説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】低抵抗且つ高バリア性を有するバリアメタルを提供する。
【解決手段】バリアメタル201 が、配線溝16の底面及び側壁の表面に沿って形成された膜厚16nmのTaN0.87膜31と、TaN0.87膜上に形成され、配線溝16に埋め込み形成されたCuダマシン配線17に接する膜厚4nmのTaN1.19膜32とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属配線を構成する元素の拡散を抑制するバリアメタルを有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトでの配線層金属と拡散層Siの相互拡散と反応、配線周囲の層間絶縁層中への配線層金属の拡散、又はヴィアプラグに配線層と異なる金属が使用されている場合の相互拡散と反応とを防止するため、配線層の底面又は側上面にバリアメタルが形成されている。
【0003】
バリアメタルは、半導体装置の製造工程における熱履歴と装置動作時の電界と温度による配線層金属の拡散と反応を抑制するのに十分なバリア性を持たなければならない。それと同時に、配線の実効的な電気抵抗を上げないように、薄く形成する必要がある。コンタクト又はヴィアプラグでの電気抵抗を上げないようにするために、比抵抗と電気的接触抵抗が低いバリアメタルを用いる必要がある。また、層間絶縁層及び配線層との密着性がよい必要がある。
【0004】
従来、TiN、TaN等の単層の金属窒化物よりなるバリアメタルは、従来の半導体装置に対しては良好なバリア性を持ち、要求される諸特性を十分に充たしていた。
【0005】
ところが、半導体装置の集積度の向上と素子の微細化によって、使用されるバリアメタルの膜厚が薄くなるのに従い、十分なバリア性を得ることが次第に困難となってきた。更に、半導体装置の高速動作と配線層の高信頼化のためにCuが配線層に使用されてきたため、Si基板中と絶縁層中を高速に拡散するCuの拡散を防止する上で、十分なバリア性を得ることができなくなった。又、装置の高速動作のため、バリアメタルに許容される比抵抗と電気的接触抵抗も低くなってきた。
【0006】
ところが、従来のバリアメタルでは、十分なバリア性と電気的特性を満足することができないという問題があった。
【0007】
このようなバリア性の不完全性は、非アルミニウム系金属配線において特に顕著である。これは、アルミニウム系金属配線においては、アルミニウムの薄い酸化物層が極めて良好且つ稠密なバリア膜として機能する為である。このアルミ酸化物層は、特に異種金属とアルミ合金の界面においても自然酸化等で形成され、その薄い膜厚が故に電気伝導はトンネル電流という形で起こり得る。一方、銅、銀、金やその合金は、アルミを凌ぐ低抵抗金属配線材料であるが、上記のような良質な酸化物層の形成が期待できない。従って高性能なバリアメタル膜を能動的に形成する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、半導体装置の高集積化に伴い、配線層金属に対するバリア性と電気特性を有するバリアメタルが存在しないという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、配線層金属に対する高いバリア性と、良好な電気特性とを有するバリアメタルを有する半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために以下のように構成されている。なお、以下の記載における金属配線とは、プラグ電極等の金属電極を含む。
【0011】
(1) 本発明の半導体装置は、金属配線を構成する元素の拡散を抑制するバリアメタルを具備する半導体装置であって、前記バリアメタルは、金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαと、ボロン,炭素,窒素から少なくとも一つの元素が選ばれたγとから構成された化合物膜αγx と、前記αと、前記添加元素γと、酸素(O)とから構成された化合物膜αγy z とが積層された構成を含むことを特徴とする。
【0012】
(1)に記載の半導体装置の好ましい実施態様を以下に示す。
【0013】
前記xは0.2以上である。
【0014】
前記化合物膜αβy z の膜厚は、3nm以下である。
【0015】
前記金属元素は、IVB族,VB族又はVIB族の何れかに属することが好ましい。
【0016】
(2) 本発明の半導体装置の製造方法は、基体上に、バリアメタルを介して金属配線が形成された半導体装置の製造方法であって、前記基体上に化合物膜αγx を形成する工程と、前記化合物膜αγx の表面を酸化して化合物膜αγy z を形成する工程と、前記化合物膜αγy z 上に前記金属配線を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
(3) 本発明の半導体装置の製造方法は、酸素(O)を含む基体上に、バリアメタルを介して金属配線が形成された半導体装置の製造方法であって、前記基体上に、金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαと、ボロン,炭素,窒素のうち少なくとも1種を含むγとから構成された化合物膜αγx を形成する工程と、前記化合物膜αγx により前記基体の還元を行うことによって、該化合物膜αγx を酸化して、該化合物膜αγx と該基体との界面に化合物膜αγy z を形成する工程とを含み、前記化合物膜αγx と前記化合物膜αγy z とが順次積層された構成を含むバリアメタルを形成することを特徴とする。
【0018】
(4) 本発明の半導体装置の製造方法は、酸素(O)を含む金属配線を形成する工程と、前記金属配線上に、金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαとボロン,炭素,窒素のうち少なくとも1種を含むγとから構成された化合物膜αγx を形成する工程と、前記化合物膜αγx により前記金属配線の還元を行うことによって、該化合物膜αγx を酸化して、該化合物膜αγx と該金属配線との界面に化合物膜αγy z を形成する工程とを含み、前記化合物膜αγx と前記化合物膜αγy z とが順次積層された構成を含むバリアメタルを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαと、ボロン,炭素,窒素から少なくとも一つの元素が選ばれたγとから構成された化合物膜αγx と、前記α及びγと、酸素(O)とから構成された化合物膜αγy z とを積層することによって、低抵抗且つ高バリア性を有するバリアメタルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
先ず、本発明の背景について説明する。
【0021】
従来、配線層金属に対するバリアメタルとして金属化合物膜を成膜する方法としては、一般的にスパッタ法とCVD法とが用いられていた。最も広く用いられているのは、金属ターゲットを用い、Arガスと添加元素を含むガスを同時に流しながら成膜する反応性スパッタ法である。反応性スパッタ法によれば、例えば金属窒化物を成膜する場合、ArガスとN2 ガスとの流量を変化させることによって、種々の組成を持つ金属窒化物膜を形成することができる。しかし、金属元素に対する窒素の原子数比が1に近づいてくると、単にN2 ガスの流量を増やすだけでは、膜中の窒素含有量が容易に増加せず、金属元素に対する窒素の原子数比が1を越える金属窒化物膜を形成することが困難であった。
【0022】
そこで、本発明者等は、Taターゲットを用いて、ArガスとN2 ガスとを同時にチャンバ内に供給してTaNx 膜を形成する条件下で基板温度を約300℃に加熱した場合に、あるN2 ガスの流量以上でTaに対する窒素の原子数比が1を越えるTaN膜を形成できることを見いだした。
【0023】
TaNx 膜のCuに対するバリア性を調べたところ、図26に示すように、Taに対する窒素の原子数比が1を越えるとバリア性が著しく向上し、更に1.2を越えると更に向上することが確認された。
【0024】
バリア性の向上は、TaN膜中に含まれる余剰窒素により膜の非晶質化が進行し、結晶粒界などの高速拡散経路が減少するためと推測される。X線回折測定の結果によれば、N/Ta比が1.2を越えるTaN膜の場合、TaNの明瞭な回折線は認められなかったので、ほぼ非晶質であると考えられる。
【0025】
ところが、TaNx (x>1)膜は、比抵抗が著しく高いという問題を有しており、Cu配線用のバリアメタルとしては、用いることができなかった。
【0026】
そこで、更なる鋭意研究を重ねたところ、本発明者等は、金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαとボロン,酸素,炭素,窒素から少なくとも一つの元素が選ばれたβとから構成された化合物膜αβn を複数層積層することによって、低抵抗且つ高バリア性を有するバリアメタルが得られることを見いだした。
