説明

半導体装置

【課題】酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有する非晶質酸化物半導体層と、該非晶質酸化物半導体層上に設けられた酸化アルミニウム膜とを含んで構成される半導体装置を提供する。該非晶質酸化物半導体層は、脱水又は脱水素化処理を行った結晶性又は非晶質酸化物半導体層に対して、酸素注入処理を行い、その後、酸化アルミニウム膜を設けた状態で450℃以下の熱処理を行うことで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジスタ(TFT)ともいう)を構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体材料が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、酸化物半導体を有する半導体デバイスにおいて、酸化物半導体の薄膜形成工程で電子供与体を形成する水素や水分の混入などが生じると、その電気伝導度が変化してしまう。また、成膜された酸化物半導体薄膜が酸素欠損を有する場合にも、電気伝導率が変化してしまう恐れがある。このような現象は、酸化物半導体を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動要因となる。
【0007】
このような問題に鑑み、酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示する発明に係る半導体装置は、化学量論的組成比を超える酸素(すなわち、化学量論を超える酸素)を含む領域を有する非晶質酸化物半導体層と、該非晶質酸化物半導体層上に設けられた酸化アルミニウム膜とを含んで構成される。該非晶質酸化物半導体層は、脱水化又は脱水素化処理を行った結晶性又は非晶質酸化物半導体層に対して、酸素注入処理を行い、その後、酸化アルミニウム膜を設けた状態で、非晶質状態を維持するように熱処理を行うことで形成される。前記熱処理の温度は450℃以下である。より具体的には、例えば以下の構成とすることができる。
【0009】
本発明の一態様は、化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有する非晶質酸化物半導体層と、非晶質酸化物半導体層に電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、非晶質酸化物半導体層と重なるゲート電極と、非晶質酸化物半導体層と、ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、非晶質酸化物半導体層上に設けられた酸化アルミニウム膜と、を有する半導体装置である。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有する非晶質酸化物半導体層と、非晶質酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、ソース電極及びドレイン電極を覆い、非晶質酸化物半導体層上に設けられたゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に設けられ、非晶質酸化物半導体層と重なるゲート電極と、ゲート電極上に接して設けられた酸化アルミニウム膜と、を有する半導体装置である。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、ゲート電極と、ゲート電極上に設けられたゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上であってゲート電極と重なる位置に設けられ、化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有する非晶質酸化物半導体層と、非晶質酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、非晶質酸化物半導体層の少なくとも一部と接して、非晶質酸化物半導体層上に設けられた酸化アルミニウム膜と、を有する半導体装置である。
【0012】
上記の半導体装置のいずれか一において、ゲート絶縁層は、化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有するのが好ましい。
【0013】
また、上記の半導体装置のいずれか一において、酸化アルミニウム膜と、非晶質酸化物半導体層との間に、酸化物絶縁膜を有し、酸化物絶縁膜は、化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有するのが好ましい。
【0014】
なお、本明細書等において、「上」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」との表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。また、「下」という用語についても同様である。
【0015】
また、本明細書等において、「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【発明の効果】
【0016】
酸素の注入によって非晶質酸化物半導体層に酸素を過剰に含ませ、非晶質酸化物半導体層中の酸素が放出されないように酸化アルミニウム膜を非晶質酸化物半導体層上に設けた状態で熱処理を行うことにより、非晶質酸化物半導体中及びその上下で接する層との界面で欠陥が生成されること、または、欠陥が増加することを防ぐことができる。すなわち、非晶質酸化物半導体層に含ませた過剰な酸素が、酸素空孔欠陥を埋めるように作用するので、安定した電気特性を有する信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】半導体装置の一形態を説明する平面図及び断面図。
【図2】半導体装置の一形態を説明する平面図及び断面図。
【図3】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
【図4】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
【図5】半導体装置の一形態を説明する平面図及び断面図。
【図6】半導体装置の一形態を説明する平面図及び断面図。
【図7】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
【図8】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
【図9】半導体装置の一形態を説明する図。
【図10】半導体装置の一形態を説明する図。
【図11】半導体装置の一形態を説明する図。
【図12】半導体装置の一形態を説明する図。
【図13】半導体装置の一形態を説明する図。
【図14】電子機器を示す図。
【図15】実施例1で作製した試料のSIMSの測定結果を示す図。
【図16】実施例1で作製した試料のSIMSの測定結果を示す図。
【図17】実施例1で作製した試料のTDSの測定結果を示す図。
【図18】実施例1で作製した試料のTDSの測定結果を示す図。
【図19】実施例2で作製した試料のTEM像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されるものではない。
【0019】
なお、本明細書等において、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書等において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1乃至図3を用いて説明する。
【0021】
図1に、半導体装置の例として、トップゲート型のトランジスタ510の平面図及び断面図を示す。図1(A)は、トランジスタ510の平面図であり、図1(B)及び図1(C)はそれぞれ、図1(A)におけるA−B断面及びC−D断面に係る断面図である。なお、図1(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ510の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁層406など)を省略して図示している。
【0022】
図1に示すトランジスタ510は、絶縁表面を有する基板400上に、下地絶縁層402と、非晶質酸化物半導体層404、ソース電極405a、ドレイン電極405b、ゲート絶縁層406、ゲート電極410及び絶縁層412を含む。
【0023】
図1に示すトランジスタ510において、非晶質酸化物半導体層404は、化学量論的組成比を超える酸素を含む領域(以下、酸素過剰領域とも表記する)を有する。一般に、非晶質酸化物半導体層404を構成する主成分の一つである酸素は、膜中で他の主成分材料の一つである金属元素との結合と解離を動的に繰り返す。酸素と解離した金属元素は未結合手を有するため、非晶質酸化物半導体層中において、酸素が解離した酸素欠損が一定数存在すると考えられる。しかしながら、本発明の一態様に係るトランジスタにおいては、非晶質酸化物半導体層404に含まれる過剰な酸素によって、非晶質酸化物半導体層404中の酸素欠損による欠陥(酸素欠陥)を直ちに埋めることができる。よって、安定した電気特性を有する信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0024】
非晶質酸化物半導体層404は、膜全体に渡って非晶質構造を有する。
【0025】
また、トランジスタ510は、絶縁層412として酸化アルミニウム膜を含む層が設けられている。酸化アルミニウムは、水素、水分、酸素、その他の不純物を透過させにくいというバリア機能を有しているため、デバイス完成後に水分等の不純物が外部より侵入するのを防ぐことができる。なお、絶縁層412は、少なくとも酸化アルミニウム膜を有していればよく、酸化アルミニウム膜と、他の無機絶縁材料を含む膜との積層構造としてもよい。また、絶縁層412が他の無機絶縁材料を含む膜との積層構造である場合、当該他の無機絶縁材料を含む膜は、非晶質酸化物半導体層404側に位置し、且つ、酸素過剰領域を有する酸化物絶縁膜であるのがより好ましい。例えば、絶縁層412を、非晶質酸化物半導体層404側から、酸素過剰領域を有する酸化シリコン膜と、酸化アルミニウム膜と、の積層構造とすることができる。
【0026】
ゲート絶縁層406は、酸素過剰領域を有するのが好ましい。ゲート絶縁層406が酸素過剰領域を有していると、非晶質酸化物半導体層404からゲート絶縁層406への酸素の移動を防ぐことができ、且つ、ゲート絶縁層406から非晶質酸化物半導体層404への酸素の供給を行うこともできるためである。同様に、下地絶縁層402は、酸素過剰領域を有するのが好ましい。
【0027】
なお、トランジスタ510上には、さらに絶縁層が設けられていても良い。また、ソース電極405aやドレイン電極405bと配線とを電気的に接続させるために、ゲート絶縁層406などには開口が形成されていても良い。なお、非晶質酸化物半導体層404は島状に加工されていなくてもよい。
【0028】
図2に、本実施の形態に係るトランジスタの別の構成例を示す。図2(A)はトランジスタ520の平面図であり、図2(B)及び図2(C)は、図2(A)におけるE−F断面及びG−H断面に係る断面図である。なお、図2(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ520の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁層406など)を省略している。
【0029】
図2に示すトランジスタ520は、図1に示すトランジスタ510と同様に、絶縁表面を有する基板400上に、下地絶縁層402、非晶質酸化物半導体層404、ソース電極405a、ドレイン電極405b、ゲート絶縁層406、ゲート電極410及び絶縁層412を含む。
【0030】
図2に示すトランジスタ520と図1に示すトランジスタ510との相違点は、ソース電極405a及びドレイン電極405bと、非晶質酸化物半導体層404との積層順である。すなわち、トランジスタ520は、下地絶縁層402に接するソース電極405a及びドレイン電極405bと、ソース電極405a及びドレイン電極405b上に設けられた非晶質酸化物半導体層404と、を有する。その他の構成は、トランジスタ510と同様であり、詳細については、トランジスタ510についての説明を参酌することができる。
