半導体装置の製造方法
【課題】無電解めっき処理を行うに際し、半導体装置の特性変動を防止する半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体基板1のおもて面に、アルミニウム、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層し、エミッタ電極6を形成する。エミッタ電極6として、第1のアルミニウム膜61および第1のニッケル膜62が形成される。次いで、半導体基板1の裏面に、アルミニウムシリコン、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層し、コレクタ電極9を形成する。コレクタ電極9として、第2のアルミニウム膜91および第2のニッケル膜92が形成される。次いで、エミッタ電極6の表面をエッチングする。次いで、エミッタ電極6の表面に形成された表面酸化膜を除去し、エミッタ電極6の表面を活性化する。次いで、半導体基板1のエミッタ電極6およびコレクタ電極9の両面に、同時に、無電解ニッケルめっき処理および置換金めっき処理を連続して行う。
【解決手段】半導体基板1のおもて面に、アルミニウム、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層し、エミッタ電極6を形成する。エミッタ電極6として、第1のアルミニウム膜61および第1のニッケル膜62が形成される。次いで、半導体基板1の裏面に、アルミニウムシリコン、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層し、コレクタ電極9を形成する。コレクタ電極9として、第2のアルミニウム膜91および第2のニッケル膜92が形成される。次いで、エミッタ電極6の表面をエッチングする。次いで、エミッタ電極6の表面に形成された表面酸化膜を除去し、エミッタ電極6の表面を活性化する。次いで、半導体基板1のエミッタ電極6およびコレクタ電極9の両面に、同時に、無電解ニッケルめっき処理および置換金めっき処理を連続して行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に電力変換装置などに用いられるパワー半導体装置であって、半導体装置のおもて面および裏面に電極を有する80〜200μmの厚さの半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体装置の一つであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電解効果トランジスタ)の高速スイッチング特性および電圧駆動特性と、バイポーラトランジスタの低オン電圧特性を有するワンチップのパワーデバイスである。その応用範囲は、汎用インバータ、ACサーボ、無停電電源(UPS)またはスイッチング電源などの産業分野から、電子レンジ、炊飯器またはストロボなどの民生機器分野へと拡大してきている。また、新しいチップ構造を用いた、より低オン電圧のIGBTが開発されており、IGBTを用いた応用装置の低損失化や高効率化が図られてきている。
【0003】
IGBTには、パンチスルー(以下、PTとする)型、ノンパンチスルー(以下、NPTとする)型、フィールドストップ(以下、FSとする)型などの構造があり、一部の用途を除いて、nチャネル型の縦型二重拡散構造のものが主流である。従って、本明細書では、nチャネル型IGBTを例にして説明するが、pチャネル型IGBTでも同様である。
【0004】
PT型IGBTは、p+半導体基板上にn+バッファ層とn-活性層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル基板を用いて形成される。そのため、例えば耐圧600V系の半導体装置では、活性層の厚さは100μm程度で十分であるが、p+半導体基板の部分を含む総厚さは200〜300μm程度と、厚くなる。また、エピタキシャル基板を用いるため、コストが高くなる。
【0005】
そこで、エピタキシャル基板の代わりに、フローティングゾーン(FZ)法により作製された半導体インゴットから切り出されたFZ基板を用いることによって低コスト化を図ったNPT型やFS型のIGBTが開発されている。これらのIGBTでは、半導体装置の裏面に低ドーズ量の浅いp+コレクタ層(低注入p+コレクタ)が形成される。
【0006】
図11は、FZ基板を用いて作製されたNPT型IGBTの構成を示す断面図である。図11に示すように、NPT型IGBTは、例えばFZ基板よりなるn-型の半導体基板1を活性層とし、そのおもて面の表面層にp+ベース領域2、n+エミッタ領域3が選択的に形成される。そして、半導体基板1の表面には、ゲート酸化膜4を介してゲート電極5が形成される。エミッタ電極6は、n+エミッタ領域3およびp+ベース領域2と接触し、かつ層間絶縁膜7によりゲート電極5から絶縁される。また、半導体基板1の裏面には、p+コレクタ層8およびコレクタ電極9が形成される。エミッタ電極6およびコレクタ電極9は、例えばアルミニウム(Al)等の金属を蒸着またはスパッタして形成される。
【0007】
このようなNPT型IGBTは、PT型IGBTよりも基板の総厚さが大幅に薄くなる。また、NPT型IGBTは、正孔の注入率を制御することができるため、ライフタイム制御を行わなくても、高速スイッチングが可能である。また、NPT型IGBTは、エピ
タキシャル基板を用いずにFZ基板を用いて作製されるため、PT型IGBTに比べて安価である。
【0008】
図12は、FS型IGBTの構成を示す断面図である。図12に示すように、半導体基板の表面構造は、図11に示すNPT型IGBTと同じである。半導体基板1の裏面には、半導体基板1とp+コレクタ層8との間に、nバッファ層10が設けられる。FS型IGBTでは、FZ基板を用いることによって、基板の総厚さが80〜200μmとなる。そして、PT型IGBTと同様に、活性層である半導体基板1を空乏化させるため、600V耐圧の半導体装置では、半導体基板1の厚さは100μm程度である。また、NPT型IGBTと同様に、ライフタイム制御は不要である。近時、オン電圧のより一層の低減を図るため、チップ表面に狭く深い溝を形成し、この溝の側面にMOSFETを形成したトレンチ構造と、FS型構造を組み合わせた構造のIGBTも提案されている。
【0009】
上述のような半導体装置を製造する方法として、次のような方法が提案されている。シリコン基板の第1の主面側に素子の表面構造を形成し、第2の主面を研削加工して基板を薄くした後、第2の主面側にバッファ層およびコレクタ層を形成する。その後、コレクタ層の表面に、厚さが0.3μm以上1.0μm以下で、シリコン濃度が0.5wt%以上2wt%以下、好ましくは1wt%以下のアルミニウムシリコン膜を形成する。そして、アルミニウムシリコン膜の形成に続いて、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)および金(Au)などの複数の金属を蒸着またはスパッタにより形成し、コレクタ電極を形成する。チタン膜、ニッケル膜および金膜は、それぞれバッファ金属膜、はんだ接合金属膜および保護金属膜である(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0010】
また、半導体装置の実装において、コレクタ電極などの裏面電極は、はんだを用いて接合される。一方、エミッタ電極などのおもて面電極はアルミワイヤーを用いたワイヤボンディング技術を用いて接合されるのが主流である。しかし、最近では、おもて面電極においても、はんだ接合が用いられることがある。おもて面電極の接合に、はんだ接合を用いることで、高密度実装化、電流密度向上、スイッチング速度の高速化のための配線容量低減、半導体装置の冷却効率向上などを大幅に改善することができる。
【0011】
はんだ接合により実装された半導体装置として、次のような方法が提案されている。各半導体チップの表面にEヒートシンクがはんだにより接合され、裏面に第2の導体部材がはんだにより接合され、Eヒートシンクの表面に第3の導体部材がはんだにより接合されている。Eヒートシンクには段差部が設けられて薄肉部が形成されており、Eヒートシンクと各半導体チップとの接合面積よりEヒートシンクと第3の導体部材との接合面積が小さくなっている。第2の導体部材の裏面と第3の導体部材の表面とが露出した状態で、各部材が樹脂封止されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0012】
また、別の装置として、半導体素子と、この半導体素子の裏面に接合され電極と放熱を兼ねる第1の金属体と、前記半導体素子の表面側に接合され電極と放熱を兼ねる第2の金属体と、前記半導体素子の表面と前記第2の金属体との間に接合された第3の金属体とを備え、装置のほぼ全体を樹脂でモールドした半導体装置において、前記半導体素子表面のせん断応力、または、前記半導体素子と前記金属体とを接合する接合層における歪み成分等を低減させるように、前記半導体素子の厚さを薄くすると共に、前記モールド樹脂により装置全体を拘束保持するように構成したことを特徴とし、前記接合層をSn系はんだで構成する半導体装置が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。
【0013】
実際に、おもて面電極のはんだ接合を行う場合、おもて面電極の表面にニッケル等のめっきを施す必要がある。めっき処理法としては、電気めっき法や無電解めっき法などが一
般的である。電気めっき法は、外部電流を供給することにより溶液中の金属イオンを還元析出させる方法である。一方、無電解めっき法は、電気を使用することなく、溶液中の金属イオンを化学的に還元析出する方法である。そのため、無電解めっき法を用いためっき処理は、対極や直流電源などの電気回路を必要とする電気めっき法よりも、製造装置や製造工程を簡略化することができる。
【0014】
無電解めっき法を用いて電極表面にめっき処理を行う方法として、次のような方法が提案されている。半導体基板のパッド電極上に無電解めっき皮膜を形成する方法であって、そのパッド電極を選択的に活性化する工程と、前記半導体基板を無電解めっき液に浸漬すると同時に、外部電源により前記半導体基板に電位を印加しながら無電解めっき皮膜を析出させる工程とを有する。前記活性化する工程は、触媒付与法と亜鉛置換法のいずれかである(例えば、下記特許文献4参照。)。
【0015】
また、別の方法として、次のような方法が提案されている。半導体素子が形成された半導体基板上に層間絶縁膜が設けられている。そして、この層間絶縁膜上に形成された第1表面電極の表面には、コンタクトホールの形状に応じた凹部が複数設けられ、第1裏面電極の表面はエッチング処理によってでこぼこになっていることで、第1表面電極の表面積と第1裏面電極の表面積との差が小さくされている。また、第2表面電極および第2裏面電極は、第1表面電極および第1裏面電極の表面それぞれに同時に湿式めっきの方法により形成されている。具体的には、ウェハ表裏面に同時に例えばNiをめっきする。これにより、ウェハ表面側に第2表面電極を形成し、ウェハ裏面側に第2裏面電極を形成する。そして、ウェハ表裏面に同時に湿式めっきを施し、めっき層を形成する。すなわち、第2表面電極の表面、第2裏面電極の表面それぞれに例えばAuのめっき層を形成する(例えば、下記特許文献5参照。)。
【0016】
また、おもて面電極に無電解めっき処理を行う場合、おもて面電極の主成分である例えばアルミニウムの表面には、不働態膜が形成されているため、密着性の高いめっき膜を形成することが難しい。このため、おもて面電極の表面を活性化し、おもて面電極とめっき膜との密着力を向上させる必要がある。おもて面電極とめっき膜との密着力を向上する方法として、例えばジンケート処理が公知である(例えば、下記特許文献4および下記特許文献6)。
【0017】
無電解めっき処理の前処理としてジンケート処理を用いためっき処理過程について説明する。図13は、従来の半導体装置におけるめっき処理過程を示すフローチャートである。この処理は、例えばアルミニウム合金からなるおもて面電極の表面に対して行われる。めっき浴の還元剤として、例えばホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)が用いられる。図13に示すように、まず、脱脂処理を行う(ステップS21)。ステップS21において、おもて面電極の表面に付着した油脂や異物が除去される。また、次に続く工程の例えばエッチング液などの、おもて面電極の表面に対する濡れ性が改善される。なお、脱脂処理では、通常、アルカリ溶液が用いられる。このアルカリ溶液として、例えば20〜30g/dm3の水酸化ナトリウム(NaOH)、20〜30g/dm3の炭酸ナトリウム(Na2CO3)、20〜30g/dm3のリン酸三ナトリウム(Na3PO4)および1〜2g/dm3の界面活性剤(NaOH)を含む溶液を用いることができる。
【0018】
次いで、酸溶液またはアルカリ溶液を用いて、エッチングを行う(ステップS22)。ステップS22において、おもて面電極の表面の自然酸化膜が除去される。次いで、硝酸(HNO3)を用いて、酸洗浄を行う(ステップS23)。ステップS23において、前の工程におけるエッチングにより生じた、おもて面電極の表面の不純物(スマット)などが除去される。次いで、第1のジンケート処理を行う(ステップS24)。ステップS24において、おもて面電極のアルミニウムが亜鉛(Zn)に置換され、おもて面電極の表面に亜鉛膜が生成される。次いで、硝酸を用いて、酸洗浄を行う(ステップS25)。ステップS25において、おもて面電極の表面に形成された亜鉛膜が除去される。次いで、第2のジンケート処理を行う(ステップS26)。ステップS26において、再度、おもて面電極の表面に亜鉛膜が生成される。
【0019】
次いで、無電解めっき処理により、ニッケルめっき膜を形成する(ステップS27)。ステップS27において、無電解めっき浴中のニッケルイオンと、おもて面電極の表面の亜鉛膜との間で、穏やかに置換反応が起こる。めっき浴中のニッケルイオンと、還元剤である次亜リン酸ナトリウムとの酸化還元反応により、おもて面電極の表面に、ニッケルめっき膜が形成される。このときの酸化還元反応式については、後述する。次いで、無電解めっき処理により、置換金めっき膜を形成する(ステップS28)。ステップS28において、置換金めっき浴中の金イオンと、ニッケルめっき膜のニッケルの還元反応により、ニッケルめっき膜の表面に、置換金めっき膜が形成される。なお、図13に示すめっき処理過程は、ある処理と次の処理の間において、おもて面電極の表面の水洗い処理が行われる。
【0020】
また、還元剤に次亜リン酸ナトリウムを用いた場合の、無電解ニッケルめっき(ステップS27)の反応式は、次の(1)式〜(3)式となる。
【0021】
H2PO2- + H2O → H2PO3- + 2H+ + 2e- ・・・(1)
【0022】
Ni2+ +2e- → Ni ・・・(2)
【0023】
H2PO2- + 2H+ + e- → 2H2O + P ・・・(3)
【0024】
(1)式は、還元剤の酸化反応式である。また、(2)式は、めっき浴中のニッケルイオンの還元反応式である。また、(2)式の反応と同時にリンが析出する反応が起き、そのときの反応式が、(3)式となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2007−36211号公報
【特許文献2】特開2002−110893号公報
