説明

印刷はんだ検査装置

【課題】
プリント基板の形状、はんだ箇所を知って、実効のある測定(走査)ルートにしたがって測定することにより、迅速な測定、検査を行う。
【解決手段】
測定ルート決定手段11が、プリント基板が配置(特に、縦と幅の方向)された状態におけるはんだの配置情報を知って、実効的により短時間に測定できる走査のルート(特に、測定を行う主走査の方向)を決定し、測定手段100がその走査のルートにしたがって、回転機構部5cによりセンサ3の向きを変換し、基板の配置をそのままに、測定する。
回転機構の角度誤差等による測定値への影響を補正手段6により補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等を表面実装するためのプリント板上にはんだ印刷装置等でクリーム状はんだが印刷されたときのはんだの形成状態を測定し、検査する印刷はんだ検査装置に関する。特に、搬送されてきたプリント板のはんだ位置情報(或いはその範囲)を基に、非接触センサの向き及び走査のルート(方向)を決定して、より効率的な、そして迅速な測定を行う技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷はんだ検査装置としては、基板(以下、プリント板を単に「基板」と言う。)の表面をレーザ光等で照射し、基板の表面からの反射光を受光するセンサを有し、そのセンサにより測定(三角測量)した結果として得られた測定値、例えば、基板上の印刷はんだ箇所の変位(高さを含む)或いは輝度(基板から反射した光の量、受光量(光の強さ)を含む。)の測定値を基に、判定の基準となる基準データと比較して判定している(特許文献1)。
【0003】
このような検査装置(方法)においては、一般に、基板を一定方向から搬送させて所定の検査位置で停止させて、そこで、センサ又は/及び基板をXステージ及びYステージ(X軸方向、Y軸方向の各方向への移動台と移動手段)を用いて走査して(相対的な走査を行って)測定するが、走査方向には、主走査と主走査に直交する方向へ走査する副走査があり、主走査のときに測定を行い、副走査は、センサを現在の主走査位置から次の主走査を行うべき位置へずらす為に行われ、そのずらす範囲は、主走査のときセンサによって検出できる副走査方向の検出幅に相当する。
【0004】
このような検査装置(方法)においては、センサの向きや、測定が行われる主走査方向は、基板の寸法等の形状、又は、はんだ箇所の位置やその範囲に関わらず、例えば、Y方向であれば、Y方向に一定にした状態で測定、検査されていた。
【0005】
【特許文献1】特許3537382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1のように。センサ及び主走査方向が一定方向に固定されている場合は、例えば、図6(a)のように基板が主走査方向に長く、はんだ箇所が主走査方向に対して直交する方向に広がっていると、副走査による走査の軌跡が長くなり(主走査の回数が多くなる。)、測定速度が遅くなってしまう問題があった。
【0007】
これを解決するには、基板の方向を90度変更することが考えられるが、どのような大きさの基板でも、方向を変えるプリント基板回転機構を備え、回転できるようにするには、規模が大きくなる問題があった。
【0008】
また、図6(c)のようにはんだ箇所の面積だけを走査すると言うことも考えられるが、これは主走査方向にはんだの無い空きスペースが多い場合に有効な方法であるが、それだけでは、いろいろな形状のはんだ箇所の面積に対して有効な解決方法を提供するものとは言えない。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を改良するものであって、規模の小さなセンサの方向を可変できる構成にして、少なくとも、基板のはんだ箇所を知って、実効のある測定ルート(センサの移動軌跡)にしたがって測定することにより、迅速に測定、検査を行える技術の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、解決する手段を次のような趣旨で構成した。
【0011】
(1)基板が配置(特に、縦と幅の方向)された状態におけるはんだの配置情報を知って、実効的により短時間に測定できる走査のルート(特に、特定を伴う主走査の方向)を決定し、その走査のルートにしたがって、基板の配置をそのままに、測定する。
【0012】
