説明

半導体装置の製造方法

【課題】p型MISトランジスタ及びn型MISトランジスタの特性を向上した相補型MISトランジスタを備えた半導体装置を容易に実現できるようにする。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、p型半導体領域10A及びn型半導体領域10Bを有する半導体基板101の上に、高誘電率膜106、アルミニウムからなる第1のキャップ膜107及びハードマスク108を順次形成する。次に、第1のキャップ膜107及びハードマスク108におけるn型半導体領域10Bの上に形成された部分を除去する。その後、半導体基板101の上に、実効仕事関数を低下させる効果を有する元素を含む第2のキャップ膜109を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に相補型トランジスタを備えた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
32nm世代の相補型金属絶縁膜半導体(CMIS)における消費電力の低減及び性能の向上のため、ゲート絶縁膜をさらに薄膜化することが求められている。従来のシリコン酸化膜系材料からなるゲート絶縁膜をさらに薄膜化すると、リーク電流の増大が許容範囲を超えてしまう。このため、従来のシリコン酸化膜系材料と比べて高い比誘電率を有する高誘電率膜(high−k膜)をゲート絶縁膜に用いることが検討されている。ハフニウム(Hf)系の絶縁膜は、1000℃以上の熱的安定性を有すると共に13以上の比誘電率を有するため、高誘電率膜の候補として有望視されている。しかし、ゲート絶縁膜にハフニウムシリケート(HfSiOx)膜又はハフニウムオキサイド(HfOx)膜を用い且つゲート電極にポリシリコンを用いた構造の場合、空乏化による酸化膜換算膜厚(EOT)の増加及びフェルミレベルピニングによる閾値電圧の上昇が無視できない。これは、特にp型MISトランジスタにおいて問題となる。
【0003】
このため、ゲート電極としてポリシリコンの代わりに金属を用いたメタルゲート電極の利用が検討されている。バルクCMIS向けに、メタルゲートを適用する場合、n型MISトランジスタにはSiの伝導帯近傍の実効仕事関数(eWF)を有する金属を用い、p型MISトランジスタにはSiの価電子帯近傍のeWFを有する金属を用いればよい。具体的には、p型MISトランジスタにはeWFが4.8eV以上となる金属を用い、n型MISトランジスタにはeWFが4.3eV以下となる金属を用いることが好ましい。
【0004】
金属材料とeWFとの関係から、n型MISトランジスタの場合にはチタン(Ti)、モリブデン(Mo)又はタンタル(Ta)といった金属材料が有望であり、p型MISトランジスタの場合には白金(Pt)、酸化ルテニウム(RuO2)又は窒化チタン(TiN)といった金属材料が有望である。従って、CMISトランジスタを形成する場合には、これらの材料を用いてデュアルメタルゲートプロセスを構築すればよい。しかし、p型MISトランジスタのゲート電極として有望なPt及びRuO2等は、非常に加工が困難である。n型MISトランジスタ用のゲート電極として有望なTi、Mo及びTa等の材料も加工が容易ではない。また、熱不安定性等の問題も有している。このため、デュアルメタルゲートプロセスの構築は容易ではない。
【0005】
そこで、窒化チタン(TiN)等からなるメタルゲート電極をp型MISトランジスタ及びn型MISトランジスタの双方に用いる方法が提案されている。例えば、ランタン(La)、イットリウム(Y)又はマグネシウム(Mg)等の金属からなるキャップ膜をメタルゲート電極とゲート絶縁膜との間に挿入することによりn型MISトランジスタに適したeWFを実現することができる。また、酸化アルミニウム(AlOx)からなるキャップ膜をメタルゲート電極とゲート絶縁膜との間に挿入することによりp型MISトランジスタに適したeWFを実現することができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−329237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、AlOx膜をキャップ膜としてp型MISトランジスタに適したeWFを実現しようとすると、以下のような問題が生じることを本願発明者らは見出した。
【0008】