【0027】
特に、金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαとボロン,酸素,炭素,窒素から少なくとも一つの元素が選ばれたβとから構成された化合物膜αβx (x>1)と、前記α及びβから構成された化合物膜αβy (y≦1)とを組み合わせることによって、高バリア性を有しながら、ヴィア抵抗や配線抵抗を下げることができる。また、バリアメタルを形成する際に、前記βの混入率を変化させることによって、積層膜が形成されるので、短時間で形成することができ、プロセスが容易となる。
【0028】
さらには、前記α及びβとから構成された化合物膜αβy (y≦1)と、前記化合物膜αβx (x>1)と、前記化合物膜αβy (y≦1)とが積層させると、低ヴィア抵抗且つ低配線抵抗、高いバリア性を有するバリアメタルを提供することができる。
【0029】
また、本発明者等による前述した研究と異なる研究によって、金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαと、ボロン,炭素,窒素から少なくとも一つの元素が選ばれたγとから構成された化合物膜αγx と、前記α及びγと、酸素(O)とから構成された化合物膜αγy z とを積層することによって、低い抵抗を維持しつつ、高いバリア性を有するバリアメタルとなる。
【0030】
なお、前記化合物膜αγy z は、前記化合物膜αγx の露出する表面を酸化することによって、形成することができる。
【0031】
又、SiO2 等の酸素を含む基体又は金属配線上に化合物膜αγx を形成した後、化合物膜αγx により基体又は金属配線を還元し、化合物膜αγx を酸化することによっても化合物膜αγy z を形成することができる。
【0032】
本発明の実施の形態を以下に図面を参照して説明する。
【0033】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係わる半導体装置の構成を示す断面図である。
【0034】
SiO2 からなる第1の層間絶縁膜11中に下層配線12が形成されている。第1の層間絶縁膜11に下層配線12に接続するヴィアホール13が形成され、ヴィアホール13内にWヴィアプラグ14が埋め込み形成されている。第1の層間絶縁膜11及びWヴィアプラグ14上にSiO2 からなり膜厚400nmの第2の層間絶縁膜15が形成されている。第2の層間絶縁膜15にWヴィアプラグ14に接続する配線溝16が形成されている。配線溝16の底面及び側壁に沿って、タンタル窒化物からなり底面の膜厚20nm、側壁の膜厚がその約1/4のバリアメタル20が形成されている。なお、バリアメタル20の詳細な構成については、後述する。そして、配線溝16内にCuダマシン配線17が埋め込み形成されている。
【0035】
バリアメタル20の詳細な構成について説明する。図2(a)〜(e)に示すように、それぞれ構成が異なるタンタル窒化物からなるバリアメタル201 〜205 を有する装置をそれぞれ形成し、後に特性の比較を行った。なお、タンタル窒化物の組成比は、成膜後にRBS測定を行うことにより決定した。なお、図2において、配線溝16の底部を中心にしたバリアメタル20の要部構成を示し、全体構造の図示を省略する。
【0036】
図2(a)に示す試料Aのバリアメタル201 は、配線溝16の底面及び側壁の表面に沿って形成された膜厚16nmのTaN0.87膜31と、TaN0.87膜上に形成されCu配線17に接する膜厚4nmのTaN1.19膜32とから構成されている。
【0037】
又、図2(b)に示す試料Bのバリアメタル202 は、配線溝16の底面及び側壁の表面に沿って形成されたTaN1.19膜33と、TaN1.19膜33上に形成されCu配線17に接するTaN0.87膜34とから構成されている。
【0038】
図2(c)に示す試料Cのバリアメタル203 は、配線溝16の底面及び側壁の表面に沿って形成されたTaN0.87膜35と、TaN0.87膜35上に形成されたTaN1.19膜36と、TaN1.19膜36上に形成されCu配線17に接するTaN0.87膜37とから構成されている。
【0039】
図2(d)に示す試料Dのバリアメタル204 は、配線溝16の底面及び側壁の表面に沿って形成され、且つCu配線17に接する単層のTaN0.87膜38から構成されている。
【0040】
図2(e)に示す試料Eのバリアメタル205 は、配線溝16の底面及び側壁の表面に沿って形成され、且つCu配線17に接する単層のTaN1.19膜39から構成されている。
【0041】
次に、図1に示した装置の製造方法について説明する。先ず、図3(a)に示すように、内部に下層配線12を有し、プラズマCVD法により形成された第1の層間絶縁膜11に、下層配線12に接続するヴィアホール13を形成する。そして、ヴィアホール13内にWヴィアプラグ14を埋め込み形成する。Wヴィアプラグ14は、ヴィアホール13内を埋め込むように全面にW膜を堆積した後、第1の層間絶縁膜11上のW膜をCMP法又はエッチバック法等を用いて除去することによって形成することができる。
【0042】
次いで、図3(b)に示すように、全面にプラズマCVD法によりSiO2 からなり膜厚400nmの第2の層間絶縁膜15を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術を用いて第2の層間絶縁膜15上にレジストパターンを形成した後、RIE法により第2の層間絶縁膜15をエッチングすることによって配線溝16を形成し、レジストパターンを酸素アッシングにより除去する。
【0043】
次いで、図3(c)に示すように、有機アルカリ液を用いて露出するWヴィアプラグ14表面のW酸化物を除去した後、ロング・スロー・スパッタ法を用いて、
配線溝16の底面及び側壁,並びに第2の層間絶縁膜15の表面に沿ってTa窒化物膜からなるバリアメタル20を形成する。なお、ArガスとN2 ガスとを同時に反応容器内に供給し、基板温度を約300℃にしてTaターゲットをスパッタリングすることにより、全面にタンタル窒化物膜を形成した。なお、各試料のバリアメタル20製造方法は、後に説明する。
【0044】
次いで、図3(d)に示すように、ロング・スロー・スパッタ法を用いて、第2の層間絶縁膜15上のバリアメタル20上の膜厚が800nmであるCu膜171 を形成した後、450℃でアニールしてCuをリフローさせることによって、配線溝16中にCu膜171 を埋め込む。次いで、余分なCuとバリアメタルとをCMP法により除去することによって、図1に示すバリアメタル20で底面と側壁とを囲まれたCuダマシン配線17を有する装置を形成する。
【0045】
次に、バリアメタル201 〜205 中TaN0.87膜31,34,35,37,38とTaN1.19膜32,33,36,39の形成について説明する。TaN0.87膜31,34,35,37,38は、Taターゲットを用いて、Arガスの流量を10sccm、N2 ガスの流量を15sccmにし、基板温度を約300℃にしてロング・スロー・スパッタ法によって堆積する。また、TaN1.19膜32,33,36,39は、Taターゲットを用い、Arガスの流量を10sccm、N2 ガスの流量を20sccmにし、基板温度を約300℃にして、ロング・スロー・スパッタ法により形成した。
【0046】
なお、試料A〜Cの積層構造については、Arガスの流量を変えずに、N2 ガスの流量を変化させることによって、TaN0.87膜31,34,35,37とTaN1.19膜32,33,36とからなる積層構造を連続的に形成した。
【0047】
次に、作成された試料A〜Eの特性の評価を行った結果について説明する。Cu配線17の配線抵抗を4端子法により測定し、ヴィアの電気抵抗をケルビン法により測定した。また、図4に示すようなアモルファスシリコン46,バリアメタル20及びCu47が順次積層された構造を有する試料を450℃で1時間アニールを行い、Cu47からバリアメタル20を通してアモルファスシリコン膜46に拡散したCuにより生成されたCuシリサイドの生成量(シリサイド化率)によって、バリアメタル20のバリア性の評価を行った。
【0048】
図4の構造について更に詳しく説明する。Si基板41上に形成された膜厚100nmの熱酸化膜42上に、プラズマCVD法により堆積された膜厚200nmのシリコン窒化膜43が形成されている。シリコン窒化膜43上にプラズマCVD法により堆積された膜厚400nmのSiO2 膜44が形成されている。SiO2 膜44にフォトリソグラフィ技術及びRIE法を用いて形成された溝45が開口されている。そして、溝45の表面に沿って、熱CVD法により堆積された膜厚75nmのアモルファスシリコン46が形成されている。アモルファスシリコン46上に、前述した試料A〜Eと同じ構成のバリアメタル20が形成されている。そして、バリアメタル20上に、ロング・スロー・スパッタ法により堆積されたCu膜47が形成されている。
【0049】
配線抵抗,ヴィア抵抗及びシリサイド化率の測定結果を表1に示す。
【表1】