(2)そのままでは、センサの向きと主走査方向が変わってしまうので、それに起因したエラーが出る可能性がある。特に、光による測定では、光を当てる角度方向が変わるので、センサそのものの感度へ影響してくる。そこで、センサの向きも主走査方向の変更に対応して変更できる回転機構を準備する。(3)但し、回転機構の角度誤差等によりセンサによる特定値への影響が考えられるので、これを補正する。これは、機構的なものに起因した誤差であるから補正は可能である。
【0013】
また、(4)センサが回転すると測定値の配列(座標)が変わってしまうが、装置内部では、その変わった配列のまま取り扱われる。しかし、測定値は、例えば予め設計値である基準データと比較されて、はんだの形成状態の良否判定を行われるが、途中で測定値の配列が変わってしまうと基準データの配列と異なってしまい判定の比較が行えないので、測定値又は基準データのいずれかの配列座標を変換したうえで、比較判定を行う。
【0014】
さらに、(5)上記(4)では、測定値又は基準データのいずれかの配列を変換するとしたが、好ましくは、測定値の方の配列を元の基板の配置なるよう変換することが望ましい。つまり、基板は搬送機構で搬送され所定の検査位置に停止して検査され、その検査の判定結果を基板とともに表示する。そのとき、ユーザは、自分が見たい方向に基板の方向を搬送機構へ設定するので、測定中に上記のように方向を変えて測定した場合であっても、基板の方向とデータの判定結果とを対応して表示することが好ましい。
【0015】
なお、主走査又は副走査の「走査」とは、基板とセンサの位置関係の相対的移動である。したがって、「センサを主走査する、或いは副走査する。」と表現することがあっても、基板を固定にしてセンサを移動させて走査する場合も、センサを固定して基板を移動させて走査する場合も、本発明の範疇である。副走査も同様に同じ意味に解釈されるものとする。
【0016】
具体的には、請求項1に記載の発明は、配置されたプリント板の表面に光を照射させ、その反射光を受光するセンサ(3)と該センサを該プリント板に対して相対的に走査する移動機構部(5)とを有し該センサの出力を基に該プリント板表面の各位置における高さを含む測定値を取得する測定手段(100)と、該測定値に基づいてはんだの印刷状態を判定する判定手段(10)とを備えた印刷はんだ検査装置において、
前記プリント板の少なくとも外形情報を受けて、前記配置されたプリント板上を走査するルートを決定する測定ルート決定手段(11)を備え、さらに、前記移動機構部は、前記センサの向きをプリント板表面と平行な平面内で回転させる回転機構部(5c)を有し、該測定ルート決定手段が決定した前記ルートで、かつ該センサの向きを該ルートに応じて合わせて、前記走査を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記回転機構部による前記センサの向きの回転角度は、略90度にされており、前記移動機構部は、前記走査として、測定するために該センサの相対位置を移動させる主走査と、該主走査の位置を該主走査方向と直交する方向に移動させるための副走査とを交互に行う構成であって、
前記測定ルート決定手段は、さらにはんだ部分の位置情報を受けて、前記配置されたプリント板の前記はんだ部分に対する、前記主走査方向と主走査の回数を算出し、それを基に短時間に走査可能なルートを決定し、決定したルートにおける主走査方向を前記センサの向きとして決定する構成とした。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記センサの回転角度に対応する補正値を予め記憶する回転誤差補正値記憶手段(7)と、
前記測定ルート決定手段が決定したセンサの向きに対応した補正値を前記誤差補正値記憶手段から読み出して、前記測定手段が前記センサを用いて測定した測定値を、補正する補正手段(6)とを備えた。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3に記載の発明において、前記プリント板が検査位置に配置された状態における、前記プリント板の外形寸法が含まれる前記外形情報及び前記はんだの位置情報、並びに前記判定手段が判定するときに用いる基準データを記憶する設計情報記憶手段(13)と、
