説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】回路基板上に半導体素子を搭載した半導体装置及びその製造方法に関し、回路基板やヒートスプレッダから半導体素子へ加わる応力を効果的に緩和する半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
回路基板30と、一方の面上に突起状端子22を有し、回路基板30に、突起状端子22を介して電気的に接続された半導体素子10と、半導体素子10の他方の面上に接合層24を介して形成され、回路基板30に固定された封止用蓋体36とを有し、突起状端子22及び前記接合層24の少なくとも一方が、弾性体により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板上に半導体素子を搭載した半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装の高密度化への要求が年々強くなっている現在、ベアチップ実装方式が注目されている。このベアチップ実装における接続構造は、ワイヤボンディング法によるフェイスアップ実装から、半導体素子の電極上に形成したはんだバンプ、Auスタッドバンプ、カーボンナノチューブなど突起状電極を用いて回路基板とを直接接続するフェイスダウン実装へと変化してきている。このフェイスダウン実装は、ワイヤボンディングに比べて接続端子間の距離を短くすることが可能となることから、多端子での接続を実現し、大容量の信号を高速で伝達できるなど電気的な特徴に優れた接続方式である。
【0003】
フェイスダウン実装の場合、突起電極を用いて回路基板に接続した後、半導体素子と基板との間にアンダーフィル接着材を充填し、突起電極に加わる応力を分散させる方法が一般的に採用されている。素子を接続した後は、半導体素子からの熱を分散させ素子発熱による信頼性の低下を抑えるため、熱伝導性を有する樹脂、例えばシリカフィラー、金属フィラーを含むエポキシ系の接着剤、或いはSnPbやInAgなどのような金属材料を介してヒートスプレッダが半導体素子の背面に固定される。このヒートスプレッダは、その端部で回路基板に固定されることになる。
【0004】
上述したように、従来の半導体装置における半導体素子は、回路基板とヒートスプレッダの間に介在し、両者に何らかの方法で強固に接続されているサンドイッチ構造となっている。それ故に、半導体素子は回路基板、ヒートスプレッダの熱膨張による歪み、反りなどの影響を大きく受けることになる。
【0005】
また最近では、カーボンナノチューブを用いて半導体素子と回路基板との間の接点接続を行う方法も開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2007−311700号公報
【特許文献2】特開2002−141633号公報
【特許文献3】特開2006−290736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記いずれの場合にも、半導体素子と半導体素子を搭載する回路基板とは何らかの樹脂で接合されており、前述と同様に熱膨張差による応力が発生することになる。
【0007】
前述したように、半導体素子は回路基板とヒートスプレッダの両者の間に介在する構造となっており、回路基板、ヒートスプレッダの熱膨張による歪み、反りなどの影響を大きく受ける。特に近年では、高機能化、高密度化、低コスト化の流れの中で、回路基板内の銅配線密度が高まっている。銅の熱膨張係数は17ppm/℃と高い故に、回路基板の熱膨張係数も、半導体素子の4ppm/℃に比べて拡大する傾向にある。一方、ヒートスプレッダとして用いられる高放熱板は、やはり低コスト化の要求からCu、Al(熱膨張23.5ppm/℃)等が使用されるようになり、回路基板と同様に半導体素子との熱膨張係数のミスマッチは拡大している。このような構成体に囲まれた半導体素子は、実稼働環境において多大なストレスを受けることとなり、半導体素子の割れ、接合部の破壊などの劣化を招くという課題があり、信頼性を十分に満足させることが不可能であった。
【0008】
本発明の目的は、回路基板やヒートスプレッダから半導体素子へ加わる応力を効果的に緩和することができる半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、回路基板と、一方の面上に突起状端子を有し、前記回路基板に、突起状端子を介して電気的に接続された半導体素子と、前記半導体素子の他方の面上に接合層を介して形成され、前記回路基板に固定された封止用蓋体とを有し、前記突起状端子及び前記接合層の少なくとも一方が、弾性体により構成されている半導体装置が提供される。
