説明

半導体装置の製造方法および基板処理装置

【課題】メンテナンス時に塩化水素発生の原因となる不安定な塩素含有化合物が排気管等に残留することを抑制できる窒化シリコン膜のCVD技術を提供する。
【解決手段】処理室204内に基板200を搬入する基板搬入工程と、シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガス240aと窒素を含有する第2の処理ガス240bと、を処理室内の雰囲気中において窒素原子よりもシリコン原子が多くなるように前記処理室204内へ供給しつつ、前記処理室204内の第1および第2の処理ガスを含む雰囲気を排気ライン227から排気して前記基板200上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、該成膜工程中に、窒素を含有する第3(第2)の処理ガスを前記排気ライン227へ供給し、前記排気ライン227内に存在する前記第1の処理ガスと反応させる窒素供給工程と、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板等の基板処理技術、例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという。)の製造装置や製造方法において、半導体集積回路が作り込まれる半導体基板(例えば、半導体ウェハ)に、シリコン窒化膜を堆積(デポジション)して成膜等の処理を行ううえで有効な基板処理技術に関し、特に、DCS(ジクロルシラン:SiHCl)等のCl(塩素)基を含んだ処理ガスを用いる場合に、排気側に不安定な塩素含有化合物が生成されることを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造において、例えば、シリコン窒化膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により堆積(デポジション)するため、バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置(以下、CVD装置という。)が、広く使用されている。従来のこの種のCVD装置の例を図4に示す。図4のCVD装置においては、インナチューブ401およびこのインナチューブ401を取り囲むアウタチューブ402から構成され縦形に設置されたプロセスチューブと、複数枚の基板としてのウェハ403を保持してインナチューブ401内に搬入するボート(基板保持具)404と、インナチューブ401内に原料ガスを導入するガス導入ノズル414、415と、プロセスチューブ内を排気して減圧する排気管406と、排気管406に設けられた圧力調整器であるAPC(Auto Pressure Controller)バルブ407と、真空ポンプ408と、プロセスチューブ外に敷設されてプロセスチューブ内を加熱するヒータユニット(不図示)とを備えている。
【0003】
上記のCVD装置において、シリコン窒化膜をウェハ表面上に成膜する場合、例えば原料ガスとして、DCSガスとアンモニア(NH)ガスを、ガス導入ノズル414、415によってインナチューブ401内に導入し、ヒータユニットによってプロセスチューブ内を加熱することにより、ウェハ403にシリコン窒化膜を成膜する。
その際、高温である炉内においては、原料ガスは反応してシリコン窒化膜として成膜されるが、低温である排気管406等の排気側では、未反応だった原料ガスが冷却され、不安定な塩素含有化合物として吸着し、残留しやすくなる。塩素含有化合物の残留量は、DCSガスとアンモニアガスの流量比によっても変化し、DCS比が相対的に高い場合や、炉内での反応性が低い条件下、例えば、低圧低温条件下では、特に増大する。
【0004】
この不安定な塩素含有化合物は、成膜処理後に、例えば排気管406をメンテナンス等で大気開放した際に、大気雰囲気と反応して塩化水素(HCl)を発生し、人体に悪影響を与えたり、金属部材を腐食させる要因となる。塩化水素の発生を抑制するためには、排気管406等の排気側を長時間に亘り窒素ガス等でパージしたり、メンテナンスエリアを大きくして排気側を隔離したりする必要があり、多くの時間と費用が必要となる。
【0005】
下記の特許文献1には、HCD(ヘキサクロロジシラン:Si2 Cl6 )ガスを用いてシリコン膜を成膜した後、メンテナンスで大気開放する前に、成膜ガス供給ラインおよび排気管にアンモニアガスを供給して、付着した原料を除去することが開示されている。また、特許文献2には、成膜処理時に、反応生成物付着防止用の窒素ガスを、排気路に供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−088308号公報
【特許文献2】特開2007−281083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、塩化水素発生の原因となる不安定な塩素含有化合物が、排気管等の排気側に生成されることを抑制できる基板処理技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明においては、シリコン窒化膜を形成する際に、排気ライン内へ直接、窒素含有ガスを導入することにより、排気ライン内に安定な塩素含有化合物を生成し、その結果、メンテナンス時等において、排気ライン内が大気に晒されても、有害な塩化水素が生成されることを抑制するものである。
本発明に係る半導体装置の製造方法の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程中に、窒素を含有する第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給し、前記排気ライン内に存在する前記第1の処理ガスと反応させる窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成により、排気ラインには安定した塩素含有化合物が生成されるので、塩化水素発生の原因となる不安定な塩素含有化合物が、排気ラインに生成されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の各実施形態における基板処理装置の斜透視図である
【図2】本発明の第1実施形態における基板処理装置の処理炉の垂直断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における基板処理装置の処理炉の垂直断面図である。
【図4】従来例における基板処理装置の処理炉の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態において、半導体装置(IC等)の製造工程の1工程としての基板処理工程を実施する基板処理装置の構成例について、図1を用いて説明する。なお、以下の説明では、基板処理装置として、シリコン窒化膜を生成するCVD処理を行う縦型の基板処理装置について述べる。