前記測定手段からの測定値又は前記設計情報記憶手段から読み出した基準データのいずれかを、前記測定ルート決定手段が決定したセンサの向きに対応して配列を置換して前記判定手段に送るデータ形式変更手段(9)とを備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の印刷はんだ検査装置。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、2又は4に記載の発明は、センサを回転させる回転機構部を有し、基板の外形情報、さらにははんだの位置情報から実効的な走査のルート(センサの軌跡)を求めて、その走査のルートにしたがって、センサの向き及び走査の仕方を決定し、測定できる構成なので、つまり、有効な短い走査のルートにしたがって、測定を実施できることから、迅速な測定が行える。
【0021】
請求項3によれば、回転機構部によるセンサの回転によって生ずる誤差が補正できるので、センサの方向を変えても精度の良い測定が行える。
【0022】
請求項4に記載の発明は、データ形式変更手段により、センサの向きを変更した場合には測定値の方の配列を変更すれば、ユーザが設定した基板の配置に対応した測定結果、判定結果が得られるので、これらを表示した場合は、ユーザの希望に沿った配置で観測できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態を図1〜図6を用いて説明する。図1は、本実施形態の構成を示す機能ブロック図である。図2は、図1の移動機構部5を説明するための模式的な構造図である。図3及び図4は、図2の移動機構部5に含まれる回転機構部5cを説明するための模式的な構造図である。図5は、図1における情報(測定値、データを含む)の流れと測定値やデータの配列方向を説明するための図である。図6は、基板1及びはんだ部分と主走査の方向との関係を説明するための図である。図7は、他の実施形態を説明するための図である。
【0024】
図1において、センサ3、移動台2及びセンサ3をプリント板1(以下。基板1と言う。)に対して相対的に移動走査させる移動機構部5、及び移動機構部5に対して基板1のレイアウトを基に、基板1の上を移動制御部4aを介して走査させる測定制御手段4によって、測定手段100を構成している。
【0025】
図1における上記、測定手段100は、いわば、三角測量によるレーザ変位計の例であって、センサ3は、基板1に対して移動機構部5によって走査されながらX軸又はY軸の方向にレーザを照射可能なレーザ光源と、基板1からの反射光を受光する受光手段からなり、特にはんだが印刷されたはんだ箇所の変位、つまり印刷はんだ箇所の高さ(Z軸方向)をその印刷はんだ箇所の位置と対応づけて測定する。そのときはんだ面からは、位置に対応した受光量(輝度)も得られる。レーザ変位計としての詳細の動作説明は省くが、原理としては、同一出願人が出願している特開平3−291512号公報のものがある。
【0026】
測定制御手段4は、検査対象である基板1を設計したときの印刷はんだ箇所或いはレジスト箇所等のレイアウト(図5に模式的に示したものを示す。)が後記する設計情報記憶手段13に記憶されているので、そのレイアウトを受けて、そのレイアウトに沿って相対的にセンサ3に対して基板1の表面を走査させて測定を行わせ、センサ3が検出した基板1の変位量及び/又は受光量(高さ方向の測定値)を測定値として出力する(測定値として記憶手段に記憶させても良い)。上記相対的な走査として、次の(a)〜(c)のように幾つかの方法があり、いずれの場合でも、本実施形態に適用できる。(a)センサ3が固定で移動台2をX軸及びY軸上に移動させる。(b)センサ3をX軸上を移動させ、移動台2をY軸上を移動させる(特許文献1を参照)。或いはその逆。(c)移動台2を検査時は固定し、センサ3だけX軸及びY軸上に移動させる。ここでは、簡単のため、上記(c)を採用して説明する。
【0027】
移動機構部5は、例えば、図2に示すように二つのX軸ステージ5bで、センサ3を含むY軸ステージ5aを紙面と直交する方向、つまりX軸方向にモータで移動させ、Y軸ステージ5aはセンサ3aを紙面と平行方向、つまりY軸方向にモータで移動する。これらの制御は、移動制御部4aが制御する。
【0028】
Y軸ステージ5aには、センサ3を保持するとともに、センサ3の向きをX軸方向、Y軸方向のいずれにも回転可能に(つまり、少なくとも略90度回転可能に)する回転機構部5cを備えている。
【0029】
回転機構部5cは、図3に示すようにギヤ5caの一方に固定されたセンサ3をギヤ5caの他方をモータ5cbで回転させることにより、基板1に平行な平面に対するセンサ3の向きを変更する。例えば、図3で、センサ3がY軸方向に向いていたのを図4のようにX軸方向に向きを略90度変更できる構成にしてある。図3及び図4のY軸方向、X軸方向は、基板1を基準に表示したものである。