【0010】
また、本発明の他の観点によれば、半導体素子の一方の面上に、突起状端子を形成する工程と、前記半導体素子の他方の面上に、接合層を介して封止用蓋体を接着する工程と、前記半導体素子の突起状端子が、回路基板上の所定の電極に接続されるように、前記半導体素子の前記一方の面と前記回路基板とを対向させ、前記封止用蓋体を前記回路基板に固定する工程とを有し、前記突起状端子及び前記接合層の少なくとも一方を、弾性体により形成する半導体装置の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の更に他の観点によれば、半導体素子の一方の面上に、突起状端子を形成する工程と、前記半導体素子の突起状端子が、回路基板上の所定の電極に接続されるように、前記半導体素子の前記一方の面と前記回路基板とを対向させ、前記半導体素子を前記回路基板に搭載する工程と、前記半導体素子の他方の面上に、ゲル状の弾力性組成物よりなる接合層を形成する工程と、前記半導体素子が搭載された前記回路基板に、前記接合層を介して前記半導体素子と接合されるように、封止用蓋体を固定する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体素子とヒートスプレッダとの間及び半導体素子と回路基板との間に加わる組立過程の機械的ストレスや実使用時の熱的ストレスを、応力緩和層及び突起状端子により吸収することができる。これにより、組立過程や実使用状態において半導体素子に加わる応力を低減することができ、半導体素子の長期にわたる動作保証が可能となる。
【0013】
また、ヒートスプレッダに半導体素子をダイボンドした後に回路基板に位置合わせし、ヒートスプレッダを固定する工程とすることには、半導体素子と回路基板とが相互に拘束されにくい構造を位置ずれすることなく実現できるというメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による半導体装置及びその製造方法について図1乃至図3を用いて説明する。
【0015】
図1は本実施形態による半導体装置の構造を示す概略断面図、図2及び図3は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0016】
はじめに、本実施形態による半導体装置の構造について図1を用いて説明する。
【0017】
回路基板30上には、パッド電極32が形成されている。回路基板30上には、枠体34及び蓋体26とからなるヒートスプレッダ36が形成されている。蓋体26の内側には、応力緩和層24によって半導体素子10が接着されている。半導体素子10とパッド電極32とは、半導体素子10の表面に垂直な方向に配向したカーボンナノチューブの束よりなる突起状端子22によって電気的に接続されている。
【0018】
このように、本実施形態による半導体装置は、半導体素子10とヒートスプレッダ36との間に接合層である応力緩和層24が形成されており、半導体素子10と回路基板30と電気的接続がカーボンナノチューブの束よりなる突起状端子22により行われている。応力緩和層24及びカーボンナノチューブの束よりなる突起状端子22は、弾性的な性質を有している。このため、半導体素子10は、ヒートスプレッダ36及び回路基板30のいずれにも拘束されていない。
【0019】
このようにして半導体装置を構成することにより、半導体素子10とヒートスプレッダ36との間及び半導体素子10と回路基板30との間に加わる組立過程の機械的ストレスや実使用時の熱的ストレスを、応力緩和層24及び突起状端子22により吸収することができる。これにより、組立過程や実使用状態において半導体素子10に加わる応力を低減することができ、半導体素子10の長期にわたる動作保証が可能となる。
【0020】
応力緩和層24を構成する弾力性組成物としては、例えばシリコーン系の樹脂やウレタンゴム系樹脂などのゲル状体を用いることができる。特にシリコーン系の樹脂は、硬化後も適度な弾性力を有し、硬化条件によってゲル状とすることが可能である。ある一定の保持力を有し、なおかつ、大きな荷重が加わった場合には弾性体自身の変形作用によって応力を緩和させることが可能である。
【0021】
応力緩和層24として適度な弾性力は、10〜800MPa、より好ましくは100〜400MPaであり、通常のエポキシ系接着剤の約半分の弾性率である。
【0022】
応力緩和層24には、種々の添加物を添加してもよい。例えば、高い熱伝導性を付与するために、セラミックフィラー、金属フィラー、カーボンフィラーなどの熱伝導体を添加することができる。応力緩和層24に添加するフィラーの添加量は、10〜70wt%とすることが望ましい。10wt%未満の添加量ではフィラーの添加の効果が十分に得られず、70wt%を超えるフィラーを添加すると弾性率が高くなりすぎて応力緩和層24による応力緩和効果が十分に得られないからである。