まず、ゲート電極とゲート絶縁膜との間にAlOx膜を挿入すると、EOTが増大し、ゲート容量が低下してしまうという問題があることを見出した。比誘電率が低いAlOx膜を高誘電率膜の上に形成すると、高誘電率膜は相対的に低誘電率化する。また、AlOx膜中の余剰酸素成分が高誘電率膜中に拡散するため、後工程の熱処理において界面層の再酸化増膜が生じ、EOTが増大するということが明らかとなった。
【0009】
EOTの増大を抑えるために、AlOxを挿入する分だけ高誘電率膜の物理膜厚を薄くすることが考えられる。しかし、p型MISトランジスタの形成領域とn型MISトランジスタの形成領域とに互いに膜厚が異なる高誘電率膜を形成しようとすると、工程が増加し、製造コストが上昇する。
【0010】
さらに、AlOx膜をキャップ膜として用いた場合には、n型MISトランジスタの特性を悪化させるおそれがあることが本願発明者らにより明らかとなった。AlOx膜をp型MISトランジスタのキャップ膜として用いる場合には、通常はn型MISトランジスタの形成領域において、高誘電率膜の上に形成されたAlOx膜を選択的に除去する必要がある。高誘電率膜にダメージを与えることなく、選択的にAlOx膜を除去する方法として、塩酸−過酸化水素系の洗浄が知られている。しかし、高誘電率膜の上にAlOx膜を形成すると、塩酸又は塩酸−過酸化水素系の薬剤では十分に除去することができない。
【0011】
塩酸等の薬剤によりAlOx膜が十分にできない理由として、以下のような理由が考えられる。まず、AlOx膜は化学的に安定であり、塩酸等の薬剤に対して除去耐性を有していることが考えられる。また、高誘電率膜上にAlOx膜を形成すると、Alが高誘電率膜中へ拡散し、Alと高誘電率膜とが反応してHfとAlとの結合が形成されることが物理分析により明らかとなっている。Hfと結合したAlは化学的に安定となり、塩酸等の薬剤により除去することが困難になると考えられる。
【0012】
n型MISトランジスタの形成領域にAlが残存すると、n型MISトランジスタのeWFが正方向にシフトし、閾値電圧が上昇してしまう。また、残存するAlの影響を抑えるためにLaOxの導入量を多くすると、過剰なLaによる移動度の低下及びゲート容量の低下等が生じる。一方、LaOx膜を先に形成する場合には、p型MISトランジスタの形成領域上のLaOx膜の除去性がAlの除去性と同様に問題となる。LaOx膜の残存によりp型MISトランジスタの特性が悪化するため、根本的な解決策とはならない。
【0013】
本願は、前記の問題を解決し、p型MISトランジスタ及びn型MISトランジスタの特性を向上した相補型MISトランジスタを備えた半導体装置を容易に実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するため、本発明は半導体装置の製造方法を、p型半導体領域にAlからなる第1のキャップ膜を形成する構成とする。
【0015】
具体的に、本発明に係る半導体装置の製造方法は、p型半導体領域及びn型半導体領域を有する半導体基板の上に、高誘電率膜、アルミニウムからなる第1のキャップ膜及びハードマスクを順次形成する工程(a)と、工程(a)よりも後に、第1のキャップ膜及びハードマスクにおけるn型半導体領域の上に形成された部分を除去する工程(b)と、工程(b)よりも後に、半導体基板の上に、実効仕事関数を低下させる効果を有する元素を含む第2のキャップ膜を形成する工程(c)と、工程(c)よりも後に、熱処理を行う工程(d)と、工程(d)よりも後に、半導体基板上に電極膜を形成する工程(e)と、工程(e)よりも後に、電極膜及び高誘電率膜をパターニングすることにより、n型半導体領域の上に第1のゲート絶縁膜及び第1のゲート電極を形成し、p型半導体領域の上に第1のゲート絶縁膜及び第2のゲート電極を形成する工程(f)とを備えている。
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法は、第1のキャップ膜がAlからなる。このため、p型MISトランジスタにおける界面シリコン酸化膜の増膜を抑えることができ、EOTを小さく保つことが可能となる。また、Alからなる第1のキャップ膜は除去性に優れているため、n型MISトランジスタの第2のゲート絶縁膜中にAlが残存し難い。従って、第2のゲート絶縁膜中に拡散させるeWFを低下させる効果を有する元素を少なくすることができ、n型MISトランジスタの駆動力及び移動度を向上させることができる。