図1は、本発明の第1、第2の各実施形態における基板処理装置の斜透視図である。図1に示すように、本発明の各実施形態に係る基板処理装置10は、筐体101を備え、シリコン等からなる基板であるウェハ200を筐体101内外へ搬送するために、ウェハキャリア(基板収容器)としてカセット110が使用される。
【0012】
筐体101の正面前方側にはカセットステージ(基板収容器受渡し台)105が設置されている。カセット110は、筐体101外の工程内搬送装置(図示せず)によって、カセットステージ105上に搬入、載置され、また、カセットステージ105上から筐体101外へ搬出されるように構成されている。
筐体101内の前後方向における略中央部には、カセット棚(基板収容器載置棚)114が設置されている。カセット棚114は、複数段、複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚114の一部として、移載棚123が設けられ、移載棚123には、後述するウェハ移載機構112の搬送対象となるカセット110が収納される。
カセットステージ105とカセット棚114との間には、カセット搬送装置(基板収容器搬送装置)115が設置されている。カセット搬送装置115は、カセットステージ105、カセット棚114、移載棚123の間で、カセット110を搬送することができる。
【0013】
カセット棚114の後方には、ウェハ移載機構(基板移載機構)112が設置されている。ウェハ移載機構112は、ウェハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板移載用保持具)を備えており、ウェハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして、後述するボート(基板保持具)217へ装填(チャージング)したり、ウェハ200をボート217から脱装(ディスチャージング)して、移載棚123上のカセット110内へ収納したりすることができる。
【0014】
筐体101の後側上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)116により開閉可能なように構成されている。処理炉202の構成については後述する。
【0015】
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬送する機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)121が設置されている。ボートエレベータ121には、昇降台としてのアーム122が設置されている。アーム122上には、シールキャップ219が水平姿勢で設置されている。シールキャップ219は、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ121によりボート217が上昇したときに、処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体として機能するものである。
ボート217は、複数本のウェハ保持部材(支柱)を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウェハ200を水平姿勢で、かつ、その中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて、多段に積層して保持するように構成されている。ボート217の詳細な構成については後述する。
【0016】
(基板処理装置の動作概要)
次に、本実施形態に係る基板処理装置10の動作概要について、図1を用いて説明する。なお、基板処理装置10は、後述するコントローラ280により制御されるものである。まず、カセット110が、図示しない工程内搬送装置によって、カセットステージ105上に載置される。
カセットステージ105上のカセット110は、カセット搬送装置115によって、カセット棚114の指定された位置へ自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、再びカセット搬送装置115によって、前記カセット棚114の保管位置から移載棚123に搬送される。あるいは、カセットステージ105上のカセット110は、カセット搬送装置115によって、直接、移載棚123に搬送される。
【0017】
カセット110が移載棚123に搬送されると、ウェハ200は、ウェハ移載装置112によって、カセット110のウェハ出し入れ口からピックアップされ、ボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウェハ200を受け渡したウェハ移載装置112は、カセット110側に戻り、次のウェハ200をカセット110からピックアップしてボート217に装填する。
【0018】
予め指定された枚数のウェハ200がボート217に装填されると、処理炉202の下端部を閉じていた炉口シャッタ116が開放動作され、処理炉202の下端部の開口が開放される。続いて、ボート217を載置したシールキャップ219がボートエレベータ121によって上昇されることにより、処理対象のウェハ200群を保持したボート217が、処理炉202内へ搬入(ボートローディング)される。ボートローディング後は、シールキャップ219により処理炉202の下端部開口が閉じられ、処理炉202にてウェハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。
【0019】
処理後は、ウェハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で、筐体101の外部へ払い出される。すなわち、ボート217を載置したシールキャップ219がボートエレベータ121によって下降され、ボート217上のウェハ200がウェハ移載機構112によってピックアップされて、移載棚123上のカセット110へ受け渡される。移載棚123上のカセット110は、カセット搬送装置115によって、カセット棚114に一時的に保管された後、カセットステージ105に搬送されるか、あるいは、カセット搬送装置115によって、直接、カセットステージ105に搬送される。カセットステージ105上のカセット110は、工程内搬送装置により、筐体101の外部へ払い出される。
【0020】
(第1実施形態)
(処理炉の構成)
次に、第1実施形態における処理炉202の構成について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の第1実施形態における基板処理装置の処理炉の垂直断面図である。本実施形態の例においては、処理炉202は、バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD用の処理炉として構成されている。
【0021】
(プロセスチューブ)
