を形成する工程と、第1半導体層上に非結晶質シリコン膜を形成して、該非結晶質シリコン膜に対して、不活性ガス雰囲気中で第1半導体層上における該非結晶質シリコン膜の結晶核発生速度よりも結晶成長速度の方が速くなる温度で熱処理を施して該非結晶質シリコン膜を結晶化して第2多結晶質シリコン膜としての第2半導体層を形成する工程と、第1半導体層および第2半導体層をパターニングして半導体層を形成するエッチング工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体層として多結晶質シリコン膜を用いる半導体装置としての薄膜トランジスターが、例えば電気光学装置としての液晶表示装置の画素を駆動制御するためのスイッチング素子として用いられている。多結晶質シリコン膜は、結晶方位が定まっておらず、結晶欠陥が発生し易いので、電子や正孔などのキャリアの移動度に影響を与え、薄膜トランジスターの電気特性をばらつかせる要因となっていた。
【0003】
このような課題を改善するため、特許文献1には、基板の表面に再結晶化初期の結晶核発生密度が異なる領域を設け、その上に非結晶質シリコン膜を堆積したのち、熱処理を施すことで、非結晶質シリコン膜を多結晶化すると共に結晶粒の成長方向を揃えて粒径を大きくする薄膜半導体装置の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、基板上に形成された非晶質珪素膜に対して選択的に金属元素(例えばニッケル元素)を導入し、導入された領域から基板に平行な方向に結晶成長を行わせる半導体装置作製方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、多結晶質シリコン膜でなく、結晶方位が安定した単結晶シリコン層を貼り合わせたSOI(Silicon On Insulator)基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−107208号公報
【特許文献2】特開2001−57339号公報
【特許文献3】特開平10−293320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の薄膜半導体装置の製造方法は、結晶核発生密度が異なる領域、具体的には、基板表面を覆うシリコン酸化膜に凹部を形成してから非結晶質シリコン膜を堆積させている。そして、凹部の側壁から再結晶化を開始させて基板の主面に沿った方向に大粒径化された多結晶膜を作るとしている。したがって、半導体層を形成しようとする領域に予め凹部を形成しておく必要があるため、前述した液晶表示装置に適用する場合には多くの画素に対応させて精度よく凹部を形成しなければならないという課題がある。
上記特許文献2の半導体装置作製方法では、非晶質珪素膜に金属元素を導入して結晶成長させた後に、例えば800℃以上の高温処理によって熱酸化のゲート絶縁膜を形成する場合には、導入された金属元素が汚染源となるおそれがあり、半導体層とゲート絶縁膜との良好な界面を形成することが困難であるという課題がある。
また、上記特許文献3のSOI基板では、結晶性が優れた単結晶シリコン層を用いる点で、移動度が高く、特性ばらつきが少ない半導体素子を形成することが可能であるものの、基板の製造工程が複雑で生産性を高めることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の半導体装置の製造方法は、基板上に第1多結晶質シリコン膜を形成する第1工程と、前記第1多結晶質シリコン膜上に非結晶質シリコン膜を形成する第2工程と、前記非結晶質シリコン膜に対して、不活性ガス雰囲気中にて前記第1多結晶質シリコン膜上における前記非結晶質シリコン膜の結晶核発生速度よりも結晶成長速度の方が速くなる温度で熱処理を施して前記非結晶質シリコン膜を結晶化して第2多結晶質シリコン膜とする第3工程と、前記第1および第2多結晶質シリコン膜をパターニングして半導体層を形成する第4工程と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この方法によれば、基板上において第1多結晶質シリコン膜上に成膜された非結晶質シリコン膜に不活性ガス雰囲気中で熱処理を施すことにより、第1多結晶質シリコン膜上で結晶成長を促す。結晶成長速度は、第1多結晶質シリコン膜における結晶面方位によって異なり、結晶成長速度が速い結晶面方位に結晶性が揃い且つ粒径が第1多結晶質シリコン膜よりも大きな第2多結晶質シリコン膜を形成することができる。半導体層におけるキャリアの移動度は、結晶性が揃って粒径が大きな第2多結晶質シリコン膜に依存するので、高い移動度を有すると共に特性ばらつきが低減された半導体装置を製造することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例の半導体装置の製造方法において、前記第1工程は、前記基板上に第1非結晶質シリコン膜を形成して、第1の温度で熱処理を施すことにより前記第1多結晶質シリコン膜を形成し、前記第2工程は、前記第1多結晶質シリコン膜上に第2非結晶質シリコン膜を形成し、前記第3工程は、前記第2非結晶質シリコン膜に対して、不活性ガス雰囲気中にて前記第1多結晶質シリコン膜上における前記第2非結晶質シリコン膜の結晶核発生速度よりも結晶成長速度の方が速くなる第2の温度で熱処理を施して前記第2非結晶質シリコン膜を結晶化して前記第2多結晶質シリコン膜とし、前記第1の温度は、前記第2の温度よりも高いことを特徴とする。