【0050】
表1から分かるように、Taに対するNの原子数比が小さいTaN0.87単層膜38からなるバリアメタル204 (試料D)は、バリア性が劣っている。それに対し、Taに対するNの原子数比が大きいTaN1.19単層膜39からなるバリアメタル205 (試料E)は、バリア性に優れるがヴィア抵抗と配線抵抗とが何れも高くなっている。
【0051】
ところが、配線溝16の底面及び側壁に沿って形成されWヴィアプラグ14に接するTaN0.87膜31とCu配線17に接するTaN1.19膜32とが積層されたバリアメタル201 を有する試料Aでは、バリア性を維持しながら、ヴィア抵抗を低く抑えることができている。これは、TaN1.19膜32の堆積時にWヴィアプラグ14の表面が窒化されて電気的接触抵抗が増加する現象を防止できたためと推測される。
【0052】
また、配線溝16の底面及び側壁に沿って形成されWヴィアプラグ14に接するTaN1.19膜33とTaN1.19膜33上に形成されCu配線17に接するTaN0.87膜34とが積層されたバリアメタル202 を有する試料Bでは、バリア性を維持しながら、配線抵抗を低く抑えることができている。これは、TaN0.87膜上では、Cuのリフロー性が不十分なためCu配線内にボイドが残る現象を改善できたためと推測される。
【0053】
更に、配線溝16の底面及び側壁に沿って形成されWヴィアプラグ14に接するTaN0.87膜35と、TaN0.87膜35上に形成されたTaN1.19膜36と、TaN1.19膜36と上に形成されCu配線に接するTaN0.87膜とからなるバリアメタル203 を有する試料Cでは、バリア性を維持しつつ、ヴィア抵抗と配線抵抗との両方を低く抑えることができている。
【0054】
以上説明したように、TaN0.87膜とTaN1.19膜とを積層することによって、低抵抗、且つ高いバリア性を有するバリアメタルとなる。さらに、TaN0.87膜とTaN1.19膜とTaN0.87膜との3層構造にすると、低ヴィア抵抗、低配線抵抗、高いバリア性を得ることができる。
【0055】
なお、上述した組成に限らず、TaNx (x>1)膜とTaNy (y≦1)とが複数積層されたバリアメタルであれば、上述した効果を得ることができる。又、3層構造の場合、上層と下層とは同じ組成でなくとも良い。
【0056】
本実施形態では、ロング・スロー・スパッタ法により、N2 ガスの流量を連続的に変化させて、積層化したバリアメタルを形成する方法について説明した。ところが、通常のロング・スロー・スパッタ法によって成膜した場合、図5に示すように、バリアメタル20には、配線溝16の側面の底部の薄膜化,並びに底面中央部での厚膜化が生じる事がある。バリアメタル20の膜厚が最適化されていないと配線抵抗が高くなるという問題が生じる。
【0057】
また更に、通常のロング・スロー・スパッタ法で配線溝にバリアメタルを堆積した場合、図6(a)に示すように、配線溝16の側面及び上面からのバリアメタル20の成長方向が異なるために、配線溝16の開口部のバリアメタル20には鋭角な段差が生じる。このような成膜形状をしたバリアメタル上にCuをロング・スロー・スパッタ法により成膜した場合、図6(b)に示すように、Cu膜171 が形成されない領域が生じる。このような状態でCu膜171 のリフローを行うと、Cu膜171 の拡散経路が寸断される。その為、配線溝16内にCu膜171 が流動できず、図6(c)に示すように、配線溝16内にボイド25が生じる。
【0058】
そこで、後のCuリフロー工程におけるボイド抑制と、配線溝側面や底面のバリアメタルの膜厚を最適化して配線を低抵抗化させ、且つバリア性を有効に向上させるために、基板バイアスを印加したロング・スロー・スパッタ法を用いても良い。
【0059】
基板バイアスを印加したロング・スロー・スパッタ法では、Ar+ イオンが基板に衝突し、バリアメタルの成膜と同時にバリアメタルが物理エッチングされる。
【0060】
成膜と同時にエッチングされている場合、図7に示すように、配線溝16の開口部に生じるバリアメタル20のオーバーハング部がエッチングされ、配線溝16の開口部の間口を狭めない。その結果、配線溝16内へのスパッタリング粒子の入射確率が増加すると共に、エッチングされたオーバーハング部のバリアメタル20が配線溝16の側面に再付着し、特にロング・スロー・スパッタ法では形成されにくい配線溝16の側面のバリアメタル20の膜厚を増加させることができる。
【0061】
一方、配線溝16の底面のバリアメタルもAr+ イオンによってエッチングされ、必要以上に配線溝16の底部中央の膜厚も厚くならないため、配線抵抗を増加させない。更に、配線溝16の底面からエッチングされたバリアメタル20は、配線溝16の側面の底部に再付着し、薄膜化しやすい配線溝16の側面の底部のバリアメタル20の膜厚を有効に増加させることができる。
【0062】
上述したように、基板バイアスを印加したロング・スロー・スパッタ法を用いてバリアメタルを形成すると、図8(a)に示すように、配線溝16の開口部では、バリアメタル20の成膜と共にバリアメタル20のエッチングが行われる為、鋭角な段差が生じない。従って、図8(b)に示すように、ロング・スロー・スパッタ法によりCu膜171 を成膜しても、Cu膜171 には断切れが起こらない。よって、この後にリフロー工程を行っても、Cu膜171 は配線溝16に流動することができ、図8(c)に示すように、配線溝16内にCu膜171 を完全に充填することができる。
【0063】
しかし、基板バイアスを印加したロング・スロー・スパッタ法では、Ar+ イオンがバリアメタル膜中に取り込まれ、その膜質が劣化する可能性がある。そこで、配線溝の開口部の鋭角な段差を無くすために、以下に示す手法を用いることが可能である。なお、以下では、バリアメタルがTaNy1(y1≦1)膜とTaNx (x>1)膜とTaNy2(y2≦1)膜が積層された構成を用いて説明する。
【0064】
先ず、基板バイアスを印加したロング・スロー・スパッタ法によりTaNy1(y1≦1)膜を形成し、次に基板バイアスを印加しないロング・スロー・スパッタ法によりバリア性が高いTaNx (x>1)膜を形成し、更に基板バイアスを印加したロング・スロー・スパッタ法でTaNy2(y2≦1)膜を形成する。
【0065】
なお、TaNx (x>1)膜上にTaNy2(y2≦1)膜を形成する際、基板バイアスが印加されていることによって、成膜の初期段階では、TaNx (x>1)膜が再スパッタされやすく、またAr+ イオンがTaNx (x>1)膜中に混入するおそれがある。そこで、TaNy2(y2≦1)膜の成膜初期段階では、基板バイアスを印加せずに成膜し、TaNx (x>1)膜上にある程度のTaNy2(y2≦1)膜が形成されてから基板バイアスを印加して成膜を行うことによって、TaNx (x>1)膜の再スパッタ、及びTaNx (x>1)膜中へのAr+ イオンの混入を抑制することができる。
【0066】
また、TaNx (x>1)膜下のTaNy1(y1≦1)膜の成膜時、TaNy1(y1≦1)膜の膜厚が所定膜厚付近になったら、基板バイアスの印加を止めてTaNy1(y1≦1)膜の膜質を向上させ、膜質の良いTaNy1(y1≦1)膜上にTaNx (x>1)膜が形成されるようにしても良い。
【0067】
このような連続的な成膜を行えば、Cuリフロー時にボイドが発生しないバリアメタルの成膜形状が得られ、且つそのバリア性は、基板バイアスを印加しないロング・スロー・スパッタ法により成膜されたTaNx (x>1)膜で確保することができる。更に配線溝底面のバリア膜の膜厚を増加させずに、配線溝側面の膜厚を増加させることができ、配線抵抗も低下させることができる。
【0068】
また、TaNy (y≦1)膜とTaNx (x>1)膜とが積層された2層構造のバリアメタルの場合、バリア性が高く膜質を劣化させたくないTaNx (x>1)膜を成膜する際には基板バイアスを印加しないロング・スロー・スパッタ法により成膜を行い、TaNy (y≦1)膜を成膜する際には基板バイアスを印加したロング・スロー・スパッタ法により成膜を行う。
【0069】
[第2実施形態]
本実施形態では、タンタル窒化物膜以外のバリアメタルを有する試料を作成し、評価を行った。なお、本実施形態では、図1に示した半導体装置と構成が同様であるので、配線溝を中心としたバリアメタルの構造を示すことにとどめ、全体の構造の図示を省略する。但し、本実施形態では、Wヴィアプラグの替わりにAlヴィアプラグを用い、Alヴィアプラグ表面のアルミニウム酸化物の除去はスパッタリングエッチングによって行った。
【0070】
各バリアメタルの構成を図9の断面図を用いて説明する。最初の試料には、図9(a)に示すように、組成が異なるニオブ窒化物の2層積層膜からなる膜厚16nmのバリアメタル206 が形成されている。ニオブ窒化物の堆積にはロング・スロー・スパッタを用い、Nbターゲットを用いて、ArガスとN2 ガスとを同時に流し、基板温度を約300℃にして成膜を行った。そして、Arガスの流量を10sccm、N2 ガスの流量を8sccmにして膜厚が16nmである第1層目のニオブ窒化物膜としてNbN0.44膜51の堆積を行った後、Arガスの流量を変えずにN2 ガスの流量を増やして、膜厚が4nmである第2層目のニオブ窒化物(NbNx )膜52の堆積を行って、バリアメタル206 を形成した。なお、NbNx 膜52の堆積時にN2 ガスの流量を変化させて、種々の組成を持ったNbNx 膜52を形成した。なお、ニオブ窒化膜の組成比の同定は、RBS測定により行った。
【0071】