処理炉202は、その内側に、縦形のアウタチューブ(外管)221を備えている。アウタチューブ221は、上端が閉塞され下端が開口された略円筒形状をしており、開口された下端が下方を向くように、かつ、筒方向の中心線が垂直になるように縦向きに配置されている。アウタチューブ221の内側には、インナチューブ(内管)222が設けられている。インナチューブ222およびアウタチューブ221はいずれも、本例では、石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性の高い材料によって、それぞれ略円筒形状に一体成形されており、両者でプロセスチューブを構成している。
【0022】
インナチューブ222は、上端と下端が開口した略円筒形状に形成されている。インナチューブ222内には、基板保持具としてのボート217によって水平姿勢で多段に積層された複数枚のウェハ200を収容して処理する処理室204が形成される。インナチューブ222の内径は、ウェハ200群を保持するボート217の最大外径よりも大きくなるように設定されている。
【0023】
アウタチューブ221は、インナチューブ222より大きく、かつ、インナチューブ222と略相似形状であり、インナチューブ222の外側を取り囲むように同心円状に被せられている。
【0024】
インナチューブ222とアウタチューブ221の下端部は、それぞれ、その水平断面が略円形リング形状であるマニホールド206によって気密に封止されている。インナチューブ222およびアウタチューブ221は、その保守点検作業や清掃作業のために、マニホールド206に着脱自在に取り付けられている。マニホールド206が筐体101に支持されることにより、プロセスチューブは、筐体101に垂直に据え付けられた状態になっている。マニホールド206の下端開口は、ウェハ200群を保持したボート217を出し入れするための炉口205を構成している。
【0025】
(基板保持具)
マニホールド206には、マニホールド206の下端開口を閉塞するシールキャップ219が、垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219はアウタチューブ221の外径と同等以上の外径を有する円盤形状に形成されており、アウタチューブ221の外部に垂直に設備されたボートエレベータ121によって、前記円盤形状を水平姿勢に保った状態で垂直方向に昇降されるように構成されている。
シールキャップ219上には、ウェハ200を保持する基板保持具としてのボート217が垂直に支持されるようになっている。ボート217は、上下で一対の端板と、両端板間に渡って垂直に設けられた複数本、本例では3本のウェハ保持部材(ボート支柱)とを備えている。端板及びウェハ保持部材は、例えば、石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性の高い材料から構成される。
【0026】
各ウェハ保持部材には、水平方向に刻まれた多数条の保持溝が、長手方向にわたって等間隔に設けられている。各ウェハ保持部材は、保持溝が互いに対向し、各ウェハ保持部材の保持溝の垂直位置(垂直方向の位置)が一致するように設けられている。ウェハ200の周縁が、複数本のウェハ保持部材における同一の段の保持溝内に、それぞれ挿入されることにより、複数枚のウェハ200は、水平姿勢、かつ互いにウェハの中心を揃えた状態で多段に積載されて保持されるように構成されている。
【0027】
また、ボート217とシールキャップ219との間には、保温筒210が設けられている。保温筒210は、例えば、石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料から構成されている。保温筒210によって、後述するヒータユニット208からの熱が、マニホールド206側に伝わるのを抑止する。
【0028】
シールキャップ219の下側(処理室204と反対側)には、ボート217を回転させるボート回転機構267が設けられている。ボート回転機構267のボート回転軸は、シールキャップ219を貫通してボート217を下方から支持している。ボート回転軸を回転させることにより、処理室204内にてウェハ200を回転させることが可能となる。シールキャップ219は、上述のボートエレベータ121によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これにより、ボート217を処理室204内外に搬送することが可能となっている。
ボート回転機構267及びボートエレベータ121は、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、ボート回転機構267及びボートエレベータ121が所望のタイミングにて所望の動作をするように制御する。
【0029】
(ヒータユニット)
アウタチューブ221の外部には、プロセスチューブ1内を全体にわたって均一または所定の温度分布に加熱する加熱機構としてのヒータユニット208が、アウタチューブ221を包囲するように設けられている。ヒータユニット208は、基板処理装置10の筐体101に支持されることにより垂直に据え付けられた状態になっており、例えば、カーボンヒータ等の抵抗加熱ヒータにより構成されている。
インナチューブ222内には、温度検出器としての図示しない温度センサが設置されている。ヒータユニット208と温度センサは、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、処理室204内の温度が所望のタイミングにて所望の温度分布となるように、前記温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータユニット208への通電量を制御する。
【0030】
(ガス供給系)
ガス供給系について、図2を用いて説明する。図2に示すように、処理室204内に第1の処理ガスを供給する第1のガスノズル224aが、マニホールド206の側壁を貫通して設けられている。第1の処理ガスは、シリコンと塩素を含有するガスであり、本例では、DCSである。
また、処理室204内に第2の処理ガスを供給する第2のガスノズル225aが、マニホールド206の側壁を貫通して設けられている。第2の処理ガスは、窒素を含有するガスであり、本例では、NHである。
【0031】
図2に示すように、第1のガスノズル224aには、第1の処理ガス供給ラインとしての第1の処理ガス供給管224が接続されている。第1の処理ガス供給管224には、上流から順に、DCSガスを供給する第1の処理ガス供給源240a、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)241a、及び開閉バルブ243aが設けられている。
また、第2のガスノズル225aには、第2の処理ガス供給ラインとしての第2の処理ガス供給管225が接続されている。第2の処理ガス供給管225には、上流から順に、NHガスを供給する第2の処理ガス供給源240b、MFC241b、及び開閉バルブ243bが設けられている。第1の処理ガス供給ライン、第1の処理ガス供給源240a、MFC241a、開閉バルブ243aや、第2の処理ガス供給ライン、第2の処理ガス供給源240b、MFC241b、開閉バルブ243bから、第1ガス供給部が構成される。