【特許文献3】特開2003−110064号公報
【特許文献4】特開2003−96573号公報
【特許文献5】特開2007−19412号公報
【特許文献6】特開2003−13246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、上述した図13に示すめっき処理過程によりめっき膜を形成した場合、半導体装置の特性が変動してしまう恐れがあることが新たに判明した。半導体装置に特性変動が生じる原因の一つは、エミッタ電極6中のアルミニウムが溶出することにより、エミッタ電極6の一部に、半導体基板1の表面にまで達する孔(以下、孔食とする)が発生することであると推測される。
【0027】
図14は、従来の半導体装置の製造方法における正常時のおもて面電極について示す断面図である。また、図15は、従来の半導体装置の製造方法における異常時のおもて面電極について示す断面図である。正常にめっき処理が行われた半導体装置では、図14に示すように、エミッタ電極6の表面に、ニッケルめっき膜11および図示省略する置換金めっき膜が順に積層される。それ以外の構成は、図12に示す半導体装置と同様である。このように、ニッケルめっき膜11は、エミッタ電極6の上に形成される。そのため、ニッケルめっき膜11は、半導体基板1と接触しない。
【0028】
それに対して、エミッタ電極6に孔食20が発生している場合、図15に示すように、ニッケルめっき膜11は、半導体基板1と接触してしまう。孔食20は、無電解めっき処理(図13のステップS27)の前処理として、表面酸化膜除去後にエミッタ電極6にエッチングを行うこと(図13のステップS23など)や、エミッタ電極6の表面にジンケート処理(図13のステップS24〜ステップS26)を行うことにより発生すると推測される。
【0029】
まず、表面酸化膜を除去した後にエッチングを行った場合の、エミッタ電極6について説明する。通常、エミッタ電極6の主成分であるアルミニウムは、耐食性に優れた表面酸化膜を有している。この表面酸化膜は、酸やアルカリに対して強固な耐食性を有する。この表面酸化膜を除去した場合、エミッタ電極6の表面は、酸やアルカリに対する耐食性が著しく低下した状態となる。その状態で、酸やアルカリを用いて、エミッタ電極6の表面をエッチングすると、エッチングが速く進んでしまう。また、エッチングの進行速度は結晶方位によって異なる。例えばエミッタ電極6の(111)面では、エミッタ電極6の(110)面や(100)面と比較してエッチングが速く進む。そのため、エミッタ電極6の表面において、エッチングの進行が極端に速くなってしまう部分が発生しやすくなっているといえる。このエッチングの進行速度の違いにより、エミッタ電極6に、半導体基板1の表面に達するほどの凹凸が形成されてしまうため、エミッタ電極6に孔食20が発生すると推測される。
【0030】
次に、ジンケート処理を行った場合のエミッタ電極6について説明する。中田毅らは、「Al単結晶表面上へのジンケート処理と無電解Ni−Pめっき」(表面技術、Vol.48、No.8(1997))の中で、アルミニウムのジンケート処理では、アルミニウム表面への亜鉛の析出密度が、アルミニウムの(111)面で高く、アルミニウムの(100)面や(110)面では低いということを報告している。そのため、アルミニウムの(100)面や(110)面では、アルミニウムが亜鉛に置換される際に、アルミニウムの溶出の速さに、亜鉛の析出が追いつかない恐れが生じる。つまり、アルミニウムを主成分とするエミッタ電極6では、エミッタ電極6の表面に亜鉛が析出せずに、アルミニウムの局所的なエッチングが進行してしまう可能性がある。その結果、エミッタ電極6に孔食20が発生すると推測される。
【0031】
エミッタ電極6に孔食20が発生している状態(図15参照)で、半導体装置に無電解めっき処理を行う場合、ニッケルめっき膜11は、エミッタ電極6の孔食20の部分で半導体基板1と接触することになる。一般的な無電解ニッケルめっき浴には、例えばナトリウム(Na)などのアルカリ金属が含まれている。そのため、孔食20が発生している半導体装置では、このアルカリ金属が、ニッケルめっき膜11と半導体基板1との界面に残留してしまう可能性がある。ニッケルめっき膜11と半導体基板1との界面に残留するアルカリ金属は、半導体装置の実装時、はんだ接合などの熱処理により、ゲート酸化膜4へと拡散し、半導体装置の特性を変動させてしまう可能性が生じる。
【0032】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、半導体装置の特性変動を防止することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる半導体装置の製造方法は、以下の特徴を有する。半導体基板の表面におもて面電極を有する半導体装置を製造する方法である。まず、半導体基板のおもて面に第1の金属膜を形成する第1の金属膜形成工程を行う。次いで、前記第1の金属膜の表面に第2の金属膜を形成する第2の金属膜形成工程を行う。次いで、前記第2の金属膜の表面を活性化する表面活性化工程を行う。次いで、湿式めっき法により、前記第2の金属膜の表面にめっき膜を形成するめっき膜形成工程を行う。このとき、前記第2の金属膜形成工程では、前記第2の金属膜として、前記めっき膜形成工程で用いられるめっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める第1の物質を主成分とする金属膜を形成する。
【0034】
また、請求項2の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1に記載の発明において、さらに、前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間で、前記第2の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第2のパターン形成工程を行う。そして、前記第2のパターン形成工程と前記表面活性化工程との間で、前記第1の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第1のパターン形成工程を行う。
【0035】
また、請求項3の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1に記載の発明において、さらに、前記第1の金属膜形成工程と前記第2の金属膜形成工程との間で、前記第1の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第1のパターン形成工程を行う。そして、前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間で、前記第2の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第2のパターン形成工程を行う。
【0036】
また、請求項4の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、前記表面活性化工程は、前記第2の金属膜の表面の酸化膜を除去する工程を含むことを特徴とする。
【0037】
また、請求項5の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、前記めっき膜形成工程は、前記第2の金属膜の表面に、第1のめっき膜を形成する工程を行う。このとき、前記第1のめっき膜として、前記めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める第2の物質を主成分とするめっき膜を形成する。
【0038】
また、請求項6の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項5に記載の発明において、前記第2の物質はニッケルであることを特徴とする。
【0039】
また、請求項7の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項5または6に記載の発明において、前記めっき膜形成工程は、さらに、前記第1のめっき膜の表面に、第2のめっき膜を形成する工程を行う。このとき、前記第2のめっき膜として、前記第1のめっき膜との間で置換反応を起こす第3の物質を主成分とするめっき膜を形成する。
【0040】
また、請求項8の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項7に記載の発明において、前記第3の物質は金であることを特徴とする。
【0041】
また、請求項9の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜8のいずれか一つに記載の発明において、前記第1の金属膜を蒸着法またはスパッタリング法により形成することを特徴とする。
【0042】
また、請求項10の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜9のいずれか一つに記載の発明において、前記第1の金属膜は、アルミニウムを主成分とする膜であることを特徴とする。
【0043】
また、請求項11の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜10のいずれか一つに記載の発明において、前記第1の金属膜をアルミニウムシリコンまたはアルミニウムシリコン銅で形成することを特徴とする。
【0044】
また、請求項12の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜11のいずれか一つに記載の発明において、前記第2の金属膜は、高融点を有する第3の金属膜と、前記第1の物質を主成分とする膜とがこの順に積層された金属積層膜であることを特徴とする。
【0045】
また、請求項13の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項12に記載の発明において、前記第3の金属膜を、チタン、モリブデン、クロム、コバルトまたはタングステンで形成することを特徴とする。
【0046】
また、請求項14の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜13のいずれか一つに記載の発明において、前記第1の物質は、ニッケルであることを特徴とする。
【0047】
また、請求項15の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜14のいずれか一つに記載の発明において、前記湿式めっき法は、無電解めっき法であることを特徴とする。
【0048】
また、請求項16の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜15のいずれか一つに記載の発明において、さらに、前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間に、前記半導体基板の裏面に裏面電極を形成する裏面電極形成工程を行う。このとき、前記第1の金属膜形成工程および前記第2の金属膜形成工程では、前記半導体基板のおもて面におもて面電極として、前記第1の金属膜および前記第2の金属膜を形成する。そして、前記めっき膜形成工程では、前記おもて面電極の表面および前記裏面電極の表面に、同時に前記めっき膜を形成する。
【0049】
また、請求項17の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項16に記載の発明において、さらに、前記第1の金属膜形成工程と前記裏面電極形成工程との間に、前記半導体基板の裏面を加工して基板厚さを200μm以下に薄くする基板薄化工程を行う。
【0050】
上述した発明によれば、おもて面電極の最表面層である第2の金属膜が、めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速めるニッケルを主成分として形成されている。かつ、無電解めっき処理前に、おもて面電極の表面が活性化されている。これにより、無電解めっき処理において、第2の金属膜と還元剤の酸化還元反応のみで、第2の金属膜の表面に、第1のめっき膜を連続して析出することができる。そのため、従来のめっき過程において、無電解めっき処理の前処理として行っていた、表面酸化膜除去後におもて面電極に行われるエッチングや、おもて面電極の表面へのジンケート処理が不要となる。これにより、第1の金属膜に孔食(図15参照)が生じることを防止することができ、半導体装置の特性が変動することを防止することができる。上述した効果は、半導体装置の裏面電極に適用した場合にも、有効である。
【発明の効果】
【0051】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、半導体装置の特性が変動することを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態にかかる半導体装置を示す断面図である。
【図2】実施の形態にかかる半導体装置のおもて面電極の別の一例について示す断面図である。
【図3】実施の形態にかかる半導体装置の裏面電極の別の一例について示す断面図である。
【図4】実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態にかかる半導体装置のめっき処理過程を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【図7】実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【図8】実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【図9】実施の形態にかかるめっき膜とめっき浴中の還元剤との組み合わせを示す図である。
【図10】実施の形態にかかるエッチング方法について示す図である。
【図11】NPT型IGBTの構成を示す断面図である。
【図12】FS型IGBTの構成を示す断面図である。
【図13】従来の半導体装置のめっき処理過程を示すフローチャートである。
【図14】従来の半導体装置の製造方法における正常時のおもて面電極について示す断面図である。
【図15】従来の半導体装置の製造方法における異常時のおもて面電極について示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置およびその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明およびすべての添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0054】
図1は、実施の形態にかかる半導体装置を示す断面図である。図1に示すように、半導体装置のおもて面では、半導体基板1の表面層の一部に、p+ベース領域2が設けられている。p+ベース領域2の表面層の一部には、n+エミッタ領域3が選択的に設けられている。ゲート電極5は、半導体基板1の一部の表面に、ゲート酸化膜4を介して設けられている。エミッタ電極6は、p+ベース領域2およびn+エミッタ領域3と接触し、かつ層間絶縁膜7によりゲート電極5から絶縁される。エミッタ電極6は、アルミニウムを主成分とする金属膜(以下、第1のアルミニウム膜とする)61と、ニッケルを主成分とする金属膜(以下、第1のニッケル膜とする)62がこの順に積層されてなる。第1のニッケル膜62の表面には、ニッケルめっき膜11および置換金めっき膜12が積層されている。