【0030】
測定制御手段4は、移動制御部4aに対して、上記のような移動機構部5を用いてセンサ3を、基板1上を走査(以下、センサ3を表現することなく単に「走査」と言うことがある。「主走査」「副走査」の場合も同じ。)させて、測定を行う。そのときの走査には、測定を行うための主走査と、主走査の位置を主走査方向と直交する方向にずらすだけの副走査(副走査中は、測定しない。)との2種類があり、これを交互に繰り返して測定を行う。このときの副走査の移動範囲には、センサ3が主走査のときに基板1上のはんだを測定可能な副走査方向の範囲(いわば、検出幅。)含んでいる。一主走査の移動範囲は、例えば、基板1の寸法により、主走査方向を図6(a)のように走査するか、図6(a)とは直交する図6(b)のように走査するかで、さらに、はんだ箇所の実効的な範囲により図6(c)のように走査するか、図6(d)のように走査するかで、大きく異なってくる。一副走査の移動範囲は、図6(a)、(b)、(c)又は(d)に関わらず、ほぼ一定であるので、予め決めておくことができる(副走査のときは、測定を行わないため。)。
【0031】
本実施形態では、移動制御部4aは、主走査方向を図6(a)或いは図6(b)のいずれにも変更できる構成、つまり、基板1に対してX軸方向、Y軸のいずれをも採りうる構成とされている。この場合、センサ3の主走査方向を変更すると、測定する方向が変わり、そのままでは、測定方向とセンサ3の光(レーザ)の方向が変わってしまうので、センサ3による誤差が出る可能性がある。そこで、移動制御部4aは、主走査方向が変わったときは、走査開始前に、回転機構部5cに対して、センサ3の向きを主走査方向の変更に合わせて変更させる。
【0032】
測定ルート決定手段11は、後記する設計情報記憶手段13に記憶されている基板1の寸法を含む外形情報、及びはんだ箇所の位置(はんだ箇所の集合範囲である、はんだ部分の位置)を含むはんだの位置情報を基に、走査時間が最短時間となる走査のルートを求めて、求めたときの主走査の方向及びセンサの向きを決定し(当然ながら副走査方向も決定される。)、前記移動制御部4aに対して、通知し、そのルートでの走査を実行させる。
【0033】
測定ルート決定手段11による最短時間のルート決定は、例えば、次のように行う。先ず前提として、基板1の外形情報は、検査位置に配置された状態、つまり、基板1の幅の方向及び長さの方向がX軸方向とY軸方向に固定された状態における、寸法が含まれている。この寸法は、測定時のはんだ位置の寸法出しの基準となる認識マークの位置の寸法であり、認識マークは基板1に予め、センサ3で認識可能に付されている。また、外形寸法が幅W、長さLで、はんだ部分の位置が幅W1〜W2(W>W2>W1)に亘り、長さがL1〜L2(L>L2>L1)に亘るものとする。
【0034】
(イ)有効な走査範囲を決定する。(図6(c)又は図6(d)を選択)
測定ルート決定手段11は、はんだ部分の幅W2−W1が、基板1の幅Wより小さい場合は、幅W2−W1を幅方向の測定対象範囲とする。幅W2−W1と幅Wが近い場合は、幅Wを測定対象範囲としてもよい。同様にはんだ部分の長さL2―L1が基板1の長さLより小さい場合は、長さL2―L1を長さ方向の測定範囲とし、長さL2―L1と長さLが近い場合は、長さLを測定範囲としても良い。このように、測定に有効なはんだ部分を選択し測定できるようにしたので、実効的に測定時間を短縮化できる。なお、上記有効な走査範囲を特に決定せず、基板1の幅W、長さLを幅W2−W1、長さL2―L1の代わりに用いても、下記の演算により基板1の縦又は横のいずれ有効な方を主走査方向と決定できるので、それだけでも本発明の範疇である。
【0035】
以下の説明では、はんだ部分の幅W2−W1と長さL2―L1の範囲を測定対象範囲として選択した例で説明する。
【0036】
(ロ)各走査のルートにおける測定時間を演算する(図6(c)と図6(d)とを比較検討し、いずれかを選択)。
測定ルート決定手段11は、次の計算を行う。ただし、実際の計算には、各走査時間には、主走査と副走査を切り替えるため、各助走時間を考慮する必要がある。
式(1) 主走査方向を長さ方向とした場合のルートに要する時間を求める式
ΔL×T×N+ΔT×(N−1)
N−1>=ΔW/ΔS
式(2) 主走査方向を幅方向とした場合のルートに要する時間を求める式
ΔW×T×N+ΔT×(N−1)
N−1>=ΔL/ΔS
ただし、 ΔL=L2−L1、
T=主走査方向の単位距離当たりの走査(移動)時間