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(b)よりも後で且つ工程(f)よりも前に、第1のキャップ膜に含まれるアルミニウムを拡散させるアルミニウム拡散工程(g)をさらに備えていてもよい。
【0018】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(d)よりも後で且つ工程(e)よりも前に、第2のキャップ膜を除去する工程(h)をさらに備えていてもよい。
【0019】
本発明の半導体装置の製造方法において、高誘電率膜には、ハフニウムを含む膜又はジルコニウムを含む膜を用いることができる。
【0020】
本発明の半導体装置の製造方法において、電極膜には、窒化チタン膜、窒化タンタル膜、窒化タンタルシリコン膜、窒化チタンアルミニウム膜又は窒化ハフニウム膜を含む膜を用いることができる。
【0021】
本発明の半導体装置の製造方法において、第2のキャップ膜には、ランタン、イットリウム、マグネシウム又はガドリニウムを含む膜を用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、p型MISトランジスタ及びn型MISトランジスタの特性を向上した相補型MISトランジスタを備えた半導体装置を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】評価用半導体装置を示す断面図である。
【図2】評価用半導体装置の電圧と容量との関係を示す特性図である。
【図3】キャップ膜を除去した後に高誘電率膜に含まれるアルミニウム濃度を測定した結果を示す特性図である。
【図4】一実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5】一実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】一実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図7】p型MISトランジスタにおけるAlの垂直方向の分布である。
【図8】n型MISトランジスタにおける熱処理温度とeWF及びEOTとの関係を示す特性図である。
【図9】p型MISトランジスタにおける熱処理温度とeWF及びEOTとの関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、p型MISトランジスタの酸化膜換算膜厚(EOT)の増大を抑えつつ、p型MISトランジスタに適した実効仕事関数(eWF)を実現できるようにする原理を説明する。
【0025】
図1は、評価用半導体装置の断面構成を示している。評価用半導体装置は、シリコン(Si)基板301の上に順次形成された、金属−絶縁膜−半導体(MIS)キャパシタであり、界面シリコン酸化膜302、高誘電率膜303、キャップ膜304及び電極膜305を有している。界面シリコン酸化膜302は、膜厚が1.2nm程度のSiO2膜である。高誘電率膜303は、膜厚が1.5nmの窒素添加ハフニウムシリケート(HfSiON)膜である。電極膜305は、膜厚が15nmのTiN膜である。
【0026】
図2は、評価用半導体装置の容量−電圧(CV)特性を示している。図2において、印加する電圧の周波数は100kHzとした。膜厚が0.5nmのAlOx膜又は膜厚が1nmのAl膜からなるキャップ膜304を形成した場合には、キャップ膜を形成していない場合よりもフラットバンド電圧(Vfb)が正方向にシフトした。これは、AlOx膜からなるキャップ膜304を設けることによりeWFが増加したことを示している。しかし、キャップ膜304をAlOx膜とした場合には、キャップ膜を形成していない場合と比べて蓄積容量が低下した。これは、EOTが増大していることを示している。一方、キャップ膜304をAl膜とした場合には、蓄積容量はキャップ膜を形成していない場合とほぼ同じであり、EOTの増大はほとんど認められない。
【0027】