【0055】
半導体装置の裏面では、半導体基板1の表面層の一部に、図示省略するnバッファ層およびp+コレクタ層が設けられている。コレクタ電極9は、p+コレクタ層の表面に設けられている。コレクタ電極9は、アルミニウムを主成分とする金属膜(以下、第2のアルミニウム膜とする)91と、ニッケルを主成分とする金属膜(以下、第2のニッケル膜とする)92がこの順に積層されてなる。第2のニッケル膜92の表面には、ニッケルめっき膜11および置換金めっき膜12が積層されている。エミッタ電極6は、おもて面電極に相当する。コレクタ電極9は、裏面電極に相当する。第1のアルミニウム膜61および第2のアルミニウム膜91は、第1の金属膜に相当する。第1のニッケル膜62および第2のニッケル膜92は、第2の金属膜に相当する。ニッケルめっき膜11は、第1のめっき膜に相当する。置換金めっき膜12は、第2のめっき膜に相当する。
【0056】
図2は、実施の形態にかかる半導体装置のおもて面電極の別の一例について示す断面図である。図2では、電極以外のその他の半導体構造は、図示省略する(以下、図3についても同様)。エミッタ電極6は、第1のアルミニウム膜61と第1のニッケル膜62との間に、チタンを主成分とする金属膜(以下、第1のチタン膜とする)63を備えていても良い。第1のチタン膜63は、高融点を有する。
【0057】
図3は、実施の形態にかかる半導体装置の裏面電極の別の一例について示す断面図である。コレクタ電極9は、第2のアルミニウム膜91と第2のニッケル膜92との間に、チタンを主成分とする金属膜(以下、第2のチタン膜とする)93を備えていても良い。第1のチタン膜63および第2のチタン膜93は、第3の金属膜に相当する。
【0058】
また、図1〜図3に示す半導体装置において、第1のアルミニウム膜61に代えて、アルミニウムシリコン(AlSi)の金属膜、またはアルミニウムシリコン銅(AlSiCu)の金属膜としても良い。第2のアルミニウム膜91についても同様である。また、第1のチタン膜63に代えて、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、コバルト(Co)またはタングステン(W)を主成分とした金属膜としても良い。第2のチタン膜93についても同様である。
【0059】
第2のアルミニウム膜91としてアルミニウムシリコンの金属膜を形成することにより、はんだ接合における実装に際し、基板温度が上昇することにより発生するアルミスパイクの影響を低減させることができる。特に、半導体基板1中のnバッファ層の厚さが1μm以下である半導体装置において、その効果が大きく発揮される。このとき、アルミニウムシリコン膜の膜厚は、例えば0.5μmであっても良い。また、アルミニウムシリコン膜のシリコン濃度は、0.5wt%以上2wt%以下であるのがよく、特に1wt%以下であるのが好ましい。
【0060】
次に、半導体装置の製造方法について説明する。図4は、実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示すフローチャートである。まず、図4に示すように、半導体基板1のおもて面の表面構造を形成する(ステップS1)。次いで、半導体基板1のおもて面に、アルミニウム、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層し、エミッタ電極6を形成する。次いで、エミッタ電極6にパターニング処理を行う(ステップS2)。次いで、半導体基板1の裏面全体にバックグラインドおよびエッチングを行い、半導体基板1を薄くする(ステップS3)。次いで、薄膜化した半導体基板1の裏面に、例えばリンおよびボロンを順次イオン注入し、熱処理を行う(ステップS4)。次いで、バッファ層やコレクタ層などの半導体領域を形成する。次いで、コレクタ層の表面の自然酸化膜を希フッ酸(HF)で除去する。その後、コレクタ層の表面に、アルミニウムシリコン、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層し、コレクタ電極9を形成する(ステップS5)。次いで、半導体基板1のエミッタ電極6およびコレクタ電極9の両面に、同時に、無電解めっき処理を行う(ステップS6)。
【0061】
次に、上述したステップS6の工程における無電解めっき処理方法について説明する。図5は、実施の形態にかかる半導体装置のめっき処理過程を示すフローチャートである。図5に示すように、まず、エミッタ電極6の表面をクリーナーで脱脂してエッチング液の濡れ性を向上させる(ステップS11)。次いで、エッチングでエミッタ電極6の表面に形成された表面酸化膜を除去する(ステップS12)。次いで、エミッタ電極6の表面を活性化する。次いで、半導体基板1のエミッタ電極6およびコレクタ電極9の両面に、同時に、無電解ニッケルめっき処理を行う(ステップS13)。次いで、半導体基板1のエミッタ電極6およびコレクタ電極9の両面に、同時に、置換金めっき処理を連続して行う(ステップS14)。なお、図5に示すめっき処理過程は、ある処理と次の処理の間において、半導体装置の水洗いが行われる。
【0062】
図6〜図8は、実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示す断面図である。上述したステップS1の工程において、図6に示すように、半導体基板1の表面層の一部に、p+ベース領域2およびn+エミッタ領域3が形成される。また、半導体基板1の一部の表面に、ゲート酸化膜4、ゲート電極5および層間絶縁膜7が形成される。層間絶縁膜7は、ゲート電極5を覆うように形成される。
【0063】
上述したステップS2の工程において、図7に示すように、エミッタ電極6として、第1のアルミニウム膜61および第1のニッケル膜62が形成される。エミッタ電極6は、p+ベース領域2およびn+エミッタ領域3の一部の表面に接触し、層間絶縁膜7の表面に形成される。第1のアルミニウム膜61および第1のニッケル膜62の膜厚は、それぞれ例えば1.0μmおよび0.5μmであっても良い。
【0064】
ステップS2において、エミッタ電極6に行うパターニング処理は、第1のアルミニウム膜61および第1のニッケル膜62を積層した後に、第1のニッケル膜62、第1のアルミニウム膜61の順にそれぞれエッチングを行う。または、第1のアルミニウム膜61を形成した後に、第1のアルミニウム膜61のエッチングを行う。その後に続けて、パターン形成後の第1のアルミニウム膜61の表面に、第1のニッケル膜62を形成し、第1のニッケル膜62のエッチングを行っても良い。このとき、第1のアルミニウム膜61については、プラズマエッチング装置を用いて、例えば三塩化ホウ素(BCl3)や塩素ガス(Cl2)を導入したドライエッチング(乾式エッチング)によりパターニングを行っても良い。第1のニッケル膜62については、例えば硝酸とフッ酸を混合したエッチング液を用いて、ウエットエッチング(湿式エッチング)によりパターニングを行っても良い。ニッケル膜をパターニングする際のエッチング条件については、後述する。
【0065】
上述したステップS3〜S5の工程において、半導体基板1の裏面をバックグラインド(研削)し、半導体基板1の厚さを200μm以下の例えば160μmの厚さになるまで薄くする。さらに、エッチングにより、半導体基板1の裏面を例えば20μm薄くする。その後、半導体基板1の裏面に、図示省略するバッファ層およびコレクタ層を形成する。そして、図8に示すように、半導体基板1の裏面に、コレクタ電極9として、第2のアルミニウム膜91および第2のニッケル膜92を形成する。第2のアルミニウム膜91および第2のニッケル膜92の各膜厚は、それぞれ例えば0.5μmおよび0.7μmであっても良い。なお、ステップS3のエッチングでは、バックグラインドによるダメージ層が除去される。エッチングの方法としては、例えば、ドライエッチングやスピンエッチングが用いられる。
【0066】
なお、上述したステップS3における半導体基板1の厚さを200μm以下とする工程は、図4に示す製造過程の順序で行うことに限るものではない。例えば、エミッタ電極6として第1のアルミニウム膜61を形成した後、エミッタ電極6として第1のニッケル膜62などを積層する前に、半導体基板1の厚さを薄くしても良い。つまり、ステップS2の工程の途中で、半導体基板1の裏面にバックグラインドやエッチングなどを行っても良い。従って、ステップS3の工程は、エミッタ電極6として第1のアルミニウム膜61を形成する工程と、半導体基板1の裏面にコレクタ電極9を形成する工程(ステップS5)との間であれば、処理の順序を変更することが可能である。
【0067】
上述したステップS6の工程において、図1に示すように、エミッタ電極6およびコレクタ電極9の表面に、同時にニッケルめっき膜11が形成される。そして、そのニッケルめっき膜11の表面に置換金めっき膜12が形成される。ニッケルめっき膜11および置換金めっき膜12の各膜厚は、それぞれ例えば5μmおよび0.03μmであっても良い。ステップS6の工程では、エミッタ電極6とニッケルめっき膜11との密着性を向上させるため、無電解ニッケルめっき処理の前処理として、エミッタ電極6の表面を活性化させる処理を行う。
【0068】
上述したステップS11およびステップS12の工程において、第1のニッケル膜62の表面に付着した付着物や、表面が加工されたことによって生じた変質層が除去される。そして、第1のニッケル膜62の表面酸化膜を除去し、エミッタ電極6の表面を活性化させる。これにより、エミッタ電極6とニッケルめっき膜11との密着性が向上する。なお、第2のニッケル膜92の表面にも同様の処理を行い、コレクタ電極9の表面を活性化させても良い。ニッケル膜の表面酸化膜を除去する際のエッチング条件については、後述する。
【0069】
上述したステップS13およびステップS14の工程において、無電解ニッケルめっき処理および置換金めっき処理を連続して行い、半導体基板1のエミッタ電極6およびコレクタ電極9の両面に、同時にニッケルめっき膜11および置換金めっき膜12を形成する。ニッケルめっき浴には、還元剤として例えば次亜リン酸ナトリウムが添加されていても良い。その理由については、後述する。また、ニッケルめっき浴に添加される還元剤の別の一例については、後述する。このようにして、図1に示す半導体装置が完成する。
【0070】
なお、第1のチタン膜63を形成する場合(図2参照)は、ステップS2において、半導体基板1のおもて面に、アルミニウム、チタン、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層する。このとき、第1のチタン膜63の膜厚は、例えば0.5μmであっても良い。
【0071】
また、第1のチタン膜63を形成した場合、第1のチタン膜63のパターニングは、エミッタ電極6として第1のアルミニウム膜61、第1のチタン膜63および第1のニッケル膜62を積層した後に、第1のニッケル膜62、第1のチタン膜63、第1のアルミニウム膜61の順にそれぞれエッチングを行っても良い。または、第1のアルミニウム膜61および第1のチタン膜63を積層した後に、第1のチタン膜63、第1のアルミニウム膜61の順にエッチングを行う。その後に続けて、第1のニッケル膜62の形成およびパターニングを行っても良い。このとき、第1のチタン膜63のパターニングを、第1のアルミニウム膜61のパターニングと同様のエッチング条件で行っても良い。
【0072】
また、第2のチタン膜93を形成する場合(図3参照)は、ステップS5において、半導体基板1の裏面に、アルミニウムシリコン、チタン、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層する。このとき、第2のチタン膜93の膜厚は、例えば0.2μmであっても良い。
【0073】
エミッタ電極6として第1のチタン膜63を設けることにより、第1のニッケル膜62もしくはニッケルめっき膜11、またはその両方の膜厚を、薄くすることができる。その理由は、以下に示すとおりである。ニッケルめっき膜11は、はんだ接合における、エミッタ電極6とはんだとの密着性を向上させるために設けられる。例えばSnAgCu系の鉛フリーはんだを用いて、300℃程度の熱処理ではんだ接合を行う場合、第1のニッケル膜62を含めたニッケルめっき膜11(以下、ニッケル膜等とする)の厚さは、3μm以上必要となる。しかしながら、はんだ接合時の熱処理によりニッケルがはんだの中に拡散し、ニッケル膜等は、例えば0.3〜2.0μm程度に薄くなってしまう。ニッケル膜等が薄くなり、エミッタ電極6の表面に第1のアルミニウム膜61が露出した場合、第1のアルミニウム膜61とはんだが接触することになる。第1のアルミニウム膜61は、はんだとの密着性が低いので、エミッタ電極6とはんだとの界面で剥離が生じてしまう。それに対して、ニッケル膜等と第1のアルミニウム膜61との間に第1のチタン膜63が存在する場合、ニッケル膜等にその下層に達する凹部が生じたとしても、エミッタ電極6の表面には第1のチタン膜63が露出する。従って、第1のアルミニウム膜61とはんだが接触することを回避することができる。また、第1のチタン膜63は、はんだとの密着性が高いため、エミッタ電極6の表面に第1のチタン膜63が露出しても、エミッタ電極6とはんだとの密着性を確保することができる。これにより、第1のニッケル膜62またはニッケルめっき膜11を薄くしたとしても、エミッタ電極6とはんだとの密着性を確保することができる。第2のチタン膜93についても、第1のチタン膜63と同様である。なお、チタン膜の代わりに、モリブデン膜、クロム膜、コバルト膜またはタングステン膜を形成しても同様の効果が得られる。
【0074】
また、エミッタ電極6の、めっきされる表面はニッケルを用いて形成されている(第1のニッケル膜62)が、ニッケルに限らず、無電解めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める物質(第1の物質)であれば良い。また、エミッタ電極6の表面にニッケルを析出させてめっき膜(ニッケルめっき膜11)を形成しているが、エミッタ電極6の表面に析出する物質が、無電解めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める物質(第2の物質)であれば良い。例えば、一例として、第1のニッケル膜62およびニッケルめっき膜11の主成分であるニッケルと、めっき浴中の還元剤である次亜リン酸ナトリウムの組み合わせが挙げられる。第1の物質および第2の物質は、異なる物質でも良い。
【0075】
図9は、実施の形態にかかるめっき膜とめっき浴中の還元剤の組み合わせを示す図である。第2の物質を主成分とするめっき膜を形成する際の、無電解めっき浴における代表的な還元剤について説明する。図9に示すように、ニッケル(Ni)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、ジメチルアミンボラン、ヒドラジンまたはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。コバルト(Co)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、ジメチルアミンボラン、ヒドラジンまたはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。パラジウム(Pd)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、ホスホン酸ナトリウム(亜リン酸ナトリウム)またはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。