次の試料には、図9(b)に示すように、組成が異なるタンタル窒酸化物の2層積層膜からなるバリアメタル207 が形成されている。なお、タンタル窒酸化物膜の堆積にはロング・スロー・スパッタ法を用い、TaNターゲットを用いて、ArガスとN2 ガスとを同時に流すと共に微量のO2 ガスを流し、基板温度を約300℃にして成膜を行った。そして、Arガス、N2 ガスを流して膜厚が2nmである第1層目のタンタル窒酸化物(Ta(O,N)x )膜53の堆積を行った後、Arガスの流量を変えずにN2 ガスの流量を減らして、膜厚が18nmである第2層目のタンタル窒化物膜としてTaO0.1 0.65膜54を堆積して、バリアメタル207 形成をした。なお、Ta(O,N)x 膜53の堆積時にN2 ガスの流量を変化させて、種々の組成を持ったTa(O,N)x 膜53を形成した。なお、タンタル窒酸化膜の組成比の同定は、RBS測定により行った。
【0072】
最後の試料には、図9(c)に示すように、組成が異なるチタン炭化物膜の3層積層膜からなるバリアメタル208 が形成されている。なお、チタン炭化物(TiCx )膜の堆積にはプラズマCVD法を用い、TiCl4 ガス,CH4 ガス及びH2 ガスを同時に流し、基板温度を450℃に加熱することによって成膜を行った。第1層目のチタン炭化物膜として膜厚8nmのTiC0.83膜55を形成し、次にCH4 ガスの流量だけを増やして膜厚4nmの第2層目のチタン炭化物(TiCx )膜56を形成した後、CH4 ガスの流量を第1層目のチタン炭化物膜の形成時の値に戻して第3層目のチタン炭化物膜として膜厚8nmのTiC0.83膜57の形成を行って、連続的に3層構造のバリアメタル208 を形成した。TiCx 膜56の堆積時に、CH4 ガスの流量を変化させて、種々の組成を持ったTiCx 膜56を形成した。なお、チタン炭化物膜の組成比の同定は、RBS測定により行った。
【0073】
そして、それぞれの試料のバリアメタルに対し、図4と同様の構造を形成し、シリサイド化率を測定することによってバリア性についての評価を行った。なお、前述した試料は、ニオブ,タンタル,又はチタン(金属元素)に対する窒素,窒素及び酸素,又は炭素(軽元素)の組成比を変化させたものを形成しているが、同様に金属元素に対する軽元素の組成比を変化させてシリサイド化率の測定を行った。シリサイド化率の測定結果を図10に示す。図10は、シリサイド化率の金属元素に対する軽元素の組成比依存性を示す特性図である。
【0074】
図9(a)に示したニオブ窒化物膜の2層積層膜からなるバリアメタル206 のバリア性は、第2層目のNbNx 膜52のニオブに対する窒素の原子数比が1.0を越えると、著しく向上した。更に、原子数比が1.2を越えると、バリア性が飛躍的に向上することが分かった。このバリア性の向上は、第2層目のNbNx 膜52において、膜内に含まれる余剰窒素により膜の非晶質化が進行し、結晶粒界などの高速拡散経路が減少するためと推測される。X線回折測定の結果によれば、ニオブに対する窒素の原子数比が1.2を越えるNbNx 膜52の場合、NbNの明瞭な回折線が認められなかったので、非晶質になっていると考えられる。
【0075】
同様に、図9(b)に示したタンタル窒酸化物膜の2層積層膜からなるバリアメタル207 のバリア性は、第1層目のTa(O,N)x のタンタルに対する酸素と窒素の総和の原子数が1.0を越えると著しく向上し、1.2を越えると更に飛躍的に向上した。
【0076】
又、図9(c)に示したチタン炭化物膜の3層積層膜からなるバリアメタル208 のバリア性も、第2層目のTiCx 膜56のチタンに対する炭素の原子数比が1.0を越えると著しく向上し、1.2を越えると更に向上する傾向が認められた。
【0077】
以上説明したように、NbNx ,Ta(O,N)x ,TiCx としてxが1より大きい膜と、NbNy ,Ta(O,N)y ,TiCy としてyが1以下の膜を積層することによって、バリア性の高い絶縁膜を提供することができる。
【0078】
なお、xが1.2以上の膜を用いると更にバリア性が高いことが確認された。又、さらには、xが1.2以上の膜とyが0.9以下の膜とを積層するとバリア性が高く抵抗の低いバリアメタルが得られることを確認された。
【0079】
[第3実施形態]
図11は、本発明の第3実施形態に係わる半導体装置の構成を示す断面図である。 SiO2 からなる層間絶縁膜61中に下層のCuダマシン配線62が形成されている。層間絶縁膜61にCuダマシン配線62に接続するヴィアホール63が形成され、さらにヴィアホール63に接続する配線溝64が層間絶縁膜61に形成されている。ヴィアホール63の底面及び側壁、配線溝64の側壁及び底面(図11では見えていない)にそってバリアメタル65が形成されている。なお、バリアメタルの詳細な構造については後述する。そして、ヴィアホール63及び配線溝64内にCuデュアルダマシン配線66が埋め込み形成されている。
【0080】
バリアメタルの詳細な構造について説明する。図12(a)〜(c)に示すように、それぞれ異なる3種類のバリアメタルを有する半導体装置をそれぞれ形成し、後に特性の比較を行った。
【0081】
最初の試料には、図12(a)に示すように、組成が異なるタングステン窒化物膜の2層積層膜からなり、膜厚が10nmであるバリアメタル651 が形成されている。タングステン窒化物膜の形成にはMOCVD法を用い、ソースガスとそのキャリアガスであるArガスの他にN2 ガスを同時に流し、基板を約450℃に加熱することで行った。
【0082】
さらに詳述すると、第1層目のタングステン窒化物(WNx )膜71を堆積した後、N2 ガスの流量を減らし、第2層目のタングステン窒化物膜であるWN0.91膜72を堆積した。なお、第1層目のタングステン窒化物膜の堆積時、N2 ガスの流量を変えて、第1層目のタングステン窒化物膜としてWN1.08膜又はWN1.23膜を形成した。そして、WNx 膜71及びWN0.91膜72の全膜厚を10nmに一致させて、種々の膜厚比の積層膜を形成した。なお、タングステン窒化物膜の組成の同定は、RBS測定により行った。
【0083】
次の試料には、図12(b)に示すように、組成が異なるタンタル炭窒化物膜の2層積層膜からなり、膜厚10nmのバリアメタル652 が形成されている。タンタル炭窒化物膜の形成にはMOCVD法を用い、タンタル炭窒化物膜のソースガスとそのキャリアガスであるArガスの他にNH3 ガスを同時に流し、基板を約450℃に加熱することによって成膜を行った。
【0084】
さらに詳述すると、第1層目のタンタル炭窒化物膜としてTaC0.450.42膜73を堆積した後、NH3 ガスの流量を増やし、第2層目のタングステン炭窒化物(TaCx y )膜74を堆積した。なお、第2層目のタンタル炭窒化物膜74の堆積時、NH3 ガスの流量を変えて、第2層目のタンタル炭窒化物膜としてTaC0.440.63膜又はTaC0.430.81膜を形成した。そして、第1層目と第2層目のタンタル炭窒化物膜の全膜厚を10nmに一致させて、種々の膜厚比の積層膜を形成した。なお、タングステン炭窒化物膜の組成の同定は、RBS測定により行った。
【0085】
最後の試料には、図12(c)に示すように、組成が異なるチタン・ホウ窒化物膜の3層積層膜からなり、膜厚が10nmであるバリアメタル653 が形成されている。チタン・ホウ窒化物膜の形成にはMOCVD法を用い、チタン・ホウ窒化物膜のソースガスとそのキャリアガスであるArガスの他にB2 6 ガスを同時に流し、基板を約450℃に加熱することで成膜を行った。
【0086】
さらに詳述すると、第1層目のチタン・ホウ窒化物膜としてTiB0.050.81膜75を堆積した後、B2 6 ガスの流量を増やして第2層目のチタン・ホウ窒化物膜76を堆積した後、B2 6 ガスの流量を第1層目のチタン・ホウ窒化物膜の堆積時の値に戻して第3層目のチタン・ホウ窒化物膜としてTiB0.050.8177を堆積して、3層構造を連続的に形成した。
【0087】
なお、第2層目のチタン・ホウ窒化物膜の堆積時、B2 6 ガスの流量を変えることによって、TiB0.320.78膜又はTaC0.530.76膜を形成した。そして、バリアメタル663 の膜厚を一致させつつ、膜厚を変化させて種々の膜厚比の積層膜を形成した。なお、チタン・ホウ窒化物膜の組成の同定は、RBS測定により行った。
【0088】
本装置の製造方法を簡単に説明する。先ず、図13(a)に示すように、下層のCuダマシン配線62を有し、プラズマCVD法により形成された層間絶縁膜61に、フォトリソグラフィ技術及びRIE法を組み合わせて、Cuダマシン配線62に接続するヴィアホール63を形成する。次いで、図13(b)に示すように、層間絶縁膜61に、フォトリソグラフィ技術及びRIE法を組み合わせて、ヴィアホールに接続する配線溝64を形成する。次いで、図13(c)に示すように、ヴィアホール63の底面及び側壁,配線溝64の側壁及び底面(図13では見えていない),並びに層間絶縁膜61の表面に沿って、上述した方法を用いてそれぞれのバリアメタル65を形成する。次いで、図13(d)に示すように、全面にMOCVD法を用いてCu膜661 を堆積して、ヴィアホール63と配線溝64とに同時にCu膜661 を埋め込む。そして、余分なCu膜661 とバリアメタル65とをCMP法により除去することによって、図11に示したバリアメタル65で底面と側壁とを囲まれたCuデュアルダマシン配線66を形成する。
【0089】
次に、本装置のCuデュアルダマシン配線66のオープンイールドを測定した結果を図1414に示す。図14において、縦軸はオープンイールド、横軸は積層膜の金属元素に対する添加元素の総和の原子数比が最も大きい化合物層の膜厚tの全膜厚Tに対する比である。なお、積層膜の金属元素に対する添加元素の総和の原子数比が最も大きい化合物層とは、第1層目のタングステン窒化物膜(WN1.08,WN1.23)71,第2層目のタンタル炭窒化物膜(TaC0.440.63,TaC0.430.81)74,又は第2層目のチタン・ホウ窒化物膜(TiB0.320.78,TaC0.530.76)76である。オープン不良の主な原因は、CMP工程でのバリアメタルの膜剥がれであった。
【0090】