この方法によれば、結晶成長よりも結晶核発生が優先する第1の温度で第1非結晶質シリコン膜を熱処理して効率よく第1多結晶質シリコン膜を形成し、結晶核発生よりも結晶成長が優先する第2の温度で第2非結晶質シリコン膜を熱処理して、結晶性が揃い粒径が大きな第2多結晶質シリコン膜を効率よく形成することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例の半導体装置の製造方法において、前記基板が石英基板であって、前記第1の温度が600℃以上700℃以下であり、前記第2の温度が450℃以上600℃未満であることを特徴とする。
この方法によれば、石英基板上に高い移動度を有すると共に特性ばらつきが低減された半導体装置を効率よく製造することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例の半導体装置の製造方法において、前記基板上における前記第1多結晶質シリコン膜の膜厚t1が20nm以上であり、前記半導体装置における前記半導体層のチャネル長をL(nm)とするとき、前記第2多結晶質シリコン膜の膜厚t2は、20nm≦t2<L/7−t1を満たすことが好ましい。
この方法によれば、第1多結晶質シリコン膜における結晶性を確保しつつ、できあがった半導体層の膜厚t(=t1+t2)をチャネル長Lの1/7以下とすることで半導体層の耐圧を確保して、安定した動作特性が得られる半導体装置を製造することができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例の半導体装置の製造方法において、不活性ガス雰囲気中で前記第1多結晶質シリコン膜を前記第1の温度よりも高い第3の温度で熱処理する工程を含むとしてもよい。
この方法によれば、第1多結晶質シリコン膜の結晶性を高めることができる。
【0014】
[適用例6]上記適用例の半導体装置の製造方法において、不活性ガス雰囲気中で前記第2多結晶質シリコン膜を前記第1の温度よりも高い第3の温度で熱処理する工程を含むとしてもよい。
この方法によれば、第2多結晶質シリコン膜の結晶性をより高めることができる。
【0015】
[適用例7]上記適用例の半導体装置の製造方法において、不活性ガス雰囲気中で前記第2多結晶質シリコン膜を熱処理する工程は、前記半導体層を覆う絶縁膜を形成した後に施すことが好ましい。
この方法によれば、半導体層と絶縁膜との界面を良好な状態として、絶縁膜の耐圧を向上させることができる。
【0016】
[適用例8]上記適用例の半導体装置の製造方法において、前記基板が石英基板であって、前記第3の温度が1000℃以上1100℃以下であることが好ましい。
この方法によれば、石英基板に余計な熱ひずみを発生させずに、第1多結晶質シリコン膜および第2多結晶質シリコン膜における結晶性を高めることができる。
【0017】
[適用例9]上記適用例の半導体装置の製造方法において、前記第2多結晶質シリコン膜に酸素ガスを処理ガスとする酸素プラズマ処理を施す工程と、前記酸素プラズマ処理によって前記第2多結晶質シリコン膜の表面に形成された酸化物を除去する工程とを含むことが好ましい。
この方法によれば、酸素プラズマ処理によって第2多結晶質シリコン膜に結晶欠陥部分があってもこれを不活性化することができる。また、酸素プラズマ処理によって発生した酸化物を取り除くことによって、後の工程における半導体層のパターニングや絶縁膜の形成を歩留まりよく行うことができる。
【0018】
[適用例10]本適用例の電気光学装置は、上記適用例の半導体装置の製造方法を用いて製造された半導体装置を画素のスイッチング素子として用いていることを特徴とする。
この構成によれば、キャリアの移動度が高く、特性ばらつきが少ない半導体装置を備えているので、優れた電気光学特性を有する電気光学装置を提供できる。
【0019】
[適用例11]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、優れた電気光学特性を有する電気光学装置を備えているので、高性能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】薄膜トランジスターの製造方法を示すフローチャート。
【図2】(a)〜(g)は薄膜トランジスターの製造方法を示す概略断面図。
【図3】(h)〜(k)は薄膜トランジスターの製造方法を示す概略断面図。
【図4】(a)〜(c)は結晶化における固相エピタキシャル成長を示す概略図。
【図5】結晶成長速度と結晶面方位および熱処理温度との関係を示すグラフ。
【図6】液晶装置の構成を示す概略平面図。
【図7】図6のA−A線で切った液晶装置の構造を示す概略断面図。
【図8】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図9】投射型表示装置(液晶プロジェクター)の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0022】