【0076】
銅(Cu)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ホルマリン、ジメチルアミンボランまたはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。銀(Ag)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ジメチルアミンボランまたはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。金めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ジメチルアミンボランまたはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。プラチナ(Pt)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ヒドラジンまたはテトラヒドロホウ酸ナトリウム(水酸化ホウ素ナトリウム)を用いるのが良い。スズ(Sn)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、三塩化チタンを用いるのが良い。
【0077】
また、置換金めっき膜12は、ニッケルめっき膜11の表面酸化を防止するために設けられている。置換金めっき膜12は、ニッケルめっき膜11のニッケルと、金めっき浴中の金が置換されることにより形成される。置換金めっき膜12に代えて、第2の物質(例えば、ニッケルめっき膜11の主成分であるニッケル)との間に、置換反応を起こす物質(第3の物質)を主成分としためっき膜を形成しても良い。
【0078】
次に、第1のニッケル膜62のエッチング条件について説明する。図10は、実施の形態にかかるエッチング方法について示す図である。図10では、第1のニッケル膜62のパターンを形成する場合のエッチング条件について示す。なお、ギュンター・ペツォーによる著書「組織学とエッチングマニュアル」(日刊工業新聞社、160ページ)からの抜粋である。図10に示すエッチング条件は、例1〜例14の材質をエッチングするための、エッチング液組成およびエッチング条件である。例1の材質は、純度99at%以上の純ニッケル(純Ni)、ニッケル濃度の高い合金、ニッケルチタン(NiTi)またはニッケル銅(NiCu)合金である。例1の材質のエッチング液組成は、濃度65wt%の硝酸を50ml、および純度98at%以上の酢酸(氷酢酸)を50mlである。例1のエッチング条件は、5〜30秒である。例2の材質は、ニッケル、ニッケル基合金またはニッケルクロム(NiCr)合金である。例2の材質のエッチング液組成は、濃度65wt%の硝酸を80ml、および濃度40wt%のフッ酸を3mlである。例2のエッチング条件は、数秒〜数分である。
【0079】
例3の材質は、純ニッケル、ニッケル銅またはニッケル鉄(NiFe)合金である。例3の材質のエッチング液組成は、蒸留水を50ml、硫化銅を10g、および濃度32wt%の塩酸(HCl)を50mlである。例3のエッチング条件は、5〜10秒である。例4の材質は、ニッケル鉄、ニッケル銅またはニッケル銀(NiAg)合金である。例4の材質のエッチング液組成は、蒸留水もしくは濃度96wt%のエタノールを20〜100ml、濃度32wt%の塩酸を2〜25ml、および塩化鉄(III)(FeCl3)を5〜8gである。例4のエッチング条件は、5〜60秒である。例5の材質は、純ニッケルである。例5の材質のエッチング液組成は、蒸留水を100mlおよびベルオキソ硫酸10g、もしくは蒸留水を100mlおよびシアン化カリウム(KCN)を10gである。例5のエッチング条件は、30〜60秒である。
【0080】
例6の材質は、ニッケル−亜鉛−銀(NiZnAg)合金、ニッケル銀、ニッケル銅、またはニッケル−アルミニウム−モリブデン(NiAlMo)合金である。例6の材質のエッチング液組成は、蒸留水を100mlおよびベルオキソ硫酸10gと、蒸留水を100mlおよびシアン化カリウム(KCN)を10gとを1対1で混合した溶液、および濃度3wt%の過酸化水素水(H2O2)を数滴である。例6のエッチング条件は、数秒〜数分である。例7の材質は、ニッケルアルミニウム(NiAl)、モリブデン−ニッケル(MoNi)合金またはニッケルチタン合金である。例7の材質のエッチング液組成は、濃度32wt%塩酸を100ml、および酸化クロム(VI)(CrO3)を0.1〜1gである。例7のエッチング条件は、数秒〜数分である。
【0081】
例8の材質は、ニッケル鉄合金である。例8の材質のエッチング液組成は、ベルオキソ硫酸アンモニウム飽和水溶液である。例8のエッチング条件は、数秒〜数分である。例9の材質は、ニッケル亜鉛(NiZn)合金である。例9の材質のエッチング液組成は、濃度25wt%のアンモニア(NH3)水溶液を85ml、および濃度30wt%の過酸化水素水を5mlである。例9のエッチング条件は、5〜15秒である。例10の材質は、ニッケル銅合金である。例10の材質のエッチング液組成は、濃度96wt%のエタノールを40〜80ml、濃度32wt%の塩酸を40ml、および塩化鉄(III)を2gである。例10のエッチング条件は、数秒〜数分である。
【0082】
例11の材質は、ニッケル鉄、またはニッケルアルミニウム合金である。例11の材質のエッチング液組成は、濃度32wt%の塩酸を40ml、濃度65wt%の硝酸を30ml、濃度87wt%のグリセリン(C3H5(OH)3)を10ml、および氷酢酸を2
0mlである。例11のエッチング条件は、数秒〜数分である。例12の材質は、ニッケル珪化物である。例12の材質のエッチング液組成は、蒸留水を80ml、濃度65wt%の硝酸を30ml、および濃度40wt%のフッ酸を10mlである。例12のエッチング条件は、数秒〜数分である。例13の材質は、ニッケルチタン合金である。例13の材質のエッチング液組成は、蒸留水を100ml、濃度65wt%の硝酸を25ml、および濃度40wt%のフッ酸を10mlである。例13のエッチング条件は、5〜30秒である。例14の材質は、モリブデンを9at%以上含むニッケル基合金である。例14の材質のエッチング液組成は、蒸留水を50ml、二硫化水素アンモニウムを7g、濃度32wt%の塩酸を50ml、および二硫化カリウムを0.5gである。例14のエッチング条件は、めっき浴の温度30〜40℃とし、5〜10分である。
【0083】
なお、第1のニッケル膜62の表面酸化膜を除去する場合は、例えば濃度30wt%の硝酸で30秒〜2分程度のエッチングで除去することが可能であるが、図10に示すエッチング条件の、エッチング時間を短くすることでも対応することができる。また、第2のニッケル膜92のエッチング条件は、第1のニッケル膜62と同様である。
【0084】
以上、説明したように、実施の形態によれば、エミッタ電極6の最表面層である第1のニッケル膜62を、めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速めるニッケルを主成分として形成している。かつ、無電解めっき処理前に、エミッタ電極6の表面を活性化している。これにより、無電解めっき処理において、第1のニッケル膜62と還元剤の酸化還元反応のみで、第1のニッケル膜62の表面に、ニッケルめっき膜11を連続して析出させることができる。そのため、従来のめっき処理過程において、無電解めっき処理の前処理として行っていた、表面酸化膜除去後にエミッタ電極6に行われるエッチングや、エミッタ電極6の表面へのジンケート処理が不要となる。これにより、第1のアルミニウム膜61に孔食(図15参照)が生じることを防止することができるので、半導体装置の特性が変動することを防止することができる。また、従来のめっき処理過程に比べて、工程数を減らすことができるので、製造コストを低減することができる。第2のニッケル膜92についても同様である。また、エミッタ電極6として第1のチタン膜63を設けることにより、はんだ接合における実装に際し、第1のニッケル膜62およびニッケルめっき膜11に、その下層にまで達する凹部が生じたとしても、はんだとの密着力が高い第1のチタン膜63が、エミッタ電極6の表面に露出する。そのため、エミッタ電極6とはんだとの密着性を確保することができる。これにより、第1のニッケル膜62およびニッケルめっき膜11の厚さを薄くすることができる。なお、コレクタ電極9についても、同様である。また、おもて面電極であるエミッタ電極6および裏面電極であるコレクタ電極9に、同時にニッケルめっき膜11が形成される。そのため、エミッタ電極6に形成されたニッケルめっき膜11により生じる応力と、コレクタ電極9に形成されたニッケルめっき膜11により生じる応力は相殺される。これにより、半導体基板1の反りを抑制することができる。
【0085】
以上において本発明は、おもて面電極および裏面電極の電極構造は、図1に示す2層金属膜構造の電極と、図2および図3に示す3層金属膜構造の電極とを任意に組み合わせることが可能である。また、半導体装置の構造や膜厚など、コストや利用目的に応じて変更可能である。また、コレクタ電極9は、本実施の形態による工程によらず、別の工程により形成しても良い。
【0086】
また、上述した実施の形態では、半導体基板の両面に同時にめっき処理を行う場合について説明しているが、半導体基板の片面のみにめっき処理を行う場合にも有効である。また、めっき処理を行う半導体装置としてIGBTを例に説明しているが、上述した実施の形態に限らず、MOSFETや、FWD(Free Wheeling Diode)などの、さまざまな半導体装置の電極にめっき処理を行う場合においても適用することができる。
【0087】
なお、従来と同様にジンケート処理を行う場合でも、第1のチタン膜63を設けることで、実施の形態と同様の効果を得ることができる。その理由は、次に示すとおりである。ジンケート処理のエッチングによって、第1のニッケル膜62の表面に、その下層に達する凹部が生じたとしても、第1のニッケル膜62の下にある第1のチタン膜63でエッチングを止めることができる。これにより、エミッタ電極6の表面に、第1のアルミニウム膜61が露出するのを防ぐことができるので、エミッタ電極6とはんだとの密着性を確保することができる。第2のチタン膜93についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明にかかる半導体装置の製造方法は、デバイス厚の薄い半導体装置を製造するのに有用であり、特に、汎用インバータ、ACサーボ、無停電電源(UPS)またはスイッチング電源などの産業分野や、電子レンジ、炊飯器またはストロボなどの民生機器分野に用いられるIGBT等の電力用半導体装置の製造に適している。
【符号の説明】
【0089】
1 半導体基板
2 p+ベース領域
3 n+エミッタ領域
4 ゲート酸化膜
5 ゲート電極
6 エミッタ電極
7 層間絶縁膜
11 ニッケルめっき膜
12 置換金めっき膜
61 アルミニウム膜(第1)
62 ニッケル膜(第1)
91 アルミニウム膜(第2)
92 ニッケル膜(第2)
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に電力変換装置などに用いられるパワー半導体装置であって、半導体装置のおもて面および裏面に電極を有する80〜200μmの厚さの半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体装置の一つであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電解効果トランジスタ)の高速スイッチング特性および電圧駆動特性と、バイポーラトランジスタの低オン電圧特性を有するワンチップのパワーデバイスである。その応用範囲は、汎用インバータ、ACサーボ、無停電電源(UPS)またはスイッチング電源などの産業分野から、電子レンジ、炊飯器またはストロボなどの民生機器分野へと拡大してきている。また、新しいチップ構造を用いた、より低オン電圧のIGBTが開発されており、IGBTを用いた応用装置の低損失化や高効率化が図られてきている。
【0003】
IGBTには、パンチスルー(以下、PTとする)型、ノンパンチスルー(以下、NPTとする)型、フィールドストップ(以下、FSとする)型などの構造があり、一部の用途を除いて、nチャネル型の縦型二重拡散構造のものが主流である。従って、本明細書では、nチャネル型IGBTを例にして説明するが、pチャネル型IGBTでも同様である。
【0004】
PT型IGBTは、p+半導体基板上にn+バッファ層とn-活性層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル基板を用いて形成される。そのため、例えば耐圧600V系の半導体装置では、活性層の厚さは100μm程度で十分であるが、p+半導体基板の部分を含む総厚さは200〜300μm程度と、厚くなる。また、エピタキシャル基板を用いるため、コストが高くなる。
【0005】
そこで、エピタキシャル基板の代わりに、フローティングゾーン(FZ)法により作製された半導体インゴットから切り出されたFZ基板を用いることによって低コスト化を図ったNPT型やFS型のIGBTが開発されている。これらのIGBTでは、半導体装置の裏面に低ドーズ量の浅いp+コレクタ層(低注入p+コレクタ)が形成される。
【0006】
図11は、FZ基板を用いて作製されたNPT型IGBTの構成を示す断面図である。図11に示すように、NPT型IGBTは、例えばFZ基板よりなるn-型の半導体基板1を活性層とし、そのおもて面の表面層にp+ベース領域2、n+エミッタ領域3が選択的に形成される。そして、半導体基板1の表面には、ゲート酸化膜4を介してゲート電極5が形成される。エミッタ電極6は、n+エミッタ領域3およびp+ベース領域2と接触し、かつ層間絶縁膜7によりゲート電極5から絶縁される。また、半導体基板1の裏面には、p+コレクタ層8およびコレクタ電極9が形成される。エミッタ電極6およびコレクタ電極9は、例えばアルミニウム(Al)等の金属を蒸着またはスパッタして形成される。
【0007】
このようなNPT型IGBTは、PT型IGBTよりも基板の総厚さが大幅に薄くなる。また、NPT型IGBTは、正孔の注入率を制御することができるため、ライフタイム制御を行わなくても、高速スイッチングが可能である。また、NPT型IGBTは、エピ
タキシャル基板を用いずにFZ基板を用いて作製されるため、PT型IGBTに比べて安価である。
【0008】
図12は、FS型IGBTの構成を示す断面図である。図12に示すように、半導体基板の表面構造は、図11に示すNPT型IGBTと同じである。半導体基板1の裏面には、半導体基板1とp+コレクタ層8との間に、nバッファ層10が設けられる。FS型IGBTでは、FZ基板を用いることによって、基板の総厚さが80〜200μmとなる。そして、PT型IGBTと同様に、活性層である半導体基板1を空乏化させるため、600V耐圧の半導体装置では、半導体基板1の厚さは100μm程度である。また、NPT型IGBTと同様に、ライフタイム制御は不要である。近時、オン電圧のより一層の低減を図るため、チップ表面に狭く深い溝を形成し、この溝の側面にMOSFETを形成したトレンチ構造と、FS型構造を組み合わせた構造のIGBTも提案されている。
【0009】