【0023】
カーボンナノチューブを用いる利点としては、1本1本がナノサイズのワイヤーであり、はんだバンプや金バンプなどと比較して高い弾性力を有することが挙げられる。これにより、突起状端子22に、弾性体としての性質を付与することができる。
【0024】
但し、突起状端子22としては、カーボンナノチューブの代わりに、はんだバンプや金バンプなどの他の突起状構造体を用いてもよい。この場合、カーボンナノチューブを用いる場合と比較すると応力を吸収する効果は小さくなるが、半導体素子10とヒートスプレッダ36との間に形成されている応力緩和層24によって、半導体素子10と回路基板30との間に加わる応力を間接的に低減することができる。
【0025】
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法について図2及び図3を用いて説明する。
【0026】
半導体素子10は、例えば図2(a)に示すように、表面に多数のトランジスタその他の素子や多層配線層が形成された基板12と、その最上層に形成されたパッド電極14と、基板14及びパッド電極14の上に形成されたパッシベーション膜16とを含む。パッシベーション膜16には、パッド電極14の一部の領域を露出する開口部が形成されている。
【0027】
この半導体素子10のパッド電極14上に、例えばリフトオフ法により、例えば膜厚5nmのAl(アルミニウム)膜18と、例えば膜厚2nmのFe(鉄)膜20とを選択的に形成する(図2(b))。Al膜18及びFe膜20は、例えばスパッタ法により堆積することができる。
【0028】
次いで、Fe膜20を触媒として、Fe膜20上に、例えばCVD法により、カーボンナノチューブを成長し、カーボンナノチューブの束よりなる突起状端子22を形成する(図2(c))。カーボンナノチューブの成長は、例えば、原料ガスとしてアセチレン、メタン等の炭化水素系ガス、エタノール、メタノール等のアルコール系原料を用い、例えば100Paの圧力において、300〜700℃、例えば600℃の成長温度で成長することができる。カーボンナノチューブの長さは、成長時間によって制御することができ、ここでは、例えば100μmとする。
【0029】
或いは、半導体素子10のパッド電極14上にはんだ或いは導電性微粒子を含む接着剤をあらかじめ形成しておき、別の基板(例えばシリコン基板)上に成長したカーボンナノチューブを半導体素子10のパッド電極14上に押し当て、前記はんだ或いは接着剤でパッド電極14上に固定し、基板を取り外すことにより、カーボンナノチューブの束をパッド電極14上に転写するようにしてもよい。
【0030】
なお、上記の例では、カーボンナノチューブの成長に用いる触媒金属としてFe膜20を用いたが、他の材料を触媒として用いてもよい。例えば、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)等の遷移金属を含んだ触媒からなる膜を用いてもよい。また、これらの触媒は、薄膜状にしてもよいし、微粒子状にしてもよい。また、ゼオライト等の担持材料中に触媒を含ませてもよいし、触媒となる金属元素を含んだフェリチン等のタンパク質の自己組織的配列を活用してもよい。
【0031】
こうして、半導体素子10のパッド電極14上に、カーボンナノチューブの束よりなる突起状端子22を形成する。
【0032】
なお、ここでは突起状端子22としてカーボンナノチューブを用いる例を示したが、突起状端子22としては、はんだバンプや金バンプなどの他の突起状構造体を用いてもよい。カーボンナノチューブを用いる利点としては、1本1本がナノサイズのワイヤーであり、はんだバンプや金バンプの場合と比較して高い弾性力を有することが挙げられる。
【0033】
次いで、例えばスクリーン印刷により、蓋体26上に、応力緩和層24を形成する(図3(a))。蓋体26は、半導体素子10から発せられる熱を放散させるヒートスプレッダとして機能するものであり、高い熱伝導性を有する材料、例えばCu(銅)やAl(アルミニウム)により構成することができる。応力緩和層24を構成する弾性材料としては、例えばシリコーン系の樹脂やウレタンゴム系樹脂などのゲル状体を用いることができる。特にシリコーン系の樹脂は、硬化後も適度な弾性力を有し、硬化条件によってゲル状とすることが可能である。ある一定の保持力を有し、なおかつ、大きな荷重が加わった場合には弾性体自身の変形作用によって応力を緩和させることが可能である。
【0034】