【0031】
以下、図3(A)乃至図3(D)を用いて、トランジスタ510の作製工程の一例を示す。なお、トランジスタ520は、ソース電極405a及びドレイン電極405bと、非晶質酸化物半導体層404との積層順以外は、トランジスタ510と同様の工程で作製することができる。
【0032】
まず、絶縁表面を有する基板400上に、下地絶縁層402を成膜する。絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0033】
また、基板400として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に酸化物半導体膜を含むトランジスタを直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体膜を含むトランジスタを作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体膜を含むトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0034】
下地絶縁層402は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を含む膜から選ばれた、単層または積層構造とすることができる。但し、下地絶縁層402を、酸化物絶縁膜を含む積層構造として形成した場合、該酸化物絶縁膜を後に形成される非晶質酸化物半導体層404と接する構造とするのが好ましい。本実施の形態においては、下地絶縁層402として、酸化シリコン膜をプラズマCVD法又はスパッタリング法等により形成する。
【0035】
また、下地絶縁層402は酸素過剰領域を有すると、下地絶縁層402に含まれる過剰な酸素によって、非晶質酸化物半導体層404の酸素欠損を補填することが可能であるため好ましい。下地絶縁層402が積層構造の場合は、少なくとも非晶質酸化物半導体層404と接する層において酸素過剰領域を有するのが好ましい。下地絶縁層402に酸素過剰領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて下地絶縁層402を成膜すればよい。または、成膜後の下地絶縁層402に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオンのいずれかを含む)を注入して、酸素過剰領域を形成しても良い。酸素の注入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0036】
次いで、下地絶縁層402上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の非晶質酸化物半導体層404aを形成する(図3(A)参照)。
【0037】
酸化物半導体材料としては、In、Ga、ZnおよびSnから選ばれた2種以上を含む金属酸化物材料を用いればよい。例えば、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系の材料や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系の材料、In−Sn−Zn−O系の材料、In−Al−Zn−O系の材料、Sn−Ga−Zn−O系の材料、Al−Ga−Zn−O系の材料、Sn−Al−Zn−O系の材料、Hf−In−Zn−O系材料や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系の材料、Sn−Zn−O系の材料、Al−Zn−O系の材料、Zn−Mg−O系の材料、Sn−Mg−O系の材料、In−Mg−O系の材料、In−Ga−O系の材料や、In−O系の材料、Sn−O系の材料、Zn−O系の材料などを用いればよい。また、上記酸化物半導体にInとGaとSnとZn以外の元素、例えばSiOを含ませてもよい。
【0038】
ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。
【0039】
また、非晶質酸化物半導体層404aには、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0040】
また、酸化物半導体としてIn−Sn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Sn:Zn=1:2:2、In:Sn:Zn=2:1:3、In:Sn:Zn=1:1:1などとすればよい。
【0041】
なお、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z≧1.5X+Yとする。
【0042】
非晶質酸化物半導体層404aは、スパッタリング法を用いて成膜するのが好ましい。また、スパッタリング法により非晶質酸化物半導体層404aを形成する際、できる限り非晶質酸化物半導体層404aに含まれる水素濃度を低減させることが好ましい。水素濃度を低減させるには、スパッタリング装置の処理室内に供給する雰囲気ガスとして、水素、水、水酸基を有する化合物、または水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、および希ガスと酸素との混合ガスを適宜用いる。さらには、該処理室の排気は、水の排気能力の高いクライオポンプまたは水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを用いるのが好ましい。
【0043】
また、下地絶縁層402及び非晶質酸化物半導体層404aは、大気に解放することなく連続的に成膜するのが好ましい。例えば、基板400表面に付着した水素を含む不純物を、熱処理またはプラズマ処理で除去した後、大気に解放することなく下地絶縁層402を形成し、続けて大気に解放することなく非晶質酸化物半導体層404aを形成してもよい。このようにすることで、下地絶縁層402の表面に付着する水素を含む不純物を低減し、また、基板400と下地絶縁層402との界面、及び、下地絶縁層402と非晶質酸化物半導体層404aとの界面に、大気成分が付着することを抑制できる。その結果、電気特性が良好で、信頼性の高いトランジスタ510を作製することができる。
【0044】
なお、非晶質酸化物半導体層404aをスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行い、下地絶縁層402の表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することが好ましい。逆スパッタリングとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0045】
次いで、非晶質酸化物半導体層404aに水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための熱処理(第1の熱処理)を行う。熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体層404aが結晶化しない温度とし、代表的には250℃以上450℃以下、好ましくは300℃以下とする。
【0046】
この熱処理によって、n型不純物である水素を酸化物半導体から除去し、不純物が極力含まれないように高純度化することができる。例えば、脱水化又は脱水素化処理後の非晶質酸化物半導体層404aに含まれる水素濃度を、5×1019/cm以下、あるいは5×1018/cm以下とすることができる。
【0047】
なお、脱水化又は脱水素化のための熱処理は、非晶質酸化物半導体層404aを島状に加工する前に行うと、下地絶縁層402に含まれる酸素が熱処理によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0048】
また、熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0049】
次いで、非晶質酸化物半導体層404aをフォトリソグラフィ工程により島状の非晶質酸化物半導体層404に加工する。なお、島状の非晶質酸化物半導体層404を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成すると、フォトマスクを使用しないため、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0050】
次いで、非晶質酸化物半導体層404上に、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を成膜し、これを加工してソース電極405a及びドレイン電極405bを形成する(図3(B)参照)。
【0051】
ソース電極405a及びドレイン電極405bに用いる導電膜としては、後の熱処理工程に耐えられる材料を用いる。例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としてもよい。また、ソース電極、及びドレイン電極に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成してもよい。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In−SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛(In−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0052】
なお、導電膜のエッチングの際に、非晶質酸化物半導体層404がエッチングされ、分断することのないようエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、非晶質酸化物半導体層404を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電膜のエッチングの際に非晶質酸化物半導体層404は一部がエッチングされ、溝部(凹部)を有する非晶質酸化物半導体層となることもある。
【0053】
次いで、ソース電極405a及びドレイン電極405bを覆い、非晶質酸化物半導体層404の一部と接するゲート絶縁層406を形成する。
【0054】
ゲート絶縁層406は、プラズマCVD法又はスパッタリング法を用いて成膜するのが好ましく、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜として形成することができる。または、ゲート絶縁層406の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネートなどのhigh−k材料を用いてもよい。これらのhigh−k材料を用いることで、ゲートリーク電流を低減できる。なお、ゲート絶縁層406は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0055】
なお、ゲート絶縁層406は酸素過剰領域を有すると、ゲート絶縁層406に含まれる過剰な酸素によって、非晶質酸化物半導体層404の酸素欠損を補填することが可能であるため好ましい。
【0056】
次いで、ゲート絶縁層406上から、非晶質酸化物半導体層404に酸素421を注入して、酸素過剰領域を形成する(図3(C)参照)。酸素421の注入処理によって、上述の脱水化又は脱水素化を目的とした熱処理によって同時に減少してしまう非晶質酸化物半導体層404中の酸素を供給することができる。これによって、非晶質酸化物半導体層404を高純度化及びi型(真性)化することができる。また、非晶質酸化物半導体層404に酸素過剰領域を形成することで、酸素欠損を補填することができる。これによって、非晶質酸化物半導体層404中の電荷捕獲中心を低減することができる。
【0057】