上述のような半導体装置を製造する方法として、次のような方法が提案されている。シリコン基板の第1の主面側に素子の表面構造を形成し、第2の主面を研削加工して基板を薄くした後、第2の主面側にバッファ層およびコレクタ層を形成する。その後、コレクタ層の表面に、厚さが0.3μm以上1.0μm以下で、シリコン濃度が0.5wt%以上2wt%以下、好ましくは1wt%以下のアルミニウムシリコン膜を形成する。そして、アルミニウムシリコン膜の形成に続いて、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)および金(Au)などの複数の金属を蒸着またはスパッタにより形成し、コレクタ電極を形成する。チタン膜、ニッケル膜および金膜は、それぞれバッファ金属膜、はんだ接合金属膜および保護金属膜である(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0010】
また、半導体装置の実装において、コレクタ電極などの裏面電極は、はんだを用いて接合される。一方、エミッタ電極などのおもて面電極はアルミワイヤーを用いたワイヤボンディング技術を用いて接合されるのが主流である。しかし、最近では、おもて面電極においても、はんだ接合が用いられることがある。おもて面電極の接合に、はんだ接合を用いることで、高密度実装化、電流密度向上、スイッチング速度の高速化のための配線容量低減、半導体装置の冷却効率向上などを大幅に改善することができる。
【0011】
はんだ接合により実装された半導体装置として、次のような方法が提案されている。各半導体チップの表面にEヒートシンクがはんだにより接合され、裏面に第2の導体部材がはんだにより接合され、Eヒートシンクの表面に第3の導体部材がはんだにより接合されている。Eヒートシンクには段差部が設けられて薄肉部が形成されており、Eヒートシンクと各半導体チップとの接合面積よりEヒートシンクと第3の導体部材との接合面積が小さくなっている。第2の導体部材の裏面と第3の導体部材の表面とが露出した状態で、各部材が樹脂封止されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0012】
また、別の装置として、半導体素子と、この半導体素子の裏面に接合され電極と放熱を兼ねる第1の金属体と、前記半導体素子の表面側に接合され電極と放熱を兼ねる第2の金属体と、前記半導体素子の表面と前記第2の金属体との間に接合された第3の金属体とを備え、装置のほぼ全体を樹脂でモールドした半導体装置において、前記半導体素子表面のせん断応力、または、前記半導体素子と前記金属体とを接合する接合層における歪み成分等を低減させるように、前記半導体素子の厚さを薄くすると共に、前記モールド樹脂により装置全体を拘束保持するように構成したことを特徴とし、前記接合層をSn系はんだで構成する半導体装置が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。
【0013】
実際に、おもて面電極のはんだ接合を行う場合、おもて面電極の表面にニッケル等のめっきを施す必要がある。めっき処理法としては、電気めっき法や無電解めっき法などが一
般的である。電気めっき法は、外部電流を供給することにより溶液中の金属イオンを還元析出させる方法である。一方、無電解めっき法は、電気を使用することなく、溶液中の金属イオンを化学的に還元析出する方法である。そのため、無電解めっき法を用いためっき処理は、対極や直流電源などの電気回路を必要とする電気めっき法よりも、製造装置や製造工程を簡略化することができる。
【0014】
無電解めっき法を用いて電極表面にめっき処理を行う方法として、次のような方法が提案されている。半導体基板のパッド電極上に無電解めっき皮膜を形成する方法であって、そのパッド電極を選択的に活性化する工程と、前記半導体基板を無電解めっき液に浸漬すると同時に、外部電源により前記半導体基板に電位を印加しながら無電解めっき皮膜を析出させる工程とを有する。前記活性化する工程は、触媒付与法と亜鉛置換法のいずれかである(例えば、下記特許文献4参照。)。
【0015】
また、別の方法として、次のような方法が提案されている。半導体素子が形成された半導体基板上に層間絶縁膜が設けられている。そして、この層間絶縁膜上に形成された第1表面電極の表面には、コンタクトホールの形状に応じた凹部が複数設けられ、第1裏面電極の表面はエッチング処理によってでこぼこになっていることで、第1表面電極の表面積と第1裏面電極の表面積との差が小さくされている。また、第2表面電極および第2裏面電極は、第1表面電極および第1裏面電極の表面それぞれに同時に湿式めっきの方法により形成されている。具体的には、ウェハ表裏面に同時に例えばNiをめっきする。これにより、ウェハ表面側に第2表面電極を形成し、ウェハ裏面側に第2裏面電極を形成する。そして、ウェハ表裏面に同時に湿式めっきを施し、めっき層を形成する。すなわち、第2表面電極の表面、第2裏面電極の表面それぞれに例えばAuのめっき層を形成する(例えば、下記特許文献5参照。)。
【0016】
また、おもて面電極に無電解めっき処理を行う場合、おもて面電極の主成分である例えばアルミニウムの表面には、不働態膜が形成されているため、密着性の高いめっき膜を形成することが難しい。このため、おもて面電極の表面を活性化し、おもて面電極とめっき膜との密着力を向上させる必要がある。おもて面電極とめっき膜との密着力を向上する方法として、例えばジンケート処理が公知である(例えば、下記特許文献4および下記特許文献6)。
【0017】
無電解めっき処理の前処理としてジンケート処理を用いためっき処理過程について説明する。図13は、従来の半導体装置におけるめっき処理過程を示すフローチャートである。この処理は、例えばアルミニウム合金からなるおもて面電極の表面に対して行われる。めっき浴の還元剤として、例えばホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)が用いられる。図13に示すように、まず、脱脂処理を行う(ステップS21)。ステップS21において、おもて面電極の表面に付着した油脂や異物が除去される。また、次に続く工程の例えばエッチング液などの、おもて面電極の表面に対する濡れ性が改善される。なお、脱脂処理では、通常、アルカリ溶液が用いられる。このアルカリ溶液として、例えば20〜30g/dm3の水酸化ナトリウム(NaOH)、20〜30g/dm3の炭酸ナトリウム(Na2CO3)、20〜30g/dm3のリン酸三ナトリウム(Na3PO4)および1〜2g/dm3の界面活性剤(NaOH)を含む溶液を用いることができる。
【0018】
次いで、酸溶液またはアルカリ溶液を用いて、エッチングを行う(ステップS22)。ステップS22において、おもて面電極の表面の自然酸化膜が除去される。次いで、硝酸(HNO3)を用いて、酸洗浄を行う(ステップS23)。ステップS23において、前の工程におけるエッチングにより生じた、おもて面電極の表面の不純物(スマット)などが除去される。次いで、第1のジンケート処理を行う(ステップS24)。ステップS24において、おもて面電極のアルミニウムが亜鉛(Zn)に置換され、おもて面電極の表面に亜鉛膜が生成される。次いで、硝酸を用いて、酸洗浄を行う(ステップS25)。ステップS25において、おもて面電極の表面に形成された亜鉛膜が除去される。次いで、第2のジンケート処理を行う(ステップS26)。ステップS26において、再度、おもて面電極の表面に亜鉛膜が生成される。
【0019】
次いで、無電解めっき処理により、ニッケルめっき膜を形成する(ステップS27)。ステップS27において、無電解めっき浴中のニッケルイオンと、おもて面電極の表面の亜鉛膜との間で、穏やかに置換反応が起こる。めっき浴中のニッケルイオンと、還元剤である次亜リン酸ナトリウムとの酸化還元反応により、おもて面電極の表面に、ニッケルめっき膜が形成される。このときの酸化還元反応式については、後述する。次いで、無電解めっき処理により、置換金めっき膜を形成する(ステップS28)。ステップS28において、置換金めっき浴中の金イオンと、ニッケルめっき膜のニッケルの還元反応により、ニッケルめっき膜の表面に、置換金めっき膜が形成される。なお、図13に示すめっき処理過程は、ある処理と次の処理の間において、おもて面電極の表面の水洗い処理が行われる。
【0020】
また、還元剤に次亜リン酸ナトリウムを用いた場合の、無電解ニッケルめっき(ステップS27)の反応式は、次の(1)式〜(3)式となる。
【0021】
H2PO2- + H2O → H2PO3- + 2H+ + 2e- ・・・(1)
【0022】
Ni2+ +2e- → Ni ・・・(2)
【0023】
H2PO2- + 2H+ + e- → 2H2O + P ・・・(3)
【0024】
(1)式は、還元剤の酸化反応式である。また、(2)式は、めっき浴中のニッケルイオンの還元反応式である。また、(2)式の反応と同時にリンが析出する反応が起き、そのときの反応式が、(3)式となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2007−36211号公報
【特許文献2】特開2002−110893号公報
【特許文献3】特開2003−110064号公報
【特許文献4】特開2003−96573号公報
【特許文献5】特開2007−19412号公報
【特許文献6】特開2003−13246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、上述した図13に示すめっき処理過程によりめっき膜を形成した場合、半導体装置の特性が変動してしまう恐れがあることが新たに判明した。半導体装置に特性変動が生じる原因の一つは、エミッタ電極6中のアルミニウムが溶出することにより、エミッタ電極6の一部に、半導体基板1の表面にまで達する孔(以下、孔食とする)が発生することであると推測される。
【0027】
図14は、従来の半導体装置の製造方法における正常時のおもて面電極について示す断面図である。また、図15は、従来の半導体装置の製造方法における異常時のおもて面電極について示す断面図である。正常にめっき処理が行われた半導体装置では、図14に示すように、エミッタ電極6の表面に、ニッケルめっき膜11および図示省略する置換金めっき膜が順に積層される。それ以外の構成は、図12に示す半導体装置と同様である。このように、ニッケルめっき膜11は、エミッタ電極6の上に形成される。そのため、ニッケルめっき膜11は、半導体基板1と接触しない。
【0028】
それに対して、エミッタ電極6に孔食20が発生している場合、図15に示すように、ニッケルめっき膜11は、半導体基板1と接触してしまう。孔食20は、無電解めっき処理(図13のステップS27)の前処理として、表面酸化膜除去後にエミッタ電極6にエッチングを行うこと(図13のステップS23など)や、エミッタ電極6の表面にジンケート処理(図13のステップS24〜ステップS26)を行うことにより発生すると推測される。
【0029】
まず、表面酸化膜を除去した後にエッチングを行った場合の、エミッタ電極6について説明する。通常、エミッタ電極6の主成分であるアルミニウムは、耐食性に優れた表面酸化膜を有している。この表面酸化膜は、酸やアルカリに対して強固な耐食性を有する。この表面酸化膜を除去した場合、エミッタ電極6の表面は、酸やアルカリに対する耐食性が著しく低下した状態となる。その状態で、酸やアルカリを用いて、エミッタ電極6の表面をエッチングすると、エッチングが速く進んでしまう。また、エッチングの進行速度は結晶方位によって異なる。例えばエミッタ電極6の(111)面では、エミッタ電極6の(110)面や(100)面と比較してエッチングが速く進む。そのため、エミッタ電極6の表面において、エッチングの進行が極端に速くなってしまう部分が発生しやすくなっているといえる。このエッチングの進行速度の違いにより、エミッタ電極6に、半導体基板1の表面に達するほどの凹凸が形成されてしまうため、エミッタ電極6に孔食20が発生すると推測される。
【0030】
次に、ジンケート処理を行った場合のエミッタ電極6について説明する。中田毅らは、「Al単結晶表面上へのジンケート処理と無電解Ni−Pめっき」(表面技術、Vol.48、No.8(1997))の中で、アルミニウムのジンケート処理では、アルミニウム表面への亜鉛の析出密度が、アルミニウムの(111)面で高く、アルミニウムの(100)面や(110)面では低いということを報告している。そのため、アルミニウムの(100)面や(110)面では、アルミニウムが亜鉛に置換される際に、アルミニウムの溶出の速さに、亜鉛の析出が追いつかない恐れが生じる。つまり、アルミニウムを主成分とするエミッタ電極6では、エミッタ電極6の表面に亜鉛が析出せずに、アルミニウムの局所的なエッチングが進行してしまう可能性がある。その結果、エミッタ電極6に孔食20が発生すると推測される。
【0031】
エミッタ電極6に孔食20が発生している状態(図15参照)で、半導体装置に無電解めっき処理を行う場合、ニッケルめっき膜11は、エミッタ電極6の孔食20の部分で半導体基板1と接触することになる。一般的な無電解ニッケルめっき浴には、例えばナトリウム(Na)などのアルカリ金属が含まれている。そのため、孔食20が発生している半導体装置では、このアルカリ金属が、ニッケルめっき膜11と半導体基板1との界面に残留してしまう可能性がある。ニッケルめっき膜11と半導体基板1との界面に残留するアルカリ金属は、半導体装置の実装時、はんだ接合などの熱処理により、ゲート酸化膜4へと拡散し、半導体装置の特性を変動させてしまう可能性が生じる。
【0032】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、半導体装置の特性変動を防止することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる半導体装置の製造方法は、以下の特徴を有する。半導体基板の表面におもて面電極を有する半導体装置を製造する方法である。まず、半導体基板のおもて面に第1の金属膜を形成する第1の金属膜形成工程を行う。次いで、前記第1の金属膜の表面に第2の金属膜を形成する第2の金属膜形成工程を行う。次いで、前記第2の金属膜の表面を活性化する表面活性化工程を行う。次いで、湿式めっき法により、前記第2の金属膜の表面にめっき膜を形成するめっき膜形成工程を行う。このとき、前記第2の金属膜形成工程では、前記第2の金属膜として、前記めっき膜形成工程で用いられるめっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める第1の物質を主成分とする金属膜を形成する。
【0034】
また、請求項2の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1に記載の発明において、さらに、前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間で、前記第2の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第2のパターン形成工程を行う。そして、前記第2のパターン形成工程と前記表面活性化工程との間で、前記第1の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第1のパターン形成工程を行う。
【0035】