応力緩和層24には、種々の添加物を添加してもよい。例えば、高い熱伝導性を付与するために、セラミックフィラー、金属フィラー、カーボンフィラーなどの熱伝導体を添加することができる。応力緩和層24に添加するフィラーの添加量は、10〜70wt%とすることが望ましい。10wt%未満の添加量ではフィラーの添加の効果が十分に得られず、70wt%を超えるフィラーを添加すると弾性率が高くなりすぎて応力緩和層24による応力緩和効果が十分に得られないからである。
【0035】
次いで、応力緩和層24を形成した蓋体26上に、半導体素子10の裏面が応力緩和層24に接するように接着する。これにより、半導体素子10は、応力緩和層24を介して蓋体に接着される(図3(b))。
【0036】
次いで、所定の熱処理を行い、応力緩和層24を硬化させる。例えば、応力緩和層24としてシリコーン系の樹脂を用いる場合、硬化剤の添加量で応力緩和層24の弾性力を制御することができる。
【0037】
例えば、応力緩和層24としてシリコーン樹脂を用いる場合、シリコーン樹脂100gに対して、2gの硬化剤を添加することにより50MPaの弾性力を得ることができ、5gの硬化剤を添加することにより120MPaの弾性力を得ることができ、10gの硬化剤を添加することにより280MPaの弾性力を得ることができる。
【0038】
或いは、応力緩和層24としてウレタン系樹脂を用いる場合、ウレタン系樹脂100gに対して、20gの硬化剤を添加することにより150MPaの弾性力を得ることができ、40gの硬化剤を添加することにより310MPaの弾性力を得ることができ、70gの硬化剤を添加することにより500MPaの弾性力を得ることができる。
【0039】
一方、半導体素子10を搭載するための回路基板30には、半導体素子10の突起状端子22を接続するためのパッド電極32と、蓋体26を固定するための枠体34とが形成されている。枠体34は、蓋体26とともに半導体素子10から発せられる熱を放散させるヒートスプレッダとして機能するものであり、高い熱伝導性を有する材料、例えばCu(銅)やAl(アルミニウム)により構成することができる。
【0040】
この回路基板30上に、半導体素子10の突起状端子22と回路基板30のパッド電極32とが向き合うように半導体素子10を位置合わせし、回路基板30の枠体34と蓋体26とを加圧接合する。これにより、蓋体26及び枠体34からなるヒートスプレッダ36が構成される(図3(c)〜図3(d))。蓋体26と枠体34との接合には、接着材を用いてもよいし、ねじ止めをしてもよい。これにより、蓋体26及び枠体34からなるヒートスプレッダ36が構成される。なお、本願明細書では、蓋体26を単独で、或いは蓋体26及び枠体34を一括して、封止用蓋体と呼ぶこともある。
【0041】
この際、半導体素子10と蓋体26との間には、弾性体よりなる応力緩和層24が形成されている。また、突起状端子22は弾性力を有するカーボンナノチューブにより構成されている。これにより、突起状端子22及び応力緩和層24により、蓋体26と枠体34とを接合する際に半導体素子10に加わる応力を緩和することができる。
【0042】
また、カーボンナノチューブの束よりなる突起状端子22は、蓋体26の接合の際の圧力によって撓む。これにより、突起状端子22から半導体素子10方向及びパッド電極32方向にカーボンナノチューブによる弾性力が作用し、半導体素子10と回路基板30との間の電気的接続を確実にすることができる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、半導体素子とヒートスプレッダとの間にゲル状の弾力性組成物よりなる応力緩和層を設け、半導体素子と回路基板との接続にカーボンナノチューブの束よりなる突起状端子を用いるので、半導体素子とヒートスプレッダとの間及び半導体素子と回路基板との間に加わる組立過程の機械的ストレスや実使用時の熱的ストレスを、応力緩和層及び突起状端子により吸収することができる。これにより、組立過程や実使用状態において半導体素子に加わる応力を低減することができ、半導体素子の長期にわたる動作保証が可能となる。
【0044】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による半導体装置及びその製造方法について図4及び図5を用いて説明する。なお、図1乃至図3に示す第1実施形態による半導体装置及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
【0045】
図4は本実施形態による半導体装置の構造を示す概略断面図、図5は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0046】
はじめに、本実施形態による半導体装置の構造について図4を用いて説明する。
【0047】