なお、以下の形態において、「○○上に」と記載された場合、○○の上に接するように配置される場合、または○○の上に他の構成物を介して配置される場合、または○○の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0023】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の半導体装置の製造方法について、薄膜トランジスター(TFT;Thin Film Transistor)の製造方法を例に挙げ、図1〜図5を参照して説明する。図1は薄膜トランジスターの製造方法を示すフローチャート、図2(a)〜(g)および図3(h)〜(k)は薄膜トランジスターの製造方法を示す概略断面図、図4(a)〜(c)は結晶化における固相エピタキシャル成長を示す概略図、図5は結晶成長速度と結晶面方位および熱処理温度との関係を示すグラフである。
【0024】
本実施形態では、半導体装置としてのトップゲート構造の薄膜トランジスターの製造方法を例に説明する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の薄膜トランジスター(TFT)の製造方法は、半導体層が設けられる基板の表面に絶縁膜を形成する工程(ステップS1)と、基板上に第1多結晶質シリコン膜としての第1半導体層を形成する工程(ステップS2)と、第1半導体層を熱処理する第1熱処理工程(ステップS3)と、第1半導体層上に第2多結晶質シリコン膜としての第2半導体層を形成する工程(ステップS4)と、第2半導体層に酸素プラズマ処理を施す工程(ステップS5)と、第1半導体層と第2半導体層とを同時にパターニングして半導体層を形成するエッチング工程(ステップS6)と、半導体層を覆うゲート絶縁膜を形成する工程(ステップS7)と、半導体層とゲート絶縁膜とに熱処理を施す第2熱処理工程(ステップS8)と、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程(ステップS9)と、半導体層に不純物を注入する不純物注入工程(ステップS10)と、半導体層とゲート電極とを覆う層間絶縁膜を形成する工程(ステップS11)と、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程(ステップS12)とを有する。
【0026】
ステップS1の絶縁膜形成工程では、図2(a)に示すように、支持基板10の一方の表面を覆うように絶縁膜10aを形成する。本実施形態では、後述する半導体層やゲート絶縁膜などを形成する工程で高温プロセスを用いることから耐熱的な物理特性(熱膨張係数、歪点など)を有する透明な石英基板を用いている。石英基板の厚みは特に指定されるものではないが、この場合、1.1mmである。
絶縁膜10aを構成する材料は、例えば酸化シリコンなどの絶縁性を有する無機材料が好適である。その形成方法としては、プラズマCVD法などが挙げられ、本実施形態では厚みがおよそ50nmとなるように成膜した。そして、ステップS2へ進む。
【0027】
ステップS2の第1半導体層形成工程では、図2(b)に示すように、まず絶縁膜10a上に第1非結晶質シリコン膜20A1を形成する。第1非結晶質シリコン膜20A1の形成方法としては、減圧気相化学成長法(LPCVD)やプラズマCVD法が挙げられる。この後の熱処理による結晶化を考慮すると、その膜厚t1としては少なくとも20nm以上確保することが好ましい。本実施形態では、およそ50nmとなるように成膜した。
【0028】
次に、不活性ガス(窒素ガス)雰囲気中で第1非結晶質シリコン膜20A1に熱処理を施して、これを結晶化させる。熱処理温度(第1の温度)としては、結晶核発生速度が結晶成長速度よりも速くなる600℃〜700℃の温度にて4時間の熱処理を施し、図2(c)に示すように第1非結晶質シリコン膜20A1を結晶化させ第1多結晶質シリコン膜としての第1半導体層20P1を形成した。そして、ステップS3へ進む。
【0029】
ステップS3の第1熱処理工程では、多結晶化した第1半導体層20P1を再び不活性ガス(窒素ガス)雰囲気中にて1000℃〜1100℃の温度(第3の温度)で熱処理を施す。これにより、第1半導体層20P1の結晶性を向上させ、後述する第2半導体層の形成を考慮して良質な結晶核とする。なお、上記熱処理は不活性ガス(窒素ガス)雰囲気中で行われるものの、空気中の酸素ガスとの接触によって第1半導体層20P1の表面に酸化シリコン膜が生じた場合には、これを除去しておくことが好ましい。除去方法としては、例えば、1wt%〜2wt%に希釈したフッ化水素酸水溶液中に30秒程度浸漬してエッチングする方法が挙げられる。そして、ステップS4へ進む。
【0030】
ステップS4の第2半導体層形成工程では、図2(d)に示すように、まず第1半導体層20P1上に第2非結晶質シリコン膜20A2を形成する。第2非結晶質シリコン膜20A2の形成方法としては、前述したLPCVDやプラズマCVD法が挙げられる。また、その膜厚t2としては第1非結晶質シリコン膜20A1と同様に少なくとも20nm以上確保することが好ましい。さらには、後述する半導体層の総厚t(=t1+t2)が厚くなりすぎるとソース/ドレイン間の耐圧が低下するため、チャネル長をL(nm)とするとき、第2非結晶質シリコン膜20A2の膜厚t2は、20nm≦t2<L/7−t1を満足することが好ましい。これによれば、最終的に得られる半導体層の耐圧を確保して、安定した動作特性を実現できる。本実施形態では、後述する半導体層のチャネル長Lが800nm〜1000nmであるため、膜厚t2が50nmとなるように成膜した。
【0031】