なお、第1の処理ガス供給管224と第2の処理ガス供給管225に、それぞれ、不活性ガス供給ラインを接続し、第1の処理ガスと第2の処理ガスを、いずれも不活性ガスで希釈して供給したり、不活性ガスをキャリアガスとして供給するようにしてもよい。不活性ガスとしては、Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、H(水素)、N(窒素)等を用いることができる。
【0032】
MFC241a、241b、及び開閉バルブ243a、243bは、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、処理室204内に供給するガスの種類が所望のタイミングにて所望のガス種となるよう、また、供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるよう、MFC241a、241b及び開閉バルブ243a、243bを制御する。
【0033】
第1のガスノズル224a、第2のガスノズル225aから処理室204内に供給されたDCSガスとNHガスは、インナチューブ222の上側開放端から排気路209内へ流れた後、排気口227aを介して排気管227内に流れ、処理炉202外へ排出されるように構成されている。
【0034】
(排気ライン)
マニホールド206の側壁の一部には、処理室204内の雰囲気を排気する排気ラインとしての排気管227が接続されている。マニホールド206と排気管227との接続部には、処理室204内の雰囲気を排気する排気口227aが形成されている。排気管227内は、排気口227aを介して、インナチューブ222とアウタチューブ221との間に形成された隙間からなる排気路209内に連通している。この排気路209の水平断面形状は、略一定幅の円形リング形状となっている。
【0035】
排気管227(第1の排気ライン)には、上流から順に、圧力検出器としての圧力センサ256、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ255が設けられている。APCバルブ255の下流には、排気管228(第2の排気ライン)が設けられている。第1の排気ラインと第2の排気ラインから、排気ラインが構成される。
排気管228の一端には、APCバルブ255が接続され、排気管228の他端には、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。真空ポンプ246は、処理室204内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気しうるように構成されている。
【0036】
APCバルブ255および圧力センサ256は、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、処理室204内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、圧力センサ256により検出された圧力値に基づいてAPCバルブ255の開度を制御するように構成されている。
【0037】
排気管227において、排気口227aとAPCバルブ255の間には、排気管227に合流するガス配管237が接続されている。ガス配管237には、上流から順に、前述した第2の処理ガス(本例ではNH)供給源240b、MFC241c、及び開閉バルブ243cが設けられている。ガス配管237、第2の処理ガス供給源240b、MFC241c、開閉バルブ243cから、第2ガス供給部が構成される。
【0038】
(コントローラ)
前記制御部280は、図示しない操作部や入出力部を備え、基板処理装置10の各構成部と電気的に接続されており、基板処理装置10の各構成部を制御する。前記制御部280は、成膜プロセスの制御シーケンスを時間軸で示したレシピに基づく温度制御や圧力制御、流量制御および機械駆動制御を指令する。また、制御部280は、ハードウェア構成として、CPU(中央演算ユニット)と該CPUを動作させるプログラムが格納されるメモリとを備えるものである。
【0039】
(本実施形態の基本的思想)
本実施形態では、低温においてもDCS等と反応性のあるガス、例えばNH等を、成膜処理中に、直接、排気ラインに導入することにより、排気ライン内に、不安定な塩素含有化合物でなく、安定した塩素含有化合物を生成するものである。
例えば、DCSとNHを用いたシリコン窒化膜生成プロセスの場合、DCSのNHに対する比率が1/2以下であれば、次の式(1)のような反応となり、排気ライン内に安定した塩素含有化合物のみを生成する。
DCS+NH → SiN+NHCl・・・(1)
ここで、式(1)の反応後の状態(右辺)において、SiNは処理室内、NHCl(塩化アンモニウム)は排気ライン内で生成される。NHClは、安定した塩素含有化合物である。
しかし、DCSのNHに対する比率が1/2より大きい場合は、次の式(2)のような反応となり、排気ライン内に不安定な塩素含有化合物が生成されやすくなる。
DCS+NH → SiN+SiCl・・・(2)
ここで、式(2)の反応後の状態(右辺)において、SiNは処理室内、SiClは排気ライン内で生成される。SiClは、不安定な塩素含有化合物である。
【0040】
シリコン窒化膜生成プロセスにおいては、目標とする膜質等によっては、DCSの比率を高くした条件での成膜プロセスが必要になる場合、つまり、処理室内へのNHガスの供給量を増やすことができない場合がある。このような場合に、処理室内へ導入する処理ガスはDCS比が高い状態を維持しつつ、処理室内へ導入するNHとは別のガス供給系統から、排気ライン内へ直接NHを導入する。これにより、処理室内の雰囲気はDCS比が高い状態を維持しつつ、排気ライン内だけはNH比を高くすることができ、その結果、排気ライン内に生成される塩素含有化合物を安定な塩素含有化合物(NHCl)とすることができる。したがって、メンテナンス時等において、排気ライン内が大気に晒されても、有害な塩化水素が生成されることを抑制できる。
【0041】
(第1実施形態に係る基板処理方法)
次に、第1実施形態に係る基板処理方法を、ICの製造方法における成膜工程を例にして説明する。まず、ウェハチャージングステップにおいて、ウェハ200はボート217に装填される。具体的には、ウェハ200の円周縁の複数箇所が、複数のウェハ保持部材の保持溝にそれぞれ係合するように挿入され、該ウェハ200の複数箇所の周縁部が各保持溝に係合されて、ウェハ200の自重が支えられるように装填(チャージング)されて保持される。複数枚のウェハ200は、ボート217におけるチャージング状態において、その中心を揃えられて互いに平行かつ水平、多段に積載され、整列されている。
【0042】
次に、ボートローディングステップにおいて、複数枚のウェハ200を積載、保持したボート217は、処理室204に搬入(ボートローディング)される。具体的には、ウェハ200を装填されたボート217は、ボートエレベータ121により垂直方向に上昇され、インナチューブ222内の処理室204に搬入され、図2に示されているように、処理室204に存置される。この状態において、シールキャップ219は処理室204の下端をシールした状態になる。