また、請求項3の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1に記載の発明において、さらに、前記第1の金属膜形成工程と前記第2の金属膜形成工程との間で、前記第1の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第1のパターン形成工程を行う。そして、前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間で、前記第2の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第2のパターン形成工程を行う。
【0036】
また、請求項4の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、前記表面活性化工程は、前記第2の金属膜の表面の酸化膜を除去する工程を含むことを特徴とする。
【0037】
また、請求項5の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、前記めっき膜形成工程は、前記第2の金属膜の表面に、第1のめっき膜を形成する工程を行う。このとき、前記第1のめっき膜として、前記めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める第2の物質を主成分とするめっき膜を形成する。
【0038】
また、請求項6の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項5に記載の発明において、前記第2の物質はニッケルであることを特徴とする。
【0039】
また、請求項7の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項5または6に記載の発明において、前記めっき膜形成工程は、さらに、前記第1のめっき膜の表面に、第2のめっき膜を形成する工程を行う。このとき、前記第2のめっき膜として、前記第1のめっき膜との間で置換反応を起こす第3の物質を主成分とするめっき膜を形成する。
【0040】
また、請求項8の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項7に記載の発明において、前記第3の物質は金であることを特徴とする。
【0041】
また、請求項9の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜8のいずれか一つに記載の発明において、前記第1の金属膜を蒸着法またはスパッタリング法により形成することを特徴とする。
【0042】
また、請求項10の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜9のいずれか一つに記載の発明において、前記第1の金属膜は、アルミニウムを主成分とする膜であることを特徴とする。
【0043】
また、請求項11の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜10のいずれか一つに記載の発明において、前記第1の金属膜をアルミニウムシリコンまたはアルミニウムシリコン銅で形成することを特徴とする。
【0044】
また、請求項12の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜11のいずれか一つに記載の発明において、前記第2の金属膜は、高融点を有する第3の金属膜と、前記第1の物質を主成分とする膜とがこの順に積層された金属積層膜であることを特徴とする。
【0045】
また、請求項13の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項12に記載の発明において、前記第3の金属膜を、チタン、モリブデン、クロム、コバルトまたはタングステンで形成することを特徴とする。
【0046】
また、請求項14の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜13のいずれか一つに記載の発明において、前記第1の物質は、ニッケルであることを特徴とする。
【0047】
また、請求項15の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜14のいずれか一つに記載の発明において、前記湿式めっき法は、無電解めっき法であることを特徴とする。
【0048】
また、請求項16の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜15のいずれか一つに記載の発明において、さらに、前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間に、前記半導体基板の裏面に裏面電極を形成する裏面電極形成工程を行う。このとき、前記第1の金属膜形成工程および前記第2の金属膜形成工程では、前記半導体基板のおもて面におもて面電極として、前記第1の金属膜および前記第2の金属膜を形成する。そして、前記めっき膜形成工程では、前記おもて面電極の表面および前記裏面電極の表面に、同時に前記めっき膜を形成する。
【0049】
また、請求項17の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項16に記載の発明において、さらに、前記第1の金属膜形成工程と前記裏面電極形成工程との間に、前記半導体基板の裏面を加工して基板厚さを200μm以下に薄くする基板薄化工程を行う。
【0050】
上述した発明によれば、おもて面電極の最表面層である第2の金属膜が、めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速めるニッケルを主成分として形成されている。かつ、無電解めっき処理前に、おもて面電極の表面が活性化されている。これにより、無電解めっき処理において、第2の金属膜と還元剤の酸化還元反応のみで、第2の金属膜の表面に、第1のめっき膜を連続して析出することができる。そのため、従来のめっき過程において、無電解めっき処理の前処理として行っていた、表面酸化膜除去後におもて面電極に行われるエッチングや、おもて面電極の表面へのジンケート処理が不要となる。これにより、第1の金属膜に孔食(図15参照)が生じることを防止することができ、半導体装置の特性が変動することを防止することができる。上述した効果は、半導体装置の裏面電極に適用した場合にも、有効である。
【発明の効果】
【0051】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、半導体装置の特性が変動することを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態にかかる半導体装置を示す断面図である。
【図2】実施の形態にかかる半導体装置のおもて面電極の別の一例について示す断面図である。
【図3】実施の形態にかかる半導体装置の裏面電極の別の一例について示す断面図である。
【図4】実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態にかかる半導体装置のめっき処理過程を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【図7】実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【図8】実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示す断面図である。
【図9】実施の形態にかかるめっき膜とめっき浴中の還元剤との組み合わせを示す図である。
【図10】実施の形態にかかるエッチング方法について示す図である。
【図11】NPT型IGBTの構成を示す断面図である。
【図12】FS型IGBTの構成を示す断面図である。
【図13】従来の半導体装置のめっき処理過程を示すフローチャートである。
【図14】従来の半導体装置の製造方法における正常時のおもて面電極について示す断面図である。
【図15】従来の半導体装置の製造方法における異常時のおもて面電極について示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置およびその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明およびすべての添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0054】
図1は、実施の形態にかかる半導体装置を示す断面図である。図1に示すように、半導体装置のおもて面では、半導体基板1の表面層の一部に、p+ベース領域2が設けられている。p+ベース領域2の表面層の一部には、n+エミッタ領域3が選択的に設けられている。ゲート電極5は、半導体基板1の一部の表面に、ゲート酸化膜4を介して設けられている。エミッタ電極6は、p+ベース領域2およびn+エミッタ領域3と接触し、かつ層間絶縁膜7によりゲート電極5から絶縁される。エミッタ電極6は、アルミニウムを主成分とする金属膜(以下、第1のアルミニウム膜とする)61と、ニッケルを主成分とする金属膜(以下、第1のニッケル膜とする)62がこの順に積層されてなる。第1のニッケル膜62の表面には、ニッケルめっき膜11および置換金めっき膜12が積層されている。
【0055】
半導体装置の裏面では、半導体基板1の表面層の一部に、図示省略するnバッファ層およびp+コレクタ層が設けられている。コレクタ電極9は、p+コレクタ層の表面に設けられている。コレクタ電極9は、アルミニウムを主成分とする金属膜(以下、第2のアルミニウム膜とする)91と、ニッケルを主成分とする金属膜(以下、第2のニッケル膜とする)92がこの順に積層されてなる。第2のニッケル膜92の表面には、ニッケルめっき膜11および置換金めっき膜12が積層されている。エミッタ電極6は、おもて面電極に相当する。コレクタ電極9は、裏面電極に相当する。第1のアルミニウム膜61および第2のアルミニウム膜91は、第1の金属膜に相当する。第1のニッケル膜62および第2のニッケル膜92は、第2の金属膜に相当する。ニッケルめっき膜11は、第1のめっき膜に相当する。置換金めっき膜12は、第2のめっき膜に相当する。
【0056】
図2は、実施の形態にかかる半導体装置のおもて面電極の別の一例について示す断面図である。図2では、電極以外のその他の半導体構造は、図示省略する(以下、図3についても同様)。エミッタ電極6は、第1のアルミニウム膜61と第1のニッケル膜62との間に、チタンを主成分とする金属膜(以下、第1のチタン膜とする)63を備えていても良い。第1のチタン膜63は、高融点を有する。
【0057】
図3は、実施の形態にかかる半導体装置の裏面電極の別の一例について示す断面図である。コレクタ電極9は、第2のアルミニウム膜91と第2のニッケル膜92との間に、チタンを主成分とする金属膜(以下、第2のチタン膜とする)93を備えていても良い。第1のチタン膜63および第2のチタン膜93は、第3の金属膜に相当する。
【0058】
また、図1〜図3に示す半導体装置において、第1のアルミニウム膜61に代えて、アルミニウムシリコン(AlSi)の金属膜、またはアルミニウムシリコン銅(AlSiCu)の金属膜としても良い。第2のアルミニウム膜91についても同様である。また、第1のチタン膜63に代えて、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、コバルト(Co)またはタングステン(W)を主成分とした金属膜としても良い。第2のチタン膜93についても同様である。
【0059】
第2のアルミニウム膜91としてアルミニウムシリコンの金属膜を形成することにより、はんだ接合における実装に際し、基板温度が上昇することにより発生するアルミスパイクの影響を低減させることができる。特に、半導体基板1中のnバッファ層の厚さが1μm以下である半導体装置において、その効果が大きく発揮される。このとき、アルミニウムシリコン膜の膜厚は、例えば0.5μmであっても良い。また、アルミニウムシリコン膜のシリコン濃度は、0.5wt%以上2wt%以下であるのがよく、特に1wt%以下であるのが好ましい。
【0060】
次に、半導体装置の製造方法について説明する。図4は、実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示すフローチャートである。まず、図4に示すように、半導体基板1のおもて面の表面構造を形成する(ステップS1)。次いで、半導体基板1のおもて面に、アルミニウム、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層し、エミッタ電極6を形成する。次いで、エミッタ電極6にパターニング処理を行う(ステップS2)。次いで、半導体基板1の裏面全体にバックグラインドおよびエッチングを行い、半導体基板1を薄くする(ステップS3)。次いで、薄膜化した半導体基板1の裏面に、例えばリンおよびボロンを順次イオン注入し、熱処理を行う(ステップS4)。次いで、バッファ層やコレクタ層などの半導体領域を形成する。次いで、コレクタ層の表面の自然酸化膜を希フッ酸(HF)で除去する。その後、コレクタ層の表面に、アルミニウムシリコン、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層し、コレクタ電極9を形成する(ステップS5)。次いで、半導体基板1のエミッタ電極6およびコレクタ電極9の両面に、同時に、無電解めっき処理を行う(ステップS6)。
【0061】
次に、上述したステップS6の工程における無電解めっき処理方法について説明する。図5は、実施の形態にかかる半導体装置のめっき処理過程を示すフローチャートである。図5に示すように、まず、エミッタ電極6の表面をクリーナーで脱脂してエッチング液の濡れ性を向上させる(ステップS11)。次いで、エッチングでエミッタ電極6の表面に形成された表面酸化膜を除去する(ステップS12)。次いで、エミッタ電極6の表面を活性化する。次いで、半導体基板1のエミッタ電極6およびコレクタ電極9の両面に、同時に、無電解ニッケルめっき処理を行う(ステップS13)。次いで、半導体基板1のエミッタ電極6およびコレクタ電極9の両面に、同時に、置換金めっき処理を連続して行う(ステップS14)。なお、図5に示すめっき処理過程は、ある処理と次の処理の間において、半導体装置の水洗いが行われる。
【0062】
図6〜図8は、実施の形態にかかる半導体装置の製造過程を示す断面図である。上述したステップS1の工程において、図6に示すように、半導体基板1の表面層の一部に、p+ベース領域2およびn+エミッタ領域3が形成される。また、半導体基板1の一部の表面に、ゲート酸化膜4、ゲート電極5および層間絶縁膜7が形成される。層間絶縁膜7は、ゲート電極5を覆うように形成される。
【0063】
上述したステップS2の工程において、図7に示すように、エミッタ電極6として、第1のアルミニウム膜61および第1のニッケル膜62が形成される。エミッタ電極6は、p+ベース領域2およびn+エミッタ領域3の一部の表面に接触し、層間絶縁膜7の表面に形成される。第1のアルミニウム膜61および第1のニッケル膜62の膜厚は、それぞれ例えば1.0μmおよび0.5μmであっても良い。
【0064】