金属元素に対する添加元素の総和の原子数比xが最も大きい化合物層のxが1.2以上のWN1.23/WN0.91,TaC0.450.42/TaC0.430.81,TiB0.050.81/TiB0.530.76/TiB0.050.81では、t/Tが0.1以下になると、オープンイールドが著しく改善されている。
【0091】
また、金属元素に対する添加元素の総和の原子数比xが最も大きい化合物層のxが1.0より大きく且つ1.2未満である、WN1.08/WN0.91,TaC0.450.42/TaC0.440.63,TiB0.050.81/TiB0.320.78/TiB0.050.81では、t/Tが0.3以下になると、オープンイールドが著しく改善されている。
【0092】
オープンイールドの改善は、xが小さい金属化合物膜が、機械的にもろくxが大きい金属化合物膜を支えることができる臨界膜厚比が存在することによって、オープンイールドの膜厚比依存性が生じたものと推測される。
【0093】
以上説明したように、ヴィアプラグに接するバリアメタルの積層膜の金属元素に対する添加元素の総和の原子数比が最も大きい化合物層膜厚tを、それ以外のバリアメタルの層の全膜厚Tに対して、t/T≦0.3にすることによって、バリアメタルの機械的強度が向上し、オープンイールドを改善することができる。
【0094】
[第4実施形態]
本実施形態では、タンタル窒化物膜以外のバリアメタルを有する試料を作成し、評価を行った。なお、本実施形態では、図11に示した半導体装置と構成が同様であるので、ヴィアホールを中心としたバリアメタルの要部構造を図15に示すことにとどめ、全体の構造の図示を省略する。なお、図15において、図12と同一な部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
各バリアメタルの構成を図15の断面図を用いて説明する。最初の試料には、図15(a)に示すように、組成が異なるハフニウム窒化物膜の2層積層膜からなるバリアメタル654 が形成されている。ハフニウム窒化物膜の堆積にはロング・スロー・スパッタ法を用い、Hfターゲットを用いてスパッタリングガスとしてArガスとN2 ガスとを同時に流し、基板温度を約300℃にして成膜を行った。
【0096】
HfN0.75膜の堆積を行った後、N2 ガスとH2 ガスとを同時に流してHfN0.75膜のプラズマ窒化処理を行って、第1層目のハフニウム窒化物膜としてHfNx 膜81を形成した。その後、前述した条件と同じ条件で第2層目のハフニウム窒化物膜の堆積を行い、配線溝の底部の膜厚が10nmであるHfN0.75膜82を形成した。つまり、第1層目のハフニウム窒化物膜に対するプラズマ窒化処理を変えることによって、第1層目のHfNx 膜81としてHfN1.15又はHfN1.26を有する2種類のバリアメタル654 を形成した。なお、組成の同定は、XPSにより行った。そして、第1層目のハフニウム窒化物膜の膜厚を変えたものを作成した。
【0097】
次の試料には、図15(b)に示すように、組成が異なるタンタル炭化物膜の2層積層膜からなるバリアメタル655 が形成されている。タンタル炭化物膜の堆積にはロング・スロー・スパッタ法を用い、TaCターゲットを用いて、パッタリングガスとしてArガスとCH4 ガスとを同時に流し、基板温度を約300℃にして成膜を行った。
【0098】
第1層目のタンタル炭化物膜としてTaC0.82膜83の堆積を行った後、CH4 ガスの流量を増やして第2層目のタンタル炭化物膜84の堆積を行うことによって、バリアメタル655 を形成した。なお、第2層目のタンタル炭化物膜84の形成の際、CH4 ガスの流量を変えることによって、TaC1.13又はTaC1.21膜を有する2種類のバリアメタル655 形成した。なお、組成の同定は、XPS測定により行った。そして、第2層目のタンタル炭化物膜84の膜厚を変えた種々のバリアメタルを形成した。
【0099】
最後の試料には、図15(c)に示すように、ジルコニア窒化物膜及びジルコニア窒酸化物膜の3層積層膜からなるバリアメタル656 が形成されている。ジルコニア窒化物膜の堆積は、ロング・スロー・スパッタ法を用い、Zrターゲットを用いてスパッタリングガスとしてArガスとN2 ガスとを同時に流し、基板温度を約300℃にして行った。
【0100】
第1層目のジルコニア窒化物膜として膜厚5nmより厚くZrN0.93膜85を堆積した後、第1層目のZrN0.93膜85の残膜が配線溝64の底部で5nmとなるようにO2 プラズマ処理を行い、第1層目のZrN0.93膜85の表面に第2層目のジルコニア窒酸化物膜86を形成する。そして、第1層目のものと同じ条件で、第3層目のジルコニア窒化物膜として膜厚5nmのZrN0.93膜87を堆積した。なお、第2層目のジルコニア窒酸化物膜86の形成の際、O2 プラズマ処理の条件を変えることによって、ZrO0.230.93又はZrO0.350.91を有する2種類のバリアメタル656 を形成した。なお、組成の同定は、XPS測定により行った。そして、第2層目のジルコニア窒酸化物膜86の膜厚を変えた種々のバリアメタル656 を形成した。
【0101】
次に、本装置のCuダマシン配線のヴィア抵抗を測定した結果を図16に示す。図16において、縦軸はヴィア抵抗、横軸は金属元素に対する添加元素の総和の原子数比xが最も大きい化合物層の膜厚tである。なお、金属元素に対する添加元素の総和の原子数比xが最も大きい化合物層とは、第1層目ののハフニウム窒化物膜(HfN1.15,HfN1.26)81,第2層目ののタンタル炭化物膜(TaC1.13,TaC1.21)84又は第2層目のジルコニア窒酸化物膜(ZrO0.230.93,ZrO0.350.91)86である。
【0102】
金属元素に対する添加元素の総和の原子数比xが最も大きい化合物層のxが1.2以上の、HfN1.26/HfN0.75,TaC0.82/TaC1.21,ZrN0.93/ZrO0.350.91/ZrN0.93では、膜厚tが5nm以下になると、ヴィア抵抗が著しく低減している。
【0103】
また、金属元素に対する添加元素の総和の原子数比xが最も大きい化合物層のxが1.0より大きく且つ1.2未満である、HfN1.15/HfN0.75,TaC0.82/TaC1.13,ZrN0.93/ZrO0.230.91/ZrN0.93では、膜厚tが10nm以下になると、ヴィア抵抗が著しく低減している。
【0104】
ヴィア抵抗が低減した原因は、明らかではないが、絶縁体の膜厚が数nm以下になるとトンネル効果により電流が流れる事実から類推すると、特定の膜厚以下で薄膜特有の何らかの伝導機構が機能し、電流が流れやすくなっていると推測される。
【0105】
以上説明したように、バリアメタルを構成する化合物層膜の内、金属元素に対する添加元素の総和の原子数比xが最も大きい化合物層の厚さを10nm以下にすると、ヴィア抵抗を減少させることができる。
【0106】
[第5実施形態]
図17は、本発明の第5実施形態に係わる半導体装置の構成を示す断面図である。なお、図17において、図1と同一な部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0107】
本実施形態の特徴は、バリアメタルとして、配線溝16の側壁及び底面に沿って形成されたTaNx (x>0.2)膜131と、Cuダマシン配線に接するTaNy z 膜132との積層膜が形成されていることである。
【0108】
本装置の製造工程を図18の工程断面図を用いて説明する。本装置のバリアメタルの製造工程以外は、図1に示した装置の製造工程と同様の工程(図3)で構成されるので、バリアメタルの製造工程係わる工程のみを示し、その図示はバリアメタルに係わる配線溝の底部を含む領域のみとする。
【0109】
先ず、図18(a)に示すように、第2の層間絶縁膜15に、Wヴィアプラグ14に接続する配線溝16を形成する。次いで、図18(b)に示すように、全面にロング・スロー・スパッタ法を用いてTaNx 膜131を形成する。次いで、大気5分間暴露することによって、TaNx 膜131の表面にTaNy z 膜132を形成する。そして、全面にCuを形成した後、第2の層間絶縁膜上のCu膜,TaNx 膜131及びTaNy z 膜132をCMP法等を用いて除去し、Cuダマシン配線17を形成する。
【0110】
また、図19に示すようなアモルファスシリコン154,TaNx 膜155,TaNy z 膜156及びCu膜157が順次積層された構造を有する試料を450℃で4時間アニールを行い、バリアメタルを通してアモルファスシリコン膜154に拡散したCuにより生成されたCu3 Si(Cuシリサイド)の生成量(シリサイド化率)によって、本装置のバリアメタルのバリア性の評価を行った。又、Cu成膜後のテープテストによりCu膜の下地への密着性を評価した。
【0111】
図19に示した試料の構造について説明する。Si基板151上に形成された膜厚100nmの熱酸化膜152上に、低圧のCVD法により堆積された膜厚100nmのシリコン窒化膜153が形成されている。シリコン窒化膜153上にアモルファスシリコン膜154が形成されている。そして、アモルファスシリコン154上にTaNx 膜155が形成され、TaNx 膜155の表面にTaNy z 膜156が形成されている。なお、そして、TaNy z 膜156上にCu膜157が形成されている。
【0112】
なお、TaNy z 膜156は、基板温度約300℃でN2 ガスとArガス中でTaターゲットをスパッタすることによって、TaNx 膜155を形成した後、大気中に5分間暴露することによって形成した。また、ArガスとN2 ガスとの流量を変えることによって、種々の組成のTaNx 膜155を形成した後、酸化処理を行うことによって、種々のTaNy z 膜156を形成した。
【0113】
シリサイド化率及び密着性を評価した結果を表2に示す。なお、TaNx 膜の組成の同定はRBS測定により行い、TaNx 表面に形成された酸化物層の組成の同定はXPS測定により行った。
【表2】