続いて、減圧ステップにおいて、排気口227aを介して真空ポンプ246により、プロセスチューブ1の内部が所定の真空度(例えば、50Pa)に減圧されるとともに、昇温ステップにおいて、ヒータユニット208により、プロセスチューブ1の内部が所定の温度(例えば、700℃)に昇温される。
【0043】
次に、成膜ステップにおいて、ボート217が回転されつつ、所定の原料ガスが、ガスノズル224a、225aに供給され、インナチューブ222内の処理室204に導入される。例えば、原料ガスとして、DCSガスが、第1の処理ガス供給源240aから第1のガスノズル224aを介して処理室204に導入され、NHガスが、第2の処理ガス供給源240bから第2のガスノズル225aを介して処理室204に導入される。
本例では、処理室204に導入される処理ガス中のシリコン元素が窒素元素よりも多くなるように、つまり、DCSガスの供給量がNHガスの供給量よりも多くなるように、MFC241aとMFC241bが制御される。なお、好ましくは、DCSガスの供給量がNHガスの供給量の2倍以上となるように、MFC241aとMFC241bが制御されると、ウェハ200上に、シリコン元素が窒素元素よりも多いシリコンリッチなシリコン窒化膜が堆積されやすくなるのでよい。
【0044】
処理室204に導入された原料ガス(DCSとNH)は、インナチューブ222の上端の開口部から、インナチューブ222とアウタチューブ221の間の排気路209に流出して、マニホールド206に開設された排気口227aから排気される。
このようにして、ウェハ200の表面に接触しながら上下で隣合うウェハ200と10との間の空間を平行に流れて行く原料ガスのCVD反応によって、ウェハ200の表面には、シリコン元素が窒素元素よりも多いシリコンリッチなシリコン窒化膜が堆積する。
【0045】
このとき、シリコン窒化膜成膜時において、第2の処理ガス供給源240bからガス配管237を介して排気管227内へ、窒素含有ガスであるNHガスを供給する。ガス配管237から供給されたNHガスは、処理室204から排気管227へ排気されてきたガス中に存在するDCSガスと反応し、安定な塩素含有化合物であるNHClを生成する。排気管227内へ直接、NHガスを供給することにより、不安定な塩素含有化合物であるSiClの生成が抑制される。
好ましくは、排気ライン内、特に排気管227内の圧力をより高い状態とするようAPCバルブ255を制御することで、反応性を高めることができ、より速やかに塩素含有残留ガスを安定状態の塩素含有化合物とすることができる。
好ましくは、処理室204へ供給するDCSガスの供給量がNHガスの供給量より多い場合、特に2倍以上多い場合には、排気管227内へ供給する窒素含有ガスの供給量が、処理室204へ供給するDCSガスの供給量よりも多く、好適には2倍以上となるように、MFC241cが制御されると、より確実に不安定な塩素含有化合物の生成が抑制されるのでよい。
なお、排気管227内へ供給する窒素含有ガスは、第2の処理ガス供給源240bとは別のガス供給源から供給してもよいし、NHガスとは別のガス、例えば、NO(一酸化二窒素)ガスとしてもよい。
【0046】
また、処理室204へ原料ガスを供給する前の時点から原料ガス供給中において、ガス配管237から排気管227内へNHガスを供給するようにすることが好ましい。このようにすると、NHガスが排気ライン内に含まれた状態で、処理室から排気されたDCSガスを迎えることができ、速やかにDCSガスを安定状態の塩素含有化合物(NHCl)とすることができる。
さらに、ガス配管237から排気管227内へのNHガス供給は、処理室204への原料ガス供給が終了した後、すなわち成膜工程終了後も、原料ガス供給終了時点で処理室204内に残留している原料ガスが、排気ラインから排気されるまでの所定の時間、継続することが好ましい。このようにすると、原料ガス供給停止後に処理室204から排気されたDCSガスを、排気ライン内に供給されたNHガスにより、より確実に安定状態の塩素含有化合物(NHCl)とすることができる。
なお、好ましくは、成膜工程中に排気ラインへ直接、窒素含有ガスを供給する、若しくは、しないに関わらず、成膜工程後に、排気ラインからの排気を停止するか、若しくは減少させて、排気ラインの圧力をより高い状態、好適には大気圧付近に昇圧した状態とし、その後に、排気ラインへ直接、窒素含有ガスを供給するようにしてもよい。これにより、排気ライン内での反応性を高めることができ、速やかに塩素含有残留ガスを安定状態の塩素含有化合物とすることができる。また、好ましくは、排気ラインからの排気を停止するか、若しくは減少させた状態にて、排気ラインへ直接、窒素含有ガスを供給するようにしてもよい。これにより、排気ライン内での反応性を高めることができる。
【0047】
以上のようにして所望の膜厚のシリコン窒化膜が堆積された後に、原料ガスの供給が停止され、不活性ガスにより、処理室204内が大気圧に復帰された後に、ボートアンローディングステップにおいて、シールキャップ219が下降されることによって処理室204の下端が開口され、ボート217に保持された状態で処理済みのウェハ200群が処理室204から外部に搬出(ボートアンローディング)される。
【0048】
第1実施形態によれば、次の(1)〜(4)の効果のうち、少なくとも1つを奏する。
(1)基板上にシリコンリッチなシリコン窒化膜を堆積させることができるとともに、排気ライン内への不安定な塩素含有化合物の生成が抑制される。
(2)排気ライン内の圧力をより高い状態とすることができ、速やかに塩素含有残留ガスを安定状態の塩素含有化合物とすることができる。
(3)原料ガスを供給するより先に窒素含有ガスを排気ライン内へ供給すると、窒素含有ガスが排気ライン内に含まれた状態で、処理室から排気された原料ガスを迎えることができ、速やかに原料ガスを安定状態の塩素含有化合物とすることができる。
(4)原料ガス供給停止後に窒素含有ガスを排気ライン内へ供給すると、原料ガス供給停止後に処理室から排気された原料ガスを、排気ライン内に供給された窒素含有ガスにより、より確実に安定状態の塩素含有化合物とすることができる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、処理炉202の構成において排気ラインの排気管228に、NHガスを供給するガス配管238が接続されることと、該ガス配管238の接続に伴い、基板処理方法の一部が変更されることである。その他の点は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
(処理炉の構成)
第2実施形態における処理炉202の構成について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の第2実施形態における基板処理装置の処理炉の垂直断面図である。
【0050】