また、金属膜であるAl膜は、酸化膜であるAlOx膜と異なり希塩酸により容易に溶解除去することができる。図3は、キャップ膜を除去した後に高誘電率膜に残存するAlの量を示している。まず、Si基板の上に、SiO2からなる界面シリコン酸化膜、HfSiONからなる高誘電率膜及びキャップ膜を形成した後、希塩酸によりキャップ膜を除去し、TiNからなる電極膜を形成した。図3において、キャップ膜を膜厚が0.3nmのAlOx膜とした場合を破線で示し、キャップ膜を膜厚が0.3nmのAl膜とした場合を実線で示している。Al残存量の測定には二次イオン質量分析(SIMS)法を用いた。図3に示すように、キャップ膜をAlOx膜とした場合には、高誘電率膜中にAlが残存している。しかし、キャップ膜をAl膜とした場合には、Alの残存量は一桁以上低くなることが明らかとなった。
【0028】
このように、p型MISトランジスタのキャップ膜としてAlOx膜に代えてAl膜を用いることにより、p型MISトランジスタのEOTの増大を抑えることができる。また、n型MISトランジスタの高誘電率膜中に残存するAlの量を低減し、n型MISトランジスタの特性の劣化を抑制することが可能となる。以下に、実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
【0029】
(一実施形態)
図4及び図6は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示している。まず、図4(a)に示すように、半導体基板101に素子分離領域102により互いに分離されたp型MISトランジスタを形成するp型半導体領域10A及びn型MISトランジスタを形成するn型半導体領域10Bを形成する。半導体基板101は例えばSi基板とすればよい。p型半導体領域10Aにはnウェル103が形成され、n型半導体領域10Bにはpウェル104が形成されている。素子分離領域102は、LOCOS(local oxidation of silicon)法又はSTI(shallow trench isolation)法等により形成すればよい。
【0030】
次に、図4(b)に示すように、半導体基板101上の全面に、界面シリコン酸化膜105を形成する。界面シリコン酸化膜105は、シリコン酸化膜(SiO2膜)又は酸窒化シリコン膜(SiON膜)等とすればよい。詳細には、光学膜厚が0.5nm程度のケミカル酸化膜と、膜厚が0.5nm〜1.5nm程度のラジカル酸化膜とすればよい。ケミカル酸化膜は、塩酸及び過酸化水素混合溶液により半導体基板101を処理することにより形成すればよい。ラジカル酸化膜は、H2及びN2O混合ガス雰囲気で600℃〜850℃程度の熱処理を行うことにより形成すればよい。
【0031】
ラジカル酸化膜を形成した後、若干のリーク電流を改善するために、ラジカル酸化膜のプラズマ窒化処理及びアニール処理を行ってもよい。プラズマ窒化処理は、窒素を含むガスを用いて、圧力を5mTorr〜1000mTorr(但し、1Torrは約1.33×102Paである。)とし、パルス又は連続発振プラズマを用いて、放電パワーが0.1kW−2kW程度の条件で行い、界面シリコン酸化膜105中に5%〜20%程度窒素を導入することが望ましい。但し、窒素濃度が高くなるに従い、界面準位の上昇による移動度の低下及びBTI特性の劣化が生じる傾向が明らかになっている。このため、窒素濃度は10%程度が適正であると考える。また、アニール処理は、酸素雰囲気にて圧力が0.5Torr〜5Torr程度で、温度が1000℃程度の条件において、5秒〜15秒程度行えばよい。アニール処理を行うことにより、ラジカル酸化膜の膜中に存在している原子状窒素の脱離の促進及び不完全な結合又は欠陥の修復を行うことができる。
【0032】
続いて、界面シリコン酸化膜105の上に、高誘電率膜106を形成する。高誘電率膜106は、HfSiO膜、HfSiON膜、HfO膜又はHfZrO等のHf系の絶縁膜とすればよい。高誘電率膜106は例えば原子層堆積法(ALD法)により形成すればよい。この場合、Hf[N(C2H5)CH3]4<テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム>等のHfを含む有機系材料と、SiH4等のSiを含むガス又はSiH[N(CH3)2]3トリス(ジメチルアミノ)シラン等のSiを含む有機系材料とを原料として形成すればよい。300℃〜600℃程度の成膜温度において、短時間交互に堆積を行い、余剰原料のパージを行いながら、酸素(O2)、オゾン(O3)又は水蒸気(H2O)等を用いて酸化すればよい。
【0033】