本実施形態による半導体装置は、応力緩和層24の代わりにエポキシ樹脂などよりなる一般的な接着剤層28を用いている他は、第1実施形態による半導体装置と同様である。
【0048】
第1実施形態では、半導体素子10とヒートスプレッダ36との間に応力緩和層24を設けることにより、半導体素子10とヒートスプレッダ36との間に加わる応力を緩和し、突起状端子22としてカーボンナノチューブの束を用いることにより、半導体素子10と回路基板30との間に応力を緩和した。しかしながら、応力を緩和する構造体を、半導体素子10とヒートスプレッダ36との間及び半導体素子10と回路基板30との間の少なくとも一方に設けることにより、半導体素子10へ加わる応力を緩和することができる。
【0049】
すなわち、本実施形態による半導体装置のように、半導体素子10と回路基板30との電気的接続をカーボンナノチューブの束よりなる突起状端子22により行えば、接合層として応力緩和層24の代わりに弾性率の小さい接着材料を用いた場合にも、半導体素子10へ加わる応力を緩和することができる。
【0050】
このようにして半導体装置を構成することにより、半導体素子10とヒートスプレッダ36との間及び半導体素子10と回路基板30との間に加わる組立過程の機械的ストレスや実使用時の熱的ストレスを、突起状端子22により吸収することができる。これにより、組立過程や実使用状態において半導体素子10に加わる応力を低減することができ、半導体素子10の長期にわたる動作保証が可能となる。
【0051】
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法について図5を用いて説明する。
【0052】
まず、第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、半導体素子10のパッド電極14上にカーボンナノチューブの束よりなる突起状端子22を形成する。
【0053】
次いで、例えばスクリーン印刷により、蓋体26上に、例えばエポキシ系の樹脂などよりなる接着剤層28を形成する(図5(a))。
【0054】
次いで、接着剤層28を形成した蓋体26上に、半導体素子10の裏面が接着剤層28に接するように接着する。これにより、半導体素子10は、接着剤層28を介して蓋体に接着される(図5(b))。
【0055】
次いで、所定の熱処理を行い、接着剤層28を硬化させる。
【0056】
次いで、回路基板30上に、半導体素子10の突起状端子22と回路基板30のパッド電極32とが向き合うように半導体素子10を位置合わせし、回路基板30の枠体34と蓋体26とを加圧接合する。これにより、蓋体26及び枠体34からなるヒートスプレッダ36が構成される(図5(c)〜図5(d))。蓋体26と枠体34との接合には、接着材を用いてもよいし、ねじ止めをしてもよい。これにより、蓋体26及び枠体34からなるヒートスプレッダ36が構成される。
【0057】
この際、突起状端子22は、弾性力を有するカーボンナノチューブにより構成されている。これにより、突起状端子22により、蓋体26と枠体34とを接合する際に半導体素子10に加わる応力を緩和することができる。
【0058】
また、カーボンナノチューブの束よりなる突起状端子22は、蓋体26の接合の際の圧力によって撓む。これにより、突起状端子22から半導体素子10方向及びパッド電極32方向にカーボンナノチューブによる弾性力が作用し、半導体素子10と回路基板30との間の電気的接続を確実にすることができる。
【0059】
このように、本実施形態によれば、半導体素子と回路基板との接続にカーボンナノチューブの束よりなる突起状端子を用いるので、半導体素子と回路基板との間に加わる組立過程の機械的ストレスや実使用時の熱的ストレスを、応力緩和層及び突起状端子により吸収することができる。これにより、組立過程や実使用状態において半導体素子に加わる応力を低減することができ、半導体素子の長期にわたる動作保証が可能となる。
【0060】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による半導体装置及びその製造方法について図6乃至図8を用いて説明する。なお、図1乃至図5に示す第1及び第2実施形態による半導体装置及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
【0061】
図6は本実施形態による半導体装置の構造を示す概略断面図、図7及び図8は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0062】
はじめに、本実施形態による半導体装置の構造について図6を用いて説明する。
【0063】