【0114】
結果から分かるように、TaN0.2 以上の組成の表面に形成される酸化物層が、TaNx 膜のCu拡散に対するバリア性を向上させることが可能であり、又密着性も改善されている。又、TaNx 膜の窒素濃度の増大につれて表面酸化層が形成されにくくなっている。TaN1.4 膜においては、表面酸化層がほとんど形成されていなくても、良好なバリア性と密着性が実現されていることが分かる。
【0115】
又、TaN0.3 膜を用いて、大気暴露の時間を0分、5分、10分、20分と変化させて、形成されるTaN0.3 1.0 の膜厚を変えてCu/TaN0.3 1.0 膜のヴィア抵抗を測定した結果を表3に示す。なお、ヴィア抵抗の測定は、ケルビンパターンを用いて行った。
【表3】



【0116】
表3から分かるように、TaNy z 膜の膜厚が3nmを越えると著しくヴィア抵抗が増大してしまうことが分かった。
【0117】
なお、本実施形態においては、表面を酸化する方法として大気への暴露を用いたが、酸素や水蒸気中などの酸化性雰囲気中でも同様の効果が得られる。
【0118】
以上説明したように、TaNx 膜とTaNy z 膜との積層構造用いることによって、低抵抗且つ高いバリア性を有するバリアメタルを提供することができる。なお、ヴィア抵抗を低くするためにTaNy z 膜の膜厚を3nm以下にすることが好ましい。
【0119】
[第6実施形態]
図20は、本発明の第6実施形態に係わる半導体装置の構成を示す断面図である。シリコン酸化物からなる層間絶縁膜161に配線溝162が形成され、配線溝162の側壁及び底面に沿ってTaNy z 膜163が形成されている。TaNy z 膜163の表面に沿ってTaNx 膜164が形成されている。そして、配線溝162内にCu配線165が埋め込み形成されている。そして、全面にCu配線165表面からの上層への構造物への拡散を防止するシリコン窒化膜166が形成されている。本実施形態のバリアメタルは、TaNy z 膜163とTaNx 膜164とが積層された積層膜である。
【0120】
次いで、本装置の製造工程を図21の工程断面図を用いて説明する。先ず、図21(a)に示すように、層間絶縁膜161に配線溝162を形成した後、全面にスパッタリング法を用いて、TaNx 膜164を形成する。次いで、図21(b)に示すように、アニールすることによって、層間絶縁膜161とTaNx 膜164との界面に接する層間絶縁膜161を還元すると共に、前記外面のTaNx 膜164を酸化し、TaNy z 膜163を形成する。次いで、図21(c)に示すように、全面にCu膜1651 を堆積し、配線溝162をCu膜1651 で埋め込む。次いで、図21(d)に示すように、余分なCu膜1651 ,TaNx 膜164及びTaNy z 膜163をCMP法を用いて除去し、Cu配線165を形成する。そして、全面にシリコン窒化膜を堆積することによって図20に示した構造を形成する。
【0121】
次に、本実施形態のバリアメタルのバリア性の評価を行った。バリア性の評価は、図22R>2に示すようなアモルファスシリコン膜182,SiO2 膜183,TaNx 膜184及びCu膜185が順次積層された構造を有する試料を別途作成し、試料を450℃で4時間アニールを行い、バリアメタルを通してアモルファスシリコン膜に拡散したCuにより生成されたCu3 Si(Cuシリサイド)の生成量(シリサイド化率)によって行った。
【0122】
図22に示した試料の構造について説明する。プラズマCVD法により堆積された膜厚700nmのSiO2 膜181に、通常のフォトリソグラフィ技術,RIE法により深さ0.4μm、L/S=0.2/0.2μmの溝が形成されている。そして、全面にCVD法により堆積されたアモルファスシリコン膜182が形成されている。そして、アモルファスシリコン膜182上に、アモルファスシリコン膜182を酸化雰囲気にさらすことによって生成されたSiO2 膜183が形成されている。SiO2 膜183上に、溝内の一番薄いところの膜厚が5nmであるTaNx 膜184が形成されている。そして、TaNx膜184の生成から真空を破らずに堆積されたCu膜185が形成されている。
【0123】
なお、酸化雰囲気にさらす前のアモルファスシリコン膜182の膜厚は30nmであり、酸化時間を変えることで表面に2,4,6nmのSiO2 膜183が形成された試料、又は酸化処理を行わない試料を形成した。また、それぞれの膜厚のSiO2 膜183上に、TaN0.1 ,TaN0.2 ,TaN0.5 又はTaN1.4 の組成のTaNx 膜184が形成された試料を作成した。
【0124】
シリサイド化率の測定結果を表4に示す。
【表4】