図3に示すように、排気ラインの排気管228において、APCバルブ255と真空ポンプ246の間には、排気管228に合流するガス配管238が接続されている。ガス配管238には、上流から順に、第2の処理ガス供給源240b、MFC241d、及び開閉バルブ243dが設けられている。このようにして、第2の処理ガス供給源240bから排気管228へ、窒素含有ガスであるNHガスを供給することができる。ガス配管237、第2の処理ガス供給源240b、MFC241c、開閉バルブ243cや、ガス配管238、MFC241d、開閉バルブ243dから、第2ガス供給部が構成される。
【0051】
成膜中に、処理室204とAPCバルブ255との間の排気管227へ窒素含有ガスであるNHガスを多く供給しすぎると、処理室204内の圧力が変化してしまうため、膜厚均一性が悪化してしまう等の問題が起こりがちである。そのため、排気管228にガス配管238を接続し、処理室204とAPCバルブ255との間の排気管227へのNHガスの供給量を少なめにして、APCバルブ255と排気ポンプ246との間の排気管228へのNHガス供給量を、排気管227へのNHガス供給量より多くすることで、成膜中の処理室204内の圧力変化を抑制しつつ、排気ライン内のDCSガスを安定状態の塩素含有化合物(NHCl)とすることができる。
【0052】
あるいは、このとき、NHガスを多く供給して排気管228内を大気圧付近に昇圧することができる。このようにすると、排気管228内の圧力が高い状態、すなわち反応が促進される状態となる。そのため、より一層、速やかに排気ライン内のDCSガスを安定状態の塩素含有化合物にすることができる。
【0053】
(第2実施形態に係る基板処理方法)
次に、第2実施形態に係る基板処理方法について、主に第1実施形態と異なる点を説明する。
第2実施形態のウェハチャージングステップ、ボートローディングステップ、減圧ステップは、第1実施形態と同じである。減圧ステップに続いて、成膜ステップにおいて、ボート217が回転されつつ、所定の原料ガスが、第1、第2のガスノズル224a、225aに供給され、インナチューブ222内の処理室204に導入される。例えば、原料ガスとして、DCSガスが、第1の処理ガス供給源240aから第1のガスノズル224aを介して処理室204に導入され、NHガスが、第2の処理ガス供給源240bから第2のガスノズル225aを介して処理室204に導入される。
本例では、処理室204に導入される処理ガス中のシリコン元素が窒素元素よりも多くなるように、つまり、DCSガスの供給量がNHガスの供給量よりも多くなるように、MFC241aとMFC241bが設定されている。
【0054】
処理室204に導入された原料ガス(DCSとNH)は、インナチューブ222の上端の開口部から、インナチューブ222とアウタチューブ221の間の排気路209に流出して、マニホールド206に開設された排気口227aから排気される。
このようにして、ウェハ200の表面に接触しながら上下で隣合うウェハ200と10との間の空間を平行に流れて行く原料ガスのCVD反応によって、ウェハ200の表面には、シリコン元素が窒素元素よりも多いシリコンリッチなシリコン窒化膜が堆積する。
【0055】
このとき、シリコン窒化膜成膜時において、第2の処理ガス供給源240bからガス配管237を介して排気管227内へ、少量の窒素含有ガスであるNHガスを供給する。ガス配管237から供給されたNHガスは、処理室204から排気管227へ排気されてきたガス中に存在するDCSガスと反応し、安定な塩素含有化合物であるNHClを生成する。
また、第2の処理ガス供給源240bからガス配管238を介して排気管228内へ、排気管227へのNHガス供給量より多い供給量で、窒素含有ガスであるNHガスを供給する。ガス配管238から供給されたNHガスは、処理室204から排気管228へ排気されてきたガス中に存在するDCSガスと反応し、安定な塩素含有化合物であるNHClを生成する。少量のNHガスを直接排気管227内へ、多量のNHガスを直接排気管228内へ供給することにより、処理室204内の圧力変化を抑制しつつ、不安定な塩素含有化合物であるSiClの生成が抑制される。
ここで圧力センサ256は、APCバルブ255よりも上流である処理室204や排気管227内の圧力を検出し、この検出値に基づいてAPCバルブ255の開度を制御することで、処理室204や排気管227内の圧力を制御するため、排気管227内へ直接NHガスを供給しすぎると、排気管227内の圧力が処理室204内の圧力よりも高くなってしまう。制御部280は、処理室204の圧力が設定圧力値となるよう、圧力センサ256の検出値に基づきAPCバルブ255の開度を制御するため、処理室204内の圧力よりも高くなった排気管227内の圧力値に基づき制御することとなり、結果的に処理室204の圧力変化を助長してしまうこととなるが、上述したように構成することにより、かような問題を是正することができる。
【0056】
なお、排気管227内と排気管228内へ供給する窒素含有ガスは、第2の処理ガス供給源240bとは別のガス供給源から供給してもよいし、NHガスとは別のガス、例えばNOガスとしてもよい。
また、第1実施形態と同様に、処理室204への原料ガスの供給より先に、ガス配管237とガス配管238からNHガスを供給するようにすることが好ましく、また、ガス配管237とガス配管238からのNHガス供給は、処理室204への原料ガス供給が終了した後も、所定の時間継続することが好ましい。
【0057】
以上のようにして所望の膜厚のシリコン窒化膜が堆積された後に、原料ガスの供給が停止され、不活性ガスにより、処理室204内が大気圧に復帰された後に、ボートアンローディングステップにおいて、シールキャップ219が下降されることによって処理室204の下端が開口され、ボート217に保持された状態で処理済みのウェハ200群が処理室204から外部に搬出(ボートアンローディング)される。
【0058】
第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果に加えて、次の(1)の効果を奏する。
(1)基板上にシリコンリッチなシリコン窒化膜を堆積させることができるとともに、成膜中の処理室内の圧力変化を抑制しつつ、排気ライン内の原料ガスを安定状態の塩素含有化合物とすることができる。
【0059】
(実施例と従来例との比較)
図4に示す従来のCVD装置において、処理室内温度700℃、処理室内圧力50Pa、処理室内へのDCSガスとNHガスの供給量比を1対1とし、ウェハ200にシリコン窒化膜を形成した。その後、排気管406内のHCl濃度を測定したところ、15ppmであった。
これに対し、図2に示す第1実施形態の処理炉202において、処理室内温度700℃、処理室内圧力50Pa、処理室内へのDCSガスとNHガスの供給量比を2対1とし、かつ、排気管227へのガス配管237からのNHガスの供給量を、処理室内へのDCSガスの供給量よりも2倍以上多く供給しつつ、ウェハ200にシリコンリッチなシリコン窒化膜を形成した。その後、排気管227内のHCl濃度を測定したところ、ほぼ0ppmであった。
これにより、排気管227内の塩素含有化合物の方が、排気管406内の塩素含有化合物よりも、はるかに安定状態であるといえる。