高誘電率膜106の膜厚は、EOTが0.5nm〜1.5nm程度の範囲を実現しようとする場合には、ラジカル酸化膜と合わせた物理膜厚を1nm〜3nm程度とすればよい。なお、高誘電率膜106は酸化ジルコニウム(ZrO)を含むHf系の膜としてもよく、Hf系以外に酸化ジルコニウム(ZrO)単体の膜としてもよい。
【0034】
続いて、高誘電率膜106の結晶化を防止するために、高誘電率膜106に対してプラズマ窒化処理を行う。なお、ここでのプラズマ窒化処理において、高誘電率膜106中に窒素を5%〜10%程度導入すればよい。窒素の導入量が多すぎる場合には、トランジスタ界面特性が劣化するおそれがある。また、窒素の導入量が少なすぎる場合には、ゲートリークの増大、部分結晶化による耐圧及び信頼性の低下等が発生するおそれがある。
【0035】
続いて、高誘電率膜106に対して、酸素又は窒素雰囲気において熱処理を行ってもよい。これにより高誘電率膜106中の不純物の除去及び欠陥の修復ができる。また、界面シリコン酸化膜105との密着性を向上させることができる。
【0036】
続いて、高誘電率膜106の上に、アルミニウム(Al)からなる第1のキャップ膜107を形成する。第1のキャップ膜107はPVD法により形成すればよい。詳細には、アルミニウムターゲットを用いて、希ガス雰囲気におけるスパッタ放電にて、物理膜厚が0.3nm〜2nm程度となるように成膜を行う。その後、大気開放せずに、ハードマスク108を形成することが望ましい。大気開放を行った場合、Alの酸化が進行し、p型MISトランジスタのEOT及びeWFがばらつくおそれがある。また、Alの除去性が低下しn型MISトランジスタの特性が劣化するおそれがある。なお、第1のキャップ膜107は、極薄膜域における膜厚制御性がよく、有機不純物の残留の抑制が可能であれば、どのような方法により形成してもよい。例えば、PVD法に代えて、ALD法又はCVD法等により形成してもよい。
【0037】
ハードマスク108は、TiN膜とすればよい。TiN膜からなるハードマスク108を形成することにより、p型MISトランジスタの形成領域においてLa系材料が高誘電率膜106中へ拡散することを抑えることができる。
【0038】
ハードマスク108は、スパッタ法、CVD法又はALD法により形成してもよい。スパッタ法を用いて成膜する場合には、Tiをターゲットとして用い、圧力が0.1Torr程度、DCパワーが0.3kW〜2kW程度、直流電源が100V程度、N2プラズマ雰囲気下の条件にて成膜すればよい。また、膜厚は特に限定されないが、加工上4nm〜20nm以下程度であることが好ましい。
【0039】
なお、CVD法を用いてTiN膜を成膜する場合には、塩化チタン(TiCl4 )及びアンモニア等の窒化種からなる原料ガスを用いてTi膜を形成した後、窒化する方法を用いればよい。また、ALD法を用いてTiN膜を成膜する場合には、塩化チタン(TiCl4 )等の原料ガスとアンモニア等の窒化種とを交互に供給して成膜すればよい。ALD法を用いることにより、膜厚及び不純物含有量の制御性を向上できるのみならず、プロセスの低温化が可能となる等の利点が得られる。
【0040】
次に、図4(c)に示すように、ハードマスク108及び第1のキャップ膜107におけるn型半導体領域10Bに形成された部分を、リソグラフィ及びエッチング技術を用いて選択的に除去する。ハードマスク108及び第1のキャップ膜107を除去する際に、高誘電率膜106がダメージを受けないように条件を設定する。具体的には、塩酸、塩酸と過酸化水素水との混合溶液(HPM)又は硫酸と過酸化水素水との混合溶液(SPM)を用いればよい。塩酸の場合、濃度を1/100〜1/1000程度とすればよい。HPM又はSPMの場合、濃度を、1/100〜1/1000程度とすればよい。Al膜は、AlOx膜よりも除去性に優れているため、高誘電率膜106へのダメージをより低減できるという利点も有する。
【0041】
次に、図4(d)に示すように、Laを含む第2のキャップ膜109を形成する。第2のキャップ膜はスパッタ法又はALD法を用いて形成すればよい。スパッタ法を用いる場合には、ランタンからなるターゲットを用い、Arガスを用いた直流放電により形成すれば、La膜が形成できる。また、酸素ガスを用いた反応性スパッタによって酸化ランタン(LaOx)膜を形成することができる。LaOxからなるターゲットを用いたRFスパッタによってLaOx膜を形成してもよい。また、Laを含む有機材料を気化させ、堆積した後、パージ処理、酸化処理及び有機物除去処理を順に行って、いわゆるALD法によりLaOx膜を形成してもよい。