次に、不活性ガス(窒素ガス)雰囲気中で第2非結晶質シリコン膜20A2に熱処理を施して、これを結晶化させる。熱処理温度(第2の温度)としては、第1の温度よりも低く、結晶核発生速度よりも結晶成長速度の方が速くなる450℃以上600℃未満が好ましい。これにより、第2非結晶質シリコン膜20A2内に結晶核が発生して結晶化が進行する前に、すでに多結晶化している第1半導体層20P1の結晶粒を結晶核として第2非結晶質シリコン膜20A2の結晶化が進行して、図2(e)に示すように第1半導体層20P1上に第2多結晶質シリコン膜としての第2半導体層20P2が形成される。このような第2非結晶質シリコン膜20A2の結晶化は、固相エピタキシャル成長と呼ばれており、例えば、文献1;L.Csepregi,E.F.Kennedy,J.W.Mayer and T.W.Sigmon,J.Appl.Phys.49(1978) 3906に示されている。
【0032】
ここで、固相エピタキシャル成長を利用した第2半導体層20P2の形成について、図4および図5を参照して詳しく説明する。なお、図5のグラフにおける縦軸は結晶成長速度(nm/min)を対数で示し、横軸は温度(K)の逆数を示している。
【0033】
図4(a)に示すように、絶縁膜10a上に成膜された第1半導体層20P1は多結晶化しているものの、その表面における結晶粒の面方位は必ずしも揃っていない。固相エピタキシャル成長における結晶成長速度は、結晶面によって異なることが知られており(図4(b)参照)、例えば、結晶面の面方位{100}に対して面方位{111}における結晶成長速度は約1/20であることが上記文献1に記載されている。したがって、固相エピタキシャル成長を促す熱処理の温度と時間とを適切に選ぶことによって、第2非結晶質シリコン膜20A2において第1半導体層20P1の表面における結晶粒のうち結晶成長速度が比較的速い面方位{100}などの結晶粒を優先的に成長させることが可能となる。
【0034】
例えば、図5のグラフに示すように、550℃の熱処理において面方位{100}の結晶成長速度は約10nm/minで、面方位{111}の結晶成長速度は約0.5nm/minであることから、膜厚が50nmの第2非結晶質シリコン膜20A2の場合では、面方位{100}の結晶は約5分で膜厚方向の結晶成長が完了するのに対して、面方位{111}の結晶は約100分要する。よってこれらの時間の差の中で、第1半導体層20P1に含まれる面方位{100}の結晶粒の間隔を勘案して熱処理時間を決定することにより、図4(c)に示すように、第2半導体層20P2は、面方位{100}およびこれに近い面方位を有する結晶粒が大きな面積を占め、結晶方位の揃った多結晶膜となる。
【0035】
一般にシリコン膜中を流れる電子や正孔といったキャリアの移動度は、キャリアが流れる結晶面と方位によって異なる。その一方で面方位{100}の結晶については、面内のどの方位に対してもキャリアの移動度が同じである特徴が知られている。したがって、結晶面{100}のシリコンウエハ上に形成される電子デバイスは、デバイスの向き(キャリアが流れる方向)によって特性がばらつくことがない。
【0036】
本実施形態における固相エピタキシャル成長においても結晶面による結晶成長速度の違いを利用して、第2非結晶質シリコン膜20A2に適切な熱処理を施すことにより、結晶面{100}を有する結晶粒を優先的に成長させることで、結晶粒径が大きく、かつ結晶方位が揃った第2多結晶質シリコン膜としての第2半導体層20P2を得ることが可能となる。
【0037】
また、第2非結晶質シリコン膜20A2を結晶化するにあたっては、結晶成長速度が速い面方位の結晶粒を成長させることと、生産性とを両立させる観点から、図5のグラフからもわかるように、結晶化を促す熱処理温度(第2の温度)は、450℃以上600℃未満が好ましい。さらには、結晶核をできるだけ発生させずに結晶成長を促す効率的な熱エネルギー利用の観点から結晶成長速度が1nm/min〜10nm/minとなる500℃以上550℃以下が好ましい。そして、ステップS5へ進む。
【0038】
ステップS5の酸素プラズマ処理工程では、平行平板型のプラズマ発生装置(図示省略)のチャンバー内に処理ガスとして酸素ガスを供給し、酸素雰囲気圧力を40Paから100Paとし、RFパワーを400W〜1500Wとして酸素プラズマを発生させ、支持基板10の温度を150℃〜400℃に制御して、第2半導体層20P2に対し5分から20分間程度のプラズマ照射を行う。
この酸素プラズマ照射は、多結晶である第2半導体層20P2中の結晶粒界の結晶欠陥部分に作用し、電気的にほぼ不活性化する効果が得られる。これは水素ガスを用いた水素プラズマ照射と類似する効果と考えられるが、水素プラズマ照射の場合、シリコンと水素の結合力は比較的小さいため350℃程度以上の温度に加熱すると水素は抜けてしまい、半導体装置の形成後には水素プラズマ照射の効果が消滅してしまうおそれがある。これに対し、酸素プラズマ照射による効果は、後述する高温プロセス後でも効果が残っていることが発明者の実験によって確認されている。
続いて、酸素プラズマ照射によって第2半導体層20P2の表面に形成された酸化シリコン膜を除去するため、1wt%〜2wt%に希釈したフッ化水素酸水溶液に支持基板10を30秒程度浸漬して第2半導体層20P2の表面をエッチングする。この酸化シリコン膜の除去を行うことによって、次工程の第1半導体層20P1および第2半導体層20P2のパターニング時に安定したエッチングが可能となる。また、後述する熱酸化によるゲート絶縁膜形成時には良好な半導体層とゲート絶縁膜との界面形成が可能となる。そして、ステップS6へ進む。