【0060】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、基板上にシリコンリッチなシリコン窒化膜を堆積させる形態について説明したが、これに限らず、基板上に窒素元素がシリコン元素よりも多いシリコン窒化膜を堆積させる形態にも適用可能である。
また、上述した実施形態では処理がウェハに施される場合について説明したが、処理対象はホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクあるいは磁気ディスク等であってもよい。
また、上述した実施形態では、アウターチューブとインナーチューブを用いるバッチ式縦形ホットウオール形装置に適用した場合について説明したが、それに限定されるものではなく、アウターチューブだけを用いてもよく、また、バッチ式横形ホットウオール形装置等の基板処理装置に適用することができる。
【0061】
本発明は、少なくとも以下のような側面から捉えることができる。
本発明の第1の側面は、
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程中に、窒素を含有する第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給し、前記排気ライン内に存在する前記第1の処理ガスと反応させる窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
このようにすると、排気ラインには安定した塩素含有化合物が生成されるので、塩化水素発生の原因となる不安定な塩素含有化合物が、排気ラインに生成されることを抑制することができる。なお、前記第2の処理ガスと前記第3の処理ガスは、同じ処理ガスであってもよい。
【0062】
本発明の第2の側面は、
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程より前の時点および前記成膜工程中、若しくは、前記成膜工程中および前記成膜工程後の時点で、窒素を含有する第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給する窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
このようにすると、窒素を含有する第3の処理ガスが排気ライン内に含まれた状態で、処理室から排気された塩素含有残留ガスを迎えることができ、速やかに塩素含有残留ガスを安定状態の塩素含有化合物とすることができる、若しくは、成膜工程後に残留した塩素含有残留ガスをも、より確実に安定状態の塩素含有化合物とすることができる。なお、前記第2の処理ガスと前記第3の処理ガスは、同じ処理ガスであってもよい。
【0063】
本発明の第3の側面は、
基板を処理する処理室と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、前記処理室内へ供給する第1ガス供給部と、
前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気する排気ラインと、
前記排気ラインへ窒素を含有する第3の処理ガスを供給する第2ガス供給部と、
制御部とを有し、
前記制御部が、
前記第1の処理ガスと前記第2の処理ガスとを、前記処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を成膜し、該成膜中に、前記第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給し、前記排気ライン内に存在する前記第1の処理ガスと反応させるように、前記第1ガス供給部および前記第2ガス供給部とを制御する制御部である基板処理装置。
このようにすると、排気ラインには安定した塩素含有化合物が生成されるので、塩化水素発生の原因となる不安定な塩素含有化合物が、排気ラインに生成されることを抑制することができる。なお、前記第2の処理ガスと前記第3の処理ガスは、同じ処理ガスであってもよい。
【0064】
本発明の第4の側面は、
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、前記第1の処理ガスの供給量が前記第2の処理ガスの供給量の2倍以上となるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程中に、窒素を含有する第3の処理ガスを、前記処理室内への前記第2の処理ガスの供給量以上となるように前記排気ラインへ供給する窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
このようにすると、第1の処理ガスの供給量が前記第2の処理ガスの供給量の2倍以上であっても、排気ラインには安定した塩素含有化合物が生成される。
なお、前記第2の処理ガスと前記第3の処理ガスは、同じ処理ガスであってもよい。
【0065】
本発明の第5の側面は、前記第4の側面の半導体装置の製造方法であって、
前記成膜工程中に、前記第3の処理ガスを、前記処理室内への前記第2の処理ガスの供給量の2倍以上の供給量となるように前記排気ラインへ供給する窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
このようにすると、第1の処理ガスの供給量が前記第2の処理ガスの供給量の2倍以上であっても、排気ラインには安定した塩素含有化合物がより生成されやすくなる。
【0066】
本発明の第6の側面は、
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、前記処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程中に、窒素を含有する第3の処理ガスを前記排気ラインへ途中供給する窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
このようにすると、排気ラインには安定した塩素含有化合物が生成されるので、塩化水素発生の原因となる不安定な塩素含有化合物が、排気ラインに生成されることを抑制することができる。なお、前記第2の処理ガスと前記第3の処理ガスは、同じ処理ガスであってもよい。
【0067】
本発明の第7の側面は、
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、前記処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記排気ラインは、前記処理室の圧力を制御する圧力制御弁と前記処理室との間を接続する第1排気ラインと、前記圧力制御弁と排気装置との間を接続する第2排気ラインとを含み、前記成膜工程中に、窒素を含有する第3の処理ガスを、前記第1排気ラインへ供給するとともに、該第1排気ラインへの供給量よりも多く前記第2排気ラインへ供給する窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