【0042】
以下に、RFスパッタを用いて第2のキャップ膜109としてLaOx膜を形成する場合の具体的な条件を説明する。RFパワーを300W〜800W程度、放電圧力を0.1Torr程度、直流電圧を100V程度とすればよい。これにより成膜レートを1nmあたり40秒〜100秒程度に制御することができる。このようにして、膜厚が0.1nm〜2nm程度の第2のキャップ膜109を形成する。
【0043】
次に、図5(a)に示すように、熱処理を行う。これにより、n型半導体領域10Bには、第2のキャップ膜109に含まれるLaが拡散したLa拡散高誘電率膜106Bが形成される。また、p型半導体領域10Aにおいては、Laがハードマスク108中に拡散し、La拡散領域108Aが形成される。熱処理は窒素雰囲気において600℃〜900℃程度の温度で行えばよい。熱処理時間は雰囲気の圧力及び熱処理方法に応じて適宜決定すればよい。常圧の急速熱処理法を用いた場合には5秒〜120秒、減圧且つ抵抗加熱ヒータを用いた場合には1分〜210分程度であれば特性を劣化が生じないことが確認されている。
【0044】
図5(b)に示すように、高誘電率膜106及びハードマスク108の上に残存する未反応の第2のキャップ膜109を除去する。未反応の第2のキャップ膜109を除去することにより、n型MISトランジスタにおいて過剰なLaによる耐圧及び信頼性の低下を抑えることができる。また、p型トランジスタにおいてゲートエッチング時のエッチストップを向上させたり、界面抵抗の上昇によるデバイスの遅延を抑えたりすることができる。
【0045】
未反応の第2のキャップ膜109を洗浄除去する際は、n型半導体領域10Bにおける高誘電率膜106にダメージを与えないような条件で行う。具体的には、塩酸、塩酸と過酸化水素水との混合溶液(HPM)又は硫酸と過酸化水素水との混合溶液(SPM)を用いればよい。塩酸の場合、濃度を1/100〜1/1000程度とすればよい。HPM又はSPMの場合、濃度を、1/100〜1/1000程度とすればよい。
【0046】
また、ハードマスク108の上部に形成されたLa拡散層108aも除去することが好ましい。第2のキャップ膜109をLaOxとした場合には、La拡散層108aは、酸素を吸収している。このため、第2のキャップ膜109を残存させた場合には酸素の供給源となり、後の工程において界面増膜等の原因となるおそれがある。ハードマスク108へのLaの拡散長は熱処理温度に依存し、800℃の場合には3nm程度となる。従って、第2のキャップ膜109を除去する際に、ハードマスク108の表面を3nm〜5nm程度オーバーエッチングすることが好ましい。また、ハードマスク108を完全に除去してもよい。但し、ハードマスク108の少なくとも一部を残存させ、p型MISトランジスタのゲート電極の一部とすれば、p型MISトランジスタのゲート電極の膜厚とn型MISトランジスタのゲート電極の膜厚とに差を設けることができ、eWFを制御することが可能となる。
【0047】
次に、図5(c)に示すように、半導体基板101の全面に、TiNからなる第1の電極膜110を形成する。第1の電極膜110は、PVD法、CVD法又はALD法により形成すればよい。第1の電極膜110の膜厚は、ゲート電極のeWFに影響を与える。従って、第1の電極膜110の膜厚は4nm〜20nm程度とすればよい。
【0048】
続いて、膜厚が80nm〜150nmのリンがドーピングされたポリシリコンからなる第2の電極膜111を堆積する。リンの濃度は1×1014〜2×1015/cm2程度とすればよい。また、ノンドープのポリシリコン膜を形成した後、砒素等を注入してもよい。
【0049】
次に、図6(a)に示すように、リソグラフィ及びエッチング技術を用いて、p型半導体領域10Aにおいて、第2の電極膜111、第1の電極膜110、ハードマスク108、高誘電率膜106及び界面シリコン酸化膜105をエッチングしてp型ゲートスタックを形成する。p型ゲートスタックは、第2の電極膜111、第1の電極膜110及びハードマスク108を含むp型ゲート電極と、高誘電率膜106及び界面シリコン酸化膜105を含むp型ゲート絶縁膜からなる。また、n型半導体領域10Bにおいて、第2の電極膜111、第1の電極膜110、高誘電率膜106及び界面シリコン酸化膜105をエッチングしてn型ゲートスタックを形成する。n型ゲートスタックは、第2の電極膜111及び第1の電極膜110を含むn型ゲート電極と、Laを含む高誘電率膜106Bからなる及び界面シリコン酸化膜105を含むn型ゲート絶縁膜からなる。