回路基板30上には、パッド電極32が形成されている。回路基板30上には、枠体34及び蓋体26とからなるヒートスプレッダ36が形成されている。蓋体26の内側には、応力緩和層24によって半導体素子10が接着されている。半導体素子10とパッド電極32とは、はんだバンプよりなる突起状端子22によって電気的に接続されている。半導体素子10と回路基板30との間には、アンダーフィル接着剤層38が形成されている。
【0064】
このように、本実施形態による半導体装置は、半導体素子10とヒートスプレッダ36との間に応力緩和層24が形成されている。応力緩和層24は、弾性的な性質を有している。このため、半導体素子10は、ヒートスプレッダ36に拘束されていない。
【0065】
このようにして半導体装置を構成することにより、半導体素子10とヒートスプレッダ36との間に加わる組立過程の機械的ストレスや実使用時の熱的ストレスを、応力緩和層24により吸収することができる。これにより、組立過程や実使用状態において半導体素子10に加わる応力を低減することができ、半導体素子10の長期にわたる動作保証が可能となる。
【0066】
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法について図7及び図8を用いて説明する。
【0067】
まず、半導体素子10のパッド電極(図示せず)上に、はんだバンプよりなる突起状端子22を形成する。
【0068】
次いで、回路基板30上に、半導体素子10の突起状端子22と回路基板30のパッド電極32とが向き合うように半導体素子10を位置合わせし、回路基板30上に半導体素子10を搭載する(図7(a)〜図7(b))。
【0069】
次いで、半導体素子10と回路基板30との間に接着剤を流し込み、アンダーフィル接着剤層38を形成する(図7(c))。
【0070】
次いで、半導体素子10の裏面に、例えばスクリーン印刷により、応力緩和層24を形成する(図8(a))。
【0071】
次いで、回路基板30に形成された枠体34に位置合わせして、枠体34と蓋体26とを加圧接合する。これにより、蓋体26及び枠体34からなるヒートスプレッダ36が構成される(図8(a)〜図8(b))。蓋体26と枠体34との接合には、接着材を用いてもよいし、ねじ止めをしてもよい。これにより、蓋体26及び枠体34からなるヒートスプレッダ36が構成される。
【0072】
次いで、所定の熱処理を行い応力緩和層24を硬化させ、10〜800MPa程度の弾性力を有する応力緩和層24を形成する。
【0073】
こうして、本実施形態による半導体装置を製造する。
【0074】
このように、本実施形態によれば、半導体素子とヒートスプレッダとの間にゲル状の弾力性組成物よりなる応力緩和層を設けるので、半導体素子とヒートスプレッダとの間に加わる熱的ストレスを、応力緩和層により吸収することができる。これにより、組立過程や実使用状態において半導体素子に加わる応力を低減することができ、半導体素子の長期にわたる動作保証が可能となる。
【0075】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0076】
例えば、上記第1及び第2実施形態では、半導体素子10と回路基板との接続をカーボンナノチューブの束よりなる突起状端子22により接続したが、半導体素子10と回路基板との接続をより強固にするために、半導体素子10と回路基板との間に、応力緩和層24と同様の弾性体を充填するようにしてもよい。この層は、アンダーフィル接着剤層と同様の手法により形成することができる。
【0077】
また、弾力性を有する突起状端子としてカーボンナノチューブを用いた例を説明したが、カーボンナノチューブの代わりに炭素元素からなる他の線状構造体を用いることもできる。このような線状構造体としては、カーボンナノワイヤ、カーボンロッド、カーボンファイバが挙げられる。これら線状構造体は、サイズが異なるほかは、カーボンナノチューブと同様である。
【0078】
また、上記実施形態に記載の構成材料や製造条件は、当該記載に限定されるものではなく、目的等に応じて適宜変更が可能である。
【実施例】
【0079】
[実施例1]
封止支持体(蓋体)としてのサイズ42×42×1mmの銅板に対して、半導体素子を搭載する15×15mmのエリアに、カーボン粒子を60wt%添加したシリコーン樹脂を印刷塗布し、応力緩和層を形成した。
【0080】
この応力緩和層上に、15×15mmの半導体素子の背面が対向するように位置合わせをし、搭載した。なお、半導体素子表面のパッド電極部には、予めカーボンナノチューブの束よりなる突起状端子を形成した。
【0081】
次いで、半導体素子を搭載した後、150℃、30minの熱処理を行い、シリコーン樹脂を硬化させた。
【0082】