ステップS2において、エミッタ電極6に行うパターニング処理は、第1のアルミニウム膜61および第1のニッケル膜62を積層した後に、第1のニッケル膜62、第1のアルミニウム膜61の順にそれぞれエッチングを行う。または、第1のアルミニウム膜61を形成した後に、第1のアルミニウム膜61のエッチングを行う。その後に続けて、パターン形成後の第1のアルミニウム膜61の表面に、第1のニッケル膜62を形成し、第1のニッケル膜62のエッチングを行っても良い。このとき、第1のアルミニウム膜61については、プラズマエッチング装置を用いて、例えば三塩化ホウ素(BCl3)や塩素ガス(Cl2)を導入したドライエッチング(乾式エッチング)によりパターニングを行っても良い。第1のニッケル膜62については、例えば硝酸とフッ酸を混合したエッチング液を用いて、ウエットエッチング(湿式エッチング)によりパターニングを行っても良い。ニッケル膜をパターニングする際のエッチング条件については、後述する。
【0065】
上述したステップS3〜S5の工程において、半導体基板1の裏面をバックグラインド(研削)し、半導体基板1の厚さを200μm以下の例えば160μmの厚さになるまで薄くする。さらに、エッチングにより、半導体基板1の裏面を例えば20μm薄くする。その後、半導体基板1の裏面に、図示省略するバッファ層およびコレクタ層を形成する。そして、図8に示すように、半導体基板1の裏面に、コレクタ電極9として、第2のアルミニウム膜91および第2のニッケル膜92を形成する。第2のアルミニウム膜91および第2のニッケル膜92の各膜厚は、それぞれ例えば0.5μmおよび0.7μmであっても良い。なお、ステップS3のエッチングでは、バックグラインドによるダメージ層が除去される。エッチングの方法としては、例えば、ドライエッチングやスピンエッチングが用いられる。
【0066】
なお、上述したステップS3における半導体基板1の厚さを200μm以下とする工程は、図4に示す製造過程の順序で行うことに限るものではない。例えば、エミッタ電極6として第1のアルミニウム膜61を形成した後、エミッタ電極6として第1のニッケル膜62などを積層する前に、半導体基板1の厚さを薄くしても良い。つまり、ステップS2の工程の途中で、半導体基板1の裏面にバックグラインドやエッチングなどを行っても良い。従って、ステップS3の工程は、エミッタ電極6として第1のアルミニウム膜61を形成する工程と、半導体基板1の裏面にコレクタ電極9を形成する工程(ステップS5)との間であれば、処理の順序を変更することが可能である。
【0067】
上述したステップS6の工程において、図1に示すように、エミッタ電極6およびコレクタ電極9の表面に、同時にニッケルめっき膜11が形成される。そして、そのニッケルめっき膜11の表面に置換金めっき膜12が形成される。ニッケルめっき膜11および置換金めっき膜12の各膜厚は、それぞれ例えば5μmおよび0.03μmであっても良い。ステップS6の工程では、エミッタ電極6とニッケルめっき膜11との密着性を向上させるため、無電解ニッケルめっき処理の前処理として、エミッタ電極6の表面を活性化させる処理を行う。
【0068】
上述したステップS11およびステップS12の工程において、第1のニッケル膜62の表面に付着した付着物や、表面が加工されたことによって生じた変質層が除去される。そして、第1のニッケル膜62の表面酸化膜を除去し、エミッタ電極6の表面を活性化させる。これにより、エミッタ電極6とニッケルめっき膜11との密着性が向上する。なお、第2のニッケル膜92の表面にも同様の処理を行い、コレクタ電極9の表面を活性化させても良い。ニッケル膜の表面酸化膜を除去する際のエッチング条件については、後述する。
【0069】
上述したステップS13およびステップS14の工程において、無電解ニッケルめっき処理および置換金めっき処理を連続して行い、半導体基板1のエミッタ電極6およびコレクタ電極9の両面に、同時にニッケルめっき膜11および置換金めっき膜12を形成する。ニッケルめっき浴には、還元剤として例えば次亜リン酸ナトリウムが添加されていても良い。その理由については、後述する。また、ニッケルめっき浴に添加される還元剤の別の一例については、後述する。このようにして、図1に示す半導体装置が完成する。
【0070】
なお、第1のチタン膜63を形成する場合(図2参照)は、ステップS2において、半導体基板1のおもて面に、アルミニウム、チタン、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層する。このとき、第1のチタン膜63の膜厚は、例えば0.5μmであっても良い。
【0071】
また、第1のチタン膜63を形成した場合、第1のチタン膜63のパターニングは、エミッタ電極6として第1のアルミニウム膜61、第1のチタン膜63および第1のニッケル膜62を積層した後に、第1のニッケル膜62、第1のチタン膜63、第1のアルミニウム膜61の順にそれぞれエッチングを行っても良い。または、第1のアルミニウム膜61および第1のチタン膜63を積層した後に、第1のチタン膜63、第1のアルミニウム膜61の順にエッチングを行う。その後に続けて、第1のニッケル膜62の形成およびパターニングを行っても良い。このとき、第1のチタン膜63のパターニングを、第1のアルミニウム膜61のパターニングと同様のエッチング条件で行っても良い。
【0072】
また、第2のチタン膜93を形成する場合(図3参照)は、ステップS5において、半導体基板1の裏面に、アルミニウムシリコン、チタン、ニッケルを蒸着またはスパッタで順次積層する。このとき、第2のチタン膜93の膜厚は、例えば0.2μmであっても良い。
【0073】
エミッタ電極6として第1のチタン膜63を設けることにより、第1のニッケル膜62もしくはニッケルめっき膜11、またはその両方の膜厚を、薄くすることができる。その理由は、以下に示すとおりである。ニッケルめっき膜11は、はんだ接合における、エミッタ電極6とはんだとの密着性を向上させるために設けられる。例えばSnAgCu系の鉛フリーはんだを用いて、300℃程度の熱処理ではんだ接合を行う場合、第1のニッケル膜62を含めたニッケルめっき膜11(以下、ニッケル膜等とする)の厚さは、3μm以上必要となる。しかしながら、はんだ接合時の熱処理によりニッケルがはんだの中に拡散し、ニッケル膜等は、例えば0.3〜2.0μm程度に薄くなってしまう。ニッケル膜等が薄くなり、エミッタ電極6の表面に第1のアルミニウム膜61が露出した場合、第1のアルミニウム膜61とはんだが接触することになる。第1のアルミニウム膜61は、はんだとの密着性が低いので、エミッタ電極6とはんだとの界面で剥離が生じてしまう。それに対して、ニッケル膜等と第1のアルミニウム膜61との間に第1のチタン膜63が存在する場合、ニッケル膜等にその下層に達する凹部が生じたとしても、エミッタ電極6の表面には第1のチタン膜63が露出する。従って、第1のアルミニウム膜61とはんだが接触することを回避することができる。また、第1のチタン膜63は、はんだとの密着性が高いため、エミッタ電極6の表面に第1のチタン膜63が露出しても、エミッタ電極6とはんだとの密着性を確保することができる。これにより、第1のニッケル膜62またはニッケルめっき膜11を薄くしたとしても、エミッタ電極6とはんだとの密着性を確保することができる。第2のチタン膜93についても、第1のチタン膜63と同様である。なお、チタン膜の代わりに、モリブデン膜、クロム膜、コバルト膜またはタングステン膜を形成しても同様の効果が得られる。
【0074】
また、エミッタ電極6の、めっきされる表面はニッケルを用いて形成されている(第1のニッケル膜62)が、ニッケルに限らず、無電解めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める物質(第1の物質)であれば良い。また、エミッタ電極6の表面にニッケルを析出させてめっき膜(ニッケルめっき膜11)を形成しているが、エミッタ電極6の表面に析出する物質が、無電解めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める物質(第2の物質)であれば良い。例えば、一例として、第1のニッケル膜62およびニッケルめっき膜11の主成分であるニッケルと、めっき浴中の還元剤である次亜リン酸ナトリウムの組み合わせが挙げられる。第1の物質および第2の物質は、異なる物質でも良い。
【0075】
図9は、実施の形態にかかるめっき膜とめっき浴中の還元剤の組み合わせを示す図である。第2の物質を主成分とするめっき膜を形成する際の、無電解めっき浴における代表的な還元剤について説明する。図9に示すように、ニッケル(Ni)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、ジメチルアミンボラン、ヒドラジンまたはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。コバルト(Co)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、ジメチルアミンボラン、ヒドラジンまたはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。パラジウム(Pd)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、ホスホン酸ナトリウム(亜リン酸ナトリウム)またはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。
【0076】
銅(Cu)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ホルマリン、ジメチルアミンボランまたはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。銀(Ag)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ジメチルアミンボランまたはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。金めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ジメチルアミンボランまたはテトラヒドロホウ酸カリウム(水酸化ホウ素カリウム)を用いるのが良い。プラチナ(Pt)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、ヒドラジンまたはテトラヒドロホウ酸ナトリウム(水酸化ホウ素ナトリウム)を用いるのが良い。スズ(Sn)めっき膜を形成するめっき浴には、還元剤として、三塩化チタンを用いるのが良い。
【0077】
また、置換金めっき膜12は、ニッケルめっき膜11の表面酸化を防止するために設けられている。置換金めっき膜12は、ニッケルめっき膜11のニッケルと、金めっき浴中の金が置換されることにより形成される。置換金めっき膜12に代えて、第2の物質(例えば、ニッケルめっき膜11の主成分であるニッケル)との間に、置換反応を起こす物質(第3の物質)を主成分としためっき膜を形成しても良い。
【0078】
次に、第1のニッケル膜62のエッチング条件について説明する。図10は、実施の形態にかかるエッチング方法について示す図である。図10では、第1のニッケル膜62のパターンを形成する場合のエッチング条件について示す。なお、ギュンター・ペツォーによる著書「組織学とエッチングマニュアル」(日刊工業新聞社、160ページ)からの抜粋である。図10に示すエッチング条件は、例1〜例14の材質をエッチングするための、エッチング液組成およびエッチング条件である。例1の材質は、純度99at%以上の純ニッケル(純Ni)、ニッケル濃度の高い合金、ニッケルチタン(NiTi)またはニッケル銅(NiCu)合金である。例1の材質のエッチング液組成は、濃度65wt%の硝酸を50ml、および純度98at%以上の酢酸(氷酢酸)を50mlである。例1のエッチング条件は、5〜30秒である。例2の材質は、ニッケル、ニッケル基合金またはニッケルクロム(NiCr)合金である。例2の材質のエッチング液組成は、濃度65wt%の硝酸を80ml、および濃度40wt%のフッ酸を3mlである。例2のエッチング条件は、数秒〜数分である。
【0079】
例3の材質は、純ニッケル、ニッケル銅またはニッケル鉄(NiFe)合金である。例3の材質のエッチング液組成は、蒸留水を50ml、硫化銅を10g、および濃度32wt%の塩酸(HCl)を50mlである。例3のエッチング条件は、5〜10秒である。例4の材質は、ニッケル鉄、ニッケル銅またはニッケル銀(NiAg)合金である。例4の材質のエッチング液組成は、蒸留水もしくは濃度96wt%のエタノールを20〜100ml、濃度32wt%の塩酸を2〜25ml、および塩化鉄(III)(FeCl3)を5〜8gである。例4のエッチング条件は、5〜60秒である。例5の材質は、純ニッケルである。例5の材質のエッチング液組成は、蒸留水を100mlおよびベルオキソ硫酸10g、もしくは蒸留水を100mlおよびシアン化カリウム(KCN)を10gである。例5のエッチング条件は、30〜60秒である。
【0080】
例6の材質は、ニッケル−亜鉛−銀(NiZnAg)合金、ニッケル銀、ニッケル銅、またはニッケル−アルミニウム−モリブデン(NiAlMo)合金である。例6の材質のエッチング液組成は、蒸留水を100mlおよびベルオキソ硫酸10gと、蒸留水を100mlおよびシアン化カリウム(KCN)を10gとを1対1で混合した溶液、および濃度3wt%の過酸化水素水(H2O2)を数滴である。例6のエッチング条件は、数秒〜数分である。例7の材質は、ニッケルアルミニウム(NiAl)、モリブデン−ニッケル(MoNi)合金またはニッケルチタン合金である。例7の材質のエッチング液組成は、濃度32wt%塩酸を100ml、および酸化クロム(VI)(CrO3)を0.1〜1gである。例7のエッチング条件は、数秒〜数分である。
【0081】
例8の材質は、ニッケル鉄合金である。例8の材質のエッチング液組成は、ベルオキソ硫酸アンモニウム飽和水溶液である。例8のエッチング条件は、数秒〜数分である。例9の材質は、ニッケル亜鉛(NiZn)合金である。例9の材質のエッチング液組成は、濃度25wt%のアンモニア(NH3)水溶液を85ml、および濃度30wt%の過酸化水素水を5mlである。例9のエッチング条件は、5〜15秒である。例10の材質は、ニッケル銅合金である。例10の材質のエッチング液組成は、濃度96wt%のエタノールを40〜80ml、濃度32wt%の塩酸を40ml、および塩化鉄(III)を2gである。例10のエッチング条件は、数秒〜数分である。
【0082】
例11の材質は、ニッケル鉄、またはニッケルアルミニウム合金である。例11の材質のエッチング液組成は、濃度32wt%の塩酸を40ml、濃度65wt%の硝酸を30ml、濃度87wt%のグリセリン(C3H5(OH)3)を10ml、および氷酢酸を2
0mlである。例11のエッチング条件は、数秒〜数分である。例12の材質は、ニッケル珪化物である。例12の材質のエッチング液組成は、蒸留水を80ml、濃度65wt%の硝酸を30ml、および濃度40wt%のフッ酸を10mlである。例12のエッチング条件は、数秒〜数分である。例13の材質は、ニッケルチタン合金である。例13の材質のエッチング液組成は、蒸留水を100ml、濃度65wt%の硝酸を25ml、および濃度40wt%のフッ酸を10mlである。例13のエッチング条件は、5〜30秒である。例14の材質は、モリブデンを9at%以上含むニッケル基合金である。例14の材質のエッチング液組成は、蒸留水を50ml、二硫化水素アンモニウムを7g、濃度32wt%の塩酸を50ml、および二硫化カリウムを0.5gである。例14のエッチング条件は、めっき浴の温度30〜40℃とし、5〜10分である。
【0083】