酸素421の注入方法としては、非晶質酸化物半導体層404中又は界面に酸素421を注入可能な方法を用いる。例えば、イオン注入法又はイオンドーピング法などを用いることができる。イオン注入法は、ソースガスをプラズマ化し、このプラズマに含まれるイオン種を引き出し、質量分離して、所定の質量を有するイオン種を加速して、イオンビームとして、被処理物に注入する方法である。また、イオンドーピング法は、ソースガスをプラズマ化し、所定の電界の作用によりプラズマからイオン種を引き出し、引き出したイオン種を質量分離せずに加速して、イオンビームとして被処理物に注入する方法である。質量分離を伴うイオン注入法を用いて酸素421の注入を行うことで、金属元素等の不純物が酸素421と共に非晶質酸化物半導体層404に添加されてしまうのを防ぐことができる。また、イオンドーピング法はイオン注入法に比べてイオンビームの照射される面積を大きくすることができるので、イオンドーピング法を用いて酸素421の注入を行うことで、タクトタイムを短縮することができる。
【0058】
または、酸素421の注入方法として、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法を用いてもよい。プラズマイマージョンイオンインプランテーション法は、非晶質酸化物半導体層404が凹凸のある形状であっても酸素421の注入を効率よく行うことができる。
【0059】
なお、本実施の形態においては、ゲート絶縁層406を通過して非晶質酸化物半導体層404に酸素421を注入する例を示す。非晶質酸化物半導体層404への酸素421の注入を、非晶質酸化物半導体層404に積層された膜越しに行うと、酸素の注入深さ(注入領域)がより制御しやすくなるため、非晶質酸化物半導体層404中へ酸素421を効率よく注入できるという利点がある。ただし、本発明の実施の形態はこれに限られず、非晶質酸化物半導体層404の表面が露出した状態(すなわち、ソース電極405a及びドレイン電極405bとなる導電膜を形成する前)または、絶縁層412成膜後に行うことも可能である。
【0060】
酸素421の注入深さは、加速電圧、ドーズ量などの注入条件、また通過させるゲート絶縁層406の膜厚を適宜設定して制御すればよい。酸素注入処理によって非晶質酸化物半導体層404の酸素の含有量を、その化学量論的組成比を超える程度とする。例えば、酸素注入処理によって導入された非晶質酸化物半導体層404における酸素濃度のピークを1×1018/cm以上5×1021/cm以下とするのが好ましい。注入される酸素421は、酸素ラジカル、酸素原子、及び/又は酸素イオンを含む。なお、酸素過剰領域は、非晶質酸化物半導体層404の一部(界面も含む)に存在していればよい。
【0061】
なお、酸化物半導体において、酸素は主たる成分の一つである。このため、酸化物半導体膜中の酸素濃度を、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などの方法を用いて、正確に見積もることは難しい。つまり、非晶質酸化物半導体層に酸素が意図的に添加されたか否かを判別することは困難であるといえる。
【0062】
ところで、酸素には17Oや18Oといった同位体が存在し、自然界におけるこれらの存在比率はそれぞれ酸素原子全体の0.037%、0.204%であることが知られている。つまり、非晶質酸化物半導体層中におけるこれら同位体の濃度は、SIMSなどの方法によって見積もることができる程度になるから、これらの濃度を測定することで、非晶質酸化物半導体層中の酸素濃度をより正確に見積もることが可能な場合がある。よって、これらの濃度を測定することで、非晶質酸化物半導体層に意図的に酸素が添加されたか否かを判別してもよい。
【0063】
また、非晶質酸化物半導体層404に添加される(含まれる)酸素421の一部は酸素の未結合手を酸化物半導体中で有していてもよい。未結合手を有することにより、膜中に残存しうる水素と結合して、水素を固定化(非可動イオン化)することができるためである。
【0064】
次いで、ゲート絶縁層406上にゲート電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を成膜し、これを加工してゲート電極410を形成する。ゲート電極410は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極410としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極410は、単層構造としてもよいし積層構造としてもよい。
【0065】
次いで、ゲート電極410を覆う絶縁層412を形成する(図3(D)参照)。絶縁層412としては、酸化アルミニウム膜を含む層を用いることができる。すなわち絶縁層412は酸化アルミニウムを含む。酸化アルミニウム膜は、水分、酸素、その他の不純物を透過させにくいというバリア機能を有している。したがって、非晶質酸化物半導体層404上に酸化アルミニウム膜を設けることで、該酸化アルミニウム膜がパッシベーション膜として機能して、デバイス完成後に水分等の不純物が外部より非晶質酸化物半導体層404へ侵入するのを防ぐことができる。また、非晶質酸化物半導体層404より酸素が放出されるのを防ぐことができる。
【0066】
また、絶縁層412を、酸素過剰領域を有する酸化物絶縁膜(例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等)と、酸化アルミニウム膜と、の積層構造としてもよい。
【0067】
絶縁層412は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタ法など、絶縁層412に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。絶縁層412に水素が含まれると、その水素の非晶質酸化物半導体層404への侵入、又は水素による非晶質酸化物半導体層404中の酸素の引き抜き、が生じるおそれがある。よって、絶縁層412はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。絶縁層412を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基を有する化合物又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0068】
絶縁層412成膜後には、熱処理(第2の熱処理)を行う。熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体層404が結晶化しない温度とし、好ましくは250℃以上450℃以下とする。該熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0069】
酸素注入処理後の熱処理(第2の熱処理)のタイミングは、本実施の形態の構成に限定されないが、該熱処理は、少なくとも絶縁層412の成膜後に行う必要がある。絶縁層412として用いる酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高く、絶縁層412を成膜後に熱処理を行うことで、非晶質酸化物半導体層404からの酸素の放出を防止することができるためである。
【0070】
なお、第2の熱処理によって、酸素を、非晶質酸化物半導体層404と接し、酸素を含有する絶縁膜(例えば、ゲート絶縁層406または下地絶縁層402)より非晶質酸化物半導体層404へ供給してもよい。
【0071】
以上の工程でトランジスタ510が形成される(図3(D)参照)。トランジスタ510は、脱水化または脱水素化を目的とする熱処理によって、水素、水、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を非晶質酸化物半導体層より意図的に排除し、その後の酸素注入処理によって、脱水化又は脱水素化を目的とする熱処理によって同時に減少してしまう酸素を非晶質酸化物半導体層に供給することができる。これによって、非晶質酸化物半導体層を高純度化及びi型(真性)化することができる。
【0072】
また、酸素注入処理によって酸素過剰領域を作製することで、非晶質酸化物半導体層中または界面における酸素欠損の形成を抑制し、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中のドナー準位を低減する、又は実質的になくすことができる。よって、トランジスタ510は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。また、非晶質酸化物半導体層は、全体に渡って非晶質構造を有するため、膜の一部のみが結晶化した酸化物半導体層と比較して膜質の均一性が高い。
【0073】
本実施の形態によって安定した電気的特性を有する非晶質酸化物半導体を含有する半導体装置を提供することができる。また、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0074】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0075】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1とは異なるトランジスタ510の作製方法について、図4(A)乃至図4(D)を参照して説明する。なお、実施の形態1と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、実施の形態1と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0076】
まず、絶縁表面を有する基板400上に下地絶縁層402を形成した後、下地絶縁層402に接して酸化物半導体層401aを形成する(図4(A)参照)。
【0077】
本実施の形態において、酸化物半導体層401aとしては、実施の形態1で示した材料と同様の材料を用いて成膜することができる。また、酸化物半導体層401aは、非晶質構造であってもよいし、結晶領域を有していてもよい。
【0078】
スパッタリング法により酸化物半導体層401aを形成する際、できる限り酸化物半導体層401aに含まれる水素濃度を低減させることが好ましい。水素濃度を低減させるには、スパッタリング装置の処理室内に供給する雰囲気ガスとして、水素、水、水酸基を有する化合物または水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、および希ガスと酸素との混合ガスを適宜用いる。
【0079】
また、基板400を高温に保持した状態で酸化物半導体層401aを形成することも、酸化物半導体層401a中に含まれうる不純物濃度を低減されるのに有効である。基板400を加熱する温度としては、150℃以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が200℃以上350℃以下とすればよい。ただし、成膜時に基板を高温で加熱することで、結晶領域を有する酸化物半導体層が形成される。
【0080】
本実施の形態では、成膜時に基板を加熱することで、少なくとも一部に結晶領域を有する酸化物半導体層401aを形成するものとする。
【0081】
次いで、成膜した酸化物半導体層401aに脱水化または脱水素化を目的とした熱処理(第1の熱処理)を行う。本実施の形態において、第1の熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。第1の熱処理の温度が高温(例えば、400℃より高い温度)であると、酸化物半導体層401aからの不純物の脱離が促進されるため好ましい。なお、第1の熱処理の温度が高温であると、酸化物半導体層401aが一部結晶化する、あるいは結晶領域が拡大しうる。
【0082】
次いで、酸化物半導体層401aに酸素421を注入する。酸素421の注入は実施の形態1と同様に行うことができる。当該酸素注入処理によって、酸化物半導体層401a中に含まれる結晶構造が破壊されて非晶質化して、酸素過剰領域を有する非晶質酸化物半導体層404aが形成される(図4(B)参照)。
【0083】
酸素421の注入処理によって、上述の脱水化又は脱水素化を目的とした熱処理によって同時に減少してしまう非晶質酸化物半導体層404aの酸素を供給することができる。これによって、非晶質酸化物半導体層404aを高純度化及びi型(真性)化することができる。また、非晶質酸化物半導体層404aに酸素過剰領域を形成することで、膜中の酸素欠損を補填することができる。これによって、非晶質酸化物半導体層404a中の電荷捕獲中心を低減することができる。