【0039】
ステップS6のエッチング工程では、図2(f)に示すように、第1半導体層20P1および第2半導体層20P2を所定の形状となるようにエッチング(パターニング)する。エッチング方法としては、フッ化水素酸水溶液を用いた湿式エッチングや、CF4やSF6などのエッチングガスを用いた乾式エッチング(ドライエッチング)が挙げられる。これにより、半導体層20Pが形成される。そして、ステップS7へ進む。
【0040】
ステップS7のゲート絶縁膜形成工程では、図2(g)に示すように、まず、800℃から1000℃程度の温度にて半導体層20Pの表面を酸化させ、熱酸化膜11aを形成する。
【0041】
次に上記熱酸化膜11aの形成に加えて、プラズマCVD法などにより酸化シリコン膜11bをさらに堆積させる。多結晶質シリコン膜を長時間熱酸化した場合、多結晶質シリコン膜表面に多数の凸部が形成され、ゲート絶縁膜の耐圧が低下する場合がある。そこで比較的短時間の熱酸化工程にて半導体層20Pとの間に良好な界面を形成し、その後に酸化シリコン膜11bを堆積させて、所望の厚さのゲート絶縁膜11を形成することが望ましい。本実施形態では930℃で10分間程度の熱酸化により膜厚約10nmの熱酸化膜11aを形成した後、膜厚15nmの酸化シリコン膜11bをCVD法によりさらに堆積させることで、膜厚25nmのゲート絶縁膜11を形成した。この方法により、酸化シリコン膜除去後の半導体層20Pの表面部分が酸化され、良好な半導体層20Pとゲート絶縁膜11との界面を形成することが可能となる。そして、ステップS8に進む。
【0042】
ステップS8の第2熱処理工程では、再び不活性ガス(窒素ガス)雰囲気中で、支持基板10を1000℃〜1100℃(第3の温度)に加熱する熱処理を行う。これにより、半導体層20Pとゲート絶縁膜11との界面をさらに良好な状態として、ゲート絶縁膜11の耐圧を向上させることができる。そして、ステップS9へ進む。
【0043】
ステップS9のゲート電極形成工程では、図3(h)に示すように、ゲート絶縁膜11上に導電膜を成膜し、これをパターニングしてゲート電極20gを形成する。導電膜の材料としては、例えば、不純物をドープした多結晶質シリコンやTaなどの金属を用いることができ、これらの材料は例えばCVD法やスパッタリング法により成膜することができる。なお、このゲート電極20gのパターニング時に、当該ゲート電極20gと接続される他の配線(例えば後述する走査線28;図8参照)をパターニングしてもよい。そして、ステップS10へ進む。
【0044】
ステップS10の不純物注入工程では、図3(i)に示すように、ゲート電極20gをマスクとして、ゲート電極20gの両側の半導体層20P中にリン(P)などの不純物を注入し、低濃度不純物領域20bを形成する。次いで、例えば、ゲート電極20gの側壁に形成したサイドウォール膜(図示せず)をマスクにして、リン(P)などの不純物を注入し、高濃度不純物領域すなわちソース領域20sおよびドレイン領域20dを形成する。
なお、上記不純物は、所望の形状のフォトレジスト膜などをマスクにして注入してもよい。また、ゲート電極20gをマスクにして斜めインプラ法などを用いて、高濃度不純物領域であるソース領域20sおよびドレイン領域20dならびに低濃度不純物領域20bを形成してもよい。これらの工程により、低濃度不純物領域20b間の半導体層20Pがチャネル領域となる。すなわち、低濃度不純物領域20b間の半導体層20Pの長さがチャネル長L(nm)である。以上の工程により、LDD(Lightly Doped Drain)型のTFT20が形成される。そして、ステップS11へ進む。
【0045】
ステップS11の層間絶縁膜形成工程では、図3(j)に示すように、ゲート電極20g上に層間絶縁膜12として例えば酸化シリコン膜をPECVD(Plasma−Enhanced CVD)法で500nm程度成膜する。この後、例えば、850℃程度の熱処理を施し、低濃度不純物領域20b、ソース領域20s、ドレイン領域20d中の不純物を活性化させる。そして、ステップS12へ進む。
【0046】
ステップS12のソース電極およびドレイン電極形成工程では、図3(k)に示すように、高濃度不純物領域であるソース領域20sおよびドレイン領域20dの上のゲート絶縁膜11および層間絶縁膜12を選択的にエッチングし、コンタクトホール13,14を形成する。次いで、コンタクトホール13,14内を含む層間絶縁膜12上に導電膜を成膜し、パターニングすることによってソース電極15、ドレイン電極16を形成する。もちろん、ソース電極15やドレイン電極16に接続される配線も同時に形成してもよい。導電膜としては、例えば、アルミニウム(Al)やWなどの金属を用い、スパッタリング法などを用いて成膜することができる。
【0047】
このような半導体装置としてのTFT20の製造方法によれば、第1半導体層20P1の結晶粒を核として、第2非結晶質シリコン膜20A2を適度な温度と時間で熱処理することで、固相エピタキシャル成長による結晶化を実現できる。この手法によって結晶化した第2半導体層20P2の結晶粒は比較的大きく、また結晶方位を揃えることができる。特に固相エピタキシャル成長速度の速い結晶面{100}が優先的に結晶成長するよう上記ステップS4における熱処理条件を設定することで、半導体層20Pをチャネル層に用いたTFT20は、結晶方位に起因する電気特性のばらつきが低減されると共に高いキャリアの移動度を実現することができる。