【0050】
次に、図6(b)に示すように、公知の方法により、nウェル103及びpウェル104に接合深さが比較的浅いp型エクステンション拡散層115A及びn型エクステンション拡散層115Bをそれぞれ形成する。続いて、p型ゲートスタック及びn型ゲートスタックの側面にサイドウォール113を形成する。この後、nウェル103及びpウェル104にp型エクステンション拡散層115Aよりも接合深さが深いp型拡散層であるp型ソースドレイン拡散層116A及びn型エクステンション拡散層115Bよりも接合深さが深いn型拡散層であるn型ソースドレイン拡散層116Bをそれぞれ形成する。さらに、シリサイド層114を形成する。
【0051】
次に、図6(c)に示すように、例えばSiO2膜からなる層間絶縁膜121を公知の方法により、p型ゲートスタック及びn型ゲートスタックを覆うように半導体基板101の上に形成する。続いて、層間絶縁膜121を貫通してシリサイド層114に到達するタングステン等からなるコンタクトプラグ122を形成する。その後、必要に応じて配線等(図示せず)を形成する。
【0052】
本実施形態においては、Alからなる第1のキャップ膜107を拡散させるための熱処理工程は特に設けなかったが、Al拡散工程を設けてもよい。Al拡散工程を行わない場合には、図7において破線で示すように、高誘電率膜の上部にAl濃度が高い部分が生じる。一方、Al拡散工程を行うことにより、図7において実線で示すように、高誘電率膜中へのAlの拡散が促進され、高誘電率膜中のAl濃度はより均一となる。Alを高誘電率膜中に十分拡散させ、AlとHfとの強固な結合を形成することにより、eWFを増大させる効果がより大きくなり、ゲートリーク電流(Jg)を低減したり、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)等の信頼性を向上したりする効果が得られる。
【0053】
Al拡散工程である熱処理は、第1のキャップ膜107を形成した後で且つゲートスタックを形成する前であればいつ行ってもよい。しかし、熱処理によりn型半導体領域10Bにおいて第1のキャップ膜107の除去性が低下するおそれがある。このため、n型半導体領域10Bにおいて第1のキャップ膜107を除去した後にAl拡散工程を行うことが好ましい。また、第2のキャップ膜109を拡散するための熱処理を行った後に、Al拡散工程を実施してもよい。
【0054】
また、Al拡散工程は、Alの酸化を抑えるため不活性ガス雰囲気において行うことが好ましい。処理温度は800℃以上で行えばよいが、温度が高すぎると高誘電率膜の結晶化が進行するため1000℃以下とすることが好ましい。
【0055】
以上のような製造方法において、第1のキャップ膜に膜厚が1nmのAl膜を用いた場合には、膜厚が0.5nmのAlOx膜を用いた場合と比べてp型MISトランジスタのeWFを低下させることなく、EOTを0.2nm程度小さくすることができる。また、第1のキャップ膜をAl膜とすることにより第2のキャップ膜を拡散するための熱処理の温度を低くすることが可能となる。図8は、第2のキャップ膜を拡散するための熱処理の温度と、n型MISトランジスタのeWF及びEOTの関係を示している。図8に示すように、熱処理温度が高いほどeWFの値を低くすることができる。n型MISトランジスタのeWFの値は、4.1eV程度であればよい。第1のキャップ膜をAlOx膜とした場合には、除去性が劣るため850℃程度の温度で熱処理を行う必要がある。しかし、第1のキャップ膜をAl膜とした場合には、同程度のeWFを得るための熱処理温度を700℃〜750℃に下げることができる。図8に示すように、第1のキャップ膜がAl膜の場合には、AlOx膜の場合と異なり、熱処理温度が低い方がEOTを小さくできるという効果も得られる。
【0056】
また、第2のキャップ膜を拡散するための熱処理の温度を低くすることによりp型MISトランジスタの特性をさらに向上させることも可能となる。図9は第2のキャップ膜を拡散するための熱処理の温度と、p型MISトランジスタのeWF及びEOTとの関係を示している。熱処理の温度を低くしてもp型MISトランジスタのeWFはほとんど変化しない。しかし、EOTをさらに小さくすることができる。