【0084】
なお、本実施の形態においては、酸化物半導体層401aの表面が露出した状態で酸素421を注入する例を示す。ただし、本発明の実施の形態はこれに限られず、ゲート絶縁層406または絶縁層412を通過して非晶質酸化物半導体層404に酸素の注入を行うことも可能である。
【0085】
次いで、非晶質酸化物半導体層404aをフォトリソグラフィ工程により島状の非晶質酸化物半導体層404に加工する。非晶質酸化物半導体層404上に、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を成膜し、これを加工してソース電極405a及びドレイン電極405bを形成する。
【0086】
次いで、ソース電極405a及びドレイン電極405bを覆い、非晶質酸化物半導体層404の一部と接するゲート絶縁層406を形成する(図4(C)参照)。
【0087】
次いで、ゲート絶縁層406上にゲート電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を成膜し、これを加工してゲート電極410を形成する。その後、ゲート電極410を覆う絶縁層412を形成する(図4(D)参照)。
【0088】
絶縁層412成膜後には、熱処理(第2の熱処理)を行う。熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体層404が結晶化しない温度とし、好ましくは250℃以上450℃以下とする。
【0089】
以上の工程でトランジスタ510が形成される(図4(D)参照)。トランジスタ510は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0090】
本実施の形態によって安定した電気的特性を有する非晶質酸化物半導体を含有する半導体装置を提供することができる。また、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0091】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0092】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図5乃至図7を用いて説明する。なお、先の実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、先の実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0093】
図5に、半導体装置の例として、ボトムゲート型のトランジスタ530の断面図及び平面図を示す。図5(A)は平面図であり、図5(B)及び図5(C)は、図5(A)におけるI−J断面及びK−L断面に係る断面図である。なお、図5(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ530の構成要素の一部(例えば、絶縁層412など)を省略している。
【0094】
図5に示すトランジスタ530は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極410、ゲート絶縁層406、非晶質酸化物半導体層404、ソース電極405a、ドレイン電極405b及び絶縁層412を含む。
【0095】
図5に示すトランジスタ530において、非晶質酸化物半導体層404は、酸素注入処理が行われており、酸素過剰領域を有する。酸素注入処理を行うことにより、非晶質酸化物半導体層404に十分な量の酸素を含有させることができるので、信頼性が高められたトランジスタ530が実現する。
【0096】
また、図5に示すトランジスタ530において、非晶質酸化物半導体層404と接する絶縁層であるゲート絶縁層406は、酸素過剰領域を有するのが好ましい。ゲート絶縁層406が酸素過剰領域を有していると、非晶質酸化物半導体層404からゲート絶縁層406への酸素の移動を防ぐことができ、且つ、ゲート絶縁層406から非晶質酸化物半導体層404への酸素の供給を行うこともできるためである。
【0097】
また、同様に、絶縁層412は、非晶質酸化物半導体層404と接し、且つ酸素過剰領域を有する酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等の酸化物絶縁膜と、酸化アルミニウム膜と、の積層構造とするのが好ましい。酸化物絶縁膜が酸素過剰領域を有することで、酸化物絶縁膜に含まれる過剰な酸素によって、非晶質酸化物半導体層404の酸素欠損を補填することが可能である。
【0098】
図6に、本実施の形態に係るトランジスタの別の構成例を示す。図6(A)はトランジスタ540の平面図であり、図6(B)及び図6(C)は、図6(A)におけるM−N断面及びO−P断面に係る断面図である。なお、図6(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ540の構成要素の一部(例えば、絶縁層412など)を省略している。
【0099】
図6に示すトランジスタ540は、図5に示すトランジスタ530と同様に、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極410、ゲート絶縁層406、非晶質酸化物半導体層404、ソース電極405a、ドレイン電極405b及び絶縁層412を含む。
【0100】
図6に示すトランジスタ540と図5に示すトランジスタ530との相違点は、ソース電極405a及びドレイン電極405bと、非晶質酸化物半導体層404との積層順である。すなわち、トランジスタ540は、ゲート絶縁層406に接するソース電極405a及びドレイン電極405bと、ソース電極405a及びドレイン電極405b上に設けられ、ゲート絶縁層406と少なくとも一部が接する非晶質酸化物半導体層404と、を有する。その他の構成は、トランジスタ530と同様であり、詳細については、トランジスタ530についての説明を参酌することができる。
【0101】
図7(A)乃至図7(D)にトランジスタ530の作製方法の一例を示す。なお、トランジスタ540は、ソース電極405a及びドレイン電極405bと、非晶質酸化物半導体層404との積層順以外は、トランジスタ530と同様の工程で作製することができる。
【0102】
まず、絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程によりゲート電極410を形成する。
【0103】
なお、下地膜となる絶縁層を基板400とゲート電極410との間に設けてもよい。下地膜は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0104】
次いで、ゲート電極410上にゲート絶縁層406を形成し、ゲート絶縁層406上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の非晶質酸化物半導体層404aを形成する(図7(A)参照)。非晶質酸化物半導体層404aの成膜は、図3(A)に示した工程と同様に行うことができる。
【0105】
なお、ゲート絶縁層406及び非晶質酸化物半導体層404aは、大気に解放することなく連続的に成膜するのが好ましい。例えば、基板400表面及びゲート電極410表面に付着した水素を含む不純物を、熱処理またはプラズマ処理で除去した後、大気に解放することなくゲート絶縁層406を形成し、続けて大気に解放することなく非晶質酸化物半導体層404aを形成してもよい。このようにすることで、ゲート絶縁層406の表面に付着した水素を含む不純物を低減し、また、基板400またはゲート電極410とゲート絶縁層406との界面、及び、ゲート絶縁層406と非晶質酸化物半導体層404aとの界面に、大気成分が付着することを抑制できる。その結果、電気特性が良好で、信頼性の高いトランジスタ530を作製することができる。なお、下地膜となる絶縁層を形成する場合も同様に、該絶縁層、ゲート絶縁層406及び非晶質酸化物半導体層404aは、大気に解放することなく連続的に成膜するのが好ましい。
【0106】
次いで、非晶質酸化物半導体層404aに対し、水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための熱処理(第1の熱処理)を行う。熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体層404aが結晶化しない温度とし、代表的には250℃以上450℃以下、好ましくは300℃以下とする。
【0107】
次いで、非晶質酸化物半導体層404aに酸素421を注入する(図7(B)参照)。酸素421の注入は実施の形態1と同様に行うことができる。また、本実施の形態においては、非晶質酸化物半導体層404aの表面が露出した状態で酸素421の注入処理を行うため、上述の注入方法に代えて、酸素421をプラズマ化した雰囲気中に非晶質酸化物半導体層404aを曝すプラズマ処理を適用してもよい。または、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0108】
酸素421の注入処理によって、上述の脱水化又は脱水素化を目的とした熱処理によって同時に減少してしまう酸素を非晶質酸化物半導体層404aに供給することができる。これによって、非晶質酸化物半導体層404aを高純度化及びi型(真性)化することができる。また、非晶質酸化物半導体層404aに酸素過剰領域を形成することで、酸素欠損を補填することができる。これによって、非晶質酸化物半導体層404a中の電荷捕獲中心を低減することができる。
【0109】
なお、本実施の形態においては、非晶質酸化物半導体層404aの表面が露出した状態で酸素421を注入する例を示す。ただし、本発明の実施の形態はこれに限られず、絶縁層412を通過して非晶質酸化物半導体層404に酸素の注入を行うことも可能である。
【0110】
次いで、非晶質酸化物半導体層404aをフォトリソグラフィ工程により島状の非晶質酸化物半導体層404に加工する。その後、非晶質酸化物半導体層404上に、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を成膜し、これを加工してソース電極405a及びドレイン電極405bを形成する(図7(C)参照)。
【0111】
次いで、ソース電極405a及びドレイン電極405bを覆う絶縁層412を形成する(図7(D)参照)。
【0112】
絶縁層412成膜後には、熱処理(第2の熱処理)を行う。熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体層404が結晶化しない温度とし、好ましくは250℃以上450℃以下とする。
【0113】
以上の工程でトランジスタ530が形成される(図7(D)参照)。トランジスタ530は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0114】
本実施の形態によって安定した電気的特性を有する非晶質酸化物半導体を含有する半導体装置を提供することができる。また、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0115】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0116】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3とは異なるトランジスタ530の作製方法について、図8(A)乃至図8(D)を参照して説明する。なお、先の実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、先の実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0117】
まず、絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程によりゲート電極410を形成する。次いで、ゲート電極410上にゲート絶縁層406を形成し、ゲート絶縁層406上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の酸化物半導体層401aを形成する(図8(A)参照)。酸化物半導体層401aの成膜は、図4(A)に示した工程と同様に行うことができる。酸化物半導体層401aは、非晶質構造であってもよいし、結晶領域を有していてもよい。