N=はんだ部分を主走査する回数
ΔW=W2−W1
ΔS:副走査の移動範囲には、センサ3が主走査のときに基板1上のはん
だを測定可能な副走査方向の範囲、つまり検出幅
ΔT=一副走査に要する時間(検出幅を移動する時間)
N−1=はんだ部分を副走査する回数
【0037】
(ハ)ルート決定
測定ルート決定手段11は、上記式(1)の値と、式(2)の値を比較し、小さい方の値における式を採用し、つまりルートを決定し、その計算に用いた主走査方向を採用する。また、採用した主走査方向と、採用した式における主走査回数N、副走査回数N−1を移動制御部4aに通知し、決定したルートを走査させる。またセンサ3の向きを主走査方向とする。
【0038】
簡単に実験的な数値例を示す、主走査方向を500mm、副走査方向を150mmした場合と、逆に主走査方向を150mm、副走査方向を500mmした場合とで比較すると、主走査方向の移動速度164mm/sec、副走査時間0.3secとすると、前者の測定時間が後者の測定時間の約7割の時間で済む。
【0039】
補正手段6は、測定制御手段4から出力される測定値をセンサ3の向きに対応した補正値を回転誤差補正値記憶手段6から読み出して補正する。測定ルート決定手段11が決定したセンサ3の向き(或いは主走査方向)に対応して、回転機構部5cの回転誤差に応じたセンサ3の測定誤差を補正するためのものである。補正の対象は、例えば、測定値がはんだ位置(基板位置)に対応して変位データで表される場合の、そのはんだ位置を回転誤差分補正するものである。つまり、変位データの座標を補正することになる。回転誤差補正値記憶手段7には、例えば、センサ3の向きがX軸方向の場合の補正値とY軸方向の場合の補正値の双方、或いは一方を記憶する。補正値は、予め試験によって得たものが用いられるが、例えば、センサ3の向きがX軸方向の場合の測定値が予め校正されていれば、X軸方向に対する補正値は不要であり、センサ3の向きがY軸方向の場合補正するために、Y軸方向に対する補正値だけを記憶しておけば良い。
【0040】
判定用データ生成手段8は、補正手段6で補正された測定値(一旦、図示しない記憶手段に記憶しておく。)を受けて、フィルタ、はんだブリッジやはんだパターンエッジ等の繊細パターンを識別する感度を示す数々の所定の画像パラメータ値を基に、測定値を各印刷はんだ箇所の印刷はんだ量を表す判定用データに加工処理する。また、判定用データ生成手段8は、印刷はんだ箇所における高さ、面積及び/又は体積等の演算を行う演算する手段等を有している。そして、判定用データとして、印刷はんだ箇所におけるはんだ量を表す要素となるデータであって、それぞれのはんだ箇所の高さ、面積、体積、及び欠損(存在すべきはんだ量が無い状態の検出)等を出力する。なお、基板1の良否を判定するには上記の画像の全てを必要とするとは限らないが、高さ、面積、体積、欠損の内、少なくともいずれか1つは不可欠である。
【0041】
この判定用データ生成手段8が出力する判定用データも、この発明では、はんだの形状を表す測定値である。なお、上記では、補正手段6は、判定用データ生成手段8の前に入っていたが、判定用データ生成手段8の後に入れて、判定用データを補正するようにしても良い。
【0042】
なお、判定用データ生成手段8は、はんだ状態を面積や体積に換算して評価すためのものであり、単純に高さだけで評価する場合は、無くてもよい。ただし、この場合、後記する基準データは、高さについての基準データであり、判定手段10は、はんだ状態の高さについて、良否判定を行うことになる。
【0043】
データ形式変更手段9は、判定用データ生成手段8が出力する判定用データの配列座標を、測定ルート決定手段11が決定したセンサ3の向き(主走査方向)に対応して変換する。言い換えると、測定ルート決定手段11が決定する前の設計情報記憶手段13に記憶されている基板1の外形寸法の方向に合わせる。
【0044】
次に、その理由を説明する。装置内部の要部、例えば、測定値を記憶する記憶手段(不図示)や判定用データ生成手段8では、測定を行う方向が主走査方向であるからその主走査方向を基準として測定値を取り扱う。したがって、測定ルート決定手段11により主走査方向が変更されると、測定値の配列座標が元々設計情報記憶手段13に記憶されていた基板1の座標(幅と長さの関係)と異なってしまう。つまり、判定用データ(測定値)は、例えば予め設計情報記憶手段13に記憶されていた設計値である基準データと比較されて、はんだの形成状態の良否判定を行われるが、センサ3の向きが変わった場合は測定値の配列が変わってしまうので基準データの配列と異なってしまい判定の比較が行えない。そこで、判定用データ(測定値)の配列座標を変換する。但し、判定手段10が、判定するだけであれば、判定用データの配列座標を変換するのではなく、基準データの配列座標を変換しても良い。