【0048】
<電気光学装置>
次に、本実施形態の電気光学装置として、液晶装置を例に図6〜図8を参照して説明する。図6は液晶装置の構成を示す概略平面図、図7は図6のA−A線で切った液晶装置の構造を示す概略断面図、図8は液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0049】
本実施形態の液晶装置は、後述する電子機器としての投射型表示装置(液晶プロジェクター)における反射型ライトバルブとして好適に用いることができるものである。
【0050】
図6および図7に示すように、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置30は、一対の基板としての素子基板31と対向基板32との間に電気光学素子としての液晶層34が挟持されたものである。
【0051】
素子基板31と対向基板32とは所定の間隔をおいて対向配置され、額縁状に設けられたシール材35により接合され、その隙間に負の誘電異方性を有する液晶が充填されて液晶層34が構成されている。
【0052】
素子基板31は、例えば透明な石英基板を用いることができ、額縁状に設けられたシール材35の内側には、画素を構成する画素電極21と画素電極21を駆動制御するスイッチング素子として上記実施形態の薄膜トランジスターの製造方法を用いて製造されたTFT20とがマトリックス状に設けられ、表示領域1aを構成している。
また、素子基板31側において表示領域1aの周辺には、端子部にもうけられた外部入力端子26から画像データを取り込む入力回路23、画素に画像データに基づいた画像信号を供給するデータ線駆動回路22、画素に制御信号を供給する走査線駆動回路25、これらの回路を制御するタイミング制御回路24が設けられている。
画素電極21は、少なくとも液晶層34に面する側において光反射性を有する部材により構成されており、該部材としては例えばAl(アルミニウム)やAg(銀)あるいはこれらの金属の合金などを用いることができる。なお、安定した光反射性を確保するために、酸化シリコンなどの透明絶縁膜により画素電極21の表面を覆って、酸化などの化学的な変化による反射率の低下を防ぐ構造としてもよい。
【0053】
対向基板32は、例えば透明な石英基板を用いることができ、素子基板31の複数の画素電極21に対して液晶層34を挟んだ位置に、ITOなどの透明導電膜からなる共通電極33が設けられている。
【0054】
素子基板31の画素電極21や対向基板32の共通電極33を覆うように無機配向膜(図示省略)が斜方蒸着法により形成されており、無機配向膜面において液晶分子は所定の方位角方向にプレチルトが与えられて略垂直配向している。すなわち、液晶装置30は、VA(Vertical Alignment)方式の反射型の液晶装置である。
【0055】
図8に示すように、液晶装置30は、少なくとも表示領域1aにおいて互いに絶縁された状態で交差する複数のデータ線27および複数の走査線28と、データ線27と走査線28の交差点付近に設けられたTFT20と、画素電極21とを有する。すなわち、TFT20および画素電極21は、表示領域1aにおいてデータ線27と走査線28とに沿ってマトリックス状に設けられている。
【0056】
走査線28はTFT20のゲートに電気的に接続され、データ線27はTFT20のソースに電気的に接続されている。画素電極21はTFT20のドレインに電気的に接続されている。
データ線27はデータ線駆動回路22に接続されており、データ線駆動回路22から供給される画像信号を各画素に供給する。走査線28は走査線駆動回路25に接続されており、走査線駆動回路25から供給される走査信号を各画素に供給する。データ線駆動回路22からデータ線27に供給される画像信号は、線順次で供給してもよく、互いに隣接する複数のデータ線27同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路25は、走査線28に対して、走査信号を所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
【0057】
液晶装置30は、スイッチング素子であるTFT20が走査信号の入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線27から供給される画像信号が所定のタイミングで画素電極21に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極21を介して液晶層34に書き込まれた所定レベルの画像信号は、画素電極21と液晶層34を介して対向配置された共通電極33との間で一定期間保持され、画像データに基づいた表示が行われる。
保持された画像信号がリークするのを防止するため、画素電極21と共通電極33との間に形成される液晶容量と並列に保持容量を設けてもよい。
【0058】
このような液晶装置30によれば、画素電極21のスイッチング素子としてキャリアの移動度が高く、特性ばらつきが少ないTFT20が用いられているので、例えば、より高速なスイッチング動作が求められるデジタル駆動に対しても確実に追従して、優れた表示品質を有する液晶装置30を実現することができる。
【0059】
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について投射型表示装置(液晶プロジェクター)を例に挙げて説明する。図9は投射型表示装置(液晶プロジェクター)の構成を示す概略図である。