【0125】
このように、TaNx 膜184が形成される下地の表面に酸素を含有する層(SiO2 膜183)を設けておくことにより、TaNx 膜184と下地中に含まれる酸素とが反応して、TaNy z 膜が形成され、Cu膜185に対するバリア特性が著しく向上することが分かる。なお、生成されるTaNy z 膜の厚さが4.5nmの場合には、TaNy z 膜形成のための熱処理中に、TaNy z 膜とSiO2 膜との間で剥離が生じて、バリア性の評価には至らなかった。
【0126】
以上説明したように、酸素を含む層間絶縁膜上にTaNx 膜を形成した後、TaNx 膜により層間絶縁膜を還元し、TaNx 膜を酸化することによって、TaNx 膜とTaNy z 膜とが積層されたバリアメタルを形成することができる。
【0127】
なお、本発明においては、酸素を有する下地層に非晶質シリコン表面に形成した酸化層を用いているが、TaNx 膜が還元できる酸化物層であるならば、実質的に同様の効果が得られる。
【0128】
[第7実施形態]
図23は、本発明の第7実施形態に係わる半導体装置の構成を示す断面図である。なお、図23において、図21と同一な部位には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0129】
本実施形態の特徴は、Cu膜165の表面が層間絶縁膜161の表面より低く形成され、Cu膜165上にTaNy z 膜191及びTaNx 膜192が順次積層されていることである。なお、TaNx 膜192の表面は層間絶縁膜161の表面と同一であり、TaNy z 膜191及びTaNx 膜192からなる積層膜はCu膜165表面からのCuの拡散を抑制するバリアメタルである。
【0130】
次に、本装置の製造工程を図24の工程断面図を用いて説明する。なお、本装置の製造工程は、図21(a)〜(d)に示した製造工程までは、同一なので説明を省略する。
【0131】
そして、図21(d)に示した工程の後、図24(a)に示すように、Cu膜165を選択的にエッチングし、Cu膜165の表面を層間絶縁膜161の表面より低くする。次いで、図24(b)に示すように、露出するCu膜165の表面を酸化し、銅酸化膜200を形成する。次いで、図24(c)に示すように、TaNx 膜192を形成する。次いで、図24(d)に示すように、アニールすることにより銅酸化膜200を還元すると共に、銅酸化膜200に接するTaNx 膜192を酸化することによって、TaNy z 膜191を形成する。そして、層間絶縁膜161上のTaNy z 膜191及びTaNx 膜192をCMP法を用いて除去することによって、層間絶縁膜161とTaNx 膜192の表面を平坦にし、図23に示した構造を形成する。
【0132】
次に、本実施形態のバリアメタルのバリア性の評価を行った。バリア性の評価は、図25R>5に示すようなCu214,銅酸化膜215,TaNx 膜216及びアモルファスシリコン膜217が順次積層された構造を有する試料を別途作成し、試料を450℃で4時間アニールを行い、TaNx 膜216を用いて銅酸化膜215を還元し、TaNx 膜216を酸化してTaNy z 膜を形成すると共に、バリアメタルを通してアモルファスシリコン膜に拡散したCuにより生成されたCu3 Si(Cuシリサイド)の生成量(シリサイド化率)によって行った。
【0133】
図25に示した試料の構造について説明する。プラズマCVD法により堆積された膜厚700nmのSiO2 膜211が形成されている。SiO2 膜211に、通常のフォトリソグラフィ技術,RIE法により深さ0.4μm、L/S=0.2/0.2μmの溝212が形成されている。全面に、溝内の一番薄いところの膜厚が5nmであるTaN1.4 膜213がスパッタ法によって形成されている。そして、TaN1.4 膜213上にCVD法により堆積された膜厚400nmのCu膜をCMP法により研磨することによって、溝内にCuダマシン配線214が埋め込み形成されている。そして、埋め込み形成されたCuダマシン配線214の表面に酸化雰囲気中の熱処理により生成された銅酸化膜215が形成されている。そして、全面に膜厚10nmのTaNx 膜216が形成され、TaNx 膜216の堆積から真空を破らずにスパッタ法により堆積されたアモルファスシリコン膜217が形成されている。
【0134】
なお、Cuダマシン配線214の酸化時間を変えることで表面に1,3,5,10nmの銅酸化膜215が形成された試料、又は酸化処理を行わない試料を形成した。また、それぞれの膜厚の銅酸化膜215上に、TaN0.1 ,TaN0.2 ,TaN0.5 又はTaN1.4 の組成の膜216が形成された試料を形成した。
【0135】
シリサイド化率の測定結果を表5に示す。
【表5】