【0045】
しかし、設計情報記憶手段13に記憶された基板1の配置位置は、操作者が、観察上、希望した配置位置であり、その基準データであるからして、かつ主走査方向の変更は、測定上の都合の問題だから、判定用データ(測定値)の方を座標変換することが好ましい。
【0046】
判定手段10は、データの配列座標を合わせた、はんだ箇所毎の判定用データ(測定値)と基準データとを比較し、良否判定を行う。このとき、判定用データと基準データはそれぞれはんだ位置に対応したデータであるので、判定手段10は読出部により、同一位置ににおける判定用データと基準データを読み出して比較することにより、良否判定を行う。読出部は、図1では、便宜上、判定手段10内に入れたが、この限りではない。なお、判定手段10が出力するときは、回転機構部5cが回転していた場合は、その回転に合わせて、配列座標を変換することが好ましい。これは、後記するユーザインタフェース12で行っても良い。
【0047】
表示制御手段12aは、判定手段10による判定結果と設計情報記憶手段13に記憶されているレイアウト(基板1の配置、寸法、はんだ位置)に対応付けて表示手段12bへ表示させる。その表示例を図5の右下段に示す。その表示例において、判定結果は、全体の判定結果であり、例えば、NG(否)を表示し、レイアウト中にNGとされた箇所を黒く表示している。この表示からしても、上記データ形式変更手段9は、判定用データ側の配列座標を変換することが望ましい。
【0048】
設計情報記憶手段13が記憶している内容の概要は、上記に一部説明済みなので、説明していない部分について説明する。設計情報記憶手段13は、上記判定用データと同じ種類の設計値、つまり、はんだ箇所の高さ、面積、体積、及び欠損についての設計値を基準データとして、かつ基板1が検査位置に配置される方向に対応した座標上のデータとして記憶されている。実用上は、設計情報記憶手段13は、検査対象とする基板1の種類毎にレイアウト(基板1の配置図、寸法、はんだ位置等)を記憶し、検査開始のときは、基板1の種類リストを表示手段12bに表示し、操作手段12cで選択可能にされている。
【0049】
ユーザインタフェース12は、表示制御手段12a、表示手段12b及び、操作手段12cで構成されるが、その主要動作について上記した通りであるが、使い方について説明する。一般に、基板1は搬送機構で搬送されて、検査位置で停止し、そこで、移動機構部5(移動機構部5と搬送機構の一部は、兼用可能である。)によって走査されて検査される。そうしたとき、操作者にとっては、搬送機構上の基板1の配置或いは検査位置における基板1の配置と、表示手段12bにおける画像としての基板1の配置とは、同じであることが望ましい。例えば、検査中、表示上にNGのはんだ箇所が表示されたとき、基板1の異常箇所を確認しやすい。図5の表示例は、模式的に示したものであるが、実際の基板1のはんだ箇所やその異常部分は、非常に小さいため、実物の配置と画像の配置とが一致することがより有効である。
【0050】
上記構成における、測定制御手段4、補正手段6、判定用データ生成手段8、データ形式変更手段9、判定手段10、測定ルート決定手段及び表示制御手段12aは、CPU及びそのCPUに上記説明の機能を動作させるためのプログラムを記憶したメモリ(ROM)、及び上記機能動作過程でデータを貯えるメモリ(RAM)等で構成される。設計情報記憶手段13及び回転誤差補正値記憶手段7はメモリで構成され、CPUで管理される。
【0051】
次に、実施形態の主な動作の一連の流れを、図5を基に説明する。
(イ)予め設計情報記憶手段13に、検査位置に配置された状態における基板1のレイアウトとして、寸法を含む外形情報、基板1上のはんだ部分の位置情報を記憶しておく。さらに、前記レイアウトにおける基準データ(はんだの高さ、面積、体積、欠損)を記憶しておく。ここでの例としては、図5に示すように、基板1の長さ方向をY軸方向とし、幅方向をX軸方向として説明する。
【0052】
(ロ)測定ルート決定手段11が、設計情報記憶手段11からのレイアウトを受けてはんだ部分の位置情報と外形寸法と比較し、はんだ部分の位置(範囲)が、外形寸法より小さい場合は、はんだ部分を走査対象と決定し、はんだ部分の位置(範囲)が外形寸法とほぼ同じであれば、外形寸法そのものを走査対象と決定する。例として、前者に決定されたものとする。