なお、第1のニッケル膜62の表面酸化膜を除去する場合は、例えば濃度30wt%の硝酸で30秒〜2分程度のエッチングで除去することが可能であるが、図10に示すエッチング条件の、エッチング時間を短くすることでも対応することができる。また、第2のニッケル膜92のエッチング条件は、第1のニッケル膜62と同様である。
【0084】
以上、説明したように、実施の形態によれば、エミッタ電極6の最表面層である第1のニッケル膜62を、めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速めるニッケルを主成分として形成している。かつ、無電解めっき処理前に、エミッタ電極6の表面を活性化している。これにより、無電解めっき処理において、第1のニッケル膜62と還元剤の酸化還元反応のみで、第1のニッケル膜62の表面に、ニッケルめっき膜11を連続して析出させることができる。そのため、従来のめっき処理過程において、無電解めっき処理の前処理として行っていた、表面酸化膜除去後にエミッタ電極6に行われるエッチングや、エミッタ電極6の表面へのジンケート処理が不要となる。これにより、第1のアルミニウム膜61に孔食(図15参照)が生じることを防止することができるので、半導体装置の特性が変動することを防止することができる。また、従来のめっき処理過程に比べて、工程数を減らすことができるので、製造コストを低減することができる。第2のニッケル膜92についても同様である。また、エミッタ電極6として第1のチタン膜63を設けることにより、はんだ接合における実装に際し、第1のニッケル膜62およびニッケルめっき膜11に、その下層にまで達する凹部が生じたとしても、はんだとの密着力が高い第1のチタン膜63が、エミッタ電極6の表面に露出する。そのため、エミッタ電極6とはんだとの密着性を確保することができる。これにより、第1のニッケル膜62およびニッケルめっき膜11の厚さを薄くすることができる。なお、コレクタ電極9についても、同様である。また、おもて面電極であるエミッタ電極6および裏面電極であるコレクタ電極9に、同時にニッケルめっき膜11が形成される。そのため、エミッタ電極6に形成されたニッケルめっき膜11により生じる応力と、コレクタ電極9に形成されたニッケルめっき膜11により生じる応力は相殺される。これにより、半導体基板1の反りを抑制することができる。
【0085】
以上において本発明は、おもて面電極および裏面電極の電極構造は、図1に示す2層金属膜構造の電極と、図2および図3に示す3層金属膜構造の電極とを任意に組み合わせることが可能である。また、半導体装置の構造や膜厚など、コストや利用目的に応じて変更可能である。また、コレクタ電極9は、本実施の形態による工程によらず、別の工程により形成しても良い。
【0086】
また、上述した実施の形態では、半導体基板の両面に同時にめっき処理を行う場合について説明しているが、半導体基板の片面のみにめっき処理を行う場合にも有効である。また、めっき処理を行う半導体装置としてIGBTを例に説明しているが、上述した実施の形態に限らず、MOSFETや、FWD(Free Wheeling Diode)などの、さまざまな半導体装置の電極にめっき処理を行う場合においても適用することができる。
【0087】
なお、従来と同様にジンケート処理を行う場合でも、第1のチタン膜63を設けることで、実施の形態と同様の効果を得ることができる。その理由は、次に示すとおりである。ジンケート処理のエッチングによって、第1のニッケル膜62の表面に、その下層に達する凹部が生じたとしても、第1のニッケル膜62の下にある第1のチタン膜63でエッチングを止めることができる。これにより、エミッタ電極6の表面に、第1のアルミニウム膜61が露出するのを防ぐことができるので、エミッタ電極6とはんだとの密着性を確保することができる。第2のチタン膜93についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明にかかる半導体装置の製造方法は、デバイス厚の薄い半導体装置を製造するのに有用であり、特に、汎用インバータ、ACサーボ、無停電電源(UPS)またはスイッチング電源などの産業分野や、電子レンジ、炊飯器またはストロボなどの民生機器分野に用いられるIGBT等の電力用半導体装置の製造に適している。
【符号の説明】
【0089】
1 半導体基板
2 p+ベース領域
3 n+エミッタ領域
4 ゲート酸化膜
5 ゲート電極
6 エミッタ電極
7 層間絶縁膜
11 ニッケルめっき膜
12 置換金めっき膜
61 アルミニウム膜(第1)
62 ニッケル膜(第1)
91 アルミニウム膜(第2)
92 ニッケル膜(第2)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板のおもて面に第1の金属膜を形成する第1の金属膜形成工程と、
前記第1の金属膜の表面に第2の金属膜を形成する第2の金属膜形成工程と、
前記第2の金属膜の表面を活性化する表面活性化工程と、
湿式めっき法により、前記第2の金属膜の表面にめっき膜を形成するめっき膜形成工程と、を含み、
前記第2の金属膜形成工程では、前記第2の金属膜として、前記めっき膜形成工程で用いられるめっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める第1の物質を主成分とする金属膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第2のパターン形成工程と、
前記第1の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第1のパターン形成工程と、をさらに含み、
前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間で前記第2のパターン形成工程を行い、
前記第2のパターン形成工程と前記表面活性化工程との間で前記第1のパターン形成工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第1のパターン形成工程と、
前記第2の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第2のパターン形成工程と、をさらに含み、
前記第1の金属膜形成工程と前記第2の金属膜形成工程との間で前記第1のパターン形成工程を行い、
前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間で前記第2のパターン形成工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記表面活性化工程は、前記第2の金属膜の表面の酸化膜を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記めっき膜形成工程は、前記第2の金属膜の表面に、第1のめっき膜を形成する工程を含み、
前記第1のめっき膜として、前記めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める第2の物質を主成分とするめっき膜を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2の物質はニッケルであることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記めっき膜形成工程は、前記第1のめっき膜の表面に、第2のめっき膜を形成する工程をさらに含み、
前記第2のめっき膜として、前記第1のめっき膜との間で置換反応を起こす第3の物質を主成分とするめっき膜を形成することを特徴とする請求項5または6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3の物質は金であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の金属膜を蒸着法またはスパッタリング法により形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の金属膜は、アルミニウムを主成分とする膜であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の金属膜をアルミニウムシリコンまたはアルミニウムシリコン銅で形成することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2の金属膜は、高融点を有する第3の金属膜と、前記第1の物質を主成分とする膜とがこの順に積層された金属積層膜であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第3の金属膜をチタン、モリブデン、クロム、コバルトまたはタングステンで形成することを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1の物質は、ニッケルであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記湿式めっき法は、無電解めっき法であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間に、前記半導体基板の裏面に裏面電極を形成する裏面電極形成工程、をさらに含み、
前記第1の金属膜形成工程および前記第2の金属膜形成工程では、前記半導体基板のおもて面におもて面電極として、前記第1の金属膜および前記第2の金属膜を形成し、
前記めっき膜形成工程では、前記おもて面電極の表面および前記裏面電極の表面に、同時に前記めっき膜を形成することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第1の金属膜形成工程と前記裏面電極形成工程との間に、前記半導体基板の裏面を加工して基板厚さを200μm以下に薄くする基板薄化工程、をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体基板のおもて面に第1の金属膜を形成する第1の金属膜形成工程と、
前記第1の金属膜の表面に第2の金属膜を形成する第2の金属膜形成工程と、
前記第2の金属膜の表面を活性化する表面活性化工程と、
湿式めっき法により、前記第2の金属膜の表面にめっき膜を形成するめっき膜形成工程と、を含み、
前記第2の金属膜形成工程では、前記第2の金属膜として、前記めっき膜形成工程で用いられるめっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める第1の物質を主成分とする金属膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第2のパターン形成工程と、
前記第1の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第1のパターン形成工程と、をさらに含み、
前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間で前記第2のパターン形成工程を行い、
前記第2のパターン形成工程と前記表面活性化工程との間で前記第1のパターン形成工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第1のパターン形成工程と、
前記第2の金属膜に、エッチングによりパターンを形成する第2のパターン形成工程と、をさらに含み、
前記第1の金属膜形成工程と前記第2の金属膜形成工程との間で前記第1のパターン形成工程を行い、
前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間で前記第2のパターン形成工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記表面活性化工程は、前記第2の金属膜の表面の酸化膜を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記めっき膜形成工程は、前記第2の金属膜の表面に、第1のめっき膜を形成する工程を含み、
前記第1のめっき膜として、前記めっき浴に添加される還元剤の酸化反応速度を速める第2の物質を主成分とするめっき膜を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2の物質はニッケルであることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記めっき膜形成工程は、前記第1のめっき膜の表面に、第2のめっき膜を形成する工程をさらに含み、
前記第2のめっき膜として、前記第1のめっき膜との間で置換反応を起こす第3の物質を主成分とするめっき膜を形成することを特徴とする請求項5または6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3の物質は金であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の金属膜を蒸着法またはスパッタリング法により形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の金属膜は、アルミニウムを主成分とする膜であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の金属膜をアルミニウムシリコンまたはアルミニウムシリコン銅で形成することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2の金属膜は、高融点を有する第3の金属膜と、前記第1の物質を主成分とする膜とがこの順に積層された金属積層膜であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第3の金属膜をチタン、モリブデン、クロム、コバルトまたはタングステンで形成することを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1の物質は、ニッケルであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記湿式めっき法は、無電解めっき法であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第2の金属膜形成工程と前記表面活性化工程との間に、前記半導体基板の裏面に裏面電極を形成する裏面電極形成工程、をさらに含み、
前記第1の金属膜形成工程および前記第2の金属膜形成工程では、前記半導体基板のおもて面におもて面電極として、前記第1の金属膜および前記第2の金属膜を形成し、
前記めっき膜形成工程では、前記おもて面電極の表面および前記裏面電極の表面に、同時に前記めっき膜を形成することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第1の金属膜形成工程と前記裏面電極形成工程との間に、前記半導体基板の裏面を加工して基板厚さを200μm以下に薄くする基板薄化工程、をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−251719(P2010−251719A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48272(P2010−48272)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
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