【0057】
本実施形態において、第2のキャップ膜をLa又はLaOxとしたが、Laに代えてガドリニウム(Gd)等の他のランタノイド又はその酸化膜としてもよい。また、イットリウム(Y)若しくはマグネシウム(Mg)又はこれらの酸化膜等としてもよい。
【0058】
第1の電極膜は、TiNに代えて有窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タンタルシリコン(TaSiN)、炭化タンタル(TaC)又は窒化ハフニウム(HfN)等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、p型MISトランジスタ及びn型MISトランジスタの特性を容易に向上させることができ、相補型MISトランジスタを備えた半導体装置の製造方法等として有用である。
【符号の説明】
【0060】
10A p型半導体領域
10B n型半導体領域
101 半導体基板
102 素子分離領域
103 nウェル
104 pウェル
105 界面シリコン酸化膜
106 高誘電率膜
106B La拡散高誘電率膜
107 第1のキャップ膜
108 ハードマスク
108A La拡散層
109 第2のキャップ膜
110 第1の電極膜
111 第2の電極膜
113 サイドウォール
114 シリサイド層
115A p型エクステンション拡散層
115B n型エクステンション拡散層
116A p型ソースドレイン拡散層
116B n型ソースドレイン拡散層
121 層間絶縁膜
122 コンタクトプラグ
301 シリコン基板
302 界面シリコン酸化膜
303 高誘電率膜
304 キャップ膜
305 電極膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型半導体領域及びn型半導体領域を有する半導体基板の上に、高誘電率膜、アルミニウムからなる第1のキャップ膜及びハードマスクを順次形成する工程(a)と、
前記工程(a)よりも後に、前記第1のキャップ膜及びハードマスクにおける前記n型半導体領域の上に形成された部分を除去する工程(b)と、
前記工程(b)よりも後に、前記半導体基板の上に、実効仕事関数を低下させる効果を有する元素を含む第2のキャップ膜を形成する工程(c)と、
前記工程(c)よりも後に、前記半導体基板に対して熱処理を行う工程(d)と、
前記工程(d)よりも後に、前記半導体基板上に電極膜を形成する工程(e)と、
前記工程(e)よりも後に、前記電極膜及び高誘電率膜をパターニングすることにより、前記n型半導体領域の上に第1のゲート絶縁膜及び第1のゲート電極を形成し、前記p型半導体領域の上に第1のゲート絶縁膜及び第2のゲート電極を形成する工程(f)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(b)よりも後で且つ前記工程(f)よりも前に、前記第1のキャップ膜に含まれるアルミニウムを拡散させるアルミニウム拡散工程(g)をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(d)よりも後で且つ前記工程(e)よりも前に、前記第2のキャップ膜を除去する工程(h)をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記高誘電率膜は、ハフニウムを含む膜又はジルコニウムを含む膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記電極膜は、窒化チタン膜、窒化タンタル膜、窒化タンタルシリコン膜、窒化チタンアルミニウム膜又は窒化ハフニウム膜を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2のキャップ膜は、ランタン、イットリウム、マグネシウム又はガドリニウムを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−103330(P2011−103330A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257071(P2009−257071)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】