【0053】
(ハ)さらに測定ルート決定手段11は、はんだ部分の位置情報(幅W1〜W2、長さL1〜L2)を基に、上記式(1)及び式(2)の計算を行って、主走査方向とセンサ3の向きを決定する。この場合は、例としてX軸方向を主走査方向、かつセンサ3の向きと決定する。
【0054】
(ニ)測定手段100は、移動制御部4aを介して、移動機構部5に対して、センサ3の向きを90度回転してX軸方向に変更させ、かつ主走査方向をX軸方向、副走査方向をY軸方向として、はんだ部分(幅W1〜W2、長さL1〜L2)の範囲を走査させて、基板1の表面の高さ(変位)を測定する。主走査方向を基準とした座標配列で測定値を出力する(このとき、記憶させておいても良い。)。
(ホ)補正手段6は、測定手段100からの測定値を回転誤差補正値記憶手段7に記憶されている90度回転における補正値を読み出して補正する。
【0055】
(ヘ)判定用データ生成手段8は、補正された測定値を基に、はんだの高さ、面積、体積等のはんだ量を判定用データ表す判定用データを生成する(図5には不図示)。補正手段6から出力される測定値、或いは判定用データ生成手段8から生成される判定用データの配列座標は、主走査方向がX軸方向なので、図5の補正手段6の出力に模式的に表したように、設計情報記憶手段13の基準データの配列座標と、90度異なる。
【0056】
(ト)データ形式変更手段9は、判定用データ生成手段8からの判定用データの配列座標を、図5に示すようにY軸方向に90度、座標変換し、基準データの配列座標に合わせる。
(チ)判定手段10は、座標変換された判定用データと基準データを比較し、はんだ箇所毎の良否、基板1全体としての良否判定を行う。
(リ)表示手段12bは、判定結果を設計情報記憶手段13のレイアウトにしたがって基板1を表示するとともに、併せて判定結果を同時表示する。図5の表示例では、黒部分のはんだ箇所がNG(否)で、全体の判定結果もNGと表示している。
【0057】
[他の実施形態]
図7を基に他の実施形態を示す。図1の実施形態では、回転誤差補正を測定値に対して補正をかけ、判定手段10は、同一位置にある補正された測定値(或いは判定用データ)と基準データを読み出して判定していたが、図7ので実施形態では、判定手段10が判定するときに、基準データと判定用データとの位置合わせを行って、判定するようにしたものである。図7において、図1と同じ符号の要部は、同じ機能を有する。以下、図7を基に、図1と異なる構成、動作について説明する。
【0058】
図7において、基準位置補正手段6aは、測定手段100から基板1に付されていた認識マーク位置の情報を受領し、その位置を回転誤差補正値記憶手段7からの補正値で補正する。なお、測定手段100は、受光量を基に認識マーク位置(設計値上の基準位置であり、基準データの基準位置でもある。)を各特定し、位置の情報を出力する。以下、模擬的に測定値や基準データの表示を(x、y、z)で表して説明する(x、yは座標情報、zは変位データ)。補正前の認識マーク位置を(0、0、1)とすれば、例えば補正値(10、0、1)で補正してその補正された値(10、0、1)を判定手段へ、新たな基準位置として送る。
【0059】
判定手段10は、座標補正&読出部を有する。座標補正&読出部は、基準データの在る範囲、例えば、(0、0、1)から在る位置(10、10、1)の面積を、対応する位置にある判定用データと比較、判定する場合、基準位置補正手段6aから受けた新たな基準位置(10、0、1)を基に、基準データの範囲(0、0、1)〜(10、10、1)を変換し、補正した範囲(10、0、1)〜(20、10、1)を求める。そして、判定手段10は、判定用データ生成手段8から、この補正した範囲(10、0、1)〜(20、10、1)における測定値の面積(はんだされた箇所数、つまりzが0以外の値のドット数)を読み出し、基準データの(0、0、1)〜(10、10、1)の範囲における面積と比較し、判定する。なお、上記説明で、基準データと判定用データの関係を変えても、原理は同じである。
【0060】
つまり、図7の実施形態は、基準位置補正手段6aによって、補正用変換座標を生成し、
判定手段10が、その補正用変換座標を基に、対応する座標にある基準データと判定用データを読み出して比較、判定する。
【0061】