【0136】
その結果、第5実施形態と同様のTaNx膜のバリア性が確認された。但し、Cuダマシン配線214の表面の銅酸化膜215の膜厚が10nmの場合は、Cu酸化膜の表面からバリアメタルが剥離し、バリア性の評価には至らなかった。
【0137】
また、本実施形態では、Cu配線214の表面を酸素雰囲気中の熱処理により銅酸化膜215を形成し、TaNy z 膜を形成するための酸素の供給源としていたが、予め酸素が導入されたCu配線上にTaNx 膜を堆積した後、真空中で熱処理を行うことによっても、Cu配線中の酸素がCuとTaNx 膜との界面に拡散し、同様にTaNy z 膜を形成することができることを確認した。なお、この場合には、Cu配線中の酸素が、界面のTaNy z 膜の形成に消費されることによって、Cu配線の比抵抗が低下することが確認され、Cu配線中の酸素濃度により、TaNy z 膜の膜厚を制御することができることも分かった。
【0138】
以上説明したように、Cu配線の表面に形成された銅酸化膜又は酸素を混入させたCu配線上にTaNx 膜を形成した後、TaNx 膜により銅酸化膜又は酸素を含むCu配線を還元し、TaNx 膜を酸化することによって、TaNx 膜とTaNy z 膜とが積層されたバリアメタルを形成することができる。
【0139】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、同一の金属元素と添加元素とからなる化合物膜を積層してバリアメタルを形成していたが、各層に含まれる金属元素が異なっていても良い。但し、各層に含まれる金属元素として同一なものを選択することによって、軽元素(ボロン,酸素,炭素,窒素)の導入量を変えるだけで積層膜を形成することができるので、プロセスが容易である。また、同一な金属元素を選択してバリアメタルを形成することによって、層間の反応を抑制することができる。
【0140】
又、上記実施形態では、段階的にガス流量を増減させることで化合物膜αβn のn値が異なる膜を積層したが、例えば徐々にガス流量を変化させることで連続的な組成変化を有する膜を形成しても良い。
【0141】
また、バリアメタルを構成する金属元素としては、IVB族,VB族又はVIB族に属する元素を用いることができる。
【0142】
なお、本発明のバリアメタルは、金属配線やプラグ電極以外の金属電極にも適用可能である。
【0143】
又、第5〜6実施形態において、バリアメタルを構成する化合物膜としてTaNx 膜とその酸化膜であるTaNy z 膜と例に挙げて説明したが、それに限るものではなく、タンタルの代わりに金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαとボロン,炭素,窒素から少なくとも一つの元素が選ばれたγとから構成された化合物膜αγn とその酸化膜であるαγy z を用いることができる。
【0144】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】第1実施形態に係わる半導体装置の構成を示す断面図。
【図2】図1の半導体装置のバリアメタルの構成を示す断面図。
【図3】図1の半導体装置の製造工程を示す工程断面図。
【図4】第1実施形態に係わるバリア性の検証に用いた試料の構成を示す断面図。
【図5】通常のロング・スロー・スパッタ法により成膜されたバリアメタルの成膜形状を示す断面図。
【図6】通常のロング・スロー・スパッタ法により成膜されたバリアメタル上に、Cu膜をリフローさせた場合を示す断面図。
【図7】基板バイアスを印加したロング・スロー・スパッタ法により成膜されたバリアメタルの成膜形状を示す断面図。
【図8】基板バイアスを印加したロング・スロー・スパッタ法により成膜されたバリアメタル上にCu膜をリフローさせた場合を示す断面図。
【図9】第2実施形態に係わる半導体装置のバリアメタルの構成を示す断面図。
【図10】図9に示したバリアメタルのシリサイド化率(バリア性)の軽元素濃度依存性を示す特性図。
【図11】第3実施形態に係わる半導体装置の構成を示す断面図。
【図12】図11の半導体装置のバリアメタルの構成を示す断面図。
【図13】図11の半導体装置の製造工程を示す工程断面図。
【図14】図12に示したバリアメタル上に形成されたCuデュアルダマシン配線のオープンイールドを示す特性図。
【図15】第4実施形態に係わる半導体装置の要部構成を示す断面図。
【図16】図15の半導体装置のCuダマシン配線のヴィア抵抗を示す特性図。
【図17】第5実施形態に係わる半導体装置の構成を示す断面図。
【図18】図17の半導体装置の製造工程を示す工程断面図。
【図19】第5実施形態に係わるバリア性の検証に用いた試料の構成を示す断面図。
【図20】第6実施形態に係わる半導体装置の構成を示す断面図。
【図21】図20の半導体装置の製造工程を示す工程断面図。
【図22】第6実施形態に係わるバリア性の検証に用いた試料の構成を示す断面図。
【図23】第7実施形態に係わる半導体装置の構成を示す断面図。
【図24】図23の半導体装置の製造工程を示す工程断面図。
【図25】第7実施形態に係わるバリア性の検証に用いた試料の構成を示す断面図。
【図26】TaNx 膜のバリア性のx依存性を示す特性図。
【符号の説明】
【0146】
11…第1の層間絶縁膜,12…下層配線,14…Wヴィアプラグ,15…第2の層間絶縁膜,16…配線溝,17…ダマシン配線,20…バリアメタル,31,34,35,37,38…TaN0.87膜,32,33,36,39…TaN1.19膜,51,52…ニオブ窒化物(NbNx )膜,53,54…タンタル窒酸化物(TaOy z )膜,55,56,57…チタン炭化物(TiCx )膜,61…層間絶縁膜,62…ダマシン配線,63…ヴィアホール,64…配線溝,65…バリアメタル,65…配線溝,66…デュアルダマシン配線,71,72…タングステン窒化物(WNx )膜,73,74…タンタル炭窒化物(TaCy z )膜,75,76,77…チタン・ホウ窒化物膜(TiBx y )膜,81,82…ハフニウム窒化物(HfNx )膜,83,84…タンタル炭化物(TaCx )膜,85,86,87…ジルコニア窒化物(ZrNx )膜,131…TaNx (x>0.2)膜,132…TaNy z 膜,161…層間絶縁膜,162…配線溝,163…TaNy z 膜,164…TaNx 膜,165…Cu配線,166…シリコン窒化膜,191…TaNy z 膜,192…TaNx 膜,200…銅酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属配線を構成する元素の拡散を抑制するバリアメタルを具備する半導体装置であって、
前記バリアメタルは、金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαと、ボロン,炭素,窒素から少なくとも一つの元素が選ばれたγとから構成された化合物膜αγx と、
前記α及びγと、酸素(O)とから構成された化合物膜αγy z とが積層された構成を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記xは、0.2以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記化合物膜αγy z の膜厚は、3nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記金属元素は、IVB族,VB族又はVIB族の何れかに属することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
基体上に、バリアメタルを介して金属配線が形成された半導体装置の製造方法であって、
前記基体上に化合物膜αγx を形成する工程と、
前記化合物膜αγx の表面を酸化して化合物膜αγy z を形成する工程と、
前記化合物膜αγy z 上に前記金属配線を形成する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
酸素(O)を含む基体上にバリアメタルを形成する半導体装置の製造方法であって、
前記基体上に、金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαと、ボロン,炭素,窒素のうち少なくとも1種を含むγとから構成された化合物膜αγx を形成する工程と、
前記化合物膜αγx により前記基体の還元を行うことによって、該化合物膜αγx を酸化して、該化合物膜αγx と該基体との界面に化合物膜αγy z を形成する工程とを含み、
前記化合物膜αγx と前記化合物膜αγy z とが順次積層された構成を含むバリアメタルを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
酸素(O)を含む金属配線を形成する工程と、
前記金属配線上に、金属元素から少なくとも一つの元素が選ばれたαとボロン,炭素,窒素のうち少なくとも1種を含むγとから構成された化合物膜αγx を形成する工程と、
前記化合物膜αγx により前記金属配線の還元を行うことによって、該化合物膜αγx を酸化して、該化合物膜αγx と該金属配線との界面に化合物膜αγy z を形成する工程とを含み、
前記化合物膜αγx と前記化合物膜αγy z とが順次積層された構成を含むバリアメタルを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate



【図6】
image rotate



【図7】
image rotate



【図8】
image rotate



【図9】
image rotate



【図10】
image rotate



【図11】
image rotate



【図12】
image rotate



【図13】
image rotate



【図14】
image rotate



【図15】
image rotate



【図16】
image rotate



【図17】
image rotate



【図18】
image rotate



【図19】
image rotate



【図20】
image rotate



【図21】
image rotate



【図22】
image rotate



【図23】
image rotate



【図24】
image rotate



【図25】
image rotate



【図26】
image rotate


【公開番号】特開2004−289174(P2004−289174A)
【公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−151842(P2004−151842)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【分割の表示】特願平10−215988の分割
【原出願日】平成10年7月30日(1998.7.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】