【0060】
図9に示すように、本実施形態での電子機器としての液晶プロジェクター1000は、システム光軸Lに沿って配置した光源部510と、インテグレーターレンズ520と、偏光変換素子530から概略構成される偏光照明装置500とを備えている。また、この偏光照明装置500から射出されたS偏光光束をS偏光光束反射面541により反射させる偏光ビームスプリッター540と、偏光ビームスプリッター540のS偏光光束反射面541から反射された光のうち、青色光(B)の成分を分離するダイクロックミラー542と、分離された青色光(B)を変調する反射型液晶ライトバルブ545Bとを備えている。同様にして、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R)の成分を反射させて分離するダイクロックミラー543と、分離された赤色光(R)を変調する反射型液晶ライトバルブ545Rとを備えている。また、ダイクロックミラー543を通過する残りの光の緑色光(G)を変調する反射型液晶ライトバルブ545Gを備えている。さらには、3つの反射型液晶ライトバルブ545R,545G,545Bにて変調された光をダイクロックミラー543,542、偏光ビームスプリッター540にて合成し、この合成光をスクリーン1001に投射する投射レンズからなる投射光学系550を備えている。
【0061】
光源部510から射出されたランダムな偏光光束は、インテグレーターレンズ520により複数の中間光束に分割された後、第2のインテグレーターレンズを光入射側に有する偏光変換素子530により偏光光束がほぼ揃った一種類の偏光光束(S偏光光束)に変換されてから偏光ビームスプリッター540に至るようになっている。偏光変換素子530から射出されたS偏光光束は、偏光ビームスプリッター540のS偏光光束反射面541によって反射され、反射された光束のうち、青色光(B)の光束がダイクロックミラー542の青色光反射層にて反射され、反射型液晶ライトバルブ545Bによって変調される。また、ダイクロックミラー542の青色光反射層を透過した光束のうち、赤色光(R)の光束はダイクロックミラー543の赤色光反射層にて反射され、反射型液晶ライトバルブ545Rによって変調される。一方、ダイクロックミラー543の赤色光反射層を透過した緑色光(G)の光束は反射型液晶ライトバルブ545Gにより変調される。以上のようにして反射型液晶ライトバルブ545R,545G,545Bによって色光の変調がなされる。
これらの反射型液晶ライトバルブ545R,545G,545Bの画素から反射された色光のうち、S偏光成分はS偏光を反射する偏光ビームスプリッター540を通過せず、P偏光成分は通過する。この偏光ビームスプリッター540を透過した光により画像が形成される。
【0062】
上記反射型液晶ライトバルブ545R,545G,545Bは、上記液晶装置30を適用したものである。具体的には、対向基板32側から偏光光束が入射するように、それぞれ配置されている。
【0063】
本実施形態によれば、デジタル駆動が可能で、高品位な映像を投射できる液晶プロジェクター1000を提供できる。
【0064】
なお、反射型液晶ライトバルブ545R,545G,545Bの偏光光束の入射(および射出)側に、液晶層34における液晶分子のプレチルトに起因する位相差(リターデーション)を光学的に補償する光学補償素子を配置した構造としてもよい。
【0065】
本実施形態では、電子機器の一例として液晶装置30を備えた液晶プロジェクター1000について説明したが、液晶装置30は、液晶プロジェクター1000に限らず、種々の電子機器に搭載することができる。
この電子機器としては例えば、電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた情報機器などがあり、液晶装置30はこれらの表示手段として好適に用いることができる。
【0066】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0067】
(変形例1)上記薄膜トランジスターの製造方法において、第1熱処理工程(ステップS3)、酸素プラズマ処理工程(ステップS5)、第2熱処理工程(ステップS8)は必須工程ではない。例えば、第1半導体層20P1や第2半導体層20P2の成膜状態を考慮して、これらの工程の一部またはすべてを削除してもよい。
【0068】
(変形例2)上記薄膜トランジスターの製造方法において、第1半導体層形成工程(ステップS2)は、第1非結晶質シリコン膜20A1を熱処理により結晶化して第1半導体層20P1を形成することに限定されない。例えば、真空蒸着法などを用いて支持基板10の絶縁膜10a上に多結晶質シリコン膜を直に形成してもよい。
【0069】
(変形例3)上記実施形態のTFT20は、トップゲート構造であるが、これに限定されず、ボトムゲート構造としても上記実施形態の薄膜トランジスターの製造方法を適用可能である。
【0070】
(変形例4)上記実施形態の液晶装置30は、反射型であるが、これに限定されない。例えば、素子基板31を透明な基板材料を用いて構成し、画素電極21を透明なITOなどの導電膜とすれば透過型の液晶装置30を提供することができる。また、透過型の液晶装置30を用いても、デジタル駆動が可能で高品位の映像表示ができる投射型表示装置を構成することができる。