次いで、回路基板上の蓋体を接合する部分に、銅製の枠体を形成した。
【0083】
次いで、枠体の上面部にエポキシ系接着シートを配置した後、半導体素子の突起状端子と回路基板のパッド電極とが向き合うように蓋体26を位置合わせし、蓋体と枠体とを加圧接合した。
【0084】
このとき、電気的な試験を行い、回路的に問題を確認した後に、回路基板に形成した固定用エポキシシートの硬化温度(150℃)まで加熱し、蓋体を回路基板上に固定した。
【0085】
このようにして組立を行った半導体装置に対して、電気的に問題ないことを確認し、以下の接続信頼性評価を行った。
【0086】
−55〜125℃の繰り返し温度サイクル試験を2000サイクル行った結果、抵抗上昇は10%以下と良好であった。また、121℃/85%RHの環境下で1000時間放置した結果、サイクル試験と同様に、抵抗上昇は10%以下と良好であった。
【0087】
[実施例2]
蓋体としてアルミニウム板を用いる他は実施例1と同様にして半導体装置を組み立て、接続信頼性の評価を行った。
【0088】
その結果、電気的に良好な接続形態が得られていること、また、信頼性も実施例1と同様に良好であることを確認した。
【0089】
[実施例3]
半導体素子表面のパッド電極部上に形成する突起上端子としてはんだバンプを用いる他は実施例1と同様にして半導体装置を組み立て、接続信頼性の評価を行った。
【0090】
その結果、電気的に良好な接続形態が得られていること、また、信頼性も実施例1と同様に良好であることを確認した。
【0091】
[実施例4]
半導体素子表面のパッド電極部上に形成する突起上端子として金バンプを用いる他は実施例1と同様にして半導体装置を組み立て、接続信頼性の評価を行った。
【0092】
その結果、電気的に良好な接続形態が得られていること、また、信頼性も実施例1と同様に良好であることを確認した。
【0093】
[実施例5]
応力緩和層としてウレタンゴム系樹脂を用いる他は実施例1と同様にして半導体装置を組み立て、接続信頼性の評価を行った。
【0094】
その結果、電気的に良好な接続形態が得られていること、また、信頼性も実施例1と同様に良好であることを確認した。
【0095】
[比較例]
応力緩和層の代わりにエポキシ系樹脂よりなる接着剤層を用いる他は第3実施形態の半導体装置の製造方法と同様にして半導体装置を組み立て、接続信頼性の評価を行った。
【0096】
その結果、初期導通は得られたものの、−55〜125℃の繰り返し温度サイクル試験を2000サイクル行った結果、抵抗上昇が20%であった。また、121℃/85%RHの環境下で1000時間放置した結果、抵抗上昇は30%であった。
【0097】
以上詳述したように、本発明の特徴をまとめると以下の通りとなる。
【0098】
(付記1) 回路基板と、
一方の面上に突起状端子を有し、前記回路基板に、突起状端子を介して電気的に接続された半導体素子と、
前記半導体素子の他方の面上に接合層を介して形成され、前記回路基板に固定された封止用蓋体とを有し、
前記突起状端子及び前記接合層の少なくとも一方が、弾性体により構成されている
ことを特徴とする半導体装置。
【0099】
(付記2) 付記1記載の半導体装置において、
前記突起状電極は、炭素元素からなる複数の線状構造体の束により構成されている
ことを特徴とする半導体装置。
【0100】
(付記3) 付記1又は2記載の半導体装置において、
前記接合層は、ゲル状の弾力性組成物よりなる
ことを特徴とする半導体装置。
【0101】
(付記4) 付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記接合層は、弾性率が10〜800MPaの範囲の弾力性組成物よりなる
ことを特徴とする半導体装置。
【0102】
(付記5) 付記3又は4記載の半導体装置において、
前記弾力性組成物は、シリコーン系樹脂である
ことを特徴とする半導体装置。
【0103】
(付記6) 付記3乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記弾力性組成物中に分散され、前記弾力性組成物よりも熱導電性の高いフィラーを更に有する
ことを特徴とする半導体装置。
【0104】
(付記7) 付記6記載の半導体装置において、
前記接合層は、10〜70wt%の割合で前記フィラーを含有する
ことを特徴とする半導体装置。
【0105】
(付記8) 半導体素子の一方の面上に、突起状端子を形成する工程と、
前記半導体素子の他方の面上に、接合層を介して封止用蓋体を接着する工程と、
前記半導体素子の突起状端子が、回路基板上の所定の電極に接続されるように、前記半導体素子の前記一方の面と前記回路基板とを対向させ、前記封止用蓋体を前記回路基板に固定する工程とを有し、