【0118】
本実施の形態では、成膜時に基板を加熱することで、少なくとも一部に結晶領域を有する酸化物半導体層401aを形成するものとする。
【0119】
次いで、成膜した酸化物半導体層401aに脱水化または脱水素化を目的とした熱処理(第1の熱処理)を行う。本実施の形態において、第1の熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。第1の熱処理の温度が高温(例えば、400℃より高い温度)であると、酸化物半導体層401aからの不純物の脱離が促進されるため好ましい。なお、第1の熱処理の温度が高温であると、酸化物半導体層401aが一部結晶化する、あるいは結晶領域が拡大しうる。
【0120】
次いで、酸化物半導体層401aをフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層401に加工する。その後、酸化物半導体層401上に、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を成膜し、これを加工してソース電極405a及びドレイン電極405bを形成する。
【0121】
次いで、ソース電極405a及びドレイン電極405bを覆い、酸化物半導体層401の一部と接する絶縁層412を形成する(図8(B)参照)。
【0122】
次いで、絶縁層412を通過して、酸化物半導体層401に酸素421を注入する(図8(C)参照)。当該酸素注入処理によって、酸化物半導体層401中に含まれる結晶構造が破壊されて非晶質化し、酸素過剰領域を有する非晶質酸化物半導体層404が形成される。
【0123】
酸素421の注入処理によって、上述の脱水化又は脱水素化を目的とした熱処理によって同時に減少してしまう酸素を非晶質酸化物半導体層404に供給することができる。これによって、非晶質酸化物半導体層404を高純度化及びi型(真性)化することができる。また、非晶質酸化物半導体層404に酸素過剰領域を形成することで、膜中の酸素欠損を補填することができる。これによって、非晶質酸化物半導体層404中の電荷捕獲中心を低減することができる。
【0124】
酸素421を注入した後には、熱処理(第2の熱処理)を行う。熱処理の温度は、非晶質酸化物半導体層404が結晶化しない温度とし、好ましくは250℃以上450℃以下とする。
【0125】
以上の工程でトランジスタ530が形成される(図8(D)参照)。トランジスタ530は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0126】
本実施の形態によって安定した電気的特性を有する非晶質酸化物半導体を含有する半導体装置を提供することができる。また、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0127】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0128】
(実施の形態5)
実施の形態1乃至実施の形態4で例示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0129】
図9(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図9(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また信号線駆動回路4003と走査線駆動回路4004を通して画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0130】
図9(B)及び図9(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図9(B)及び図9(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図9(B)及び図9(C)においては、信号線駆動回路4003と走査線駆動回路4004を通して画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0131】
また図9(B)及び図9(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0132】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図9(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図9(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図9(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0133】
なお、表示装置とは、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0134】
すなわち、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、表示素子が封止された状態にあるパネルだけでなく、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0135】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1乃至実施の形態4で例示したトランジスタを適用することができる。
【0136】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インク表示装置(電子ペーパー)など、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0137】
半導体装置の一形態について、図10乃至図12を用いて説明する。図10乃至図12は、図9(B)のQ−Rにおける断面図に相当する。
【0138】
図10乃至図12で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0139】
接続端子電極4015は、第1の電極4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極及びドレイン電極と同じ導電膜で形成されている。
【0140】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図10乃至図12では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図10乃至図12では、トランジスタ4010、4011上には絶縁層4020、絶縁層4024が設けられ、図11及び図12ではさらに、絶縁層4021が設けられている。なお、図10乃至図12における絶縁層4023は下地膜として機能する絶縁層である。
【0141】
トランジスタ4010、トランジスタ4011として、実施の形態1乃至実施の形態4で示したトランジスタを適用することができる。
【0142】
トランジスタ4010及びトランジスタ4011は高純度化し、酸素過剰領域を含む非晶質酸化物半導体層を有するトランジスタである。よって、トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0143】
よって、図10乃至図12で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0144】
また、本実施の形態では、絶縁層上において駆動回路用のトランジスタ4011の非晶質酸化物半導体層のチャネル形成領域と重なる位置に導電層4037が設けられている。これによって、トランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低減することができる。また、導電層4037は、電位がトランジスタ4011のゲート電極4039と同じでもよいし、異なっていてもよく、第2のゲート電極として機能させることもできる。また、導電層4037の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0145】
また、該導電層4037は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(薄膜トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。導電層4037の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタ4011の電気的な特性が変動することを防止することができる。
【0146】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0147】
図10に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図10において、液晶素子4013は、第1の電極4030、第2の電極4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁層4032、絶縁層4033が設けられている。第2の電極4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極4030と第2の電極4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0148】
また4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
【0149】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶は低分子化合物でも高分子化合物でも良い。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0150】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0151】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0152】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部4002に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。高純度且つ酸素過剰領域を有する非晶質酸化物半導体層を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0153】
本実施の形態で用いる高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した非晶質酸化物半導体層を有するトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0154】
また、本実施の形態で用いる高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した非晶質酸化物半導体層を有するトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このようなトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。また、画素部においても、このようなトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0155】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0156】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASVモードなどを用いることができる。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0157】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0158】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0159】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0160】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0161】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0162】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0163】