さらには、液晶層34を挟んで画素電極21と共通電極33とが配置される構造に限定されず、例えば、素子基板31側に一対の電極が配置されるIPS(In Plane Switching)方式やFFS(Fringe Field Switching)方式であってもよい。また、液晶層34における配向制御がVA方式であることに限定されず、TN(Twist Nematic)方式やECB(Electrically Controlled Birefringence)方式などであってもよい。
【0071】
(変形例5)上記実施形態の薄膜トランジスターの製造方法を用いて製造された薄膜トランジスター(TFT)を画素のスイッチング素子として適用した電気光学装置は、液晶装置30に限定されない。例えば、電気泳動装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置、FED(Field Emission Display)、SED(Surface−conduction Electron−emitter Display)などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10…基板としての支持基板、11…絶縁膜としてのゲート絶縁膜、20…半導体装置としての薄膜トランジスター(TFT)、20A1…第1非結晶質シリコン膜、20A2…第2非結晶質シリコン膜、20P…半導体層、20P1…第1多結晶質シリコン膜としての第1半導体層、20P2…第2多結晶質シリコン膜としての第2半導体層、30…電気光学装置としての液晶装置、1000…電子機器としての投射型表示装置(液晶プロジェクター)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1多結晶質シリコン膜を形成する第1工程と、
前記第1多結晶質シリコン膜上に非結晶質シリコン膜を形成する第2工程と、
前記非結晶質シリコン膜に対して、不活性ガス雰囲気中にて前記第1多結晶質シリコン膜上における前記非結晶質シリコン膜の結晶核発生速度よりも結晶成長速度の方が速くなる温度で熱処理を施して前記非結晶質シリコン膜を結晶化して第2多結晶質シリコン膜とする第3工程と、
前記第1および第2多結晶質シリコン膜をパターニングして半導体層を形成する第4工程と、を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記基板上に第1非結晶質シリコン膜を形成して、第1の温度で熱処理を施すことにより前記第1多結晶質シリコン膜を形成し、
前記第2工程は、前記第1多結晶質シリコン膜上に第2非結晶質シリコン膜を形成し、
前記第3工程は、前記第2非結晶質シリコン膜に対して、不活性ガス雰囲気中にて前記第1多結晶質シリコン膜上における前記第2非結晶質シリコン膜の結晶核発生速度よりも結晶成長速度の方が速くなる第2の温度で熱処理を施して前記第2非結晶質シリコン膜を結晶化して前記第2多結晶質シリコン膜とし、
前記第1の温度は、前記第2の温度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板が石英基板であって、前記第1の温度が600℃以上700℃以下であり、前記第2の温度が450℃以上600℃未満であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記基板上における前記第1多結晶質シリコン膜の膜厚t1が20nm以上であり、
前記半導体装置における前記半導体層のチャネル長をL(nm)とするとき、前記第2多結晶質シリコン膜の膜厚t2は、20nm≦t2<L/7−t1を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
不活性ガス雰囲気中で前記第1多結晶質シリコン膜を前記第1の温度よりも高い第3の温度で熱処理する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
不活性ガス雰囲気中で前記第2多結晶質シリコン膜を前記第1の温度よりも高い第3の温度で熱処理する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
不活性ガス雰囲気中で前記第2多結晶質シリコン膜を熱処理する工程は、前記半導体層を覆う絶縁膜を形成した後に施すことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記基板が石英基板であって、前記第3の温度が1000℃以上1100℃以下であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2多結晶質シリコン膜に酸素ガスを処理ガスとする酸素プラズマ処理を施す工程と、
前記酸素プラズマ処理によって前記第2多結晶質シリコン膜の表面に形成された酸化物を除去する工程とを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法を用いて製造された半導体装置を画素のスイッチング素子として用いていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−187609(P2011−187609A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50237(P2010−50237)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】