前記突起状端子及び前記接合層の少なくとも一方を、弾性体により形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0106】
(付記9) 半導体素子の一方の面上に、突起状端子を形成する工程と、
前記半導体素子の突起状端子が、回路基板上の所定の電極に接続されるように、前記半導体素子の前記一方の面と前記回路基板とを対向させ、前記半導体素子を前記回路基板に搭載する工程と、
前記半導体素子の他方の面上に、ゲル状の弾力性組成物よりなる接合層を形成する工程と、
前記半導体素子が搭載された前記回路基板に、前記接合層を介して前記半導体素子と接合されるように、封止用蓋体を固定する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1実施形態による半導体装置の構造を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図3】本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図4】本発明の第2実施形態による半導体装置の構造を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態による半導体装置の構造を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図8】本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【符号の説明】
【0108】
10…半導体素子
12…基板
14,32…パッド電極
16…パッシベーション膜
18…Al膜
20…Fe膜
22…突起状端子
24…応力緩和層
26…蓋体
28…接着剤層
30…回路基板
34…枠体
36…ヒートスプレッダ
38…アンダーフィル接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
一方の面上に突起状端子を有し、前記回路基板に、突起状端子を介して電気的に接続された半導体素子と、
前記半導体素子の他方の面上に接合層を介して形成され、前記回路基板に固定された封止用蓋体とを有し、
前記突起状端子及び前記接合層の少なくとも一方が、弾性体により構成されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記突起状電極は、炭素元素からなる複数の線状構造体の束により構成されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の半導体装置において、
前記接合層は、ゲル状の弾力性組成物よりなる
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
半導体素子の一方の面上に、突起状端子を形成する工程と、
前記半導体素子の他方の面上に、接合層を介して封止用蓋体を接着する工程と、
前記半導体素子の突起状端子が、回路基板上の所定の電極に接続されるように、前記半導体素子の前記一方の面と前記回路基板とを対向させ、前記封止用蓋体を前記回路基板に固定する工程とを有し、
前記突起状端子及び前記接合層の少なくとも一方を、弾性体により形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体素子の一方の面上に、突起状端子を形成する工程と、
前記半導体素子の突起状端子が、回路基板上の所定の電極に接続されるように、前記半導体素子の前記一方の面と前記回路基板とを対向させ、前記半導体素子を前記回路基板に搭載する工程と、
前記半導体素子の他方の面上に、ゲル状の弾力性組成物よりなる接合層を形成する工程と、
前記半導体素子が搭載された前記回路基板に、前記接合層を介して前記半導体素子と接合されるように、封止用蓋体を固定する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−253073(P2009−253073A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100195(P2008−100195)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「(ナノテクノロジープログラム・革新的部材産業創出プログラム)/「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「電子デバイスのためのCNTを用いたナノスプリング接点接続の研究開発」」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】