図11に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお図11に示した発光素子4513の構成は、第1の電極4030、電界発光層4511、第2の電極4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0164】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0165】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0166】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0167】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート共重合体)を用いることができる。
【0168】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0169】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)も呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0170】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0171】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものである。カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0172】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極である第1の電極及び第2の電極の間に配置し、第1の電極及び第2の電極に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0173】
図12に、半導体装置の一形態としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。図12の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。
【0174】
トランジスタ4010と接続する第1の電極4030と、第2の基板4006に設けられた第2の電極4031との間には黒色領域4615a及び白色領域4615bを有し、周りに液体で満たされているキャビティ4612を含む球形粒子4613が設けられており、球形粒子4613の周囲は樹脂等の充填材4614で充填されている。第2の電極4031が共通電極(対向電極)に相当する。第2の電極4031は、共通電位線と電気的に接続される。
【0175】
なお、図10乃至図12において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0176】
本実施の形態では、絶縁層4020として酸化シリコン膜を用い、絶縁層4024として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁層4020、絶縁層4024はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。非晶質酸化物半導体層と接する絶縁層4020は、酸素過剰領域を有するのが好ましい。
【0177】
非晶質酸化物半導体層上に絶縁層4024として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0178】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の非晶質酸化物半導体層への混入、及び非晶質酸化物半導体層からの酸素の放出を防止する保護膜として機能する。
【0179】
トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、酸素過剰領域を有することで酸素欠損の形成を抑制し、且つ高純度化した非晶質酸化物半導体層を有する。また、トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、ゲート絶縁層として酸化シリコン膜を有する。トランジスタ4010及びトランジスタ4011に含まれる非晶質酸化物半導体層は、酸素注入処理により化学量論的組成比よりも過剰な酸素を有する領域を形成し、注入後の加熱処理を、非晶質酸化物半導体層上に、絶縁層4024として酸化アルミニウム膜または酸化アルミニウム膜を含む膜が設けられた状態で行うため、該加熱処理によって非晶質酸化物半導体層から酸素が放出されることを防止することができる。よって、得られる非晶質酸化物半導体層は、化学量論的組成比よりも酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0180】
また、トランジスタ4010及びトランジスタ4011に含まれる非晶質酸化物半導体層は、脱水化または脱水素化され、且つ酸素欠損を補填された高純度な膜である。よって、該非晶質酸化物半導体層をトランジスタ4010及びトランジスタ4011に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつきを低減し、しきい値電圧のシフトを抑制することができる。
【0181】
また、平坦化絶縁層として機能する絶縁層4021は、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の低誘電率材料(low−k材料)を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層4021を形成してもよい。
【0182】
絶縁層4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、スクリーン印刷、オフセット印刷等を用いることができる。
【0183】
第1の電極4030、第2の電極4031は、例えば酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0184】
また、第1の電極4030、第2の電極4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0185】
また、第1の電極4030、第2の電極4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0186】
また、駆動回路保護用の保護回路を設けても良い。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0187】
以上のように実施の形態1乃至実施の形態4で示したトランジスタを適用することで、様々な機能を有する半導体装置を提供することができる。
【0188】
(実施の形態6)
実施の形態1乃至実施の形態4で例示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0189】
図13(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図13(A)はフォトセンサの等価回路であり、図13(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0190】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0191】
なお、本明細書における回路図において、非晶質酸化物半導体層を含有するトランジスタと明確に判明できるように、非晶質酸化物半導体層を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。図13(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は実施の形態1乃至実施の形態4でトランジスタに示すような酸素注入処理によって酸素過剰領域を形成した非晶質酸化物半導体層を含有するトランジスタである。
【0192】
図13(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640を示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0193】
トランジスタ640上には絶縁層631、絶縁層632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634が設けられている。フォトダイオード602は、層間絶縁膜633上に設けられ、層間絶縁膜633上に形成した電極641a及び電極641bと、層間絶縁膜634上に設けられた電極642との間に、層間絶縁膜633側から順に第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cを積層した構造を有している。
【0194】
電極641bは、層間絶縁膜634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極642は電極641aを介して電極645と電気的に接続している。電極645は、トランジスタ640のゲート電極と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0195】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜606bとして高抵抗な半導体膜(i型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0196】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0197】
第2半導体膜606bは、i型半導体膜(真性半導体膜)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行っても良い。第2半導体膜606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0198】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0199】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半導体を用いて形成してもよい。
【0200】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、熱力学的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0201】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH、Si、SiHCl、SiHClなどの水素化珪素を水素で希釈して形成することができる。また、水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で水素化珪素を希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの水素化珪素に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH、C等の炭化水素気体、GeH、GeF等のゲルマニウム化気体、F等を混入させてもよい。
【0202】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0203】