図7の実施形態では、回転誤差を補正した座標を基に、判定用データを読み出す構成にしたので、図1の実施形態における測定値の座標を変換した場合に比べ、処理速度が速くなる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態の機能ブロックを説明するための図である。
【図2】図1の実施形態における移動機構部を説明するための模式的な構造図である。
【図3】図2の移動機構部に含まれる回転機構部を説明するための模式的な構造図(正面図)である。
【図4】図2の移動機構部に含まれる回転機構部を説明するための模式的な構造図(側面図)である。
【図5】図1における情報(測定値、データを含む)の流れと測定値やデータの配列方向を説明するための図である。
【図6】基板及びはんだ部分と主走査の方向との関係を説明するための図である。
【図7】他の実施形態の機能ブロックを説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
1 基板(プリント板)、 2 移動台(搬送機構)、 3 センサ、 4 測定制御手段、 4a 移動制御部、 5 移動機構部、 5c 回転機構部、 6 補正手段、 7 回転誤差補正値記憶手段、 8 判定用データ生成手段、 9 データ形式変更手段、 10 判定手段、 12 ユーザインタフェース、 12a 表示制御手段、 12b 表示手段、 12c 操作手段、 13 設計情報記憶手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配置されたプリント板の表面に光を照射させ、その反射光を受光するセンサ(3)と該センサを該プリント板に対して相対的に走査する移動機構部(5)とを有し該センサの出力を基に該プリント板表面の各位置における高さを含む測定値を取得する測定手段(100)と、該測定値に基づいてはんだの印刷状態を判定する判定手段(10)とを備えた印刷はんだ検査装置において、
前記プリント板の少なくとも外形情報を受けて、前記配置されたプリント板上を走査するルートを決定する測定ルート決定手段(11)を備え、
さらに、前記移動機構部は、前記センサの向きをプリント板表面と平行な平面内で回転させる回転機構部(5c)を有し、該測定ルート決定手段が決定した前記ルートで、かつ該センサの向きを該ルートに応じて合わせて、前記走査を行うことを特徴とする印刷はんだ検査装置。
【請求項2】
前記回転機構部による前記センサの向きの回転角度は、略90度にされており、
前記移動機構部は、前記走査として、測定するために該センサの相対位置を移動させる主走査と、該主走査の位置を該主走査方向と直交する方向に移動させるための副走査とを交互に行う構成であって、
前記測定ルート決定手段は、さらにはんだ部分の位置情報を受けて、前記配置されたプリント板の前記はんだ部分に対する、前記主走査方向と主走査の回数を算出し、それを基に前記短時間に走査可能なルートを決定し、決定したルートにおける主走査方向を前記センサの向きとして決定することを特徴とする請求項1に記載の印刷はんだ検査装置。
【請求項3】
前記センサの回転角度に対応する補正値を予め記憶する回転誤差補正値記憶手段(7)と、
前記測定ルート決定手段が決定したセンサの向きに対応した補正値を前記誤差補正値記憶手段から読み出して、前記測定手段が前記センサを用いて測定した測定値を、補正する補正手段(6)とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷はんだ検査装置。
【請求項4】
前記プリント板が検査位置に配置された状態における、前記プリント板の外形寸法が含まれる前記外形情報及び前記はんだの位置情報、並びに前記判定手段が判定するときに用いる基準データを記憶する設計情報記憶手段(13)と、
前記測定手段からの測定値又は前記設計情報記憶手段から読み出した基準データのいずれかを、前記測定ルート決定手段が決定したセンサの向きに対応して、配列を置換して前記判定手段に送るデータ形式変更手段(9)とを備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の印刷はんだ検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−126042(P2006−126042A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315803(P2004−315803)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】