成膜中に、処理室と圧力制御弁との間へ窒素含有ガスを途中供給しすぎると、処理室内の圧力が変化してしまうため、膜厚均一性が悪化してしまう等の問題が起こりがちであるが、上記のように構成すると、処理室と圧力制御弁との間への窒素含有ガスの途中供給量を少なめにして、圧力制御弁と排気ポンプとの間への窒素含有ガス供給量をより多くすることで、成膜中の処理室内の圧力変化を抑制しつつ、排気ライン内の残留塩素含有ガスを安定状態の塩素含有化合物にすることができる。
なお、前記第2の処理ガスと前記第3の処理ガスは、同じ処理ガスであってもよい。
【0068】
本発明の第8の側面は、
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、前記処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記排気ライン内を昇圧し、該昇圧後に窒素を含有する第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給するか、若しくは、窒素を含有する第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給するとともに前記排気ライン内を昇圧する窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
排気ラインに窒素含有ガスを供給する際に、排気ライン内を大気圧付近に昇圧することで、排気ライン内の圧力が高い状態、すなわち反応が促進される状態となる。そのため、上記のように構成すると、より一層、速やかに残留塩素含有ガスを安定状態の塩素含有化合物にすることができる。
なお、前記第2の処理ガスと前記第3の処理ガスは、同じ処理ガスであってもよい。
【0069】
本発明の第9の側面は、
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程中に、窒素を含有する第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給し前記排気ライン内に存在する前記第1の処理ガスと反応させる窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
このようにすると、排気ラインには安定した塩素含有化合物が生成されるので、塩化水素発生の原因となる不安定な塩素含有化合物が、排気ラインに生成されることを抑制することができる。
なお、前記第2の処理ガスと前記第3の処理ガスは、同じ処理ガスであってもよい。
【0070】
本発明の第10の側面は、
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、前記処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程中および前記成膜工程終了後に、窒素を含有する第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給する窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
このようにすると、原料ガス供給停止後に処理室から排気された第1の処理ガスを、排気ライン内に供給された第3の処理ガスにより、成膜工程後に残留した塩素含有残留ガスをも、より確実に安定状態の塩素含有化合物とすることができる。なお、前記第2の処理ガスと前記第3の処理ガスは、同じ処理ガスであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10・基板処理装置、100・カセット、101・筐体、105・カセットステージ、112・ウェハ移載機構、114・カセット棚、115・カセット搬送装置、116・炉口シャッタ、121・ボートエレベータ、123・移載棚、200・ウェハ(基板)、202・処理炉、204・処理室、205・炉口、206・マニホールド、208・ヒータユニット、209・排気路、210・保温筒、217・ボート、219・シールキャップ、221・アウタチューブ、222・インナチューブ、224・第1の処理ガス供給管、224a・第1のガスノズル、225・第2の処理ガス供給管、225a・第2のガスノズル、227・ガス排気管、227a・排気口、228・ガス排気管、237・ガス配管、238・ガス配管、240a・第1の処理ガス供給源、240b・第2の処理ガス供給源、241a・MFC、241b・MFC、241c・MFC、241d・MFC、243a・開閉バルブ、243b・開閉バルブ、243c・開閉バルブ、243d・開閉バルブ、246・真空ポンプ、255・APCバルブ、256・圧力センサ、267・ボート回転機構、280・コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程中に、窒素を含有する第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給し、前記排気ライン内に存在する前記第1の処理ガスと反応させる窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
処理室内に基板を搬入する基板搬入工程と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程より前の時点および前記成膜工程中、若しくは、前記成膜工程中および前記成膜工程後の時点で、窒素を含有する第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給する窒素供給工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板を処理する処理室と、
シリコンおよび塩素を含有する第1の処理ガスと窒素を含有する第2の処理ガスとを、前記処理室内へ供給する第1ガス供給部と、
前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気する排気ラインと、
前記排気ラインへ窒素を含有する第3の処理ガスを供給する第2ガス供給部と、
制御部とを有し、
前記制御部が、
前記第1の処理ガスと前記第2の処理ガスとを、前記処理室内の雰囲気中において窒素元素よりもシリコン元素が多くなるように、前記処理室内へ供給しつつ、前記処理室内の第1の処理ガスを含む雰囲気を排気ラインから排気して、前記基板上にシリコン窒化膜を成膜し、該成膜中に、前記第3の処理ガスを前記排気ラインへ供給し、前記排気ライン内に存在する前記第1の処理ガスと反応させるように、前記第1ガス供給部および前記第2ガス供給部とを制御する制御部である基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−69844(P2012−69844A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214929(P2010−214929)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】