絶縁層632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、スクリーン印刷、オフセット印刷等を用いて形成することができる。
【0204】
本実施の形態では、絶縁層631として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁層631はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0205】
非晶質酸化物半導体層上に絶縁層631として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0206】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の非晶質酸化物半導体層への混入、及び非晶質酸化物半導体層からの酸素の放出を防止する保護膜として機能する。
【0207】
本実施の形態において、トランジスタ640は、酸素過剰領域を有することによって酸素欠損の形成を抑制し、且つ高純度化した非晶質酸化物半導体層を有する。また、トランジスタ640は、ゲート絶縁層として酸化シリコン膜を有する。トランジスタ640に含まれる非晶質酸化物半導体層は、酸素注入処理により化学量論的組成比よりも過剰な酸素を有する領域を形成し、注入後の加熱処理を、非晶質酸化物半導体層上に、絶縁層631として酸化アルミニウム膜が設けられた状態で行うため、該加熱処理によって非晶質酸化物半導体層から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる非晶質酸化物半導体層は、化学量論的組成比よりも酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0208】
また、トランジスタ640に含まれる非晶質酸化物半導体層は、非晶質酸化物半導体層成膜後の加熱処理によって、脱水化または脱水素化された高純度な膜である。よって、該非晶質酸化物半導体層をトランジスタ640に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつきを低減し、しきい値電圧のシフトを抑制することができる。
【0209】
絶縁層632としては、無機絶縁材料としては、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁膜、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウム層などの窒化物絶縁膜の単層、又は積層を用いることができる。
【0210】
層間絶縁膜633、634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁層として機能する絶縁層が好ましい。層間絶縁膜633、634としては、例えばポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の低誘電率材料(low−k材料)の単層、又は積層を用いることができる。
【0211】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0212】
以上のように、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む非晶質酸化物半導体層を有するトランジスタは、トランジスタの電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、該トランジスタを用いることで信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0213】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0214】
(実施の形態7)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0215】
図14(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部3003に適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0216】
図14(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部3023に適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0217】
図14(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0218】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図14(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図14(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部2705、表示部2707に適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。表示部2705として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想されるため、太陽電池を設け、太陽電池による発電、及びバッテリーでの充電を行えるようにしてもよい。なおバッテリーとしては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0219】
また、図14(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカー2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0220】
また、電子書籍は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0221】
図14(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯型情報端末の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示パネル2802に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0222】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図14(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0223】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図14(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0224】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0225】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0226】
図14(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部(A)3057、表示部(B)3055に適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0227】
図14(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部9603に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置とすることができる。
【0228】
テレビジョン装置の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0229】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0230】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0231】
本実施例では、開示する発明に係る半導体装置において用いる酸化アルミニウム膜のバリア膜としての特性について評価を行った。図15乃至図18に結果を示す。評価方法としては、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)と、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorption Spectrometry)を用いた。
【0232】
まず、SIMS分析による評価を示す。試料は、比較例としてガラス基板上にスパッタリング法による酸化シリコン膜が膜厚100nm形成された比較例試料Aと、ガラス基板上にスパッタリング法により酸化シリコン膜が膜厚100nm形成され、酸化シリコン膜上にスパッタリング法により酸化アルミニウム膜が膜厚100nm形成された実施例試料Aを作製した。
【0233】
比較例試料A及び実施例試料Aにおいて、酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、酸素(酸素流量50sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0234】
実施例試料Aにおいて、酸化アルミニウム膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度250℃とした。
【0235】
比較例試料A及び実施例試料Aにプレッシャークッカー試験(PCT:Pressure Cooker Test)を行った。本実施例ではPCT試験として、温度130℃、湿度85%、HO(水):DO(重水)=3:1雰囲気、2.3気圧(0.23MPa)の条件で比較例試料A及び実施例試料Aを100時間保持した。
【0236】
SIMS分析としてSSDP(Substrate Side Depth Profile)−SIMSを用いて、PCT試験前とPCT試験後の比較例試料A及び実施例試料Aに対して、各試料のH原子及びD(重水素)原子の濃度を測定した。
【0237】
図15(A1)に比較例試料AのPCT試験前、図15(A2)に比較例試料AのPCT試験後のSIMS分析によるH原子及びD原子の濃度プロファイルを示す。図15(A1)及び図15(A2)において、予測されるD原子濃度(D expected)プロファイルは、D原子の存在比が0.015%としてH原子のプロファイルから算出した濃度プロファイルである。よって、PCT試験によって試料中に混入したD原子量は、実測のD原子濃度(D profile)と、予測されるD原子濃度(D expected)との差分となる。実測のD原子濃度から、予測されるD原子濃度を差し引いた、PCT試験前のD原子の濃度プロファイルを図15(B1)に、PCT試験後のD原子の濃度プロファイルを図15(B2)に示す。
【0238】
同様に、図16(A1)に実施例試料AのPCT試験前のSIMSによるH原子及びD原子の濃度プロファイルを、図16(A2)に実施例試料AのPCT試験後のSIMSによるH原子及びD原子の濃度プロファイルを示す。また、実測のD原子濃度から、予測されるD原子濃度を差し引いた、PCT試験前D原子の濃度プロファイルを図16(B1)に、PCT試験後の濃度プロファイルを図16(B2)に示す。
【0239】
なお、本実施例のSIMS分析結果は、すべて酸化シリコン膜の標準試料により定量した結果を示している。
【0240】
図15に示すように、PCT試験前は重なっていた実測のD原子の濃度プロファイルと予測されるD原子濃度プロファイルが、PCT試験後は実測のD原子の濃度プロファイルが高濃度に増大しており、酸化シリコン膜中にD原子が混入したことがわかる。従って、比較例試料の酸化シリコン膜は、外部からの水分(HO、DO)に対し、バリア性が低いことが確認された。
【0241】
一方、図16に示すように、酸化シリコン膜上に酸化アルミニウム膜を積層した実施例試料Aは、PCT試験後でも酸化アルミニウム膜表面にややD原子の侵入が見られるだけで、酸化アルミニウム膜深さ30nm付近以降、及び酸化シリコン膜にはD原子の侵入が見られない。従って、酸化アルミニウム膜は外部からの水分(HO、DO)に対し、バリア性が高いことが確認された。
【0242】
次に、TDS分析によって行った評価を示す。試料は、実施例試料として、ガラス基板上にスパッタリング法により酸化シリコン膜が膜厚100nm形成され、酸化シリコン膜上にスパッタリング法により酸化アルミニウム膜が膜厚20nm形成された実施例試料Bを作製した。また、比較例として、実施例試料BをTDS分析によって測定後、実施例試料Bから酸化アルミニウム膜を除去し、ガラス基板上に酸化シリコン膜のみが形成された比較例試料Bを作製した。
【0243】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、酸素(酸素流量50sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0244】
実施例試料Bにおいて、酸化アルミニウム膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源1.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度250℃とした。
【0245】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、さらに300℃熱処理、450℃熱処理、600℃熱処理の条件で、それぞれ窒素雰囲気下で1時間処理を行った。
【0246】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、熱処理なし、300℃熱処理、450℃熱処理、600℃熱処理と4つの条件で作製された試料にそれぞれTDS分析を行った。比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、図17(A)及び図18(A)に熱処理なし、図17(B)及び図18(B)に300℃熱処理、図17(C)及び図18(C)に450℃熱処理、図17(D)及び図18(D)に600℃熱処理を行った各試料の測定されたM/z=32(O)のTDS分析結果を示す。
【0247】
図17(A)乃至(D)に示すように、比較例試料Bは熱処理なしの図17(A)では酸化シリコン膜から酸素の放出が見られるが、図17(B)の300℃熱処理を行った試料では酸素の放出量が大きく減少し、図17(C)の450℃熱処理を行った試料及び図17(D)の600℃熱処理を行った試料においては、TDS測定のバックグラウンド以下であった。
【0248】
図17(A)乃至(D)の結果から、酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素の9割以上が300℃の熱処理によって酸化シリコン膜中から外部へ放出され、450℃、600℃の熱処理によってはほぼ全ての酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素が酸化シリコン膜外部へ放出されたことがわかる。従って、酸化シリコン膜は酸素に対するバリア性が低いことが確認できた。
【0249】
一方、図18(A)乃至(D)に示すように、酸化シリコン膜上に酸化アルミニウム膜を形成した実施例試料Bにおいては、300℃、450℃、600℃の熱処理を行った試料においても、熱処理なしの試料と同等の量の酸素の放出が見られた。
【0250】
図18(A)乃至(D)の結果から、酸化アルミニウム膜を酸化シリコン膜上に形成することで、熱処理を行っても酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素は容易に外部へ放出されず、酸化シリコン膜中に含有した状態がかなりの程度保持されることがわかる。従って酸化アルミニウム膜は酸素に対するバリア性が高いことが確認できた。
【0251】
以上の結果から、酸化アルミニウム膜は水素及び水分に対するバリア性と、酸素に対するバリア性の両方を有しており、水素、水分、及び酸素に対するバリア膜として好適に機能することが確認できた。
【0252】
従って、酸化アルミニウム膜は、非晶質酸化物半導体層を含むトランジスタの作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の非晶質酸化物半導体層への混入、及び非晶質酸化物半導体層から酸素の放出を防止する保護膜として機能することができる。
【0253】
従って、形成される非晶質酸化物半導体層は、水素、水分などの不純物が混入しないため高純度であり、酸素放出が防止されるため非晶質酸化物半導体層が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。よって、該非晶質酸化物半導体層をトランジスタに用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつきを低減し、しきい値電圧のシフトを抑制することができる。
【実施例2】
【0254】
本実施例では、酸化物半導体層の結晶状態について観察を行った。
【0255】
試料として、ガラス基板上にスパッタリング法により酸化シリコン膜を膜厚300nm形成し、酸化シリコン膜上にスパッタリング法によりIn−Ga−Zn−O膜を膜厚100nm形成し、In−Ga−Zn−O膜上にスパッタリング法により酸化アルミニウム膜を膜厚100nm形成した実施例試料C1を作製した。
【0256】
酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、RF電源1.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0257】
また、In−Ga−Zn−O膜の成膜条件は、組成比としてIn:Ga:ZnO=1:1:2[mol比]の酸化物ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットとの間の距離を60mm、圧力0.4Pa、RF電源0.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量30sccm:酸素流量15sccm)雰囲気下、基板温度250℃とした。
【0258】
なお、酸化シリコン膜及びIn−Ga−Zn−O膜は大気に解放せずに連続成膜し、その後減圧雰囲気下、400℃で30分間熱処理(第1の熱処理)を行った。
【0259】
その後、酸化アルミニウム膜を以下の条件で成膜した。具体的には、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、RF電源2.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度250℃とした。
【0260】
次に、実施例試料C1の酸化アルミニウム膜を通過して、In−Ga−Zn−O膜に酸素を注入し、実施例試料C2を作製した。実施例試料C2においては、イオン注入法によりIn−Ga−Zn−O膜に、酸化アルミニウム膜を通過して、酸素(18O)イオンを注入した。酸素(18O)イオンの注入条件は加速電圧80kV、ドーズ量を1.0×1016ions/cmとした。
【0261】
また、実施例試料C2に対して、窒素雰囲気下、450℃で1時間熱処理(第2の熱処理)を行い、実施例試料C3を作製した。
【0262】
以上の工程で得られた実施例試料C1乃至C3の端面を切り出し、高分解能透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー製「H9000−NAR」:TEM)で加速電圧を300kVとし、In−Ga−Zn−O膜の断面観察を行った。図19(A)乃至図19(C)に実施例試料C1乃至C3のTEM像を示す。
【0263】
図19(A)に実施例試料C1のIn−Ga−Zn−O膜と酸化アルミニウム膜との界面における倍率800万倍のTEM像を示す。図19(B)に実施例試料C2のIn−Ga−Zn−O膜と酸化アルミニウム膜との界面における倍率800万倍のTEM像を示す。図19(C)に実施例試料C3のIn−Ga−Zn−O膜と酸化アルミニウム膜との界面における倍率800万倍のTEM像を示す。
【0264】
図19(A)に示すIn−Ga−Zn−O膜では、格子像を観察することができるため、実施例試料C1は結晶領域を有していることが確認された。
【0265】
一方、図19(B)に示す酸素注入処理後のIn−Ga−Zn−O膜では、図19(A)で見られた格子像は観察されなかった。
【0266】
また、図19(C)に示す、酸素注入処理及び450℃にて熱処理した後のIn−Ga−Zn−O膜では、図19(B)と同様に格子像は観察されなかった。このことから、実施例試料C3は非晶質であることが確認された。
【0267】
以上より、結晶領域を有する酸化物半導体層に酸素注入を行うことで、結晶領域が非晶質状態となり、その後450℃以下にて熱処理を行うことで、非晶質状態が維持されることが確認できた。
【符号の説明】
【0268】
400 基板
401 酸化物半導体層
402 下地絶縁層
404 非晶質酸化物半導体層
406 ゲート絶縁層
410 ゲート電極
412 絶縁層
421 酸素
510 トランジスタ
520 トランジスタ
530 トランジスタ
540 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有する非晶質酸化物半導体層と、
前記非晶質酸化物半導体層に電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、
前記非晶質酸化物半導体層と重なるゲート電極と、
前記非晶質酸化物半導体層と、前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、
前記非晶質酸化物半導体層上に設けられた酸化アルミニウム膜と、を有する半導体装置。
【請求項2】
化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有する非晶質酸化物半導体層と、
前記非晶質酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及びドレイン電極を覆い、前記非晶質酸化物半導体層上に設けられたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上に設けられ、前記非晶質酸化物半導体層と重なるゲート電極と、
前記ゲート電極上に接して設けられた酸化アルミニウム膜と、を有する半導体装置。
【請求項3】
ゲート電極と、
前記ゲート電極上に設けられたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上であって前記ゲート電極と重なる位置に設けられ、化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有する非晶質酸化物半導体層と、
前記非晶質酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、
前記非晶質酸化物半導体層の少なくとも一部と接して、前記非晶質酸化物半導体層上に設けられた酸化アルミニウム膜と、を有する半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
前記ゲート絶縁層は、化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有する半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記酸化アルミニウム膜と、前記非晶質酸化物半導体層との間に、酸化物絶縁膜を有し、
前記酸化物絶縁膜は、化学量論的組成比を超える酸素を含む領域を有する半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−253329(P2012−253329A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105548(P2012−105548)
【出願日】平成24年5月4日(2012.5.4)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】